JP2008050656A - クロムめっき製品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より耐食性等が改善されたクロムめっき製品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロクラックを有するクロムめっき層の表面とマイクロクラックの破面部とに不働態皮膜を有することにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品を提供することができる。また、クロムめっき製品において、例えば市場での発生が予想される形態及び数のマイクロクラックを製造時に予め発生させ、かつマイクロクラックの破面部にまで不働態化処理を施すことにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品の製造方法を提供することができる。
【選択図】図1
【解決手段】マイクロクラックを有するクロムめっき層の表面とマイクロクラックの破面部とに不働態皮膜を有することにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品を提供することができる。また、クロムめっき製品において、例えば市場での発生が予想される形態及び数のマイクロクラックを製造時に予め発生させ、かつマイクロクラックの破面部にまで不働態化処理を施すことにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品の製造方法を提供することができる。
【選択図】図1
Description
本発明はクロムめっき製品およびクロムめっき製品の製造方法に関する。
装飾クロムめっきは自動車等の外装意匠部品(ラジエータグリル、ドアハンドル、マーク等)等で、主にその白銀色から美的装飾性のために施されることが通常である。金属または樹脂等の基材(めっきされる前の成形された外装意匠部品)上への装飾クロムめっきは、下地に硫黄なしニッケルめっき、光沢ニッケルめっき、ジュールニッケルめっきの順に施した後に、ジュールニッケルめっきの表面に0.1μm〜0.3μmの厚さのクロムめっきを施す方法が一般的である(材料の構成例としてはJIS H 8630:プラスチック上の装飾用電気めっきがある)。
図5に、金属または樹脂等の基材50表面へ装飾クロムめっきが施されたクロムめっき製品3の一例の表面部分の断面模式図を示す。表面にクロムめっき層56が層形成されるまでに複数の金属層が下地として形成されている。例えば、基材50表面の上には、表面平滑性向上等の理由で下地銅めっき層52が形成されており、下地銅めっき層52上にはニッケルめっき層54が形成されている。そのニッケルめっき層54の表面にクロムめっき層56が形成されている。この下地銅めっき層52、ニッケルめっき層54、クロムめっき層56を併せて装飾クロムめっき層70が構成され、この装飾クロムめっき層70が基材50に被覆形成されることで、クロムめっき層56の白銀色を活かした自動車の外装意匠部品等などが提供される。この装飾クロムめっき層70の厚みは10μm〜100μm程度であることが通常である。
装飾クロムめっき層70は、自動車等において、ラジエータグリル、ドアハンドル、マーク等の外気と直接接触する外装意匠部品等の装飾に用いられる為、その耐食性が問題となる。図5の装飾クロムめっき層70の金属層構造は、耐食性向上の為の多数の防食構造をとっている。クロムめっき層56とニッケルめっき層54とでは、ニッケルめっき層54が電気化学的に腐食しやすく、最表面のクロムめっき層56よりも下地のニッケルめっき層54が優先的に腐食する。クロムめっき層56の表面には、その自己不働態化能力により、酸化皮膜である不働態皮膜58が自然形成され、ニッケルめっき層54よりも耐食性が高いからである。この不働態皮膜58は水和オキシ水酸化クロムであると推定されている。ニッケルめっき層54の電気化学的腐食を防止するために、ニッケルめっき層54をクロムめっき層56の下地のジュールニッケル層(図示せず)とその下地の光沢ニッケルめっき層54aとその下地の光沢剤に含まれる硫黄分を微量化した硫黄なしニッケルめっき層54bとの複数の層構造とし、耐食性を向上させている。耐食性が向上するのは、光沢ニッケルめっき層54aと比較して硫黄なしニッケルめっき層54bが貴電位シフトであることによる。この電位差により腐食は、光沢ニッケル層54a内で面方向(図5の横方向)に進行し、硫黄なしニッケルめっき層54bの方向(図5の縦方向)への腐食の進行が抑制される。よって、腐食が硫黄なしニッケルめっき層54bおよび下地銅めっき層52へと進展してめっき層の剥がれなどの外観不良となるまでの時間が延びることになる。
以上のように表面のクロムめっき層56よりも下地のニッケルめっき層54が優先的に腐食する。したがって、美的外観を保持する表面のクロムめっき層56は、腐食し難く、長期間に亘って見栄えを維持し、外装意匠部品等の美的外観が保持されていた。
しかしながら、近年、上記腐食状況とは異なる腐食状況が認められるようになってきている。すなわち、図6に示される腐食状況のように、クロムめっき層56が下地のニッケルめっき層54よりも優先的に腐食し、クロムめっき層56が溶出した溶出穴60が表われる。クロムめっき層56が下地のニッケルめっき層54よりも優先的に腐食するので、短期間で見栄えが悪くなり、外装意匠部品等の美的外観が保持されなくなってしまうことが増えている。
