JP2008048668A - Dnaコピー数多型を用いた癌発症体質の判定方法 - Google Patents

Dnaコピー数多型を用いた癌発症体質の判定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
従来、癌と疑われる組織を採取して行っていた検査法に対し、血液など採取が容易な材料を用いた新規な検査法を開発することを目的として、材料中に存在するDNAコピー数多型を検出する方法を提供すること、さらに該DNAコピー数多型を指標として子宮体癌や大腸癌になりやすい体質(癌発症体質)を判定する方法を提供することをその主な課題とする。
【解決手段】
ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、癌発症体質の判定方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、血液やその他正常組織中に存在するDNAコピー数多型を指標として癌発症体質を判定する方法、該判定の指標となるDNAコピー数多型の検出方法、検出方法に利用するプライマー、および判定用キットに関する。
癌の撲滅のために「癌の早期発見・早期治療」が従来謳われてきた。しかし癌の「早期発見・早期治療」は癌の罹患率そのものを下げるわけではないため、今日では「癌の発症予防」に注目が移っている。癌発症の原因については、いわゆる「癌家系」のように遺伝学的要因が重要な役割を果たしていることが知られている。しかしこれまでの研究の中で「癌になりやすさ(癌発症体質)」に関わる決定的な遺伝学的変化というのは未だに明らかになってはいない。
癌の早期発見への取り組み、およびその問題点について、子宮体癌と大腸癌を見ると、大腸癌の罹患率および死亡率は、本邦においては、肺癌に次いで第二位であり、しかも近年増加傾向にある。大腸癌の多くは良性の腫瘍(ポリープ)を経て癌化することが知られている。このため、定期的な大腸カメラ検査を行い、前癌病変であるポリープの段階で切除することが大腸癌発症予防に有用である。しかし大腸カメラ検査が時に苦痛を伴うことや、検査を受ける際の羞恥心の問題などから、十分な数の受診者が集まらないのが現状である。また一方、子宮体癌の発生率も年々増えており、発症予防や早期発見のために何らかの対策が必要とされている。子宮体癌の早期発見には、定期的な検診を行うことが勧められているが、産婦人科的な診察をためらう女性も多く、やはり十分な数の受診者が集まらないのが現状である。
近年、医学・生物学的研究の進歩により、癌発生のメカニズムが分子レベルまで解明されてきており、癌と遺伝子の関連研究が多く見られるようになった。特許においても、すでに遺伝子レベルの比較を用いた診断法はいくつか知られている。子宮体癌と大腸癌に関連する例をあげれば、正常組織での発現レベルが極めて低く、癌組織で特異的に発現レベルが高い遺伝子を見出し、これを用いた胃癌、大腸癌の診断方法(特許文献1)、ヒト由来の新規なマンノース転移酵素遺伝子を大腸癌マーカー遺伝子として利用する方法(特許文献2)、患者由来の試料中のインターロイキン1受容体アンタゴニストとインターロイキン6(IL−6)濃度比に基づいて、大腸癌・胃癌・乳癌の診断、癌の悪性度の判定および患者の予後を客観的に判定する方法(特許文献3)や、前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌の検出法として、複数の遺伝子個々の発現量をまとめて定量解析することにより、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を同定することを特徴とする遺伝子発現解析方法(特許文献4)などがある。
染色体異常が原因として起る遺伝的疾患、癌などの診断方法として、染色体DNAのコピー数異常を指標とする方法も提案されている(特許文献5)。癌細胞由来の染色体DNAのコピー数の増減を、直接蛍光標識したDNAプローブを用いて、CGH(Comparative genomic hybridization)法により、標識正常DNAと競合的に正常な分裂中期染色体上にin situ hybridizationを行い、腫瘍/正常の蛍光強度比を測定するものである。腫瘍細胞、正常細胞はそれぞれ別の色素による標識がなされており、もし、腫瘍細胞と正常細胞が等量であれば、その比は1となり、その比が高い染色体領域では、腫瘍細胞でコピー数の増加、すなわち染色体領域の増幅があり、比が低い領域ではコピー数の減少、すなわち染色体領域の欠失があると判断される。
染色体の構造変化による子宮内膜癌を検出する方法については、子宮内膜癌患者の癌細胞のDNAと、正常人の細胞のDNAとを、CGH法により比較する方法が開示されている(特許文献6)。
