JP2009272243A - 非水電解液二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好なサイクル特性と膨張しない二次電池を提供する。
【解決手段】非水溶媒が、下記式(1)及び(2)の化合物を含み、該下記式(2)のR3〜R6がHである化合物と、少なくとも一つがFである化合物との混合物である。
Figure 2009272243

【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に関する。
リチウム二次電池の負極活物質には、一般にグラファイトが使用されている。しかし、近年の電子機器の多機能化・コンパクト化に伴いその消費電力が著しく増加しており、大容量の二次電池がますます必要となっていることから、グラファイトを用いている限り、近い将来そのニーズに応えるのは困難である。そこで、グラファイトよりも高容量の材料であるSi系物質からなる負極活物質の開発が活発になされている。しかし、Si系物質からなる負極活物質は、充放電に伴う膨張収縮の程度が大きく、それに起因して微粉化が起こりやすい。
ところでSi系の負極活物質は、電池の充電時にその表面において電解液を分解することが知られている。この分解によって活物質の表面にはSEI(solid electrolyte interface)と呼ばれる被膜が形成される。SEIの形成は不可逆反応であり、活物質の表面にひとたびSEIが形成されるとそこに残存する。上述のとおり、Si系の負極活物質は充放電に伴い微粉化しやすいことから、充放電の度に新生面、即ちSEIが形成されやすい面が新たに生成する。この新生面にSEIが形成され、更には既に形成されたSEI上に新たなSEIが堆積することもある。これらの結果、充放電の繰り返しと共に二次電池が膨張し、コンパクトな電子機器に収容することができなくなる場合がある。また、充放電の繰り返しと共に活物質表面へのリチウムイオンの到達がSEIによって次第に妨げられ、電極反応が阻害されることがある。またSEIの形成によって電解液の量が減少することもある。これらのことに起因して、電池のサイクル特性を維持させることが容易でなくなる。
電解液の分解を防止する観点から、電解液に用いられる非水溶媒として4−フルオロ−エチレンカーボネートを用いることが提案されている(特許文献1及び 2参照)。これらの特許文献においては、4−フルオロ−エチレンカーボネートは、直鎖系のカーボネートであるジエチルカーボネートやジメチルカーボネートと併用されている。しかし、これらの文献には、充放電の繰り返しと共に二次電池が膨張することを防止することについて記載されていない。
特開2006−134719号公報 特開2006−179305号公報
従って、本発明の目的は、充放電の繰り返しを行ってもサイクル特性が維持されていると共に、膨張しない二次電池を提供することにある。
本発明は、正極及び負極並びに非水溶媒にリチウム塩が溶解してなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、前記負極が、集電体と、その少なくとも一面に形成された、Siを含有する活物質を含む活物質層を有し、前記非水溶媒が、下記式(1)で表される化合物I及び下記式(2)で表される化合物IIを含み、該下記式(2)で表される化合物IIが、同式においてR3〜R6がHである化合物IIaと、同式においてR3〜R6の少なくとも一つがFである化合物IIbとの混合物であり、前記非水溶媒に占める前記化合物IIbの割合が、1mol%以上、9mol%未満であることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
Figure 2009272243
本発明の非水電解液二次電池によれば、充放電の繰り返しを行ってもサイクル特性を維持しつつ、膨張を防止できる。
以下、本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の非水電解液二次電池(以下、単に二次電池又は電池ともいう)は、その基本構成部材として、正極、負極及びこれらの間に配されたセパレータを有している。正極と負極との間はセパレータを介して非水電解液で満たされている。本発明の電池は、これら基本構成部材を備えた円筒型、角型、コイン型等の形態であり得る。しかしこれらの形態に制限されるものではない。
本発明の電池に用いられる正極は、例えば集電体の少なくとも一面に正極活物質層が形成されてなるものである。正極活物質層には活物質が含まれている。この活物質としては、例えばリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12、LiNi1/3Co1/3Mn1/32、Li(LixMn2xCo1-3x)O2(式中、xは0<x<1/3である)などが用いられる。しかしこれらに制限されるものではない。これら正極活物質は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
上述の各種正極活物質のうち、LiCoO2のようにLi及びCoを構成元素として含有するものは、リチウムの吸蔵時に収縮し、放出時に膨張する性質を有している。一方、LiNiO2のようにNiを構成元素として含有するものや、LiMn24のようにMnを構成元素として含有するものは、リチウムの吸蔵時に膨張するか、又はリチウム吸蔵時の収縮の程度が、Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物よりも小さいという性質を有している。
本実施形態に用いられる正極は、前記の正極活物質を、アセチレンブラック等の導電剤及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤と共に適当な溶媒に懸濁させて正極合剤を作製し、これをアルミニウム箔等の集電体の少なくとも一面に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスすることにより得られる。
