以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態1)
本実施の形態は、主として電荷蓄積部にトラップ性絶縁膜(電荷を蓄積可能な絶縁膜)を用いたものであるため、以下では、nチャネル型MISFET(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を基本としトラップ性絶縁膜を用いたメモリセルをもとに説明を行う。また、以下の実施の形態での極性(書込・消去・読出時の印加電圧の極性やキャリアの極性)は、nチャネル型MISFETを基本としたメモリセルの場合の動作を説明するためのものであり、pチャネル型MISFETを基本とする場合は、印加電位、キャリアおよび不純物の導電型等の全ての極性を反転させることで、原理的には同じ動作を得ることができる。
本実施の形態の半導体装置およびその製造方法を図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の半導体装置の要部断面図である。本実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、フラッシュメモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)であり、図1には、不揮発性メモリのメモリセル領域の要部断面図が示されている。図2は、本実施の形態の半導体装置におけるメモリセルMCの模式的な断面構造を示す要部断面図であり、図3は、メモリセルMCの等価回路図である。簡略化のために、図2では、図1の構造のうち、p型ウエル3、絶縁膜17,21、選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGおよび半導体領域MS,MDだけを図示し、側壁絶縁膜34、金属シリサイド層39および絶縁膜41の図示を省略したものである。また、理解を簡単にするために、図2には、各部位に印加する電圧Vd,Vsg,Vmg,Vs,Vbを模式的に図示してある。
図1および図2に示されるように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1には、素子を分離するための素子分離領域(図示せず)が形成されており、この素子分離領域で分離された活性領域に、p型ウエル3が形成されている。メモリセル領域のp型ウエル3には、図1および図2に示されるようなメモリトランジスタおよび選択トランジスタ(制御トランジスタ)からなる不揮発性メモリのメモリセルMCが形成されている。各メモリセル領域には複数のメモリセルMCがアレイ状に形成されており、各メモリセル領域は、素子分離領域によって他の領域から電気的に分離されている。
図1〜図3に示されるように、本実施の形態の半導体装置における不揮発性メモリのメモリセルMCは、MONOS膜を用いたスプリットゲート型のメモリセルであり、選択ゲート電極(制御ゲート電極、選択ゲート、選択トランジスタのゲート電極)SGからなる選択トランジスタとメモリゲート電極(メモリゲート、メモリトランジスタのゲート電極)MGからなるメモリトランジスタとの2つのMISFETを接続したものである。
ここで、メモリゲート電極MGよりなるMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)をメモリトランジスタ(記憶用トランジスタ)と、また、選択ゲート電極SGよりなるMISFETを選択トランジスタ(メモリセル選択用トランジスタ、制御トランジスタ)という。従って、選択ゲート電極SGおよびメモリゲート電極MGは、不揮発性メモリ(のメモリセル)を構成するゲート電極である。
図1および図2に示されるように、本実施の形態の半導体装置における不揮発性メモリのメモリセルMCは、半導体基板1のp型ウエル3中に形成されたソースおよびドレイン用のn型の半導体領域MS,MDと、半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10a,10b)の上部に形成された選択ゲート電極(第1ゲート電極)SGおよびメモリゲート電極(第2ゲート電極)MGと、選択ゲート電極SGおよび半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10a)間に形成された絶縁膜(ゲート絶縁膜、第1の層)17と、メモリゲート電極MGおよび半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10b)間とメモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極SG間とに形成された絶縁膜21とを有している。
不揮発性メモリを構成する選択ゲート電極SGおよびメモリゲート電極MGは、それらの対向側面の間に絶縁膜21を介した状態で、半導体基板1の主面に沿って延在し、並んで配置されている。メモリセルMCの選択ゲート電極SGおよびメモリゲート電極MGは、半導体領域MDおよび半導体領域MS間上の半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10a,10b)の上部に絶縁膜17,21を介して形成されており、半導体領域MS側にメモリゲート電極MGが位置し、半導体領域MD側に選択ゲート電極SGが位置している。選択ゲート電極SGとメモリゲート電極MGは、間に絶縁膜21を介在して互いに隣り合っており、メモリゲート電極MGは、選択ゲート電極SGの側壁上に絶縁膜21を介してサイドウォールスペーサ状に形成されている。また、絶縁膜21は、メモリゲート電極MGと半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10b)の間の領域と、メモリゲート電極MGと選択ゲート電極SGの間の領域の、両領域に渡って延在している。
メモリゲート電極MGと半導体基板1(p型ウエル3)の間の絶縁膜21(すなわちメモリゲート電極MGの下の絶縁膜21)が、メモリトランジスタのゲート絶縁膜(内部に電荷蓄積部を有するゲート絶縁膜)として機能する。
絶縁膜21は、電荷を蓄積するための窒化シリコン膜21b(すなわち電荷蓄積部)と、その上下に位置する酸化シリコン膜21a,21cの積層膜からなる絶縁膜(ONO膜)である。すなわち、メモリゲート電極MGから遠い側から順に、酸化シリコン膜21a、窒化シリコン膜21bおよび酸化シリコン膜21cが積層されたONO(oxide-nitride-oxide)膜により、絶縁膜21が構成されている。窒化シリコン膜21bは、絶縁膜21中に形成されたトラップ性絶縁膜であり、電荷を蓄積するための電荷蓄積膜(電荷蓄積部)として機能するので、絶縁膜21は、その内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜とみなすことができる。従って、絶縁膜21は、メモリゲート電極MGと半導体基板1(半導体領域10b)との間に形成され、内部に電荷蓄積部を有する層(第2の層)である。
このように、メモリトランジスタのゲート絶縁膜として、ONO(Oxide Nitride Oxide)積層膜である絶縁膜21が用いられており、いわゆるMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)構造が形成され、この絶縁膜21中(の窒化シリコン膜21b)に電荷を保持することができる。
選択ゲート電極SGと半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10a)の間に形成された絶縁膜17(すなわち選択ゲート電極SGの下の絶縁膜17)が、選択トランジスタ(選択ゲート電極SG)のゲート絶縁膜として機能する。すなわち、絶縁膜17は、選択ゲート電極SGと半導体基板1(半導体領域10a)との間に形成され、選択ゲート電極SG(選択トランジスタ)のゲート絶縁膜として機能する層(第1の層)である。
選択ゲート電極SG(選択トランジスタ)のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜17は、半導体基板1(p型ウエル3内の半導体領域10a)上に形成された酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜(絶縁層、第1絶縁膜)17aと、選択ゲート電極SGと絶縁膜17aとの間(界面)に形成された金属元素含有層(しきい電圧調整層)17bとを有している。すなわち、絶縁膜17は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜17aと、絶縁膜17a上に形成された金属元素含有層17bとの積層膜(積層構造)からなる。金属元素含有層17b中には金属元素が含まれているので、金属元素含有層17bを有する絶縁膜17は、金属元素を含有している層とみなすことができる。
金属元素含有層17bは、金属元素を含有しており、金属元素含有層17bを構成する金属元素はハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)またはアルミニウム(Al)であることが好ましい。また、金属元素含有層17bは、金属酸化物または金属シリケート(金属酸化物と酸化シリコンの化合物)からなることが好ましいが、それら(金属酸化物または金属シリケート)に更に窒素が導入されたものにより金属元素含有層17bが構成されていても良い。
半導体領域MSは、ソース領域またはドレイン領域の一方として機能する半導体領域であり、半導体領域MDは、ソース領域またはドレイン領域の他方として機能する半導体領域である。ここでは、半導体領域MSはソース領域として機能する半導体領域、半導体領域MDはドレイン領域として機能する半導体領域である。半導体領域MS,MDは、n型の不純物が導入された半導体領域(n型不純物拡散層)よりなり、それぞれLDD(lightly doped drain)構造を備えている。すなわち、ソース用の半導体領域MSは、n−型半導体領域31と、n−型半導体領域31よりも高い不純物濃度を有するn+型半導体領域35とを有し、ドレイン用の半導体領域MDは、n−型半導体領域32と、n−型半導体領域32よりも高い不純物濃度を有するn+型半導体領域36とを有している。
メモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極SGの側壁(互いに隣接していない側の側壁)上には、酸化シリコンなどの絶縁体(酸化シリコン膜、絶縁膜)からなる側壁絶縁膜(サイドウォール、サイドウォールスペーサ)34が形成されている。
ソース部のn−型半導体領域31はメモリゲート電極MGの側壁に対して自己整合的に形成され、n+型半導体領域35はメモリゲート電極MGの側壁上の側壁絶縁膜34の側面(メモリゲート電極MGに接する側とは逆側の側面)に対して自己整合的に形成されている。このため、低濃度のn−型半導体領域31はメモリトランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn+型半導体領域35は低濃度のn−型半導体領域31に接し、メモリトランジスタのチャネル領域からn−型半導体領域31の分だけ離間するように形成されている。
ドレイン部のn−型半導体領域32は選択ゲート電極SGの側壁に対して自己整合的に形成され、n+型半導体領域36は選択ゲート電極SGの側壁上の側壁絶縁膜34の側面(選択ゲート電極SGと接する側とは逆側の側面)に対して自己整合的に形成されている。このため、低濃度のn−型半導体領域32は選択トランジスタのチャネル領域に隣接するように形成され、高濃度のn+型半導体領域36は低濃度のn−型半導体領域32に接し、選択トランジスタのチャネル領域からn−型半導体領域32の分だけ離間するように形成されている。
メモリゲート電極MG下の絶縁膜21の下にメモリトランジスタのチャネル領域が形成され、選択ゲート電極SG下の絶縁膜17の下に選択トランジスタのチャネル領域が形成される。選択ゲート電極SG下の絶縁膜17の下の選択トランジスタのチャネル形成領域には、選択トランジスタのしきい値調整用の半導体領域(p型半導体領域)10aが形成されている。メモリゲート電極MG下の絶縁膜21の下のメモリトランジスタのチャネル形成領域には、メモリトランジスタのしきい値調整用の半導体領域(p型半導体領域またはn型半導体領域)10bが形成されている。
すなわち、ソースまたはドレインの一方(ここではソース)として機能する半導体領域MSと、ソースまたはドレインの他方(ここではドレイン)として機能する半導体領域MDとの間に位置するチャネル部(チャネル領域)は、選択ゲート電極SGにより制御され得る選択ゲート電極SGの下の半導体領域(領域、第1チャネル領域)10aと、メモリゲート電極MGにより制御され得るメモリゲート電極MGの下の半導体領域(領域、第2チャネル領域)10bとからなる。厳密には、この2つのゲート電極(メモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極SG)に挟まれた領域(に対応する領域)が(チャネル部に)できるが、この領域は、ONO膜(絶縁膜21)の膜厚程度の極めて狭いものとすることができる。
半導体領域10aは、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の積層構造の下に位置して絶縁膜17に接するように形成されている。選択トランジスタのチャネル領域は、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の積層構造の下に位置する半導体領域10aに形成されるので、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の積層構造の下に位置する半導体領域10aを、選択トランジスタのチャネル領域(第1チャネル領域)とみなすこともできる。半導体領域10aは、イオン注入法などによりp型ウエル3にp型不純物をドーピング(導入)することにより形成されており、p型不純物が導入(ドープ、拡散)されている。このため、半導体領域10aは、p型の半導体領域である。
半導体領域10bは、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の積層構造の下に位置して絶縁膜21に接するように形成されている。メモリトランジスタのチャネル領域は、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の積層構造の下に位置する半導体領域10bに形成されるので、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の積層構造の下に位置する半導体領域10bを、メモリトランジスタのチャネル領域(第2チャネル領域)とみなすこともできる。半導体領域10bは、イオン注入法などにより半導体領域10aにn型不純物をドーピング(導入)することにより形成されており、半導体領域10aに導入されているのと同じp型不純物に加えて、更にn型不純物が導入(ドープ、拡散)されている。半導体領域10bは、p型またはn型の半導体領域である。
図1および図2では、半導体領域10aの一部が半導体領域10bの下にも延在しているが、他の形態として、半導体領域10bの下に半導体領域10aが延在せずに、半導体領域10bの下部がp型ウエル3に直接的に接するように半導体領域10a,10bが形成されていてもよい。本実施の形態では、少なくとも、選択ゲート電極SGの下の絶縁膜17の下に絶縁膜17に接する位置に半導体領域10aが形成され、メモリゲート電極MGの下の絶縁膜21の下に絶縁膜21に接する位置に半導体領域10bが形成さていればよい。
選択トランジスタのチャネル領域を形成する半導体領域10aにおける不純物の電荷密度は、選択トランジスタのしきい電圧が所望の値となるように調整され、メモリトランジスタのチャネル領域を形成する半導体領域10bにおける不純物の電荷密度は、メモリトランジスタのしきい電圧が所望の値となるように調整されている。本実施の形態では、詳細は後述するが、メモリトランジスタのチャネル領域(第2チャネル領域)を形成する半導体領域10bにおける不純物の電荷密度は、選択トランジスタのチャネル領域(第1チャネル領域)を形成する半導体領域10aにおける不純物の電荷密度とは異なっており、好ましくは、メモリトランジスタのチャネル領域を形成する半導体領域10bにおける不純物の電荷密度は、選択トランジスタのチャネル領域を形成する半導体領域10aにおける不純物の電荷密度よりも低くなっている。
メモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極SGは、それぞれn型ポリシリコン(n型不純物を導入した多結晶シリコン、ドープトポリシリコン)のようなシリコン膜(導電体膜)からなる。選択ゲート電極SGは、半導体基板1上に形成した多結晶シリコン膜(n型不純物を導入またはドープした多結晶シリコン膜、後述する多結晶シリコン膜16に対応)をパターニングすることにより形成されている。メモリゲート電極MGは、半導体基板1上に選択ゲート電極SGを覆うように形成した多結晶シリコン膜(n型不純物を導入またはドープした多結晶シリコン膜、後述する多結晶シリコン膜22に対応)を異方性エッチングし、選択ゲート電極SGの側壁上に絶縁膜21を介してこの多結晶シリコン膜を残存させることにより形成されている。
選択ゲート電極SGおよびメモリゲート電極MGの上部(上面)とn+型半導体領域35,36の上面(表面)には、サリサイドプロセスなどにより、金属シリサイド膜(金属シリサイド層)39(例えばコバルトシリサイド膜)が形成されている。この金属シリサイド膜39により、拡散抵抗やコンタクト抵抗を低抵抗化することができる。
半導体基板1上には、選択ゲート電極SGおよびメモリゲート電極MGを覆うように、絶縁膜(層間絶縁膜)41が形成されている。絶縁膜41は、酸化シリコン膜の単体膜、あるいは窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜などからなる。後述するように、絶縁膜41にコンタクトホール42が形成され、コンタクトホール42にプラグ43が埋め込まれ、プラグ43が埋め込まれた絶縁膜41上に配線46などが形成されているが、図1および図2では図示を省略している。
図4は、本実施の形態の「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。図4の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、図2および図3に示されるようなメモリセル(選択メモリセル)のドレイン領域(半導体領域MD)に印加する電圧Vd、選択ゲート電極SGに印加する電圧Vsg、メモリゲート電極MGに印加する電圧Vmg、ソース領域(半導体領域MS)に印加する電圧Vs、およびp型ウエル3に印加されるベース電圧Vbが記載されている。なお、図4の表に示したものは電圧の印加条件の一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態では、メモリトランジスタの絶縁膜21中の電荷蓄積部である窒化シリコン膜21bへの電子の注入を「書込」、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。
書込み方式は、いわゆるソースサイド注入方式と呼ばれるホットエレクトロン書込みを用いることができる。例えば図4の「書込」の欄に示されるような電圧を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルの絶縁膜21中の窒化シリコン膜21b中に電子(エレクトロン)を注入する。ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MGおよび選択ゲート電極SG)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MGの下の絶縁膜21中の電荷蓄積部である窒化シリコン膜21bの選択トランジスタ側の領域に局所的にホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、絶縁膜21中の窒化シリコン膜21b中のトラップに捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい電圧(しきい値電圧)が上昇する。
