JP2008047305A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】サイクル特性が向上した非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明の非水電解液二次電池は、Siを含む負極活物質層を有する負極と、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層を有する正極とを備える。負極におけるSiに対する、正極におけるCoの重量比(Co/Si)を0.3〜5.5の範囲内としたことを特徴とする。正極活物質層におけるリチウム遷移金属複合酸化物に含まれるCoの量は、該複合酸化物に含まれる遷移金属の総量に対して10〜40重量%であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の非水電解液二次電池は、Siを含む負極活物質層を有する負極と、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層を有する正極とを備える。負極におけるSiに対する、正極におけるCoの重量比(Co/Si)を0.3〜5.5の範囲内としたことを特徴とする。正極活物質層におけるリチウム遷移金属複合酸化物に含まれるCoの量は、該複合酸化物に含まれる遷移金属の総量に対して10〜40重量%であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に関する。
リチウム二次電池における正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が一般に用いられている。一方、負極活物質としてはグラファイト等の炭素系材料が一般に用いられている。また、次世代の活物質として、炭素系材料よりも容量の大きな材料であるシリコン系材料やスズ系材料の使用も試みられている。これら正極活物質や負極活物質は、電池の充放電によってリチウムを吸蔵放出するときに膨張収縮することが知られている。この膨張収縮による体積変化に起因して生ずる応力は、正極や負極にダメージを与える一因となり、それによって電池のサイクル特性が劣化しやすくなる。
充放電に起因して体積変化が生じることを防止することを目的として、正極活物質として、放電時に結晶構造が膨張し、充電時に結晶構造が収縮する活物質と、放電時に結晶構造が収縮し、充電時に結晶構造が膨張する活物質を混合して用いることが提案されている(特許文献1参照)。また正極の活物質層が二つ以上の合剤層からなり、隣接する合剤層の一方に含有される活物質として放電時に膨張し充電時に収縮するリチウム含有遷移金属酸化物を用い、もう一方の合剤層に含有される活物質として放電時に収縮し充電時に膨張するリチウム含有遷移金属酸化物を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
一方、負極活物質に関しては、負極集電体の一方の面に配する活物質として、他方の面に配する活物質よりも充放電過程における膨張収縮の変化量が大きいものを用いることが提案されている(特許文献3参照)。同文献には、正極集電体の一方の面に充電過程で膨張し、放電過程で収縮する活物質を配し、他方の面に充電過程で収縮し、放電過程で膨張する活物質を配することも提案されている。
充放電に起因する体積変化に関し、前記の各文献とは別に、特許文献4においては、正極活物質としてリチウムの放出時(即ち電池の充電時)に結晶格子が大きく収縮する材料であるスピネル型リチウムマンガン複合酸化物を用い、且つ正極活物質としてリチウムの吸蔵時に膨張する材料である炭素材料を用いると、充電時に負極側の炭素材料にゆるみが生じやすいという欠点があることが指摘されている。そこで、同文献においては、リチウムの放出時における正極活物質の収縮を抑制することで、充電時における負極側の前記のゆるみを抑制することが提案されている。
前記の各文献において用いられている負極活物質は何れも炭素をベースとした材料であるところ、該材料はリチウムの吸蔵時に膨張はするものの、その膨張の程度は、次世代の負極活物質として目されているシリコン系材料やスズ系材料に比較すると、それほど大きいなものではない。従って、前記の各文献に記載されている系において、負極活物質として炭素をベースとした材料に代えて、それよりもリチウム吸蔵時の膨張の程度の大きな材料を用いた場合にも同様の効果が奏されるか否かは不明である。
本発明の目的は、前述した従来技術の電池よりも、充放電に起因する電池全体の膨張収縮の程度が軽減された非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明は、Siを含む負極活物質層を有する負極と、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層を有する正極とを備え、負極におけるSiに対する、正極におけるCoの重量比(Co/Si)が0.3〜5.5の範囲内であることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
本発明によれば、電池における負極活物質中のSiの量と、正極活物質中のCoの量とを特定の範囲内に設定することで、充放電に起因する電池全体の膨張収縮の程度が軽減され、それによって膨張収縮によって発生する応力が軽減して正極及び負極が受けるダメージが少なくなる。その結果、電池のサイクル特性が向上する。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の非水電解液二次電池(以下、単に二次電池又は電池ともいう)は、その基本構成部材として、正極、負極及びこれらの間に配されたセパレータを有している。正極と負極との間はセパレータを介して非水電解液で満たされている。本発明の電池は、これら基本構成部材を備えた円筒型、角型、コイン型等の形態であり得る。しかしこれらの形態に制限されるものではない。
