JP2008047693A - 圧電材料、超音波探触子、圧電材料の製造方法、および超音波探触子の製造方法 - Google Patents

圧電材料、超音波探触子、圧電材料の製造方法、および超音波探触子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、圧電特性を向上させた有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)およびその製造方法、該有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)を用いた高感度の超音波探触子およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】有機高分子圧電材料のマトリックス中に無機圧電材料微粒子を分散させ、電場を印加した、または、磁場及び電場を印加した、ことを特徴とする圧電材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、圧電材料、超音波探触子、圧電材料の製造方法、および超音波探触子の製造方法に関し、特に高感度で医用診断に使用される、圧電材料、超音波探触子、圧電材料の製造方法、および超音波探触子の製造方法に関する。
圧電材料は、機械の微少な動きを制御するアクチュエーターや超音波発信や受信に使用される。特に医用の応用においては、X線を使用しないため、被爆を避ける検診に使用される。超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。ドップラー効果を応用すると血流イメージングが可能であり、精密な反射波の映像解析は、循環器系(心臓の冠動脈)、消化器系(胃腸)、内科系(肝臓、膵臓、脾臓)、泌尿科系(腎臓、膀胱)、及び産婦人科系などで広く利用されている。このような医療用超音波診断装置に使用される超音波探触子は、高感度、高解像度の超音波の送受信を行うために、無機圧電素子の圧電効果が一般的に利用される。
無機圧電素子として、チタン酸ジルコン酸鉛、所謂PZTが性能の上から使用されてきている。しかし、鉛は、特定有害物質使用制限指令:電気・電子機器における特定有害物質の使用規制所謂RoHS指令、で2006年7月1より使用制限が発令されている。圧電素子においては、例外規定が設けられているものの環境上から好ましくなく、鉛を使用しない技術が開発されているが、満足すべき性能が得られていない。
感度向上を目的とした超音波送受信素子にするために圧電無機素子を積層化し、見かけ上のインピーダンスを低下させ駆動回路との電気的な整合条件を良好にし、素子にかかる電界強度を大きくして大きな歪を発生させ送信感度を向上させることが行われている(特許文献1参照)。しかしながら、積層構造では送信感度が積層数に応じて増大するものの、受信感度は積層数に反比例するため、高調波画像形成には不利となってしまっている。そこで、各種試みがされているが、その中に有機高分子材料に結晶性無機圧電材料の微粒子を分散するという技術が開示されているが(特許文献1参照)、該複合部材は、合成樹脂と導電性繊維層とから成る複合部材の合成樹脂中に、分極方向を配向させた圧電性粒子を含ませており、振動が与えられたときに、合成樹脂の変形による静電容量の変化量が圧電性粒子の分極の変化量として出るものであり、即ち、合成樹脂の変形により変化することを利用して部材の診断を行うことができるものとするものであり、圧電性の有機樹脂の中に圧電粒子を分散して圧電性能を上げるものではなかった。
特開2006−131776号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、圧電特性を向上させた有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)およびその製造方法、該有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)を用いた高感度の超音波探触子およびその製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
1.有機高分子圧電材料のマトリックス中に無機圧電材料微粒子を分散させ、電場を印加した、または、磁場及び電場を印加した、ことを特徴とする圧電材料。
2.前記無機圧電材料微粒子の平均粒子径が5nm〜100μmであることを特徴とする1に記載の圧電材料。
3.前記有機高分子圧電材料が、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1または2に記載の圧電材料。
4.前記有機高分子圧電材料が、弗化ビニリデン、3弗化エチレン、ヘキサフルオロプロペン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを使用した有機高分子圧電材料であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の圧電材料。