消去方法は、BTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)ホットホール注入消去方式を用いることができる。すなわち、BTBT(バンド間トンネル現象)により発生したホール(正孔)を電荷蓄積部(絶縁膜21中の窒化シリコン膜21b)に注入することにより消去を行う。例えば図4の「消去」の欄に示されるような電圧を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、BTBT(Band-To-Band Tunneling)現象によりホール(正孔)を発生させ電界加速することで選択メモリセルの絶縁膜21中の窒化シリコン膜21b中にホールを注入し、それによってメモリトランジスタのしきい値電圧を低下させる。
読出し時には、例えば図4の「読出」の欄に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
図5〜図20は、本実施の形態の半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)の製造工程中の要部断面図である。
図5〜図20においては、メモリセル部(不揮発性メモリのメモリセルを形成すべき領域)A1とメモリ周辺回路部に半導体素子が形成される様子が示されている。また、特に、書込みなどで高い電圧が必要となるため、メモリ周辺回路部では高耐圧素子部A2と通常の素子部A3が形成される様子が示されている。なお、図5〜図11,図13〜図20は、メモリセル部A1、高耐圧素子部A2および通常の素子部A3の断面(要部断面)が示されているが、図11の後でかつ図13の前の工程段階に対応する図12だけは、メモリセル部A1のみの断面図(部分拡大断面図、要部断面図)が示されている。メモリセル部A1とメモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2と通常の素子部A3)は隣り合っていなくともよいが、理解を簡単にするために、図5〜図11,図13〜図20においてはメモリセル部A1の隣にメモリ周辺回路部を図示している。
また、本実施の形態においては、メモリセル部A1にnチャネル型のMISFETを形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMISFETをメモリセル部A1に形成することもできる。同様に、本実施の形態においては、メモリ周辺回路部にnチャネル型のMISFETを形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMISFETをメモリ周辺回路部に形成することもできる。また、メモリ周辺回路部に、CMOSFET(Complementary MOSFET)またはCMISFET(Complementary MISFET)などを形成することもできる。
また、本実施の形態の(高電界を与える)構造は本質的に素子分離領域の形成法に拠らず、従来広く用いられている素子分離工程、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)やLOCOS(Local Oxidization of Silicon )を行った後、ゲート絶縁膜形成工程を行なうことができる。
図5に示されるように、まず、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンなどからなる半導体基板(半導体ウエハ)1を準備する。それから、半導体基板1の主面に、活性領域を画定する素子分離領域(素子間分離絶縁領域)2を形成する。素子分離領域2は、酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidization of Silicon )法などにより形成することができる。
次に、イオン打ち込み法(例えばホウ素などのp型の不純物をイオン注入する)などにより、半導体基板1表面に、例えばp型ウエル3,4,5を形成する。p型ウエル3,4,5は、半導体基板1の主面から所定の深さに渡って形成される。なお、p型ウエル3はメモリセル部A1に形成され、p型ウエル4はメモリ周辺回路部の高耐圧素子部A2に形成され、p型ウエル5はメモリ周辺回路部の通常の素子部A3に形成される。
次に、図6に示されるように、メモリセル部A1に後で形成される選択トランジスタのしきい電圧を調整するために、メモリセル部A1のp型ウエル3に対してイオン注入6を行い、高耐圧素子部A2に後で形成されるMISFETのしきい電圧を調整するために、高耐圧素子部A2のp型ウエル4に対してイオン注入7を行い、通常の素子部A3に後で形成されるMISFETのしきい電圧を調整するために、通常の素子部A3のp型ウエル5に対してイオン注入8を行う。各イオン注入6,7,8では、例えばボロン(B:ホウ素)などのp型(アクセプタとして機能する不純物)の不純物をイオン注入(イオン打ち込み)する。
イオン注入6を行う際には、メモリセル部A1以外の領域を覆いかつメモリセル部A1を露出するフォトレジストパターン(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いて、メモリセル部A1のp型ウエル3に対してイオン注入6を行い、それによって、p型ウエル3の上層部分に半導体領域(p型半導体領域)10aが形成される。イオン注入7を行う際には、高耐圧素子部A2以外の領域を覆いかつ高耐圧素子部A2を露出する他のフォトレジストパターン(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いて、高耐圧素子部A2のp型ウエル4に対してイオン注入7を行い、それによって、p型ウエル4の上層部分にp型半導体領域(図示せず)が形成される。イオン注入8を行う際には、通常の素子部A3以外の領域を覆いかつ通常の素子部A3を露出する更に他のフォトレジストパターン(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして用いて、通常の素子部A3のp型ウエル5に対してイオン注入8を行い、それによって、p型ウエル5の上層部分にp型半導体領域(図示せず)が形成される。従って、図6では、イオン注入6,7,8を矢印で模式的に示してあるが、各イオン注入6,7,8は、別々のイオン注入工程として行われる。但し、イオン注入6,7,8のうち、ドーズ量が同じで良いものがあれば、それらを同じイオン注入工程として行うことも可能である。
なお、図面を見易くするために、図6において、イオン注入6によって形成された(すなわち不純物濃度が調整された)半導体領域10aは図示しているが、イオン注入7,8によって形成された(すなわち不純物濃度が調整された)p型の半導体領域は、図示を省略している。
また、メモリセル部A1に対して行うイオン注入6は、メモリセル部A1に形成する選択トランジスタのしきい電圧が所望の値となるように、後で選択トランジスタのチャネル領域として機能する半導体領域10aの不純物濃度を調整するために導入される。詳細は後述するが、本実施の形態では、金属元素含有層17b(この段階では未形成)を設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べて選択トランジスタのしきい電圧が高くなるので、それを考慮し、金属元素含有層17bを設けない場合に必要なドーズ量よりも少ないドーズ量で、イオン注入6を行う。
次に、図7に示されるように、ゲート絶縁膜(ゲート酸化膜)形成工程を行う。この際、高耐圧素子部(高耐圧部)A2で最も厚いゲート絶縁膜が必要となるため、その膜厚(高耐圧素子部A2で必要なゲート絶縁膜の膜厚)にあわせて酸化して高耐圧素子部A2にゲート絶縁膜11を形成する。他の部分(高耐圧素子部A2以外の領域)の酸化膜はフォトリソグラフィ法などを用いて除去する。次に、他の領域A1,A3(で必要なゲート絶縁膜の膜厚)にあわせて酸化を行い、例えば3nmの厚みのゲート絶縁膜12をメモリセル部A1および素子部A3に形成する。この2回目の酸化時(ゲート絶縁膜12形成時)に、最初に形成した高耐圧部A2のゲート絶縁膜11も更に厚くなる。そのため、最初の酸化時には、この(ゲート絶縁膜11の)膜厚変化分を見込んで酸化すればよい。さらに多くの膜厚種が必要な場合には、この工程を繰り返し行うことで形成することができる。
次に、図8に示されるように、半導体基板1上に、例えばCVD法などを用いて、例えば150nm程度の厚みを有する多結晶シリコン膜13を堆積し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてメモリセル部A1の多結晶シリコン膜13とゲート絶縁膜12を除去する。なお、メモリセル部A1に対する上記イオン注入6(半導体領域10a形成工程)を、この段階で行うこともできる。
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板1の表面の自然酸化膜を除去した後、酸化(熱酸化)して、図9に示されるように、絶縁膜(酸化シリコン膜)14を形成する。酸化の条件(酸化シリコン膜からなる絶縁膜14の形成条件)は、例えば、半導体基板1上に1〜3nm程度の酸化シリコン膜(絶縁膜14)が形成されるような条件で行う。これにより、メモリセル部A1の半導体基板1上(p型ウエル3の表面、すなわち半導体領域10aの表面)に、例えば2nmの厚みで酸化シリコン膜からなる絶縁膜14が形成される。このとき、酸化膜(酸化シリコン膜からなる絶縁膜14)は、多結晶シリコン膜13上にも成長する。なお、絶縁膜14として、酸化シリコン膜の代わりに酸窒化シリコン膜を形成することもできる。このため、本実施の形態では、絶縁膜14は、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。この絶縁膜14が後で絶縁膜17aとなる。
次に、絶縁膜14上に、金属元素含有層(金属元素含有膜)15を堆積(形成)する。金属元素含有層15は、金属元素(ここではハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)またはアルミニウム(Al))を含有している。例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属CVD)やALCVD(Atomic Layer Chemical Vapor Deposition:原子層CVD)のようなCVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法を用いて、金属酸化物(金属酸化物膜)または金属シリケート(金属シリケート膜)を絶縁膜14上に堆積して、金属元素含有層15を形成することができる。従って、金属元素含有層15は、金属酸化物または金属シリケートからなり、金属元素含有層15が、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化シリコンと酸化ハフニウムとのシリケート(すなわちハフニウムシリケート)、あるいは酸化シリコンと酸化ジルコニウムとのシリケート(すなわちジルコニウムシリケート)から形成されていれば、より好ましい。なお、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層15は、酸化シリコンよりも誘電率が高く、high−kゲート絶縁膜とみなすこともできる。また、理由は後述するが、絶縁膜14上に堆積した金属元素含有層15における金属元素の面密度は、1×1012〜2×1015原子/cm2の範囲内に制御することが好ましい。この金属元素含有層15が、後で金属元素含有層17bとなる。
また、詳細は後述するが、金属元素含有層15(17b)中に含まれる金属元素の量と、メモリセル部A1に形成するメモリセルの選択ゲート電極の下のチャネル領域(半導体領域10aに対応)の不純物濃度とによって、選択トランジスタのしきい電圧を調整することができる。例えば、選択ゲートトランジスタを、選択ゲート電極に印加される電圧がゼロのオフ状態において10−9A/μmの電流値となるように設定することができる。
金属元素含有層15の堆積後、必要に応じて、プラズマ窒化処理やアンモニア雰囲気中の熱処理などにより、窒素を金属元素含有層15に導入してもよい。その後、必要に応じて、希釈酸素中で比較的高温の熱処理を行うことなどにより、余分な窒素を気化させることもできる。
次に、図10に示されるように、半導体基板1上(すなわち金属元素含有層15が堆積された絶縁膜14上)に、例えばCVD法などを用いて、例えば150nm程度の厚みを有する多結晶シリコン膜(シリコン膜)16を堆積する。この多結晶シリコン膜は、選択ゲート電極SG形成用のシリコン膜である。それから、多結晶シリコン膜16に、例えばリン(P)などのn型の不純物を高濃度にドーピングした後、導入した不純物の活性化のための熱処理を行なう。メモリセル部A1においては、金属元素含有層15が堆積された絶縁膜14上(すなわち絶縁膜14および金属元素含有層15の積層膜上)に、多結晶シリコン膜16が形成されることになる。
次に、図11に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、多結晶シリコン膜16を選択的にエッチング(すなわちパターニング)して、パターニングされた多結晶シリコン膜16からなる選択ゲート電極SGをメモリセル部A1に形成する。これにより、メモリセル部A1において、後で形成するメモリゲート電極MGの形成予定領域が露出される。
選択ゲート電極SGの下に残存する絶縁膜14および金属元素含有層15が、選択ゲート電極SGとチャネル領域(半導体領域10a)の間に位置して選択トランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜、第1の層)17となる。このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17は、絶縁膜14により構成される絶縁膜(絶縁体層)17aと、絶縁膜17a(14)上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。上記のように、絶縁膜14は酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜により形成されているので、絶縁膜17aは酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。
次に、パターン化された多結晶シリコン膜16(選択ゲート電極SG)をイオン注入阻止マスクとして用いて、不純物のイオン注入(イオン打ち込み)18を行う。イオン注入18で注入(ドーピング)する不純物は、必要に応じて、n型の不純物(例えばヒ素またはリンなど)を選択することができる。このイオン注入18により、メモリセル部A1において、選択ゲート電極SGで覆われていない領域に不純物がイオン注入され、それによって、p型ウエル3(内の半導体領域10a)の選択ゲート電極SGで覆われていない領域に、イオン注入18による不純物が導入された半導体領域10bが形成される。
このイオン注入18で導入した不純物と、上記イオン注入6で導入された不純物とにより、後で形成されるメモリゲート電極MGの下の領域(チャネル領域)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を調整する。また、詳細は後述するが、本実施の形態では、金属元素含有層17bを設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べて、上記イオン注入6で導入する不純物の量(ドーズ量)を減らすことができるため、メモリトランジスタのしきい電圧低下のために必要なイオン注入18で導入する不純物の注入量(ドーズ量)を減らすことができる。
次に、図12に示されるように、犠牲酸化した後、半導体基板1上に熱酸化により例えば4〜7nm程度の厚みの酸化シリコン膜21aを形成し、その酸化シリコン膜21a上に例えば8〜10nm程度の厚みの窒化シリコン膜21bを堆積(形成)し、その窒化シリコン膜21b上に例えば7〜8nm程度の厚みの酸化シリコン膜21cを堆積(形成)して、ONO積層膜からなる絶縁膜21を形成する。図面を見易くするために、図12には、メモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2と通常の素子部A3)を示さず、メモリセル部A1だけが示されている。従って、絶縁膜21の厚みは、例えば21〜24nm程度となる。最後の酸化膜(絶縁膜21のうちの最上層の酸化シリコン膜21c)は、例えば窒化膜(絶縁膜21のうちの中間層の窒化シリコン膜21b)の上層部分を酸化して形成することで、高耐圧膜を形成することもできる。この場合、窒化シリコン膜21bの堆積膜厚は、上記値よりも厚くし、例えば11〜13nm程度にすればよい。
絶縁膜21は、後で形成されるメモリゲート電極MGのゲート絶縁膜として機能し、電荷保持機能を有する。従って、絶縁膜21は少なくとも3層の積層構造を有し、外側の層のポテンシャル障壁高さに比べ、内側の層のポテンシャル障壁高さが低くなる。これは、本実施の形態のように、例えば絶縁膜21を酸化シリコン膜21a、窒化シリコン膜21bおよび酸化シリコン膜21cの積層膜とすることで達成できる。
酸化シリコン膜21cは、窒化シリコン膜21bの上層部分の酸化だけで形成することもできるが、酸化膜の成長(窒化シリコン膜21bの酸化による酸化シリコン膜の成長速度)は比較的遅いので、例えば6nm程度の酸化シリコン膜を窒化シリコン膜21b上に堆積した後、窒化シリコン膜21bの上層部分を例えば1nm分だけ酸化して全厚みが7nm程度の酸化シリコン膜21cを形成することで、良好な膜を得ることもできる。
絶縁膜21を構成する各膜の膜厚(酸化シリコン膜21a、窒化シリコン膜21bおよび酸化シリコン膜21cの膜厚)構成は形成する半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)の使用法によって変わるため、ここでは代表的な構成(値)のみを例示しており、上記の値には限定されない。
次に、図13に示されるように、半導体基板1の主面の全面上に、リン(P)などをドーピングした多結晶シリコン膜(シリコン膜)22をCVD法などを用いて堆積する。従って、絶縁膜21上に多結晶シリコン膜22が形成される。多結晶シリコン膜22は、メモリゲート電極MG形成用のシリコン膜である。多結晶シリコン膜22の堆積膜厚は例えば100nm程度である。なお、図13〜図20においては、図面を見易くするために、酸化シリコン膜21a、窒化シリコン膜21bおよび酸化シリコン膜21cの積層膜を、単に絶縁膜21として図示している。
次に、図14に示されるように、堆積膜厚(100nm程度)分だけ多結晶シリコン膜22をエッチング(ドライエッチング、異方性エッチング、エッチバック)することにより、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜(ゲート絶縁膜)17の積層構造の側面に、後でメモリゲート電極MGとなるべき多結晶シリコンスペーサ(メモリゲート電極)23を形成する。すなわち、ゲート電極の側壁上に絶縁膜のサイドウォール(側壁スペーサ、側壁絶縁膜)を形成するのと同様の手法を用いて、多結晶シリコンスペーサ23を形成することができる。また、多結晶シリコンスペーサ23の加工時に、図示していないが、フォトリソグラフィ法により引き出し部のパターニングを行う。すなわち、後でメモリゲート電極に接続するコンタクトホールの形成予定領域では多結晶シリコン膜22をエッチングせずに残存させておく。
また、多結晶シリコン膜22の堆積膜厚がメモリゲート長(メモリゲート電極のゲート長)を決めることができ、半導体基板1上に堆積する多結晶シリコン膜22の膜厚を調整することで、メモリゲート長を調整することができる。例えば、多結晶シリコン膜22の堆積膜厚を薄くすることでゲート長を小さくすることができ、多結晶シリコン膜22の堆積膜厚を厚くすればゲート長を大きくすることができる。チャネル制御性と書き込み消去特性がトレードオフになるため、多結晶シリコン膜22の堆積膜厚は30〜150nmにするのが良いが、選択ゲート電極のゲート長が200nm程度の場合、多結晶シリコン膜22の堆積膜厚は50〜100nmとすることがより望ましい。これにより、メモリゲート電極のゲート長を50〜100nm程度とすることができる。