本発明の電池に用いられる正極は、例えば集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されてなるものである。正極活物質層には活物質が含まれている。この活物質として本発明において用いられるものは、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物である。この複合酸化物は、Coを構成元素の一つとして含有しているので、リチウムの吸蔵時に収縮し、放出時に膨張する性質を有している。リチウム二次電池の正極活物質して用いられるリチウム遷移金属複合酸化物には、Coを構成元素の一つとして含有する材料の他に、例えばLiNiO2のようにNiを構成元素として含有するものや、LiMn2O4のようにMnを構成元素として含有するものが知られているが、これらの材料は、リチウムの吸蔵時に膨張するか、又はリチウム吸蔵時の収縮の程度が、本発明で用いられるLi及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物よりも小さいものである。
前記の複合酸化物としては、例えば以下の式(1)で表されるものが用いられる。
LiCoXM1-XO2 (1)
(式中、xは1未満の正数を示し、Mは金属元素を示す。)
LiCoXM1-XO2 (1)
(式中、xは1未満の正数を示し、Mは金属元素を示す。)
前記の式中、Mで表される金属元素としては、例えばCo以外の遷移金属元素及びLi以外の典型金属元素が挙げられる。遷移金属元素としては、例えばNi、Mn、Fe、V、Zr、Ti、Mo、W、Nb等が挙げられる。特に、遷移金属元素としてNi及び/又はMnを用いることが好ましい。一方、典型金属元素としては、例えばMg、Al、Gaが挙げられる。前記の複合酸化物におけるxは前述の通り1未満の正数であり、好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.11〜0.30である。
また、前記の複合酸化物に含まれるCoの量は、該複合酸化物に含まれる遷移金属元素の総量に対して好ましくは10〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。前記の複合酸化物におけるCoの量をこの範囲内に設定することにより、該複合酸化物がリチウムを吸蔵したときの収縮の程度を適切な範囲内にすることが可能となる。
前記の複合酸化物の具体例としては、例えばLi(CoaMnbNic)O2(式中、a+b+c=1、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、但しbとcは同時に0にはならない)、Li(CoaFeb)O2(式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1)、Li(CoaVb)O2(式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1)などが挙げられる。これらの複合酸化物は単独で用いてもよく、或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの複合酸化物のうち、リチウムの吸蔵放出に起因する体積変化が大きな材料を用いることが好ましい。その理由は、該複合酸化物と組み合わせて用いられる負極活物質であるSiを含む材料は、リチウムの吸蔵放出に起因する体積変化が大きい材料なので、該複合酸化物とSiを含む材料とで、電池全体の体積変化が相殺されやすいからである。この観点からの好ましい材料としては、例えばLiMn0.3Co0.4Ni0.3O2、LiMn0.45Co0.10Ni0.45O2、LiMn1/3Co1/3Ni1/3O2等が挙げられる。これらの材料は、公知の方法、例えば炭酸リチウムと遷移金属酸化物とを大気中で焼成することによって製造される。
本発明に用いられる正極は、前記の複合酸化物を、アセチレンブラック等の導電剤及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤とともに適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これをアルミニウム箔等の集電体の少なくとも一面に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスすることにより得られる。
本発明の電池に用いられる負極は、例えば集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されてなるものである。負極活物質層には活物質が含まれている。この活物質として本発明において用いられるものは、Siを含む物質である。Siを含む負極活物質は、リチウムの吸蔵時に膨張し、放出時に収縮する性質を有している。この膨張収縮の程度は、従来リチウム二次電池の負極活物質として用いられてきた炭素系材料に比較して極めて大きいものである。
