JP2008046088A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 サイドローブ方向から到来するパルス妨害を効果的に抑圧するレーダ装置を得る。
【解決手段】 自レーダ装置の送信後、最初に受信したサイドローブ方向からの妨害パルスに対してはブランキング処理により妨害を抑圧するとともに、この妨害パルスのキャンセル処理に必要なウェイトを算出し保持しておき、以降のサイドローブ方向からの妨害パルスに対しては、この保持したウェイトを適用したキャンセル処理により妨害を抑圧する。そして、算出したウェイトは、自レーダ装置の送信タイミング、あるいは走査周期に同期させて更新する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、レーダ装置に係り、特にパルス妨害を効果的に抑圧できるレーダ装置に関する。
レーダ装置に用いられる空中線の指向性は、空中線の指向している方向に対する指向性であるメインローブ以外に、その指向していない方向にも少なからず指向性を有しており、これはサイドローブと呼ばれる。このサイドローブ方向から強力な電力による妨害波が発せられた場合、レーダ装置の受信系が飽和するなどして、空中線のメインローブが指向している方向に対する目標の検出や表示も正常にできなくなるとともに、誤警報が多数発生する。このようなサイドローブ方向からの妨害に対処する手段として、SLB(Sidelobe Blanker)、及びSLC(Sidelobe Canceller)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
SLBでは、例えば、レーダ装置のメインビームのサイドローブを覆う補助ビームを補助アンテナで形成しておき、メインビームと補助ビームとの受信信号レベルの大小関係に基づきサイドローブ方向からの妨害波の到来を判断する。そして、サイドローブ方向から妨害波が到来している場合には、その期間、メインビームの出力をブランキングする。これによって、妨害波による誤警報の多発は抑えることができるが、ブランキング期間中は、目標探知を含むレーダ装置本来の機能が停止する。
一方、SLCでは、妨害波の到来する方向にヌルを形成する(受信感度をなくす)ようにメインビームの指向性の形成を行なう。すなわち、例えば、サイドローブ方向からの妨害波を補助ビームで受信し、これに適切なウェイトを乗じてメインビームによる受信信号と合成することによって、メインビームによる受信信号中の妨害波成分をキャンセルし、メインビームの指向方向に対する目標探知を継続的に可能にしている。ただし、ウェイト演算が収束するまでには、ある程度の時間を要し、演算中は妨害波成分をキャンセルしきれない。このため、近年、収束に要する時間を短縮する手法が提案されているものの(例えば、特許文献1参照。)、収束までの過渡状態では、妨害の影響を受けることになる。
吉田孝監修「改訂レーダ技術」電子情報通信学会、平成8年10月1日、P.295−296 特開2003−270323号公報(第5ページ、図1)
ところで、近年、レーダ装置における目標検出にパルス圧縮技術が多用されるようになった。パルス圧縮技術を採用したレーダ装置では、例えば送信パルスとしてパルス内に特殊な変調を施したパルス幅の広い送信信号を用い、その反射波を受信後にパルス圧縮処理を施して狭いパルス幅の信号に変換することによって、レーダの探知距離と距離分解能とを両立させている。そして、この種のレーダ装置に対しても、従来同様に各種の妨害波に対処するための手段が求められる。
しかしながら、妨害波がパルス波の場合、上述したSLCを適用すると、図10(b)に例示したように、パルス妨害波に対する演算が収束するまでの過渡状態では妨害の影響が残るとともに、この過渡状態の受信信号にパルス圧縮処理を施すと、処理後の信号は、図10(c)に例示したように時間軸上で全体的に間延びした形状となる。このため、後段において目標の誤検出、あるいはゴースト状の表示となってしまい、対象業務に支障をきたしていた。
一方、SLBでは、パルス妨害波の到来期間は信号受信がブランキングされるため、誤警報の多発は回避できるものの、この期間中は目標探知を行なうことができず、特に長パルスの妨害波に対してはブランキング時間も長くなって、レーダとしての本来の機能を果たすことができなかった。
