JP2008045924A - 原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法 - Google Patents

原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法 Download PDF

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Abstract

【課題】炉水の水質を調整することにより炉内構造物の材料表面等へのクロムの付着を抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置は、原子炉圧力容器1内に冷却材を供給する原子炉一次系6に薬液注入装置21とサンプリング装置35とを設け、このサンプリング装置35により炉水の水質を分析し、分析したpH値が電位−pH線図の予め定められた領域に存在するとき、薬液注入装置21にpH調整剤を供給するものである。
【選択図】 図9

Description

本発明は、例えば、給水系、復水系、炉水系内の原子炉一次系の構造物から原子炉圧力容器内を流れる炉水(冷却材)に放出されるクロムの炉内構造物等の部材表面への付着を抑制する技術に係り、特に炉水の不安定流れに起因して発生するジェットポンプの不安定運転や炉心流量のアンバランスに伴う不均一な熱分布を抑制するに適する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法に関する。
原子力発電プラントの給水系、復水系もしくは再循環系、冷却材浄化系等の炉水系などの原子炉圧力容器に接続される原子炉一次系には、使用する装置に応じて種々の金属材料が用いられている。
例えば、沸騰水型原子力発電プラント(BWR,ABWR)においては、炉心シュラウドに収容される燃料被覆管にジルコニウム基合金が使用され、また、再循環配管、給水系配管、炉心スプレー配管等の水循環系にオーステナイト系ステンレス鋼が使用され、さらに、復水系配管、浄化系配管、タービン抽気系配管等に炭素鋼が使用され、用途に応じて使い分けられている。
これら用途に応じて使い分けられた配管系統を流れる水または蒸気のうち、高温、高圧水が通過する領域に至ると、高温、高圧水との接触によって部材の腐食反応が現われ、酸化皮膜の生成や腐食生成物の炉水等への放出がある。
また、低温部分であっても、炭素鋼などの材料では腐食放出反応が問題になっている。
腐食生成物の炉水等への放出の態様には、イオン状のものと粒子状の二つの形態がある。
イオン状の腐食生成物あるいは粒子状の腐食生成物は、原子炉一次系の一次冷却水を媒体として原子炉圧力容器の炉内に流れ、沸騰現象や共析反応等によって炉心シュラウドに収容される燃料被覆管表面等に付着し、やがて長年の運転経過後、固化することがある。
ここで、沸騰現象による粒子状の腐食生成物とは、粒子状の鉄を主成分とする金属酸化物が沸騰によって燃料被覆管表面等に発生する乾き面に焼き付き、固着して固化することをいう。
また、共析反応によるイオン性の腐食生成物の付着とは、付着した粒子状の金属酸化物とイオン性の腐食生成物とが複合酸化物を生成し、燃料被覆管表面等に焼き付き、固化されたものをいう。
これら沸騰現象あるいは共析反応においては、例えば鉄クラッド(Fe)とニッケルイオン(N2+)とからニッケルフェライト(NiFe)が生成されることが良く知られている。
[化1]
Fe+Ni2++HO=NiFe+2H
また、加圧水型原子力発電プラント(PWR)においては、燃料被覆管表面での沸騰が燃料棒の上部側に限定されるため、腐食生成物の付着量が沸騰水型原子力発電プラント(BWR,ABWR)に較べて少ないものの、腐食生成物の生成付着が観察されている。
例えば、燃料被覆管表面等に付着し、やがて固化する腐食生成物は、中性子の照射を受け、放射能化され、放射性腐食生成物に核変換される。
コバルトを一例に採った場合、核反応によってコバルトはコバルト60の放射能になる。
Figure 2008045924
コバルト60(60Co)は、半減期が5.2年と長く、かつ放出するγ線のエネルギが1.17MeV、1.33MeVと高い値のため、BWR,ABWRあるいはPWRにおける作業員が受ける主要な被曝線源になっている。
放射化によって生成された放射能は、全量が燃料被覆管表面にそのまま固着することが多い。その一部は粒子状で剥離したり、またイオン状で放出したりして、一次冷却材中の機器、装置を放射化する。
そして、イオン状の放射能は、金属材料が腐食する際、その表面に生成される腐食皮膜中に酸化物として共析したり、また同位体変換反応によって取り込まれたりするものと理解されている。
例えば、コバルト(60Co2+)は、鉄の酸化に伴なう鉄鋼材料の腐食により、次の二つの反応式で皮膜中に取り込まれると考えられている。
[化3]
60Co2++Fe+HO=60CoFe+2H
60Co2++CoFe=Co2+60CoFe
このように、原子炉一次系を流れる炉水(一次冷却材)と接した金属材料は放射能化され、炉内構造物等の部材表面は放射能を帯びている。
そして、放射能量は腐食皮膜の成長により経年的に増加する速度と粒子状の放射能の取り込む速度とを加えた合計の放射能増加速度が、放射性壊変によって既に付着している放射能が減少する速度とバランスするまで、増加の一途を辿る。
また、原子炉一次系の配管、機器等の炉内構造物の部材表面が放射能を帯びると、その部位や機器の分解点検の際、作業員の受ける放射能被曝量が多くなり、さらに、二次的に空間線量率が高まり、これらの付近で別作業を行う作業員の被曝を増加させる虞がある。
この結果、原子力発電プラントの運転後や定期検査後の被曝線量(トータルマンシーベルト)を押し上げる虞があり、作業員数の増加による定期検査費用の増加や定期検査の期間延長を招く虞がある。