この現象は、特に自動車等の外装意匠部品(ラジエータグリル、ドアハンドル、マーク等)で多く見受けられ、冬期の道路凍結防止剤が泥などと一緒にこれら外装意匠部品に固着している状態で発生しやすい。本発明者らの一考察として、これは、近年の冬期の道路凍結防止剤の散布量の増加によるものであると考えられる。道路凍結防止剤中には腐食を促進させる物質(塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム等)からなる融雪塩が含まれている。これらの塩化物は泥などの土壌成分と混合されると、塩基置換されて加水分解を起こし、少量の塩酸を生成する。一方、上記の通り、クロムめっき層56の表面には図5のように不働態皮膜58が自然形成されており、それが十分に自然形成されていれば、生成する塩酸等により腐食されることはほとんどないが、クロムめっき直後は不働態皮膜58の自然形成が十分ではなく、上記環境に遭遇するとクロムめっき層56は容易に腐食して、図6のように溶出穴60を形成してしまう。
この防止策として、例えば特許文献1には、クロムめっき層の表面に酸化皮膜すなわち不働態皮膜をクロムめっき直後により強固に形成させることが提案されている。
一方、特許文献2には、金属基体表面に被覆されたポーラスクロムめっき層の微細孔部及び/又はクラック部と表面に、クロム酸化物とリン酸化物とが混在するセラミック皮膜、又はクロム酸化物とリン酸化物とが混在するマトリックスにセラミック粒子が分散したセラミック皮膜を形成してなる耐摩耗性摺動部材が記載されている。
また、特許文献3〜5には、基材表面に形成されたセラミック層に微細な亀裂や縦割れを設け、熱応力を緩和してセラミック層の剥離を防止することが記載されている。
クロムは硬くて脆い性質を有しており、さらにクロムめっき層には製造時の電着応力が残留しているため、その後の使用環境下において強い力が加わったり、冷却加熱が繰り返されたりした場合、図7のように、クロムめっき層56にクラック62が発生しやすい。特許文献1のように、クロムめっき層56に事前に不働態皮膜58を形成しておいても、不働態皮膜58の形成後に発生したクラック62の破面部64には不働態皮膜58がないため活性であり、その後破面部64に不働態皮膜58が自然形成される前に道路凍結防止剤等が付着する環境に遭遇すると、クラック62の破面部64を起点としてクロムめっき層56が腐食してしまう。
一方、特許文献2のような、ポーラスクロムめっき層の微細孔部及び/又はクラック部と表面に形成されたセラミック皮膜では、上記環境に遭遇するとクロムめっき層は容易に腐食してしまう。
また、特許文献3〜5の微細な亀裂や縦割れを設けたセラミック層では、熱応力を緩和することが目的であり、腐食については全く考慮されていない。
本発明は、より耐食性が改善されたクロムめっき製品およびその製造方法である。
本発明は、マイクロクラックを有するクロムめっき層と、前記クロムめっき層の表面及び前記マイクロクラックの破面部を被覆する不働態皮膜とを含む複合皮膜が基材表面に形成されているクロムめっき製品である。
また、前記クロムめっき製品において、前記複合皮膜についての、NaCl濃度が5重量%でpH10〜11のNaCl水溶液中での基準電極をAg/AgClとした場合の自然電極電位が−0.3V以上の貴電位であることが好ましい。
また、本発明は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、前記クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるマイクロクラック発生工程と、前記マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、前記クロムめっき層の表面及び前記マイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成する不働態化工程と、を含むクロムめっき製品の製造方法である。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記マイクロクラックを加熱、冷却、またはそれらの組み合わせにより発生させることが好ましい。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記加熱が、気体中あるいは液体中での全体加熱処理、及び電磁波照射による表面加熱処理のうちの少なくとも1つにより行われることが好ましい。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記不働態化処理は、加熱酸化処理、化学酸化処理及び陽極電解処理のうち少なくとも1つであることが好ましい。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記加熱酸化処理は、酸素、過酸化水素、オゾン及び水蒸気のうち少なくとも1つを含む酸化性ガスを含有する気体中での全体加熱処理、及び電磁波照射による表面加熱処理のうちの少なくとも1つにより行われることが好ましい。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記化学酸化処理は、大気開放下での水中処理、過酸化水素水処理及びオゾン水処理のうち少なくとも1つである酸化性水溶液への浸漬処理であることが好ましい。
また、前記クロムめっき製品の製造方法において、前記陽極電解処理は、前記めっき工程におけるめっき浴による逆電解処理、及び酸性水溶液中での陽極電解処理のうち少なくとも1つであることが好ましい。