次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、図15に示されるように、選択ゲート電極SGの片側にある多結晶シリコンスペーサ23および絶縁膜21などを取り除く(除去する)。選択ゲート電極SGの他の片側に絶縁膜21を介して隣接して残存する多結晶シリコンスペーサ23が、メモリゲート電極MGとなる。
次に、図16に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、例えばCVD法によって酸化シリコン膜24を堆積し、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、メモリセル部A1以外の酸化シリコン膜24を除去し、多結晶シリコン膜13の表面を露出させる。メモリセル部A1は、酸化シリコン膜24で覆われた状態となる。
次に、高耐圧素子部A2と通常の素子部A3のnチャネル型MISFET形成予定領域の多結晶シリコン膜13にn型の不純物をドーピングし、また、図示しないpチャネル型MISFET形成予定領域の多結晶シリコン膜13にp型の不純物をドーピングし、活性化熱処理を行なった後に、図17に示されるように、周辺トランジスタのゲート加工を行う。すなわち、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて多結晶シリコン膜13をパターニングして、周辺トランジスタ(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3に形成されるMISFETなどのトランジスタ)のゲート電極25a,25bを形成する。このうち、ゲート電極25aは高耐圧素子部A2に形成され、ゲート電極25b通常の素子部A3に形成される。
次に、図18に示されるように、フォトリソグラフィ法により形成したフォトレジストパターン(図示せず)で高耐圧素子部A2と通常の素子部A3を覆った(マスクした)状態で、メモリセル部A1を保護していた酸化シリコン膜24を除去する。
次に、イオン注入(イオン打ち込み)法などを用いて例えばヒ素(As)などのn型の不純物を、メモリゲート電極MG、選択ゲート電極SGおよびゲート電極25をイオン注入阻止マスクとして用いてドーピングすることで、ソース、ドレイン(ソース、ドレイン電極)となるn−型半導体領域(不純物拡散層、不純物拡散層電極)31,32,33を形成する。n−型半導体領域31は、メモリゲート電極MGの側壁に自己整合して形成され、n−型半導体領域32は、選択ゲート電極SGの側壁に自己整合して形成され、n−型半導体領域33は、ゲート電極25の両側壁に自己整合して形成される。n−型半導体領域(不純物拡散層)31およびn−型半導体領域(不純物拡散層)32は、メモリセル部A1に形成されるメモリセルのソース、ドレインとして機能し、n−型半導体領域(不純物拡散層)33は周辺回路部(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3)に形成されるMISFETのソース、ドレインとして機能することができる。
なお、本実施の形態のメモリセル構造においては、消去時には、n−型半導体領域31の端部でいわゆるバンド間トンネル現象を利用してホールの生成を行なう。この現象によるホール生成効率は、n−型半導体領域31側の不純物濃度(不純物の電荷密度)に依存し、最適な濃度があることが知られている。そこで、このn−型半導体領域31形成時、ヒ素(As)とともに、例えば1013〜1014cm−2のイオン注入量(ドーズ量)でリン(P)などをイオン注入することで、ヒ素(As)により形成される不純物拡散層(n−型半導体領域31)の脇(端部)に最適濃度領域(ホール生成に適した不純物の電荷密度領域)を形成できる。すなわち、イオン注入されたリンとヒ素とでは、リンの方がヒ素よりも横方向(半導体基板1の主面に平行な方向)に拡散しやすいので、中央部よりも相対的に低不純物濃度の領域がn−型半導体領域31の端部に形成される。これにより、極めて有効なホール発生を行うことが可能になる。
また、ヒ素(As)を用いてイオン注入によりn−型半導体領域31,32を形成する際、同時にボロン(B:ホウ素)をイオン注入(イオン打ち込み)することで、ヒ素拡散層(n−型半導体領域31,32)周辺をボロン拡散層(ボロンが拡散したp型半導体領域)がとりまく構造、一般にHaloと呼ばれる構造を形成することもできる。
次に、図19に示されるように、選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGおよびゲート電極25の側壁上に、例えば酸化シリコンなどの絶縁体からなる側壁絶縁膜(サイドウォール、サイドウォールスペーサ)34を形成する。側壁絶縁膜34は、例えば、半導体基板1上に酸化シリコン膜を堆積し、この酸化シリコン膜を異方性エッチング(エッチバック)することによって形成することができる。例えば、膜厚80nm程度の酸化シリコン膜をプラズマ補助堆積法により400℃程度の低温で半導体基板1の全面に堆積した後、異方性ドライエッチングにより選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGおよびゲート電極25の側壁部にのみ選択的に酸化シリコン膜を残置させて側壁絶縁膜34を形成することができる。
次に、イオン注入法などを用いて、選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGおよびゲート電極25とそれらの側壁上の側壁絶縁膜34の両側の領域に、例えばヒ素(As)などのn型の不純物をドーピングすることで、高不純物濃度のn+型半導体領域(不純物拡散層)35,36,37を形成する。n+型半導体領域35は、メモリゲート電極MGの側壁上の側壁絶縁膜34に自己整合して形成され、n+型半導体領域36は、選択ゲート電極SGの側壁上の側壁絶縁膜34に自己整合して形成され、n+型半導体領域37は、ゲート電極25の両側壁上の側壁絶縁膜34に自己整合して形成される。これにより、LDD(lightly doped drain)構造が形成される。このようにして、n−型半導体領域31とそれよりも高不純物濃度のn+型半導体領域35とにより、メモリトランジスタのソース領域として機能するn型の半導体領域MSが形成され、n−型半導体領域32とそれよりも高不純物濃度のn+型半導体領域36とにより、選択トランジスタのドレイン領域として機能するn型の半導体領域MDが形成される。
次に、コバルトなどを用いた既知のサリサイド法などを用いて、金属シリサイド層39を形成する。すなわち、半導体基板1上にコバルト(Co)膜を堆積して熱処理することによって、選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGおよびゲート電極25上とn+型半導体領域35,36,37上とに金属シリサイド層39を形成する。その後、未反応のコバルト膜は除去する。
次に、図20に示されるように、半導体基板1上に酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜(絶縁膜)41を形成する。それから、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、層間絶縁膜41にコンタクトホール(開口部、スルーホール)42を形成する。コンタクトホール42の底部では、半導体基板1の主面の一部、例えばn+型半導体領域35,36,37(あるいはその上の金属シリサイド層39)の一部や、選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGまたはゲート電極25(あるいはその上の金属シリサイド層39)の一部などが露出される。
次に、コンタクトホール42内に、タングステン(W)などからなるプラグ43を形成する。プラグ43は、例えば、コンタクトホール42の内部(底部および側壁上)を含む層間絶縁膜41上にバリア膜として例えば窒化チタン膜を形成した後、タングステン膜をCVD法などによって窒化チタン膜上にコンタクトホール42を埋めるように形成し、層間絶縁膜41上の不要なタングステン膜および窒化チタン膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより形成することができる。
次に、プラグ43が埋め込まれた層間絶縁膜41上に、酸化シリコンなどからなる層間絶縁膜(絶縁膜)44を形成する。
次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて層間絶縁膜44に配線開口部(開口部)45を形成する。それから、配線開口部45を埋めるように層間絶縁膜44上に窒化チタンなどのバリア膜と銅膜を形成し、銅膜およびバリア膜をCMP法などを用いて研磨することにより、配線開口部45内に配線(第1層配線)46を形成する。配線46はプラグ43を介して、n+型半導体領域35,36,37や選択ゲート電極SG、メモリゲート電極MGまたはゲート電極25などと電気的に接続される。配線46は、タングステン配線またはアルミニウム配線とすることもできる。例えば、プラグ43が埋め込まれた層間絶縁膜41上にチタン膜、窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン膜および窒化チタン膜を積層し、これらの積層膜をフォトリソグラフィ法などを用いてパターン化することで、アルミニウム配線を形成することができる。
その後、必要に応じて更に上層の層間絶縁膜や上層の配線などが形成されるが、ここではその説明は省略する。このようにして、本実施の形態の半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)が製造される。
次に、本実施の形態の特徴および効果について、より詳細に説明する。
本実施の形態では、選択トランジスタのゲート絶縁膜に、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜17aと、絶縁膜17a上の金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層(high−k絶縁膜)17bとの積層構造を有する絶縁膜17を用いることで、選択ゲート電極SGの下(図1の半導体領域10a)の不純物の電荷密度(不純物濃度)が小さい状態で、選択トランジスタのしきい電圧を高くできることが第1の特徴である。
図21は、金属元素含有層17b中に含まれる金属量を面密度に換算した量と、しきい電圧のシフト量(あるいはフラットバンド電圧のシフト量)の関係を示すグラフである。図21のグラフの横軸は、金属元素含有層17b中に含まれる金属量を面密度に換算した値に対応する。図21のグラフの縦軸は、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の変化量(すなわちフラットバンド電圧の変化量)に対応する。図21のグラフの縦軸の値は、金属元素含有層17bを無くして絶縁膜17aのみによって選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した場合の選択トランジスタのしきい電圧を基準値とし、その基準値からの選択トランジスタのしきい電圧の変化量(シフト量)を表示している。また、図21のグラフには、金属元素含有層17bにハフニウムとシリコンと酸素からなるハフニウムシリケートを用いた場合(図21のグラフで黒三角▲で示されている)と、金属元素含有層17bにアルミナ(酸化アルミニウム)を用いた場合(図21のグラフで白四角□で示されている)について、グラフ化してある。また、図21のグラフは、選択トランジスタがnチャネル型MISFETの場合であり、絶縁膜17aは酸化シリコン膜により形成している。
図21のグラフからも分かるように、選択トランジスタのゲート絶縁膜(絶縁膜17)における金属の導入量(図21のグラフの横軸に対応するもの)を増大させると、選択トランジスタのしきい電圧(あるいはフラットバンド電圧)は正の方向にシフト(変化)し、5×1014〜1×1015原子/cm2程度の金属量で、しきい電圧のシフト量(図21のグラフの縦軸に対応するもの)がほぼ飽和していることが分かる。これは、ゲート電極側のフェルミレベルピニングによって説明することができる(例えば上記非特許文献4参照)。この現象は、選択ゲート電極MGのSiのバンドギャップ内に、界面準位が形成され、そのレベル(界面準位)にSiゲート電極(選択ゲート電極SG)のフェルミレベルがピニングすることで説明される。このため、選択ゲート電極SGは、少なくとも絶縁膜17に接する領域がシリコン(ここでは多結晶シリコン)からなる。
なお、ここで、面密度が5×1014〜1×1015原子/cm2程度の金属量は、酸化ハフニウムあるいはアルミナが0.5〜1.0nm程度の厚みで形成されるときの金属量に相当している。つまり、しきい電圧が変化している金属堆積量の範囲(面密度が5×1014原子/cm2以下)では、膜として金属元素含有層17bが形成されているのではなく、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成される絶縁膜17aと多結晶シリコンで形成される選択ゲート電極SGの界面近傍から狭い範囲に金属(金属元素含有層17bを構成する金属元素、図21の場合はハフニウムまたはアルミニウム)が局在している状態にある。金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度の好ましい範囲は、後述するように1×1012〜2×1015原子/cm2であり、本実施の形態では、「金属元素含有層17b」において「層」と言う表現を用いているが、金属元素含有層17bには、金属元素含有層17bが膜(層)として形成されている状態(場合)だけでなく、金属元素含有層17bを構成する金属元素の面密度が低く金属元素含有層17bが膜(層)として形成されていない状態(場合)も含むものとする。
図21のグラフに示されるように、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンで形成される絶縁膜17aと多結晶シリコンで形成される選択ゲート電極SGの間(界面)に、金属酸化物(図21ではアルミナ)または金属シリケート(図21ではハフニウムシリケート)からなる金属元素含有層17bを設けて、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度(図21の横軸に対応するもの)を調整することにより、選択トランジスタのしきい電圧を制御することができる。このため、金属含有層17bは、選択トランジスタのしきい電圧を調整するために導入した、しきい電圧調整層とみなすことができる。従って、本実施の形態とは異なり、金属元素含有層17bを形成することなく、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜17aのみで選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した場合に比べて、本実施の形態のように、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間(界面)に金属元素含有層17bを設けた(介在させた、形成した)場合の方が、選択トランジスタのしきい電圧を高くすることができる。
図22は、比較例の半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)の要部断面図であり、本実施の形態の図2に対応するものである。図22に示される比較例の半導体装置でも、MONOS膜を用いたスプリットゲート型のメモリセルが形成されている。図22の半導体基板201は上記半導体基板1に対応するものであり、p型ウエル203は、上記p型ウエル3に対応するものであり、選択ゲート電極216は上記選択ゲート電極SGに対応するものであり、メモリゲート電極223は上記メモリゲート電極MGに対応するものであり、酸化シリコン膜221a,221cと窒化シリコン膜221bの積層膜からなる絶縁膜221は、上記絶縁膜21に対応するものである。また、図22のソース領域235は、上記半導体領域MSに対応するものであり、ドレイン領域236は、上記半導体領域MDに対応するものであり、選択ゲート電極216の下の半導体領域210aは、上記半導体領域10aに対応するものであり、メモリゲート電極223の下の半導体領域210bは、上記半導体領域10bに対応するものである。しかしながら、図22の比較例の半導体装置では、本実施の形態とは異なり、上記のような金属元素含有層17bに相当するものは形成されておらず、選択ゲート電極216の下に位置する酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜の単体膜(単層)である絶縁膜217により、選択トランジスタのゲート絶縁膜が形成されている。すなわち、図22の比較例の半導体装置は、上記金属元素含有層17b(15)を形成せずに、上記絶縁膜17a(14)に相当する絶縁膜217のみによって選択トランジスタのゲート絶縁膜を形成したものに対応する。
本実施の形態とは異なり、図22の比較例の半導体装置のように、金属元素含有層17bに相当するものを形成することなく、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜217のみで選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した場合、選択トランジスタのしきい電圧を高くするには、選択ゲート電極の下のチャネル領域(半導体領域210aに対応)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を高くする必要がある。
しかしながら、本実施の形態では、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設ける(形成する、介在させる)ことで、金属元素含有層17bに相当するものが無い図22の比較例の半導体装置に比べて、選択トランジスタのしきい電圧を高くする(選択トランジスタのしきい電圧の絶対値を大きくする)ことができる。このため、選択トランジスタのしきい電圧が同じであれば、図22の比較例の半導体装置に比べて、金属元素含有層17bを設けた本実施の形態の半導体装置の方が、選択ゲート電極SGの下のチャネル領域(半導体領域10a)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を低くすることができる。
すなわち、図22の比較例の半導体装置と図1,図2の本実施の形態の半導体装置とで、両者の選択トランジスタのしきい電圧を同じにした場合、図22の比較例の半導体装置の半導体領域210aよりも、図1,図2の本実施の形態の半導体装置の半導体領域10aの方が、不純物濃度(不純物の電荷密度)を低くすることができる。
このように、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを形成した本実施の形態は、図21に示されるようなしきい電圧の変化により、選択ゲート電極SGの下のチャネル領域(半導体領域10a)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を、金属元素含有層17bを堆積しない図22の比較例の場合に比べて、小さくすることができる。
例えば、選択トランジスタの閾値(しきい電圧)をオフ状態において10−10A/μmの電流値となるように設定するためには、図22の比較例の場合(すなわち金属元素含有層17bに相当するものが無い場合)は、チャネル領域へのボロン(B:ホウ素)の不純物イオン注入(イオン注入6に相当する工程)のドーズ量が1×1013/cm2以上必要であり、選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域210a)の不純物濃度は6×1017/cm3以上であった。しかしながら、本実施の形態のように絶縁膜17a上に金属元素含有層17bを形成し、図21のグラフに従い、しきい電圧が約0.3V大きくなるようにハフニウムシリケートあるいはアルミナを導入した場合(図21のグラフの縦軸に示されるしきい電圧の変化量が約0.3Vとなるように金属元素含有層17bを構成するHfまたはAlの面密度を調整した場合)、チャネル領域(半導体領域10a)へのボロン(B:ホウ素)の不純物イオン注入(イオン注入6に相当する工程)のドーズ量を8×1012/cm2以下に低下させ、選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域10a)の不純物濃度が5×1017/cm3以下の状態で、選択トランジスタのオフ状態におけるドレイン電流を10−10A/μm以下に抑制することができる。従って、金属元素含有層17b中の金属量(金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度)と、選択ゲート電極SG下のチャネル領域(半導体領域10a)へのボロン(B)のイオン注入6のドーズ量の両方を調整することで、図22の比較例(すなわち金属元素含有層17bに相当するものが無い場合)に比べて、選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域10a)に導入する不純物量を減らすことができる。
