JP4036448B2 - 能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからの荷重を支持する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置であって、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形に基づいてアクチュエータの作動を制御する制御手段を備え、その制御手段がエンジンの振動波形に応じてアクチュエータへの通電を制御することで、エンジンの振動に伴うエンジンから車体フレームへの荷重伝達を防止する支持力を生じさせるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる能動型防振支持装置は、下記特許文献により公知である。
【0003】
この能動型防振支持装置は、アクチュエータに電流を印加して可動部材を振動させることでバネ定数を変化させるもので、そのバネ定数を設定する印加電流のピーク電流値と位相との関係を予めマップとして記憶しておき、エンジン回転数に応じて前記マップからアクチュエータに印加すべき電流のピーク電流値と位相とを求めることで、種々のエンジン回転数領域で能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるようになっている。
【0004】
【特許文献】
特開平7−42783号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、能動型防振支持装置のアクチュエータの制御手段が、エンジンのクランクパルスからエンジンの振動状態(波形および位相)を推定し、その振動状態に基づいてアクチュエータへの通電を制御する場合、エンジンの振動状態を示す信号は通常はサインカーブ状になるが、その信号にノイズが乗ると波形や位相が崩れてしまい、その崩れた波形や位相に基づいてアクチュエータへの通電を制御すると、能動型防振支持装置が有効な防振性能を発揮できなくなる問題があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エンジンの振動状態(振動波形)を示す信号に対するノイズの影響を最小限に抑え、能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンからの荷重を支持する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置であって、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形に基づいてアクチュエータの作動を制御する制御手段を備え、その制御手段がエンジンの振動波形に応じてアクチュエータへの通電を制御することで、エンジンの振動に伴うエンジンから車体フレームへの荷重伝達を防止する支持力を生じさせるようにしたものにおいて、エンジンの振動波形を示す信号に対するノイズの影響を抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるために、前記制御手段は、エンジンの振動波形の山および谷の間隔を該振動波形の半周期と比較し、その両者のずれが所定値を超えている場合には、隣接する二つの山の中央に谷があるものと見做し、あるいは隣接する二つの谷の中央に山があるものと見做してアクチュエータへの通電を制御することを特徴とする能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置が提案される。
【0008】
上記構成によれば、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形の山および谷の間隔を該振動波形の半周期と比較し、その両者のずれが所定値を超えている場合には、隣接する二つの山の中央に谷があるものと見做し、あるいは隣接する二つの谷の中央に山があるものと見做してアクチュエータへの通電を制御するので、エンジンの振動波形がノイズにより著しく崩れた場合でも、そのノイズの影響を最小限に抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させることができる。
【0009】
また請求項2に記載された発明によれば、エンジンからの荷重を支持する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置であって、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形に基づいてアクチュエータの作動を制御する制御手段を備え、その制御手段がエンジンの振動波形に応じてアクチュエータへの通電を制御することで、エンジンの振動に伴うエンジンから車体フレームへの荷重伝達を防止する支持力を生じさせるようにしたものにおいて、エンジンの振動波形を示す信号に対するノイズの影響を抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるために、前記制御手段は、エンジンの振動波形の今回値の位相を前回値の位相と比較し、その両位相の差の絶対値が所定値を超えている場合には、前回値の位相に基づいてアクチュエータへの通電を制御することを特徴とする能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置が提案される。