このような技術背景から、原子炉一次系の炉内構造物等の部材表面に放射能を帯びた腐食生成物が付着することを抑制する手法には、例えば、特許文献1に開示されているように、クラッド溶解法、また、例えば、特許文献2に見られるように、腐食生成物の構造物等の部材表面への付着を抑制し、炉水(冷却材)の流動抵抗を少なくさせる手法、さらにまた、特許文献3に記載されているように、炉水のpHを6.8〜8.0に調整、維持させ、炉水のアンモニア濃度を0.5〜3.5ppmに調整し、腐食生成物の炉内構造物等の部材表面への付着、取り込みを抑制する手法が提案されている。
特開平1−269090号公報 特開2000−28788号公報 特許第2941459号公報
原子力発電プラントにおける炉内構造物等の材料表面への腐食生成物の付着抑制は、腐食生成物の発生と移行のプロセスにより、専ら作業員の被曝防止の意図から問題視されており、炉内構造物等に蓄積された放射能の除去(除染)の研究開発が進められていた。
ところが、本発明者等は腐食生成物の生成とその挙動に関する研究に携わる過程において、腐食生成物の一種であるクロムの特異な挙動を知見した。
例えば、意図的に水素の注入を行わない沸騰水型原子力発電プラントにおいて、炉水の水質は、水の放射線分解で発生する過酸化水素を含むため、酸化性が強く、炉水に浸るステンレス鋼やニッケル基合金などの合金組成からクロムが酸化数6価のクロム酸イオン(HCrO ,CrO 2−)として炉水に腐食放出される。
本発明者等は、原子力発電プラントの運転データや炉水の水質データ等各種データのうち、特に、クロム放出後の挙動とその移動性の影響に関するデータに着目し、これらデータを詳細に検証したところ、炉水中にクロム酸イオンが一定濃度以上で存在すると、このクロム酸イオンが炉内の高流速部位等の特定領域に、下記に示す反応式に基づいて酸化クロム(Cr)が析出し、炉内構造物やポンプ等の運転に支障を来す可能性があることを見出した。
[化4]
2HCrO +8H+6e=Cr+5H
2CrO 2−+10H+6e=Cr+5H
ここで、高流速域部位とは、炉水の流速が10m/secを超える高速の流路流域をいう。
炉水の流速が高いと、剪断力が働くため、腐食生成物は炉内構造物等の部材表面や壁面に付着しにくいと考えられていたが、クロムの場合、この常識を破り、炉水中にイオンとして混入するクロムが流速10m/sec以上の高流速域においても酸化クロムの粒子として炉内構造物等の材料表面に析出することが認められた。ここで、高流速域とは流速10m/sec以上を超えるような部位を示し、例えばBWR,ABWRではシリンダヘッドの吹き出しノズル部やインターナルポンプのインペラーとハウジングのクリアランス部位などが該当する。
このクロムの原子炉炉内構造物等の材料表面への付着、固化は、炉水の流動抵抗となり、ポンプ等の運転に対する効率低下、脈動発生の要因となる可能性があった。
また、クロムの原子炉炉内構造物等の材料表面への付着、固化は、炉心の燃料棒への炉水供給が減少し、この炉水供給量の減少に伴って一部が沸騰し、炉水の冷却材(減速材)としての能力を低下させる要因になっていた。
一方、高流速域を流れるクロム酸イオンがクロム酸化物として析出するメカニズムは、未だ、解明されていないが、本発明者等は炉水に浸る炉内構造物の腐食電位が何らかの影響を与えているものと想定している。
すなわち、経験則によれば、炉水の流速が数m/sec程度の低流速以上であると、腐食電位は一定値を採り、流速依存性を持っていない。
しかし、流速が、例えば、10m/sec以上の高流速になると、腐食電位は低くなる。
そして、炉水の流速が低流速と高流速とでは、腐食電位の違いは約0.1Vになっている。
この電位領域では、クロム酸化物溶解度の電位依存性から、約1桁程度のクロム酸化物溶解度の違いがある。この場合、バルク中で10ppbを超えるクロム酸イオン濃度は、低流速域で溶解度以下であるのに対し、高流速域で溶解度以上となっていることが観察された。
このような事象から、クロム酸化物は、炉水に浸る炉内構造物等の材料(機器も含む)表面に析出する可能性があると推定している。
実際の原子力発電プラントにおいては、炉水中に含まれるクロム酸イオンの濃度上昇が引き金になり、その後にポンプ等の動的機器の振動や炉心に供給される炉水流量のバランス変動に伴う燃料棒の燃焼管理の問題が顕在化する場合が多い。
クロム酸イオンの濃度上昇には、プラント運転開始直後のステンレス鋼に腐食が生成する場合、あるいは夏期に海水温度が上昇し、復水の溶存酸素濃度が増加した場合等幾つかの態様が考えられる。
これらの態様に基づいてクロム酸イオンの濃度が上昇するにも拘らず、現技術では、クロム酸イオンの濃度を抑制する即効性のある技術が実現しておらず、専らポンプ等の運転状況を監視しつつ、クロム酸イオンの濃度の自然低下を待つのが現状であった。
クロムの炉内構造物への付着に起因して動的機器の不安定運転となる要因を取り除くには、以下に示す幾つかの対策が考えられる。
(1)クロム酸イオンの発生を抑制する。
(2)発生したクロム酸イオンを取り除き、炉水中のクロム酸イオンの濃度上昇を抑制する。
(3)炉水中に含まれるクロム酸イオンの炉内構造物等の材料表面への付着を水質調整(水質制御)によって抑制する。
(4)炉水中に含まれるクロム酸イオンの炉内構造物等の材料表面への付着を電位制御によって抑制する。
(5)炉水の高流速領域における流路形状・機能を改善することによって炉内構造物等の材料表面へのクロムの付着を抑制する。
このような対策に対し、本発明者等は、クロムの発生から付着に至るまでのクロム移行挙動を総合的に検討し、以下に示す結論に達した。
すなわち、本発明は、実現性や費用対効果を加味して、上述のクロム付着防止対策から選択したもので、炉水の水質を調整することにより炉内構造物へのクロムの付着を抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法を提供することを目的とする。
