JP4340574B2 - 原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法 - Google Patents
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Description
340SSと示す)のECPとの関係を測定した結果を見ると、図3に示すように、酸素においても、過酸化水素においても、濃度の減少に伴いECPが低下する。したがって、原子炉の冷却水に接触する金属材料のSCCを緩和するためには、ECPを低減すること、つまり、原子炉水中に存在する酸素および過酸化水素の濃度を低減することが有効である。
16による副作用を生じない水素濃度範囲で腐食電位を低減することが望まれている。この課題に対して、材料表面に白金族元素を付着させて水素と酸素の反応を加速させる技術が特許文献1に示されている。この技術により、主蒸気配管の線量率の上昇を抑制しつつECPを低減することができる。また、水素注入および白金族元素の付着処理を行うと原子炉冷却水の放射性物質濃度が上昇しプラントの線量率が上昇することが知られている。この対策として、原子炉水中に亜鉛を注入する方法が特許文献2および特許文献3に記載されている。また、原子炉水中に鉄を注入し炉水中の放射性物質濃度を低減する方法が特許文献4に記載されている。このため、炉内構造材のSCC抑制のための水素注入とともにプラントの線量率低減技術の組合せが適用されている。
Co−60線源を使ってガンマ線を照射したときに酸素濃度および副生成物がヒドラジンに対してどのように変化するかを実験した。その結果を図6に示す。(数式1)の反応の化学量論量に対して、酸素濃度がヒドラジン濃度より過剰に存在するときは酸素濃度が低減し、アンモニアや水素が発生しない。一方、ヒドラジン濃度が酸素濃度より過剰に存在すると、酸素およびガンマ線の照射により生成する過酸化水素は(化1)および(化2)に示す反応により消費されるがアンモニアや水素も生じるアンモニアの生成反応は(化3)よるものと推定される。以上の結果より、原子炉内構造材の腐食電位を低減するために還元性窒素化合物を過剰に注入すると、アンモニアの生成および濃度の増加に伴い、原子炉水(以下、炉水と示す)中の導電率およびpHが上昇する。
N2H4+2H2O→N2+4H2O …(化2)
3N2H4→2N2+2NH3+3H2 …(化3)
図7は、水素注入を給水濃度0.4ppm実施したときに、ヒドラジンを合わせて注入した時の原子炉底部の腐食電位を解析した結果である。ヒドラジンが無い時には、炉底部のステンレス鋼の腐食電位は0.1V vs HE を超えており、SCCにとって、未だ厳しい条件となっている。しかし、給水にヒドラジンを0.8ppm 程度添加すると、腐食電位は
−0.1V vs SHE まで低下し、さらに注入量を増やすと−0.4vsSHE以下に低下する。したがって、水素注入とヒドラジン等の還元性窒素化合物を組合せて注入することにより原子炉をSCCからまもることが期待できる。
ppbとなり、主蒸気中のアンモニア濃度は約2ppbと評価される。さらに、ヒドラジンの注入量を増加させた場合には炉水中および主蒸気中のアンモニア濃度も増加する。沸騰水原子力発電プラントの場合、原子炉内で冷却水が直接沸騰し、蒸気をタービン系におくる直接サイクルであることから、冷却水中に薬剤を添加しない軽水を用い、軽水中の不純物濃度を導電率およびpHの管理値を設け運転している。このため、還元性窒素化合物の注入により微量生成するアンモニアが生成すると、炉水の導電率およびpHがアンモニア濃度に比例して増加する。したがって、アンモニア濃度が過大となると水質管理値を逸脱する可能性があるため、還元性窒素化合物の注入量をコントロールする必要がある。
28を経由して復水器13に回収される。これとは別に原子炉圧力容器1下部と、再循環ポンプ7,ジェットポンプ15入口を原子炉冷却水再循環系配管16に接続する。原子炉冷却水再循環ポンプ7により炉心に流れる冷却水流量を増加させて熱出力を増加させる仕組みになっている。ABWRでは原子炉冷却水再循環系配管16はなく、再循環ポンプ7は原子炉圧力容器1内に設置されたインターナルポンプの構造となっている。ここでは、原子炉冷却水再循環系配管16を有する原子炉を用いて説明する。
22で溶存酸素濃度を測定することにより確認している。また、腐食環境の指標である腐食電位を測定する場合は、腐食電位測定器30にボトムドレン水を通水し測定する。
10に示すアンモニア濃度と導電率およびpHの関係から、約60ppb となる。この最大アンモニア濃度は、図8に示した、実プラントにおけるヒドラジン注入濃度と炉水中アンモニア濃度の解析結果より、給水ヒドラジン注入濃度は約1.5ppmとなる。さらに、図7に示した給水ヒドラジン注入濃度と炉底部腐食電位の解析結果より、給水ヒドラジン注入濃度1.5ppm 注入時の炉底部腐食電位は、−0.4V vs SHEであり、十分なSCC発生抑制環境を達成できる。なお、SCC発生抑制のための炉底部腐食電位の目標電位を
−0.1V vs SHEと設定すると図7より給水ヒドラジン濃度は0.8ppm となり、その際の炉水アンモニア濃度は図8より20ppbとなる。
H2CO3→HCO3 -+H+ …(化5)
HCO3 -→CO3 2-+H+ …(化6)
炭酸イオンの供給方法としては炭酸ガスとして注入する方法および還元性窒素化合物として炭酸ヒドラジンを単独または他の還元性窒素化合物と混合して注入する方法がある。また、炭酸亜鉛あるいは炭酸鉄を還元性窒素化合物に加えて注入することにより炉水中の放射性物質濃度を低減する効果も合わせて付加することができる。
第1の実施例として、水素と還元性窒素化合物を冷却水中に注入する方法を図1を用いて説明する。水素を注入する場合は原子炉圧力容器底部冷却水中の水素濃度が増加し、一定量を超えると主蒸気配管の線量率が増加する可能性があるため、還元性窒素化合物と共に水素注入量を制御し、最適化する必要がある。一般に等モルあたりの価格は水素の方が安価であるので水素の使用量を多くし還元性窒素化合物の使用量を少なくすることが望ましい。
第2の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸ガスを注入する運転方法について図13を用いて説明する。実施例1に示したように、最初に主蒸気配管線量率を指標に水素注入装置31から水素を注入し、その後炉水酸素濃度を指標に還元性窒素化合物を注入する。この場合、目的の酸素濃度を達成するためには、炉水の水質管理値を逸脱する可能性が想定される場合には、炭酸ガスボンベ35から炭酸ガスを原子炉に供給する。炉内で生成した炭酸ガスの注入によりアンモニアにより上昇したpHが炭酸イオンにより中和され低下する。pHの低下に伴い導電率も低下し、水質管理上還元性窒素化合物の追加注入が可能となり、運転上の裕度が得られる。なお、図13では炭酸ガスの注入点を給水系配管6としているが、原子炉冷却水浄化系の外に給水系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれる1箇所以上の箇所において実施してもよい。
第3の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸亜鉛あるいは炭酸鉄を注入する運転方法を図14に示す。水素および還元性窒素化合物の注入手順は実施例1に示した手順で行い、次に炭酸塩溶解槽37に純水を満たしその中に炭酸塩を所定量投入する。炭酸塩は、炭酸塩溶解槽37に設けた攪拌機38あるいは炭酸ガスボンベ35から炭酸ガスを供給しながら溶解する。溶解した炭酸塩は炭酸塩注入ポンプ39で原子炉浄化系配管に注入する。炭酸塩の注入箇所は、原子炉冷却水浄化系の外に給水系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれる1箇所以上の箇所において実施してもよい。炭酸鉄の注入により、炭酸ガスの注入効果と同様還元性窒素化合物の副生成物でありアンモニアの中和効果および配管への放射性物質の付着抑制効果により、プラントの配管および機器の線量率低減効果が得られる。
第4の実施例として、水素,還元性窒素化合物および炭酸ヒドラジンを混合して注入する方法を示す。炭酸ヒドラジン単独あるいは還元性窒素化合物と混合して注入することにより炭酸ガスの注入効果と同様還元性窒素化合物の副生成物でありアンモニアの中和効果が得られる。炭酸ヒドラジンは、図1に示した還元性窒素化合物溶液タンク33に還元性窒素化合物と混合して注入してもよい。
第5の実施例として、原子炉浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂の交換時期の判断方法を図15に示す。還元性窒素化合物の副生成物として生じるアンモニアが吸着した状態で、原子炉水の浄化を行うとろ過脱塩器出口水の導電率によるイオン交換時期の判断が困難である。このため、水質モニタ24に接続されるろ過脱塩器出口水サンプリングラインにカチオン樹脂を充填した樹脂カラム40およびその下流に導電率計41を設ける。サンプル水中に含まれるアンモニアは、樹脂カラム内のカチオン樹脂により除去され、樹脂カラム出口水中には炉水中の陰イオン成分のみが残る。この処理水の導電率を測定することにより、アニオン樹脂の劣化を検出することが可能となる。アニオン樹脂の劣化がない場合の樹脂カラム出口導電率は純水の導電率に相当する0.055μS/cm であるため、明らかに樹脂劣化が判断できる指標として0.1μS/cm 以上となった場合にイオン交換樹脂の交換を行うことが望ましい。