Siを含む負極活物質はリチウムイオンの吸蔵放出が可能なものである。その例としては、シリコン単体、シリコンと金属との合金、シリコン酸化物などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、或いはこれらを混合して用いることができる。前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及びAuからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特に電子伝導性に優れる点、及びリチウム化合物の形成能の低さの点から、Cu、Niを用いることが望ましい。また、負極を電池に組み込む前に、又は組み込んだ後に、シリコン系材料からなる活物質に対してリチウムを吸蔵させてもよい。特に好ましいシリコン系材料は、リチウムの吸蔵量の高さの点からシリコン又はシリコン酸化物である。
負極活物質層は、例えば、前記の負極活物質からなる連続薄膜層、前記の負極活物質の粒子を含む塗膜層、前記の負極活物質の粒子を含む焼結体層等であり得る。また、後述する図1に示す構造の層であり得る。
本発明の電池におけるセパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フィルム等が好ましく用いられる。電池の過充電時に生じる電極の発熱を抑制する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面にフェロセン誘導体の薄膜が形成されてなるセパレータを用いることが好ましい。セパレータは、突刺強度が0.2N/μm厚以上0.49N/μm厚以下であり、巻回軸方向の引張強度が40MPa以上150MPa以下であることが好ましい。充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質を用いても、セパレータの損傷を抑制することができ、内部短絡の発生を抑制することができるからである。
非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C2F5SO2)2NLi、LiClO4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCl、LiBr、LiI、LiC4F9SO3等が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのリチウム塩のうち、耐水分解性が優れている点から、CF3SO3Li、(CF3SO2)NLi、(C2F5SO2)2NLiを用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。特に、非水電解液全体に対し0.5〜5重量%のビニレンカーボネート及び0.1〜1重量%のジビニルスルホン、0.1〜1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートを含有させることが充放電サイクル特性を更に向上する観点から好ましい。その理由について詳細は明らかでないが、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートとジビニルスルホンが段階的に分解して、正極上に被膜を形成することにより、硫黄を含有する被膜がより緻密なものになるためであると考えられる。
特に非水電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン,4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン或いは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体のような比誘電率が30以上の高誘電率溶媒を用いることも好ましい。耐還元性が高く、分解されにくいからである。また、上記高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、或いはメチルエチルカーボネートなどの粘度が1mPa・s以下である低粘度溶媒を混合した電解液も好ましい。より高いイオン伝導性を得ることができるからである。更に、電解液中のフッ素イオンの含有量が14質量ppm以上1290質量ppm以下の範囲内であることも好ましい。電解液に適量なフッ素イオンが含まれていると、フッ素イオンに由来するフッ化リチウムなどの被膜が負極に形成され、負極における電解液の分解反応を抑制することができると考えられるからである。更に、酸無水物及びその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種の添加物が0.001重量%〜10重量%含まれていることが好ましい。これにより負極の表面に被膜が形成され、電解液の分解反応を抑制することができるからである。この添加物としては、環に−C(=O)−O−C(=O)−基を含む環式化合物が好ましく、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−スルホ安息香酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、無水ヘキサフルオログルタル酸、無水3−フルオロフタル酸、無水4−フルオロフタル酸などの無水フタル酸誘導体、又は無水3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水2,3−ナフタレンカルボン酸、無水1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの無水1,2−シクロアルカンジカルボン酸、又はシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物或いは3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物などのテトラヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物(シス異性体、トランス異性体)、3,4,5,6−テトラクロロフタル酸無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、二無水ピロメリット酸、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