さらに本発明は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるとともに、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成するマイクロクラック発生兼不働態化工程と、を含むクロムめっき製品の製造方法である。
本発明では、マイクロクラックを有するクロムめっき層の表面とマイクロクラックの破面部とに不働態皮膜を有することにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品を提供することができる。
また、本発明では、クロムめっき製品において、例えば市場での発生が予想される形態及び数のマイクロクラックを製造時に予め発生させ、かつマイクロクラックの破面部にまで不働態化処理を施すことにより、より耐食性が改善されたクロムめっき製品の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
<クロムめっき製品>
図1には、本実施形態に係るクロムめっき製品1の一例の断面模式図を示す。基材10の表面には、表面平滑性向上等の理由で下地銅めっき層12が形成されている。下地銅めっき層12上にはニッケルめっき層14が形成されている。そのニッケルめっき層14の表面にマイクロクラック20を有するクロムめっき層16が形成されている。基材10表面に形成されているクロムめっき層16の表面及びマイクロクラック20の破面部22には不働態皮膜18が形成されている。また、ニッケルめっき層14は、耐食性向上のために、クロムめっき層16の下地のジュールニッケル層(図示せず)とその下地の光沢ニッケルめっき層14aとその下地の光沢剤に含まれる硫黄分を微量化した硫黄なしニッケルめっき層14bとの複数の層構造となっている。このように、基材10の表面には、下地銅めっき層12、ニッケルめっき層14、クロムめっき層16を含む装飾クロムめっき層30と不働態皮膜18とを併せた複合皮膜が形成されている。本実施形態において、基材10の表面上にクロムめっき層16が形成されていればよく、クロムめっき層16の下(クロムめっき層16と基材10との間)に形成される下地層はあってもなくてもよく、下地層の種類についても特に制限はない。
図1には、本実施形態に係るクロムめっき製品1の一例の断面模式図を示す。基材10の表面には、表面平滑性向上等の理由で下地銅めっき層12が形成されている。下地銅めっき層12上にはニッケルめっき層14が形成されている。そのニッケルめっき層14の表面にマイクロクラック20を有するクロムめっき層16が形成されている。基材10表面に形成されているクロムめっき層16の表面及びマイクロクラック20の破面部22には不働態皮膜18が形成されている。また、ニッケルめっき層14は、耐食性向上のために、クロムめっき層16の下地のジュールニッケル層(図示せず)とその下地の光沢ニッケルめっき層14aとその下地の光沢剤に含まれる硫黄分を微量化した硫黄なしニッケルめっき層14bとの複数の層構造となっている。このように、基材10の表面には、下地銅めっき層12、ニッケルめっき層14、クロムめっき層16を含む装飾クロムめっき層30と不働態皮膜18とを併せた複合皮膜が形成されている。本実施形態において、基材10の表面上にクロムめっき層16が形成されていればよく、クロムめっき層16の下(クロムめっき層16と基材10との間)に形成される下地層はあってもなくてもよく、下地層の種類についても特に制限はない。
マイクロクラック20は、その破面部22をクロムめっき層16のほぼ厚さ方向とし、クロムめっき層16の表面から光沢ニッケルめっき層14aにほぼ到達するクラックである。マイクロクラック20は、不働態皮膜18の形成前にクロムめっき層16に予め形成されたものであり、不働態皮膜18はクロムめっき層16表面だけでなくマイクロクラック20の破面部22にまで十分に形成されている。
クロムめっき層16におけるマイクロクラック20の数は、クロムめっき製品のその後の使用環境下で発生するクラックと同等あるいはそれ以上の数であることが好ましい。すなわちマイクロクラック20は、クロムめっき製品のその後の使用環境に応じて予め発生させたものである。具体的には、−40℃から80℃の使用環境下で発生するマイクロクラック20の平均的な数である。クロムめっき製品1のその後の使用環境下で発生するクラックと同等あるいはそれ以上の数のマイクロクラック20の破面部22にまで不働態皮膜18が予め形成されていることにより、道路凍結防止剤等が付着する環境等に遭遇しても、図5のような従来の不働態皮膜に比べて高い耐食性を得ることができる。
クロムめっき層16の厚みは、0.1〜0.8μmの範囲であることが好ましい。
本実施形態において、下地の光沢ニッケルめっき層14aの局部腐食を抑制するために、図2のように表面のクロムめっき層16に微細孔(マイクロポーラス)24等を多数設けることもできる。微細孔24は光沢ニッケルめっき層14a上の非導電性微粒子26の効果により形成されたものである。この多数の微細孔24により腐食電流が分散され、光沢ニッケルめっき層14aの局部腐食が抑制され、耐食性が向上する。微細孔24の数は通常2000〜3000個/cm2の範囲である。
本実施形態に係るクロムめっき製品において、装飾クロムめっき層30と不働態皮膜18とを併せた複合皮膜が、pH10〜11で5重量%のNaCl水溶液中での基準電極をAg/AgClとした場合の自然電極電位が−0.3V以上の貴電位を有することが好ましい。すなわち、不働態皮膜18は、装飾クロムめっき層30と不働態皮膜18とを併せた複合皮膜が、pH10〜11で5重量%のNaCl水溶液中での基準電極をAg/AgClとした場合の自然電極電位が−0.3V以上の貴電位という電位条件となるように酸化処理等を制御して形成されたものである。不働態皮膜18の主成分は水和オキシ水酸化クロム(CrOOH)である。
