JP4340574B2 - 原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法 - Google Patents

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Description

本発明は、沸騰水型原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法に係り、特に、ステンレス鋼およびニッケル基合金等の原子炉構造材料の応力腐食割れを緩和するのに好適な原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法に関する。
軽水を冷却水として冷却を行う原子炉を備えた沸騰水型原子力発電プラント(以下BWRプラントと示す)においてプラント稼働率向上の観点から、炉内構造物や圧力協会などを構成する金属製の構造材料、例えばステンレスやニッケル基合金など金属材料の応力腐食割れ(以下、SCCと示す)を緩和,抑制することが必要となっている。SCCは材料,応力,環境の3因子が重畳したときに起こる。したがって、3因子の内少なくとも1因子を緩和することによりSCCを緩和できる。
原子力発電プラントの運転中、原子炉の炉心からのガンマ線および中性子線により、原子炉を冷却する軽水を用いた冷却水が放射線分解する。その結果、炉内構造物や圧力境界などを構成する金属材料は、放射線分解生成物である酸素および過酸化水素が数百ppb 程度存在する100℃以上の高温にさらされる。定格出力運転中の沸騰水原子力発電プラントの原子炉水温度は288℃である。
ここで、SCCにおけるき裂進展速度(以下、CGRと示す)と腐食電位(以下、ECPと示す)の関係を見ると、図2に示すようにECPが低下するとCGRが低下する。さらに、酸素および過酸化水素の濃度と高温水中における304型ステンレス鋼(以下、
340SSと示す)のECPとの関係を測定した結果を見ると、図3に示すように、酸素においても、過酸化水素においても、濃度の減少に伴いECPが低下する。したがって、原子炉の冷却水に接触する金属材料のSCCを緩和するためには、ECPを低減すること、つまり、原子炉水中に存在する酸素および過酸化水素の濃度を低減することが有効である。
これに対して、原子力発電プラントにおける高温水に接触する金属材料のSCCを緩和する方法として、給水系から水素を注入という技術がある。水素注入は、注入した水素と、水との放射線分解によって生じた酸素および過酸化水素とを反応させて水に戻すことにより、炉水中の酸素および過酸化水素濃度を低減する技術である。水素注入を行う場合、水の放射化により生じた放射性窒素16(以下、N−16と示す)が蒸気とともに移行しやすくなり、このN−16がタービン建屋の線量率を上昇させる副作用が生じる。主蒸気配管線量率の上昇は、原子炉冷却水の水素濃度により決定される。図4に示したように、主蒸気配管線量率の上昇は給水水素濃度がほぼ0.4ppm以上の範囲で生じ、給水水素注入濃度が1ppm を超えると主蒸気配管線量率は最大5倍まで上昇する。したがって、N−
16による副作用を生じない水素濃度範囲で腐食電位を低減することが望まれている。この課題に対して、材料表面に白金族元素を付着させて水素と酸素の反応を加速させる技術が特許文献1に示されている。この技術により、主蒸気配管の線量率の上昇を抑制しつつECPを低減することができる。また、水素注入および白金族元素の付着処理を行うと原子炉冷却水の放射性物質濃度が上昇しプラントの線量率が上昇することが知られている。この対策として、原子炉水中に亜鉛を注入する方法が特許文献2および特許文献3に記載されている。また、原子炉水中に鉄を注入し炉水中の放射性物質濃度を低減する方法が特許文献4に記載されている。このため、炉内構造材のSCC抑制のための水素注入とともにプラントの線量率低減技術の組合せが適用されている。
特許第2766422号公報 特許第3476432号公報 特表2001−516061号公報 特許第2095486号公報
本発明者らは、水素注入に加えヒドラジンなどの強い還元力を持った還元性窒素化合物(ヒドロキシルアミン,カーボヒドラジドやヒドラジン,アンモニア,ジアジンなどの窒素分子より酸化数の小さい状態の窒素を含む窒素化合物)を注入することにより、炉内で発生した酸素および過酸化水素を還元性窒素化合物と反応させて水と窒素にすることによって、炉水の酸素および過酸化水素濃度を効率的に低減する可能性について検討した。本発明者らが行った、還元性窒素化合物(ヒドラジン)および酸素共存下でのステンレス鋼の腐食電位を測定した図5に示す試験結果に見られるように、ヒドラジンの添加量の増加にしたがいECPが低下した。
さらに、本発明者らは、280℃の酸素を含む高温水にヒドラジンを添加し、さらに