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、サイドローブ方向から到来するパルス妨害を効果的に抑圧するレーダ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1の発明のレーダ装置は、メインビームによる受信信号のレベルとこのメインビームのサイドローブを覆うように形成された補助ビームによる前記受信信号のレベルとを比較して前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信を判定する比較判定手段と、この比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は前記メインビームによる信号受信をブランキングし出力するブランキング手段と、前記メインビームの所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルするように前記メインビームによる受信信号と前記補助ビームによる受信信号とを合成する際に、前記補助ビームによる受信信号に対して与えるウェイトを算出するウェイト演算手段と、このウェイト演算手段で算出されたウェイトを保持するとともに所定のタイミングでこの保持されたウェイトを更新するウェイト保持手段と、この保持されたウェイトを適用して前記メインビームにおける前記所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルし出力するキャンセル手段と、前記比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は、前記ブランキング手段からの出力または前記キャンセル手段からの出力のいずれか一方を選択し、これ以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力する選択制御手段とを有することを特徴とする。
また、第2の発明のレーダ装置は、メインビームによる受信信号のレベルとこのメインビームのサイドローブを覆うように形成された補助ビームによる前記受信信号のレベルとを比較して前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信を判定する比較判定手段と、この比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は前記メインビームによる信号受信をブランキングし出力するブランキング手段と、前記メインビームの所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルするように前記メインビームによる受信信号と前記補助ビームによる受信信号とを合成する際に、前記補助ビームによる受信信号に対して与えるウェイトを算出するウェイト演算手段と、このウェイト演算手段で算出されたウェイトを保持するとともに所定の周期でこの保持されたウェイトを更新するウェイト保持手段と、この保持されたウェイトを前記メインビームのビーム走査に連動させて前記メインビームのビームパターン情報に基づき補正するウェイト補正演算手段と、この補正されたウェイトを適用して前記メインビームにおける前記所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルし出力するキャンセル手段と、前記比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は、前記ブランキング手段からの出力または前記キャンセル手段からの出力のいずれか一方を選択し、これ以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力する選択制御手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、サイドローブ方向から到来するパルス妨害を効果的に抑圧することのできるレーダ装置を得ることができる。
以下に、本発明に係るレーダ装置を実施するための最良の形態について、図1乃至図9を参照して説明する。
図1は、本発明に係るレーダ装置の第1の実施例を示すブロック図である。この図1に例示したレーダ装置は、受信レベル比較判定部11、ブランキング処理部12、キャンセル処理部13、ウェイト保持部14、信号選択部15、目標検出部16、及び制御部17を有している。
受信レベル比較判定部11は、例えば互いに異なる方向に形成されたN本のメインビームによる受信信号のレベルと、これら各メインビームのサイドローブを覆うように形成されたM本の補助ビームによる受信信号のレベルとを比較し、各メインビームのメインローブによる信号受信か、あるいはサイドローブ方向からの信号受信かを判定する。ブランキング部12は、この比較判定結果に基づいて、サイドローブ方向からの信号受信期間中はメインビームによる信号受信をブランキングして後述する信号選択部15に送出する。
キャンセル処理部13は、N本のメインビーム及びM本の補助ビームを受信レベル比較判定部11経由で受けとり、メインビームのサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルするようにメインビームによる受信信号と補助ビームによる受信信号とを合成する際に必要となる、補助ビームによる受信信号に対して与えるウェイトを算出してウェイト保持部14に送出するとともに、ウェイト保持部14に保持されたウェイトを適用してメインビームによる受信信号と補助ビームによる受信信号とを合成してメインビームにおけるサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルし信号選択部15に出力する。