染色体DNAのコピー数異常を指標とする癌の診断方法として、BAC(BACterial artificial chromosome)クローンとのハイブリダイゼーション法を用いて、癌細胞中の染色体DNAのコピー数異常を検出することによる胃癌、口腔扁平上皮癌の検出方法(特許文献7)、肝細胞癌の悪性度を評価する方法(特許文献8)も開示されている。
特開2006−166789号公報 特開2006−136319号公報 特開2004−85305号公報 特開2004−215503号公報 特表平07−505053号公報 特開2000−166557号公報 特開2006−94733号公報 特開2006−94726号公報
しかしながら、前述の方法は、癌と疑われる組織を採取して行っている検査法であり、定期健診等で利用するには受診者の負担が大きい。本発明は、血液など採取が容易な材料を用いた新規な検査法を開発することを目的として、材料中に存在するDNAコピー数多型を検出する方法を提供すること、さらに該DNAコピー数多型を指標として子宮体癌や大腸癌になりやすい体質(癌発症体質)を判定する方法を提供することをその主な課題とする。
本発明者等は、血液やその他正常組織に存在するDNAコピー数多型が、子宮体癌患者や大腸癌患者に特徴的に存在することを見出すことにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)を提供する。
(1)ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、癌発症体質の判定方法。
(2)ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、及び16p11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、子宮体癌発症体質の判定方法。
(3)ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、及び14q11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の増加、及び/またはヒト染色体1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、及び16p11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の減少を検出する、上記(2)に記載の判定方法。
(4)ヒト染色体2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、大腸癌発症体質の判定方法。
(5)女性において染色体16p13.3領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の増加、あるいは男性において染色体2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の減少を検出することを特徴とする上記(4)に記載の判定方法。
(6)DNAコピー数多型の検出を、ヒト血液または組織を材料として、BACアレイCGH法、定量PCR法、またはFISH法によって検出する、上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の判定方法。
(7)ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出するための癌発症体質の判定用キット。
本発明により、採取が容易な血液など正常な組織を材料にして、子宮体癌や大腸癌になりやすい体質(癌発症体質)を判定することが可能になるため、発症予防や早期発見に必要な定期検診等による癌の検診者の増加が期待される。早期ガンの段階で診断・治療をうける検診者が増えることにより、癌による死亡率を下げることが可能になり、社会的に大きな貢献をすることができる。
本発明は、被験者のDNAにおいて、染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、16p13.3、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、及び15q26.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することにより、子宮体癌や大腸癌などの癌発症体質の判定を行う方法を提供する。
本発明の方法は、上記領域の1つの多型を検出すれば良いが、精度を高めるためには、2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは5つ以上の領域の多型を検出することが望ましい。