Co−60線源を使ってガンマ線を照射したときに酸素濃度および副生成物がヒドラジンに対してどのように変化するかを実験した。その結果を図6に示す。(数式1)の反応の化学量論量に対して、酸素濃度がヒドラジン濃度より過剰に存在するときは酸素濃度が低減し、アンモニアや水素が発生しない。一方、ヒドラジン濃度が酸素濃度より過剰に存在すると、酸素およびガンマ線の照射により生成する過酸化水素は(化1)および(化2)に示す反応により消費されるがアンモニアや水素も生じるアンモニアの生成反応は(化3)よるものと推定される。以上の結果より、原子炉内構造材の腐食電位を低減するために還元性窒素化合物を過剰に注入すると、アンモニアの生成および濃度の増加に伴い、原子炉水(以下、炉水と示す)中の導電率およびpHが上昇する。
24+O2→N2+H2O …(化1)
24+2H2O→N2+4H2O …(化2)
3N24→2N2+2NH3+3H2 …(化3)
図7は、水素注入を給水濃度0.4ppm実施したときに、ヒドラジンを合わせて注入した時の原子炉底部の腐食電位を解析した結果である。ヒドラジンが無い時には、炉底部のステンレス鋼の腐食電位は0.1V vs HE を超えており、SCCにとって、未だ厳しい条件となっている。しかし、給水にヒドラジンを0.8ppm 程度添加すると、腐食電位は
−0.1V vs SHE まで低下し、さらに注入量を増やすと−0.4vsSHE以下に低下する。したがって、水素注入とヒドラジン等の還元性窒素化合物を組合せて注入することにより原子炉をSCCからまもることが期待できる。
また、図8は、給水に水素を0.4ppm注入した状態でさらに給水にヒドラジンを添加した場合の炉水中および主蒸気中のアンモニア濃度を解析した結果である。この解析結果より、給水にヒドラジンを0.4ppm注入した場合には、炉水中のアンモニア濃度は約20
ppbとなり、主蒸気中のアンモニア濃度は約2ppbと評価される。さらに、ヒドラジンの注入量を増加させた場合には炉水中および主蒸気中のアンモニア濃度も増加する。沸騰水原子力発電プラントの場合、原子炉内で冷却水が直接沸騰し、蒸気をタービン系におくる直接サイクルであることから、冷却水中に薬剤を添加しない軽水を用い、軽水中の不純物濃度を導電率およびpHの管理値を設け運転している。このため、還元性窒素化合物の注入により微量生成するアンモニアが生成すると、炉水の導電率およびpHがアンモニア濃度に比例して増加する。したがって、アンモニア濃度が過大となると水質管理値を逸脱する可能性があるため、還元性窒素化合物の注入量をコントロールする必要がある。
さらに、炉水に水素および還元性窒素化合物を注入すると燃料表面に付着している鉄酸化物(以下燃料付着クラッドと示す)が溶解しやすくなるため、酸化物中に含まれる放射性物質も炉水中に溶解し、炉水と接する原子炉廻りの配管や機器の内面に付着する。このためプラントの点検作業に伴い作業者の受ける放射線量に影響する。
また、原子炉内に生成するアンモニアは、原子炉内の冷却水中の不純物を浄化する原子炉浄化系に設けられたろ過脱塩器にも移行し、ろ過脱塩器に使用している粉末イオン交換樹脂に吸着する。このため、炉水中アンモニア濃度の増加により、ろ過脱塩器の粉末イオン交換樹脂がアンモニア吸着により飽和する時間が短縮される。このため、ろ過脱塩器出口からアンモニアがリークを開始する時間が早まり、粉末イオン交換樹脂の交換頻度が増加し、放射性廃棄物となる廃樹脂量が増加し、好ましくない。
さらに、沸騰水型原子力発電プラント内では一般的に微量存在するナトリウムはイオン交換樹脂へのイオン選択性がアンモニアより小さい。このため、還元性窒素化合物の注入により生成したアンモニアを吸着したイオン交換樹脂では、従来のアンモニアが吸着していない樹脂に比べ、吸着容量が低下する。このため、還元性窒素化合物の注入運転に伴いこれまで原子炉浄化系のろ過脱塩装置で浄化されていたナトリウム不純物の浄化能力が低下し、炉水中のナトリウム濃度が増加する。炉水中ナトリウム濃度の増加は、アンモニウム濃度の増加と同様、炉水の導電率およびpHの増加を招き、水質管理値を逸脱する可能性がある。したがって、微量不純物であるナトリウムの発生量もコントロールする必要がある。
また、原子炉内で生成したアンモニアは揮発性を有するため、原子内で冷却水が蒸気となる際に、蒸気中に移行する。蒸気へ移行したアンモニアは、蒸気が凝縮する復水器内で再び、復水中に溶解し、復水中の導電率が上昇する。還元性窒素化合物を注入しない場合、復水器内冷却管から漏洩する海水のリークを導電率による連続測定により監視していたが、還元性窒素化合物の注入時には、導電率指示値の変動が還元性窒素化合物の注入に伴うアンモニアによるものか復水器内冷却管からの海水の漏洩によるものであるかの判断が難しくなる。
本発明の目的は、原子炉冷却水と接する構造材料の応力腐食割れを抑制できる原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法を提供することにある。