本発明においては、負極におけるSiに対する、正極におけるCoの重量比(Co/Si)を0.3〜5.5の範囲内に設定した点に特徴の一つを有する。先に述べた通り、本発明において用いられる正極活物質は、リチウムの吸蔵時に膨張し、放出時に収縮する性質を有するものであり、一方、負極活物質は、リチウムの吸蔵時に膨張し、放出時に収縮する性質を有するものである。つまり、本発明で用いられる正極活物質と負極活物質は、リチウムの吸蔵放出に関し、その体積変化が正反対の挙動を示す。従って、本発明の電池の充電時には負極活物質が膨張し、正極活物質が収縮する。逆に、放電時には正極活物質が膨張し、負極活物質が収縮する。このように、充電時においては、負極活物質の膨張分の体積が正極活物質の収縮分の体積によって吸収され、逆に放電時においては、正極活物質の膨張分の体積が負極活物質の収縮分の体積によって吸収される。これによって、充電時及び放電時の何れの場合においても、電池全体の体積変化に起因する応力の発生を抑えることができ、正極及び負極並びにセパレータ等が損傷を受けることが効果的に防止される。その結果、電池のサイクル特性が向上する。
特に本発明においては、リチウムの吸蔵放出に関し、その体積変化が正反対の挙動を示す正極活物質と負極活物質を単に用いただけではなく、両者の比率、具体的にはCo/Siの重量比を前記の範囲内に設定しているので、電池全体の体積変化に起因する応力の発生を一層効果的に抑えることができる。具体的には、Co/Siの重量比を0.3以上に設定することで、Co量の減少による正極起因のレート特性の低下を回避し、Si負極についても高いエネルギー密度(又は容量)が得られることとなる。またCo/Siの重量比を5.5以下に設定することで、充電時における正極活物質の収縮と負極活物質の膨張とのバランスが良好になり、十分に応力緩和されることとなる。これらの有利な効果を一層顕著なものとする観点から、Co/Siの重量比を0.4〜2.5、特に0.4〜1に設定することが特に好ましい。
図1には本発明において用いられる負極の好適な一実施形態の断面構造の模式図が示されている。本実施形態の負極10は、集電体11と、その少なくとも一面に形成された活物質層12を備えている。なお図1においては、便宜的に集電体11の片面にのみ活物質層12が形成されている状態が示されているが、活物質層は集電体の両面に形成されていてもよい。
活物質層12においては、Siを含む活物質の粒子12aの表面の少なくとも一部が、リチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されている。この金属材料13は、粒子12aの構成材料と異なる材料である。該金属材料で被覆された該粒子12aの間には空隙が形成されている。つまり該金属材料は、リチウムイオンを含む非水電解液が粒子12aへ到達可能なような隙間を確保した状態で該粒子12aの表面を被覆している。図1中、金属材料13は、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。なお同図は活物質層12を二次元的にみた模式図であり、実際は各粒子は他の粒子と直接ないし金属材料13を介して接触している。「リチウム化合物の形成能の低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
金属材料13は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。特に金属材料13は、活物質の粒子12aが膨張収縮しても該粒子12aの表面の被覆が破壊されにくい延性の高い材料であることが好ましい。そのような材料としては銅を用いることが好ましい。
金属材料13は、活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることが好ましい。そして金属材料13のマトリックス中に活物質の粒子12aが存在していることが好ましい。これによって、充放電によって該粒子12aが膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。また、金属材料13を通じて活物質層12全体の電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成すること、特に活物質層12の深部に電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成することが効果的に防止される。金属材料13が活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることは、該材料13を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。
金属材料13は、粒子12aの表面を連続に又は不連続に被覆している。金属材料13が粒子12aの表面を連続に被覆している場合には、金属材料13の被覆に、非水電解液の流通が可能な微細な空隙を形成することが好ましい。金属材料13が粒子12aの表面を不連続に被覆している場合には、粒子12aの表面のうち、金属材料13で被覆されていない部位を通じて該粒子12aへ非水電解液が供給される。このような構造の金属材料13の被覆を形成するためには、例えば後述する条件に従う電解めっきによって金属材料13を粒子12aの表面に析出させればよい。