本発明において、「癌発症体質の判定」とは、癌になりやすい体質を有する、と決定することを意味し、「少なくとも一部」とは、DNAの20bp以上の連続した配列をいい、多型を検出するには、好ましくは80bp以上、より好ましくは1kb以上の連続した配列が望ましい。この「少なくとも一部」の中には遺伝子も含まれる。
本明細書において、「コピー数多型」とは、健常人のゲノムDNAにおいて、特定の領域が増加あるいは減少している状態のことをいい、本発明の「DNAコピー数多型を検出する」とは、DNAコピー数の増減の程度およびDNAコピー数多型の頻度を見つけることであり、本発明は、DNAの「コピー数多型」を検出することにより、子宮体癌や大腸癌などの癌発症体質の判定を行う方法を提供するものである。また、DNAの「コピー数多型」の中には「遺伝子コピー数多型」も含まれる。
DNAコピー数多型の検出法としては、ヒト血液または組織を材料として、BACアレイCGH法、定量PCR法、あるいはFISH(Fluorescence in situ hybridization)法を使用することができる。
BACアレイCGH法とは、Macrogen’s KOGENOME Projectで作成されたDNA断片からなるBAC(BACterial Artifical Chromosome)クローンを、スライドガラス上にスポットしたアレイを用いた比較ゲノムハイブリダイゼージョン(Comparative genomic hybridization:CGH)法であり、テストDNAと正常細胞由来のDNAをそれぞれ異なった蛍光色素で標識し、その蛍光強度の比較を行うことによりDNAコピー数多型を検出する方法である。BACアレイには、約1Mb間隔でBACクローンがスポットされているため、約1Mbの解像度で染色体異常を検出することができる。
BACクローンをスポットしたアレイは、市販のものを入手して利用することも可能である。例えば、Macrogen社のMAC Array(登録商標)、SPECTRAL GENOMICS社のSpectralChip(登録商標)等がある。MAC Array(登録商標)の場合、アレイスライド上には全染色体を網羅する4030個のBACクローンがスポットされている。BAC開始位置、終了位置などの情報クローン情報は、Macrogen社のHP(http://www.macrogen.com/eng/file/4K_list_041221.xls)に掲載され更新されている。
Macrogen社のMAC Array(登録商標)では、本発明の染色体領域は、表1に示すBACクローンIDを含む領域であり、BACクローンの開始位置と終了位置は、NCBI Human Genome Assembly Build34に基づいて表している。
Figure 2008048668
BACクローンと反応させるDNAは、ランダムプライム法などで標識するが、このような方法で蛍光標識する場合、テストDNAは、Cyanine5−dCTP(PerkinElmer社)で、コントロールDNAはCyanine3−dCTP(PerkinElmer社)で標識することができる。
標識したDNA溶液は、3M酢酸ナトリウムやエタノールを用いて、DNAに取り込まれなかった標識物質等除去するため洗浄する。精製された標識DNAは、ハイブリダイゼーション溶液に溶解する。ハイブリダイゼーション溶液としては、50%ホルムアミド、10%硫酸デキストラン、2XSSC(2XSSC:2倍濃度の標準クエン酸緩衝液)、4%ドデシル硫酸ナトリウム、100mg/ml酵母tRNAの混液を用いることができるが、MAC Array(登録商標)Universal kit(Macrogen社)等の市販のハイブリダイゼーション溶液を利用することができる。70℃の水浴中で15分間加熱することによりDNAを熱変性させ、37℃のインキュベータ内で1時間静置することにより、繰り返し配列をブロックする。
ハイブリダイズさせるアレイスライドは、標識DNAの担体への吸着によるロスを防ぐために、前処理を行うことが望ましい。前処理液は、ハイブリダイゼーション溶液を使用することもできるが、MAC Array(登録商標)Universal kit(Macrogen社)等の市販の前処理液を利用することもできる。前処理液をアレイスライド上に滴下し、液がアレイ全体に行き渡るようカバーグラスを載せ、密閉箱中にスライドを置き、室温で30分間程度静置する。スライドグラスは蒸留水中で洗浄した後、アルコール類で乾燥させる。
ハイブリダイゼーションは、作製した標識DNAを含むハイブリダイゼーション溶液をアレイスライド上に滴下して、カバーグラスをかけ、湿潤条件下、37℃で48時間程度行う。密閉湿潤箱中にアレイスライドを静置する方法が好ましい。