前記の方法で正極を製造する場合、前記のリチウム遷移金属複合酸化物は、その一次粒子径の平均値が5μm以上10μm以下であることが、充填密度と反応面積との兼ね合いから好ましい。また結着剤として用いられるポリフッ化ビニリデンは、その重量平均分子量が350,000以上2,000,000以下であることが、低温環境での放電特性を向上させ得る点から好ましい。
本発明の電池に用いられる負極は、例えば集電体の少なくとも一面に負極活物質層が形成されてなるものである。負極活物質層には活物質が含まれている。この活物質として本発明において用いられるものは、Siを含有する物質である。本発明の二次電池は、負極活物質としてSiを含有する物質を用い、これを後述する非水溶媒と組み合わせる点に特徴の一つを有する。その詳細については後述する。
Siを含有する負極活物質はリチウムイオンの吸蔵放出が可能なものである。Siを含む負極活物質は、リチウムの吸蔵時に膨張し、放出時に収縮する性質を有している。この膨張収縮の程度は、従来リチウム二次電池の負極活物質として用いられてきた炭素系材料に比較して極めて大きいものである。Siを含有する負極物質の例としては、シリコン単体、シリコンと金属との合金、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコンホウ化物などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、あるいはこれらを混合して用いることができる。前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及び Auからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特に電子伝導性に優れる点、及びリチウム 化合物の形成能の低さの点から、Cu、Niを用いることが望ましい。特に好ましいSiを含む負極活物質は、リチウムの吸蔵量の高さの点からシリコン単体又はシリコン酸化物である。
Siを含む負極活物質は、電池の充電開始前においてリチウムを含有していることが好ましい。これによって充放電開始前において負極活物質にリチウムが不可逆容量として蓄積された状態になる。したがって充放電は、負極活物質にリチウムが吸蔵された状態から開始されるので、充放電がほぼ100%可逆的に行われるようになる。しかも、Si系の材料は電子伝導性が低いものであるところ、放電時には、負極活物質中にリチウムが常時吸蔵された状態になっているので、その電子伝導性が向上し、負極の分極が小さくなる。これによって、放電末期における負極の電圧の急激な低下が起こりにくくなる。
Siを含む負極活物質が、電池の充電開始前においてリチウムを含有していることは、負極活物質の表面における、リチウム挿入反応時(充電時)に、過電圧を低く抑えられるという点からも有利である。過電圧を低く抑えられることで、過剰なSEI形成のような副反応を防ぐことができるからである。
充電開始前からSiを含む負極活物質にリチウムを含有させておくためには、例えば負極を電池に組み込む前に、又は組み込んだ後であってかつ充電開始前に、公知の手段によってSiを含む負極活物質に対してリチウムを吸蔵させればよい。リチウムを吸蔵させる手段としては、例えば本出願人の先の出願に係る特開2006−269216号公報に記載の方法や、特開平7−29602号公報に記載の方法を用いることができる。また、リチウム塩を含む非水溶媒に、リチウム吸蔵前の負極及び金属リチウムを、導電性材料製のメッシュを介して浸漬させ、負極と金属リチウムとを電気化学的に短絡させることでもリチウムを吸蔵させることができる。この場合、吸蔵量の制御は、環境温度、メッシュサイズ、メッシュの材質、非水溶媒の構成、浸漬時間により可能である。いずれの方法を採用する場合でも、リチウムの吸蔵量は、負極活物質の初期充電理論容量に対して好ましくは10〜40%、更に好ましくは20〜40%、一層好ましくは25〜35% に設定する。本実施形態では負極活物質としてシリコンを含む材料を用いているところ、理論的にはシリコンは組成式SiLi4.4で表される状態までリチウムを吸蔵するので、リチウムの吸蔵量が、シリコンの初期充電理論容量に対して100%であるとは、組成式SiLi4.4で表される状態までリチウムがシリコンに吸蔵されることをいう。
負極活物質層は、例えば、前記の負極活物質からなる連続薄膜層であり得る。この場合、化学気相蒸着法、物理気相蒸着法、スパッタリング法等の各種薄膜形成手段によって、集電体の少なくとも一面に薄膜からなる負極活物質層が形成される。この薄膜をエッチングしてその厚み方向に延びる空隙を多数形成してもよい。エッチングには、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた湿式エッチング法の他、ドライガスやプラズマ等を用いた乾式エッチング法が採用できる。連続薄膜層の形態以外に、負極活物質層は、前記の負極活物質の粒子を含む塗膜層、前記の負極活物質の粒子を含む焼結体層等であり得る。また、後述する図1に示す構造の層であり得る。
本発明の二次電池におけるセパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フィルム等が好ましく用いられる。電池の過充電時に生じる電極の発熱を抑制する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面にフェロセン誘導体の薄膜が形成されてなるセパレータを用いることが好ましい。セパレータは、突刺強度が0.2N/μm厚以上0.49N/μm厚以下であり、巻回軸方向の引張強度が40MPa以上150MPa以下であることが好ましい。充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質であるSi系の物質を用いても、セパレータの損傷を抑制することができ、内部短絡の発生を抑制することができるからである。