【0010】
上記構成によれば、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形の今回値の位相を前回値の位相と比較し、その両位相の差の絶対値が所定値を超えている場合には、前回値の位相に基づいてアクチュエータへの通電を制御するので、エンジンの振動波形の位相がノイズにより著しく変動した場合でも、そのノイズの影響を最小限に抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させることができる。
【0011】
尚、実施例の第1弾性体14は本発明の弾性体に対応し、実施例の第1液室24は本発明の液室に対応し、実施例の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すもので、図1は能動型防振支持装置の縦断面図、図2は図1の2−2線断面図、図3は図1の3−3線断面図、図4は図1の要部拡大図、図5はアクチュエータの制御手法を示すフローチャート、図6はエンジンの振動波形およびアクチュエータへの印加電流を示すタイムチャートである。
【0014】
図1〜図4に示す能動型防振支持装置Mは、自動車のエンジンEを車体フレームFに弾性的に支持するためのもので、エンジンEのクランクシャフトの回転に伴って出力されるクランクパルスを検出するクランクパルスセンサSが接続された電子制御ユニットUによって制御される。このクランクパルスはクランクシャフトの1回転につき24回、つまりクランクアングルの15°毎に1回出力される。
【0015】
能動型防振支持装置Mは軸線Lに関して実質的に軸対称な構造を有するもので、エンジンEに結合される板状の取付ブラケット11に溶接した内筒12と、この内筒12の外周に同軸に配置された外筒13とを備えており、内筒12および外筒13には厚肉のゴムで形成した第1弾性体14の上端および下端がそれぞれが加硫接着により接合される。中央に開口15bを有する円板状の第1オリフィス形成部材15と、上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第2オリフィス形成部材16と、同じく上面が開放した樋状の断面を有して環状に形成された第3オリフィス形成部材17とが溶接により一体化されており、第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16の外周部が重ね合わされて前記外筒13の下部に設けたカシメ固定部13aに固定される。
【0016】
膜状のゴムで形成された第2弾性体18の外周が第3オリフィス形成部材17の内周に加硫接着により固定されており、この第2弾性体18の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材19が、軸線L上に上下動可能に配置された可動部材20に圧入により固定される。外筒13のカシメ固定部13aに固定されたリング部材21にダイヤフラム22の外周が加硫接着により固定されており、このダイヤフラム22の内周に加硫接着により固定されたキャップ部材23が前記可動部材20に圧入により固定される。
【0017】
しかして、第1弾性体14および第2弾性体18間に液体が封入された第1液室24が区画され、第2弾性体18およびダイヤフラム22間に液体が封入された第2液室25が区画される。そして第1液室24および第2液室25は、第1〜第3オリフィス形成部材15,16,17により形成された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0018】
上部オリフィス26は第1オリフィス形成部材15および第2オリフィス形成部材16間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁26aの一側において第1オリフィス形成部材15に連通孔15aが形成され、前記隔壁26aの他側において第2オリフィス形成部材16に連通孔16aが形成される。従って、上部オリフィス26は、第1オリフィス形成部材15の連通孔15aから第2オリフィス形成部材16の連通孔16aまでの略1周の範囲に亘って形成される(図2参照)。
【0019】
下部オリフィス27は第2オリフィス形成部材16および第3オリフィス形成部材17間に形成される環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁27aの一側において第2オリフィス形成部材16に前記連通孔16aが形成され、前記隔壁27aの他側において第3オリフィス形成部材17に連通孔17aが形成される。従って、下部オリフィス27は、第2オリフィス形成部材16の連通孔16aから第3オリフィス形成部材17の連通孔17aまでの略1周の範囲に亘って形成される(図3参照)。
【0020】
以上のことから、第1液室24および第2液室25は、直列に接続された上部オリフィス26および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0021】