反応後、非結合物質を除去するためアレイスライドの洗浄を行う。アレイスライドの洗浄法は以下のように行うことができるが、この方法には限定されない。アレイスライドを、46℃に保った50%ホルムアミド/2XSSC(pH7.0)中に15分間、46℃に保った0.1% SDS/2XSSC(pH7.0)中に30分間浸漬し、さらに、室温に保った0.1%NP−40/0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)中に15分間、室温に保った2XSSC(pH7.0)中に5分間静置する。その後エタノールに浸漬して乾燥させると良い。
ハイブリダイゼーションおよび洗浄後のアレイスライドは、レーザースキャナーや、CCDカメラなどの定量的検出装置により、テストDNAおよびコントロールDNA由来蛍光による画像を取得することができる。レーザースキャナーとしては、マイクロアレイ用スキャナGenePix 4000B(Axon Instruments社)が市販されている。得られた画像データはアレイCGH解析用ソフトウェアMac Viewer software(Macrogen社)により解析を行うことができる。
テストDNAおよびコントロールDNA由来の蛍光による画像においては、テストDNAのコピー数が多い場合には、テストDNAの蛍光強度が増加し、コントロールDNAのコピー数が多い場合には、コントロールDNAの蛍光強度が増加することから、子宮体癌患者、大腸癌患者および非癌患者のDNAから得られたサンプルのアレイスポットの特定の蛍光波長における蛍光強度を測定することによって、BACクローンごとの多型を検出することができる。さらに、Array CGHの結果を基に作成した受信者操作特性曲線(receiver operating characteristic curve:ROC)から、BACクローンごとのDNAコピー数のカットオフ値、感度、特異度を求めることにより、各クローンにおけるDNAコピー数変化の程度と疾患感受性の関係を明確に知ることができる。
カットオフ値、感度、特異度は、相関する。カットオフ値を決めると感度と特異度も一組決まるので、カットオフ値を低いほうから高いほうへ順に変えていくと、そのカットオフ値の数だけ感度と特異度が求められるが、ROCとは、その点をプロットした曲線をいう。
カットオフ値、感度、特異度の相関については、以下のように説明することができる。何らかの疾病がある人および疾病がない人に対して、ある検査を行ったとする。実際病気のある人に検査で陽性が出るとその人は真の陽性(真陽性)という。また、実際病気があるにもかかわらず検査結果が陰性であると偽陰性という。病気がないのに検査結果が陽性であると偽陽性という。また、実際に病気がなく検査も陰性であると真の陰性(真陰性)という。ある検査をして、その検査値に対して陽性、陰性を分けるひとつの分割点をカットオフ値と言う。カットオフ値を決めると、対象者は表2のように、真陽性、偽陰性、偽陽性、真陰性のどこかに必ず分類され、その数も決まる。そして、その数により感度(感度=真陽性者数/病気ありの人数(真陽性者数+偽陰性者数):その検査が病気を発見する能力)、および、特異度(特異度=真陰性者数/病気なしの人数(偽陽性者数+真陰性者数):非患者を陽性としない能力)が、ひとつのカットオフポイントに対して一組計算される。
Figure 2008048668
DNAコピー数多型の検出法は、定量PCR法を用いても行うことができる。定量PCRによる方法は、増幅すべきDNA配列に特異的なプライマーを設計し、定法のPCR条件下で増幅させたDNAを経時的(リアルタイム)に測定し、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの定量を行なう方法である。遺伝子のコピー数多型の検出は、検出すべき遺伝子に特異なプライマーを設計し、定量PCRを行うことにより可能であり、それに基づき癌発症体質の判定をすることができる。
DNAコピー数多型の検出法は、FISH法を用いても行うことができる。FISH法は、染色体標本の調べたいゲノム領域に、ハイブリダイズ可能なDNA配列を有するプローブをFITC(Fluorescein isothiocyanate)、TRITC (Tetramethylrhodamin isothiocyanate)、CyDye(登録商標)などの蛍光物質で標識し、染色体のゲノム領域にハイブリダイズさせ、それにより得られる蛍光シグナルの数量を蛍光顕微鏡下で計数する手法である。また、調べたい対象領域と同一染色体上に存在するDNAに対しては、プローブを異なる蛍光で標識し、同時にハイブリダイゼーションを行うと、コピー数異常をより正確に評価することが可能となる。