ここに、キャンセル処理部13の構成の一例を図2に示す。図2は、キャンセル処理部13の構成の一例を示すブロック図である。この事例では、キャンセル処理部13は、メインビームによる受信信号と補助ビームによる受信信号との相関処理に基づき上記したウェイトを算出してウェイト保持部14に送出する相関処理器131、ウェイト保持部14に保持されたウェイトを取得して補助ビームによる受信信号に乗ずるウェイト乗算器132、メインビームによる受信信号からウェイト乗算器132での演算結果を減ずることによってこれら2つの信号を合成して出力する減算器133から構成されている。
ウェイト保持部14は、キャンセル処理部13で算出されたウェイトを保持するとともに、所定のタイミングで保持されたウェイトを更新する。本実施例においては、自レーダ装置の送信に同期してウェイトを更新するものとしている。すなわち、自レーダ装置の送信タイミングで保持されたウェイトを一旦クリアするなどして無効化しておき、送信後、受信レベル比較判定部11がメインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信であると判定した受信信号に対してキャンセル処理部13で算出したウェイトを取り込み、この値を次の自レーダ装置の送信タイミングまでの1PRI(Pulse Repetition Interval)の期間保持し、次の送信後に、また新たに算出したウェイトを取り込んで更新する。
信号選択部15は、受信レベル比較判定部11の判定結果に基づいて、ブランキング処理部12からの出力、キャンセル処理部13からの出力、及びメインビームによる受信信号のいずれか一つの信号を選択して出力する。本実施例においては、自レーダ装置の送信後に、受信レベル比較判定部11がメインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信期間であると判定した場合には、ブランキング処理部12からの出力を、それ以降の(すなわち2番目以降の)パルス信号受信期間であると判定した場合には、キャンセル処理部13からの出力を選択するとともに、これら以外のサイドローブ方向からのパルス信号受信がない期間は、メインビームによる受信信号を選択して出力する。目標検出部16は、この信号選択部15において選択された信号から目標を検出する。
制御部17は、送信タイミング信号としての送信トリガ、及び受信レベル比較判定部11からの判定結果に基づき、ウェイト保持部14に対するウェイト保持の更新タイミング制御、及び信号選択部15に対する選択信号の生成を含む、上記した各部の動作を制御する。
次に、前出の図1及び図2、ならびに図3乃至図5を参照して、上述のように構成された本実施例のレーダ装置の動作について説明する。以下の説明においては、自レーダ装置のメインビームのサイドローブ方向からパルス妨害波が到来し、このパルス妨害波を抑圧する場面を取りあげている。
図3は、本実施例のレーダ装置の動作を説明するためのタイムチャートである。この図3のタイムチャートは、自レーダ装置の1PRI期間中において、メインビームのサイドローブ方向からパルス妨害波が到来した場合の動作をモデル化して示したものであり、はじめにこの図を参照して全体の動作の流れを説明する。なお、これらの動作の流れは、制御部17の制御によるものである。
まず、送信トリガによりレーダ信号が送信されると、ウェイトが更新されるように、ウェイト保持部14に保持されていたウェイトがクリアされるなどして無効化される。送信後は、その反射信号が受信され、パルス妨害波のない期間では、信号選択部15からはメインビームによる受信信号が選択され、後段に出力される。
この後、受信レベル比較判定部11によりサイドローブ方向からパルス妨害波の到来している旨の判定がなされた場合、その判定が自レーダ装置送信後に受信した最初の(第1番目の)の妨害パルスか、あるいはそれ以降(第2番目以降)なのかによって動作が異なる。すなわち、第1番目の妨害パルスの場合(図3中のNo.1の判定)には、この妨害パルスの受信期間、ブランキング処理部12からの出力を選択することによってパルス妨害を抑圧するとともに、キャンセル処理部13においてウェイトを算出し、その結果をウェイト保持部14に保持して以降のキャンセル処理に備える。
一方、第2番目以降の妨害パルスの場合(図3中のNo.2〜4の判定)には、ウェイト保持部14に保持されているウェイトをキャンセル処理部13に適用して得られた出力を選択することによってパルス妨害を抑圧している。また、パルス妨害波のない期間は、本実施例では、メインビームによる受信信号を選択する。なお、パルス妨害波のない期間においては、ブランキング処理部12からの出力、あるいはキャンセル処理部13からの出力のいずれを選択しても同様の出力を得ることができ、そのように構成することも可能である。