第6の実施例として、復水器内冷却管からの海水リーク検出方法を図16に示す。ヒータドレン系配管28に水質モニタ42を取付ける配管を設け、導電率計(図示せず)をその配管に設置し、連続測定する。一方、復水器13出口におけるサンプリング系(復水器出口モニタ接続)に設けた導電率計(図示せず)で導電率を連続測定する。両者の導電率の比較より、復水器出口サンプリング点の導電率がヒータドレン系導電率より上昇した場合に海水リークと判断する。復水器出口およびヒータドレン系の導電率の連続監視は、導電率計の指示値を電気信号として制御装置に取込み、両者の導電率の差が設定値以上に達した場合に警報を発信するシステムとすることにより、海水リークに対する早期発見および迅速な対応が可能となる。
12…原子炉冷却水ろ過脱塩器、13…復水器、14…主蒸気配管、15…ジェットポンプ、16…原子炉冷却水再循環系配管、21〜25…水質モニタ、29…主蒸気配管線量率測定器、31…水素発生装置、32…水素ガス注入量調整バルブ、33…還元性窒素化合物溶液タンク、34…注入ポンプ、35…炭酸ガスボンベ、36…炭酸ガス流量制御バルブ、37…炭酸塩溶解槽、38…攪拌機、39…炭酸塩注入ポンプ、40…樹脂カラム、41…導電率計、42…ヒータドレン系モニタ、43…復水器出口モニタ。
Claims (6)
- 水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、給水系,原子炉冷却水浄化系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれた1箇所以上の異なる系統配管から冷却水中に酸化数が負の状態の窒素を含む還元性窒素化合物を注入する原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法において、
主蒸気配管目標線量率上限以下の範囲まで水素を注入し、その後原子炉冷却材中の酸素濃度およびプラント構成材料の腐食電位を指標に還元性窒素化合物を注入し、
プラント運転中のヒータドレン系系統水の導電率と復水器下流の系統水の導電率を常時監視し、比較することにより、復水器冷却管からの海水漏洩の有無を監視することを特徴とする原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。 - 前記還元性窒素化合物が、ヒドラジン,炭酸ヒドラジン、及びヒドラジンと炭酸ヒドラジンの混合物のいずれか1つである請求項1記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
- 水素を原子炉水に注入する沸騰水型原子力プラントにおいて、水素注入時に、給水系,原子炉冷却水浄化系,原子炉冷却水再循環系,非常用炉心冷却系,制御棒駆動水系の中から選ばれた1箇所以上の異なる系統配管から冷却水中に酸化数が負の状態の窒素を含む還元性窒素化合物を注入する原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法において、
主蒸気配管目標線量率上限以下の範囲まで水素を注入し、その後原子炉冷却材中の酸素濃度およびプラント構成材料の腐食電位を指標に還元性窒素化合物と炭酸ガスあるいは金属端酸塩を注入し、
プラント運転中のヒータドレン系系統水の導電率と復水器下流の系統水の導電率を常時監視し、比較することにより、復水器冷却管からの海水漏洩の有無を監視することを特徴とする原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。 - 前記還元性窒素化合物と注入する金属炭酸塩は、炭酸亜鉛または炭酸鉄である請求項3に記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入方法。
- 前記還元性窒素化合物の注入は、原子炉冷却水導電率が0.9μS/cm以下および原子炉冷却水pH8.5以下の範囲内で行う請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
- 原子炉浄化系ろ過脱塩器出口水のカチオン樹脂充填カラム通過後の導電率,ろ過脱塩装置の入口水および出口水中の放射能濃度を測定することにより得られる放射性物質の除去率のいずれか又は両方の結果より原子炉冷却材浄化系ろ過脱塩装置イオン交換樹脂の交換時期を判定する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の原子力プラントの還元性窒素化合物注入運転方法。
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