活物質の粒子12aの表面を被覆している金属材料13は、その厚みの平均が好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜0.25μmという薄いものである。つまり金属材料13は最低限の厚みで以て活物質の粒子12aの表面を被覆している。これによって、エネルギー密度を高めつつ、充放電によって粒子12aが膨張収縮して微粉化することに起因する脱落を防止している。ここでいう「厚みの平均」とは、活物質の粒子12aの表面のうち、実際に金属材料13が被覆している部分に基づき計算された値である。従って活物質の粒子12aの表面のうち金属材料13で被覆されていない部分は、平均値の算出の基礎にはされない。
金属材料13で被覆された粒子12a間に形成された空隙は、リチウムイオンを含む非水電解液の流通の経路としての働きを有している。この空隙の存在によって非水電解液が活物質層12の厚み方向へ円滑に流通するので、サイクル特性を向上させることができる。更に、粒子12a間に形成されている空隙は、充放電で活物質の粒子12aが体積変化することに起因する応力を緩和するための空間としての働きも有する。充電によって体積が増加した活物質の粒子12aの体積の増加分は、この空隙に吸収される。その結果、該粒子12aの微粉化が起こりづらくなり、また負極10の著しい変形が効果的に防止される。
活物質層12は、後述するように、好適には粒子12a及び結着剤を含むスラリーを集電体上に塗布し乾燥させて得られた塗膜に対し、所定のめっき浴を用いた電解めっきを行い、粒子12a間に金属材料13を析出させることで形成される。
非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成するためには、前記の塗膜内にめっき液を十分浸透させることが好ましい。これに加えて、該めっき液を用いた電解めっきによって金属材料13を析出させるための条件を適切なものとすることが好ましい。めっきの条件にはめっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。めっき浴のpHに関しては、これを7.1〜11に調整することが好ましい。pHをこの範囲内とすることで、活物質の粒子12aの溶解が抑制されつつ、該粒子12aの表面が清浄化されて、粒子表面へのめっきが促進され、同時に粒子12a間に適度な空隙が形成される。pHの値は、めっき時の温度において測定されたものである。
めっきの金属材料13として銅を用いる場合には、ピロリン酸銅浴を用いることが好ましい。また該金属材料としてニッケルを用いる場合には、例えばアルカリ性のニッケル浴を用いることが好ましい。特に、ピロリン酸銅浴を用いると、活物質層12を厚くした場合であっても、該層の厚み方向全域にわたって、前記の空隙を容易に形成し得るので好ましい。また、活物質の粒子12aの表面には金属材料13が析出し、且つ該粒子12a間では金属材料13の析出が起こりづらくなるので、該粒子12a間の空隙が首尾良く形成されるという点でも好ましい。ピロリン酸銅浴を用いる場合、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
ピロリン酸銅浴を用いる場合には特に、P2O7の重量とCuの重量との比(P2O7/Cu)で定義されるP比が5〜12であるものを用いることが好ましい。P比が5未満のものを用いると、活物質の粒子12aを被覆する金属材料13が厚くなる傾向となり、粒子12a間に所望の空隙を形成させづらい場合がある。また、P比が12を超えるものを用いると、電流効率が悪くなり、ガス発生などが生じやすくなることから生産安定性が低下する場合がある。更に好ましいピロリン酸銅浴として、P比が6.5〜10.5であるものを用いると、活物質の粒子12a間に形成される空隙のサイズ及び数が、活物質層12内での非水電解液の流通に非常に有利になる。
アルカリ性のニッケル浴を用いる場合には、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
このアルカリ性のニッケル浴と前述のピロリン酸銅浴とを比べると、ピロリン酸銅浴を用いた場合の方が活物質層12内に適度な空隙が形成される傾向があり、負極の長寿命化を図りやすいので好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
このアルカリ性のニッケル浴と前述のピロリン酸銅浴とを比べると、ピロリン酸銅浴を用いた場合の方が活物質層12内に適度な空隙が形成される傾向があり、負極の長寿命化を図りやすいので好ましい。
前記の各種めっき浴に、タンパク質、活性硫黄化合物、セルロース等の銅箔製造用電解液に用いられる各種添加剤を加えることにより、金属材料13の特性を適宜調整することも可能である。
上述の各種方法によって形成される活物質層全体の空隙の割合、つまり空隙率は、15〜45体積%程度、特に20〜40体積%程度であることが好ましい。空隙率をこの範囲内とすることで、非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成することが可能となる。活物質層12の空隙量は、水銀圧入法(JIS R 1655)で測定される。水銀圧入法は、固体中の細孔の大きさやその容積を測定することによって、その固体の物理的形状の情報を得るための手法である。水銀圧入法の原理は、水銀に圧力を加えて測定対象物の細孔中へ圧入し、その時に加えた圧力と、押し込まれた(浸入した)水銀体積の関係を測定することにある。この場合、水銀は活物質層12内に存在する大きな空隙から順に浸入していく。本発明においては、圧力90MPaで測定した空隙量を全体の空隙量とみなしている。活物質層12の空隙率(%)は、前記の方法で測定された単位面積当たりの空隙量を、単位面積当たりの活物質層12の見かけの体積で除し、それに100を乗じることにより求める。