外筒13のカシメ固定部13aには、能動型防振支持装置Mを車体フレームFに固定するための環状の取付ブラケット28が固定されており、この取付ブラケット28の下面に前記可動部材20を駆動するためのアクチュエータ29の外郭を構成するアクチュエータハウジング30が溶接される。
【0022】
アクチュエータハウジング30にはヨーク32が固定されており、ボビン33に巻き付けられたコイル34がアクチュエータハウジング30およびヨーク32に囲まれた空間に収納される。環状のコイル34の内周に嵌合するヨーク32の筒状部32aに有底円筒状のベアリング36が嵌合する。コイル34の上面に対向する円板状のアーマチュア38がアクチュエータハウジング30の内周面に摺動自在に支持されており、このアーマチュア38の内周に形成した段部38aがベアリング36の上部に係合する。アーマチュア38はボビン33の上面との間に配置した皿ばね42で上方に付勢され、アクチュエータハウジング30に設けた係止部30aに係合して位置決めされる。
【0023】
ベアリング36の内周に円筒状のスライダ43が摺動自在に嵌合しており、可動部材20から下方に延びる軸部20aが、ベアリング36の上底部を緩く貫通してスライダ43の内部に固定したボス44に接続される。ベアリング36の上底部とスライダ43との間にコイルばね41が配置されており、このコイルばね41でベアリング36は上向きに付勢され、スライダ43は下向きに付勢される。
【0024】
アクチュエータ29のコイル34が消磁状態にあるとき、ベアリング36に摺動自在に支持されたスライダ43にはコイルばね41の弾発力が下向きに作用するとともに、ヨーク32の底面との間に配置したコイルばね45の弾発力が上向きに作用しており、スライダ43は両コイルばね41,45の弾発力が釣り合う位置に停止する。この状態からコイル34を励磁してアーマチュア38を下方に吸引すると、段部38aに押されてベアリング36が下方に摺動することによりコイルばね41が圧縮される。その結果、コイルばね41の弾発力が増加してコイルばね45を圧縮しながらスライダ43が下降するため、スライダ43にボス44および軸部20aを介して接続された可動部材20が下降し、可動部材20に接続された第2弾性体18が下方に変形して第1液室24の容積が増加する。逆にコイル34を消磁すると、可動部材20が上昇して第2弾性体18が上方に変形し、第1液室24の容積が減少する。
【0025】
しかして、自動車の走行中に低周波数のエンジンシェイク振動が発生したとき、エンジンEから入力される荷重で第1弾性体14が変形して第1液室24の容積が変化すると、上部オリフィス26および下部オリフィス27を介して接続された第1液室24および第2液室25間で液体が行き来する。第1液室24の容積が拡大・縮小すると、それに応じて第2液室25の容積が縮小・拡大するが、この第2液室25の容積変化はダイヤフラム22の弾性変形により吸収される。このとき、上部オリフィス26および下部オリフィス27の形状および寸法、並びに第1弾性体14のばね定数は前記エンジンシェイク振動の周波数領域で低ばね定数および高減衰力を示すように設定されているため、エンジンEから車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減することができる。
【0026】
尚、上記エンジンシェイク振動の周波数領域では、アクチュエータ29は非作動状態に保たれる。
【0027】
前記エンジンシェイク振動よりも周波数の高い振動、即ちエンジンEのクランクシャフトの回転に起因するアイドル振動やこもり音振動が発生した場合、第1液室24および第2液室25を接続する上部オリフィス26および下部オリフィス27内の液体はスティック状態になって防振機能を発揮できなくなるため、アクチュエータ29を駆動して防振機能を発揮させる。
【0028】
アクチュエータ29による防振機能を発揮させるべく、電子制御ユニットUはクランクパルスセンサSからの信号に基づいてコイル34に対する通電を制御する。この制御の内容を、図5のフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0029】
先ずステップS1でクランクパルスセンサSからクランクアングルの15°毎に出力されるクランクパルスを読み込み、ステップS2で前記読み込んだクランクパルスを基準クランクパルス(特定のシリンダのTDC信号)と比較することでクランクパルスの時間間隔を演算する。続くステップS3で前記15°のクランクアングルをクランクパルスの時間間隔で除算することでクランク角速度ωを演算し、ステップS4でクランク角速度ωをローパスフィルタで処理して高周波成分を除去した後、ステップS5でクランク角速度ωを時間微分してクランク角加速度dω/dtを演算する。続くステップS6でエンジンEのクランクシャフト回りのトルクTqを、エンジンEのクランクシャフト回りの慣性モーメントをIとして、
Tq=I×dω/dt
により演算する。このトルクTqはクランクシャフトが一定の角速度ωで回転していると仮定すると0になるが、膨張行程ではピストンの加速により角速度ωが増加し、圧縮行程ではピストンの減速により角速度ωが減少してクランク角加速度dω/dtが発生するため、そのクランク角加速度dω/dtに比例したトルクTqが発生することになる。
【0030】