図4は、本実施例のレーダ装置における、上記した一連のパルス妨害を抑圧する制御動作を詳細に説明するためのフローチャートである。まず、自レーダ装置が動作を開始してレーダ信号を送信後、受信期間が開始されると、受信レベル判定比較部11は、メインビームによる受信レベルと補助ビームによる受信レベルとを比較し(S401)、サイドローブ方向からの信号の到来を判定する(S402)。このときの信号の到来方向とメインビーム及び補助ビームによる受信レベルとの関係を図5に例示する。
図5は、信号の到来方向とこの信号のメインビーム及び補助ビームによる受信レベルとの関係をモデル化して例示した説明図である。この図5に示したように、補助ビームの指向特性は、メインビームのサイドローブを覆うように形成されている。このときに、メインビームの指向方向である入力方位2から到来する信号の場合、メインビームによる受信レベルM2は、補助ビームによる受信レベルS2よりも大きい。一方、入力方位1から到来する信号の場合、メインビームによる受信レベルM1は、補助ビームによる受信レベルS1よりも小さくなり、メインビームの指向方向からの信号ではない、すなわちサイドローブ方向からの妨害波であると判定する。
このようにしてサイドローブ方向からのパルス妨害波の到来が判定されると、この妨害波を抑圧するため、次に、ウェイト保持部14に有効なウェイトが保持されているか否かを判定する(S403)。その結果、有効なウェイトが保持されていない場合、自レーダ装置送信後に受信した第1番目の妨害パルスであると判定し(S403のN)、この妨害パルスの受信期間は、ブランキング処理部12からの出力を選択するように信号選択部15を制御する(S404)。加えて、キャンセル処理部13内の相関処理器131にてウェイト算出のための演算を実行し(S405)、その算出結果を以降の妨害パルスに対して適用すべくウェイト保持部14に保持する(S406)。
一方、ステップS403の判定において、有効なウェイトが保持されている場合(S403のY)、ウェイトの再計算(更新)の必要がなければ(S407のN)、このウェイトをキャンセル処理部13に適用する(S408)。そして、キャンセル処理部13からの出力を選択するように信号選択部15を制御する(S409)。また、ウエイトの再計算が必要なときは(S407のY)、上記したS404からのステップを実行する。そして、これら一連の動作は、レーダ装置の動作が終了するまで継続される(S410)。
以上説明したように、本実施例においては、自レーダ装置の送信後、最初に受信したサイドローブ方向からの妨害パルスに対してはブランキング処理により妨害を抑圧するとともに、この妨害パルスのキャンセル処理に必要なウェイトを算出し保持しておき、以降の妨害パルスに対しては、この保持したウェイトを適用したキャンセル処理により妨害を抑圧している。そして、保持したウェイトは、次の送信タイミングで無効化され更新される。
すなわち、パルス妨害波が到来する環境の中で、ブランキング処理によりこのパルス妨害波を抑圧するのは、自レーダ装置のくり返される各受信期間中において最初に到来した妨害パルスに対してのみである。従って、信号受信がブランキングされる期間はわずかであり、レーダ装置としての目標探知機能を十分に果たすことができる。
また、こののち次のレーダ送信までに到来するパルス妨害波を抑圧するために選択されるキャンセル処理では、算出済みのウェイトを適用しているので、ウェイト演算の収束にかかる過渡期間を必要としない。従って、パルス圧縮技術を採用したレーダ装置の場合においても、サイドローブ方向からのパルス妨害波を効果的に抑圧して良好な目標検出及び表示を行なうことができる。
(変形例1)
図6は、上述した第1の実施例の変形例1の動作を説明するためのタイムチャートである。この変形例1においては、キャンセル処理に適用されるウェイトを更新するタイミングが上述した第1の実施例の場合と異なる。
すなわち、変形例1においては、図6にモデル化して示すように、自レーダ装置で特に注目している距離Rxがある場合には、この距離Rxに対してあらかじめ設定された所定距離d以内となった受信時刻T1で更新の指示がなされる。そして、時刻T1後にサイドローブ方向から到来した最初のパルス信号受信の判定に基づき(図6中のNo.3の判定)新たにウェイトの算出を行ない、その結果をウェイト保持部14に保持する。また、このパルス信号(妨害パルス)の受信期間は、ブランキング処理部12からの出力を選択するように信号選択部15を制御する。