このような電位条件に形成されているかどうかを判定する判定方法は、図3の通りである。基材10表面に装飾クロムめっき層30とその表面に被覆形成された不働態皮膜18とを有するクロムめっき製品1をNaCl水溶液32(35℃)中に浸漬する。このNaCl水溶液32は、NaClを5重量%および炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質を含み、pHが10〜11である。NaCl水溶液32中には基準電極34となるAg/AgCl電極を、このクロムめっき製品1の対極として浸漬させる。この基準電極34とクロムめっき製品1とを電位差計36を介して導線でつなぐ。この状態で電位差計36が示す電位を測定し、この電位が−0.3V以上の貴電位であれば耐食性として十分であると判定する。一方、−0.4V未満であれば耐食性が不十分であると判定する。
基材10としては、クロムめっきを施せるものであればよく特に制限はないが、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、PC(ポリカーボネート)等の樹脂、鉄、ステンレス、亜鉛合金等の金属等が挙げられる。
本実施形態は、装飾クロムめっき層以外にも、硬質クロムめっき皮膜にも適用できる。また、3価クロム浴によるクロムめっき層にも適用できる。6価クロム浴によるクロムめっき層は皮膜電位が3価クロム浴によるめっき層よりも大きく、自然不働態皮膜の形成が遅いため、めっき後に強制的に酸化皮膜を形成させた場合の向上効果が大きい。
下地銅めっき層12、ニッケルめっき層14(ジュールニッケル層、光沢ニッケルめっき層14a、硫黄なしニッケルめっき層14b等)については従来公知のものを使用することができる。
上記クロムめっき製品の装飾クロムめっき層30の厚みが0.05μm〜5.0μmであると好適である。0.5μmよりも薄いものであると装飾クロムめっき層30が薄すぎて、美的外観である意匠性、めっき腐食耐久性の確保が難しい場合がある。しかしながら、5.0μmを超える厚さをもつものであると従来の不働態皮膜を形成させないクロムめっき製品であっても、十分なめっき腐食耐久性を確保でき、不働態皮膜を形成させる意義が薄れる場合がある。
本実施形態に係るクロムめっき製品は、一般のクロムめっき製品等に全般的に適用することができる。特に、優れた耐食性を有するため、例えば自動車のラジエータグリル、ドアハンドル、マーク等の外観意匠部品などの装飾めっき製品に適用することができる。
<クロムめっき製品の製造方法>
本実施形態に係るクロムめっき製品の製造方法は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるマイクロクラック発生工程と、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成する不働態化工程と、を含む。または、本実施形態に係るクロムめっき製品の製造方法は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるとともに、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成するマイクロクラック発生兼不働態化工程と、を含む。
本実施形態に係るクロムめっき製品の製造方法は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるマイクロクラック発生工程と、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成する不働態化工程と、を含む。または、本実施形態に係るクロムめっき製品の製造方法は、基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるとともに、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成するマイクロクラック発生兼不働態化工程と、を含む。
(1)めっき工程
従来公知の方法で基材10の表面に、下地銅めっき層12、ニッケルめっき層14(硫黄なしニッケルめっき層14b、光沢ニッケルめっき層14a、ジュールニッケル層(図示せず))、クロムめっき層16の順番でめっきを行う(図4(a))。クロムめっき層16の形成方法は電気めっき法が好適であるが、スパッタリングによるドライクロムめっきを採用することもできる。本実施形態において、基材10の表面上にクロムめっきが施されればよく、下地層については特に制限はない。このクロムめっき層16に以下の耐食性改善処理(マイクロクラック発生+不働態化)を行う。
従来公知の方法で基材10の表面に、下地銅めっき層12、ニッケルめっき層14(硫黄なしニッケルめっき層14b、光沢ニッケルめっき層14a、ジュールニッケル層(図示せず))、クロムめっき層16の順番でめっきを行う(図4(a))。クロムめっき層16の形成方法は電気めっき法が好適であるが、スパッタリングによるドライクロムめっきを採用することもできる。本実施形態において、基材10の表面上にクロムめっきが施されればよく、下地層については特に制限はない。このクロムめっき層16に以下の耐食性改善処理(マイクロクラック発生+不働態化)を行う。