金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度(金属元素含有層17b中の金属量)は、2×1015原子/cm2以下であることが好ましく、1×1015原子/cm2以下であることがより好ましい。これにより、金属元素含有層17bをゲート絶縁膜に用いたことによる悪影響を防止しながら、選択トランジスタのしきい電圧を制御することができる。
また、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度(金属元素含有層17b中の金属量)は、1×1012原子/cm2以上であることが好ましく、これにより、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の増大効果を得ることができる。但し、上記面密度が1×1012原子/cm2〜1×1013原子/cm2の場合は、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の変化量(増大量)が小さいため、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度(金属元素含有層17b中の金属量)は、1×1013原子/cm2以上であることが、より好ましい。上記面密度を1×1013原子/cm2以上とすることで、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の変化量(増大量)が大きくなり、選択トランジスタのしきい電圧の調整がしやすくなる。また、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度(金属元素含有層17b中の金属量)を、好ましくは1×1012原子/cm2以上、より好ましくは1×1013原子/cm2以上とすることで、金属元素含有層15(17b)の形成工程において、絶縁膜17における金属元素含有層15(17b)の形成(堆積)量を制御し易くなる。
従って、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度は、1×1012〜2×1015原子/cm2であることが好ましく、1×1013〜1×1015原子/cm2であることが、より好ましい。
また、金属元素含有層17b中の金属量(金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17における面密度)の上限は、選択トランジスタの短チャネル効果でしきい電圧のばらつきが発生しないように、図21のしきい電圧の変化量(図21のグラフの縦軸に対応するもの)が0.4V以下に抑制できる範囲であれば、更に好ましい。
また、選択トランジスタのしきい電圧をどの程度に設定するかにもよるが、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の下に位置する半導体領域10a(第1チャネル領域)における不純物の電荷密度は、5×1016〜1×1018/cm3であれば好ましい。
また、金属元素含有層17bを設けたことにより選択ゲート電極SGの仕事関数(フラットバンド電圧)を変化させて選択トランジスタのしきい電圧を高めるには、金属元素含有層17bを構成する金属元素が、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)またはアルミニウム(Al)であることが好ましい。これにより、金属元素含有層17bの導入により選択ゲート電極SGの仕事関数(フラットバンド電圧)を的確に変化させて選択トランジスタのしきい電圧を的確に高めることができるようになる。また、金属元素含有層17bは、金属酸化物または金属シリケートにより形成されていることが好ましく、これにより、金属元素含有層17b(15)を形成しやすくなり、また、金属元素含有層17b(15)の不必要な反応を防止でき、また、金属元素含有層17bが導体膜として作用するのを防止できる。従って、金属元素含有層17bが、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、ハフニウムシリケート(すなわち酸化シリコンと酸化ハフニウムとのシリケート)、あるいはジルコニウムシリケート(すなわち酸化シリコンと酸化ジルコニウムとのシリケート)から形成されていれば、より好ましい。また、これら金属酸化物または金属シリケートに更に窒素が導入されたものにより金属元素含有層17bが構成されていても良い。
また、本実施の形態とは異なり、金属酸化物または金属シリケートのみで選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成することも考えられるが、この場合、選択トランジスタのチャネル領域の移動度が低下し、半導体装置の性能を低下させる可能性がある。それに対して、本実施の形態では、選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域10a)に接するように絶縁膜17aが形成され、絶縁膜17a上に金属元素含有層17bが形成されているので、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層17bはチャネル領域(半導体領域10a)とは接しておらず、チャネル領域(半導体領域10a)の移動度が低下するのを防止でき、半導体装置の性能を高めることができる。また、本実施の形態では、絶縁膜17aは、金属元素含有層17bよりも厚いことが好ましく、これにより、金属元素含有層17bが選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域10a)に近接して選択トランジスタのチャネル領域の移動度が低下するのを抑制または防止できる。
一方、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bの不純物の電荷密度(不純物濃度)は、主として、イオン注入6により半導体領域10aに不純物を導入した際に半導体領域10bにも同時に導入された不純物(イオン注入6で導入された不純物)と、選択ゲート電極SGをイオン注入阻止マスクにしたイオン注入18により半導体領域10bに導入された不純物の両方によって決定される。そして、イオン注入18の工程で選択ゲート電極SGをイオン注入阻止マスクにして半導体領域10bにイオン注入(導入)された不純物が、イオン注入6で導入する不純物の導電型(ここではp型)とは逆導電型のn型不純物(例えば砒素)である場合、半導体領域10bのネットの(実効的な)不純物の電荷密度を減少させ、メモリトランジスタのしきい電圧を低下させることができる。
すなわち、上記イオン注入6の工程では、半導体基板1(p型ウエル3)において、後で選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の下に位置する半導体領域10a(第1チャネル領域)となる領域と、後でメモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の下に位置する半導体領域10b(第2チャネル領域)となる領域との両方に、p型(第1導電型)の不純物を導入(イオン注入)している。そして、上記イオン注入18の工程では、半導体基板1(p型ウエル3)において、後で選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の下に位置する半導体領域10a(第1チャネル領域)となる領域には不純物を導入(イオン注入)せずに、後でメモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の下に位置する半導体領域10b(第2チャネル領域)となる領域に、n型(第1導電型とは逆の第2導電型)の不純物を導入(イオン注入)している。このため、選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aには、イオン注入6で不純物が導入されるが、イオン注入18では不純物は導入されないのに対して、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bには、イオン注入6とイオン注入18の両方で不純物が導入されるので、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bの不純物の電荷密度(不純物濃度)は、イオン注入6で導入された不純物とイオン注入18により導入された不純物の両方によって決定される。なお、選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aとメモリゲート電極MGの下の半導体領域10bには、p型ウエル3形成の際にイオン注入したp型不純物も導入されている。
上記製造工程からも分かるように、選択トランジスタのチャネル領域として最適な不純物の電荷密度が選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aで得られるように、選択ゲート電極SGの下の領域(半導体領域10a)とメモリゲート電極MGの下の領域(半導体領域10b)の両方にほぼ同じ濃度(p型不純物濃度)でp型不純物(例えばホウ素)が導入されている。これは、メモリゲート電極MGの下の領域(半導体領域10b)にはイオン注入せずに選択ゲート電極SGの下の領域(半導体領域10a)にだけp型不純物をイオン注入することが困難であるため、上記イオン注入6の工程で半導体領域10aと半導体領域10bの両方にp型不純物をイオン注入するためである。メモリセルが非選択の状態(選択トランジスタがオフ状態)ではドレイン電流が低いことが好ましいので、選択トランジスタは、しきい電圧をある程度高くすることが望まれるが、メモリトランジスタは、消去時のしきい電圧を低くして読み出し時の電流値(ドレイン電流値)を高くすることが望まれる。このため、選択トランジスタはしきい電圧を高くするが、メモリトランジスタはしきい電圧を低くすることが要求されるので、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bにカウンター不純物(選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aに導入されている不純物と逆導電型の不純物)としてn型不純物を導入して領半導体域10bの不純物の電荷密度を低下させることで、選択トランジスタのしきい電圧を下げることなく、メモリトランジスタのしきい電圧を低くすることができる。
このため、本実施の形態では、選択ゲート電極SGの下の半導体領域10a(第1チャネル領域)には、p型不純物(第1導電型の不純物)が導入され(かつn型不純物は導入されておらず)、それによって、半導体領域10aの不純物の電荷密度を高くして選択トランジスタがオフ時のリーク電流を低くできる。そして、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10b(第2チャネル領域)には、p型不純物(半導体領域10aのp型不純物濃度と同濃度のp型不純物)とn型不純物(第1導電型とは逆の第2導電型の不純物)の両方が導入されており、それによって半導体領域10bの不純物の電荷密度を低くしてメモリトランジスタのしきい電圧を低くすることができる。
従って、本実施の形態では、選択ゲート電極SGおよび絶縁膜17の下に位置する半導体領域10a(第1チャネル領域)における不純物の電荷密度と、メモリゲート電極MGおよび絶縁膜21の下に位置する半導体領域10b(第2チャネル領域)における不純物の電荷密度とは、異なっており、半導体領域10b(第2チャネル領域)における不純物の電荷密度が、半導体領域10a(第1チャネル領域)における不純物の電荷密度よりも低くなっている。
ここで、半導体領域にドープ(導入)されているp型の不純物の空乏層中での電荷は負であり、n型の不純物の電荷は正である。このため、ある半導体領域にドープされている不純物が同じ導電型の不純物同士であれば、電荷の符号は同じなので、その半導体領域の不純物の電荷密度は、各不純物濃度を合算したものとなる。一方、逆の導電型の不純物同士については電荷が相殺し合うので、不純物の電荷密度は、一方の導電型の不純物濃度から他方の導電型の不純物濃度を差し引いたものに対応する。従って、不純物の電荷密度とは、ドープされた不純物が1種類の場合はその不純物濃度に対応し、ドープされた不純物が複数の場合は、同じ導電型の不純物については各不純物濃度を足し合わせ、異なる導電型の不純物同士は一方の導電型の不純物濃度から他方の導電型の不純物濃度を差し引いたものに対応する。例えば、1018/cm3の不純物濃度でn型不純物(例えばリン)がドープされかつ3×1017/cm3の不純物濃度で別のn型不純物(例えばヒ素)がドープされている場合、不純物の電荷密度は、両者を合算した1.3×1018/cm3となる。また、1018/cm3の不純物濃度でn型不純物(例えばリン)がドープされかつ3×1017/cm3の不純物濃度でp型不純物(例えばホウ素)がドープされている場合、不純物の電荷密度は、両者の差である7×1017/cm3となる。なお、ドープした不純物が有する電荷の価数が2以上となる場合は、不純物の電荷密度は不純物濃度をその価数倍したものに対応し得る。上記2例はいずれもn型不純物の濃度の方が大きいので、n型半導体領域として機能する。n型不純物とp型不純物が混在し、p型不純物の濃度の方が大きい場合は、p型半導体領域として機能する。n型不純物とp型不純物とが混在する場合は、互いに相殺しあって、その不純物濃度の差の分だけが実効的な不純物(ドナーまたはアクセプタ)として機能し得る。従って、不純物の電荷密度は、その半導体領域の実効的な不純物濃度と考えることもできる。
本実施の形態とは異なり、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない図22の比較例の場合は、選択ゲート電極216の下の半導体領域210aのp型不純物濃度を高くして選択トランジスタを高しきい電圧化し、かつカウンター不純物によりメモリゲート電極223の下の半導体領域210bの不純物の電荷密度を低くしてメモリトランジスタを低しきい電圧化する。この場合、メモリゲート電極223の下の半導体領域210bには、選択トランジスタを高しきい電圧化するのに必要な濃度のp型不純物と、そのp型不純物を打ち消してメモリトランジスタを低しきい電圧化できる濃度のn型不純物が導入されることになるので、メモリゲート電極223の下の半導体領域210bにおけるp型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量(不純物の総量)は、大きくなる。
それに対して、本実施の形態では、上記のように、金属元素含有層17bを設けたことで選択トランジスタのしきい電圧を高くすることができるため、金属元素含有層17bを形成しない比較例の場合に比べて、選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aのp型不純物濃度(不純物の電荷密度)を低くすることができる。選択ゲート電極SGの下の半導体領域10aのp型不純物の濃度を低くできるため、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bのp型不純物の濃度も低くできるので、メモリトランジスタの所望のしきい電圧(低いしきい電圧)を得るためにメモリゲート電極MGの下の半導体領域10bにイオン注入18で導入しなければならないカウンター不純物としてのn型不純物の濃度を低くすることができる。従って、本実施の形態では、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない図22の比較例の場合に比べて、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10bにおけるp型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量(不純物の総量)は、小さくなる。
すなわち、図22の比較例の半導体装置と図1,図2の本実施の形態の半導体装置とで、両者の選択トランジスタのしきい電圧を同じにし、かつ両者のメモリトランジスタのしきい電圧(書換え前の初期のしきい電圧Vthi)を同じにした場合、図22の比較例の半導体装置の半導体領域210bよりも、図1,図2の本実施の形態の半導体装置の半導体領域10bの方が、p型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量(不純物の総量)を小さく(低く)することができる。
このように、本実施の形態では、選択トランジスタのゲート絶縁膜に絶縁膜17aだけでなく金属元素含有層17bも用いることで、金属元素含有層17bを形成しない図22の比較例に比べて、メモリゲート電極MGの下の半導体領域10aのp型不純物の濃度を低下させることができるため、半導体領域10bにおけるカウンター不純物としてのn型不純物の注入(導入)量が少ない状態で、メモリトランジスタの低いしきい電圧を実現できる。
図23は、メモリトランジスタを25℃で10万回書き換えた後に消去状態で保持したときのメモリトランジスタのしきい電圧の20年後の増大量(外挿値)と、書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthi(しきい電圧の初期値)の関係を示すグラフである。図23のグラフの横軸は、メモリトランジスタの書換え前の初期のしきい電圧Vthi、すなわちメモリゲート電極の下のONO膜(本実施の形態では絶縁膜21に対応)に電荷を注入する前の初期のしきい電圧Vthiに対応する。また、図23のグラフの縦軸は、メモリトランジスタを25℃で10万回書き換えた後に消去状態で保持したときのメモリトランジスタのしきい電圧の20年経過後の増大量(保持開始時のしきい電圧を基準値として20年経過時に基準値からどれだけ増大するかを外挿法により求めた値)に対応する。例えば、上記図52のグラフで点線で示されるように外挿することで求めることができる。
図23のグラフでは、上記図22の比較例の半導体装置(メモリセル)の場合(図23のグラフには「比較例」として示されている)と、本実施の形態の半導体装置(メモリセル)の場合(図23のグラフには「本実施の形態」として示されている)のそれぞれについて、メモリトランジスタのチャネル領域(比較例では半導体領域210bに対応し、本実施の形態では半導体領域10bに対応する領域)に導入するカウンター不純物の注入量(イオン注入18に相当する工程のドーズ量)を変えることによりメモリトランジスタの初期のしきい電圧Vthiを変えてグラフ化(プロット)してある。すなわち、図23のグラフに示される「比較例」は、金属元素含有層17bに相当するものを形成せずに、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜217のみで選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した場合(図22のメモリセル)に対応し、図23のグラフに示される「本実施の形態」は、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設けた場合(図1,図2のメモリセル)に対応する。