この変形例1では、図1中の制御部17に上記した注目距離Rx及び所定距離dがあらかじめ設定された上で、各部に対するウェイトの更新タイミングを含むタイミング制御を行なう。また、図4のフローチャートにおいては、S403のステップにおいて有効なウェイトが保持されている場合でも(S403のY)、受信時刻T1に達していれば、制御部17はS407のステップでウェイト更新のための再計算が必要と判定し(S407のY)、S404のステップからの動作を継続する。
このように、この変形例1を適用することによって、自レーダ装置からの距離に連動させたウェイトの更新を行ない、新たに算出されたウェイトを適用してパルス妨害波のキャンセル処理を行なうことができるので、上述した第1の実施例の効果に加え、特に注目距離におけるパルス妨害を効果的に抑圧することができる。
図7は、本発明に係るレーダ装置の第2の実施例を示すブロック図であり、図8は、その動作を説明するためのタイムチャートである。また、図9は、この第2の実施例の一連の制御動作を説明するためのフローチャートである。この第2の実施例について、図1乃至図4に示す第1の実施例の各部と同一の部分は同一の符号で示し、その説明は省略する。第2の実施例が第1の実施例と異なる点は、ウェイトの更新をメインビームでの自レーダ装置のパルス送信周期と同期させて行なうようにした点、及び、更新により算出・保持したウェイトを、次の更新時までの間、メインビームの走査に連動させて自ビームパターン情報に基づき補正しながらキャンセル処理に適用するようにした点である。以下、図7乃至図9を参照してその相違点のみを説明する。
図7において、この第2の実施例のレーダ装置は、図1に例示した第1の実施例の構成に加え、ウェイト補正演算部18、及びビームパターン情報記憶部19を有している。ウェイト補正演算部18は、ウェイト保持部14に保持されているウェイトを、例えばアンテナ回転等に伴うメインビームの走査に連動させて補正するための演算を実行する。ビームパターン情報記憶部19には、この補正演算で必要となるメインビームのビームパターン情報があらかじめ記憶されている。キャンセル処理部14にウェイトを適用する際は、この補正演算後のウェイトが用いられる。そして、制御部17は、これら演算実行のタイミング制御を含む各部の動作を制御する。
次に、図8のタイムチャートを参照して全体の動作の流れを説明する。この図8のタイムチャートは、自レーダ装置のパルス送信周期毎に、メインビームのサイドローブ方向からパルス妨害波が到来した場合の動作をモデル化して示したものである。
まず、メインビームを走査しながらレーダ信号が送信されると、送信トリガに同期してウェイト保持部14に対してウェイトの更新指示が送られる。ウェイト保持部14内では保持していたウェイトがクリアされるなどして、一旦無効化される。また、レーダ送信に対する反射信号も受信される。
レーダ信号の受信期間において受信レベル比較判定部11によりサイドローブ方向からのパルス妨害波の到来が判定された場合、その判定がメインビームの走査周期開始後における最初の妨害パルスか、あるいはそれ以降なのかによって動作が異なる。すなわち、最初のパルス妨害波の場合(図8中ではNo.11及び21の判定が該当)には、この妨害波の受信期間、ブランキング処理部12からの出力を選択することによってパルス妨害を抑圧するとともに、キャンセル処理部13においてウェイトを算出し、その結果をウェイト保持部14に保持して以降のキャンセル処理に備える。
一方、第2番目以降の場合(図8中ではNo.12、13、及び22の判定が該当)には、これら妨害パルスの受信時刻までに自レーダ装置のメインビームの走査によってその到来方向が最初の妨害パルスの時点から変化しているので、保持されているウェイトに対してこの到来方向の変化分に相当する補正演算を行なう。そして、補正後のウェイトをキャンセル処理部13に適用して得られた出力を選択することによってパルス妨害を抑圧している。この出力の選択は、さらにこの後、次の送信トリガに同期してウェイトの更新指示が送出されるまで継続される。
図9は、これら一連の制御動作を詳細に説明するためのフローチャートである。まず、メインビームを走査しながらレーダ送信が開始された後、レーダ信号の受信期間において、受信レベル判定比較部11は、メインビームによる受信レベルと補助ビームによる受信レベルとを比較し(S401)、サイドローブ方向からの信号の到来を判定する(S402)。サイドローブ方向からのパルス妨害波の到来が判定されると、次に、ウェイト保持部14に有効なウェイトが保持されているか否かを判定する(S403)。その結果、有効なウェイトが保持されていない場合、メインビームの走査周期開始後に受信した第1番目の妨害パルスであると判定し(S403のN)、この妨害パルスの受信期間は、ブランキング処理部12からの出力を選択するように信号選択部15を制御する(S404)。加えて、キャンセル処理部13にてウェイト算出のための演算を実行し(S405)、算出結果をウェイト保持部14に保持する(S406)。