また、下地銅めっき層12、硫黄なしニッケルめっき層14bを形成した後に、非導電性微粒子(SiC等)を共析するニッケルめっきを施した後、クロムめっき層16を形成することにより、クロムめっき層16に図2のようなマイクロポーラス24を形成してもよい。
(2)マイクロクラック発生工程
耐食性改善処理としてまず、クロムめっき層16にマイクロクラック20を発生させる(図4(b)、マイクロクラック発生工程)。本実施形態において、マイクロクラック20を発生させる方法は特に制限されないが、樹脂等の基材10、下地銅めっき層12及びニッケルめっき層14と、クロムめっき層16との熱膨張係数の差を利用して、加熱、冷却、またはそれらの組み合わせによりヒートショックを与えることにより発生させることができる。特に、加熱と冷却との組み合わせである冷熱サイクル法は、実際にクロムめっき層が使用環境下でマイクロクラックを発生するのを模した加速法であり、使用環境下で発生する最大限のマイクロクラックを発生させることができるため、好適に使用することができる。
耐食性改善処理としてまず、クロムめっき層16にマイクロクラック20を発生させる(図4(b)、マイクロクラック発生工程)。本実施形態において、マイクロクラック20を発生させる方法は特に制限されないが、樹脂等の基材10、下地銅めっき層12及びニッケルめっき層14と、クロムめっき層16との熱膨張係数の差を利用して、加熱、冷却、またはそれらの組み合わせによりヒートショックを与えることにより発生させることができる。特に、加熱と冷却との組み合わせである冷熱サイクル法は、実際にクロムめっき層が使用環境下でマイクロクラックを発生するのを模した加速法であり、使用環境下で発生する最大限のマイクロクラックを発生させることができるため、好適に使用することができる。
加熱の方式は特に制限はないが、気体中あるいは液体中での全体加熱方式、及び電磁波照射による表面加熱方式のうちの少なくとも1つを適用することができる。具体的には、気体中での全体加熱方式としては温風加熱等を、液体中での全体加熱方式としては水槽加熱等を、電磁波照射による表面加熱方式としてはレーザ光加熱、マイクロ波加熱、ミリ波加熱等を適用することができる。電磁波照射による表面加熱方式によれば、気体中または液体中での全体加熱方式に比べて短時間でマイクロクラック20を発生させることができる。
加熱温度は特に制限はないが、上限は好ましくは基材10の耐熱温度であり、例えば装飾クロムめっきに多用されるABS樹脂の場合は、70〜80℃が加熱上限温度となる。なお、電磁波照射による表面加熱方式は瞬間的には高温となるが、めっき層が選択的に加熱されるため、基材の耐熱温度以上の加熱を行うことができる利点がある。
冷却の方式は特に制限はないが、水槽冷却等の液体中での全体冷却方式、冷風冷却等の気体中での全体冷却方式等を適用することができる。
冷却温度は特に制限はないが、実用的には5℃〜−40℃の範囲が適当である。
冷熱サイクル法の場合は、加熱後冷却を1サイクルとして1〜10サイクル実施することが好ましく、2〜10サイクル実施することがより好ましい。
クロムめっき層16に発生させるマイクロクラック20の数は、上述したようにクロムめっき製品のその後の使用環境下で発生するクラックと同等あるいはそれ以上の数であることが好ましい。すなわちマイクロクラック20を、クロムめっき製品のその後の使用環境に応じて予め発生させる。具体的には、−40℃から80℃の使用環境下で発生するマイクロクラック20の平均的な数である。
(3)不働態化工程
次に、マイクロクラック20を発生させたクロムめっき層16に不働態化処理を施し、クロムめっき層16の表面及びマイクロクラック20の破面部22に不働態皮膜18を形成する(図4(c)、不働態化工程)。図2のようなマイクロポーラス24を形成した場合は、マイクロポーラス24の内側面にも不働態皮膜18が形成される。
次に、マイクロクラック20を発生させたクロムめっき層16に不働態化処理を施し、クロムめっき層16の表面及びマイクロクラック20の破面部22に不働態皮膜18を形成する(図4(c)、不働態化工程)。図2のようなマイクロポーラス24を形成した場合は、マイクロポーラス24の内側面にも不働態皮膜18が形成される。
本実施形態において、不働態化する方法は特に制限されないが、例えば、加熱酸化処理、化学酸化処理及び陽極電解処理のうち少なくとも1つを適用することができる。
加熱酸化処理は、酸化性の雰囲気下での加熱処理であり、酸素、過酸化水素、オゾン、水蒸気等のうち少なくとも1つを含む酸化性ガスを含有する気体中での全体加熱処理、及び電磁波照射による表面加熱処理のうちの少なくとも1つを適用することができる。
化学酸化処理は、広義には上記酸化性ガス中での加熱酸化処理も含まれるが、ここでは液中処理を意味し、例えば、大気開放下での水中処理、過酸化水素水処理及びオゾン水処理等のうち少なくとも1つである酸化性水溶液への浸漬処理である。これらの中では、過酸化水素水処理が不働態皮膜を安定に形成することができるため好ましい。処理液の温度は特に制限はないが、基材10の耐熱温度以下でできるだけ高い温度であることが、クロムめっき層16のマイクロクラック20の破面部22までの不働態化処理が短時間で完了するため好ましい。
陽極電解処理は、電解液中で電気化学的にクロムめっき層16表面及びマイクロクラック20の破面部22を不働態化処理するものであり、電解液としてクロムめっき浴をそのまま使用し、クロムめっき終了後、通電の極性を陽極側に切り換える、いわゆる逆電解処理を適用することができる。また、別に用意した電解液中での陽極電解処理でもよく、電解液の液性がpH=1〜5程度の酸性である酸性水溶液中での陽極電解処理が好ましい。これはアルカリ性では、一旦生成した不働態化皮膜が過不働態溶解しやすく、効率的な不働態化処理が難しくなるからである。
