JP2008040664A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、直流電力を交流電力に変換するインバータ装置に係り、特に燃料電池や太陽電池などによって生成される直流電力を商用電力系統に連系させて電力を供給する系統連系インバータ装置に適したインバータ装置及びこのインバータ装置のPWM制御方法に関する。
従来、系統連系インバータ装置においては、スイッチング素子のスイッチング回数を低減することによりスイッチングロスを低減する技術が提案されている。
例えば、特開平11−53042号公報には、インバータ出力電力Poutが定格値Prの30%〜80%の範囲外ではスイッチング素子のオン・オフ動作を制御するPWM(Pulse Width Modulation)信号を生成するための三角波の周波数を、20kHzとし、インバータ出力電力Poutが定格値Prの30%〜80%の範囲(以下、「実使用領域」という。)では三角波の周波数をそれよりも低い周波数(例えば、15kHz)に切り換えることにより、実使用領域におけるスイッチング素子のスイッチング回数を低減し、スイッチングロスを低減する技術が記載されている。
また、特開平11−53042号公報に記載の方法よりもスイッチング素子のスイッチング回数をより低減することのできる方法として、ヒステリシス方式による電流制御法と呼ばれる方法が知られている。
ヒステリシス方式による電流制御法とは、図15に示す方法によってPWM信号を生成し、このPWM信号によってスイッチング素子のオン・オフを制御するものである。
図15において、実線の曲線Aは出力電流の基本波成分の制御目標値の波形を示し、点線で示す曲線AU,ADはそれぞれ出力電流の基本波成分が変動した場合の許容範囲の上限と下限の波形を示している。また、一点鎖線で示す折れ線Bはインバータ装置から出力される電流値の波形である。
ヒステリシス方式による電流制御法では、インバータ装置から出力される電流値が許容範囲ΔIの上限値Iupまで上昇すると、PWM信号のレベルが直流電力のインバータへの供給を停止させるようにスイッチング素子を制御するレベル(図15では「ローレベル」で表示)に切り換えられ、インバータ装置から出力される電流値が許容範囲ΔIの下限値Idownまで下降すると、PWM信号のレベルがインバータに直流電力を供給するようにスイッチング素子を制御するレベル(図15では「ハイレベル」で表示)に切り換えられる。
ところで、系統連系インバータ装置には、系統に連係させるためのガイドラインが設けられている。例えば、出力電流に対して、基本波成分(関西地域では60Hz、関東地域では50Hz)の実効値を所定の許容範囲内に保持することや5次、7次、13次の高調波成分を各々1%以内、総合で3%以内に抑制することが要求されている。
インバータ装置の性能に対しては、一般に出力の高精度化、高速応答性、高効率などが要求されるが、系統連系インバータ装置は系統への電力供給を主目的とするから、モータ制御用のインバータ装置とは異なり、高効率化の要求が出力の高精度化や高速応答性よりも優先されている。従って、系統連系インバータ装置においては、例えば、上記のガイドラインを満足することを条件に可能な限りスイッチング回数を低減して高効率化を図ることが望まれる。
ヒステリシス方式による電流制御法は、系統連系インバータ装置から出力される電流値が制御目標値の許容範囲ΔI内(例えば、制御目標値±3%内)で可能な限りスイッチング素子のスイッチング周波数を低下させ、スイッチングロスを低減する方法であるので、ガイドラインを満足することを条件とした高効率化の観点から見れば、特開平11−53042号公報に記載の方法よりも系統連系インバータ装置に適したPWM信号生成方法ということができる。
しかしながら、ヒステリシス方式による電流制御法には、以下のような問題がある。
(1)図15において、PWM信号のハイレベル期間TONとローレベル期間TOFFは、系統連系インバータ装置から実際に出力される電流値が許容範囲の上限値Iupと下限値Idownを逸脱するタイミングによって決定されるので、PWM信号の周期T(=TON+TOFF)が安定しない。このため、出力電流に含まれるスイッチングノイズ(スイッチング素
子のスイッチングに起因するノイズ)を除去するために直流−交流変換回路の後段に設けられるローパスフィルタのカットオフ周波数を適切に設定することができない。
子のスイッチングに起因するノイズ)を除去するために直流−交流変換回路の後段に設けられるローパスフィルタのカットオフ周波数を適切に設定することができない。
(2)系統連系インバータ装置から実際に出力される交流電流が許容範囲を逸脱するか否かを常時監視するための回路を必要とする。
(3)系統連系インバータ装置から実際に出力される交流電流が許容範囲を逸脱するか否かによってPWM信号のパターンを生成する構成をディジタル制御系によって構成することが困難である。このため、ディジタル制御系の設計における高汎用性、高柔軟性といった利点を生かすことができない。
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、ヒステリシス方式の電流制御法の欠点を解消し、出力電流が許容範囲を超えない範囲で可及的に周期を長くしたPWM信号を生成するディジタル化された制御系を備えたインバータ装置及びこのインバータ装置のPWM制御方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明の第1の側面によって提供されるインバータ装置は、直流電圧を出力する直流電源と、前記直流電源から出力される直流電圧を交流電圧に逆変換するための、複数のスイッチング素子をブリッジ接続してなるブリッジ回路と、PWM信号を生成し、このPWM信号により前記複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を制御することにより前記ブリッジ回路の逆変換動作を制御する制御回路と、前記ブリッジ回路から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路と、前記フィルタ回路から出力される交流電圧を変成して負荷に出力する変圧器とを備えたインバータ装置であって、前記直流電源から出力される直流電圧を検出する第1の電圧検出手段と、前記変圧器から出力される交流電流を検出する電流検出手段と、前記変圧器から出力される交流電圧を検出する第2の電圧検出手段とを備え、前記制御回路は、前記PWM信号のレベルが、前記ブリッジ回路を前記直流電圧が前記負荷側に供給される状態とする第1のレベルに切り換えられると、前記電流検出手段で検出される電流値を初期値として、前記PWM信号が第1のレベルに設定された第1のタイミングから所定の単位時間を所定の整数値で整数倍した時間だけ進んだ第2のタイミングまでの前記変圧器から出力される第1の電流波形を、前記フィルタ回路及び前記変圧器をモデル化した数式モデルの第1の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第1の演算式を用いて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングの時間方向に演算する第1の波形演算手段と、前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第1の目標電流演算手段と、前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない状態において前記変圧器から出力される交流電流が前記第2のタイミングで前記制御目標値となる第2の電流波形を、前記第1の状態方程式とは異なる入出力条件で導出される前記数式モデルの第2の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第2の演算式を用いて、前記第2のタイミングから前記第1のタイミングの時間方向に演算する第2の波形演算手段と、前記第1の波形演算手段により算出される前記第1の電流波形と前記第2の波形演算手段により算出される前記第2の電流波形とが交差する第3のタイミングを演算する交差タイミング演算手段と、前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第3のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第2の目標電流演算手段と、前記第2の目標電流演算手段により算出された制御目標値が予め設定された許容範囲内であるか否か判別する判別手段と、前記判別手段により前記制御目標値が許容範囲内でないと判別されると、当該制御目標値が許容範囲内であると判別されるまで、前記第2のタイミングを前記単位時間分だけ短くしたタイミングに変更して、前記第1の目標電流演算手段、前記第2の波形演算手段、前記第2の目標電流演算手段及び前記判別手段の各手段の動作を繰り返させる演算制御手段と、前記判別手段により許容範囲内であると判別されると、前記第3のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない回路状態となる第2のレベルに切り換えるタイミングに設定するとともに、前記第2のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記第1のレベルに切り換える次の第1のタイミングとして設定するタイミング設定手段と、前記タイミング設定手段で設定される前記第1のタイミングで前記第1のレベルとし、前記第3のタイミングで前記第2のレベルとするように、信号レベルを交互に切り換えることより前記PWM信号を生成するPWM信号生成手段とからなることを特徴とする。