一方、ステップS403の判定において、有効なウェイトが保持されている場合(S403のY)、このウェイトを算出した時点から処理中の妨害パルスを受信した現時点までの間に、自レーダ装置のメインビームの走査によって妨害パルスの到来方向が変化している。このため、ウェイト補正演算部18においては、ビームパターン情報記憶部19に記憶されたビームパターン情報に基づき、例えば、ビーム走査情報を参照して得た到来方向の角度変化に対応したビーム利得の変化を求め、ウェイト保持部14に保持しているウェイトに対してこの変化分に相当する補正演算を行なう(S411)。そして、この補正後のウェイトをキャンセル処理部13に適用し(S412)、そのときのキャンセル処理部13からの出力を選択するように信号選択部15を制御する(S409)。これら一連の動作は、この後レーダ装置の動作が終了するまで継続される(S410)。
以上説明したように、本実施例においては、自レーダ装置のパルス送信周期開始後、最初に受信したサイドローブ方向からの妨害パルスに対してはブランキング処理により妨害を抑圧するとともに、この妨害パルスのキャンセル処理に必要なウェイトを算出し保持しておき、以降は、ウェイトの更新タイミングとなる次のパルス送信周期開始までの間、妨害パルスに対しては、この保持しているウェイトをメインビームの走査にあわせながら補正したウェイトを適用したキャンセル処理により妨害を抑圧している。従って、ブランキング処理により信号受信がブランキングされる期間はわずかであり、レーダ装置としての目標探知機能を十分に果たすことができる。
また、以降のキャンセル処理に必要なウェイトは算出済みかつ保持されているので、ウェイト演算の収束にかかる過渡時間を必要とせず、パルス圧縮技術を採用したレーダ装置の場合においても、サイドローブ方向からのパルス妨害波を効果的に抑圧して良好な目標検出及び表示を行なうことができる。
さらに、このウェイトは、ビーム走査に連動させて補正した上で適用しているので、自レーダ装置のビーム走査によるパルス妨害波の到来方向の変化に対しても、その良好な抑圧効果を継続して維持することができる。
本発明に係るレーダ装置の第1の実施例を示すブロック図。 キャンセル処理部13の構成の一例を示すブロック図。 第1の実施例のレーダ装置の動作を説明するためのタイムチャート。 第1の実施例のレーダ装置における一連の制御動作を詳細に説明するためのフローチャート。 信号の到来方向とこの信号のメインビーム及び補助ビームによる受信レベルとの関係をモデル化して例示した説明図。 第1の実施例の変形例の動作を説明するためのタイムチャート。 本発明に係るレーダ装置の第2の実施例を示すブロック図。 第2の実施例のレーダ装置の動作を説明するためのタイムチャート。 第2の実施例のレーダ装置における一連の制御動作を詳細に説明するためのフローチャート。 SLCによるパルス妨害抑圧処理時の信号波形をモデル化して示す図。
符号の説明
11 受信レベル比較判定部
12 ブランキング処理部
13 キャンセル処理部
14 ウェイト保持部
15 信号選択部
16 目標検出部
17 制御部
18 ウェイト補正演算部
19 ビームパターン情報記憶部

Claims (5)

  1. メインビームによる受信信号のレベルとこのメインビームのサイドローブを覆うように形成された補助ビームによる前記受信信号のレベルとを比較して前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信を判定する比較判定手段と、
    この比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は前記メインビームによる信号受信をブランキングし出力するブランキング手段と、
    前記メインビームの所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルするように前記メインビームによる受信信号と前記補助ビームによる受信信号とを合成する際に、前記補助ビームによる受信信号に対して与えるウェイトを算出するウェイト演算手段と、
    このウェイト演算手段で算出されたウェイトを保持するとともに所定のタイミングでこの保持されたウェイトを更新するウェイト保持手段と、
    この保持されたウェイトを適用して前記メインビームにおける前記所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルし出力するキャンセル手段と、
    前記比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は、前記ブランキング手段からの出力または前記キャンセル手段からの出力のいずれか一方を選択し、これ以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力する選択制御手段とを有することを特徴とするレーダ装置。
