JP2008056772A - エチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車輌ウエザーストリップ材料として用いられているEPDMゴムの表面に、均一に塗工することができ、かつ有機溶剤タイプに劣らない密着性、耐摩耗性にすぐれた性能を有する被膜を得ることのできる、環境公害の懸念のない水系コーティング剤を提供する。
【解決手段】 水系ポリウレタン樹脂とカルボキシ変性スチレン-ブタジエンラテックスをベース樹脂とし、このベース樹脂の固形分100重量部中の上記カルボキシ変性スチレン-ブタジエンラテックスの使用量を5〜70重量部とし、これに平均粒径2〜50μmのフィラーおよび滑性向上剤、架橋剤を配合することで、EPDMゴム用水系コーティング剤を得る。
【選択図】 なし
【解決手段】 水系ポリウレタン樹脂とカルボキシ変性スチレン-ブタジエンラテックスをベース樹脂とし、このベース樹脂の固形分100重量部中の上記カルボキシ変性スチレン-ブタジエンラテックスの使用量を5〜70重量部とし、これに平均粒径2〜50μmのフィラーおよび滑性向上剤、架橋剤を配合することで、EPDMゴム用水系コーティング剤を得る。
【選択図】 なし
Description
この発明は、エチレン−プロピレンゴム(以下、EPDMゴムと略称する)用水系コーティング剤に係り、詳しくは車輌ウエザーストリップ、グラスランチャンネル等に用いられるEPDMゴムに対して、均一に塗工することができて、かつ密着性、耐摩耗性にすぐれた被膜を形成することのできる水系コーティング剤に関するものである。
従来、車輌ウエザーストリップ用材料として、クロロプレンゴム(CR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NR)、EPDMゴムなどが用いられ、耐摩耗性、耐候性などの性能を持たせるために、その表面に塗膜層が形成されている。そして、そのような塗膜層を形成する塗料組成物あるいはコーティング剤として、硬化性ポリウレタンとオルガノポリシロキサンとよりなるもの(特許文献1)、ウレタンプレポリマーとシリコーンオイル、疎水性シリカ、ポリイソシアネートからなるもの(特許文献2)、硬化性ポリウレタン樹脂とシリコーンオイルを主成分とするもの(特許文献3)、NRハロゲン変性体、トリクロロイソシアヌール酸、HDI系イソシアネートの3成分からなるもの(特許文献4)、などの溶剤タイプが知られている。
上記の溶剤タイプのコーティング剤は、それなりの塗膜を付与するものではあるが、近年、BTX規制に始まり、VOC排出量を抑制する目的など、安全衛生の観点から、有機溶剤系コーティング剤が使用できなくなり、有機溶剤を含まない水系コーティング剤が要望されている。
また、ウエザーストリップ等の主材料も、上記のクロロプレンゴム(CR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NR)、EPDMゴムなどのうち、近年では耐オゾン劣化性の向上を図る点からEPDMゴム単体を主成分とすることが多くなってきている。
而して、EPDMゴムを主材料とするウエザーストリップに塗膜を形成するための水系コーティング剤としては、特定した数種類のシリコーンエマルジョンよりなるもの(特許文献5)、アルコキシ基を有するシランおよび/またはシロキサン、カルボン酸、水からなる水系処理剤(特許文献6)、潤滑性シリコーン化合物とバインダーからなる水系塗料(特許文献7)等が知られている。
特開平8−225670号公報
特開平8−109349号公報
特開2004−83641号公報
特開2001−207105号公報
特開平7−251124号公報
特開平8−283693号公報
特開2006−27431号公報
しかしながら、上記特許文献5〜7の水系コーティング剤は、上記溶剤系コーティング剤に比べると、何れもEPDMゴムに対する密着性、耐水性、耐摩耗性の全てを満足させる被膜を得るまでに至っていない。
この発明は、上記した問題を解決すべく鋭意検討した結果、EPDMゴムに対する密着性、耐水性、耐摩耗性の全てを満足させる被膜を得ることのできる水系コーティング剤を提供することを目的とするものである。
請求項1に記載の発明は、水系ポリウレタン樹脂とカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスをベース樹脂とし、該ベース樹脂の固形分100重量部中の上記カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスの使用比率を5〜70重量部とし、さらにフィラー、滑性向上剤、架橋剤を配合してなるエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤を特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、フィラーとして、平均粒径が2〜50μmの有機系パウダーをベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜200重量部用いることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、フィラーとして、平均粒径が2〜50μmの有機系パウダーと平均粒径2〜10μmの無機系シリカをベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜200重量部用いることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、滑性向上剤として、シリコーンオイルディスパージョン、フッ素系オイルディスパージョン、ポリエチレンオイルディスパージョンの少なくとも一種を、上記ベース樹脂固形分100重量部に対して5〜70重量部用いることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、架橋剤を上記ベース樹脂固形分100重量部に対して5〜50重量部用いることを特徴とするものである。
上記請求項に記載したこの発明の水系コーティング剤によれば、EPDMゴムを用いて製造された車輌ウエザーストリップに対して、その表面に塗工性がよく、かつ密着性、耐水性、耐摩耗性などにすぐれた被膜を形成することができるのである。
以下、この発明を詳細に説明する。まず、この発明でベース樹脂の1つとして用いる水系ポリウレタン樹脂は、多くの材料を組み合わせて製造されたものを使用することができ、水系ポリウレタン樹脂にその他の高分子樹脂のエマルジョン、ディスパージョン等をブレンドしたり、あるいはそれらのモノマーと共重合またはグラフト重合することも可能である。例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等の水分散体、水溶解品等を目的に応じてブレンドすることや、反応性シリコーン樹脂を共重合させることができる。
上記した水系ポリウレタン樹脂について、その製法の一例を説明すると、末端ヒドッロキシル基を有するポリオール、即ち、平均分子量500〜5000程度のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの単独あるいは混合物に、有機ジイソシアネート類およびジアミン類や短鎖のグリコール類からなる鎖長延長剤を加えて加熱混合することで得ることができる。
また、水系ポリウレタン樹脂において、アニオン性の塩形成基を含有させ、アミン等による中和後乳化分散させる目的で、分子中にカルボキシル基を含有させる場合には、鎖長延長剤として、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール乳酸に代表されるジグリコール酸を用いればよい。
水系ポリウレタン樹脂は、上記した単量体成分を用いて、末端にイソシアネート基が残存しないように配合した後反応させ、平均分子量が30,000〜2,000,000の範囲のものが望ましい。自動車内装部品等の用途に限った場合には、光、熱、水に対する耐久性を向上させる目的で、ポリオール成分としてポリカーボネートジオールを主に使用し、イソシアネート成分には、脂肪族、脂環族系タイプを用いることが好ましい。
この発明で用いる、水系ポリウレタン樹脂の上記で一例を説明した製法は、界面活性剤を用いた強制乳化法、アセトン法、ケチミンケタジン法、アニオン性の塩形成基を含有させ、中和することで乳化分散させるアイオノマー法などの方法によってでもよく、反応時に有機溶剤を用いた場合には、反応後これを除去することが必要である。
上記水系ポリウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて、ポリイソシアネート、カルボジイミド、メラミン、エポキシ、オキサゾリン等の架橋剤を用いて架橋させることも可能である。これらの架橋剤の添加量としては、ベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜50重量部(好ましくは10〜20重量部)が適当である。これは、架橋剤の量が5重量部より少ない場合には、EPDMゴム成形品上に得られた被膜の密着強度が十分に上がらないために耐摩耗性が不足し、また50重量部より多く用いると、皮膜の延伸性が低下し、白化を生じる恐れがあるためである。
この発明で、上記した水系ポリウレタン樹脂とともにベース樹脂の一つとして用いるカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスとは、スチレン、ブタジエンモノマーを主成分とし、これにメタクリル酸、フマール酸などのカルボキシル基を有するビニルモノマーを数%共重合することによって得られる、弾性に富む合成ラテックスである。
このようなカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスの使用量は、水系ポリウレタン樹脂とカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスからなるベース樹脂の固形分100重量部中に5〜70重量部(好ましくは20〜50重量部)が適当である。これは、ベース樹脂中におけるカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスの量が5重量部より少ないと、得られたコーティング剤にて形成したEPDMゴム成型品表面への皮膜の密着性が十分でなく、また70重量部より多く用いると、皮膜強度が低下し、耐磨耗性が不十分となるためである。
フィラー(充填剤)としては、平均粒径が2〜50μm(好ましくは4〜20μm)の有機系パウダーを用いる。この粒径が2μmより小さいと、適度な艶消し感が得られず、50μmより大きいと均一な皮膜表面が得られない。
このような有機系パウダーとしては、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などがあり、これらの中から摩擦抵抗値の低いものを用いればよい。
また、この発明では、EPDMゴムからなるウエザーストリップ等の成形品表面に、艶消し被膜を与えるものであるが、上記の有機系パウダーにより得られる艶消し感を、より向上させるためには、耐磨耗性を損なわない程度で平均粒径2〜10μm程度に分散した無機系シリカを、有機系パウダーとのフィラー合計中に30%以下(好ましくは20%以下)の範囲で用いることができる。この無機系シリカの使用量が有機系パウダーとのフィラー合計中で30%を超えると、摩耗抵抗が大きくなり、耐磨耗性も劣るので好ましくない。
上記のような有機系パウダーあるいは有機系パウダーと無機系シリカを使用するフィラーの総添加量としては、ベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜200重量部(好ましくは10〜100重量部)が適当である。これは、5重量部以下では摩擦抵抗が大きくなって耐摩耗性に劣り、また200重量部より多く用いると、塗膜強度が低下して密着性に劣るためである。
以下、製造例、実施例によりこの発明を詳細に説明する。この発明はこれらの製造例および実施例によって何ら限定されるものではない。なお、部数はすべて重量部である。
(製造例) 水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1の製造
(製造例) 水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1の製造
両末端にヒドロキシル基を有する平均分子量2000のポリカーボネートジオール1500部、2,2−ジメチロールプロピオン酸67部を配合し、窒素気流下で均一に混合した。次いで、この混合物にジシクロヘキシルメタン4,4′−ジイソシアネート524部を加えて110℃で3時間保持した後、トリエチルアミン50.5部を含有する20℃のイオン交換水7500部中にホモミキサーを用いて強力に攪拌して乳化させた。
次いで、イオン交換水1280部に混合した3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン127.5部を添加し、30分間保持した後、固形分濃度が20.5%、30℃における粘度が20mPa・sの水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1(以下、これをPUD−1という)を得た。
実施例1〜4
上記製造例で得た水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1を用い、これにカルボキシル基変性スチレン−ブタジエンラテックス(旭化成ケミカル社製、商品名A−7609、固形分濃度50%)、および有機系フィラーとして、平均粒径15μmのポリエチレンパウダーと平均粒径10μmのシリコーンパウダーを、無機系シリカとして平均粒径2.2μmのシリカ粉末(米国デグサ社製、TS−100)をそれぞれ用い、さらに架橋剤として、固形分濃度40%のカルボジイミド化合物(日清紡社製、商品名 カルボジライトE−04)または固形分濃度80%のメラミン化合物(三木理研社製、商品名 MM−630)を用いて、これらを下記表1に示すように固形分比率で配合して4種の水系コーティング剤を得た。
上記製造例で得た水系ポリウレタン樹脂分散液PUD−1を用い、これにカルボキシル基変性スチレン−ブタジエンラテックス(旭化成ケミカル社製、商品名A−7609、固形分濃度50%)、および有機系フィラーとして、平均粒径15μmのポリエチレンパウダーと平均粒径10μmのシリコーンパウダーを、無機系シリカとして平均粒径2.2μmのシリカ粉末(米国デグサ社製、TS−100)をそれぞれ用い、さらに架橋剤として、固形分濃度40%のカルボジイミド化合物(日清紡社製、商品名 カルボジライトE−04)または固形分濃度80%のメラミン化合物(三木理研社製、商品名 MM−630)を用いて、これらを下記表1に示すように固形分比率で配合して4種の水系コーティング剤を得た。