5.前記無機圧電材料微粒子が、CaBi4Ti415、BaBi4Ti415、SrBi4Ti415、Na0.5Bi4.5Ti415、Bi4Ti312、CaBi2Ta29、CaBi2Nb29、BaBi2Ta29、BaBi2Nb29、SrBi2Ta29、SrBi2Nb29、Sr1.9Ca0.1NaNb515、SrNb26、BaNb26、NaBa2Nb515、KBa2Nb515、NaSr2Nb515およびBi1/3Ba2Nb515から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の圧電材料。
6.1〜5のいずれか1項に記載の圧電材料であり、磁場印加に加えて、直流又は交流電圧印加或いはコロナ放電印加を加えた、処理により分極処理をした圧電材料であることを特徴とする超音波探触子。
7.有機高分子圧電材料のマトリックス中に無機圧電材料微粒子を分散させ、電場を印加した、または、磁場及び電場を印加した、ことを特徴とする圧電材料の製造方法。
8.前記無機圧電材料微粒子の平均粒子径が5nm〜100μmであることを特徴とする7に記載の圧電材料の製造方法。
9.前記有機高分子圧電材料が、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする7または8に記載の圧電材料の製造方法。
10.前記有機高分子圧電材料が、弗化ビニリデン、3弗化エチレン、ヘキサフルオロプロペン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを使用した有機高分子圧電材料であることを特徴とする7〜9のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法。
11.前記無機圧電材料微粒子が、CaBi4Ti415、BaBi4Ti415、SrBi4Ti415、Na0.5Bi4.5Ti415、Bi4Ti312、CaBi2Ta29、CaBi2Nb29、BaBi2Ta29、BaBi2Nb29、SrBi2Ta29、SrBi2Nb29、Sr1.9Ca0.1NaNb515、SrNb26、BaNb26、NaBa2Nb515、KBa2Nb515、NaSr2Nb515およびBi1/3Ba2Nb515から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする7〜10のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法。
12.7〜11のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法であり、磁場印加に加えて、直流又は交流電圧印加或いはコロナ放電印加を加えた、処理により分極処理をする圧電材料の製造方法であることを特徴とする超音波探触子の製造方法。
本発明によれば、圧電特性を向上させた有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)およびその製造方法、該有機高分子圧電材料(有機圧電性フィルム)を用いた高感度の超音波探触子およびその製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
本発明に係る有機高分子圧電材料(有機圧電性を付与する材料)としては、フッ素を含むフッ素系の樹脂とフッ素を含まない非フッ素系の樹脂とを挙げることができる。
先ず、非フッ素系の樹脂としては、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が代表的な樹脂として挙げることができる。特に極性基−NHCO−基を有する尿素樹脂とポリアミド樹脂が好ましい。
尿素樹脂の合成は、ジイソシアナート化合物とジアミン化合物の付加反応により得ることができる。原料とする好ましいジアミン化合物として以下の化合物を挙げることができる。
1級アミノ基を有するジアミン化合物として、例えば、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2−ジメチルプロパン、ビス−(3−アミノプロピル)−ジエチレングリコールエーテル、ビス−(3−アミノプロピル)−ジプロピレングリコールエーテル等の脂肪族ジアミン;ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリプロピレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリテトラメチレングリコールエーテル、ジアミノポリエチレングリコール、ジアミノポリプロピレングリコール、ジアミノポリテトラメチレングリコール、ポリアミノポリエチレングリコール、ポリアミノポリプロピレングリコール、ポリアミノポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレンポリエーテルジアミン;ジアミノジフェニルエーテル等を挙げることができる。また、脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミンもしくは、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。脂環式ジアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソプロピリデンビス−4−シクロヘキシルジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が挙げられる。複素環式ジアミンとしては、例えば、ピペラジン、メチルピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