なお、図23のグラフで用いたメモリトランジスタのしきい電圧は、図2,図22において、選択ゲート電極SG,216に1.5V、選択ゲート電極SG,216側の拡散層(半導体領域MD,236)に1.0V、ウエル(p型ウエル領域3,203)に0V、メモリゲート電極MG,223側の拡散層(半導体領域MS,235)に0Vを印加したときに、拡散層間(半導体領域MS,235と半導体領域MD,236との間)を流れる電流が20μA/μmとなるメモリゲート電圧(メモリゲート電極MG,223に印加する電圧)で定義し、保持を開始したときのメモリトランジスタのしきい電圧は−1.0Vとしている。
すなわち、本発明者は、図24の表に示される試料番号B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4の8種類の不揮発性半導体記憶装置(MONOS膜を用いたスプリットゲート型メモリセルが複数形成された半導体チップ)を作製し、各不揮発性半導体記憶装置B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4の作製条件および特性などを図24の表にまとめてある。
図24の表において、「金属元素含有層17bのハフニウム量」の欄は、金属元素含有層17bを構成するハフニウムシリケート中のハフニウム量(面密度)に対応し、「イオン注入6のドーズ量」の欄は、イオン注入6に相当する工程で半導体領域10a,10b,210a,210bに対応する領域へイオン注入したボロン(B)不純物のドーズ量に対応する。また、図24の表において、「イオン注入18のドーズ量」の欄は、イオン注入18に相当する工程で半導体領域10b,210bに対応する領域へイオン注入したカウンター不純物としてのヒ素(As)不純物のドーズ量に対応する。
また、各不揮発性半導体記憶装置B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4内には複数(ここでは約100万個)のメモリセルが形成されているので、同じ不揮発性半導体記憶装置内に形成された複数のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiは、完全に一定ではなく、ある程度ばらつく(変動する)。このため、同じ不揮発性半導体記憶装置内に形成された複数(ここでは約100万個)のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの中心値(約100万個の平均値にほぼ一致する)を、図24の表の「書換え前のメモリトランジスタしきい電圧Vthiの中心値」の欄に記載し、同じ不揮発性半導体記憶装置内に形成された複数(ここでは約100万個)のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつき(変動)の大きさ(例えば最大値と最小値との差)を、図24の表の「Vthiのばらつき」の欄に記載してある。
試料番号B1,B2,B3,B4は、金属元素含有層17bに相当するものを形成することなく、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜217(ここでは酸化シリコン膜)のみで選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した図22の比較例の不揮発性半導体記憶装置に対応し、金属元素含有層17bを形成していないため、図24の表の「金属元素含有層17bのハフニウム量」は、「なし」すなわちゼロとなる。試料番号C1,C2,C3,C4は、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを形成した図1および図2の本実施の形態の不揮発性半導体記憶装置に対応しており、試料番号C1,C2,C3,C4の不揮発性半導体記憶装置では、金属元素含有層17bをハフニウムシリケートで形成し、金属元素含有層17b中のハフニウム量(面密度)を3×1014原子/cm2としている。そして、試料番号B1,B2,B3,B4の順に、イオン注入6に相当する工程でメモリトランジスタのチャネル領域(半導体領域210b)に導入するカウンター不純物の注入量(図24の表の「イオン注入6のドーズ量」に対応)を増大させているので、試料番号B1,B2,B3,B4の順にメモリトランジスタの書換え前のしきい電圧Vthiの中心値(平均値)が低くなっている。同様に、試料番号C1,C2,C3,C4の順に、イオン注入6に相当する工程でメモリトランジスタのチャネル領域(半導体領域10b)に導入するカウンター不純物の注入量(図24の表の「イオン注入6のドーズ量」に対応)を増大させているので、試料番号C1,C2,C3,C4の順にメモリトランジスタの書換え前のしきい電圧Vthiの中心値(平均値)が低くなっている。
これら8種類の不揮発性半導体記憶装置B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4について、メモリトランジスタを25℃で10万回書換えた後に消去状態で保持したときのメモリトランジスタのしきい電圧の20年後の増大量(外挿値)を調べてプロット(グラフ化)したのが、上記図23のグラフである。図24の表の「書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの中心値」の欄の値が、図23のグラフの横軸の値に対応する。また、理解を簡単にするために、図23のグラフでは、各点の近傍に、その点に対応する試料番号(図24の表の試料番号)を記載してある。
図23のグラフの縦軸は、メモリトランジスタを25℃で10万回書換えた後に消去状態で保持したときのメモリトランジスタのしきい電圧の20年経過後の増大量であり、この増大量(変化量)は低い(小さい)ことが好ましく、この増大量が低いほど、データ保持特性が高い(良好)とみなすことができる。図23のグラフから明らかなように、消去状態におけるデータ保持特性は、書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiが低いほど向上する。また、図23からも分かるように、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない比較例よりも、金属元素含有層17bを設けた本実施の形態の方が、同じVthiに対して(すなわち図23のグラフの横軸の値が同じ位置の場合で比較例と本実施の形態を比べたときに)、消去状態におけるデータ保持特性が向上する(すなわち図3のグラフの縦軸の値を低減できる)。図23の本実施の形態の結果によると、Vthiを0V以下に調整することで、20年後にもメモリゲートがゼロバイアスで20μA/μm以上の読出し電流を得ることができる。
メモリトランジスタの書換え前のしきい電圧Vthiが低いほど、データ保持特性が向上する理由は次の通りだと考えられる。
ホットキャリアを注入して書換えを行なうメモリセルにおいては、ホットキャリアにより、絶縁膜(酸化シリコン膜21a,221aに対応)およびその界面にダメージが与えられ、界面準位やトラップが生成され、これらへの電荷注入や放出、或いは、これらを介した電荷注入や放出が引き起こされる。書換え後の消去状態でデータを保持している場合、メモリトランジスタのしきい電圧が低いために、メモリトランジスタの(メモリゲート電極MG,223の下の)チャネル領域(半導体領域10b,210bに対応)は、反転状態にあり、反転層電子が存在する。そして、絶縁膜(酸化シリコン膜21a,221aに対応)に欠陥がある場合、これらの欠陥を介して反転層電子が、窒化シリコン膜(窒化シリコン膜21b,221bに対応)中へトンネルし、窒化シリコン膜(窒化シリコン膜21b,221bに対応)中にトラップされるか、もしくは、予めトラップされていたホールと対消滅すると考えられる。これによって、(メモリトランジスタの)しきい電圧の増大が起きると考えられる。
反転層電子の窒化シリコン膜(窒化シリコン膜21b,221bに対応)中へのトンネル確率は、絶縁膜(酸化シリコン膜21a,221aに対応)に印加されている電界が大きいほど大きくなる。しかしながら、書換え前のしきい電圧Vthiが低い場合、消去状態のしきい電圧(上記の場合、例えば−1V)を実現するために注入されるホール量は、Vthiが大きい場合に比べて少ない。従って、消去状態において絶縁膜(酸化シリコン膜21a,221aに対応)に印加される電界が小さくなり、反転層電子の窒化シリコン膜(窒化シリコン膜21b,221bに対応)中へのトンネル確率が減少し、(メモリトランジスタの)しきい電圧の増大が抑制されると考えられる。
また、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない図22の比較例よりも、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設けた本実施の形態の方が、同じVthiに対して、消去状態におけるデータ保持特性が向上する理由は、次の通りだと考えられる。
金属元素含有層17bを形成しない比較例よりも、本実施の形態の方が、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の増大を見込める分、選択ゲート電極SG下のチャネル領域(半導体領域10aに対応)の不純物濃度を減少させることができる。これにより、本実施の形態では、選択ゲート電極SG下の半導体領域10a(チャネル領域)において、不純物イオンによるキャリアのクーロン散乱が小さくなるので、チャネルの移動度が大きく向上し、選択トランジスタを高速化することができる。更に、メモリゲート電極MG下のチャネル領域(半導体領域10bに対応)の移動度は、そこに注入される不純物イオンの総量(p型不純物とn型不純物の和)によって決定される。上述のように、金属元素含有層17bを形成しない比較例と、金属元素含有層17bを設けた本実施の形態とを比べた場合、両者のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiが同じであれば、メモリゲート電極MG,223の下のチャネル領域(半導体領域10b,210bに対応)におけるp型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量(不純物イオンの総量)は、比較例よりも本実施の形態の方が小さく(低く)なる。このため、本実施の形態では、メモリゲート電極MGの下のチャネル領域(半導体領域10bに対応)における不純物イオンの総量(総濃度)を減らすことができるため、メモリトランジスタの移動度が向上し、メモリトランジスタを高速化できる。以上のように、本実施の形態によって、選択トランジスタ、メモリトランジスタともに高速化が可能であり、言い換えると、例えば20μA/μmの読出し電流で定義したしきい電圧を低下させることができる。従って、本実施の形態では、消去状態のしきい電圧(上記の場合、例えば−1V)を実現するために注入されるホール量は、比較例(金属元素含有層17bを形成しない場合)に比べて少なくなり、保持状態において絶縁膜(酸化シリコン膜21a)に印加される電界を小さくできる。以上の効果により、本実施の形態では、データの保持特性を向上できる。従って、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができ、また、不揮発性メモリを有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
図25は、書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの中心値と書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつき(チップ内の100万個のメモリトランジスタのしきい電圧の最大値と最小値の差)の関係を示すグラフである。
図25のグラフの横軸は、同じ半導体チップ(不揮発性半導体記憶装置)内に形成された複数(ここでは約100万個)のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの中心値(平均値にほぼ一致する)に対応し、図25のグラフの縦軸は、その半導体チップ(不揮発性半導体記憶装置)内に形成された複数(ここでは約100万個)のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの最大のものと最小のものの差に対応する。すなわち、図25のグラフの横軸は、図24の表の「書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiの中心値」の欄の値に対応するものであり、図25のグラフの縦軸は、図24の表の「Vthiのばらつき」の欄の値に対応するものである。従って、図24の表に記載された8種類の不揮発性半導体記憶装置B1,B2,B3,B4,C1,C2,C3,C4を、プロットしたのが図25のグラフであり、理解を簡単にするために、図25のグラフでは、各点の近傍に、その点に対応する試料番号(図24の表の試料番号)を記載してある。
図25のグラフでは、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない比較例(図22の構造)の不揮発性半導体記憶装置B1,B2,B3,B4をプロットしてグラフ化したもの(図25のグラフには「比較例」として示されている)と、本実施の形態のように金属元素含有層17bを設けた(図1,図2の構造の)不揮発性半導体記憶装置C1,C2,C3,C4をプロットしてグラフ化したもの(図25のグラフには「本実施の形態」として示されている)の両方が示されている。
図25のグラフの縦軸は、同じ半導体チップ(不揮発性半導体記憶装置)内に形成された複数(ここでは約100万個)のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつき(最大値と最小値の差)であるので、このしきい電圧Vthiのばらつきは小さいことが好ましい。同じ半導体チップ内に形成された複数のメモリセルのメモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきが大きいと、不揮発性半導体記憶装置としての性能や信頼性を低下させる可能性がある。
図25のグラフから、書換え前のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiが低くなるに従って、そのしきい電圧Vthiのばらつきが増大することがわかる。また、図25のグラフからも分かるように、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない比較例よりも、金属元素含有層17b(図24,図25の場合はハフニウムシリケートにより金属元素含有層17bを形成している)を設けた本実施の形態の方が、同じしきい電圧Vthiに対して(すなわち図25のグラフの横軸の値が同じ位置の場合で比較例と本実施の形態を比べたときに)、しきい電圧Vthiのばらつき(図25のグラフの縦軸の値)を抑制(低減)できる。言い換えると、同じしきい電圧Vthiのばらつきで比較すると(すなわち図25のグラフの縦軸の値が同じ位置の場合で比較例と本実施の形態を比べたときに)、金属元素含有層17bに相当するものを形成しない比較例よりも、金属元素含有層17bを設けた本実施の形態の方が、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiを、より低くすることができる。
金属元素含有層17bに相当するものを形成しない比較例よりも、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設けた本実施の形態の方が、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきを抑制(低減)できる理由の一つは、次の通りだと考えられる。
不純物揺らぎによるしきい電圧Vthiのばらつきは、上記非特許文献5によると、メモリゲート電極MG,223の下のチャネル領域(半導体領域10b,210bに対応)へのp型不純物(例えばボロン)の注入量(主にイオン注入6の注入量)をNBとし、n型不純物(例えばヒ素)の注入量(イオン注入18の注入量)をNASとして、図26の式で与えられる。
ここで、図26の式中のqは電荷素量(1.6×10−19C)に対応し、CoxはメモリゲートMGとゲート絶縁膜21で構成されるキャパシタに相当する容量密度に対応し、Lはゲート電極MGのゲート長、Wはゲート電極MGのゲート幅に対応する。
つまり、図26の式から、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきは、メモリトランジスタのMOS容量に反比例し、面積の平方根に反比例し、そして、不純物量の和(すなわちNB+NAS)の平方根に比例することがわかる。MOS容量やメモリトランジスタの面積はほぼ同じと考えてよいので、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきは、不純物量の和(NB+NAS、すなわちメモリゲート電極MG,223の下の半導体領域10b,210bにおけるp型不純物の濃度(主にイオン注入6での注入量)とn型不純物の濃度(イオン注入18での注入量)の和)に依存する。すなわち、メモリゲート電極MG,223の下のチャネル領域(半導体領域10b,210bに対応)におけるトータルの不純物濃度(p型不純物濃度とn型不純物濃度の和)が大きくなるほど、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきは、大きくなる。上述のように、金属元素含有層17bを形成しない比較例と、金属元素含有層17bを設けた本実施の形態とを比べた場合、両者のメモリトランジスタのしきい電圧Vthiが同じであれば、メモリゲート電極MG,223の下のチャネル領域(半導体領域10b,210bに対応)におけるp型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量(不純物の総量、すなわち上記「NB+NAS」に対応するもの)は、比較例よりも本実施の形態の方が小さくなる。このため、本実施の形態では、メモリゲート電極MGの下のチャネル領域(半導体領域10b)における不純物の総量(p型不純物の濃度とn型不純物の濃度の合計量、上記「NB+NAS」に対応するもの)を小さくできる(減らすことができる)ため、メモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきを小さく(低減)することができる。これが、本実施の形態によりメモリトランジスタのしきい電圧Vthiのばらつきを低減できる理由のひとつと考えられる。
書込みと消去速度を向上するためには、複数のメモリセルを同時に書換え(書込み、消去)する方法が用いられる。しかしながら、半導体チップ内のメモリトランジスタ毎のしきい電圧Vthiのばらつきが大きい場合、絶縁膜21に注入する電子量あるいはホール量を大きくして、書込み状態と消去状態間に十分なしきい電圧のマージンを確保する必要があるが、この場合、1回の書換え当たりに注入されるホットキャリア量が増大するため、ダメージが大きくなり、データ保持特性の低下や、書換え耐性が低下する問題が発生する。それに対して、本実施の形態では、半導体チップ内のメモリトランジスタ毎のしきい電圧Vthiのばらつきを低減できるので、上記のようなしきい電圧Vthiのばらつきが大きいことに起因した問題が発生するのを防止でき、データ保持特性および書換え耐性を向上することができる。従って、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上することができる。また、不揮発性メモリを有する半導体装置の信頼性を向上することができる。
このように、本実施の形態では、半導体基板1のp型ウエル3(半導体領域10a)上に、絶縁膜17a(酸化シリコンまたは酸窒化シリコン膜)と金属元素含有層17b(金属酸化物または金属シリケート)とからなる絶縁膜17を介して多結晶シリコンからなる選択ゲート電極SGが形成され、p型ウエル3(半導体領域10b)上に、ONO積層膜である絶縁膜21を介してメモリゲート電極MGが形成されている。金属元素含有層17bと選択ゲート電極SGの界面のフェルミレベルピニングによるしきい電圧の変化によって、半導体領域10aと半導体領域10bに注入される不純物量を低減することができるので、メモリトランジスタのしきい電圧を低くし、メモリトランジスタのしきい電圧のばらつきも低減できる。これにより、絶縁膜21に印加される電界が低下するため、データの保持特性を向上できる。従って、データ保持特性に優れ、高速で動作する不揮発性半導体記憶装置を実現することができ、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能や信頼性を向上させることができる。