なお、上記インバータ装置において、前記交差タイミング演算手段は、離散時間演算における各サンプリング時刻の前記第1の電流波形の値と前記第2の電流波形の値の差を演算する電流差演算手段と、この電流差演算手段により算出される複数の電流差のサンプリング時刻うち、最小の電流差を有するサンプリング時刻を前記第3のタイミングとして算出するタイミング算出手段とで構成するとよい。
また、上記インバータ装置において、前記単位時間の長さを変更する第1の変更手段や前記整数値を変更する第2の変更手段を更に備えるとよい。
また、上記インバータ装置において、前記制御目標値は、前記交流電流の許容範囲の中心から偏差した値にするとよい。
さらに、上記インバータ装置において、前記直流電源は太陽電池からなるとともに、前記ブリッジ回路は三相ブリッジ回路からなり、前記変圧器から出力される交流電圧は商用電力系統に連系させて出力される三相交流電圧にするとよい。
また、本発明の第2の側面によって提供されるインバータ装置のPWM制御方法は、直流電圧を出力する直流電源と、前記直流電源から出力される直流電圧を交流電圧に逆変換するための、複数のスイッチング素子をブリッジ接続してなるブリッジ回路と、PWM信号を生成し、このPWM信号により前記複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を制御することにより前記ブリッジ回路の逆変換動作を制御する制御回路と、前記ブリッジ回路から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路と、前記フィルタ回路から出力される交流電圧を変成して負荷に出力する変圧器と、前記直流電源から出力される直流電圧を検出する第1の電圧検出手段と、前記変圧器から出力される交流電流を検出する電流検出手段と、前記変圧器から出力される交流電圧を検出する第2の電圧検出手段とを備えたインバータ装置のPWM制御方法であって、前記PWM信号のレベルが、前記ブリッジ回路を前記直流電圧が前記負荷側に供給される状態とする第1のレベルに切り換えられると、前記電流検出手段で検出される電流値を初期値として、前記PWM信号が前記第1のレベルに設定された第1のタイミングから所定の単位時間を所定の整数値で整数倍した時間だけ進んだ第2のタイミングまでの前記変圧器から出力される第1の電流波形を、前記フィルタ回路及び前記変圧器をモデル化した数式モデルの第1の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第1の演算式を用いて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングの時間方向に演算する第1の工程と、前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算するとともに、前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない状態において前記変圧器から出力される交流電流が前記第2のタイミングで前記制御目標値となる第2の電流波形を、前記第1の状態方程式とは異なる入出力条件で導出される前記数式モデルの第2の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第2の演算式を用いて、前記第2のタイミングから前記第1のタイミングの時間方向に演算する第2の工程と、前記第1の電流波形と前記第2の電流波形とが交差する第3のタイミングを演算し、前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第3のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第3の工程と、前記第3の工程で演算された制御目標値が予め設定された許容範囲内であるか否か判別し、前記制御目標値が許容範囲内でないと判別されると、当該制御目標値が許容範囲内であると判別されるまで、前記第2のタイミングを前記単位時間分だけ短くしたタイミングに変更して、前記第1の工程乃至前記第3の工程を繰り返す第4の工程と、前記第3の工程で演算された制御目標値が前記許容範囲内であると判別されると、前記第3のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない回路状態となる第2のレベルに切り換えるタイミングに設定するとともに、前記第2のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記第1のレベルに切り換える次の第1のタイミングとして設定し、前記第1のタイミングで前記第1のレベルとし、前記第3のタイミングで前記第2のレベルとするように、信号レベルを交互に切り換えることより前記PWM信号を生成する第5の工程とからなることを特徴とする。
上記インバータ装置のPWM制御方法において、前記第3のタイミングは、離散時間演算における各サンプリング時刻の前記第1の電流波形の値と前記第2の電流波形の値の差を演算し、最小の電流差を有するサンプリング時刻が前記第3のタイミングとして算出されるとよい。
また、前記制御目標値は、前記交流電流の許容範囲の中心から偏差した値であるとよい。
本発明によれば、PWM信号のレベルが、ブリッジ回路を直流電圧が負荷側に供給される状態とする第1のレベル(以下、「オン・レベル」という。)に切り換えられると、単位時間Tを所定の整数値mで整数倍した時間m・TをPWM信号の1周期と仮定して、この1周期における、ブリッジ回路を直流電圧が負荷側に供給しない状態とする第2のレベル(以下、「オフ・レベル」という。)に切り換えるタイミング(以下、「オフ・タイミング」という。)が所定の演算処理により算出されるとともに、このオフ・タイミングにおける変圧器からの出力電流が所定の許容範囲内であるか否かが判別される。
オフ・タイミングにおける変圧器からの出力電流が許容範囲内でなければ、許容範囲内となるまで、仮定した1周期を単位時間Tずつ短くして上記のオフ・タイミングの算出とこのオフ・タイミングにおける変圧器からの出力電流が所定の許容範囲内であるか否かの判別の処理が繰り返されて、PWM信号の1周期の期間とその1周期におけるオフ・タイミングが決定される。
そして、その後、オフ・タイミングと次のオン・タイミングの時刻になると、PWM信号のレベルがオフ・レベルとオン・レベルに交互に切り換えられてリアルタイムでPWM信号が生成される。
従って、本発明によれば、出力電流が許容範囲を超えないことを条件にPWM信号の周期が単位時間Tからそれを整数値mで整数倍した時間m・Tの間で変化するので、PWM信号の周期を固定した場合に比べてスイッチング素子の平均的なスイッチング回数を低減でき、これによりスイッチングロスを可能な限り低減することができる。
また、PWM信号の生成を演算処理により行っているので、制御回路をディジタル制御系で構成することができ、ヒステリシス方式よりもインバータ制御系における設計の汎用性、柔軟性を向上させることができる。
本発明に係るインバータ装置を図1乃至図9を用いて説明する。
図1は、本発明に係るインバータ装置の一実施形態の回路構成を示す図である。同図に示すインバータ装置1は、直流電力を商用電力系統に連系させて電力を供給する単相の系統連系インバータ装置である。
インバータ装置1は、直流電力を出力する直流電源2、この直流電源2から出力される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路3、このインバータ回路3内のスイッチング素子TR1〜TR4のオン・オフ動作を制御するインバータ制御部4、このインバータ回路3から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路5、このフィルタ回路5から出力される交流電圧を系統電圧に合わせて系統9に出力するための変圧器6、この変圧器6から出力される電流(以下、「出力電流」という。)を検出する出力電流検出器7及び系統9(インバータ装置1に対する負荷に相当)の電圧を検出する系統電圧検出器8を備えている。