活物質の粒子12aの粒径を適切に選択することによっても、前記の空隙率をコントロールすることができる。この観点から、粒子12aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜4μmであることが好ましい。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると強度が低下し活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質層の厚みは10〜40μm、好ましくは15〜30μm、更に好ましくは18〜25μmである。
本実施形態の負極10においては、活物質層12の表面に薄い表面層(図示せず)が形成されていてもよい。また負極10はそのような表面層を有していなくてもよい。表面層の厚みは、0.25μm以下、好ましくは0.1μm以下という薄いものである。表面層の厚みの下限値に制限はない。表面層を形成することで、微粉化した活物質の粒子12aの脱落を一層防止することができる。尤も、本実施形態においては、活物質層12の空隙率を上述した範囲内に設定することによって、表面層を用いなくても微粉化した活物質の粒子12aの脱落を十分に防止することが可能である。
負極10が前記の厚みの薄い表面層を有するか又は該表面層を有していないことによって、負極10を用いて二次電池を組み立て、当該電池の初期充電を行うときの過電圧を低くすることができる。このことは、二次電池の充電時に負極10の表面でリチウムが還元することを防止できることを意味する。リチウムの還元は、両極の短絡の原因となるデンドライトの発生につながる。
負極10が表面層を有している場合、該表面層は活物質層12の表面を連続又は不連続に被覆している。表面層が活物質層12の表面を連続に被覆している場合、該表面層は、その表面において開孔し且つ活物質層12と通ずる多数の微細空隙(図示せず)を有していることが好ましい。微細空隙は表面層の厚さ方向へ延びるように表面層中に存在していることが好ましい。微細空隙は非水電解液の流通が可能なものである。微細空隙の役割は、活物質層12内に非水電解液を供給することにある。微細空隙は、負極10の表面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、金属材料13で被覆されている面積の割合、即ち被覆率が95%以下、特に80%以下、とりわけ60%以下となるような大きさであることが好ましい。被覆率が95%を超えると、高粘度な非水電解液が浸入しづらくなり、非水電解液の選択の幅が狭くなるおそれがある。
表面層は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されている。この金属材料は、活物質層12中に存在している金属材料13と同種でもよく、或いは異種でもよい。また表面層は、異なる2種以上の金属材料からなる2層以上の構造であってもよい。負極10の製造の容易さを考慮すると、活物質層12中に存在している金属材料13と、表面層を構成する金属材料とは同種であることが好ましい。
本実施形態の負極10は、活物質層12中の空隙率が高い値になっているので、折り曲げに対する耐性が高いものである。具体的には、JIS C 6471に従い測定されたMIT耐折性が好ましくは30回以上、更に好ましくは50回以上という高耐折性を有している。耐折性が高いことは、負極10を折り畳んだり巻回したりして電池容器内に収容する場合に、負極10に折れが生じにくくなることから極めて有利である。MIT耐折装置としては、例えば東洋精機製作所製の槽付フィルム耐折疲労試験機(品番549)が用いられ、屈曲半径0.8mm、荷重0.5kgf、サンプルサイズ15×150mmで測定することができる。
負極10における集電体11としては、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体11は、先に述べたリチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。また、コルソン合金箔に代表されるような銅合金箔の使用も可能である。更に集電体として、常態抗張力(JIS C 2318)が好ましくは500MPa以上である金属箔、例えば前記のコルソン合金箔の少なくとも一方の面に銅被膜層を形成したものを用いることもできる。更に集電体として常態伸度(JIS C 2318)が4%以上のものを用いることも好ましい。抗張力が低いと活物質が膨張した際の応力によりシワが生じ、伸び率が低いと該応力により集電体に亀裂が入ることがあるからである。これらの集電体を用いることで、上述した負極10の耐折性を一層高めることが可能となる。集電体11の厚みは、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、9〜35μmであることが好ましい。なお、集電体11として銅箔を使用する場合には、クロメート処理や、トリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物などの有機化合物を用いた防錆処理を施しておくことが好ましい。
次に、本実施形態の負極10の好ましい製造方法について、図2を参照しながら説明する。本製造方法では、活物質の粒子及び結着剤を含むスラリーを用いて集電体11上に塗膜を形成し、次いでその塗膜に対して電解めっきを行う。