上記した目的を達成する本発明の特徴は、水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、給水系,原子炉冷却水浄化系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれた1箇所以上の異なる系統配管から冷却水中に酸化数が負の状態の窒素を含む還元性窒素化合物を注入する運転において、主蒸気配管目標線量率上限以下の範囲まで水素を注入し、その後、炉水中の酸素濃度あるいは原子炉構成材料の腐食電位を指標とし還元性窒素化合物の注入量を調整することにある。これにより、原子炉構成材料のSCCが抑制できる。
好ましくは、還元性窒素化合物としてヒドラジンあるいは炭酸ヒドラジンあるいはヒドラジンと炭酸ヒドラジンの混合物を注入するとよい。これにより、還元性窒素化合物から生成するアンモニアによる導電率およびpHの上昇を抑制し、炉水の水質の変動が抑制できる。
好ましくは、水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、還元性窒素化合物と炭酸ガスあるいは金属炭酸塩を同時に注入することにより、炉水水質管理値の範囲内でより多くの還元性窒素化合物を注入することが望ましい。これにより、原子炉構造材のSCCが抑制される。さらに、炭酸塩注入を併用することで、プラントの運転裕度の拡大およびプラントの配管および機器の線量率低減が達成できる。
好ましくは、還元性窒素化合物と炭酸亜鉛または炭酸鉄を注入することにより、原子炉構造材のSCC抑制と同時に炉水放射性物質濃度の上昇を抑制し、プラントの線量率の上昇を抑制する。
好ましくは、原子炉冷却水導電率が0.9μS/cm以下および原子炉冷却水pH8.5以下の範囲内で行うことにより、BWRプラントの炉水水質管理値を逸脱することなく、安定した運転を達成する。
好ましくは、原子炉浄化系ろ過脱塩器出口水のカチオン樹脂充填カラム通過後の導電率,ろ過脱塩装置の入口水および出口水中の放射能濃度を測定することにより得られる放射性物質の除去率のいずれか又は両方の結果より原子炉冷却材浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂の交換時期を判定することにより、炉水中のアンモニア以外の不純物浄化性能低下時期を監視するとよい。原子炉浄化系ろ過脱塩器のイオン交換樹脂の交換時期を、ろ過脱塩装置出口水の酸導電率およびカチオン成分放射性物質濃度で判断し、復水器内冷却管の海水リークをヒータドレン系および復水器出口導電率により判断することにより、適切なイオン交換樹脂の交換時期を判断でき、プラント運転上の信頼性が向上する。
好ましくは、ヒータドレン系系統水の導電率と復水器下流の系統水の導電率を常時監視し、両者の導電率を比較することにより、復水器冷却管からの海水漏洩の有無を監視することにより、プラントの異常現象を早期に発見する。
以上の発明により、沸騰水型原子力発電プラントへ還元性窒素化合物を注入し、SCCを抑制する運転が実現可能となる。
本発明によれば、還元性窒素化合物注入により原子炉冷却水中の酸素,過酸化水素濃度を低減でき、原子炉冷却水と接する材料表面のECPを低減できるため、SCCを抑制できる。
本発明を適用する沸騰水型原子力プラントについて図9を使って説明する。沸騰水型原子力プラントは復水器13と復水ろ過脱塩器3と給水ポンプ4と給水加熱器5と核燃料の装荷された原子炉圧力容器1を給水系配管6で接続し、原子炉圧力容器1とタービン2を主蒸気配管14で接続することにより閉ループを構成する。原子炉冷却材として水を使い、原子炉圧力容器1で水を蒸気にして、蒸気を使ってタービンを回転させ、発電機(図示せず)を回転させて発電を行う。蒸気は復水器13で水に戻され、復水ろ過脱塩器3で不純物が除去され、給水ポンプ4で給水加熱器5を通して原子炉圧力容器1に戻される。この際、主蒸気の一部は抽気配管27より給水加熱器5に供給され冷却水を昇温するための熱源として使用される。昇温に用いた蒸気の一部は凝縮水となり、ヒータドレン系配管
28を経由して復水器13に回収される。これとは別に原子炉圧力容器1下部と、再循環ポンプ7,ジェットポンプ15入口を原子炉冷却水再循環系配管16に接続する。原子炉冷却水再循環ポンプ7により炉心に流れる冷却水流量を増加させて熱出力を増加させる仕組みになっている。ABWRでは原子炉冷却水再循環系配管16はなく、再循環ポンプ7は原子炉圧力容器1内に設置されたインターナルポンプの構造となっている。ここでは、原子炉冷却水再循環系配管16を有する原子炉を用いて説明する。