直流電源2は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光電池211とこの太陽光電池211から出力される直流電圧Vdcを検出する電圧検出器212を備えている。なお、太陽光電池211の出力ラインに設けられたダイオードD1は、インバータ回路3側から太陽光電池211に電流が逆流するのを防止するためのものである。電圧検出器212により検出された直流電圧Vdcはインバータ制御部4に入力され、後述するPWM信号(インバータ回路3におけるスイッチング素子TR1〜TR4のオン・オフ動作を制御するための信号)を生成するために利用される。
インバータ回路3は、電圧制御型インバータ回路によって構成されている。すなわち、インバータ回路3は、4個のスイッチング素子TR1〜TR4がブリッジ接続されたものである。各スイッチング素子TR1,TR2,TR3,TR4にはそれぞれ帰還ダイオードD2,D3,D4,D5が並列に接続されている。スイッチング素子としては、例えば、バイポーラトランジスタ、電界効果形トランジスタ、サイリスタなどの半導体スイッチング素子が用いられ、図1は、トランジスタを用いた例を示している。
スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2の直列接続と、スイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4の直列接続の両端に直流電源2から出力される直流電圧Vdcが供給され、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2の接続点aと、スイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4の接続点bからインバータ回路3によって変換された交流電圧が出力される。
4個のスイッチング素子TR1〜TR4は、インバータ制御部4から出力されるPWM信号によってそれぞれオン・オフ動作が制御される。具体的には、インバータ制御部4からは相互に位相が反転した2つのPWM信号を1組として、パルス幅の異なる2組のPWM信号が出力される。一方の組のPWM信号をS11,S12とし、他方の組のPWM信号をS21,S22とすると、PWM信号S11,S12はそれぞれスイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2の制御端子(図1では、トランジスタのベース)に入力され、PWM信号S21,S22はそれぞれスイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4の制御端子(図1では、トランジスタのベース)に入力される。
スイッチング素子TR1〜TR4のオン(ON)状態を「導通状態」とし、オフ(OFF)状態を「遮断状態」とすると、インバータ回路3のスイッチング素子TR1及びスイッチング素子TR2の直列接続(以下、この回路部分を「第1アーム」という。)は、動作状態において、(TR1,TR2)=(ON,OFF)の状態と(TR1,TR2)=(OFF,ON)の状態とが交互に繰り返される。図1のブリッジ接続から明らかなように、(TR1,TR2)=(ON,OFF)の状態は、太陽光電池211から直流電力をインバータ回路3に供給する回路状態であり、(TR1,TR2)=(OFF,ON)の状態は、その直流電力のインバータ回路3への供給を遮断する回路状態である。
同様に、スイッチング素子TR3及びスイッチング素子TR4の直列接続(以下、この回路部分を「第2アーム」という。)も、動作状態において、(TR3,TR4)=(ON,OFF)の状態と(TR3,TR4)=(OFF,ON)の状態とが交互に繰り返される。(TR3,TR4)=(ON,OFF)の状態は、太陽光電池211から直流電力をインバータ回路3に供給する回路状態であり、(TR3,TR4)=(OFF,ON)の状態は、その直流電力のインバータ回路3への供給を遮断する回路状態である。
なお、PWM信号S11,S12とPWM信号S21,S22は、周期は変化するが、その周期は相互に同期して変化し、デューティ比だけが相互に異なる。例えば、ある周期において、PWM信号S11,S12のデューティ比がPWM信号S21,S22のデューティ比よりも大きい場合(PWM信号S11のON期間がPWM信号S21のON期間よりも長い場合)は、(TR1,TR2)=(ON,OFF)の回路状態が(TR3,TR4)=(ON,OFF)の回路状態よりも長くなるので、スイッチング素子TR1とスイッチング素子TR2の接続点aの電圧Vaはスイッチング素子TR3とスイッチング素子TR4の接続点bの電圧Vbよりも高くなり、例えば、接続点bを電圧の基準点(0V)とすると、インバータ回路3からは(Va−Vb)(>0)の電圧が出力されることになる。
一方、逆に、PWM信号S11,S12のデューティ比がPWM信号S21,S22のデューティ比よりも小さい場合は、(TR1,TR2)=(ON,OFF)の回路状態が(TR3,TR4)=(ON,OFF)の回路状態よりも短くなるので、接続点aの電圧Vaは接続点bの電圧Vbよりも低くなり、インバータ回路3からは(Va−Vb)(<0)の電圧が出力されることになる。
そして、PWM信号S11,S12のデューティ比とPWM信号S21,S22のデューティ比は周期毎に連続的に変化するので、これによりインバータ回路3から出力され、フィルタ回路5を通過した電圧voutは正弦波状に変化することになる。
インバータ制御部4は、上記のように、第1アーム及び第2アームに対応して2個のPWM信号生成部41,42を備え、これらのPWM信号生成部41,42で4個のPWM信号S11,S12,S21,S22を生成し、これらのPWM信号S11,S12,S21,S22によってインバータ回路3の直流−交流変換動作を制御する。インバータ制御部4は、主としてマイクロコンピュータによって構成されている。インバータ制御部4は、直流電源2から入力される直流電圧Vdc、出力電流検出器7から入力される出力電流および系統電圧検出器8から入力される系統電圧のデータを用いて、予め設定されたプログラムにより所定の演算処理を実行することによりPWM信号S11,S21のオン・タイミングとオフ・タイミングとを算出し、この算出結果に基づいてリアルタイムでレベルをハイレベルとローレベルとに切り換えることによりPWM信号S11,S21を生成する。また、インバータ制御部4は、これらのPWM信号S11,S21の位相を反転してPWM信号S12,S22を生成する。PWM信号S11又はPWM信号S21の生成方法については後述する。
フィルタ回路5は、2個のインダクタLF1,LF2を一対の出力ラインのそれぞれに直列接続し、出力側にキャパシタCFを並列接続してなるローパスフィルタで構成されている。図1では、フィルタ回路5を平衡回路で表しているので、同一のインダクタLF1,LF2がそれぞれ一対の出力ラインにそれぞれに直列接続された構成となっているが、不平衡回路で表した場合は、インダクタLF(=LF1+LF2)とキャパシタCFを逆L型に接続した回路となる。
インバータ回路3から出力される交流電圧には、PWM信号によるスイッチング素子TR1〜TR4のスイッチングノイズが含まれるので、そのスイッチングノイズを除去するために、フィルタ回路5のカットオフ周波数はPWM信号の最低周波数以下に設定されている。後述するように、本実施形態に係るPWM信号の周波数は基本となる周波数からその整数倍の周波数の範囲、例えば、2kHz〜8kHzの範囲で変化するので、フィルタ回路5のカットオフ周波数は、系統電圧の周波数(50Hzまたは60Hz)よりも大きく、例えば、2kHzよりも小さい適当な周波数に設定されている。
変圧器6は、フィルタ回路5から出力される交流電圧(正弦波電圧)を系統電圧とほぼ同一のレベルに昇圧または降圧する。出力電流検出器7は、変圧器6の一対の出力ラインの一方に設けられ、当該出力ラインに流れる交流電流(出力電流)を検出する。系統電圧検出器8は、変圧器6の一対の出力ラインの両端間に設けられ、当該出力ラインから出力される交流電圧(出力電圧)を検出する。なお、インバータ装置1の出力電圧は系統9の電圧とほぼ同一になるように制御されるので、系統電圧検出器8によって検出される電圧は、系統9の電圧とも言える。出力電流検出器7によって検出された出力電流と系統電圧検出器8によって検出された出力電圧はインバータ制御部4に入力され、PWM信号S11,S21を生成するために利用される。
次に、インバータ制御部4におけるPWM信号の生成方法について説明する。なお、以下の説明では、PWM信号S11について説明するが、同様の方法がPWM信号S21の生成にも適用される。
図15に示したヒステリシス方式のよるPWM信号の生成方法では、インバータ装置1の出力電流を検出し、その検出値が予め設定された許容範囲ΔIの上限値Iupを越えるタイミングをPWM信号のオフ・タイミングとし、許容範囲ΔIの下限値Idownを逸脱するタイミングをPWM信号のオン・タイミングとしてPWM信号の波形を生成している。
本実施形態に係るインバータ装置1では、PWM信号のオン・タイミングを予め設定された基準となる時間(本発明の単位時間)T(例えば、0.17ms)若しくはそれ整数倍した時間m・T(例えば、m=3とすると、0.51ms)で発生させ、これらの時間T〜m・Tを1周期と仮定して各周期におけるオフ・タイミングを所定の演算式により演算し、この演算結果に基づいて1周期の長さとその1周期におけるオフ・タイミングを決定した後、レベルをハイレベルとローレベルとに交互に切り換えることによりPWM信号をリアルタイムで生成するようにしている。すなわち、PWM信号の各周期の長さとその周期におけるオフ・タイミングを演算によって求め、その演算結果に従ってレベルをリアルタイムでハイレベルとローレベルとに切り換えることによりPWM信号を生成するようにしている。
本実施形態に係るインバータ装置1では、詳細は後述するが、演算によって算出されるオフ・タイミングが1周期分のTの間で求められる場合もあれば、それ以上のm周期分のm・Tの間で求められる場合もあるので、PWM信号の各周期の長さはTからm・Tの間で変化し、これによりPWM信号の周期を固定した場合に比べてスイッチング素子TR1〜TR4の平均的なスイッチング回数を低減できるようになっている。
また、PWM信号の生成を主として演算処理により行っているので、インバータ制御部4をディジタル制御系で構成することができ、ヒステリシス方式よりもインバータ制御系における設計の汎用性、柔軟性を向上させることができる利点がある。
まず、各周期におけるオフ・タイミングを求める演算式について説明する。
現代制御理論においては、制御対象の数式モデルとその数式モデルの入出力関係を求め、動作状態における方程式(状態方程式)を導き、この状態方程式を解くことにより制御対象の動作特性を解析する各種の手法が研究されている。
そして、制御対象が下記(1),(2)の微分状態方程式で表される1入力1出力システムの場合、状態変数xc(t)、出力yc(t)の解は下記(3),(4)式で表されることが知られている。
なお、上記(3),(4)式は連続時間システムにおける解を与える式であるが、上記(1),(2)式の連続時間システムを適切な手法により離散化することで下記(5),(6)式の離散時間システムの状態方程式を得ることができる。そして、下記(5),(6)式の一般解は、下記(7),(8)式のようになる。従って、下記(7),(8)式を用いれば、コンピュータによって解を求めることができる。すなわち、入力条件を設定すれば、その入力条件に対応する出力波形を得ることができる。なお、(5),(6),(7),(8)式は時間軸をサンプリング間隔Δtで正規化した式である。
本実施形態においては、図1に示すインバータ装置1に、上記の1入力1出力システムにおける動作特性の解析手法を適用して出力電流の変化を推定し、この出力電流の変化が制御目標値の許容範囲内となるようなPWM信号のオフ・タイミングを算出するようにしている。
図2は、図1に示すインバータ装置1の数式モデルを示す回路図である。なお、図2では、数式モデルの回路を不平衡回路で表している。
上述したように、インバータ回路3は、第1アームによってフィルタ回路5から系統9の回路に直流電圧Vdcを供給する状態(以下、「直流電圧供給状態」という。)とその直流電圧Vdcの供給を遮断する状態(以下、「直流電圧遮断状態」という。)とが繰り返されるとともに、第2アームによる直流電圧供給状態と直流電圧遮断状態とが繰り返されるように制御される。
動作状態の変化の観点から見れば、第1アームに接続されるフィルタ回路5乃至系統9の回路と第2アームに接続されるフィルタ回路5乃至系統9の回路とは同一であるから、インバータ装置1の数式モデルとしては、いずれか一方の回路を数式モデルとし、その数式モデルから状態微分方程式を作成すれば足りる。そこで、図2では、第1アームに接続されるフィルタ回路5乃至系統9の回路を数式モデルとして示している。
図2において、インダクタLF及び抵抗RFとキャパシタCFを逆L型接続した部分は、フィルタ回路5を等価回路で表したものであり、インダクタLT及び抵抗RTは変圧器6を等価回路で表したものである。フィルタ回路5から系統9までの回路は線形の回路素子で構成された等価回路で表されるので、この回路は線形モデルとして扱うことができる。
しかしながら、スイッチング素子TR1及びスイッチング素子TR2の直列接続である第1アームは、(TR1,TR2)=(ON,OFF)、(TR1,TR2)=(OFF,ON)によって回路状態が不連続に切り換わるから、この部分は非線形モデルとなる。従って、図2に示す数式モデルは全体として線形モデルと非線形モデルの混合モデルである。
このような混合モデルでは、上記(7),(8)式を用いて出力電流の連続的な変化、すなわち、スイッチング制御によって生成される出力電流の波形を推定することはできない。従って、この出力電流の推定波形から出力電流を許容範囲内に収めるために適したオン/オフのタイミングを求めることもできない。
その一方、直流電圧供給状態の期間(以下、「直流電圧供給期間」という。)においては、インバータ装置1の回路状態は図3に示すようになるので、その回路状態から状態方程式を作成すると、下記(9),(10)式のようになる。従って、その直流電圧供給期間の開始時刻t0の出力電流I(t0)を初期値として下記(9),(10)式の状態方程式を解くことにより当該直流電圧供給期間における出力電流I(t0+Δt)(Δt:サンプリング間隔)を推定することができる。
なお、上記(10)式から明らかように、y(t)=x1(t)であるから、本実施形態に係るインバータ装置1では、上記(9)式の状態方程式から状態変数x1(t)の解を求ればよい。すなわち、直流電圧供給期間における出力電流は、その直流電圧供給期間の開始時刻t0の出力電流I(t0)を初期値とし、上記(7),(8)式によりy(k)=x1(k)を演算することにより算出される。具体的には、時刻t0でインバータ装置1から出力される出力電流I(t0)を検出し、その検出値I(t0)をx(k0)として上記(7)式により状態変数x1(k)を演算することにより出力電流I(k)が求められる。
また、直流電圧遮断状態の期間(以下、「直流電圧遮断期間」という。)においては、インバータ装置1の回路状態は、図3において入出力を零の状態とした線形モデルとなるので、直流電圧遮断期間における状態方程式は、上記(9)式に零の入出力条件、すなわちv=vi=0を入れたものとなる。従って、直流電圧遮断期間における出力電流の初期値が分かれば、その状態方程式から状態変数x1(k)の解を求めることによりこの直流電圧遮断期間においても出力電流を推定することができる。
そこで、本実施形態では、PWM信号の1周期が直流電圧供給期間(オン期間)と直流電圧遮断期間(オフ期間)の組み合わせによって構成され、両期間における出力電流の波形は図4に示すように変化すると考えられることから、1周期T(ON−ON期間)を適当に設定し、その1周期における直流電圧供給状態での出力電流の波形(図4の実線部分の波形)と出力電圧遮断状態での出力電流の波形(図4の破線部分の波形)を推定し、両波形の交差する時刻tbをオフ・タイミングの時刻として算出するようにしている。
具体的には、1周期の最初のオン・タイミングの時刻taにおいて出力電流を検出し、その検出値Id(ta)を初期値(図4の出力電流「Ia」参照)として時刻taから次のオン・タイミングの時刻tcに向かう時間方向(以下、「順時間方向」という。)に上記(7)式を演算することにより直流電圧供給状態での出力電流の波形を算出している。
一方、直流電圧供給状態での出力電流の波形は、1周期中の任意のタイミングでPWM信号をオフに切り換えた場合に実現される波形であるから、時刻taにおける初期値を設定することができず、上記(5)式によっては算出することはできない。そこで、1周期中の任意のタイミングでPWM信号をオフに切り換えた場合、時刻tcにおいて直流電圧供給状態での出力電流は制御目標値Io(tc) (図4の「Ic」参照)に制御されると仮定し、その制御目標値Io(tc)を初期値として時刻tcから時刻taに向かう方向(以下、「逆時間方向」という。)に、上記(5)式を演算することにより直流電圧供給状態での出力電流の波形を算出している。