また、本発明の第2の目的は、炉内構造物等材料表面の電位制御を行うことにより炉内構造物等の材料表面へのクロムの付着を抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、炉水が流れる高流速領域における流路等の形状に改善を加えることにより炉内構造物等の材料表面へのクロムの付着を抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法を提供することにある。
上述第1の目的を達成するために、本発明者等は炉水に含まれるクロム酸化物(Cr)の分布、クロム酸イオン(CrO 2−、HCrO 、CrO )の分布等を、図1に示す、別名ブルベー線図と称すCr−HO系の電位−pH線図から知識、情報を得、この情報を基にして研究を重ねた。
ここで、図1は縦軸に電位E(標準水素電極電位基準 VvsSHE)を採り、横軸にpH値を採っている。
なお、pH値は炉水温度が288℃のときのものであり、炉水中のクロム濃度は10−6mol/lである。
この電位−pH線図は、特定の腐食電位とpHの場合、クロムはどの化学形態が熱力学的に安定状態に維持されているかを示している。そして、図中の枠線部Rで囲んだ領域が一般的なBWR炉水条件を示している。
この電位−pH線図から、クロムの安定形態はCrとCrO 2−の境界付近になっていることがわかる。換言すると、腐食電位値如何によって、あるいはpH値如何によってどちらでも容易に安定した化学形態を採り得ることがわかる。
ところで、原子力発電プラントにおける炉水の流速が10m/secを超える高流速領域は、これよりも低い低流速領域と較べたとき、約0.1Vの電位差が出、低流速領域よりも電位が低くなっていることが観察されているが、炉水の流速が10m/secを超える高流速領域を電位−pH線図に当てはめてみると、枠線部Rでも下側に位置し、クロム酸化物としてより析出し易い状態にある。
また、電位−pH線図から、高流速領域でもクロムが酸化物として析出しにくくするには、クロムの濃度が同じならば、pH値を矢印ARの方向に向かわせ、よりアルカリ側にシフトさせるか、あるいは矢印ARの方向に向かわせ、腐食電位をCrO 2−側にシフトさせれば、クロムの安定形態を確保できることがわかる。
このように、クロムの炉内構造物への付着を抑制するための手法の一つとしての炉水の水質調整(水位制御)には、pH値のアルカリ側へのシフト、あるいは腐食電位の上昇化のいずれかの選択の途がある。
なお、腐食電位の上昇化に際し、ステンレス鋼等の腐食電位は、溶存酸素濃度や過酸化水素濃度が上昇するほどに増加することがわかっているので、測定領域の溶存酸素濃度もしくは過酸化水素濃度を指標にすればよい。
次に、第2の目的を達成するために、本発明者等は以下に示す点に着目した。
腐食電位は、通常、炉水中の酸素濃度、水素濃度、過酸化水素濃度および炉内構造物等の分極曲線によって算出される平衡電位である。
この平衡電位に着目し、本発明者等は外部から電気的にクロム酸イオンが安定な電位に分極させればクロムの炉内構造物等の材料表面への付着が抑制されることを知見した。つまり、炉水の高流速領域で、かつ腐食電位の低下が避けられないような領域において、予め、当該構造物を電気的に絶縁しておき、目標とする電位に抑制すればクロムの析出を抑制することができることを知見した。
この場合、制御する腐食電位は、図1に例示した電位−pH線図を指標とした。
なお、図1に例示した電位−pH線図は、クロム濃度が10−6mol/lでの炉水温度条件における平衡値であるから、実際の運用にあたり、水質、電位ばかりでなく、ポンプ等の運転状況のデータをより多く収集し、最適腐食電位条件を求めている。
また、第3の目的を達成するために、本発明者等は以下に示す点を確認、考察した。
本発明者等は、炉水の高流速条件におけるクロムの析出挙動を高温高圧ループ試験機を用いて調整した。調査の結果、クロムの付着を完全に防止することはできなかったが、それでもクロムの付着を緩和させる流路形状が存在することを実験で確認した。
図2は、実際にクロムの付着状況を観察した例である。この観察例は、配管の内壁を機械加工すると、炉水の流れ方向と交差する方向に凹凸状の加工傷が形成された。凹凸状部のうち凹状部がクロム付着の起点となり、凹状部の傾斜面で炉水流れに対向して成長することがわかった。
これは、炉水流れに交差する凹状の加工傷がクロムの付着に深く関与していることと思われる。
このため、本発明者等は、炉水の流れが高流速で、かつ均一流になっている、例えば、原子炉の配管等の試験体に、図2で示すように、炉水の流れと交差する方向と、炉水流れと平行方向に凹凸状の加工傷を与えたものとの2種類を準備し、炉水を流したところ炉水流れ方向と平行な加工傷を持つ試験体の方がクロムの付着量が明らかに少なくなっている事象を見出した。
これは、クロムの付着の起点となるスポットが少ないことによるものと想定される。
この試験結果から、炉水が高流速で流れ、かつ均一流に流れる領域において、炉水の流れ方向に沿って凹凸状の機械加工傷をつけることがクロムの付着量を少なくすることができると判断した。
一方、炉水の高流速流路、流域において、拡開流路から縮流流路に炉水が流れる場合、拡開流路から縮流流路に変わるエッジ部の形状もクロムの付着防止にとって重要であることが確認された。
図3〜図5は、炉水高流速クロム付着試験を実施した3種類のエッジ構造と炉水流れを模式的に示した炉水流れ図である。
ここで、これら図中のうち、図3は、原子炉一次系の拡開流路から縮流流路に炉水が流れる際、クロムが付着することを示す模式図、図4は原子炉一次系の拡開流路と縮流流路との交差部に面取り部(隅切り部)を形成したときの炉水の流れを示す模式図、図5は原子炉一次系の拡開流路と縮流流路との交差部に曲面部(R部)を形成したとき、炉水の流れを示す模式図をそれぞれ示している。