この原子炉では原子炉冷却水再循環系配管16上流側と原子炉冷却水浄化系ポンプ9,原子炉冷却水浄化系熱交換器11,原子炉冷却水ろ過脱塩器12と給水系配管6を原子炉冷却水浄化系配管10で接続し原子炉冷却水浄化系ポンプ9で原子炉水を、原子炉冷却水ろ過脱塩器12に通水することにより、原子炉水中の不純物を浄化する仕組みになっている。尚、ABWRの場合、原子炉圧力容器1上部から原子炉水の一部を引き出し、原子炉冷却水浄化系熱交換器11を通して冷却し原子炉冷却水ろ過脱塩器12で原子炉水中の不純物を除去し、給水系配管6に戻す原子炉冷却水浄化系配管10が設置されている。また、原子炉圧力容器1の底部と、原子炉冷却水浄化系配管10を接続するボトムドレン配管8が設置されている。更に、原子炉圧力容器1の炉心上部に非常時に炉心を冷却するために原子炉炉心に冷却水を注入する非常用炉心冷却系や、原子炉の核燃料の核反応を制御する制御棒を駆動させるために冷却水を注入する制御棒駆動水圧系が設置されている(図示せず)。さらに各系統配管での水質を水質モニタ21〜26でモニタし、主蒸気配管線量率測定器29で主蒸気配管14の線量率をモニタする。
さらに、水素注入を行う場合は、水素発生装置31から給水系配管6に水素を注入し、原子炉へ水素を供給する。原子炉内の水素注入の効果は、サンプリング点の水質モニタ
22で溶存酸素濃度を測定することにより確認している。また、腐食環境の指標である腐食電位を測定する場合は、腐食電位測定器30にボトムドレン水を通水し測定する。
ここで、図4に示したように給水水素濃度を約0.4ppm以上注入すると主蒸気配管の線量率が上昇する。水素注入濃度0.4ppmからおよそ1ppm の範囲では水素注入量にほぼ比例して主蒸気配管線量率が上昇し、1ppm 以上で線量率の上昇が飽和する。また、水素注入量と主蒸気配管線量率の上昇率は、プラントによって異なり一律でない。これは、原子炉の出力の相違あるいは炉水中に微量に存在する不純物の種類および量の相違によるものと推定されている。さらに、主蒸気配管線量率の許容上昇率も、発電所の敷地面積の大小により敷地境界線量制限に及ぼすタービン建屋のスカイシャイン線量の影響が異なるため、発電所毎に相違がある。これらの状況を踏まえると、発電プラント毎に水素注入時の主蒸気配管許容線量上昇率制限値(以下、主蒸気配管線量率目標値と示す)が異なることとなり、そのプラント毎に許容できる水素注入量を選定する必要がある。このため、水素と還元性窒素化合物を併用して注入する場合には、最初に給水水素濃度を徐々に増加させ主蒸気配管線量率目標値を超えず、かつ前記目標値に近い水素注入濃度を選定することが必要となる。
また、ヒドラジンと水素と併用して注入条件で解析した図8に示したようにヒドラジンの注入量の増加にしたがい、炉水中のアンモニア濃度が増加する。ここで、沸騰水型原子力発電プラントの炉水の水質は、導電率およびpHの値により管理されており、その管理値は、導電率;1μS/cm以下およびpH;5.6から8.6と設定されている1)。この炉水の水質管理値内でプラントの健全性を維持しながらヒドラジン注入を行うためには、ヒドラジン注入量に制限が生じる。また、前記炉水の水質管理値を逸脱しないためには、前記水質管理値に裕度をもった運転目標値を指標とすることが望ましい。ここでは、水素と還元性窒素化合物を併用して注入する場合の水質管理値を、導電率;0.9μS/cm 以下およびpH;8.5以下(アンモニアの生成により炉水pHはアルカリ性となるためpHの上限のみ) 設定した。これらの導電率およびpHの設定値を、還元性窒素化合物注入運転時の目標値と呼ぶ(例えば、火力原子力発電,43,1340(1992))。
炉水の導電率目標値;0.9μS/cmおよびpH;8.5となるアンモニア濃度は、図
10に示すアンモニア濃度と導電率およびpHの関係から、約60ppb となる。この最大アンモニア濃度は、図8に示した、実プラントにおけるヒドラジン注入濃度と炉水中アンモニア濃度の解析結果より、給水ヒドラジン注入濃度は約1.5ppmとなる。さらに、図7に示した給水ヒドラジン注入濃度と炉底部腐食電位の解析結果より、給水ヒドラジン注入濃度1.5ppm 注入時の炉底部腐食電位は、−0.4V vs SHEであり、十分なSCC発生抑制環境を達成できる。なお、SCC発生抑制のための炉底部腐食電位の目標電位を
−0.1V vs SHEと設定すると図7より給水ヒドラジン濃度は0.8ppm となり、その際の炉水アンモニア濃度は図8より20ppbとなる。
炉水中アンモニア濃度20ppb である場合の、原子炉浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂からアンモニアがリークする時間を(数1)により計算することができる。
Figure 0004340574
ここで、tはアンモニアリーク時間(h)、qはカチオン樹脂イオン交換容量(eq/kg)、mはカチオン樹脂樹脂量(kg)、fはイオン交換樹脂利用率(−)、Cはアンモニア濃度(g/kg)、Vは浄化装置流量(kg/h)、Mはアンモニア化学当量数(g/eq)である。