なお、直流電圧遮断状態と仮定した場合のオン・タイミングの時刻taからオン・タイミングの時刻tcにおける出力電流の波形の演算式は、以下のようにして求めることができる。
すなわち、上記(1)式において、s=T−tにより変数tを変数sに置換すると、
となる。Tを固定値とし、Xc(s)=xc(T−s)、Uc(s)=uc(T−s)とすると、上記(11)式は、下記(12)式となる。
上記(1)式と上記(12)式を比較すれば、係数ベクトルA,Bがそれぞれ−Aと−Bに異なるのみで、両状態方程式は基本的に同一である。従って、上記(7)式に対応する式は、下記(13)式となり、上記(8)式に対応する式は、下記(14)式となる。
上記(13)式は、s=T−tであるから、時刻Tを基準に時間tを−方向(未来から現在の方向に遡る方向)に変化させて出力状態を求める式である。そして、Xc(T)は、時刻Tにおける値であり、時間tを逆方向に変化させて出力状態を求める際の初期値に相当する。従って、オン・タイミングの時刻tcにおける出力電流を設定し、上記(14)式によりX(k)を演算すれば、直流電圧遮断状態と仮定した場合の出力電流の波形が、時刻tcから時刻taに向けて逆時間方向に算出される。
上記のように、本実施形態では、スイッチング制御により出力電流を制御目標値(より正確には目標波形)に制御するものであるから、未来のオン・タイミングの時刻tcにおける出力電流は制御目標値Io(tc)に制御されているものと仮定して当該制御目標値Io(tc)を初期値に設定し、時刻taから時刻tcにおける出力電流の波形を演算により求めるようにしている。
上述したオフ・タイミングの演算方法は、時刻taでPWM信号をハイレベルに切り換えて直流電圧供給状態に切り換えると、時刻taにおける出力電流を検出し、その検出値Id(ta)を初期値として上記(5),(6)式により時刻ta−tcの期間における出力電流I(ta+t)を順時間方向に演算する第1の演算(直流電圧供給状態の出力電流推定演算)と、時刻tcにおける出力電流の制御目標値Io(tc)を設定し、その制御目標値Io(tc)を初期値として時刻ta−tcの期間における出力電流I(tc-t)を逆時間方向に演算する第2の演算(直流電圧遮断状態の出力電流推定演算)とを組み合わせ、出力電流I(ta+t)と出力電流I(tc-t)とが交差する時刻tbを求める点に特徴がある。
すなわち、インバータ装置1で1回のスイッチング動作を行わせた場合、回路状態は直流電圧供給状態と直流電圧遮断状態とに切り換わるから、1回のスイッチング動作期間がそれぞれ直流電圧供給期間と直流電圧遮断期間であると仮定した場合の出力電流波形を求め、両出力電流波形の交差する時刻を求めることにより、1回のスイッチング動作期間のうちの直流電圧供給期間と直流電圧遮断期間(すなわち、デューティ比)を求めるというものである。
次に、PWM信号の周期を変化させる方法について説明する。
上述したオフ・タイミングの演算方法は、PWM信号の1周期におけるオフ・タイミングを求めるものである。従って、PWM信号の1周期を長くするように変化させなければ、インバータ回路3におけるスイッチング回数を低減することはできない。
そこで、本実施形態では、オフ・タイミングの演算方法で用いる1周期Tを変化させて各周期におけるオフ・タイミングの時刻tbを求め、その時刻tbにおける出力電流の推定値I(tb)が許容範囲ΔIの上限値Iupまたは下限値Idownに最も近くなる周期Tを採用するようにしている。
具体的には、図5に示す方法によってPWM信号の各周期を決定するようにしている。
図5は、1周期の長さを変えながら各周期におけるオフ・タイミングを演算によって求め、その演算結果に基づいてPWM信号を生成する方法を説明するための図である。具体的には、図5は、縦軸に出力電流Iを取り、横軸に時間tに取って演算によって求められる出力電流の推定値の波形図を描くとともに、その波形図の下部に出力電流の推定値から生成されるPWM信号の波形を描いたものである。
同図において、TはPWM信号のオフ・タイミングを演算するために予め設定された1周期である。t0,t1,t2,t3,…は、周期TのPWM信号によってインバータ回路3のスイッチング動作を制御した場合、オン・タイミング(直流電圧供給期間の開始タイミング)となる時刻である。実線の波形Aは、インバータ装置1から出力される出力電流の制御目標値Ioの波形、点線の波形AU,ADはそれぞれ出力電流の許容範囲ΔIの上限値Iupの波形と下限値Idownの波形である。
本実施形態では、PWM信号がオンになると、周期Tを予め設定した整数mで整数倍した周期m・Tの期間におけるオフ・タイミングを、上述した演算方法により演算する。例えば、整数mが「4」に設定されている場合、図5において、時刻t0でPWM信号がハイレベルに切り換えられたとすると、時刻t0から時刻t4(=t0+m・T)の期間のオフ・タイミングの時刻tb4が演算により算出される。
オフ・タイミングの時刻tb4の演算は、上述したように、先ず、時刻t0におけるインバータ装置1の出力電流を検出し(図5では、検出値を「I0」で示し、制御目標値を「I0c」で示す。)、この検出値I0を初期値として直流電圧供給状態における出力電流を順時間方向に演算して出力電流波形N0を求める。次に、時刻t4におけるインバータ装置1の出力電流の制御目標値(図5では、「I4c」で示す。)を設定し、この制御目標値I4cを初期値として直流電圧遮断状態における出力電流を逆時間方向に演算して出力電流波形M4を求める。以下、順時間方向の演算により求められる出力電流の波形を「第1出力電流波形」といい、逆順時間方向の演算により求められる出力電流の波形を「第2出力電流波形」という。
そして、第1出力電流波形N0と第2出力電流波形M4の交点の時刻(図5では「tb4」で示す)を求め、この時刻tb4における出力電流の推定値(図5では、「Ib4」で示す。)を求め、この出力電流の推定値Ib4が時刻tb4における許容範囲ΔIを逸脱するか否か(図5では、上限値Iupを超えるか否か)を判別する。
なお、第1出力電流波形N0及び第2出力電流波形M4は、図6に示すように、サンプリング間隔Δt(≪T)によって離散的に演算されるので、通常、交点の時刻tb4はサンプリング時刻に一致せず、正確な交点の時刻tb4を求めることはできない。しかしながら、サンプリング間隔Δtは極めて小さく、オフ・タイミングの時刻tb4がサンプリング間隔Δt内でずれたとしてもインバータ装置1の出力電流を許容範囲内に制御することに特に影響はしない。また、PWM信号の1周期の長さが変化しても各1周期ではインバータ回路3のオン・オフのスイッチング動作は1回しか行われないから、各周期におけるオフ・タイミングのずれは、PWM信号の周期の変化に基づくインバータ回路3のスイッチング回数の低減効果に直接的に影響するものでもない。
このため、本実施形態では、交点の時刻tb4に隣接するサンプリング時刻(図6では、「tb4′」又は「tb4″」で示す。)を交点の時刻tb4として扱っている。より具体的には、サンプリング時刻tb4′における第1出力電流波形N0の値I(tb4′)+と第2出力電流波形M4の値I(tb4′)-の差ΔE(tb4′)=|I(tb4′)+−I(tb4′)-|と、サンプリング時刻tb4″における第1出力電流波形N0の値I(tb4″)+と第2出力電流波形M4の値I(tb4″)-の差ΔE(tb4″)=|I(tb4″)+−I(tb4″)-|を求め、差ΔEの小さい方のサンプリング時刻(図6では、「tb4′」)を交点の時刻tb4としている。
なお、下記(15)式に示す評価関数H(k)によって最適のサンプリング値kを求めるようにしても良い。評価関数H(k)におけるI(0)、d、I(M)は、図7に示す関係にあり、I(0)は第1出力電流波形Nの演算における初期値、I(M)は第2出力電流波形Mの演算における初期値、dは第1出力電流波形Nと第2出力電流波形Mの交差する時刻である。評価関数H(k)は、第1出力電流波形Nと第2出力電流波形Mとの誤差を評価するもので、評価関数H(k)が最小となるサンプリング値kに対応する時刻k・Δtをオフ・タイミングの時刻とするものである。