本発明の非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を非水溶媒に溶解した溶液からなる。本発明の二次電池は、非水溶媒の種類に特徴の一つを有する。具体的には、非水溶媒は、前記の式(1)表される化合物I及び(2)で表される化合物IIを含むものである。また、前記式(2)で表される化合物IIが、同式においてR3〜R6がHである化合物IIaと、同式においてR3〜R6の少なくとも一つがFである化合物IIbとの混合物からなるものである。本発明の二次電池においては負極活物質としてSiを含有する物質を用いることは先に述べたとおりであるところ、Siを含有する負極活物質は充電時の体積膨張が著しく、また充電時に非水溶媒を分解する性質を有している。これら不都合が生じることを防止するためには、前記の三者の化合物の配合割合を適切に設定することが有効であることを本発明者らは見出した。
具体的には、本発明においては、非水混合溶媒全体に占める化合物IIbの割合を、1mol%以上、9mol%未満に設定し、好ましくは2〜7mol%、更に好ましくは3〜6mol%、一層好ましくは3〜5mol%に設定する。化合物IIbの割合が1mol%未満では、サイクルに伴う、不可逆的な負極の膨張の抑制効果が認められない。
一方、化合物IIbの割合が9mol%以上では、サイクル特性は向上するものの、電解液起因の分極が大きくなり、かえって不可逆的な膨張が増大してしまう。
本発明においては、非水混合溶媒全体に占める化合物IIbの割合を特定の範囲とすることに加え、非水混合溶媒における、化合物Iに対する化合物IIaのmol比(化合物IIa/化合物I)を、0.35〜19、特に1.5〜4に設定することが好ましい。このようにすることによって、サイクルに伴う、負極の不可逆的な膨張抑制効果と、適度な粘性による良好なレート特性とのバランスが得られるという有効な効果が奏される。
サイクルに伴う、負極の膨張における、より一層の抑制効果の観点からは、化合物I及び化合物IIaの合計量に対する化合物IIbのmol比も重要であることが本発明者の検討の結果判明した。具体的には、化合物IIb/(化合物I+化合物IIa)の値を、0.01〜0.1、特に0.02〜0.8に設定することが好ましい。
以上の有効な効果を一層顕著なものとする観点から、非水混合溶媒全体に占める化合物I及び化合物IIaのそれぞれの割合は、化合物IIbの割合が上述の1mol%以上、9mol%未満であることを条件として、化合物Iが好ましくは5〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%であり、化合物IIaが好ましくは30〜95mol%、更に好ましくは40〜80mol%である。
本発明者らの検討の結果、式(1)で表される化合物IにおいてR1及びR2のうちのいずれか一方のみがFであり、他方がHであると、即ち式(1)で表される化合物Iがモノフッ化化合物であると、その分解が一層防止され、サイクル特性が一層向上することが判明した。なお、式(1)で表される化合物IにFが含まれていることで、電池の充電時に負極活物質の表面に安定なSEIが形成される。このSEI中にはLiFなどが形成されるので、これに起因して充放電を担うLiが一部消費されてしまう。したがって、負極活物質が電池の充放電開始前においてLiを含有していることは、そのLiが、消費されたLiの供給源になる点から有利である。
式(2)で表される化合物IIに関しては、同式(2)においてR3〜R6がHである化合物IIaと、同式(2)においてR3〜R6の少なくとも一つがFである化合物IIbとの混合物を用いることで、容量維持率が向上する。特に、化合物IIbに関しては、分子骨格における末端に位置する炭素に結合したR3及びR6のいずれか一方のみFであることが好ましい。更に、化合物IIa及び化合物IIbを、式(1)で表される化合物IにおいてR1及びR2のうちのいずれか一方のみがFであり、他方がHであるものと組み合わせて用いると、容量維持率が一層向上するので好ましい。
本実施形態においては、式(1)で表される化合物I及び式(2)で表される化合物IIに加えて、非水電解液二次電池に従来用いられている他の非水溶媒を更に用いてもよい。例えば式(1)においてR1及びR2がいずれもHである化合物を用いてもよい。任意に併用し得る他の非水溶媒の量は、非水溶媒全体のmolに対して1〜50%、特に10〜30%とすることが好ましい。
本実施形態においては、式(1)で表される化合物I及び式(2)で表される化合物IIに加えて、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIとい う)を用いることも好ましい。DMIを併用することで、電池の容量維持率の向上を図ることができる。非水溶媒中におけるDMIの使用量は、0.5〜1体積%であることが、電池内でのDMIの分解挙動を制御しつつ、電池の容量維持率を向上させる点から好ましい。本明細書において「体積」とは25℃における体積を意味する。
以上のとおり、本発明においては非水溶媒として前記三者の化合物の併用及び化合物IIbの量を特定することで、負極活物質として用いられるSiを含有する物質の充電時の膨張抑制及び表面における非水溶媒の分解を効果的に防止することができる。ところで、Siを含有する負極活物質は、電池の充電開始前からリチウムを含有した状態であることが好ましいことは先に述べたとおりであるところ、このような状態においては、充電時(即ち負極活物質へのリチウム挿入時)の過電圧を低く抑えられるので、負極活物質の表面に形成されるSEIが薄く且つ緻密なものになる傾向にある。このような薄く且つ緻密なSEIの形成は、充放電の度に生じる新たな活物質表面と非水溶媒との接触を抑制するので、連続的な非水溶媒の分解が起こりづらくなる。したがって、Siを含む負極活物質が電池の充電開始前からリチウムを含有している場合に、非水溶媒として前記三者の化合物を併用することで、本発明の効果が一層顕著なものとなる。