先ず図2(a)に示すように集電体11を用意する。そして集電体11上に、活物質の粒子12aを含むスラリーを塗布して塗膜15を形成する。集電体11における塗膜形成面の表面粗さは、輪郭曲線の最大高さで0.5〜4μmであることが好ましい。最大高さが4μmを超えると塗膜15の形成精度が低下する上、凸部に浸透めっきの電流集中が起こりやすい。最大高さが0.5μmを下回ると、活物質層12の密着性が低下しやすい。活物質の粒子12aとしては、好適に上述した粒度分布及び平均粒径を有するものを用いる。
スラリーは、活物質の粒子の他に、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。またスラリーはアセチレンブラックやグラファイトなどの導電性炭素材料の粒子を少量含んでいてもよい。特に、活物質の粒子12aの重量に対して導電性炭素材料を1〜3重量%含有することが好ましい。導電性炭素材料の含有量が1重量%未満であると、スラリーの粘度が低下して活物質の粒子12aの沈降が促進されるため、良好な塗膜15及び均一な空隙を形成しにくくなる。また導電性炭素材料の含有量が3重量%を超えると、該導電性炭素材料の表面にめっき核が集中し、良好な被覆を形成しにくくなる。
結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子12aの量は30〜70重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
形成された塗膜15は、粒子12a間に多数の微小空間を有する。塗膜15が形成された集電体11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬する。めっき浴への浸漬によって、めっき液が塗膜15内の前記微小空間に浸入して、塗膜15と集電体11との界面にまで達する。その状態下に電解めっきを行い、めっき金属種を粒子12aの表面に析出させる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。浸透めっきは、集電体11をカソードとして用い、めっき浴中にアノードとしての対極を浸漬し、両極を電源に接続して行う。
浸透めっきによる金属材料の析出は、塗膜15の一方の側から他方の側に向かって進行させることが好ましい。具体的には、図2(b)ないし(d)に示すように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するように電解めっきを行う。金属材料13をこのように析出させることで、活物質の粒子12aの表面を金属材料13で首尾よく被覆することができると共に、金属材料13で被覆された粒子12a間に空隙を首尾よく形成することができる。
前述のように金属材料13を析出させるための浸透めっきの条件には、めっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。このような条件については既に述べた通りである。
図2(b)ないし(d)に示されているように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するようにめっきを行うと、析出反応の最前面部においては、ほぼ一定の厚みで金属材料13のめっき核からなる微小粒子13aが層状に存在している。金属材料13の析出が進行すると、隣り合う微小粒子13aどうしが結合して更に大きな粒子となり、更に析出が進行すると、該粒子どうしが結合して活物質の粒子12aの表面を連続的に被覆するようになる。
浸透めっきは、塗膜15の厚み方向全域に金属材料13が析出した時点で終了させる。めっきの終了時点を調節することで、活物質層12の上面に表面層(図示せず)を形成することができる。このようにして、図2(d)に示すように、目的とする負極が得られる。
浸透めっき後、負極10を防錆処理することも好ましい。防錆処理としては、例えばベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物及びイミダゾール等を用いる有機防錆や、コバルト、ニッケル、クロメート等を用いる無機防錆を採用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体上にSiの粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。Siの粒子の平均粒径D50は2.5μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体上にSiの粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。Siの粒子の平均粒径D50は2.5μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。
塗膜が形成された集電体を、以下の浴組成を有するピロリン酸銅浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対して銅の浸透めっきを行い、活物質層を形成した。電解の条件は以下の通りとした。陽極にはDSEを用いた。電源は直流電源を用いた。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
浸透めっきは、塗膜の厚み方向全域にわたって銅が析出した時点で終了させ、水洗、ベンゾトリアゾール(BTA)による防錆処理を施して目的とする負極を得た。負極におけるSiの量は表1に示す通りであった。