イソシアナート化合物(イソシアナート基、即ち、−N=C=O基を有する化合物)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネート−1−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−、m−もしくはp−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、m−もしくはp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニル−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートカーボジイミド変性ジフェニルメタジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、フェニルエーテルジイソシアネート等のイソシアネートモノマー類等が挙げられる。
樹脂にするための合成に際しての有機溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸(イソ)プロピル、酢酸(イソ)ブチル、エチレングリコールジエチルエステル如きエステル系溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルグリコールアセテート、酢酸セロソルブ、ブチルグリコールアセテート、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシブチル、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール、ソルフィットアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、エチルアミルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n(イソ)−プロパノール、n(イソ)−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンもしくはデカン等のパラフィン系炭化水素溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン等のナフテン系炭化水素溶剤等が挙げられる。
上記ジイソシアナート化合物と上記ジアミン化合物をそのまま無溶媒で重合してもよいし、DMF、DMSO、アセトン、MEK等の極性溶媒に溶解して重合することもできる。重合は室温から上記溶媒の沸点までの温度範囲で重合反応を進めることができる。
ポリアミド樹脂は代表的なものは市販品で入手可能である。例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミドMXD6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、メトキシ化ポリアミド(既存化学句物質(7)−383)等である。ポリイミドは、NASAが開発した既存化学物質番号(7)−2211(CASNo.611−79−0)を挙げることができる。
ポリエスエル樹脂は、代表的なものは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリナフタレンフタレート(PEN)等である。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等である。その他のポリエステル樹脂としては、圧電性を高める芳香族ジカルボン酸(ベンゼン環、ナフタレン環)、ヘテロ環含有ジカルボン酸などがある。
フッ素系の樹脂としては、ポリ弗化ビニリデン、ポリ3弗化エチレン、ポリヘキサフルオロプロペン、ポリパーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリテトラ弗化エチレン、又はこられの組み合わせた共重合体を挙げることができる。
本発明に係る無機圧電材料微粒子としては、無機圧電性材料微粒子であり、CaBi4Ti415,BaBi4Ti415,SrBi4Ti415,Na0.5Bi4.5Ti415,Bi4Ti312,CaBi2Ta29,CaBi2Nb29,BaBi2Ta29,BaBi2Nb29,SrBi2Ta29,SrBi2Nb29、Sr1.9Ca0.1NaNb515,SrNb26,BaNb26,NaBa2Nb515,KBa2Nb515,NaSr2Nb515,Bi1/3Ba2Nb515等の粒子が挙げられる。
無機圧電材料微粒子の製造は、先ず、原料の無機圧電材料微粒子と有機結合材と有機溶剤を、必須成分とし必要に応じて可塑剤と分散剤が添加された懸濁液とする。性能に応じて組成は異なるが、無機圧電材料微粒子と有機結合材と有機溶剤と可塑剤と分散剤とを含む懸濁液の場合、懸濁液中の無機圧電材料微粒子は30〜70質量%、有機結合材は2〜6質量%、有機溶剤は25〜60質量%、可塑剤は1〜4質量%、分散剤は0.1〜3質量%であり、懸濁液中の無機圧電材料微粒子の体積割合は25〜60体積%である。