図3および図4で示すように、炉水が拡開流路から縮流流路に流れるとき、その交差部で流れの剥離が生じ、剥離後の領域にクロムの付着が認められた。これに対し、図5で示すように、拡開流路と縮流流路との交差部を曲面部にしたとき、炉水が曲面部を通過しても剥離が生じないので、クロムの壁面への付着が認められなかった。
また、変曲流を持つ流路でも、上述と同じ事象が観察された。
図6〜図8は、炉水が変曲する流路を持つ炉水流れを模式的に示した炉水流れ図である。
これら図中のうち、図6は、原子炉一次系における流路と他の流路との交差部が直角になっているときの炉水の流れを示す模式図、図7は、原子炉一次系における流路と他の流路との交差部が面取り部を形成したときの炉水の流れを示す模式図、図8は、原子炉一次系における流路と他の流路との交差部が曲面部を形成したときの炉水の流れを示す模式図をそれぞれ示している。
上述と同様に、図6および図7で示すように、流路間の交差部で炉水の流れの剥離が終った領域にクロムの付着が認められたのに対し、図8では、流路間の曲面部を炉水が通過しても流れの剥離が認められず、クロムの壁面への付着も観察できなかった。
このように、クロムの付着抑制に際し、本発明者等は、上述の知見に基づき、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置は、上述の目的を達成するために、クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、原子炉圧力容器内に冷却材を供給する原子炉一次系に薬液注入装置とサンプリング装置とを設け、このサンプリング装置により炉水の水質を分析し、分析したpH値が電位−pH線図の予め定められた領域に存在するとき、前記薬液注入装置にpH調整剤を供給するものである。
また、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制方法は、上述の目的を達成するために、原子炉一次系に設けたサンプリング装置によって炉水をサンプリングし、サンプリングした炉水の水質を分析し、分析したpH値が電位−pH線図の予め定められた領域内にあるとき、炉水にpH調整剤を投入し、炉水のpH値を前記電位−pH線図の予め定められた領域よりも高くする方法である。
本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法は、炉水中に含まれるクロム酸イオンが炉内構造物等の材料表面にクロム酸化物を付着させない手段を講じているので、炉水の流れを安定化させることができ、炉水の安定流に基づくポンプ等に安定運転を行わせることができる。
以下、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
(第1実施形態)
図9は、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法に適用される、例えば沸騰水型原子力発電プラントの実施形態を示す概略系統図である。
沸騰水型原子力発電プラントは、原子炉圧力容器1内の炉水(冷却材)を強制的に循環させる再循環系2と、原子炉圧力容器1内の炉水を浄化する炉水浄化系3と、原子炉圧力容器1から発生した蒸気を蒸気タービン系4に供給する主蒸気系14と、蒸気タービン系4で膨張仕事を終えたタービン排気を凝縮して復水にし、この復水を原子炉圧力容器1に給水として戻す給水系13と、この給水系13に接続され、原子炉圧力容器1内の炉水(冷却材)を浄化する炉水浄化系3等とで構成される原子炉一次系6を備えている。
また、再循環系2に接続するジェットポンプ8は、そのポンプの誘引力(吐出力)を利用して周囲の炉水を巻き込んで吸引した後、炉心7の下部プレナムに供給している。
また、炉水浄化系3は、炉水浄化系ポンプ9、再生熱交換器10、非再生熱交換器11、炉水浄化装置12を順次直列に接続させ、炉心浄化系ポンプ9で原子炉圧力容器1の底部側あるいは下部周辺から引き抜いた炉水を再生熱交換器10および非再生熱交換器11で冷却させ、炉水に含まれるイオン状の物質を炉水浄化装置12で浄化した後、再生熱交換器10を介して加熱されて給水系13の給水に合流させて原子炉圧力容器1に戻している。
また、蒸気タービン系4は、主蒸気系14、蒸気タービン15、復水器16、復水ポンプ17、復水浄化装置18、給水加熱器19、給水系13を備えるランキンサイクルで構成されており、炉水を炉心7の燃料集合体から受ける熱によって飽和蒸気にし、この飽和蒸気を乾き蒸気にした後、蒸気タービン系4に導かれ、この蒸気タービン系4を構成する主蒸気系14を介して蒸気タービン15にこの蒸気が供給され、この蒸気タービン15で膨張仕事をさせて動力を発生させる。
また、蒸気タービン系4は、膨張仕事を終えたタービン排気を復水器16で凝縮させて復水にし、この復水を復水ポンプ17を介して復水浄化装置18に供給して脱塩等の浄化を行い、さらに給水加熱器19で加熱して給水にし、この給水を給水系13を介して再び原子炉圧力容器1に戻している。
このような構成を備える沸騰水型原子力発電プラントにおいて、第1実施形態では、原子炉圧力容器1に接続する再循環系2における再循環ポンプ5の出口側に薬液注入装置21と炉水の水質を分析するサンプリング装置35とを設けてクロム付着抑制装置20を構成している。なお、このクロム付着抑制装置20は再循環系2に設ける例で示したが、冷水浄化系3の炉水浄化装置12より下流側または蒸気タービン系4の復水浄化装置18より下流側に同様に設けてよいのはもちろんである。
薬液注入装置21は、図10に示すように、薬液タンク22に設けた薬液投入口23、撹拌機構29、気体供給管25、外部からの気体の通流を遮断するシールポット26を備えている。
また、薬液注入装置21は、薬液タンク22を再循環系2に接続させる配管27を備えるとともに、この配管27に設けた薬液移送ポンプ28(図10参照)のメンテナンスを行うとき、薬液タンク22から隔離する弁29a,29bを備えている。