染色体標本の前処理は、2XSSC中に染色体スライドを37℃30分浸漬して行う。その後、順次70%、85%、100%エタノールに2分間浸漬し、乾燥させる。次いで、75℃に加温した70%ホルムアミド/2XSSC溶液中に染色体スライドを5分間浸漬し、順次70%、85%、100%エタノールに2分間浸漬し、乾燥させスライドの熱変性を行う。
プローブの標識は、市販のMAC Probe Kit(Macrogen社)の溶液(MAC probe 2μl、Human Cot−1 DNA 2μl、Salmon Sperm 1μl、Hybridization solution 10μl)を混合して、プローブ溶液として調整すると容易である。プローブ混合溶液は、75℃5分間加温した後、37℃で1時間加温し、プローブを熱変性させる。
染色体標本のDNAとプローブのハイブリダイズは、以下のように行うことができる。染色体スライドを37℃のホットプレート上に静置し、染色体スライド上にプローブ混合溶液を滴下し、カバーグラスをかけた状態で、密閉湿潤箱中に静置し、37℃で一晩加温する。反応後、非結合物質を除去するため染色体スライドの洗浄を行う。染色体スライドの洗浄法は以下のように行うことができるが、この方法には限定されない。染色体スライドを、45℃に保った50%ホルムアミド/2XSSC中に10分間浸す。この操作を計3回行う。さらに、45℃に加温した2XSSC中に5分間静置、次いで45℃に加温した4XSSC/0.1% Tween20中に15分間浸す。その後、染色体スライドをエタノールに浸漬して乾燥させる。次いで、DAPI(MAC Probe Kit,Macrogen社)を染色体スライド上に滴下し、カバーグラスをかける。螢光顕微鏡下、染色体スライド上の蛍光シグナルをカウントして解析を行う。
本発明は、ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出して癌発症体質を判定するためのキットを提供する。
本発明のキットには、対照とするコントロールDNAの他、CGH法で使用する標識用蛍光色素、緩衝液や洗浄液、定量PCR法で使用するテストDNAに特異的なプライマー、コントロールのプライマーをセットとして含ませること
もできる。
以下、本発明を更に詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこれに限定されない。
アレイCGH法による子宮体癌および大腸癌に特徴的なDNAコピー数多型領域の同定
非癌男性12人、非癌女性12人、子宮体癌患者14人、大腸癌女性患者12人、大腸癌男性患者12人の各々から得られた正常細胞由来のDNAを、テストDNAとして、非癌男性30名、または非癌女性30名の血液を混合して得られた血液由来のDNAを、それぞれの性別ごとのコントロールDNAとした。テストDNAおよびコントロールDNAのコピー数多型を調べるため、BAC Array CGH(BACterial artificial chromosome microarray comparative genomic hybridization)法を行った。なお、BACアレイスライドはMacrogen社より発売されているMAC Array(登録商標)Karyo 4Kキットを使用した。アレイスライド上には全染色体を網羅する4030個のBACクローンがスポットされている。
<DNA標識プローブの作製>
テストDNAおよびコントロールDNA500ngをそれぞれ別々のチューブに分注し、精製水を加えて全量を21μlとした。これらDNA溶液に20μlの2.5x Random primer溶液(Invitrogen社 BioPrime(登録商標)DNA Labeling Kit)を加えて混合し、100℃にて5分間加熱後、直ちに氷上に移し、5分間冷却した。遠心(4000rpm 10秒)の後、5μlのA溶液(Macrogen社MAC Array(登録商標)Universal Kit)を加え、テストDNAのチューブには3μlの1mM Cyanine5−dCTP(PerkinElmer社)を、コントロールDNAのチューブには3μlの1mM Cyanine3−dCTP(PerkinElmer社)を加え、氷上で1μl(40unit)のKlenow Fragment(Invitrogen社 BioPrime(登録商標)DNA Labeling Kit)を添加混合した後、37℃で一晩反応させた。65℃で20分加熱し酵素を失活させた後、氷上で1分間冷やした。
<標識プローブの洗浄>