本実施形態において、マイクロクラック20の発生工程が必要であるが、その手法によってはマイクロクラック20発生と共に破面部22を速やかに不働態化して、マイクロクラック発生工程と不働態化処理工程とを兼ねてもよい(マイクロクラック発生兼不働態化工程)。マイクロクラック発生工程と不働態化処理工程とを兼ねることにより、マイクロクラック20が発生すると共に破面部22の不働態化が起こるため、不働態化処理を十分に行うことができ、さらに耐食性改善処理を短時間に行うことができる。マイクロクラック20発生と共に速やかに不働態化する方法としては、上記マイクロクラック発生方法と不働態化方法とを適宜組み合わせればよいが、例えば、大気開放下での水処理、過酸化水素水処理及びオゾン水処理等のうち少なくとも1つである酸化性水溶液への浸漬処理を冷熱サイクル法にて行う方法等を適用することができる。
以上のように、本実施形態に係るクロムめっき製品およびクロムめっき製品の製造方法によれば、クロムめっき製品において市場での発生が予想される形態及び数のマイクロクラックを製造時に予め十分に発生させ、かつマイクロクラックの破面部にまで不働態化処理を施すことにより、道路凍結防止剤等が付着する環境等に遭遇しても、従来の皮膜では得られない高い耐食性能を得ることができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
本実施形態に係るクロムめっき製品を用いて、従来のクロムめっき製品との比較による腐食試験を行った。比較試験の結果を表1に示した。
<実施例1>
(クロムめっき製品の製造)
試験対象となるクロムめっき製品の製造方法は以下の通りである。
(1)めっき工程
基材(材質:ABS)に銅およびニッケル下層めっきを施し、さらに、非導電性微粒子(SiC)を共析するニッケルめっきを施した後、6価のクロムイオンを含むクロムめっき液を用いて、厚み0.2μmのクロムめっき層を形成した。クロムめっき層には下地のニッケルめっき層の非導電性微粒子の効果により2000個/cm2以上のマイクロポーラスを形成した。このクロムめっき後、以下の耐食性改善処理を行った。
(クロムめっき製品の製造)
試験対象となるクロムめっき製品の製造方法は以下の通りである。
(1)めっき工程
基材(材質:ABS)に銅およびニッケル下層めっきを施し、さらに、非導電性微粒子(SiC)を共析するニッケルめっきを施した後、6価のクロムイオンを含むクロムめっき液を用いて、厚み0.2μmのクロムめっき層を形成した。クロムめっき層には下地のニッケルめっき層の非導電性微粒子の効果により2000個/cm2以上のマイクロポーラスを形成した。このクロムめっき後、以下の耐食性改善処理を行った。
(2)マイクロクラック発生工程
めっきを施したサンプルを80℃恒温槽中1時間加熱した(気体中での全体加熱方式)後、5℃の水槽中に10分間浸漬(液体中での全体冷却方式)する処理(冷熱サイクル法)を1サイクル実施し、マイクロクラックを発生させた。
めっきを施したサンプルを80℃恒温槽中1時間加熱した(気体中での全体加熱方式)後、5℃の水槽中に10分間浸漬(液体中での全体冷却方式)する処理(冷熱サイクル法)を1サイクル実施し、マイクロクラックを発生させた。
(3)不働態化工程
マイクロクラック発生させたサンプルを、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行い、クロムめっき製品を得た。その後、市場を模擬した冷熱(−30℃×1hr+70℃×1hr)負荷を4サイクル加え、以下の評価及び腐食試験に供した。
マイクロクラック発生させたサンプルを、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行い、クロムめっき製品を得た。その後、市場を模擬した冷熱(−30℃×1hr+70℃×1hr)負荷を4サイクル加え、以下の評価及び腐食試験に供した。
(クロムめっき製品の評価)
図3に示すように、クロムめっき製品を、5重量%のNaCl水溶液に0.5重量%の炭酸水素ナトリウムを添加してpH11にした水溶液(35℃)中に浸漬した。また、NaCl水溶液中には基準電極となるAg/AgCl電極を、このクロムめっき製品の対極として浸漬させた。この基準電極とクロムめっき製品とを電位差計(エレクトロメータ:北斗電工(株)製、HE−104型)を介して導線でつなぎ、この状態で電位差計が示す電位を測定した。この電位が−0.3V以上の貴電位であれば耐食性として十分であると判定し、−0.4V未満であれば耐食性が不十分であると判定した。
図3に示すように、クロムめっき製品を、5重量%のNaCl水溶液に0.5重量%の炭酸水素ナトリウムを添加してpH11にした水溶液(35℃)中に浸漬した。また、NaCl水溶液中には基準電極となるAg/AgCl電極を、このクロムめっき製品の対極として浸漬させた。この基準電極とクロムめっき製品とを電位差計(エレクトロメータ:北斗電工(株)製、HE−104型)を介して導線でつなぎ、この状態で電位差計が示す電位を測定した。この電位が−0.3V以上の貴電位であれば耐食性として十分であると判定し、−0.4V未満であれば耐食性が不十分であると判定した。
(腐食試験)