図5に戻り、同図では、出力電流の推定値Ib4が時刻tb4における許容範囲ΔIを逸脱するので、周期を(m−1)・T=3Tに変更して、上記の同様の方法によりオフ・タイミングの時刻の演算と、その時刻における出力電流が許容範囲を逸脱するか否かの判別を行う。すなわち、時刻t3におけるインバータ装置1の出力電流の制御目標値(図5では、「I3c」で示す。)を設定し、この制御目標値I3cを初期値として直流電圧遮断状態における出力電流を逆時間方向に演算して第2出力電流波形M3を求める。そして、第2出力電流波形M4の場合と同様に、この第2出力電流波形M3と第1出力電流波形N0の交点の時刻tb3を求めるとともに、この時刻tb3における出力電流値(図5では、「Ib3」で示す。)を求め、更にこの出力電流値Ib3が時刻tb3における許容範囲ΔIを逸脱するか否か(図5では、上限値Iupを超えるか否か)を判別する。
そして、以下、周期をTずつ狭くしながら同様の方法を出力電流の推定値が許容範囲ΔIを逸脱しなくなるまで繰り返す。図5の例では、周期を2Tまで狭くすると、第2出力電流波形M2と第1出力電流波形N0の交点の時刻tb2における出力電流の推定値(図5では、「Ib2」で示す。)が時刻tb2における許容範囲ΔIの上限値Iupを逸脱しなくなるので、周期を2Tまで変化させてオフ・タイミングを求める演算が繰り返される。
そして、PWM信号の1周期が2Tに設定され、すなわち、次の周期のオン・タイミングの時刻がt2(=t0+2T)に設定され、この周期におけるオフ・タイミングの時刻がtb2に設定される。この演算処理は、時刻t2,tb2が経過する前に行われるので、インバータ制御部4からインバータ回路3に出力されるPWM信号は、時刻t0でハイレベルに切り換えられた後、この状態が保持され、時刻tb2が経過すると、ローレベルに切り換えられる。そして、時刻t2になると、再度ハイレベルに切り換えられ、上述した演算処理と同様の演算処理が行われて次の1周期の期間とその期間におけるオフ・タイミングの時刻が設定される。以下、この演算処理を繰り返すことによりPWM信号は1周期毎に期間とデューティ比を設定しながら、その波形が生成されてインバータ回路3に出力される。
なお、図5では、2周期分のPWM信号の波形を例示しているが、この例では、両周期とも2Tとなっている。また、最初の1周期では時刻t1と時刻t2の間の時刻tb2がオフ・タイミングの時刻となり、2番目の1周期では時刻t3と時刻t4の間の時刻tb2がオフ・タイミングの時刻となっている。また、上記の例では、PWM信号の周期は最大で4T(=0.51ms)、最小でT(=0.17ms)となるから、PWM信号の周波数は、2KHzから8kHzの範囲で変動することになる。
図8は、インバータ制御部4のPWM信号生成機能を示すブロック図である。
インバータ制御部4は、PWM信号を生成するための機能ブロックとして、Ip設定部401、周期検出部402、ゼロ位相検出部403、出力電流目標値演算部404、第1出力電流波形演算部405、第2出力電流波形演算部406、出力電流検出値設定部407、オフ・タイミング演算部408、オン・タイミング設定部409、オフ・タイミング設定部410、計時部411及びパルス信号生成部412を備えている。
Ip設定部401は、インバータ装置1の出力可能な電流の振幅Ipを設定するものである。Ip設定部401には電圧検出器212により検出された太陽光電池211の出力電圧信号(アナログ信号)が入力される。Ip設定部401は、A/D変換器を有し、このA/D変換器で太陽光電池211の出力電圧信号を出力電圧データ(ディジタル信号)にA/D変換した後、その出力電圧データと予め設定された太陽光電池211の出力電力データとから出力電流の振幅Ipを算出する。この出力電流の振幅Ipは出力電流目標値演算部404に入力され、インバータ回路3による出力電流の制御目標値の演算に利用される。
周期検出部402は、系統9の交流電圧信号の周期を検出するものである。周期検出部402には系統電圧検出器8により検出されたインバータ装置1の出力電圧信号(系統9の交流電圧信号、アナログ信号)が入力される。周期検出部402は、A/D変換器を有し、このA/D変換器で系統9の交流電圧信号を交流電圧データ(ディジタル信号)に変換した後、系統9の交流電圧がゼロになるタイミング(以下、「ゼロクロスタイミング」という。)を検出する。また、周期検出部402は、カウンタを有し、ゼロクロスタイミングを検出すると、次のゼロクロスタイミングを検出するまでそのカウンタにより時間を計時し、その計時結果を2倍することにより系統9の交流電圧信号の周期を検出する。なお、ゼロクロスタイミングを検出してから2つ目のゼロクロスタイミングを検出するまでカウンタにより時間を計時し、その計時結果を系統9の交流電圧信号の周期としても良い。
周期検出部402により系統9の交流電圧信号の周期を検出するのは、インバータ装置1の変圧器6から出力される交流電流信号の位相を系統9の交流電圧信号に合わせ、インバータ装置1から力率1での電力供給を可能にするためである。周期検出部402により検出された系統9の交流電圧信号の周期は出力電流目標値演算部404に入力され、インバータ装置1の出力電流の制御目標値の演算に利用される。
ゼロ位相検出部403は、系統9の交流電圧信号の位相がゼロとなるタイミング(以下、「ゼロ位相タイミング」という。)を検出するものである。ゼロ位相検出部403にも系統電圧検出器8により検出された系統9の交流電圧信号が入力される。ゼロ位相検出部403は、微分器とA/D変換器を有し、微分器により交流電圧信号の微分信号を生成した後、この微分信号をA/D変換器により微分データ(ディジタル信号)に変換し、その微分データのピーク値のタイミングを検出することによってゼロ位相タイミングを検出する。
ゼロ位相タイミングは、出力電流検出値設定部407に入力され、当該出力電流検出値設定部407による、出力電流検出器7により検出される出力電流の第2出力電流波形演算部406への入力の制御に利用される。また、ゼロ位相タイミングは、計時部411に入力され、当該計時部411によるPWM信号のオン期間計時の開始タイミングとして利用される。
出力電流目標値演算部404は、インバータ装置1の出力電流の制御目標値を演算するものである。インバータ装置1から出力される交流電流には系統9の交流電圧に対して力率が1となるように制御されることが要求されるので、交流電圧をA・sin(2πft)=A・sin(2πt/T)(但し、T=1/f)とすると、任意の時刻tの制御目標値Io(t)は、B・sin(2πt/T)となる。出力電流目標値演算部404にはIp設定部401から目標波形の振幅Bに対応する振幅Ipのデータが入力され、周期検出部402から周期Tのデータが入力されるので、出力電流目標値演算部404は、これらのデータを用いてIp・sin(2πt/T)を演算することにより、所定の時刻tの出力電流の制御目標値Io(t)を演算する。この出力電流の制御目標値Io(t)は、第1出力電流波形演算部405に入力される。
なお、所定の時刻tとは、上述したPWM信号の生成方法における逆時間方向の演算により出力電流波形を求める際のオン・タイミングである。図5の例では、時刻t0のオン・タイミングでその1周期におけるオフ・タイミングを求める場合、t4(=t0+4T),t3(=t0+3T),t2(=t0+2T),t1(=t0+T)の各時刻における出力電流の制御目標値が必要となるので、それらの時刻が所定の時刻となる。出力電流目標値演算部404には計時部411により計時されるオン・タイミングの時刻が入力される。このオン・タイミングの時刻は、図5における時刻t0に相当するものである。従って、出力電流目標値演算部404は、計時部411から時刻t0が入力されると、その時刻t0から4T,3T,2T,Tが経過した時刻t4,t3,t2,t1を演算し、それらの時刻における出力電流の制御目標値Io(t4),Io(t3),Io(t2),Io(t1)を演算し、第2出力電流波形演算部406に出力する。
第1出力電流波形演算部405は、出力電流検出器7により検出された出力電流を初期値として第1出力電流波形N0を演算するものである。第1出力電流波形演算部405には、計時部411によりオン・タイミングが計時されると、出力電流検出値設定部407から出力電流検出器7によって検出されたインバータ装置1の出力電流Idが入力される。第1出力電流波形演算部405は、この出力電流の検出値Idを用いて、上記(7)式により第1出力電流波形N0を演算する。すなわち、図5の例では、計時部411により時刻t0が計時されると、出力電流検出値設定部407から出力電流の検出値Id(t0)が入力されるので、第1出力電流波形演算部405はこの検出値Id(t0)を初期値として第1出力電流波形N0を演算する。
第2出力電流波形演算部406は、出力電流目標値演算部404から入力される出力電流の制御目標値Ioを初期値として第2出力電流波形M1〜M4を演算するものである。すなわち、第2出力電流波形演算部406は、図5の例では、出力電流目標値演算部404から入力される、時刻t4,t3,t2,t1における出力電流の制御目標値Io(t4),Io(t3),Io(t2),Io(t1)(図5では、I4c,I3c,I2c,I1cで示す。)を初期値として第2出力電流波形M4,M3,M2,M1を演算する。