一方、サンプリング装置35では、サンプリング水から炉水の水質が分析され、分析されたデータ、例えば、pH値が図1で示した電位−pH線図の枠線部Rで囲んだ領域に存するか否かが監視される。
次に作用を説明する。
プラント運転中、サンプリング装置35から採取した炉水のpH値が図1で示した電位−pH線図の枠線部Rで囲まれた領域に存在し、かつジェットポンプ8等(ABWRにおいてはインターナルポンプ)が不安定運転、例えば、振動が発生しているとき、本実施形態は、例えば水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、ニッケルや亜鉛の酸化物、水酸化物、水素化物、金属酸塩、炭酸塩、有機酸塩等のpH調整剤を、薬液タンク22の薬液投入口23に投入する。この場合、pH調整剤を過量に投入すると、炉内構造物や配管に弊害を与えることになるので、例えば、炉水濃度で約1ppbの低濃度になるよう制限が加えられる。
薬液投入口23に投入されたpH調整剤は、薬液タンク22に設けた撹拌機構24で撹拌され、気体供給管25から供給される気体の気泡で炉水に含まれる溶存酸素と分離させた後、再循環系2に供給され、ここからジェットポンプ8に送られ、高流速領域のノズル等に付着するクロム酸化物の生成を抑制する。
このように、第1実施形態は、図9に示すように、再循環ポンプ5の出口側であって、ジェットポンプ8に接続する再循環系2に薬液注入装置21と炉水のサンプリング水を採取して炉水の水質を分析するサンプリング装置35からなるクロム付着抑制装置20を備え、このクロム付着抑制装置20におけるサンプリング装置35で分析した炉水のpH値が電位−pH線図の枠線部Rで囲まれた領域を超えるようにpH調整剤を薬液注入装置21に投入調整(制御)してpH値を高め、高めたpH値によって炉内構造物等の材料表面(具体的には再循環ポンプ、ジェットポンプ、高流速流路、配管等の表面、以下同じ)にクロム酸化物を付着させないように抑制する。
したがって、第1実施形態によれば、クロム酸化物の付着抑制により、炉水の流れを安定化させることができ、炉水の安定流れに基づくポンプに安定運転を行わせ、炉心7への均一供給を図ることができる。
なお、第1実施形態は、再循環ポンプ5の出口側であって、ジェットポンプ8に至る再循環系2に薬液注入装置21を設けたが、この例に限らず、薬液注入装置21に置き換えて腐食電位上昇装置30を設けてもよい。
この場合、腐食電位上昇装置30は、図9を援用し、薬液注入装置21の位置と同じ位置に設置される。
(第1実施形態の第1変形例)
腐食電位上昇装置30は、図11に示すように、薬液タンク31の溶液を循環させ、途中にポンプ32および溶存酸素センサ33を介装させる薬液循環系34を備えている。
なお、他の構成要素は、図10で示した薬液注入装置21の構成要素と同じであるから、ここでは同一符号を付すにとどめ、重複説明を省略する。
このような構成を備える腐食電位上昇装置30において、プラント運転中、サンプリング装置35から採取した炉水の電位値が図1で示した電位−pH線図の枠線部Rで囲まれた領域に存在し、かつジェットポンプ、インターナルポンプ等の機器に、例えば振動が発生しているとき、本実施例では、例えば、過酸化水素水または溶存酸素水等の腐食電位上昇剤を薬液タンク31の薬液投入口23に投入する。
薬液タンク31の薬液投入口23に投入される腐食電位上昇剤が過酸化水素水の場合、過酸化水素水は、撹拌機構24によって撹拌され、均一な濃度に希釈される。
また、腐食電位上昇剤が溶存酸素水の場合、気体供給管25から純酸素ガスが薬液タンク31に供給され、バブリングしている間に薬液循環系34に介装した溶存酸素センサ33を監視しながら高濃度に維持させる。
なお、腐食電位上昇剤の初期投入に際し、過酸化水素水の場合、濃度1ppb、溶存酸素水の場合、濃度10ppbが目安になる。腐食電位上昇剤を過量に投入すると、炉内構造物や配管等に弊害が生成されることに基づく。
このように、本実施例は、再循環ポンプ5の出口側であって、ジェットポンプ8に接続する再循環系2に腐食電位上昇装置30と炉水のサンプリング水を採取して炉水の水質を分析するサンプリング装置35とを備える。サンプリング装置35で分析した炉水の電位値が電位−pH線図の枠線部Rで囲まれた領域を超えるように腐食電位上昇剤を腐食電位上昇装置30に投入して腐食電位値を高める。高めた腐食電位値によって炉内構造物等にクロム酸化物を付着させないように抑制するので、炉水の流れを安定化させることができ、炉水の安定流れに基づくポンプに安定運転を行わせることができる。
(第2実施形態)
図12は、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第2実施形態を示す概念図である。
第2実施形態は、図9に示された原子力発電プラントの拡開流路、縮流流路に腐食電位制御装置36を設置したものである。なお、第1実施形態で示された構成要素と同一構成要素には同一符号を付し、重複説明を省略する。
腐食電位制御装置36は、クロム付着抑制装置20を構成しており、腐食電位制御対象として、例えば、炉心の周方向に沿って複数設置したジェットポンプ8に適用するもので、ジェットポンプ8の電位を測定する際、電位差計37が使用される。
この電位差計37は、第1電極38を電気ケーブル39を介装してジェットポンプ8のポンプ胴体40に接続させるとともに、第2電極41を電気ケーブル39を介装してジェットポンプノズル42の端子54に接続させる。
また、ジェットポンプ8には、ポンプ胴体40とジェットポンプノズル42とを絶縁させる絶縁部43が設けられる。なお、図中ジェットポンプノズル42は縮流を形成する部材としてのモデルとして省略して示されている。