腐食試験はカオリン30g、塩化カルシウム10g、水50mlを混合した泥状の腐食促進剤をクロムめっき製品の表面に固着させ、常温(15℃)で放置した後、クロムめっき層溶解に係る緑色スポットの有無を目視で判定した。判定基準はCASS JIS D 0201に従い、CASS試験のレイティングNo.がNo.9.8以下となったとき、腐食発生と判定した。この腐食発生と判定されるまでの時間を評価した。表1における◎は、1週間以上腐食が発生しない(クロムが溶解しない)ことを、○は24時間以上1週間未満において腐食が発生した(クロムが溶解した)ことを、×は24時間未満で腐食が発生した(クロムが溶解した)ことを示す。
腐食試験はカオリン30g、塩化カルシウム10g、水50mlを混合した泥状の腐食促進剤をクロムめっき製品の表面に固着させ、常温(15℃)で放置した後、クロムめっき層溶解に係る緑色スポットの有無を目視で判定した。判定基準はCASS JIS D 0201に従い、CASS試験のレイティングNo.がNo.9.8以下となったとき、腐食発生と判定した。この腐食発生と判定されるまでの時間を評価した。表1における◎は、1週間以上腐食が発生しない(クロムが溶解しない)ことを、○は24時間以上1週間未満において腐食が発生した(クロムが溶解した)ことを、×は24時間未満で腐食が発生した(クロムが溶解した)ことを示す。
<実施例2>
マイクロクラック発生工程において、80℃恒温槽中1時間加熱した後、5℃の水槽中に10分間浸漬する処理を2サイクル実施して、マイクロクラックを発生させた以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
マイクロクラック発生工程において、80℃恒温槽中1時間加熱した後、5℃の水槽中に10分間浸漬する処理を2サイクル実施して、マイクロクラックを発生させた以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
不働態化工程において、65℃のオゾン水(濃度90mg/L)中、30分間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行った以外は、実施例2と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
不働態化工程において、65℃のオゾン水(濃度90mg/L)中、30分間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行った以外は、実施例2と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
<実施例4>
マイクロクラック発生工程において、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間加熱した(液体中での全体加熱方式及び化学酸化処理)後、5℃の過酸化水素水(濃度6%)中に10分間浸漬する処理(液体中での全体冷却方式及び化学酸化処理)を2サイクル実施して、マイクロクラックを発生させた以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。本実施例は、マイクロクラック発生工程と不働態化処理工程とを兼ねたものである。結果を表1に示す。
マイクロクラック発生工程において、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間加熱した(液体中での全体加熱方式及び化学酸化処理)後、5℃の過酸化水素水(濃度6%)中に10分間浸漬する処理(液体中での全体冷却方式及び化学酸化処理)を2サイクル実施して、マイクロクラックを発生させた以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。本実施例は、マイクロクラック発生工程と不働態化処理工程とを兼ねたものである。結果を表1に示す。
<実施例5>
マイクロクラック発生工程において、めっきを施したサンプルの表面を、パルスNd−YAGの2倍高調波レーザ光(波長532nm、強度0.5J/cm2、繰り返し10Hz)により処理時間5分間/100cm2で処理した以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
マイクロクラック発生工程において、めっきを施したサンプルの表面を、パルスNd−YAGの2倍高調波レーザ光(波長532nm、強度0.5J/cm2、繰り返し10Hz)により処理時間5分間/100cm2で処理した以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
マイクロクラックを発生させずに、めっきを施したサンプルの表面を、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
マイクロクラックを発生させずに、めっきを施したサンプルの表面を、65℃の過酸化水素水(濃度6%)中、1時間浸漬(化学酸化処理)して不働態化処理を行った以外は、実施例1と同様にして、クロムめっき製品の製造、評価及び腐食試験を行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜5のマイクロクラックを予め発生させたクロムめっき製品は、いずれも自然電極電位が著しく貴であり、耐食性が良好であった。一方、比較例1のマイクロクラックを予め発生させなかったクロムめっき製品は、24時間以内に緑色スポットが発生し、クロム溶解が起きていることが観察され、十分な耐食性を確保できないことがわかる。また、実施例1と実施例2との比較により、マイクロクラック発生工程において冷熱サイクル処理を2サイクル実施した実施例2のクロムめっき製品は1週間以上緑色スポットが発生せず、クロム溶解がほぼ完全に抑制されており、耐食性が良好であることがわかる。また、実施例2と実施例3との比較により、不働態化工程において過酸化水素処理を実施した実施例2のクロムめっき製品は1週間以上緑色スポットが発生せず、クロム溶解がほぼ完全に抑制されており、オゾン水処理を実施した実施例3より耐食性が良好であることがわかる。