なお、本実施の形態では、金属元素含有層17bにハフニウムシリケートやアルミナを用いた場合について主に説明したが、ハフニウム酸化物(HfO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)またはその他の金属酸化物で絶縁体であるもの、または、これら金属酸化物(ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物またはその他の金属酸化物)と酸化シリコンとの化合物であるシリケート、または、ハフニウム酸化物とアルミナの化合物など複数の金属酸化物の化合物を、金属元素含有層17bに用いることもできる。これらのいずれの材料を金属元素含有層17bに用いた場合も、多結晶シリコン電極(選択ゲート電極SG)界面のフェルミレベルピニングによるしきい電圧の変化によって、選択トランジスタのしきい電圧を調整することができるので、メモリトランジスタのチャネル領域(半導体領域10bに対応)におけるトータルの不純物濃度(p型不純物濃度とn型不純物濃度の和)が低い状態でメモリトランジスタのしきい電圧を低く調整することが可能であり、不揮発性メモリのデータ保持特性の向上や、書換え耐性の向上を実現できる。
また、本実施の形態では、n型チャネルの場合(すなわち選択トランジスタをnチャネル型MISFETで形成した場合)について主に説明したが、本実施の形態は、p型チャネルで(すなわち選択トランジスタをpチャネル型MISFETで形成し)p型多結晶シリコンからなる選択ゲート電極SGの下に金属元素含有層17bを設けた場合にも適用できる。選択トランジスタをnチャネル型MISFETで形成した場合と同様の金属元素含有層17bを選択トランジスタをpチャネル型MISFETで形成した場合にも用いることで、選択トランジスタのしきい電圧を負方向に大きくする(ここで例えばしきい電圧が−1Vから−2Vになる方向をしきい電圧を負方向に大きくすると称している)ことができる。このため、選択トランジスタをpチャネル型MISFETで形成した場合も、nチャネル型MISFETで形成した場合と同様に、絶縁膜17aと選択ゲート電極の間に金属元素含有層17bを設けることで、選択トランジスタのしきい電圧を制御し、それによって、選択トランジスタとメモリトランジスタのチャネル領域の不純物濃度を低く(抑制)でき、選択トランジスタをnチャネル型MISFETで形成した場合と同様の効果を得ることができる。
なお、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の変化量は、p型多結晶シリコンにより選択ゲート電極SGを形成した場合(選択トランジスタをpチャネル型MISFETで形成した場合)と、n型多結晶シリコンにより選択ゲート電極SGを形成した場合(選択トランジスタをnチャネル型MISFETで形成した場合)とで、異なる。図27は、上記図21と同様、金属元素含有層17b中に含まれる金属量を面密度に換算した量と、しきい電圧のシフト量(あるいはフラットバンド電圧のシフト量)の関係を示すグラフであるが、上記図21の場合は、n型多結晶シリコンにより選択ゲート電極SGを形成していた(選択トランジスタをnチャネル型MISFETで形成していた)のに対して、図27は、p型多結晶シリコンにより選択ゲート電極SGを形成した(選択トランジスタをpチャネル型MISFETで形成した)場合である。また、上記図21と同様、図27でも、絶縁膜17aは酸化シリコン膜により形成している。
図27のグラフの横軸は、上記図21の横軸と同様に、金属元素含有層17b中に含まれる金属量を面密度に換算した値に対応し、図27のグラフの縦軸は、上記図21のグラフの縦軸と同様に、金属元素含有層17bを設けたことによる選択トランジスタのしきい電圧の変化量(すなわちフラットバンド電圧の変化量)に対応する。また、上記図21のグラフの縦軸の値と同様に、図27のグラフの縦軸の値は、金属元素含有層17bを無くして絶縁膜17aのみによって選択トランジスタのゲート絶縁膜を構成した場合の選択トランジスタのしきい電圧を基準値とし、その基準値からの選択トランジスタのしきい電圧の変化量を表示している。また、上記図21のグラフと同様に、図27のグラフにも、金属元素含有層17bにハフニウムとシリコンと酸素からなるハフニウムシリケートを用いた場合(図27のグラフで黒三角▲で示されている)と、金属元素含有層17bにアルミナ(酸化アルミニウム)を用いた場合(図27のグラフで白四角□で示されている)について、グラフ化してある。
上記図21のグラフに示されるように、選択トランジスタがnチャネル型MISFETの場合、金属元素含有層17bを構成する金属元素の面密度(図21のグラフの横軸に対応するもの)を増大させると、選択トランジスタのしきい電圧(あるいはフラットバンド電圧)は正の方向にシフト(変化)するが、図27のグラフに示されるように、選択トランジスタがpチャネル型MISFETの場合、金属元素含有層17bを構成する金属元素の面密度(図27のグラフの横軸に対応するもの)を増大させると、選択トランジスタのしきい電圧(あるいはフラットバンド電圧)は負の方向にシフト(変化)する。また、図27のグラフに示されるように、金属元素含有層17bにアルミナを用いた場合、選択トランジスタのしきい電圧のシフト量(図27のグラフの縦軸に対応するもの)は約0.15Vで飽和してしまう。また、金属元素含有層17bにハフニウム酸化膜を用いた場合、選択トランジスタのしきい電圧のシフト量(図27のグラフの縦軸に対応するもの)が飽和する値(飽和シフト量)は非常に大きく、0.5V以上に達する。従って、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に形成された金属元素含有層17bの金属量(図21,図27のグラフの横軸に対応するもの)は、選択トランジスタの極性や、金属元素含有層17bを構成する金属元素の種類によって、最適化して用いることが好ましい。
また、選択トランジスタがnチャネル型のMISFETであり、選択ゲート電極SGがn型シリコンの場合、しきい電圧は正の値であり、金属元素含有層17bの導入により、図21のように、選択トランジスタのしきい電圧は正の方向にシフトする。選択トランジスタがpチャネル型のMISFETであり、選択ゲート電極SGがp型シリコンの場合、しきい電圧は負の値であり、金属元素含有層17bの導入により、図27のように、選択トランジスタのしきい電圧は負の方向にシフトする。従って、選択トランジスタがnチャネル型の場合もpチャネル型の場合も、選択ゲート電極SGと絶縁膜17aとの間に形成された金属元素含有層17bは、選択ゲート電極SGからなるMISFET(選択トランジスタ)のしきい電圧の絶対値を増大する(すなわち選択トランジスタを高しきい電圧化する)ように作用する。なお、p型のシリコンからなる選択ゲート電極SGと絶縁膜17aとの間に、高濃度の窒素を含む酸窒化シリコン膜を導入することでも、しきい電圧を負にシフトさせることが可能である。面密度に換算して5×1015原子/cm2以下の窒素量によって、しきい電圧の絶対値を0から0.5Vの間で調整することができる。
また、図1,図2の本実施の形態のメモリセル構造を得るために、上記図5〜図20に従って説明した製造工程では、絶縁膜14を形成した後、絶縁膜14上に金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層15を堆積(形成)してから、金属元素含有層15が堆積された絶縁膜14上に多結晶シリコン膜16を形成し、その後多結晶シリコン膜16を加工して選択ゲート電極SGを形成している。これにより、選択トランジスタのゲート絶縁膜を、絶縁膜14により構成される絶縁膜17aと、絶縁膜14(絶縁膜17a)上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有した絶縁膜17により、構成することができる。図1,図2の本実施の形態のメモリセル構造を得るための他の製造工程(他の形態の製造工程)として、上記金属元素含有層17bに相当する部分をイオン注入により形成することもでき、この場合の製造工程を、図28〜図31を参照して説明する。
図28〜図31は、他の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。ここで説明する製造工程においても、絶縁膜14の形成工程までは、上記図5〜図9を参照して説明した工程と同様である。すなわち、上記図5〜図8で説明した工程と同様の工程を行って上記図8の構造が得られた後、上記図9で説明したのと同様にして絶縁膜14を形成して、図28に示される構造を得る。
次に、上記図9の場合とは異なり、この段階では金属元素含有層15を形成せずに、図29に示されるように、半導体基板1上(すなわち絶縁膜14上)に多結晶シリコン膜16を形成する。
次に、図30に示されるように、イオン注入50を行って、多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の界面(または界面近傍)に金属元素を導入する。この際、注入された金属元素の分布が、多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の界面付近でピーク(最大濃度)を有するように、イオン注入エネルギーを制御する。これにより、金属元素が多結晶シリコン膜16と絶縁膜14との界面近傍に限定して(局在して)導入された状態を形成することができ、多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の間(界面)に、金属元素が導入された金属元素含有層15aが形成される。金属元素含有層15aは、上記金属元素含有層15に対応する部分である。イオン注入50で導入する金属元素は、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)またはアルミニウム(Al)であることが好ましい。なお、メモリセル部A1の多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の界面に金属元素を導入すればよいので、メモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3)をイオン注入阻止マスクとしてのフォトレジストパターン(図示せず)で覆った状態でイオン注入50を行えば、より好ましい。
その後、上記図11で説明したのと同様に、図31に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、多結晶シリコン膜16を選択的にエッチング(除去)して、パターニングされた多結晶シリコン膜16からなる選択ゲート電極SGを形成する。
選択ゲート電極SGの下に残存する絶縁膜14と、絶縁膜14および選択ゲート電極SGの間(界面)の金属元素含有層15aとが、選択ゲート電極SGとチャネル領域の間に位置して選択トランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜)17となる。このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17は、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜14により構成される絶縁膜17aと、絶縁膜14(17a)および選択ゲート電極SGの間(界面)の金属元素含有層15aにより構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。
選択ゲート電極SG形成後の工程は、上記11〜図20を参照して説明した工程と同様であるので、ここではその説明は省略する。
図28〜図31の工程を用いて半導体装置(メモリセル)を製造した場合も、上記図21および図27で説明したように、金属元素含有層17bの金属量によって選択トランジスタのしきい電圧(選択ゲート電極SGのフラットバンド電圧)を制御することができる。すなわち、上記イオン注入50で導入する金属元素の量(ドーズ量)を調整することで、上記図21および図27の横軸の値(金属元素含有層17bの金属量)を制御できる。このため、イオン注入50により、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの界面に金属元素含有層17bを設けることができ、それによって選択トランジスタのしきい電圧を高めることができるので、上記のように選択トランジスタのチャネル領域(半導体領域10a)の不純物濃度を低くでき、また、メモリトランジスタのチャネル領域(半導体領域10b)における不純物の総量を低くできる。これにより、データの保持特性を向上でき、また、メモリトランジスタのしきい電圧のばらつきを低減できる。また、金属元素含有層17bに相当するものを形成するのにイオン注入法を用いることで、しきい電圧を変化させたい限られた領域にのみ金属種やその量を変えて金属元素を導入できる。すなわち、イオン注入阻止マスクを用いてメモリセル部A1の一部の領域に選択的にイオン注入50を行うことができるので、メモリセル部A1を複数の区画に分け、区画毎に、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの界面に導入された金属元素の種類や導入量を必要に応じて変えることができる。
また、本実施の形態においては、選択トランジスタ1つとメモリトランジスタ1つで一つのメモリセルを形成した場合について説明したが、上記図15において選択ゲート電極SGの片側にある多結晶シリコンスペーサ23を除去する工程をなくして、選択ゲート電極SGの両方の側壁上に絶縁膜21を介してメモリゲート電極MGを形成し、それによって、選択トランジスタ一つとメモリトランジスタ2つからなるメモリセルを形成することもできる。このようなメモリセルの場合、一つのメモリセルで2ビットの情報を記憶することも可能である。図32に、この方法で形成されるメモリセルの構造を示す。図32は、上記図1に対応するものであり、選択ゲート電極SGの両方の側壁上に絶縁膜21を介してメモリゲート電極MGが形成されている。図32のようなメモリセルの場合も、上記図1および図2のメモリセルの場合と同様に、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設けることで、選択トランジスタを高しきい電圧化できるので、選択ゲート電極SGの下のチャネル領域(半導体領域10a)の不純物濃度を低くでき、また、メモリゲート電極MGの下のチャネル領域(半導体領域10b)における不純物の総量を低くできる。図32のようなメモリセルの場合も、上記図1および図2のメモリセルの場合と同様に、データ保持特性の向上、書換え耐性の向上、メモリトランジスタのしきい電圧のばらつき低減などを実現することができる。
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、メモリセル部A1の選択トランジスタのゲート絶縁膜には、絶縁膜17aおよび金属元素含有層17bの積層構造を有する絶縁膜17を用いていたが、メモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3)では、MISFETのゲート絶縁膜に酸化シリコン単体膜を用いていた。それに対して、本実施の形態では、メモリセル部A1の選択トランジスタのゲート絶縁膜だけでなく、メモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのゲート絶縁膜にも、メモリセル部A1の選択トランジスタのゲート絶縁膜(絶縁膜17aおよび金属元素含有層17bの積層構造を有する絶縁膜17)と同様の絶縁膜を用いている。従って、本実施の形態の半導体装置は、メモリセル部A1およびメモリ周辺回路部の高耐圧素子部A2の構造は、上記実施の形態1と同様であるが、メモリ周辺回路部の素子部A3の構造が、上記実施の形態1と異なっている。従って、以下で説明する製造工程については、上記実施の形態1と異なる部分を中心に図33〜図40を参照して説明する。
図33〜図40は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。上記図6までの工程は上記実施の形態1と同様であるので、ここではその説明を省略し、上記図6に続く工程について説明する。
上記実施の形態1と同様にして、上記図6の構造を得た後、図33に示されるように、酸化(熱酸化)などにより、高耐圧素子部A2で必要とされる厚いゲート絶縁膜11を形成し、半導体基板1上(すなわちゲート絶縁膜11上)に例えばCVD法などを用いて、例えば150nm程度の厚みを有する多結晶シリコン膜13を堆積し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いてメモリセル部A1と素子部A3の多結晶シリコン膜13およびゲート絶縁膜11を除去する。これにより、高耐圧素子部A2にのみゲート絶縁膜11および多結晶シリコン膜13が形成された状態となる。
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板1の表面の自然酸化膜を除去した後、酸化(熱酸化)して、図34に示されるように、絶縁膜(酸化シリコン膜)14を形成する。酸化の条件(酸化シリコン膜からなる絶縁膜14の形成条件)は、例えば、半導体基板1上に1〜3nm程度の酸化シリコン膜(絶縁膜14)が形成されるような条件で行う。これにより、メモリセル部A1と周辺回路部の素子部A3の半導体基板1上(p型ウエル3,5の表面)に、例えば2nmの厚みで酸化シリコン膜からなる絶縁膜14が形成される。このとき、酸化膜(酸化シリコン膜からなる絶縁膜14)は、多結晶シリコン膜13上にも成長する。なお絶縁膜14として、酸化シリコン膜の代わりに酸窒化シリコン膜を形成することもできる。このため、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態においても、絶縁膜14は、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。
次に、絶縁膜14上に、金属元素含有層15を形成する。例えば、上記実施の形態1と同様、MOCVDやALCVDのようなCVD法を用いて、金属酸化物(金属酸化物膜)または金属シリケート(金属シリケート膜)を絶縁膜14上に堆積して、金属元素含有層15を形成することができる。金属元素含有層15を構成する材料は、上記実施の形態1と同様(金属酸化物または金属シリケート)であるので、ここではその説明は省略する。
また、金属元素含有層15中に含まれる金属元素の量と、メモリセル部A1に形成するメモリセルの選択ゲート電極の下のチャネル領域(半導体領域10aに対応)の不純物濃度、あるいは、素子部A3に形成するn型とp型のMISFETのチャネル領域の不純物濃度によって、それぞれのトランジスタ(メモリセル部A1の選択トランジスタや素子部A3のMISFET)のしきい電圧を調整することができる。例えば、選択ゲートトランジスタを、選択ゲート電極に印加される電圧がゼロのオフ状態において10−9A/μmの電流値となるように設定することができる。また、上記図21や図27に示されるように、金属元素含有層17b(15)の材料と、ゲート電極に依存して、しきい電圧(フラットバンド電圧)のシフト量が異なる。例えば、金属元素含有層17b(15)の材料としてハフニウムシリケートを用いた場合、金属元素含有層17b中の金属量が5×1014原子/cm2よりも大きいと、素子部A3のpチャネル型MISFETのしきい電圧のシフト量(そのMISFETのゲート絶縁膜に金属元素含有層17bを形成しない場合を基準値にし、金属元素含有層17bを設けたときのしきい電圧の基準値からの変化量)が0.5V以上になり、チャネル領域の不純物濃度によりしきい電圧の調整と短チャネル効果の抑制を行うことが難しくなる問題が生じる。また、金属元素含有層17b(15)の材料としてアルミナを用いた場合、金属元素含有層17b中の金属量が多すぎると、素子部A3のnチャネル型MISFETのしきい電圧のシフト量(そのMISFETのゲート絶縁膜に金属元素含有層17bを形成しない場合を基準値にし、金属元素含有層17bを設けたときのしきい電圧の基準値からの変化量)が大きすぎるという問題が生じる。従って、金属元素含有層17b(15)をメモリセル部A1と素子部A3の両方に適用する本実施の形態の場合、金属元素含有層17b(15)中に含まれる金属量は、面密度で5×1014原子/cm2以下であることがより好ましい。