Li及びCoを構成元素として含有するリチウム遷移金属複合酸化物としてはLiCoO2が代表的なものであるが、本実施形態において用い得る該複合酸化物はこれに限られず、例えば以下の式(1)で表されるものを広く用いることができる。
LiCox1-x2 (1)
(式中、xは1未満の正数を示し、Mは金属元素を示す。)
前記の式中、Mで表される金属元素としては、例えばCo以外の遷移金属元素及びLi以外の典型金属元素が挙げられる。遷移金属元素としては、例えばNi、Mn、Fe、V、Zr、Ti、Mo、W、Nb等が挙げられる。特に、遷移金属元素としてNi及び/又はMnを用いることが好ましい。一方、典型金属元素としては、例えばMg、Al、Gaが挙げられる。前記の複合酸化物におけるxは前述のとおり1未満の正数であり、好ましくは0.1〜0.4、更に好ましくは0.11〜0.30である。具体的な組成としては、Li(LixMn2xCo1-3x)O2(式中、xは0<x<1/3である)が好ましい。この材料は、充放電時にLiが過剰に引き抜かれても構造が安定しており、正極起因による容量劣化の程度が小さいからである。
電池のサイクル特性を一層向上させる観点から、負極として、図1に示される構造のものを用いることが好ましい。同図に示す実施形態の負極10は、集電体11と、その少なくとも一面に形成された活物質層12を備えている。なお図1においては、便宜的に集電体11の片面にのみ活物質層12が形成されている状態が示されているが、活物質層は集電体の両面に形成されていてもよい。
活物質層12においては、Siを含む活物質の粒子12aの表面の少なくとも一部が、リチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されている。この金属材料13は、粒子12aの構成材料と異なる材料である。該金属材料で被覆された該粒子12aの間には空隙が形成されている。つまり該金属材料は、リチウムイオンを含む非水電解液が粒子12aへ到達可能なような隙間を確保した状態で該粒子12aの表面を被覆している。図1中、金属材料13は、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。各粒子は他の粒子と直接ないし金属材料13を介して接触している。「リチウム化合物の形成能の低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
金属材料13は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。特に金属材料13は、活物質の粒子12aが膨張収縮しても該粒子12aの表面の被覆が破壊されにくい延性の高い材料であることが好ましい。そのような材料としては銅を用いることが好ましい。
金属材料13は、活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることが好ましい。そして金属材料13のマトリックス中に活物質の粒子12aが存在していることが好ましい。これによって、充放電によって該粒子12aが膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。また、金属材料13を通じて活物質層12全体の電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成すること、特に活物質層12の深部に電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成することが効果的に防止される。金属材料13が活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の 粒子12aの表面に存在していることは、該材料13を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。
金属材料13は、粒子12aの表面を連続に又は不連続に被覆している。金属材料13が粒子12aの表面を連続に被覆している場合には、金属材料13の被覆に、非水電解液の流通が可能な微細な空隙を形成することが好ましい。金属材料13が粒子12aの表面を不連続に被覆している場合には、粒子12aの表面のうち、金属材料13で被覆されていない部位を通じて該粒子12aへ非水電解液が供給される。このような構造の金属材料13の被覆を形成するためには、例えば後述する条件に従う電解めっきによって金属材料13を粒子12aの表面に析出させればよい。
活物質の粒子12aの表面を被覆している金属材料13は、その厚みの平均が好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜0.25μmという薄いものである。つまり金属材料13は最低限の厚みで以て活物質の粒子12aの表面を被覆している。これによって、エネルギー密度を高めつつ、充放電によって粒子12aが膨張収縮して微粉化することに起因する脱落を防止している。ここでいう「厚みの平均」とは、活物質の粒子12aの表面のうち、実際に金属材料 13が被覆している部分に基づき計算された値である。したがって活物質の粒子12aの表面のうち金属材料13で被覆されていない部分は、平均値の算出の基礎にはされない。
活物質の粒子12aの表面が金属材料13で被覆されていることによって、該粒子12aには電子伝導性が付与される。その結果、充電時の過電圧を低く抑えることが可能となる。このことによって、活物質の粒子12aの表面に形成されるSEIを、薄く且つ緻密なものにすることができる。先に述べたとおり、このような薄く且つ緻密なSEIの形成は、充放電の度に生じる新たな活物質表面と非水溶媒との接触を抑制するので、連続的な非水溶媒の分解が起こりづらくなる。したがって、活物質の粒子12aの表面が金属材料13で被覆されている場合に、非水溶媒として式(1)で表される化合物I及び(2)で表される化合物IIを併用することで、 本発明の効果が一層顕著なものとなる。