  2. 前記ウェイト保持手段における所定のタイミングでのウェイトの更新は、前記比較判定手段からの判定結果が、自レーダ装置の送信後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信であると判定した受信信号に対して前記ウェイト演算手段により新たなウェイトが算出されたタイミングにおいてこの新たなウェイトに更新するとともに、
    前記選択制御手段は、前記比較判定手段からの判定結果が、自レーダ装置の送信後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記ブランキング手段からの出力を、また、それ以降のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記キャンセル手段からの出力を選択し、これら以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記ウェイト保持手段における所定のタイミングでのウェイトの更新は、自レーダ装置での注目距離から所定の距離以内となった受信時刻後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信であると判定した受信信号に対して前記ウェイト演算手段により新たなウェイトが算出されたタイミングにおいてこの新たなウェイトに更新するとともに、
    前記選択制御手段は、前記比較判定手段からの判定結果が、自レーダでの注目距離から所定の距離以内となった受信時刻後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記ブランキング手段からの出力を、また、それ以外のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記キャンセル手段からの出力を選択し、これら以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
  4. メインビームによる受信信号のレベルとこのメインビームのサイドローブを覆うように形成された補助ビームによる前記受信信号のレベルとを比較して前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信を判定する比較判定手段と、
    この比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は前記メインビームによる信号受信をブランキングし出力するブランキング手段と、
    前記メインビームの所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルするように前記メインビームによる受信信号と前記補助ビームによる受信信号とを合成する際に、前記補助ビームによる受信信号に対して与えるウェイトを算出するウェイト演算手段と、
    このウェイト演算手段で算出されたウェイトを保持するとともに所定の周期でこの保持されたウェイトを更新するウェイト保持手段と、
    この保持されたウェイトを前記メインビームのビーム走査に連動させて前記メインビームのビームパターン情報に基づき補正するウェイト補正演算手段と、
    この補正されたウェイトを適用して前記メインビームにおける前記所定のサイドローブ方向からの信号受信をキャンセルし出力するキャンセル手段と、
    前記比較判定手段からの判定結果に基づき、前記メインビームのサイドローブ方向からの信号受信期間中は、前記ブランキング手段からの出力または前記キャンセル手段からの出力のいずれか一方を選択し、これ以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力する選択制御手段とを有することを特徴とするレーダ装置。
  5. 前記ウェイト保持手段におけるウェイトの更新の周期は、前記メインビームでの自レーダ装置のパルス送信周期とし、前記比較判定手段からの判定結果が、このパルス送信周期開始後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信であると判定した受信信号に対して前記ウェイト演算手段により算出された新たなウェイトに更新するとともに、
    前記選択制御手段は、前記比較判定手段からの判定結果が、前記パルス送信周期開始後における前記メインビームのサイドローブ方向からの最初のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記ブランキング手段からの出力を、また、それ以降のパルス信号受信期間であるとの判定の場合には前記キャンセル手段からの出力を選択し、これら以外の期間は前記メインビームによる受信信号を選択して出力することを特徴とする請求項4に記載のレーダ装置。
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