金属元素含有層15の堆積後、プラズマ窒化処理やアンモニア雰囲気中の熱処理などにより、窒素を金属元素含有層15に導入してもよい。その後、必要に応じて希釈酸素中で比較的高温の熱処理を行うことなどにより、余分な窒素を気化させることもできる。
次に、図35に示されるように、半導体基板1上に、例えばCVD法などを用いて、例えば150nm程度の厚みを有する多結晶シリコン膜16を堆積する。それから、メモリセル部A1と素子部A3のnチャネル型MISFET形成予定領域では、多結晶シリコン膜16に、例えばリン(P)などのn型の不純物を高濃度にドーピングし、一方、素子部A3のpチャネル型MISFET形成予定領域部では、ボロン(B)などのp型の不純物を高濃度にドーピングし、その後、活性化のための熱処理を行なう。
次に、図36に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、多結晶シリコン膜16を選択的にエッチング(すなわちパターニング)して、パターニングされた多結晶シリコン膜16からなるメモリセル部A1の選択ゲート電極SGと素子部A3のゲート電極25bを形成する。これにより、メモリセル部A1において、後で形成するメモリゲート電極MGの形成予定領域が露出される。
メモリセル部A1において、選択ゲート電極SGの下に残存する絶縁膜14および金属元素含有層15が、選択ゲート電極SGとチャネル領域の間に位置して選択トランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜)17となる。このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17は、絶縁膜14により構成される絶縁膜17aと、絶縁膜14(17a)上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。一方、メモリ周辺回路部の素子部A3において、ゲート電極25bの下に残存する絶縁膜14および金属元素含有層15が、ゲート電極25bとチャネル領域の間に位置して素子部A3のMISFETのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜)17cとなる。このため、メモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのゲート絶縁膜は、メモリセル部A1の選択トランジスタのゲート絶縁膜(絶縁膜17)と同工程で形成された同様の構成の絶縁膜17cからなり、この絶縁膜17cは、絶縁膜14により構成される絶縁膜17aと、絶縁膜14(17a)上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。絶縁膜14は酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜により形成されているので、絶縁膜17,17cにおいて、絶縁膜17bは酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。
次に、メモリ周辺回路部の高耐圧素子部A2および素子部A3をフォトレジストパターン(図示せず)などで覆ってから、メモリセル部A1において、選択ゲート電極SGをイオン注入阻止マスクとして用いて、不純物のイオン注入18を行う。イオン注入18で注入する不純物は、必要に応じて、n型の不純物(例えばヒ素またはリンなど)を選択することができる。このイオン注入18により、メモリセル部A1において、選択ゲート電極SGで覆われていない領域に不純物がイオン注入され、それによって、p型ウエル3(内の半導体領域10a)の選択ゲート電極SGで覆われていない領域に、イオン注入18による不純物が導入された半導体領域10bが形成される。
このイオン注入18で導入した不純物と、上記イオン注入6で導入された不純物とにより、後で形成されるメモリゲート電極MGの下の領域(チャネル領域)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を調整する。また、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態でも、メモリセル部A1の選択トランジスタに金属元素含有層17bを設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べて、上記イオン注入6で導入する不純物の量(ドーズ量)を減らすことができるため、メモリトランジスタのしきい電圧低下のために必要なイオン注入18の注入量(ドーズ量)を減らすことができる。また、メモリ周辺回路部の素子部A3においても、MISFETのゲート絶縁膜に金属元素含有層17bを設けることにより、メモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのしきい電圧の絶対値が増大するため、メモリ周辺回路部の素子部A3のチャネル領域の不純物濃度(上記イオン注入8で導入した不純物の量)を減らすことができる。但し、メモリ周辺回路部の素子部A3においては、上記イオン注入8工程で、nチャネル型MISFET形成予定領域とpチャネル型MISFET形成予定領域で異なる不純物をイオン注入している。
次に、上記実施の形態1と同様の手法により、図37に示されるように、半導体基板1上に絶縁膜21を形成する。絶縁膜21は、上記実施の形態1と同様に、酸化シリコン膜21a、窒化シリコン膜21bおよび酸化シリコン膜21cの積層膜からなるが、図37およびそれ以降では、図面を見易くするために、単に絶縁膜21として図示している。
次に、半導体基板1の主面の全面上(すなわち絶縁膜21上)に、リン(P)などをドーピングした多結晶シリコン膜22をCVD法などを用いて堆積する。多結晶シリコン膜22の堆積膜厚は例えば100nm程度である。
次に、図38に示されるように、堆積膜厚(100nm程度)分だけ多結晶シリコン膜22をエッチング(ドライエッチング、異方性エッチング、エッチバック)することにより、選択ゲート電極SGおよびゲート絶縁膜17の積層構造の側面に、後でメモリゲート電極MGとなるべき多結晶シリコンスペーサ23を形成する。それから、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、選択ゲート電極SGの片側にある多結晶シリコンスペーサ23および絶縁膜21などを取り除く。これにより、図38の構造が得られる。選択ゲート電極SGの他の片側に絶縁膜21を介して隣接して残存する多結晶シリコンスペーサ23が、メモリゲート電極MGとなる。
次に、図39に示されるように、半導体基板1の主面全面上に、例えばCVD法によって酸化シリコン膜24を堆積し、例えばフォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、メモリセル部A1およびメモリ周辺回路部の素子部A3以外の酸化シリコン膜24を除去し、高耐圧素子部A2の多結晶シリコン膜13の表面を露出させる。メモリセル部A1および素子部A3は、酸化シリコン膜24で覆われた状態となる。
次に、高耐圧素子部A2のnチャネル型MISFET形成予定領域の多結晶シリコン膜13にn型の不純物をドーピングし、また、図示しないpチャネル型MISFET形成予定領域の多結晶シリコン膜13にp型の不純物をドーピングし、活性化熱処理を行なった後に、図40に示されるように、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて多結晶シリコン膜13をパターニングして、高耐圧素子部A2に形成されるMISFETのゲート電極25aを形成する。
次に、フォトリソグラフィ法により形成したフォトレジストパターン(図示せず)で高耐圧素子部A2を覆った(マスクした)状態で、メモリセル部A1および素子部A3を保護していた酸化シリコン膜24を除去する。
その後の工程は、上記実施の形態1と同様である。すなわち、図40に示されるように、n−型半導体領域31,32,33を形成し、側壁絶縁膜34を形成し、n+型半導体領域35,36,37を形成し、金属シリサイド層39を形成する。更に、上記実施の形態1と同様に層間絶縁膜41、コンタクトホール42、プラグ43、配線開口部45および配線46などが形成されるが、ここでは図示およびその説明を省略する。
このようにして、図40に示されるようにメモリセル部A1の選択トランジスタとメモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのゲート絶縁膜に、絶縁膜17aと金属元素含有層17bの積層構造を有する絶縁膜17,17cが使われた半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)が製造される。
本実施の形態の半導体装置では、上記実施の形態1の半導体装置と同様に、メモリセル部A1の選択トランジスタにおいて、絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間(界面)に、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層17bを設けている。更に、本実施の形態の半導体装置では、メモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETにおいて、絶縁膜17aとゲート電極25bの間(界面)に、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層17bを設けている。
このため、本実施の形態の半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)においては、上記実施の形態1で説明したメモリセル部A1のメモリセルのデータ保持特性や書換え耐性など、メモリ特性を向上できるだけでなく、メモリ周辺回路部の素子部A3の高速化を同時に実現できる特徴をもつ。
本実施の形態では、メモリセル部A1において絶縁膜17aと選択ゲート電極SGの間に金属元素含有層17bを設け、かつ素子部A3において絶縁膜17aとゲート電極25bの間に金属元素含有層17bを設けていることにより、メモリセル部A1の選択トランジスタのしきい電圧と、素子部A3のMISFET(ゲート電極25bによって構成されるMISFET)のしきい電圧を制御(高しきい値化)することができる。このため、メモリセル部A1の選択トランジスタ(選択ゲート電極SGの下)のチャネル領域(半導体領域10a)と、メモリ周辺回路部の素子部A3のトランジスタ(ゲート電極25bの下)のチャネル領域の不純物濃度を減少させることができる。これにより、不純物イオンによるキャリアのクーロン散乱が小さくなるのでチャネルの移動度が大きく向上し、メモリセル部A1の選択トランジスタおよび素子部A3のMISFET(トランジスタ)を同時に高速化することができる。更に、メモリセル部A1のメモリトランジスタ(メモリゲート電極MGの下)のチャネル領域(半導体領域10b)の移動度は、そこに注入される不純物イオンの総量(上記イオン注入6とイオン注入18で導入される不純物量の和)によって決定される。本実施の形態によると、上記実施の形態1と同様に、メモリセル部A1のメモリトランジスタのチャネル領域(半導体領域10b)における不純物イオンの総量を減らすことができるため、メモリトランジスタの移動度が向上し、高速化できる。以上のように、本実施の形態によって、メモリセル部A1の選択トランジスタおよびメモリトランジスタ、更に周辺回路部の素子部A3のMISFET(トランジスタ)を、ともに高速化することが可能である。従って、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができる。また、不揮発性メモリを有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
このように、本実施の形態によって、上記実施の形態1で説明したメモリセルのデータ保持特性の向上や書換え耐性の向上に加え、更にメモリ周辺回路部のトランジスタの高速化を実現することができる。
なお、本実施の形態でも、上記実施の形態1と同様に、金属元素含有層17bにハフニウムシリケートまたはアルミナを用いることができることはもちろん、ハフニウム酸化物(HfO2)、ジルコニウム酸化物(ZrO2)またはその他の金属酸化物で絶縁体であるもの、または、これら金属酸化物(ハフニウム酸化物、ジルコニウム酸化物またはその他の金属酸化物)と酸化シリコンとの化合物であるシリケート、または、ハフニウム酸化物とアルミナの化合物など複数の金属酸化物の化合物を、金属元素含有層17bに用いることもできる。これらのいずれの材料を金属元素含有層17bに用いた場合も、多結晶シリコン電極(選択ゲート電極SG)界面のフェルミレベルピニングによるしきい電圧の変化によって、メモリセル部A1の選択トランジスタやメモリ周辺回路部の素子部A3のトランジスタ(MISFET)のしきい電圧を調整することができ、両トランジスタの性能を向上することができる。但し、本実施の形態の場合、メモリ周辺回路部の素子部A3のpチャネル型MISFETとnチャネル型MISFETの両方のしきい電圧調整が必要であるため、金属元素含有層17bを構成する金属元素の絶縁膜17,17cにおける面密度(すなわち絶縁膜17,17cにおける金属元素含有層17bの金属量)は、1×1015原子/cm2以下に調整することがより望ましい。
また、本実施の形態では、メモリセル部A1の選択ゲート電極SGおよび素子部A3のゲート電極25bの形成前に、絶縁膜14上に金属元素含有層15を堆積する方法を用いたが、上記実施の形態1の上記図28〜図31を参照して説明したように、絶縁膜14上に、金属元素含有層15を堆積しないで多結晶シリコン膜16を堆積し、その後、イオン注入法で、多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の界面にハフニウムなどの金属元素をイオン注入して、金属元素含有層17bに相当するもの(金属元素含有層15a)を形成することもできる。この場合、メモリセル部A1の選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17の金属元素含有層17bと、メモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのゲート絶縁膜である絶縁膜17cの金属元素含有層17bとが、上記イオン注入50の工程で形成された上記金属元素含有層15aによって構成される。この場合も、金属元素含有層15a(金属元素含有層17b)を形成するイオン注入50の注入量を調整することによって、上記図21および図27で説明したように、メモリセル部A1の選択トランジスタやメモリ周辺回路部の素子部A3のMISFETのしきい電圧(フラットバンド電圧)を制御することができる。また、金属元素含有層17bに相当するものを形成するのにイオン注入法を用いることで、しきい電圧を変化させたい限られた領域にのみ金属種やその量を変えて金属元素を導入できる。
また、選択トランジスタ1つとメモリトランジスタ1つで一つのメモリセルを形成した場合について説明したが、本実施の形態においても、上記実施の形態1の図32のように、選択ゲート電極SGの片側にある多結晶シリコンスペーサ23を除去する工程をなくして、選択ゲート電極SGの両方の側壁上に絶縁膜21を介してメモリゲート電極MGを形成し、それによって、選択トランジスタ一つとメモリトランジスタ2つからなるメモリセルを形成することもできる。このようなメモリセルの場合、一つのメモリセルで2ビットの情報を記憶することも可能である。このようなメモリセルの場合も、本実施の形態を適用することで、データ保持特性の向上、書換え耐性の向上、メモリトランジスタのしきい電圧のばらつき低減などを実現することができる。
(実施の形態3)
上記実施の形態1,2では、電荷蓄積部にトラップ性絶縁膜(上記絶縁膜21に対応)を用いたスプリットゲート型メモリセルに本発明を適用した場合について説明したが、本実施の形態は、フローティングゲート方式のスプリットゲート型メモリセルに本発明を適用したものである。
本実施の形態では、半導体装置(不揮発性半導体記憶装置)のうちメモリセル部のみを抜き出し、メモリセル部の製造工程と構造について、図41〜図45を用いて説明する。
図41〜図45は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、メモリセル部(上実施の形態1,2のメモリセル部A1に対応する領域)が示され、上実施の形態1,2のメモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3)に対応する領域などは、図示を省略している。
本実施の形態の半導体装置を製造するには、まず、図41に示されるように、上記実施の形態1と同様の半導体基板1に素子分離領域(上記素子分離領域2に対応するもの、ここでは図示せず)を形成してから、p型の不純物をイオン注入することなどにより、半導体基板1表面に、所定の深さに渡ってp型ウエル3を形成する。
次に、後で形成される選択トランジスタのしきい電圧を調整するために、p型ウエル3に対してイオン注入6aを行う。このイオン注入6aは、上記実施の形態1,2のイオン注入6に相当するものであり、イオン注入6aでは、例えばボロン(B:ホウ素)などのp型の不純物をイオン注入する。このイオン注入6aによって、p型ウエル3の上層部分に、上記実施の形態1,2の半導体領域10aに相当する半導体領域(p型半導体領域)10cが形成される。
イオン注入6aは、メモリセル部に形成する選択トランジスタのしきい電圧が所望の値となるように、後で選択トランジスタのチャネル領域として機能する半導体領域10cの不純物濃度を調整するために導入される。上記実施の形態1,2と同様に、本実施の形態においても、金属元素含有層17b(この段階では未形成)を設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べて選択トランジスタのしきい電圧が高くなるので、それを考慮し、金属元素含有層17bを設けない場合に必要なドーズ量よりも少ないドーズ量で、イオン注入6aを行う。
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板1の表面の自然酸化膜を除去した後、酸化(熱酸化)して、図42に示されるように、酸化シリコン膜からなる絶縁膜14を形成する。なお、絶縁膜14として、酸化シリコン膜の代わりに酸窒化シリコン膜を用いることもできる。それから、絶縁膜14上に、上記実施の形態1,2と同様の金属元素含有層15を同様の手法を用いて形成する。従って、金属元素含有層15は、金属酸化物膜または金属シリケート膜からなる。なお、この金属元素含有層15中に含まれる金属元素の量と、メモリセルの選択ゲート電極の下のチャネル領域(半導体領域10cに対応)の不純物濃度とによって、選択トランジスタのしきい電圧を調整することができる。
金属元素含有層15の堆積後、必要に応じて、プラズマ窒化処理やアンモニア雰囲気中の熱処理などにより、窒素を金属元素含有層15に導入してもよい。その後、必要に応じて希釈酸素中で比較的高温の熱処理を行うことなどにより、余分な窒素を気化させることもできる。
次に、半導体基板1上(すなわち金属元素含有層15を堆積した絶縁膜14上)に、例えばCVD法などを用いて、例えば150nm程度の厚みを有する多結晶シリコン膜16を堆積し、多結晶シリコン膜16に、例えばリン(P)などのn型の不純物を高濃度にドーピングした後、導入した不純物の活性化のための熱処理を行なう。それから、CVD法などを用いて、多結晶シリコン膜16上に、例えば150nm程度の厚みを有する酸化シリコン膜(絶縁膜)60を堆積する。その後、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、酸化シリコン膜60と多結晶シリコン膜16を選択的にエッチング(除去)して、メモリセルの選択ゲート電極SG2を形成する。選択ゲート電極SG2は、パターニングされた多結晶シリコン膜16からなり、選択ゲート電極SG2上には、酸化シリコン膜60が残存している。これにより、後述するメモリゲート電極MG2の形成予定領域が露出される。選択ゲート電極SG2は、上記実施の形態1,2の選択ゲート電極SGに相当するものである。