金属材料13で被覆された粒子12a間に形成された空隙は、リチウムイオンを含む非水電解液の流通の経路としての働きを有している。この空隙の存在によって非水電解液が活物質層12の厚み方向へ円滑に流通するので、サイクル特性を向上させることができる。更に、粒子12a間に形成されている空隙は、充放電で活物質の粒子12aが体積変化することに起因する応力を緩和するための空間としての働きも有する。充電によって体積が増加した活物質の粒子12aの体積の増加分は、この空隙に吸収される。その結果、該粒子12aの微粉化が起こりづらくなり、また負極10の著しい変形が効果的に防止される。
活物質層12は、後述するように、好適には粒子12a及び結着剤を含むスラリーを集電体上に塗布し乾燥させて得られた塗膜に対し、所定のめっき浴を用いた電解めっきを行い、粒子12a間に金属材料13を析出させることで形成される。
非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成するためには、前記の塗膜内にめっき液を十分浸透させることが好ましい。これに加えて、該めっき液を用いた電解めっきによって金属材料13を析出させるための条件を適切なものとすることが好ましい。めっきの条件にはめっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。めっき浴のpHに関しては、これを7.1〜11に調整することが好ましい。pHをこの範囲内とすることで、活物質の粒子12aの溶解が抑制されつつ、該粒子12aの表面が清浄化されて、粒子表面へのめっきが促進され、同時に粒子12a間に適度な空隙が形成される。pHの値は、めっき時の温度において測定されたものである。
めっきの金属材料13として銅を用いる場合には、ピロリン酸銅浴を用いることが好ましい。また該金属材料としてニッケルを用いる場合には、例えばアルカリ性のニッケル浴を用いることが好ましい。特に、ピロリン酸銅浴を用いると、活物質層12を厚くした場合であっても、該層の厚み方向全域にわたって、前記の空隙を容易に形成し得るので好ましい。また、活物質の粒子12aの表面には金属材料13が析出し、且つ該粒子12a間では金属材料13の析出が起こりづらくなるので、該粒子12a間の空隙が首尾良く形成されるという点でも好ましい。ピロリン酸銅浴を用いる場合、その浴組成、電解条件及びpHは次のとおりであることが好ましい。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
ピロリン酸銅浴を用いる場合には特に、P27の重量とCuの重量との比(P27/Cu) で定義されるP比が5〜12であるものを用いることが好ましい。P比が5未満のものを用いると、活物質の粒子12aを被覆する金属材料13が厚くなる傾向となり、粒子12a間に所望の空隙を形成させづらい場合がある。また、P比が12を超えるものを用いると、電流効率が悪くなり、ガス発生などが生じやすくなることから生産安定性が低下する場合がある。更に好ましいピロリン酸銅浴として、P比が6.5〜10.5であるものを用いると、活物質の粒子12a間に形成される空隙のサイズ及び数が、活物質層12内での非水電解液の流通に非常に有利になる。
アルカリ性のニッケル浴を用いる場合には、その浴組成、電解条件及びpHは次のとおりであることが好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
このアルカリ性のニッケル浴と前述のピロリン酸銅浴とを比べると、ピロリン酸銅浴を用いた場合の方が活物質層12内に適度な空隙が形成される傾向があり、負極の長寿命化を図りやすいので好ましい。
前記の各種めっき浴に、タンパク質、活性硫黄化合物、セルロース等の銅箔製造用電解液に用いられる各種添加剤を加えることにより、金属材料13の特性を適宜調整することも可能である。
上述の各種方法によって形成される活物質層全体の空隙の割合、つまり空隙率は、15〜45体積%程度、特に20〜40体積%程度であることが好ましい。空隙率をこの範囲内とすることで、非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成することが可能となる。活物質層12の空隙量は、水銀圧入法(JIS R 1655)で測定される。水銀圧入法は、固体中の細孔の大きさやその容積を測定することによって、その固体の物理的形状の情報を得るための手法である。水銀圧入法の原理は、水銀に圧力を加えて測定対象物の細孔中へ圧入し、その時に加えた圧力と、押し込まれた(浸入した)水銀体積の関係を測定することにある。この場合、水銀は活物質層12内に存在する大きな空隙から順に浸入していく。本発明においては、圧力90MPaで測定した空隙量を全体の空隙量とみなしている。活物質層12の空隙率(%)は、前記の方法で測定された単位面積当たりの空隙量を、単位面積当たりの活物質層12の見かけの体積で除し、それに100を乗じることにより求める。
本実施形態の負極においては、水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が前記の範囲内であることに加えて、10MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が10〜40%であることが好ましい。また、1MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が0.5〜15%であることが好ましい。更に、5MPaにおいて水銀圧入法で測定された活物質層12の空隙量から算出された空隙率が1〜35%であることが好ましい。上述したとおり、水銀圧入法よる測定では、水銀の圧入条件を次第に高くしていく。そして低圧の条件下では大きな空隙に水銀が圧入され、高圧の条件下では小さな空隙に水銀が圧入される。したがって圧力1MPaにおいて測定された空隙率は、主として大きな空隙に由来するものである。一方、圧力10MPaにおいて測定された空隙率は、小さな空隙の存在も反映されたものである。