比較例1〜4
上記実施例1〜4と同様にして、上記の材料を用いて下記表2に示すように固形分比率でそれぞれ配合して4種の水系コーティング剤を得た。
上記実施例1〜4と同様にして、上記の材料を用いて下記表2に示すように固形分比率でそれぞれ配合して4種の水系コーティング剤を得た。
上記実施例1〜4および比較例1〜4で得た各水系コーティング剤をEPDMゴムシート上にエアースプレーガンを用いて塗工し、80℃で3分間ギヤオーブンで予備乾燥したのち、さらに180℃で3分間本乾燥することによって膜厚20〜30μmの被膜を形成した。
上記実施例1〜4、比較例1〜4で表面に被膜を形成したEPDMゴムシートについて、均一塗工性、耐摩耗性、密着性、耐候性等の性能テストを行った。その結果は表1および表2に示した。なお、これらテストの評価方法および評価基準は次の通りである。
均一塗工性:上記で得た表面に被膜を形成したEPDMゴムシートについて目視によって ○:良好 △:やや劣る ×:劣る
の3段階評価を行った。
の3段階評価を行った。
耐摩耗性試験:上記で得た表面に被膜を形成したEPDMゴムシートを平面摩耗試験機にセットし、摩擦子として3.5mm厚さのガラスを用い、30N荷重下で10000回往復摩擦した後の被膜の表面状態を次の5段階で評価した。
5:変化なし 4:僅かに摩擦跡あり 3:摩擦跡あり 2:摩擦により被膜が部分的に剥がれている 1:摩擦により被膜が全面剥がれ落ちている。
5:変化なし 4:僅かに摩擦跡あり 3:摩擦跡あり 2:摩擦により被膜が部分的に剥がれている 1:摩擦により被膜が全面剥がれ落ちている。
密着性試験:上記で得た表面に被膜を形成したEPDMゴムシートの被膜同士を瞬間接着剤で貼り合わせ、1cm幅でカットした試片を引っ張り試験機で50mm/分の速度で引っ張り、剥離する時の強度を測定した。
耐候性試験:上記で得た表面に被膜を形成したEPDMゴムシートをサンシャインカーボンアーク耐候試験機にブラックパネル温度83℃の条件でセットし、200時間照射後、その被膜表面状態を次の5段階で評価した。
5:艶状態に変化なし 4:艶状態に殆ど変化なし 3:艶状態に変化あり
2:艶状態のみならず、部分的に白化現象あり 1:艶変化大きく全体的に白化現象あり
5:艶状態に変化なし 4:艶状態に殆ど変化なし 3:艶状態に変化あり
2:艶状態のみならず、部分的に白化現象あり 1:艶変化大きく全体的に白化現象あり
上記表1および表2から、この発明で得た水系コーティング剤を用いてEPDMゴムシート上に形成した被膜は何れも良好な結果を示した。これに対して比較例による被膜は、全て均一塗工性、耐摩耗性に劣っていた。
Claims (5)
- 水系ポリウレタン樹脂とカルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスをベース樹脂とし、該ベース樹脂の固形分100重量部中の上記カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックスの使用比率を5〜70重量部とし、さらにフィラー、滑性向上剤、架橋剤を配合してなることを特徴とするエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤。
- フィラーとして、平均粒径が2〜50μmの有機系パウダーをベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜200重量部用いることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤。
- フィラーとして、平均粒径が2〜50μmの有機系パウダーと平均粒径が2〜10μmの無機系シリカをベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜200重量部用いることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤。
- 滑性向上剤として、シリコーンオイルディスパージョン、フッ素系オイルディスパージョン、ポリエチレンオイルディスパージョンの少なくとも一種を、上記ベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜70重量部用いることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤。
- 架橋剤を上記ベース樹脂の固形分100重量部に対して5〜50重量部用いることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−プロピレンゴム用水系コーティング剤。
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