選択ゲート電極SG2の下に残存する絶縁膜14および金属元素含有層15が、選択ゲート電極SG2とチャネル領域(半導体領域10c)の間に位置して選択トランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜、第1の層)17dとなる。このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17dは、絶縁膜14により構成される絶縁膜17aと、絶縁膜17a(14)上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。絶縁膜14は酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜により形成されているので、絶縁膜17bは酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなる。
絶縁膜17dは、上記実施の形態1,2の絶縁膜17に相当するものであり、絶縁膜17と同様の構成を有している。すなわち、本実施の形態の選択トランジスタ(選択ゲート電極SG2によりなるMISFET)のゲート絶縁膜(すなわち選択ゲート電極SG2の下に位置する絶縁膜17d)は、上記実施の形態1,2の選択トランジスタのゲート絶縁膜(すなわち選択ゲート電極SGの下に位置する絶縁膜17)と同様の構成を有している。
次に、必要に応じて、選択ゲート電極SG2をイオン注入阻止マスクとして用いて、不純物のイオン注入18aを行う。イオン注入工程18aは、上記実施の形態1,2のイオン注入18に相当するものである。このイオン注入18aにより、メモリセル部において、選択ゲート電極SG2で覆われていない領域に不純物がイオン注入され、それによって、p型ウエル3(内の半導体領域10c)の選択ゲート電極SG2で覆われていない領域に、イオン注入18aによる不純物が導入された半導体領域10dが形成される。これにより、図42の構造が得られる。イオン注入18aで注入する不純物は、必要に応じて、n型の不純物(例えばヒ素またはリンなど)を選択することができる。
このイオン注入18aで導入した不純物と、上記イオン注入6aで導入された不純物とにより、後で形成されるメモリゲート電極MG2の下の領域(チャネル領域)の不純物濃度(不純物の電荷密度)を調整する。また、上記実施の形態1,2と同様に、本実施の形態においても、金属元素含有層17bを設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べて、上記イオン注入6aで導入する不純物の量(ドーズ量)を減らすことができるため、メモリトランジスタのしきい電圧低下のために必要なイオン注入18aで導入する不純物の注入量(ドーズ量)を減らすことができる。
次に、図43に示されるように、フォトレジストパターン(図示せず)をイオン注入阻止マスクとして選択ゲートSG2の片側に、リン(P)などのn型不純物を高濃度にイオン注入し、n型半導体領域61を形成する。n型半導体領域61は、ソース・ドレインとして機能する半導体領域であり、選択ゲートSG2の片側のp型ウエル3に形成される。
次に、犠牲酸化した後、半導体基板1上に熱酸化により例えば10nm程度の厚みの酸化シリコン膜62aを形成する。この際、選択ゲート電極SG2の側面も酸化されて、酸化シリコン膜62bが選択ゲート電極SG2の側面に形成される。これにより、図43の構造が得られる。
次に、半導体基板1上にCVD法などを用いて、アモルファスシリコン膜を堆積し、このアモルファスシリコン膜を異方性エッチングによりエッチバックすることなどにより、図44に示されるように、フローティングゲート電極(浮遊ゲート、浮遊ゲート電極)FGを形成する。フローティングゲート電極FGの下の酸化シリコン膜62aがフローティングゲート電極FGのゲート絶縁膜として機能することができる。
次に、半導体基板1上に熱酸化により例えば4〜7nm程度の厚みの第1酸化シリコン膜を形成し、その第1酸化シリコン膜上に例えば8〜10nm程度の厚みの窒化シリコン膜を堆積(形成)し、その窒化シリコン膜上に例えば7〜8nm程度の厚みの第2酸化シリコン膜を堆積(形成)して、これら第1酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および第2酸化シリコン膜の積層膜からなる絶縁膜(ONO積層膜)63を形成する。なお、図45においては、図面を見易くするために、第1酸化シリコン膜、窒化シリコン膜および第2酸化シリコン膜の積層膜を、単に絶縁膜63として図示している。
次に、半導体基板1上にリン(P)などをドーピングした多結晶シリコン膜64をCVD法などを用いて堆積(形成)する。次いで、これを公知のリソグラフィとドライエッチング技術によりパターニングする。このパターニングされた多結晶シリコン膜64(多結晶シリコン膜64のうち絶縁膜63を介してフローティングゲート電極FG上に位置する部分)が、メモリトランジスタのメモリゲート電極MG2として機能することができる。これにより、図45に示されるようなメモリセルの基本構造が完成する。その後、必要に応じて層間絶縁膜や配線などが形成されるが、ここではその説明は省略する。
本実施の形態では、電荷蓄積部に絶縁膜(絶縁膜62a,62b,63)で周囲を覆われたフローティングゲート電極FGを用いたフローティングゲート方式のスプリットゲート型のメモリセルにおいて、選択トランジスタ(選択ゲート電極SG2により形成されるトランジスタ)のゲート絶縁膜を、上記実施の形態1,2の選択トランジスタのゲート絶縁膜と同様の構成としたことを特徴としている。
すなわち、上記実施の形態1,2では、メモリゲート電極MGと半導体基板1(半導体領域10b)との間に形成され、内部に電荷蓄積部を有する層(第2の層)が、ONO積層膜(絶縁膜21)により構成されていたのに対して、本実施の形態では、メモリゲート電極MG2と半導体基板1(半導体領域10b)との間に形成され、内部に電荷蓄積部を有する層(第2の層)が、周囲を絶縁膜(絶縁膜62a,62b,63)で覆われた導電膜(フローティングゲート電極FG)により構成されたものであり、フローティングゲート電極FG(導電膜)が電荷蓄積部として機能する。
本実施の形態においても、選択トランジスタ(選択ゲート電極SG2により形成されるトランジスタ)のゲート絶縁膜を、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンの単体膜で形成せずに、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜17aと選択ゲート電極SG2の間(界面)に、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層17bを設けている。これにより、選択トランジスタならびにメモリトランジスタのしきい電圧の調整を行うことによって、データの保持特性の向上やメモリの高速化などを実現できる。
すなわち、本実施の形態においても、メモリセルの選択トランジスタのゲート絶縁膜を上記実施の形態1,2と同様の構成とする(すなわち絶縁膜17aと選択ゲート電極SG2の間に金属元素含有層17bを設ける)ことで、金属元素含有層17bを設けなかった場合と比べて、しきい電圧が同じであれば、上記実施の形態1,2で説明したように、選択トランジスタおよびメモリトランジスタ両方のチャネル領域(図45において選択トランジスタのチャネル領域が半導体領域10cに対応し、メモリトランジスタのチャネル領域が半導体領域10dに対応する)の不純物濃度を抑制(低減)することができる。このため、チャネルの移動度の向上や、しきい電圧のばらつきを抑制することができる。その結果、不揮発性メモリの書換え耐性の向上とデータ保持特性を向上させることができる。従って、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができる。また、不揮発性メモリを有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態においても、上記実施の形態1,2で説明したように、金属元素含有層17b(15)中の金属の量や、チャネル領域(半導体領域10c,10d)の不純物濃度、トランジスタの極性を必要に応じて変更することが可能である。
また、本実施の形態においても、上記実施の形態1の上記図28〜図31を参照して説明したように、絶縁膜14上に、金属元素含有層15を堆積しないで多結晶シリコン膜16を堆積し、その後、イオン注入法で、多結晶シリコン膜16と絶縁膜14の界面にハフニウムなどの金属元素をイオン注入して、金属元素含有層17bに相当するもの(金属元素含有層15a)を形成することもできる。
(実施の形態4)
上記実施の形態1〜3では、選択トランジスタとメモリトランジスタのゲート(ゲート電極)が分離したスプリットゲート型メモリセルに本発明を適用した場合について説明したが、本実施の形態は、選択トランジスタとメモリトランジスタのゲート(ゲート電極)が共通化したメモリセルに本発明を適用したものである。本実施の形態では、メモリトランジスタにフローティングゲート方式を用いる場合を例に挙げて、メモリセル部の製造工程と構造について、図46〜図50を用いて説明する。
図46〜図50は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図であり、メモリセル部(上実施の形態1,2のメモリセル部A1に対応する領域)が示され、上実施の形態1,2のメモリ周辺回路部(高耐圧素子部A2および通常の素子部A3)に対応する領域などは、図示を省略している。
本実施の形態の半導体装置を製造するには、まず、図46に示されるように、上記実施の形態1と同様の半導体基板1に素子分離領域(上記素子分離領域2に対応するもの、ここでは図示せず)を形成してから、p型の不純物をイオン注入することなどにより、半導体基板1表面に、所定の深さに渡ってp型ウエル3を形成する。
次に、後で形成されるトランジスタ(メモリトランジスタ)のしきい電圧を調整するために、p型ウエル3に対してイオン注入6bを行う。イオン注入6bでは、例えばボロン(B:ホウ素)などのp型の不純物をイオン注入する。このイオン注入6bによって、p型ウエル3の上層部分に、半導体領域(p型半導体領域)10eが形成される。
イオン注入6bは、メモリセル部に形成するトランジスタのしきい電圧が所望の値となるように、後でチャネル領域として機能する半導体領域10eの不純物濃度を調整するために導入される。上記実施の形態1〜3と同様に、本実施の形態においても、金属元素含有層17b(この段階では未形成)を設けることにより、金属元素含有層17bを設けない場合に比べてしきい電圧が変化するので、それを考慮し、金属元素含有層17bを設けない場合に必要なドーズ量よりも少ないドーズ量で、イオン注入6bを行う。なお、イオン注入6bは、ボロン(B)不純物とn型の砒素(As)不純物の導入を連続で行い、埋め込みチャネル方式によって、さらにしきい電圧を低下させることもできる。
次に、希釈フッ酸洗浄などによって半導体基板1の表面の自然酸化膜を除去した後、酸化(熱酸化)して、フローティングゲート下のゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜71を形成する。それから、CVD法などにより、半導体基板1上(すなわち酸化シリコン膜71上)に、フローティングゲート電極となるアモルファスシリコン膜72と、酸化シリコン膜73を順次堆積する。そして、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて、酸化シリコン膜73とアモルファスシリコン膜72と酸化シリコン膜71を選択的にエッチング(パターニング)して、絶縁膜71、アモルファスシリコン膜72および酸化シリコン膜73のパターニングされた積層体を形成する。このパターニングされたアモルファスシリコン膜72がフローティングゲート電極(浮遊ゲート、浮遊ゲート電極)FG2となり、フローティングゲート電極FG2の下の絶縁膜71がゲート絶縁膜71aとなる。このようにして、図47の構造が得られる。
次に、図48に示されるように、フローティングゲート電極FG2の片側(のp型ウエル3)にソース・ドレインとして機能するn型半導体領域(不純物拡散層)74を形成する。n型半導体領域は、フローティングゲート電極FG2の他の片側をフォトレジストパターン(図示せず)で覆った状態でリン(P)などのn型不純物を高濃度にイオン注入することなどにより形成することができる。それから、必要に応じて、図48で矢印で模式的に示されているように、酸化シリコン膜73およびフローティングゲート電極FG2をイオン注入阻止マスクにして、不純物のイオン注入18bを行い、選択トランジスタのチャネル領域の不純物濃度を調整する。このイオン注入18bにより、メモリセル部においてフローティングゲート電極FG2で覆われていない領域に不純物がイオン注入され、それによって、p型ウエル3(内の半導体領域10e)のフローティングゲート電極FG2で覆われていない領域に、イオン注入18bによる不純物が導入された半導体領域10fが形成される。これにより、図48の構造が得られる。なお、半導体領域10fを先に形成してから、n型半導体領域74を形成することもできる。
図49に示されるように、酸化(熱酸化)して、半導体基板1表面に、選択トランジスタのゲート絶縁膜となる酸化シリコン膜76aを形成する。このとき、フローティングゲート電極FG2の側面も酸化されて、フローティングゲート電極FG2の側面に酸化シリコン膜76bが形成される。この酸化シリコン膜76bは、フローティングゲート電極FG2と後で形成されるメモリゲート(ここではゲート電極GDが兼ねる)の間に介在して両者を電気的に分離する。なお、図49では、酸化シリコン膜76bと酸化シリコン膜73は、いずれも酸化シリコンからなるので一体化して図示している。
次に酸化シリコン膜73,76a,76b上に、上記実施の形態1〜3と同様の金属元素含有層15を同様の手法を用いて形成する。従って、金属元素含有層15は、金属酸化物膜または金属シリケート膜からなる。なお、この金属元素含有層15中に含まれる金属元素の量と、トランジスタ(のゲート電極)下のチャネル領域(半導体領域10e,10fに対応)の不純物濃度とによって、メモリトランジスタと選択トランジスタのしきい電圧を調整することができる。
金属元素含有層15の堆積後、必要に応じて、プラズマ窒化処理やアンモニア雰囲気中の熱処理などにより、窒素を金属元素含有層15に導入してもよい。その後、必要に応じて希釈酸素中で比較的高温の熱処理を行うことなどにより、余分な窒素を気化させることもできる。
次に、図50に示されるように、CVD法などにより、半導体基板1上に、リン(P)などをドーピングした多結晶シリコン膜78を堆積(形成)し、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング法などを用いて多結晶シリコン膜78をパターニングすることで、選択トランジスタとメモリトランジスタに共通なゲート電極GDを形成する。その後、イオン注入法などを用いてゲート電極GDの片側に、ソース・ドレインとして機能し得るn型半導体領域79を形成する。これにより、図50に示されるメモリセルの基本構造が完成する。その後、必要に応じて層間絶縁膜や配線などが形成されるが、ここではその説明は省略する。
本実施の形態のメモリセル構造において、書込みは、ソースサイドインジェクション方式によって、チャネルから電子をフローティングゲート(フローティングゲート電極FG2)に注入することで行うことができる。また、消去は、ゲート電極GDに正の高電圧を印加することで、フローティングゲート(フローティングゲート電極FG2)に注入された電子を、ゲート電極GDにトンネル現象によって引き抜くことで行うことができる。
本実施の形態のメモリセルは、ゲート電極GDが、選択トランジスタのゲート電極とメモリトランジスタのゲート電極を兼ねている。そして、ゲート電極GDの下に位置する酸化シリコン膜76aおよび金属元素含有層15の積層膜が、選択トランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜)17eとなり、ゲート電極GDとフローティングゲート電極FG2の間に位置する酸化シリコン膜76bおよび金属元素含有層15の積層膜が、メモリトランジスタのゲート絶縁膜として機能する絶縁膜(ゲート絶縁膜)17fとなる。
このため、選択トランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17eとメモリトランジスタのゲート絶縁膜である絶縁膜17fとは、いずれも、酸化シリコン膜76aまたは酸化シリコン膜76bにより構成される絶縁膜17aと、絶縁膜17a上の金属元素含有層15により構成される金属元素含有層17bの積層構造を有している。酸化シリコン膜76a,76bの代わりに酸窒化シリコン膜を形成した場合は、その酸窒化シリコン膜により、絶縁膜17e,17fの絶縁膜17aが構成される。
本実施の形態では、選択トランジスタとメモリトランジスタのゲート電極が共通化したメモリセルにおいて、選択トランジスタとメモリトランジスタの両方のゲート絶縁膜を、上記実施の形態1,2の選択トランジスタのゲート絶縁膜と同様の構成としたことを特徴としている。すなわち、本実施の形態においても、選択トランジスタおよびメモリトランジスタの両者のゲート絶縁膜を、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンの単体膜で形成せずに、酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる絶縁膜17aとゲート電極GDの間(界面)に、金属酸化物または金属シリケートからなる金属元素含有層17bを設けている。これにより、選択トランジスタならびにメモリトランジスタのしきい電圧の調整を行うことによって、各トランジスタのチャネル領域の不純物濃度を減少させることができ、データの保持特性の向上、書換え耐性の向上、およびメモリの高速化などを実現できる。
すなわち、本実施の形態においては、選択トランジスタとメモリトランジスタ両方のゲート絶縁膜を、上記実施の形態1,2の選択トランジスタのゲート絶縁膜と同様の構成とする(すなわち絶縁膜17aとゲート電極DGの間に金属元素含有層17bを設ける)ことで、金属元素含有層17b(15)を設けなかった場合と比べて、しきい電圧が同じであれば、上記実施の形態1,2で説明したように、メモリトランジスタおよび選択トランジスタ両方のチャネル領域(図50において半導体領域10e,10fに対応)の不純物濃度を抑制(低減)することができるため、チャネルの移動度を向上することができる。また、フェルミレベルピニングは、上記非特許文献6にあるように、ゲートの仕事関数を大きくすることに対応するので、例えば、p型のシリコン基板と、n型のシリコンゲートの仕事関数差が小さくなるため、保持状態(ゲート電極DGの印加電圧ゼロ)において、フローティングゲート電極FG2の上下のゲート絶縁膜に印加される電界が小さくなり、データ保持特性が向上する効果がある。
従って、不揮発性メモリを有する半導体装置の性能を向上させることができる。また、不揮発性メモリを有する半導体装置の信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態においても、上記実施の形態1,2で説明したように、金属元素含有層17b(15)中の金属の量や、チャネル領域(半導体領域10e,10f)の不純物濃度、トランジスタの極性を必要に応じて変更することが可能である。
また、本実施の形態においても、上記実施の形態1の上記図28〜図31を参照して説明したように、金属元素含有層15を堆積しないで多結晶シリコン膜78を堆積し、その後、イオン注入法で、多結晶シリコン膜78と酸化シリコン膜76aの界面にハフニウムなどの金属元素をイオン注入して、金属元素含有層17bに相当するもの(金属元素含有層15a)を形成することもできる。
また、本実施の形態では、フローティングゲート方式のメモリトランジスタについて説明したが、フローティングゲートの代わりに窒化シリコン膜を用いてMONOS方式のメモリトランジスタを適用することも可能である。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。