活物質の粒子12aの粒径を適切に選択することによっても、前記の空隙率をコントロールすることができる。この観点から、粒子12aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜4μmであることが好ましい。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると強度が低下し活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質層の厚みは10〜40μm、好ましくは15〜30μm、更に好ましくは18〜25μmである。
本実施形態の負極10においては、活物質層12の表面に薄い表面層(図示せず)が形成されていてもよい。また負極10はそのような表面層を有していなくてもよい。表面層の厚みは、0.25μm以下、好ましくは0.1μm以下という薄いものである。表面層の厚みの下限値に制限はない。表面層を形成することで、微粉化した活物質の粒子12aの脱落を一層防止することができる。尤も、本実施形態においては、活物質層12の空隙率を上述した範囲内に設定することによって、表面層を用いなくても微粉化した活物質の粒子12aの脱落を十分に防止することが可能である。
負極10が前記の厚みの薄い表面層を有するか又は該表面層を有していないことによって、負極10を用いて二次電池を組み立て、当該電池の初期充電を行うときの過電圧を低くすることができる。このことは、二次電池の充電時に負極10の表面でリチウムが還元することを防止できることを意味する。リチウムの還元は、両極の短絡の原因となるデンドライトの発生につながる。
負極10が表面層を有している場合、該表面層は活物質層12の表面を連続又は不連続に被覆している。表面層が活物質層12の表面を連続に被覆している場合、該表面層は、その表面において開孔し且つ活物質層12と通ずる多数の微細空隙(図示せず)を有していることが好ましい。微細空隙は表面層の厚さ方向へ延びるように表面層中に存在していることが好ましい。微細空隙は非水電解液の流通が可能なものである。微細空隙の役割は、活物質層12内に非水電解液を供給することにある。微細空隙は、負極10の表面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、金属材料13で被覆されている面積の割合、即ち被覆率が95%以下、特に80%以下、とりわけ60%以下となるような大きさであることが好ましい。被覆率が95%を超えると、高粘性率の非水電解液が浸入しづらくなり、非水電解液の選択の幅が狭くなるおそれがある。
表面層は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されている。この金属材料は、活物質層12中に存在している金属材料13と同種でもよく、あるいは異種でもよい。また表面層は、異なる2種以上の金属材料からなる2層以上の構造であってもよい。負極10の製造の容易さを考慮すると、活物質層12中に存在している金属材料13と、表面層を構成する金属材料とは同種であることが好ましい。
本実施形態の負極10は、活物質層12中の空隙率が高い値になっているので、折り曲げに対する耐性が高いものである。具体的には、JIS C 6471に従い測定されたMIT耐折性が好ましくは30回以上、更に好ましくは50回以上という高耐折性を有している。耐折性が高いことは、負極10を折り畳んだり巻回したりして電池容器内に収容する場合に、負極10に折れが生じにくくなることから極めて有利である。MIT耐折装置としては、例えば東洋精機製作所製の槽付フィルム耐折疲労試験機(品番549)が用いられ、屈曲半径0.8mm、荷重0.5kgf、サンプルサイズ15×150mmで測定することができる。
負極10における集電体11としては、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体11 は、先に述べたリチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べたとおりである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。また、コルソン合金箔に代表されるような銅合金箔の使用も可能である。更に集電体として、常態抗張力 (JIS C 2318)が好ましくは500MPa以上である金属箔、例えば前記のコルソン合金箔の少なくとも一方の面に銅被膜層を形成したものを用いることもできる。更に集電体として常態伸度(JIS C 2318)が4%以上のものを用いることも好ましい。抗張力が低いと活物質が膨張した際の応力によりシワが生じ、伸び率が低いと該応力により集電体に亀裂が入ることがあるからである。これらの集電体を用いることで、上述した負極10の耐折性を一層高めることが可能となる。集電体11の厚みは、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、9〜35μmであることが好ましい。なお、集電体11として銅箔を使用する場合には、クロメート処理や、トリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物などの有機化合物を用いた防錆処理を施しておくことが好ましい。
次に、本実施形態の負極10の好ましい製造方法について、図2を参照しながら説明する。本製造方法では、活物質の粒子及び結着剤を含むスラリーを用いて集電体11上に塗膜を形成し、次いでその塗膜に対して電解めっきを行う。
先ず図2(a)に示すように集電体11を用意する。そして集電体11上に、活物質の粒子12aを含むスラリーを塗布して塗膜15を形成する。集電体11における塗膜形成面の表面粗さは、輪郭曲線の最大高さで0.5〜4μmであることが好ましい。最大高さが4μmを超えると塗膜15の形成精度が低下する上、凸部に浸透めっきの電流集中が起こりやすい。最大高さが0.5μmを下回ると、活物質層12の密着性が低下しやすい。活物質の粒子12aとしては、好適に上述した粒度分布及び平均粒径を有するものを用いる。