前記の無機圧電材料微粒子は周知の合成法、例えば、水熱法や加水分解法や固相法やシュウ酸塩法やクエン酸法や気相法等の合成法を利用して作製される。例えば、ビスマス層状化合物の微粒子としてCaBi4Ti415を用いる場合には、CaBi4Ti415となるようにCaCO3とBi23とTiO2を所定の比率で配合し、これをエタノール等の溶媒を用いてボールミルにより混合して乾燥させ、これを900〜1000℃、3〜5時間で仮焼し、これをボールミルで粉砕して目的の微粒子を得る。また、例えば、化合物の微粒子としてSr1.9Ca0.1NaNb515を得る場合には、Sr1.9Ca0.1NaNb515となるようにSrCO3、CaCO3、Na2CO3、Nb25を所定の比率で配合し、これにMnO2を助剤として0.2質量%加えてエタノール等の溶媒を用いてボールミルにより混合して乾燥させ、これを1100〜1200℃、3〜5時間で仮焼し、これをボールミルで粉砕して目的の微粒子を得る。
更に、前記の無機微粒子は板状、柱状、球状またはこれら以外の形状であっても構わないが、後述する分極処理を効率良く行うには形状異方性のないものを用いるほうが好ましい。前記の板状、柱状、球状には、表面凹凸があって形が多少歪なものも含まれる。
本発明に係る無機圧電性材料微粒子の平均粒子径は5nm〜100μmであることが好ましい。
平均粒子径が5nm以上であることで、有機圧電薄膜の可撓性を維持して、圧電効率を上げる効果が奏されて好ましい。かつ、100μm以下であることで、有機薄膜にひび割れを誘発したり、外表面の凹凸を上げることなく、電極を取り付けたときの密着性を上げる効果が奏されて好ましい。
前記の有機結合材にはポリビニルブチラール樹脂やセルロール樹脂やアクリル樹脂等が適宜使用され、前記の有機溶剤にはケトン類や炭化水素類やアルコール類やエステル類やエーテルアルコール類や塩化炭化水素類等が適宜使用され、前記の可塑剤にはジオクチル等のエステル系のもの等が適宜使用され、前記の分散剤にはポリアクリル酸アンモニウム等の陰イオン系のものやノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤等が適宜使用される。
次に、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムやステンレス等の金属薄板から成るテープ状のベースフィルムを一定速度で走行させながら、このベースフィルム上にドクターブレードやダイコータやリバースコータ等の塗工機を用いて前記のセラミック懸濁液を所定厚さで連続塗工して無機圧電材料微粒子圧電前駆シートを形成する。無機圧電材料微粒子前駆フィルムの厚さに制限はないが、好ましい厚さは0.1〜100μmである。このフィルムを700℃〜1000℃で仮焼成し、酸化された微粒子を焼成する。その条件及び時間は、概ね、1000〜1600℃、1〜10時間である。焼成後の分極処理の温度,印加電圧及び時間は、概ね、150〜200℃、2〜5kV/mm、10〜60分である。これを平均粒子径0.1〜100μmの微粒子に粉砕して、高分子の樹脂に分散する。分極処理された無機圧電材料微粒子を含む高分子フィルムを、電圧及び磁場印加の分極処理を施す。
電圧を掛ける分極処理は、直流、交流、これらのパルス電圧印加処理の他にコロナ放電処理から選択される。直流や交流の電圧は、1V〜1GV/mの範囲で適宜選択することができる。コロナ放電処理は、1W〜1kW/m2/秒の放電密度で処理することができる。
コロナ放電処理の際には、誘電破壊が生じ易いので、無機圧電材料微粒子を含む有機高分子フィルム(有機薄膜)上の保護として、誘電体薄膜を密着させてコロナ放電処理することが好ましい。上記誘電体薄膜としては、電気絶縁性であって耐熱性・耐電圧性に優れた薄膜が用いられ、例示すれば、ポリエチレン、ポリプロピレンやα−ポリオレフィンなどのオレフィン系樹脂のシート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリカーボネート、四弗化エチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの合成樹脂のシート、それらの2種類以上の共重合体やブレンド成形物や無極性ガラス板などが挙げられる。
磁場としては、強磁性体または磁石であると好ましく、より具体的には、鉄、ニッケル等の強磁性体の他に、フェライト、希土類磁石さらに焼結磁石、およびボンド磁石等、空間磁場を変化させることが可能である素材であれば任意のものを使用することができる。特に鉄や希土類磁石等の焼結磁石は、空間に大きな磁場変化を発生させることができる。磁場強度は3kガウス(0.3テスラ)〜200kガウス(20テスラ)の範囲が好ましい。この範囲を超えると磁場のシールドや電力消費が過大な負担となるので好ましくない。またこの範囲以下では、分極効果が域値以下になるので好ましくない。より好ましい範囲は7kガウスから100kガウスである。今まで種々の希土類含有磁石が開発されてきたが、その一つとして、磁石粉末と樹脂とを混合し、圧縮成形処理などを施すことにより製造される、いわゆるボンド磁石がある。このボンド磁石は、高い形状自由度を有するため多数の製品への応用が容易であるとの特徴を有する。一方、他の磁石製品として、磁石粉末を成形して製造されるバルク磁石が挙げられる。バルク磁石は、ボンド磁石より高密度に緻密化することが可能である。