(数1)に1100MWe級プラントの原子炉浄化系ろ過脱塩器条件を代入して計算すると、約340時間(約14日)が得られる。このアンモニアがリークするまでの時間は、ヒドラジン注入を行わない場合のイオン交換樹脂交換までの試用期間60日から90日に対して1/4〜1/6である。したがって、ろ過脱塩器のアンモニアリークが生じた時点でイオン交換樹脂の交換を行った場合は、イオン交換樹脂の使用量および廃棄物量が増加し、好ましくない。一方、カチオン樹脂への吸着性を各不純物の選択係数から判断すると、炉水中に存在するニッケル,銅等の遷移金属不純物およびコバルト,亜鉛等の放射性物質の選択係数はアンモニアより大きくアンモニアより強い吸着力を持っている。しかし、表1に示すように水素とアンモニアの選択係数は約2倍アンモニアが大きいため、遷移
Figure 0004340574
金属イオンおよび放射性物質のカチオン樹脂への吸着性はアンモニアが存在しない場合に比べ相対的に低下する。したがって、原子炉水中の主たる不純物である遷移金属不純物および放射性物質はアンモニアが吸着したイオン交換樹脂でも浄化可能であるが、リークする時間が従来のアンモニアがない状態より短くなる可能性を含んでいる。したがって、イオン交換樹脂の浄化性能の監視が重要となる。ここで、ろ過脱塩器イオン交換樹脂の交換時期はこれまでろ過脱塩器出口の導電率が0.1μS/cm に達した時点で取替を行ってきた。この場合、ろ過脱塩器出口水の導電率上昇は、クロム酸イオンおよび硫酸イオン等の不純物のリークであった。ヒドラジンを注入する場合は、前述したように20ppb のアンモニアがろ過脱塩器出口水に含まれるため、導電率が0.3μS/cm となる。このため、従来と同様、アニオン不純物によるイオン交換樹脂の劣化が生じた場合には、カチオン不純物であるアンモニアにより上昇したpHが中和され導電率の低下が生じるため、脱塩器出口導電率からアニオン不純物の性能低下を判定することが困難となる。ここで、ろ過脱塩器出口水のサンプリング水をカチオン樹脂を充填した樹脂カラムを通過させ、カラム出口水の導電率を連続モニタすることにより、アニオン不純物濃度に相当する導電率が得られる。このようにして測定された導電率を酸導電率と呼ぶが、酸導電率の測定によりアニオン樹脂の性能監視ができる。
一方、カチオン樹脂の吸着容量低下の場合は酸導電率のみの測定では検出できない。このため、ろ過脱塩器入口および出口水中の放射能濃度し、Co−60,Co−58,Mn−54等のカチオン放射性物質濃度の除去率から、性能を監視できる。放射性物質濃度の測定は、金属濃度測定より計測感度が大きいため、少量のサンプル水の採取により測定が可能となり、運転管理上の好都合である。この場合、イオン交換樹脂を交換する判断基準は、放射能の除去率が90%以下に達した時点とすることが好ましい。
還元性窒素化合物注入時に生成するアンモニアの影響は、復水系の水質管理においても生ずる。具体的には、復水器出口水の導電率を連続監視し、復水器内冷却管から冷却水の海水がリークする現象を監視している。ヒドラジンを注入した場合には炉水の揮発性のアンモニアが主蒸気へ移行し、復水器内で再び凝縮水中に溶解し、復水にもアンモニアが含まれる。このため、復水の導電率が上昇する。具体的には、給水ヒドラジン注入量を最大の1.5ppm注入した場合には、図8より主蒸気中に5ppb 移行する。このため、復水中のアンモニア濃度も約5ppbとなる。このときの導電率は約0.09μS/cmであり、従来の0.06μS/cmの約1.5倍に上昇する。このため、復水器内冷却管に損傷が生じ海水がリークしてきた場合は、ベース導電率の上昇により少量の海水リークでは検出できないことが想定される。このため、復水と同様アンモニアを含むヒータドレン系に導電率計を備えたサンプリング点を設け連続して導電率をモニタし、従来からモニタしてきた復水器出口の導電率との差を測定することにより、海水リークの検出感度を向上させることが可能となる。この監視方法を用いると、ヒドラジン注入量の変動期間中に生じる主蒸気中のアンモニア濃度の変動に伴い、復水及びヒータドレン水中のアンモニア濃度が変動した場合においても、海水リークの検出が可能となる。
なお、還元性窒素化合物の注入により生成するアンモニアによる炉水導電率およびpH上昇の影響は、アンモニア(NH4 +)が陽イオンであることから陰イオンを共存させることにより、アルカリを中和することができるため導電率の低下しpHも低下できる。炉水中に共存させる陰イオンは、揮発性であり炉水に濃縮しない炭酸(CO3 2-) イオンが望ましい。炭酸ガスは(化4)に示すように水に溶けると炭酸となる。さらに炭酸は、(化5)および(化6)に示すように炉水中で解離して、炭酸イオンとなる。
CO2+H2O→H2CO3 …(化4)
2CO3→HCO3 -+H+ …(化5)
HCO3 -→CO3 2-+H+ …(化6)
炭酸イオンの供給方法としては炭酸ガスとして注入する方法および還元性窒素化合物として炭酸ヒドラジンを単独または他の還元性窒素化合物と混合して注入する方法がある。また、炭酸亜鉛あるいは炭酸鉄を還元性窒素化合物に加えて注入することにより炉水中の放射性物質濃度を低減する効果も合わせて付加することができる。