スラリーは、活物質の粒子の他に、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。またスラリーはアセチレンブラックやグラファイトなどの導電性炭素材料の粒子を少量含んでいてもよい。特に、活物質の粒子12aがシリコン系材料から構成されている場合には、該活物質の粒子12aの重量に対して導電性炭素材料を1〜3重量%含有することが好ましい。導電性炭素材料の含有量が1重量%未満であると、スラリーの粘性率が低下して活物質の粒子12aの沈降が促進されるため、良好な塗膜15及び均一な空隙を形成しにくくなる。また導電性炭素材料の含有量が3重量%を超えると、該導電性炭素材料の表面にめっき核が集中し、良好な被覆を形成しにくくなる。
結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子12aの量は30〜70重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
形成された塗膜15は、粒子12a間に多数の微小空間を有する。塗膜15が形成された集電体11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬する。めっき浴への浸漬によって、めっき液が塗膜15内の前記微小空間に浸入して、塗膜15と集電体11との界面にまで達する。その状態下に電解めっきを行い、めっき金属種を粒子12aの表面に析出させる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。浸透めっきは、集電体11をカソードとして用い、めっき浴中にアノードとしての対極を浸漬し、両極を電源に接続して行う。
浸透めっきによる金属材料の析出は、塗膜15の一方の側から他方の側に向かって進行させることが好ましい。具体的には、図2(b)ないし(d)に示すよ うに、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するように電解めっきを行う。金属材料13をこのように析出させることで、活物質の粒子12aの表面を金属材料13で首尾よく被覆することができると共に、金属材料13で被覆された粒子12a間に空隙を首尾よく形成することができる。
前述のように金属材料13を析出させるための浸透めっきの条件には、めっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。このような条件については既に述べたとおりである。
図2(b)ないし(d)に示されているように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するようにめっきを行うと、析出反応の最前面部においては、ほぼ一定の厚みで金属材料13のめっき核からなる微小粒子13aが層状に存在している。金属材料13の析出が進行すると、隣り合う微小粒子13aどうしが結合して更に大きな粒子となり、更に析出が進行すると、該粒子どうしが結合して活物質の粒子12aの表面を連続的に被覆するようになる。
浸透めっきは、塗膜15の厚み方向全域に金属材料13が析出した時点で終了させる。めっきの終了時点を調節することで、活物質層12の上面に表面層(図示せず)を形成することができる。このようにして、図2(d)に示すように、目的とする負極が得られる。
浸透めっき後、負極10を防錆処理することも好ましい。防錆処理としては、例えばベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のトリアゾール系化合物及びイミダゾール等を用いる有機防錆や、コバルト、ニッケル、クロメート等を用いる無機防錆を採用できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
(1)負極の製造
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体の両面上にケイ素からなる粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。粒子の平均粒径D50は2μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。
塗膜が形成された集電体を、以下の浴組成を有するピロリン酸銅浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対して銅の浸透めっきを行い、活物質層を形成した。電解の条件は以下のとおりとした。陽極にはDSEを用いた。電源は直流電源を用いた。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
浸透めっきは、塗膜の厚み方向全域にわたって銅が析出した時点で終了させた。このようにして目的とする負極を得た。活物質層の縦断面のSEM観察によって該活物質層においては、活物質の粒子は、平均厚み240nmの銅の被膜で被覆されていることを確認した。また、活物質層の全体の空隙率は30%であった。更に10MPa下での空隙率は29%であり、1MPa下での空隙率は4%であった。得られた負極を直径14mmの大きさに打ち抜いた。
(2)正極の製造
Li1.03Mn0.06Co0.912(LMCO)を正極活物質として用いた。この正極活物質を、アセチレンブラック(AB)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)と共に、溶媒であるN−メチルピロリドンに懸濁させ正極合剤を得た。配合の重量比は、LMCO:AB:PVdF=88:6:6とした。この正極合剤をアルミニウム箔(厚さ20μm)からなる集電体にアプリケータを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、荷重0.2ton/cmのロールプレスを行い、正極を得た。この正極の厚さは約70μmであった。この正極を直径13mmの大きさに打ち抜いた。