このような構成を備える腐食電位制御装置36において、ジェットポンプ8にクロム酸イオンが混入する高温高圧の炉水が流れると、ポンプ胴体40とジェットポンプノズル42との間に電位差が生じる。
意図的に水素注入を行わない沸騰水型原子力発電プラントの炉水水質条件においては、炉水の流速が10m/secを超える場合、電位差は約0.1Vになることが知見されている。この場合、ジェットポンプノズル42の方が低くなる。そして、クロム酸イオン濃度が上昇してくると、ジェットポンプノズル42には、酸化クロムが析出される。
本実施形態は、このような事象を抑制するものであり、第1電極38を第2電極41との電位差がゼロに近付くように、電位差計37の電気回路(図示せず)からジェットポンプノズル42に電圧が与えられる。この場合の電位調整は、ジェットポンプ8の炉水の圧力差等の運転データを観察しながら段階的に行われる。
このように、第2実施形態は、電位差計37の第1電極38をポンプ胴体40に接続し、第2電極41をジェットポンプノズル42に接続し、ジェットポンプノズル42を高流速で流れる炉水に混入するクロム酸イオンの濃度が上昇し、酸化クロムが析出され、第1電極38と第2電極41との電位差が高くなったとき、電位差計37からジェットポンプノズル42に与える電流を制御して電位差をゼロに近付け、ジェットポンプノズル42のクロム酸化物の付着を抑制するので、炉水の流れを安定化させることができ、炉水の安定流れに基づくジェットポンプ8に安定運転を行わせ、炉心7への均一供給を図ることができる。
なお、第2実施形態では、電位差計37の第1電極38をポンプ胴体40に接続させ、その第2電極41をジェットポンプノズル42に接続させ、第1電極38と第2電極41との電位差から酸化クロムのジェットポンプノズル42への付着の度合を判断し、電位差計37からジェットポンプノズル42に与えられる電流を抑制しつつ第1電極38と第2電極41との電位差をゼロに近付けるようにしたが、この例に限らず、第2実施形態の第1変形例として、例えば、図13に示すように、電極用試験片として圧力容器44に収容する高温高圧炉水用電極試験片45を設け、この高温高圧炉水用電極試験片45に電気ケーブル39を介装して接続する第1電極38と第2電極41との電位差をゼロに近付けるように制御し、酸化クロムのジェットポンプノズル42への付着を抑制してもよい。
この場合、サンプリング装置35から採取したサンプリング水の水質を分析したデータを図1に示した電位−pH線図にプロットし、このプロットを指標にして電位差をゼロに近付けるように制御するので、精度の高い酸化クロム付着抑制を行うことができる。
なお、符号46は、圧力容器44のドレンを、例えばドレン溜に排出させるファンネル46であり、圧力容器44の入口は、バルブ53を介装して図9に示した再循環ポンプ5に接続される。
また、他の構成は、図12で示した構成と同じであるから、ここでは同一符号を付すにとどめ、重複説明は省略する。さらに、上記実施形態はジェットポンプの例で示したが、インターナルポンプにおいて、符号40をハウジング、符号42をインペラーとしても同様の作用、効果を得ることができる。すなわち、炉水流速が10m/sec以上の部位に適用することによって同様の作用、効果を得ることができる。
(第3実施形態)
図14は、本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第3実施形態を示す概念図である。
第3実施形態は、図9に示した再循環ポンプ5を介装する再循環系2に接続し、炉心7の周方向に沿って複数配置するジェットポンプ8に適用される。
ジェットポンプ8は、図14に示すように、炉水の流れ方向に沿って順に、ジェットポンプノズル42、吸込み口46、ポンプ胴体40、ディフューザ47を備え、ジェットポンプノズル42で吸い込んだ炉水を高流速化させ、その際に発生する誘引力で周囲の炉水を吸い込み、吸い込んだ炉水をポンプ胴体40で混合させ、ディフューザ47で混合炉水の圧力を回復させ、さらに炉心下部プレナム、炉心底部(ともに図示せず)を介装して反転させて炉心に供給している。
このような構成を備えるジェットポンプ8において、ジェットポンプノズル42は、図15に示すように、噴出口48aを1口孔タイプ、あるいは図16に示すように、噴出口48bを5口孔タイプにしている。
このような孔タイプを有するジェットポンプノズル42およびジェットポンプ胴体40は、空胴内面の研磨加工の際、その周方向に沿って施工加工するので、炉水の流れ方向に交差して研磨痕が残っており、炉水の流れに偏流または渦ができ、酸化クロムの付着の要因になっている。特に、噴出口48a,48bの炉水流速は、約50m/secの高速流になっており、また、ポンプ胴体40の炉水流速は、約25m/secの高速流になっており、研磨痕に酸化クロムが付着し易い。
第3実施形態は、このような事情に基づいてなされたもので、図17に示すように、ジェットポンプノズル42の噴出口48の内面およびポンプ胴体40の内面を炉水の流れ方向に沿って断面山形状のV字形状55に形成するか、または、第3実施形態の第1変形例として、図18に示すように炉水の流れ方向に沿って凹凸状、具体的には断面ジグザグ状のU字形状56に形成したものである。なお、V字形状55、またはU字形状56は5〜10μmRaの粗さにしている。
このように、第3実施形態は、ジェットポンプノズル42の噴出口48の内面およびポンプ胴体40の内面を炉水の流れ方向に沿ってV字形状55またはU字形状56に形成したので、炉水の流れの安定化を図ることができ、酸化クロムの付着を抑制することができる。
(第4実施形態)
第4実施形態は、酸化クロムの付着抑制対策としてジェットポンプ8のジェットポンプノズル42およびポンプ胴体40を適用対象としたが、この実施形態にとらわれることなく、第4実施形態として例えば、図19に示すように、炉心シュラウド(図示せず)に収容する燃料集合体49の下部タイプレート50におけるリークホール51内面に酸化クロムの付着抑制策を講じてもよい。