(第1の実施例)
第1の実施例として、水素と還元性窒素化合物を冷却水中に注入する方法を図1を用いて説明する。水素を注入する場合は原子炉圧力容器底部冷却水中の水素濃度が増加し、一定量を超えると主蒸気配管の線量率が増加する可能性があるため、還元性窒素化合物と共に水素注入量を制御し、最適化する必要がある。一般に等モルあたりの価格は水素の方が安価であるので水素の使用量を多くし還元性窒素化合物の使用量を少なくすることが望ましい。
上記を踏まえると、図11に示す操作フローにしたがい水素および還元性窒素化合物を注入することが望ましい。図11に示した操作フローにしたがい水素注入および還元性窒素化合物の注入を行った場合に想定される主蒸気配管線量率,炉水導電率および炉水酸素濃度の変化の一例を図12に示す。図12に示す操作例にしたがい実施例を説明する。
最初に、プラントの運転開始とともに水素注入装置31より給水系配管6に水素を注入する。最初のステップ(図12中(1))では、水素注入量を主蒸気配管の線量率上昇のない給水濃度0.4ppm以下に設定し主蒸気配管線量率測定器29の指示値が目標の線量率以下であることを確認する。ステップ(2)では、さらに水素注入量を増加させ再び主蒸気配管線量計の指示値を確認する。図12中(2)では主蒸気配管の線量率が目標の線量率を超えたため、次のステップ(3)において水素注入量をステップ(1)と(2)の間に設定し、主蒸気配管線量率を目標線量率に可能な限り近づける。次のステップ(4)において、還元性窒素化合物溶液タンク33から、注入ポンプ34も用いて還元性窒素化合物を注入する。図1では還元性窒素化合物の注入箇所を原子炉浄化系配管とした場合に例を示した。還元性窒素化合物の注入点は、原子炉冷却水浄化系の外に給水系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれる1箇所以上の箇所において実施してもよい。ステップ(4)から(6)に示すように、炉水中の酸素濃度を目標濃度以下になるまで還元性窒素化合物の注入量を増加させる。この場合、炉水酸素濃度の変わりに、ボトムドレンライン等に設けた腐食電位計30において測定された炉内材料のECPでもよい。図12に示した例では、ステップ(5)において炉水の酸素濃度は目標値以下となったが、炉水導電率が目標値(0.9μS/cm) を超えた。この場合、導電率はpH(目標値;8.5) でもよい。このため、ステップ(6)において還元性窒素化合物の注入量をわずかに低下させ、炉水酸素濃度を目標濃度および導電率を目標値以下に調整した。この段階で、水素および還元性窒素化合物の注入量の設定が完了したこととなる。さらに、運転の経過とともに、炉水の導電率あるいは酸素濃度が設定値からシフトし、目標値を逸脱するケースが想定される。図12のステップ(7)では、水素および還元性窒素化合物の注入量を一定に制御しているにもかかわらず炉水の導電率が目標値より上昇したケースをしました。その場合は、ステップ(8)に示すように還元性窒素化合物の注入量の微調整を行い、導電率を目標の範囲に調整する。
上記の、操作を繰り返すことにより、炉内の酸素濃度をSCC抑制できる濃度に維持できる。
(第2の実施例)
第2の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸ガスを注入する運転方法について図13を用いて説明する。実施例1に示したように、最初に主蒸気配管線量率を指標に水素注入装置31から水素を注入し、その後炉水酸素濃度を指標に還元性窒素化合物を注入する。この場合、目的の酸素濃度を達成するためには、炉水の水質管理値を逸脱する可能性が想定される場合には、炭酸ガスボンベ35から炭酸ガスを原子炉に供給する。炉内で生成した炭酸ガスの注入によりアンモニアにより上昇したpHが炭酸イオンにより中和され低下する。pHの低下に伴い導電率も低下し、水質管理上還元性窒素化合物の追加注入が可能となり、運転上の裕度が得られる。なお、図13では炭酸ガスの注入点を給水系配管6としているが、原子炉冷却水浄化系の外に給水系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれる1箇所以上の箇所において実施してもよい。
(第3の実施例)
第3の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸亜鉛あるいは炭酸鉄を注入する運転方法を図14に示す。水素および還元性窒素化合物の注入手順は実施例1に示した手順で行い、次に炭酸塩溶解槽37に純水を満たしその中に炭酸塩を所定量投入する。炭酸塩は、炭酸塩溶解槽37に設けた攪拌機38あるいは炭酸ガスボンベ35から炭酸ガスを供給しながら溶解する。溶解した炭酸塩は炭酸塩注入ポンプ39で原子炉浄化系配管に注入する。炭酸塩の注入箇所は、原子炉冷却水浄化系の外に給水系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれる1箇所以上の箇所において実施してもよい。炭酸鉄の注入により、炭酸ガスの注入効果と同様還元性窒素化合物の副生成物でありアンモニアの中和効果および配管への放射性物質の付着抑制効果により、プラントの配管および機器の線量率低減効果が得られる。