なお、第1出力電流波形N0及び第2出力電流波形M1〜M4を構成する出力電流のサンプリング値は、サンプリング間隔Δtで正規化した式I(k)によって表されるが、以下の説明では、第1出力電流波形N0と第2出力電流波形M1〜M4を区別するため、第1出力電流波形N0を構成する電流値をI(k)+で表し、第2出力電流波形M1〜M4を構成する電流値をI(k)-で表すことにする。
また、例えば、図5を例にとると、順時間方向の演算プロセスではサンプリング位置kは時刻t0から右方向に移動し、逆時間方向の演算プロセスではサンプリング位置kは時刻t4から左方向に移動するので、kが同一であってもサンプリング位置は異なるが、以下では、演算結果としてのI(k)+とI(k)-におけるサンプリング位置kは、同一のサンプリング位置を表しているものとして説明する。
出力電流検出値設定部407は、出力電流検出器7により検出されるインバータ装置1の出力電流の検出値Idの第1出力電流波形演算部405への入力を制御するものである。出力電流検出値設定部407には、ゼロ位相検出部403により検出されるゼロ位相タイミングと、計時部411により計時されるPWM信号のオン・タイミングが入力される。出力電流検出値設定部407は、ゼロ位相タイミング及びPWM信号のオン・タイミングが入力されると、出力電流検出器7の出力電流検出値Idを第1出力電流波形演算部405に入力する。
オフ・タイミング演算部408は、第1出力電流波形演算部405により演算された第1出力電流波形I(k)+と第2出力電流波形演算部406により演算された第2出力電流波形I(k)-が交差する時刻tb(オフ・タイミング)を演算し、その時刻tbをオフ・タイミングとするか否かを判定し、その判定結果をオン・タイミング設定部409とオフ・タイミング設定部410に出力するものである。オフ・タイミング演算部408は、第1出力電流波形演算部405から入力される第1出力電流波形I(k)+と第2出力電流波形演算部406から入力される第2出力電流波形I(k)-の差ΔE(k)=|I(k)+−I(k)-|を演算するΔE(k)演算部408aと、差ΔE(k)=|I(k)+−I(k)-|が最小となるサンプリング値kminを算出するkmin演算部408bと、kmin演算部408bで算出されたサンプリング値kminに対応する時刻をオフ・タイミングの時刻tbとするか否かを判定するオフ・タイミング判定部408cを有している。
例えば、図5,図6の例では、第1出力電流波形N0を構成する電流値をI(k)+とし、第2出力電流波形M4を構成する出力電流値をI(k)4-とすると、ΔE(k)演算部408aはΔE(k)4=|I(k)+−I(k)4-|を演算する。なお、以下の説明では、第2出力電流波形Mmを構成する出力電流値をI(k)m-、差分|I(k)+−I(k)m-|をΔE(k)mで表記するものとする。kmin演算部408bはこのΔE(k)4をソート処理してΔE(k)4が最小となるサンプリング値kminを算出し、そのサンプリング値kminにサンプリング間隔Δtを乗じて第1出力電流波形N0と第2出力電流波形M4の交差する時刻tb4を算出する。オフ・タイミング判定部408cは、時刻tb4の出力電流I(tb4)+と出力電流I(tb4)4-のうち、大きい方の出力電流を時刻tb4における制御目標値の上限値I(tb4)upと比較し、出力電流が制御目標値の上限値I(tb4)upよりも小さければ、時刻tb4をオフ・タイミングの時刻と判定する。
図6では、I(tb4)+>I(tb4)4-であるので、出力電流I(tb4)+が制御目標値の上限値I(tb4)upと比較されるが、図5では、I(tb4)+>I(tb4)upであるので、時刻tb4はオフ・タイミングの時刻ではないと判定される。オフ・タイミング判定部408cはオフ・タイミングでないと判定すると、その判定結果を出力電流目標値演算部404と第2出力電流波形演算部406に出力する。出力電流目標値演算部404及び第2出力電流波形演算部406は、この判定結果に基づき次の第2出力電流波形M3を構成する電流値I(k)3-を算出し、この出力電流値I(k)3-をオフ・タイミング演算部408に入力する。
従って、出力電流目標値演算部404、第1出力電流波形演算部405、第2出力電流波形演算部406及びオフ・タイミング演算部408では、オフ・タイミングの時刻tbが決定されるまで、周期を4TからTまでTずつ変化させながら第1出力電流波形N0と第2出力電流波形Mmを演算し、両出力電流波形N0,Mmの交点の時刻tbmを算出する処理が行われる。
オン・タイミング設定部409は、次のオン・タイミングの時刻tcを設定するものであり、オフ・タイミング設定部410は、オフ・タイミングの時刻tbを設定するものである。オフ・タイミング判定部408cにより時刻tbがオフ・タイミングの時刻であると判定されると、その判定結果がオン・タイミング設定部409とオフ・タイミング設定部410に入力される。
オン・タイミング設定部409は、時刻t0と時刻tbの演算で設定された周期m・Tから次の周期の開始時刻(t0+m・T)を演算し、オン・タイミングの時刻tcを設定する。図5の例では、時刻tb2がオフ・タイミングの時刻であると判定されるので、オン・タイミング設定部409は、t2=(t0+2・T)を次のオン・タイミングの時刻tcに設定する。この時刻t2は、第1出力電流波形演算部405と計時部411に入力される。
オフ・タイミング設定部410は、オフ・タイミング演算部408から入力される時刻をオフ・タイミングの時刻tbとして設定する。図5の例では、時刻tb2がオフ・タイミングの時刻tbに設定される。この時刻tb2は、計時部411に入力される。
計時部411は、オン・タイミング設定部409から入力されるオン・タイミングの時刻tcとオフ・タイミング設定部410から入力されるオフ・タイミングの時刻tbを計時する。計時部411は、ゼロ位相検出部403からゼロ位相タイミングの検出信号が入力されると、カウント値をリセットし、計時を開始する。計時部411は、オフ・タイミング設定部410から入力されるオフ・タイミングの時刻tbを計時する毎に、その計時信号をパルス信号生成部412に出力する。また、計時部411は、リセット信号とオン・タイミング設定部409から入力されるオン・タイミングの時刻tcを計時する毎にその計時信号を出力電流検出値設定部407とパルス信号生成部412に出力する。
パルス信号生成部412は、計時部411からリセット信号とオン・タイミングの計時信号が入力されると、レベルをハイレベルに切り換え、計時部411からオフ・タイミングの計時信号が入力されると、レベルをローレベルに切り換えることによりパルス信号を生成する。このパルス信号は、PWM信号S11としてインバータ回路3のスイッチング素子TR1に出力される。また、そのパルス信号をインバータ回路(図略)により反転してインバータ回路3のスイッチング素子TR2に出力される。
次に、インバータ制御部4におけるPWM信号の生成手順を、図9のフローチャートを用いて説明する。なお、以下の説明では、PWM信号S11を例に説明する。
図9に示すフローチャートは、実際の時間経過におけるインバータ制御部4でのPWM信号の生成処理を示している。
PWM信号S11をハイレベルにすべき時刻(オン・タイミングの時刻)t0になると(S1:YES)、PWM信号S11がハイレベル(ON状態)に設定され(S2)、時刻t0におけるインバータ装置1の出力電流の検出値Id(t0)が第1出力電流波形N0の演算のために初期値として設定され、メモリ(インバータ制御部4内の演算処理用のメモリ、以下、「演算用メモリ」という。)に保存される(S3)。
続いて、PWM信号の周期の長さを決定するための整数mが「4」に設定され(S4)、次のオン・タイミングの時刻t4(=t0+m・T)(なお、現在時刻ではt0=0となるので、t4=4T)におけるインバータ装置1の出力電流の制御目標値Io(tm)(1回目はm=4であるので、Io(t4))が演算され、第2出力電流波形M4の演算のために初期値として設定され、演算処理用メモリに保存される(S5)。
続いて、初期値Id(t0)と上記(7)式の演算式を用いて第1出力電流波形N0を構成する電流値I(k)+が演算され、演算処理用メモリに保存され(S6)、更に、初期値Io(tm)と上記(14)式を用いて第2出力電流波形Mm(1回目はm=4であるので、M4)を構成する電流値I(k)m-が演算され、演算処理用メモリに保存される(S7)。