無機圧電材料微粒子を含む有機高分子フィルム(有機薄膜)の厚み方向に分極させる場合には、厚み方向に永久磁石や電磁石のN極とS極を対向するように設置して磁力線の向きが厚み方向に向くように磁場を印加することにより、高分子の分極子を厚み方向に配向させることができる。高分子内の分極子を厚み方向に配向させた状態で高分子組成物を高温から低温へ冷却させて硬化又は固化させることにより、厚み方向分極した高分子圧電膜を得ることができる。
一方、例えば、板状の高分子圧電膜を形成する際に、面内の一方向に分極子を配向させる場合には、厚み方向に対して垂直の方向に磁石のN極とS極を対向するように設置して磁力線の向きが面内の一方向に向くように磁場を印加することにより、樹脂内の分極子を面内の一方向に配向させることができる。そして、分極子を樹脂の面内の一方向に配向させた状態で高分子組成物を硬化又は固化させることにより、面内の一方向にに分極された高分子圧電薄膜を得ることができる。磁石のN極とN極、又はS極とS極を厚み方向に対向させても面内の一方向に配向させることができる。
磁場の印加による分極子の配向は、高分子マトリックス中に存在する無機圧電材料微粒子にも同様な効果を与えると考えることができる。そのため、高分子マトリックス中に分散した無機圧電材料微粒子とともに分極配向された高度な圧電効果持つ圧電薄膜(無機圧電材料微粒子を含む有機高分子フィルム)が形成されると考えられる。
有機圧電膜(無機圧電材料微粒子を含む有機高分子フィルム)を製造するに際して、基板としては、硝子、樹脂、シリコンウエハー等任意であるが、低温薄膜形成には、ポリエチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、アルキレート樹脂、シクロオレフィン樹脂等を適宜選択できる。しかし、基体に無機圧電材料を使用すると有機無機複層構造の圧電素子形成に便利である。そのような無機材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を挙げることができる。
上記に示した有機圧電膜(無機圧電材料微粒子を含む有機高分子フィルム)によって、高性能な圧電膜を得て高感度な医療用超音波診断装置を実現することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
[無機圧電材料微粒子]
《無機圧電材料微粒子の作製》
チタン酸ビスマス酸系を主成分とするCaBi4Ti415組成の無機微粒子粉末に、バインダー(ポリビニルブチラール樹脂10質量%)、水、及び分散剤(ステアリン酸2質量%)を混合し、無機微粒子懸濁液を用意した。この懸濁液を用い、ドクターブレード法によりシート成形し、厚み50μmの無機薄膜を得た。上記無機薄膜の上面及び下面に、白金ペーストを乾燥後に1μmの厚みとなるように塗布した。しかる後、白金ペーストを乾燥した後、空気中にて1100℃の温度に60分間維持し焼成した。このようにして、無機薄膜を得た。その後、白金ペーストの焼付けにより形成された金属材料としての白金層を研磨により除去した。このようにして、無機薄膜焼結体を得た。得られた無機焼結体の結晶構造はX線回折法により、配向した結晶構造をもつことを確認した。得られた焼結体を粉砕して平均粒子径3μmの微粒子を得た。同様にして表1記載の組成の無機圧電材料微粒子を得た。
[有機高分子圧電材料]
《フッ素系高分子材料の合成》
〈FP1の合成〉
P(VDF−PFA)(組成モル比:VDF/パーフロオロアルキルビニルエーテル=75/25)のポリマーを合成した。
ジメチルホルムアミド(DMF)にVDFとPFAを2:1(質量比)で濃度が15質量%となるように溶解し、開始剤ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を使用した。開始剤の濃度は1.2質量%の濃度になるようにした。80℃3時間重合を行った後、反応溶液の300質量%の水を投入して沈殿後、沈殿物を水洗し、乾燥してFP1を単離した。
〈FP2の合成〉
P(VDF−PFA)(組成モル比:VDF/パーフロオロアルキルビニルエーテル=75/25)のポリマーを合成した。
FP1と同様に合成したが、但し、ここでは開始剤としてジ−i−プロピルペルオキシジカーボネート(IPP)を使用し、溶媒としてDMDSOを使用した。
〈FP3の合成〉
P(VDF−HFP)(組成モル比:VDF/HFP(ヘキサフルオロプロペン)=75/25)のポリマーを合成した。
FP1と同様に合成したが、但し、ここでは開始剤としてジ−i−プロピルペルオキシジカーボネート(IPP)を使用し、溶媒としてDMFを使用した。
〈FP4の合成〉
P(VDF−TrF)(組成モル比:VDF/トリフルオロエチレン=75/25)のポリマーを合成した。
DMF溶液にVDFとPFAを2:1(質量比)で濃度が15質量%となるように溶解し、開始剤ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)を使用した。開始剤の濃度は溶媒の0.8質量%の濃度になるようにした。60℃3時間重合を行った後、反応溶液の300質量%の水を投入して沈殿後、沈殿物を水洗し、乾燥してFP4を単離した。
《非フッ素系の高分子の合成》
〈NFP1の合成〉
ジフェニルメタンジイソシアナートのオリゴマーを作製した。