上記で得られたDNAの各標識プローブ中の未反応Cyanine標識dCTP等を除去するため、QIA quick PCR purification kit(Qiagen社)を使用して洗浄を行った。まず、50μlの標識プローブを250μlのBinding Bufferと混合し、スピンカラムに滴下し、13000回転/分で1分間遠心した。流れ落ちた液体を捨て、700μlのWash Bufferをスピンカラムに加え、13000回転/分で1分間遠心した。流れ落ちた液体を捨て、再度13000回転/分で1分間遠心した。スピンカラムを清潔な1.5mlのチューブ内に設置し、50μlのElution Bufferを滴下して加え、3分間室温で静置した。さらに、13000回転/分で1分間遠心を行い、再度30μlのElution Bufferをスピンカラムに滴下し、3分間室温で静置した。13000回転/分で1分間遠心して、以下のテストに使用する標識プローブを得た。
<エタノール沈殿およびアレイハイブリダイゼーション混合液の作製>
蛍光標識したテストDNAおよびコントロールDNA各80μlおよび100μlのSolution B(Macrogen社)を混合し、さらに30μlの3M酢酸ナトリウムおよび600μlの氷冷100%エタノールを加えて混合撹拌した。冷凍庫(−20℃)にて1時間静置した後、4℃の温度下に13000回転/分で20分間遠心した。DNA残渣を残して上清を除去し、氷冷70%エタノールを500μl加え、再度13000回転/分で5分間遠心した。上清を除去した後、10分間自然乾燥させた。得られたDNA残渣に4μlのSolution D(Macrogen社)および40μlのSolution C(Macrogen社)を添加して30分間遮光下に静置してDNAを緩やかに溶解させた。DNAを十分に撹拌溶解させた後、70℃の水浴中で15分間加熱することでDNAを熱変性させ、37℃のインキュベータ内で1時間静置することで繰り返し配列のブロッキング反応を行った。
<Arrayスライドの前処理>
30μlのSolution Cに、10μlのSoultion Eを加えて混合し、70℃水浴中で10分間加熱して前処理液を熱変性させた後、氷上で5分間冷却した。40μlの前処理液をアレイスライド(Macrogen社MAC Array(登録商標)Karyo 4000)上に滴下し、液がアレイ全体に行き渡るよう22×40mmのカバーグラスを載せ、密閉箱中にスライドを置き、室温で30分間静置した。その後カバーグラスを外し、スライドグラスを10秒間蒸留水中に浸漬し、再度10秒間新しい蒸留水中に浸漬した後、100%イソプロパノールに浸漬した後、スライドグラスを乾燥させた。
<ハイブリダイゼーション>
上記で作製した44μlのアレイハイブリダイゼーション混合液をアレイスライド上に滴下した。22×40mmのカバーグラスをかけ、密閉湿潤箱中にスライドを静置し、37℃で48時間静置した。
<アレイスライドの洗浄>
46℃に保った洗浄液1(50%ホルムアミド/2XSSC,pH7.0)中に、アレイスライドを15分間静置し、時々振盪した。次いで、46℃に保った洗浄液2(0.1% SDS/2XSSC,pH7.0)中に、アレイスライドを30分間静置し、時々振盪した。さらに、室温に保った洗浄液3(0.1%NP−40/0.1Mリン酸緩衝液,pH7.0)中に15分間、室温に保った洗浄液4(2XSSC,pH7.0)中に、アレイスライドを5分間静置した。その後、70%エタノール、85%エタノール、100%エタノールの順に室温下でアレイスライドを各1分間ずつ浸漬後、アレイスライドを乾燥させた。
<アレイスライドの読み取りおよび解析>
ハイブリダイゼーションおよび洗浄後のアレイはマイクロアレイ用スキャナ(Axon Instruments社 GenePix 4000B)にてスキャンし、テストDNAおよびコントロールDNA由来蛍光による画像を取得した。得られた画像データはアレイCGH解析用ソフトウェア(Macrogen社 Mac Viewer software)により解析を行った。
<結果>
子宮体癌患者、大腸癌患者および非癌患者のDNAから得られたサンプルのアレイスポットのCyanine3およびCyanine5の蛍光強度を測定し、全被験者のCyanine5/Cyianine3の比を求めて、クローンごとにプロットした図、およびArray CGHの結果を基に作成した受信者操作特性曲線(receiver operating characteristic curve:ROC)を図1〜図4に示した。