また、炭酸鉄を注入した場合も、炭酸ガスの注入効果と同様還元性窒素化合物の副生成物でありアンモニアの中和効果および燃料表面へのコバルトおよびニッケル等の固定効果が得られ、その結果炉水中の放射性物質の濃度低下ひいてはプラントの配管および機器の線量率低減効果が得られる。
(第4の実施例)
第4の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸ヒドラジンを混合して注入する方法を示す。炭酸ヒドラジン単独あるいは還元性窒素化合物と混合して注入することにより炭酸ガスの注入効果と同様還元性窒素化合物の副生成物でありアンモニアの中和効果が得られる。炭酸ヒドラジンは、図1に示した還元性窒素化合物溶液タンク33に還元性窒素化合物と混合して注入してもよい。
(第5の実施例)
第5の実施例として、原子炉浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂の交換時期の判断方法を図15に示す。還元性窒素化合物の副生成物として生じるアンモニアが吸着した状態で、原子炉水の浄化を行うとろ過脱塩器出口水の導電率によるイオン交換時期の判断が困難である。このため、水質モニタ24に接続されるろ過脱塩器出口水サンプリングラインにカチオン樹脂を充填した樹脂カラム40およびその下流に導電率計41を設ける。サンプル水中に含まれるアンモニアは、樹脂カラム内のカチオン樹脂により除去され、樹脂カラム出口水中には炉水中の陰イオン成分のみが残る。この処理水の導電率を測定することにより、アニオン樹脂の劣化を検出することが可能となる。アニオン樹脂の劣化がない場合の樹脂カラム出口導電率は純水の導電率に相当する0.055μS/cm であるため、明らかに樹脂劣化が判断できる指標として0.1μS/cm 以上となった場合にイオン交換樹脂の交換を行うことが望ましい。
また、ろ過脱塩装置カチオン樹脂の劣化の判断は、原子炉冷却水ろ過脱塩器12の入口側の原子炉冷却水浄化系配管10および原子炉冷却水ろ過脱塩器12の出口側の原子炉冷却水浄化系配管10から定期的にサンプル水を採取し、その中のCo−60,Co−58あるいはMn−54等のカチオン成分放射性物質濃度を測定する。出口水中の放射性物質濃度が入口水中の放射性物質濃度の10%以上に上昇した場合にイオン交換樹脂の交換を行うことが望ましい。
酸導電率およびカチオン成分放射性物質濃度の測定により、アンモニアが吸着したろ過脱塩器イオン交換樹脂の性能監視および樹脂交換時期を判断することができる。
(第6の実施例)
第6の実施例として、復水器内冷却管からの海水リーク検出方法を図16に示す。ヒータドレン系配管28に水質モニタ42を取付ける配管を設け、導電率計(図示せず)をその配管に設置し、連続測定する。一方、復水器13出口におけるサンプリング系(復水器出口モニタ接続)に設けた導電率計(図示せず)で導電率を連続測定する。両者の導電率の比較より、復水器出口サンプリング点の導電率がヒータドレン系導電率より上昇した場合に海水リークと判断する。復水器出口およびヒータドレン系の導電率の連続監視は、導電率計の指示値を電気信号として制御装置に取込み、両者の導電率の差が設定値以上に達した場合に警報を発信するシステムとすることにより、海水リークに対する早期発見および迅速な対応が可能となる。
本発明を適用した場合の沸騰水型原子力プラントの模式図。 288℃高温水中での304型ステンレス鋼の腐食電位とき裂進展速度の関係を表す図。 280℃高温水中に過酸化水素を添加した場合の304型ステンレス鋼の腐食電位と過酸化水素添加濃度依存性を表す図。 沸騰水型原子力プラントに水素注入を行った場合の給水水素濃度と原子炉圧力容器底部冷却水中の実効酸素濃度,水素濃度,主蒸気配管線量率相対値の関係を表す図。 酸素が溶存する280℃高温水中にヒドラジンを添加した場合の304型ステンレス鋼の腐食電位のヒドラジン添加濃度依存性を表す図。 酸素が溶存する280℃高温水中にヒドラジンを添加し、γ線を照射した場合の酸素濃度,副生成物濃度のヒドラジン添加濃度依存性を表す図。 給水の水素注入濃度0.4ppmとし、給水ヒドラジンの注入濃度を変化させた場合の原子炉炉底部におけるステンレス鋼の腐食電位の解析結果を表す図。 給水の水素注入濃度0.4ppmとし、給水ヒドラジンの注入濃度を変化させた場合の炉水および主蒸気中のアンモニア濃度の解析結果を表す図。 BWR発電プラントの系統構成を表す図。 アンモニア濃度と導電率およびpHの関係を表した図。 本発明の第1の実施例において水素注入量および還元性窒素化合物注入量の制御判断フローを表した図。 本発明の第1の実施例において水素注入量および還元性窒素化合物注入量の制御方法の一例を表した図。 本発明の第2の実施例において水素注入および還元性窒素化合物注入に加え炭酸ガスを注入する方法を表した図。 本発明の第3の実施例において水素注入および還元性窒素化合物注入に加え炭酸塩を注入する方法を表した図。 本発明の第5の実施例において原子炉浄化系ろ過脱塩器イオン交換樹脂の交換時期を判断する方法を表した図。 本発明の第6の実施例において復水器冷却管の海水リーク方法を表した図。