20℃の恒温槽に4,4′−ジフェニルメタンイソシアナートと4,4′−ジフェニルメタンジアミンをそれぞれ1:1の質量比でアセトンに30質量%濃度に溶解して添加し、11時間反応させた。溶媒は、蒸留で除去した。
[無機圧電材料微粒子を含む有機高分子圧電材料フィルム]
上記合成された高分子12gの中に溶媒DMFを100g添加して前記調製した無機圧電材料微粒子6gを分散し、無機圧電素子膜の上にキャストして、150μ厚のウエット薄膜を形成させた。この薄膜を表1記載のようにして電圧と磁場の印加で分極処理を実施し、無機圧電材料微粒子を含む有機高分子圧電材料フィルム(本発明の有機圧電フィルム、等)試料101〜113を作製した。分極処理の温度は80℃で行った。
性能試験は超音波探触子を常法によりバッキング層を背面に取り付けて試作し、7.5MHzの基本周波数f1を発信させ、受信高調波f2として15MHzの受信相対感度(受信相対感度とは、入力電圧に対する出力電圧の比に定数を掛けた値である。)を求めた。受信相対感度は、ソノーラメディカルシステム社(Sonora Medical System,Inc:2021Miller Drive Longmont,Colorado (0501 USA))の音響強度測定システムModel805(1〜50MHz)測定システムを使用した。
結果を、表1に示す。
Figure 2008047693
表1から、本発明の場合、即ち、有機高分子圧電材料(高分子圧電性樹脂)のマトリックス中に圧電性無機微粒子を分散し、磁場及び/又は電場を印加し分極処理(圧電性を付与)をすると、特に高感度の圧電性薄膜(本発明の有機圧電フィルム)が得られることがわかる。

Claims (12)

  1. 有機高分子圧電材料のマトリックス中に無機圧電材料微粒子を分散させ、電場を印加した、または、磁場及び電場を印加した、ことを特徴とする圧電材料。
  2. 前記無機圧電材料微粒子の平均粒子径が5nm〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の圧電材料。
  3. 前記有機高分子圧電材料が、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電材料。
  4. 前記有機高分子圧電材料が、弗化ビニリデン、3弗化エチレン、ヘキサフルオロプロペン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを使用した有機高分子圧電材料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電材料。
  5. 前記無機圧電材料微粒子が、CaBi4Ti415、BaBi4Ti415、SrBi4Ti415、Na0.5Bi4.5Ti415、Bi4Ti312、CaBi2Ta29、CaBi2Nb29、BaBi2Ta29、BaBi2Nb29、SrBi2Ta29、SrBi2Nb29、Sr1.9Ca0.1NaNb515、SrNb26、BaNb26、NaBa2Nb515、KBa2Nb515、NaSr2Nb515およびBi1/3Ba2Nb515から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電材料。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電材料であり、磁場印加に加えて、直流又は交流電圧印加或いはコロナ放電印加を加えた、処理により分極処理をした圧電材料であることを特徴とする超音波探触子。
  7. 有機高分子圧電材料のマトリックス中に無機圧電材料微粒子を分散させ、電場を印加した、または、磁場及び電場を印加した、ことを特徴とする圧電材料の製造方法。
  8. 前記無機圧電材料微粒子の平均粒子径が5nm〜100μmであることを特徴とする請求項7に記載の圧電材料の製造方法。
  9. 前記有機高分子圧電材料が、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7または8に記載の圧電材料の製造方法。
  10. 前記有機高分子圧電材料が、弗化ビニリデン、3弗化エチレン、ヘキサフルオロプロペン及びパーフルオロアルキルビニルエーテルから選ばれる少なくとも1種のモノマーを使用した有機高分子圧電材料であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法。
  11. 前記無機圧電材料微粒子が、CaBi4Ti415、BaBi4Ti415、SrBi4Ti415、Na0.5Bi4.5Ti415、Bi4Ti312、CaBi2Ta29、CaBi2Nb29、BaBi2Ta29、BaBi2Nb29、SrBi2Ta29、SrBi2Nb29、Sr1.9Ca0.1NaNb515、SrNb26、BaNb26、NaBa2Nb515、KBa2Nb515、NaSr2Nb515およびBi1/3Ba2Nb515から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法。
  12. 請求項7〜11のいずれか1項に記載の圧電材料の製造方法であり、磁場印加に加えて、直流又は交流電圧印加或いはコロナ放電印加を加えた、処理により分極処理をする圧電材料の製造方法であることを特徴とする超音波探触子の製造方法。
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