負極の製造とは別に正極を製造した。正極活物質として表1に示すものを用いた。これを、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデンともに、溶媒であるポリビニルピロリドンに懸濁させ正極合剤を得た。この正極合剤をアルミニウム箔からなる集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延及びプレスを行い正極を得た。正極におけるCoの量は表1に示す通りであった。
電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液に対して、ビニレンカーボネートを2体積%外添したものを用いた。セパレータとしては厚み20μmのポリプロピレン製多孔質フィルムを用いた。これらの部材を用いて、リチウム二次電池を作製した。この電池におけるCo/Siの重量比は表1に示す通りであった。
〔実施例2ないし4及び比較例1〕
正極活物質として表1に示すものを用い且つCoの量を同表に示す値に設定して正極を製造する以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。得られた電池におけるCo/Siの重量比は表1に示す通りであった。
正極活物質として表1に示すものを用い且つCoの量を同表に示す値に設定して正極を製造する以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。得られた電池におけるCo/Siの重量比は表1に示す通りであった。
〔評価1〕
実施例及び比較例で得られた正極及び負極、並びに前記のセパレータを用い、初回目の充電に伴うこれらの部材全体の膨張率を測定した。測定には宝泉株式会社製HS変位セルを用いた。この変位セルでは、負極+セパレーター+正極の全体の厚みの膨張率が測定される。膨張率は次式から算出する。初回充電条件は、0.05C、終止電圧4.2Vで、定電流・定電圧とした。結果を表1に示す。
膨張率(%)=[(初回充電後の厚み)−(充電前の厚み)]/充電前の厚み×100
実施例及び比較例で得られた正極及び負極、並びに前記のセパレータを用い、初回目の充電に伴うこれらの部材全体の膨張率を測定した。測定には宝泉株式会社製HS変位セルを用いた。この変位セルでは、負極+セパレーター+正極の全体の厚みの膨張率が測定される。膨張率は次式から算出する。初回充電条件は、0.05C、終止電圧4.2Vで、定電流・定電圧とした。結果を表1に示す。
膨張率(%)=[(初回充電後の厚み)−(充電前の厚み)]/充電前の厚み×100
〔評価2〕
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池について、50サイクル目の容量維持率を測定した。容量維持率は、50サイクル目の放電容量を測定し、その値を13サイクル目の放電容量で除し、100を乗じて算出した。結果を表1に示す。充電条件は0.5C、4.2Vで、定電流・定電圧とした。放電条件は0.5C、2.7Vで、定電流とした。但し、1サイクル目の充放電は0.05Cとし、2〜4サイクル目の充放電は0.1C、5〜7サイクル目の充放電は0.5C、8〜10サイクル目の充放電は1Cとした。
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池について、50サイクル目の容量維持率を測定した。容量維持率は、50サイクル目の放電容量を測定し、その値を13サイクル目の放電容量で除し、100を乗じて算出した。結果を表1に示す。充電条件は0.5C、4.2Vで、定電流・定電圧とした。放電条件は0.5C、2.7Vで、定電流とした。但し、1サイクル目の充放電は0.05Cとし、2〜4サイクル目の充放電は0.1C、5〜7サイクル目の充放電は0.5C、8〜10サイクル目の充放電は1Cとした。
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の二次電池は、Co/Siの重量比が特定の範囲内に設定されていることに起因して、充電による膨張の程度が低く、それによって容量維持率が高くなることが判る。これに対して比較例の二次電池では、充電による膨張の程度が大きく、それによって容量維持率が低下することが判る。
10 非水電解液二次電池用負極
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜
Claims (5)
- Siを含む負極活物質層を有する負極と、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質層を有する正極とを備え、負極におけるSiに対する、正極におけるCoの重量比(Co/Si)が0.3〜5.5の範囲内であることを特徴とする非水電解液二次電池。
- 前記正極活物質層におけるリチウム遷移金属複合酸化物に含まれるCoの量が、該複合酸化物に含まれる遷移金属の総量に対して10〜40重量%である請求項1記載の非水電解液二次電池。
- 前記正極活物質層におけるリチウム遷移金属複合酸化物に含まれるCo以外の遷移金属が、Mn及び/又はNiである請求項1又は2記載の非水電解液二次電池。
- 前記負極が、Si系材料からなる活物質の粒子を含む負極活物質層を有し、該負極活物質層においては、該粒子の表面の少なくとも一部がリチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されていると共に、該金属材料で被覆された該粒子どうしの間に空隙が形成されている請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 前記金属材料が、前記負極活物質層の厚み方向全域にわたって前記粒子の表面に存在している請求項4記載の非水電解液二次電池。
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