符号の説明
1…原子炉圧力容器、2…タービン、3…復水ろ過脱塩器、4…給水ポンプ、5…給水加熱器、6…給水系配管、7…再循環ポンプ、8…ボトムドレン配管、9…原子炉冷却水浄化系ポンプ、10…原子炉冷却水浄化系配管、11…原子炉冷却水浄化系熱交換器、
12…原子炉冷却水ろ過脱塩器、13…復水器、14…主蒸気配管、15…ジェットポンプ、16…原子炉冷却水再循環系配管、21〜25…水質モニタ、29…主蒸気配管線量率測定器、31…水素発生装置、32…水素ガス注入量調整バルブ、33…還元性窒素化合物溶液タンク、34…注入ポンプ、35…炭酸ガスボンベ、36…炭酸ガス流量制御バルブ、37…炭酸塩溶解槽、38…攪拌機、39…炭酸塩注入ポンプ、40…樹脂カラム、41…導電率計、42…ヒータドレン系モニタ、43…復水器出口モニタ。

Claims (6)

  1. 水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、給水系,原子炉冷却水浄化系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれた1箇所以上の異なる系統配管から冷却水中に酸化数が負の状態の窒素を含む還元性窒素化合物を注入する原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法において、
    主蒸気配管目標線量率上限以下の範囲まで水素を注入し、その後原子炉冷却材中の酸素濃度およびプラント構成材料の腐食電位を指標に還元性窒素化合物を注入し
    プラント運転中のヒータドレン系系統水の導電率と復水器下流の系統水の導電率を常時監視し、比較することにより、復水器冷却管からの海水漏洩の有無を監視することを特徴とする原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
  2. 前記還元性窒素化合物が、ヒドラジン,炭酸ヒドラジン、及びヒドラジンと炭酸ヒドラジンの混合物のいずれか1つである請求項1記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
  3. 水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、給水系,原子炉冷却水浄化系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれた1箇所以上の異なる系統配管から冷却水中に酸化数が負の状態の窒素を含む還元性窒素化合物を注入する原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法において、
    主蒸気配管目標線量率上限以下の範囲まで水素を注入し、その後原子炉冷却材中の酸素濃度およびプラント構成材料の腐食電位を指標に還元性窒素化合物と炭酸ガスあるいは金属端酸塩を注入し、
    プラント運転中のヒータドレン系系統水の導電率と復水器下流の系統水の導電率を常時監視し、比較することにより、復水器冷却管からの海水漏洩の有無を監視することを特徴とする原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
  4. 前記還元性窒素化合物と注入する金属炭酸塩は、炭酸亜鉛または炭酸鉄である請求項3記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入方法。
  5. 前記還元性窒素化合物の注入は、原子炉冷却水導電率が0.9μS/cm以下および原子炉冷却水pH8.5以下の範囲内で行う請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
  6. 原子炉浄化系ろ過脱塩器出口水のカチオン樹脂充填カラム通過後の導電率,ろ過脱塩装置の入口水および出口水中の放射能濃度を測定することにより得られる放射性物質の除去率のいずれか又は両方の結果より原子炉冷却材浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂の交換時期を判定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
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