すなわち、第4実施形態は、従来、図20に示すように、下部タイプレート50におけるリークホール51の入口51aおよび出口51bのコーナ部分が0.5Cの面取り加工であったが、ここを通過する炉水の流れ剥離に起因して酸化クロムの付着を抑制するために、図21に示すように、リークホール51の入口51aおよび出口51bのコーナ部分に0.5Rの曲面52を形成したものである。
このように、第4実施形態は、下部タイプレート50におけるリークホール51の入口51aおよび出口51bのコーナ部分に曲面52を形成し、炉水の流れを安定化させたので、炉水の不安定流れに基づく酸化クロムの付着を抑制することができる。
なお、第1から第4実施形態においては沸騰水型原子炉で説明したが、原子炉圧力容器を加圧水型原子炉(PWR)の原子炉容器(以下同様に原子炉圧力容器と呼ぶ)とその原子炉圧力容器に接続され炉水を導入する一次系配管に使用しても本発明の効果を得ることができるのはもちろんである。
本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法に適用する炉水中に含まれるクロム酸イオンの電位−pH線図。 炉水中に含まれるクロム酸イオンによって原子炉の配管にクロムが付着することを示す概念図。 原子炉一次系の拡開流路および縮流流路に炉水が流れる際、クロムが付着することを示す模式図。 原子炉一次系の拡開流路と縮流流路との交差部に面取り部を形成したときの炉水の流れを示す模式図。 原子炉一次系の拡開流路と縮流流路との交差部に曲面部を形成したときの炉水の流れを示す模式図。 原子炉一次系の流路と流路との交差部が直角になっているときの炉水の流れを示す模式図。 原子炉一次系の流路と流路との交差部が面取り部を形成したときの炉水の流れを示す模式図。 原子炉一次系の流路と流路との交差部が曲面部を形成したときの炉水の流れを示す模式図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第1実施形態を示す概略プラント系統図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法に適用する薬液注入装置を示す概念図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第1実施形態の第1変形例を示す概念図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第2実施形態を示す概念図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第2実施形態の第1変形例を示す概念図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第3実施形態を示す概念図。 ジェットポンプノズルの噴出口として1口孔タイプを示す図。 ジェットポンプノズルの噴出口として5口孔タイプを示す図。 本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第3実施形態を示す図。 本発明に係る原子力発電プラント炉内構造物へのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第3実施形態の第1変形例を示す図。 原子力発電プラントに適用する従来の燃料集合体を示す一部切欠概念図。 原子力発電プラントに適用する従来の燃料集合体の下部タイプレートにおけるリークホールの入口、出口のコーナに面取り加工を施工したことを示す図。 原子力発電プラントに適用する燃料集合体の下部タイプレートにおけるリークホールの入口、出口のコーナに曲面加工を施工した本発明に係る原子力発電プラントのクロム付着抑制装置およびそのクロム付着抑制方法の第4実施形態を示す図。
符号の説明
1 原子炉圧力容器
2 再循環系
3 炉水浄化系
4 蒸気タービン系
5 再循環ポンプ
6 原子炉一次系
7 炉心
8 ジェットポンプ
9 炉水浄化系ポンプ
10 再生熱交換器
11 非再生熱交換器
12 炉水浄化装置
13 給水系
14 主蒸気系
15 蒸気タービン
16 復水器
17 復水ポンプ
18 復水浄化装置
19 給水加熱器
20 クロム付着抑制装置
21 薬液注入装置
22 薬液タンク
23 薬液投入口
24 撹拌機構
25 気体供給管
26 シールポット
27 配管
28 薬液移送ポンプ
29a,29b 弁
30 腐食電位上昇装置
31 薬液タンク
32 ポンプ
33 溶存酸素センサ
34 薬液循環系
35 サンプリング装置
36 腐食電位制御装置
37 電位差計
38 第1電極
39 電気ケーブル
40 ポンプ胴体
41 第2電極
42 ジェットポンプノズル
43 絶縁部
44 圧力容器
45 高温高圧炉水用電極試験片
46 吸込み口
47 ディフューザ
48a,48b 噴出口
49 燃料集合体
50 下部タイプレート
51 リークホール
51a 入口
51b 出口
52 曲面
53 バルブ
54 端子
55 V字形状
56 U字形状

Claims (15)