1,3 クロムめっき製品、10,50 基材、12,52 下地銅めっき層、14,54 ニッケルめっき層、14a,54a 光沢ニッケルめっき層、14b,54b 硫黄なしニッケルめっき層、16,56 クロムめっき層、18,58 不働態皮膜、20 マイクロクラック、22,64 破面部、24 微細孔(マイクロポーラス)、26 非導電性微粒子、30,70 装飾クロムめっき層、32 NaCl水溶液、34 基準電極、36 電位差計、60 溶出穴、62 クラック。
Claims (10)
- マイクロクラックを有するクロムめっき層と、前記クロムめっき層の表面及び前記マイクロクラックの破面部を被覆する不働態皮膜とを含む複合皮膜が基材表面に形成されていることを特徴とするクロムめっき製品。
- 請求項1に記載のクロムめっき製品であって、
前記複合皮膜についての、NaCl濃度が5重量%でpH10〜11のNaCl水溶液中での基準電極をAg/AgClとした場合の自然電極電位が−0.3V以上の貴電位であることを特徴とするクロムめっき製品。 - 基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、
前記クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるマイクロクラック発生工程と、
前記マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、前記クロムめっき層の表面及び前記マイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成する不働態化工程と、
を含むことを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項3に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記マイクロクラックを加熱、冷却、またはそれらの組み合わせにより発生させることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項4に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記加熱が、気体中あるいは液体中での全体加熱処理、及び電磁波照射による表面加熱処理のうちの少なくとも1つにより行われることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項3に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記不働態化処理は、加熱酸化処理、化学酸化処理及び陽極電解処理のうち少なくとも1つであることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項6に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記加熱酸化処理は、酸素、過酸化水素、オゾン及び水蒸気のうち少なくとも1つを含む酸化性ガスを含有する気体中での全体加熱処理、及び電磁波照射による表面加熱処理のうちの少なくとも1つにより行われることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項6に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記化学酸化処理は、大気開放下での水中処理、過酸化水素水処理及びオゾン水処理のうち少なくとも1つである酸化性水溶液への浸漬処理であることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 請求項6に記載のクロムめっき製品の製造方法であって、
前記陽極電解処理は、前記めっき工程におけるめっき浴による逆電解処理、及び酸性水溶液中での陽極電解処理のうち少なくとも1つであることを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。 - 基材にクロムめっき層を形成するめっき工程と、
クロムめっき層にマイクロクラックを発生させるとともに、マイクロクラックを発生させたクロムめっき層に不働態化処理を施し、クロムめっき層の表面及びマイクロクラックの破面部に不働態皮膜を形成するマイクロクラック発生兼不働態化工程と、
を含むことを特徴とするクロムめっき製品の製造方法。
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JP2006228268A JP2008050656A (ja) | 2006-08-24 | 2006-08-24 | クロムめっき製品およびその製造方法 |
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-
2006
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