(3)リチウム二次電池の製造
このようにして得られた正極及び負極を、20μm厚のポリエチレン製多孔質フィルムからなるセパレータを挟んで対向させた。電解液における非水溶媒として、式(1)で表される化合物IにおいてR1がFでR2がHであるもの(以下、F−ECという)と、式(2)で表される化合物IIにおいてR3〜R6のすべてがHである化合物IIa(以下、DECという)と、式(2)で表される化合物においてR3のみがFである化合物IIb(以下、F−DECという)とを、以下の表1に示す割合で混合した混合溶媒を用いた。この混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した。これらの部材をアルミニウムラミネート材に収容して、リチウム二次電池を製造した。
〔実施例2ないし3並びに比較例1〕
非水電解液における非水溶媒として、F−ECと、DECと、F−DECとを、以下の表1に示す割合で混合した混合溶媒を用い、且つ正極活物質の量及び負極活物質の量を同表に示す値とした以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたリチウム二次電池について、以下の方法で150サイクル目の容量維持率を測定し、また150サイクル目の負極の膨張率を測定した。それらの結果を以下の表1に示す。
〔150サイクル目の容量維持率〕
容量維持率は、150サイクル目の放電容量を測定し、その値を2サイクル目の放電容量で除し、100を乗じて算出した。充電条件は0.5C、4.2Vで、定電流・定電圧とした。放電条件は0.5C、2.7Vで、定電流とした。但し、1サイクル目の充放電は4.45V、0.05Cとし、2〜4サイクル目の充放電は0.1C、5〜7サイクル目の充放電は0.5C、8〜10サイクル目の充放電は1Cとした。
〔負極の膨張率の測定方法〕
負極膨張率は、前記の150サイクル目の容量維持率を測定した負極の厚みを測定し、更に初期厚み(充放電前の厚み)で除し、100を乗じて算出した。負極の厚みは、図3に示す装置を用いて測定した。同図に示す装置100は、対向配置された矩形の一対の金属板101,102と、金属板101,102の四隅に取り付けられ、該金属板101,102を摺動自在に固定するボルト103及びナット104と、上側の金属板101と各ナット104の間に配置されたスプリング105とを備えている。測定対象の電池110は、2枚の金属板101,102の間に挿入される。ナット104の締める程度を調整することで、電池110に0.45kg/cm2の圧力を加える。電池110は、集電体106aの片面に正極活物質層106bを形成した正極106と、集電体107aの片面に負極活物質層107bを形成した負極107と、両極間に配置されたセパレータ108と、これらの部材を収容するアルミニウムラミネート材で構成された収容体109とから構成されている。正極106、負極107及びセパレータ108はそれぞれ平面状のものであり、これらをその平面状態で用いてスタック型単層となし、これを収容体109内に収容して電池となす。この電池110に対して、充放電を行い、電池110の膨張に起因する厚みの変化を、マイクロメータ111を用いて測定する。この場合、正極106の厚みの変化は無視できる程度なので、電池105の厚みの変化は負極107の厚みの変化であると近似できる。
Figure 2009272243
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の電池(本発明品)は比較例の電池と同程度の高い容量維持率を維持しており、サイクル特性が良好であることが判る。さらに、各実施例の電池(本発明品)は比較例の電池に比べて充放電を繰り返したときの負極の膨張率が小さいことが判る。
本発明の非水電解液二次電池に用いられる負極の一実施形態の断面構造を示す模式図である。 図1に示す負極の製造方法を示す工程図である。 充放電に起因する負極の膨張率を測定する装置を示す模式図である。
符号の説明
10 非水電解液二次電池用負極
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜

Claims (5)

  1. 正極及び負極並びに非水溶媒にリチウム塩が溶解してなる非水電解液を有する非水電解液二次電池において、
    前記負極が、集電体と、その少なくとも一面に形成された、Siを含有する活物質を含む活物質層を有し、
    前記非水溶媒が、下記式(1)で表される化合物I及び下記式(2)で表される化合物IIを含み、該下記式(2)で表される化合物IIが、同式においてR3〜R6がHである化合物IIaと、同式においてR3〜R6の少なくとも一つがFである化合物IIbとの混合物であり、
    前記非水溶媒に占める前記化合物IIbの割合が、1mol%以上、9mol%未満であることを特徴とする非水電解液二次電池。
    Figure 2009272243
  2. 前記非水溶媒における、前記化合物Iに対する前記化合物IIaのmol比(化合物IIa/化合物I)が、0.35〜19である請求項1に記載の非水電解液二次電池。
  3. 前記非水溶媒における、前記化合物I及び前記化合物IIaの合計量に対する前記化合物IIbのmol比(化合物IIb/(化合物I+化合物IIa))が、0.01〜0.10である請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池。
  4. 前記非水溶媒に占める前記化合物Iの割合が5〜80mol%であり、前記化合物IIaの割合が1〜9mol%である請求項1〜3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
  5. 前記化合物IにおいてR1及びR2のうち何れか一方のみがFであり、他方がHである請求項1〜4の何れかに記載の非水電解液二次電池。
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