  1. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、原子炉圧力容器内に冷却材を供給する原子炉一次系に薬液注入装置とサンプリング装置とを設け、このサンプリング装置により炉水の水質を分析し、分析したpH値が電位−pH線図の予め定められた領域に存在するとき、前記薬液注入装置にpH調整剤を供給することを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  2. 前記薬液注入装置は、薬液タンク内の炉水にpH調整剤を供給する薬液投入口と、炉水に気体を供給し、この気体の気泡を利用して炉水から溶存酸素を分離させる気体供給管と、炉水を撹拌する撹拌機構と、前記薬液タンク内に外部からの気体の通流を遮断するシールポットとを備えたことを特徴とする請求項1記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  3. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、原子炉圧力容器内に冷却材を供給する原子炉一次系に腐食電位上昇装置とサンプリング装置とを設け、このサンプリング装置により炉水の水質を分析し、分析した炉水の電位が電位−pH線図の予め定められた領域に存在するとき、前記腐食電位上昇装置に腐食電位上昇剤を供給することを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  4. 前記腐食電位上昇装置は、薬液タンク内の炉水に腐食電位上昇剤を供給する薬液投入口と、炉水に気体を供給してバブリングさせる気体供給管と、炉水を撹拌する撹拌機構と、前記薬液タンク内の炉水を循環させ、中間部分にポンプ、溶存酸素センサを有する薬液循環系とを備えたことを特徴とする請求項3記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  5. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、前記炉内構造物の10m/sec以上の流速を有する部位に腐食電位制御装置を設けたことを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  6. 前記腐食電位制御装置は、前記炉内構造物を構成するジェットポンプのポンプ胴体とジェットポンプノズルとの電位差を計測する電極と、電位差が出たとき、電位差がゼロになるように前記ジェットポンプノズルに電流を与える電位差計とを備えたことを特徴とする請求項5記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  7. 前記腐食電位制御装置は、前記炉内構造物を構成するジェットポンプノズルと炉水を充水する圧力容器に収容する高温高圧炉水用電極試験片との電位差を計測する電極と、再循環ポンプの出口側に設けたサンプリング装置により炉水の水質を分析し、分析した電位を電位−pH線図にプロットし、このプロットを指標にして前記電極で計測した電位差をゼロに近付けるように前記ジェットポンプノズルに電圧を与える電位差計とを備えたことを特徴とする請求項5記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  8. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、前記炉内構造物の10m/sec以上の流速を有する炉水の流路、流域の内面を炉水の流れ方向に沿って凹凸状に形成したことを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  9. 前記炉内構造物はジェットポンプであり、このジェットポンプにおけるポンプ胴体の内面を炉水の流れ方向に沿って凹凸状に形成したことを特徴とする請求項8記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  10. 前記凹凸状は、V字形状およびU字形状のうち、いずれかであることを特徴とする請求項8または9記載の原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  11. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、前記炉内構造物の10m/sec以上の流速を有する燃料集合体における下部タイプレートに設けたリークホールの入口、出口端を円弧状の曲面に形成したことを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  12. クロム酸化物が原子炉圧力容器内に配設された炉内構造物の部材表面に付着することを抑制する原子力発電プラントのクロム付着抑制装置において、前記炉内構造物の10m/sec以上の流速を有する炉水の流路、流域における縮拡流流路のコーナ部分および変曲流流路のコーナ部分を円弧状の曲面に形成したことを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制装置。
  13. 原子炉一次系に設けたサンプリング装置によって炉水をサンプリングし、サンプリングした炉水の水質を分析し、分析したpH値が電位−pH線図の予め定められた領域内にあるとき、炉水にpH調整剤を投入し、炉水のpH値を前記電位−pH線図の予め定められた領域よりも高くすることを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制方法。
  14. 原子炉一次系に設けたサンプリング装置によって炉水をサンプリングし、サンプリングした炉水の水質を分析し、分析した電位が電位−pH線図の予め定められた領域内にあるとき、炉水に腐食電位上昇剤を供給し、炉水の電位を前記電位−pH線図の予め定められた領域よりも高くすることを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制方法。
  15. 原子炉一次系に設けたジェットポンプのジェットポンプノズルと圧力容器内に充水する炉水に浸漬する高温高圧用電極試験片との電位を検出し、検出した電位を電位−pH線図にプロットし、このプロットを指標に前記ジェットポンプノズルと前記高温高圧電極試験片との電位差がゼロになるように前記ジェットポンプに電圧を加えることを特徴とする原子力発電プラントのクロム付着抑制方法。
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