子宮体癌患者、大腸癌患者および非癌患者において、DNAコピー数に特徴的な変化を認めた染色体領域のBACクローン情報(BAC情報はMacrogen社MAC Array Karyoホームページ(http://www.macrogen.com/eng/file/4K_list_041221.xls)を参照した。)、およびBACクローンごとのDNAコピー数カットオフ値、感度、特異度を表に示した。表3には子宮体癌患者のデータを、表4には大腸癌女性患者のデータを、表5には大腸癌男性患者のデータを示した。(表中、>はDNAコピー数の増加を示し、<はDNAコピー数の減少を示す。)この結果から、癌患者では、DNAコピー数の増減の程度およびDNAコピー数多型の頻度が非癌患者に比べ、有意に差があることが明らかになった。
Figure 2008048668
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DNAコピー数多型を調べることで、癌になりやすさの体質診断(癌発症体質の判定)が可能であることが明らかになった。アレイCGH法用てコピー数多型を調べる事により、容易に診断が可能となる。この方法を応用することにより、子宮体癌や大腸癌以外の種々の癌についても癌発症体質の判定の可能性がある。このように、血液や正常組織の検査だけで癌の発症を高い精度で予測できる検査方法はこれまでに存在せず、本発明は非常に画期的な検査法で広く利用される可能性がある。
アレイCGH法による子宮体癌患者と非癌女性におけるDNAコピー数多型を比較したデータを示す図である。 アレイCGH法による子宮体癌患者と非癌女性におけるROCを示す図である。 アレイCGH法による大腸癌女性患者と非癌女性におけるBAC198_J05(染色体16p13.3)の遺伝子コピー数多型を比較したデータ、およびROCを示す図である。 アレイCGH法による大腸癌男性患者と非癌男性におけるDNAコピー数多型を比較したデータ、およびROCを示す図である。

Claims (10)

  1. ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、癌発症体質の判定方法。
  2. ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、及び16p11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、子宮体癌発症体質の判定方法。
  3. ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、及び14q11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の増加、及び/またはヒト染色体1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、及び16p11.2領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の減少を検出する請求項2に記載の判定方法。
  4. ヒト染色体2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出することを特徴とする、大腸癌発症体質の判定方法。
  5. 女性において染色体16p13.3領域の少なくとも一部におけるにおけるDNAコピー数の増加、あるいは男性において染色体2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数の減少を検出することを特徴とする請求項4に記載の判定方法。
  6. ヒト染色体1p36.33領域に存在する遺伝子LOC440552のコピー数多型を検出することを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載の判定方法。
  7. DNAコピー数多型の検出を、ヒト血液または組織を材料として、BACアレイCGH法、定量PCR法、またはFISH法によって検出する請求項1〜6のいずれか一項に記載の判定方法。
  8. 遺伝子のコピー数多型の検出を、配列番号1および配列番号2で示される塩基からなるプライマーを用いた定量PCR法によって検出することを特徴とする請求項7に記載の判定方法。
  9. ヒト染色体領域1p36.33領域に存在する遺伝子LOC440552のコピー数増加を検出するためのプライマーであって、配列番号1および配列番号2で示される塩基からなる子宮体癌発症体質判定用のプライマー。
  10. ヒト染色体1p36.33、1q32.1、10q22.3、11p15.5、11q13.3、14q11.2、1q21.1、7q11.1−11.21、9q13、14q32.33、16p11.2、2p21、7q36.3、15q26.3、及び16p13.3領域の中から選択される1以上の領域の少なくとも一部におけるDNAコピー数多型を検出するための癌発症体質の判定用キット。
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