続くステップS7で時間の経過に伴うトルクの変化状態を演算し、ステップS8で前記トルクの変化状態からエンジンEを支持する能動型防振支持装置Mの位置における振動波形を演算する。図6(A)に示すように、一般に前記振動波形はサインカーブ状の波形になる。続くステップS9で振動波形の位相θを推定する。図6に示すように、前記位相θは基準クランクパルスから振動波形の最初の山Pまでのクランクアングルで定義される。続くステップS10で振動波形の周期Tを演算し、ステップS11で振動波形の山Pから谷Bまでの時間tを演算する。
【0031】
図6から明らかなように、振動波形の周期Tは、隣接する二つの基準クランクパルスの時間間隔となる。例えば、4サイクル6気筒エンジンEでは、クランクシャフトの2回転に対して爆発が6回行われるため、振動波形の周期Tはクランクアングルの120°に対応する。また前記時間tは、基準クランクパルス後の振動波形の最初の山Pから次の谷Bまでの時間間隔として定義される。
【0032】
図6(A)はノイズの影響を受けない正常な振動波形を示すもので、その谷Bの位置は前後の二つの山P,Pのほぼ中央になる。そして時間tに相当する山Pから谷Bまでの期間に、振動によってエンジンEが下方に偏倚して第1液室24の容積が減少して液圧が増加するため、アクチュエータ29のコイル34を励磁してアーマチュア38を吸引する。その結果、アーマチュア38はコイルばね41,45を圧縮しながらスライダ43および可動部材20と共に下方に移動し、可動部材20に内周を接続された第2弾性体18を下方に変形させる。これにより、第1液室24の容積が増加して液圧の増加を抑制するため、能動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレームFへの下向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を発生する。
【0033】
そして谷Bから次の山Pまでの期間に、振動によってエンジンEが上方に偏倚して第1液室24の容積が増加して液圧が減少するため、アクチュエータ29のコイル34を消磁してアーマチュア38を吸引を解除する。その結果、アーマチュア38はコイルばね41,45の弾発力でスライダ43および可動部材20と共に上方に移動し、可動部材20に内周を接続された第2弾性体18を上方に変形させる。これにより、第1液室24の容積が減少して液圧の減少を抑制するため、能動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレームFへの上向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を発生する。
【0034】
しかしながら、実際の振動波形が図6(A)に示すものであっても、ノイズの影響で振動波形が図6(B)あるいは図6(C)に示すように崩れる場合がある。このとき、時間tに相当する山Pから谷Bまでの期間にアクチュエータ29のコイル34を励磁すると、その励磁期間および励磁タイミングが図6(A)に示す正常状態に対して変化してしまい、能動型防振支持装置Mが有効な防振性能を発揮できなくなる可能性がある。例えば、図6(B)ではノイズの影響で振動波形の谷Bの位置が進角方向にずれたため、アクチュエータ29は本来の作動時間の前半しか作動しておらず、図6(C)ではノイズの影響で振動波形の最初の山Pの位置が遅角方向にずれたため、アクチュエータ29は本来の作動時間の後半しか作動していない。
【0035】
そこで、ステップS12でt/Tの値が0.4以上かつ0.6以下であるか否かを判断する。振動波形がノイズの影響を受けずに正常であれば、振動波形の山Pから谷Bまでの時間tは周期Tの約半分になるため、t/Tの値は約0.5になる。従って、0.4≦t/T≦0.6が成立すれば(即ち前記周期Tの半分(0.5T)と前記時間tとのずれが所定値(0.1T)以下の場合には)、振動波形が正常範囲内であると判断し、振動波形の補正は行わない。一方、前記ステップS12でt/T<0.4あるいはt/T>0.6であれば(即ち前記ずれが前記所定値(0.1T)を超えている場合には)、ノイズの影響で振動波形が正常範囲外であると判断し、ステップS13でtをT/2に補正する。即ち、振動波形が正しいサインカーブ状であると仮定し、隣接する二つの山P,Pに中央に谷Bが存在するものと見做す補正を行う。
【0036】
続くステップS14で、各基準クランクパルス毎に推定した位相θの前回値および今回値の差の絶対値を所定値と比較し、両位相θの差の絶対値が所定値以下であれば、振動波形の位相θが正常範囲内であると判断し、ステップS15で位相θの今回値を採用する。一方、前記ステップS14で両位相θの差の絶対値が所定値を超えていれば、ステップS16で振動波形の位相θが正常範囲外であると判断し、ステップS16で異常な今回値を捨てて正常な前回値を採用する。
【0037】
例えば、図6(A)の位相θを前回値とし、図6(B)の位相θを今回値とすると、両位相θの差はゼロでありため、今回値の位相θが採用される。また図6(A)の位相θを前回値とし、図6(C)の位相θを今回値とすると、両位相θの差の絶対値が所定値を超えるため、前回値の位相θが採用される。
【0038】
そしてステップS17で、最終的に採用された振動波形およびその位相θに基づいて、アクチュエータ29のコイル34に対する電流の印加タイミングを決定する。このとき、振動波形の振幅(振動の大きさ)応じて印加される電流の大きさ(デューティ比)が制御されるのは勿論である。
【0039】
以上のように、クランクパルスから推定したエンジンEの振動波形やその位相θがノイズの影響を受けても、その影響が大きい場合に予め設定した正常な振動波形や、正常な位相の前回値を採用することで、ノイズの影響を最小限に抑えて能動型防振支持装置Mに有効な防振性能を発揮させることができる。
【0040】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0041】
例えば、実施例ではノイズによる振動波形の崩れおよび位相のずれの両方を補償する制御を行っているが、その一方の制御だけを行うことも可能である。
【0042】
また実施例では隣接する二つの山P,Pに中央に谷Bが存在するものと見做す補正を行っているが、隣接する二つの谷B,Bに中央に山Pが存在するものと見做す補正を行っても良い。
【0043】
また実施例では振動波形の位相θを基準クランクパルスから最初の山Pまでのクランクアングルで定義しているが、それを基準クランクパルスから最初の谷Bまでのクランクアングルで定義しても良い。
【0044】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形の山および谷の間隔を該振動波形の半周期と比較し、その両者のずれが所定値を超えている場合には、隣接する二つの山の中央に谷があるものと見做し、あるいは隣接する二つの谷の中央に山があるものと見做してアクチュエータへの通電を制御するので、エンジンの振動波形がノイズにより著しく崩れた場合でも、そのノイズの影響を最小限に抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させることができる。
【0045】
また請求項2に記載された発明によれば、クランクパルスから推定したエンジンの振動波形の今回値の位相を前回値の位相と比較し、その両位相の差の絶対値が所定値を超えている場合には、前回値の位相に基づいてアクチュエータへの通電を制御するので、エンジンの振動波形の位相がノイズにより著しく変動した場合でも、そのノイズの影響を最小限に抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 能動型防振支持装置の縦断面図
【図2】 図1の2−2線断面図
【図3】 図1の3−3線断面図
【図4】 図1の要部拡大図
【図5】 アクチュエータの制御手法を示すフローチャート
【図6】 エンジンの振動波形およびアクチュエータへの印加電流を示すタイムチャート
【符号の説明】
E エンジン
F 車体フレーム
U 電子制御ユニット(制御手段)
29 アクチュエータ
Claims (2)
- エンジン(E)からの荷重を支持する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置であって、
クランクパルスから推定したエンジン(E)の振動波形に基づいてアクチュエータ(29)の作動を制御する制御手段(U)を備え、
その制御手段(U)がエンジン(E)の振動波形に応じてアクチュエータ(29)への通電を制御することで、エンジン(E)の振動に伴うエンジン(E)から車体フレーム(F)への荷重伝達を防止する支持力を生じさせるようにしたものにおいて、
エンジン(E)の振動波形を示す信号に対するノイズの影響を抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるために、前記制御手段(U)は、エンジン(E)の振動波形の山および谷の間隔を該振動波形の半周期と比較し、その両者のずれが所定値を超えている場合には、隣接する二つの山の中央に谷があるものと見做し、あるいは隣接する二つの谷の中央に山があるものと見做してアクチュエータ(29)への通電を制御することを特徴とする、能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置。 - エンジン(E)からの荷重を支持する能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置であって、
クランクパルスから推定したエンジン(E)の振動波形に基づいてアクチュエータ(29)の作動を制御する制御手段(U)を備え、
その制御手段(U)がエンジン(E)の振動波形に応じてアクチュエータ(29)への通電を制御することで、エンジン(E)の振動に伴うエンジン(E)から車体フレーム(F)への荷重伝達を防止する支持力を生じさせるようにしたものにおいて、
エンジン(E)の振動波形を示す信号に対するノイズの影響を抑えて能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるために、前記制御手段(U)は、エンジン(E)の振動波形の今回値の位相を前回値の位相と比較し、その両位相の差の絶対値が所定値を超えている場合には、前回値の位相に基づいてアクチュエータ(29)への通電を制御することを特徴とする、能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御装置。
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