続いて、第1出力電流波形N0を構成する電流値I(k)+と第2出力電流波形Mmを構成する電流値I(k)m-の差ΔE(k)m=|I(k)+−I(k)m-|が演算され(S8)、この演算結果をソート処理してΔE(k)が最小となるサンプリング値kminが求められる(S9)。更に、そのサンプリング時刻tbm(=t0+kmin・Δt)(Δtはサンプリング間隔。t0=0であるので、tbm=kmin・Δt)における出力電流の制御目標値の上限値I(tbm)upが演算され、演算処理用のメモリに保存される(S10)。1回目のときは、差ΔE(k)4=|I(k)+−I(k)4-|が演算され、この演算結果をソート処理してΔE(k)4が最小となるサンプリング値kminが求められる。更に、tb4=kmin・Δtにおける出力電流の制御目標値の上限値I(tb4)upが演算され、演算処理用のメモリに保存される。
続いて、サンプリング時刻tbmにおける第1出力電流波形N0の電流値I(tbm)+と第2出力電流波形Mmの電流値I(tbm)m-が比較され(S11)、I(tbm)+ ≧I(tbm)m-であれば(S11:YES)、第2出力電流波形Mmの電流値I(tbm)m-が制御目標値の上限値I(tbm)upを逸脱するか否かが判別され(S12)、I(tbm)+<I(tbm)m-であれば(S11:NO)、第1出力電流波形N0の電流値I(tbm)+が制御目標値の上限値I(tbm)upを逸脱するか否かが判別される(S13)。1回目のときは、第1出力電流波形N0の電流値I(tb4)+と第2出力電流波形M4の電流値I(tb4)4-が比較され、I(tb4)+ ≧I(tb4)4-であれば、第2出力電流波形M4の電流値I(tb4)4-が制御目標値の上限値I(tb4)upを逸脱するか否かが判別され、I(tb4)+<I(tb4)4-であれば、第1出力電流波形N0の電流値I(tb4)+が制御目標値の上限値I(tb4)upを逸脱するか否かが判別される。
ステップS12でI(tbm)m->I(tbm)upまたはステップS13でI(tbm)+>I(tbm)upであれば、整数mが「1」だけ減少され(S14)、ステップS5に戻り、時刻t0から時刻t(m-1)について、ステップ5〜S13の演算処理が行われる。例えば、この演算処理が1回目の場合、m=3に変更され、時刻t0から時刻t3について、ステップS5〜S13の演算処理が行われる。
そして、mを「1」ずつ減少させながら、ステップS5〜S14の演算処理を繰り返し、いずれかの周期m・TのステップS12,S13の演算処理において、I(tbm)m-≦I(tbm)up(S12:NO)またはI(tbm)+≦I(tbm)up(S13:NO)であれば、サンプリング時刻tbm(=kmin・Δt)がオフ・タイミングの時刻tb(toff)に設定されるとともに、時刻tm(=m・T)が次のオン・タイミングの時刻tc(ton)に設定される(S15)。例えば、m=2、周期2Tの演算処理において、I(tb2)2-≦I(tb2)up(S12:NO)またはI(tb2)+≦I(tb2)up(S13:NO)であれば、サンプリング時刻tb2(=kmin・Δt)がオフ・タイミングの時刻tb(toff)に設定されるとともに、時刻t2(=2・T)が次のオン・タイミングの時刻tc(ton)に設定される(S15)。
そして、時刻tb(toff)が計時されると(S16:YES)、PWM信号S11がローレベル(OFF状態)に切り換えられ(S17)、ステップS1に戻り、時刻tc(ton)になると(S1:YES)、その時刻tb(toff)を「t0」として次の周期についてオフ・タイミング時刻の演算処理とPWM信号S11のレベル切換えの処理が行われる。
一方、mを1ずつ減少させながら、ステップS5〜S14,S18の演算処理を繰り返し、m=0になると(S18:YES)、オフ・タイミングの時刻tbが算出できなかったので、所定のエラー処理が行われ(S19)、PWM信号の生成処理を終了する。なお、所定のエラー処理とは、インバータ回路3へのPWM信号の出力を停止し、エラーが生じたことを、例えば表示や警報音などによってユーザに報知する処理である。
上記のように、本発明に係るインバータ装置1によれば、予め設定された周期TをPWM信号の各周期の基本周期とし、各周期のオフ・タイミングの時刻tbにおけるインバータ装置1の出力電流が許容範囲を逸脱しないことを条件にPWM信号の各周期の長さをT〜m・Tの範囲で設定するようにしているので、周期Tを比較的短く設定していると、mを大きく設定する必要があるので、オフ・タイミングの時刻tbを算出するまでの演算時間が長くなり、周期Tを比較的長く設定していると、オフ・タイミングの時刻tbが算出できなくなる可能性があるという不都合が考えられる。
従って、オフ・タイミングの時刻tbを演算するための周期Tは、実験やシミュレーションなどによって適当な値が設定されるが、インバータ装置1に周期Tを変更するための操作部材を設け、ユーザが適当な値に調整できるようにしてもよい。
また、図5の波形図から明らかなように、第1出力電流波形N0及び第2出力電流波形M1〜M4は、いずれも出力電流の制御目標値Ioの波形よりも上方に変化するので、オフ・タイミングの時刻tbにおける出力電流の推定値I(tb)は、出力電流の許容範囲の上限値I(tb)upと比較され、この上限値I(tb)upを超えないことを条件に時刻tbがオフ・タイミングの時刻に設定される。
出力電流の制御目標値Ioの波形Aが許容範囲ΔIの中心より下方向に偏差していれば、出力電流の推定値I(tb)と出力電流の許容範囲の上限値I(tb)upとの差が広くなり、推定値I(tb)が上限値I(tb)upを逸脱する時刻tbは、時刻t0より離れることになるから、PWM信号の各周期が長く設定され易くなる。図5は、出力電流が+側で変化している領域であるが、出力電流が−側で変化している領域では、出力電流の制御目標値Ioの波形Aが許容範囲ΔIの中心より上方向に偏差していれば、同様のことが言える。従って、出力電流の制御目標値Ioの波形Aは許容範囲ΔIの中心より偏差させた波形にすると良い。
例えば、図10に示すように、出力電流の制御目標値Ioの波形Aを振幅を「1」に正規化した波形として、sin(ωt)で表すと、制御目標値Ioの微分量A・cos(ωt+π)(1>A<−1)を偏差量とし、この偏差量を制御目標値Ioに加算した波形A・cos(ωt+π)+sin(ωt)を制御目標値Ioの許容範囲ΔIの上下限の波形にすると良い。
また、上記実施形態では、オフ・タイミングの時刻tbを求めるための演算手順として、最初にPWM信号の周期をm・Tに設定し、この周期m・T内でオフ・タイミングの時刻tbが設定できない場合は、PWM信号の周期を(m−1)・T、(m−2)・T、(m−3)・T、…と順番に狭くしながらオフ・タイミングの時刻tbを求めたが、最初にPWM信号の周期をTに設定し、この周期T内でオフ・タイミングの時刻tbが設定できた場合は、PWM信号の周期を2・T、3・T、4・T、…と順番に広くしながらオフ・タイミングの時刻tbを設定できなくなる周期m・Tを求め、この結果から周期(m−1)・Tで求めた時刻tbをオフ・タイミングの時刻とするようにしても良い。
ところで、上記実施形態の説明では、観測可能な出力電流を検出し、この検出値を初期値として出力電流の変化波形を求める場合を例に説明したが、(9)式の状態変数x2(インバータ回路3からフィルタ回路5に入力される電流),x3(キャパシタCFの電圧)の動作状態から第1出力電流波形N0や第2出力電流波形M1〜M4を求めることも可能である。
しかしながら、キャパシタCFはフィルタ回路5を構成する回路素子であるので、このキャパシタCFの電圧を直接検出することはできない。また、フィルタ回路5に入力される電流も直接検出することはできない。このため、観測不能な状態変数x2,x3の動作状態から第1出力電流波形N0や第2出力電流波形M1〜M4を求める場合は、一般に、状態変数x2,x3の動作状態を推定するためのオブザーバを設け、そのオブザーバによって推定される状態変数x2,x3の初期値を用いて図9に示す処理手順と同様の処理を実行することにより、PWM信号が生成される。
図11は、本実施形態に係るインバータ装置1に適したオブザーバの一例を示すブロック図である。
同図に示すオブザーバ10は、H∞制御を応用したオブザーバである。H∞制御は、周知のように閉ループ系の伝達関数の大きさをH∞ノルムで評価し、このH∞ノルムを小さくすることによって所望の設計値に制御する手法である。オブザーバ10は、フィルタ101、プラント102、加算器103、重み付け回路104及びコントローラ105により構成されている。コントローラ105に対してフィルタ101、プラント102、加算器103及び重み付け回路104の部分をプラントと考えると、コントローラ105は、このプラントにおける伝達関数の大きさを評価するH∞ノルムが小さくなるように設計されている。すなわち、コントローラ105は、系統電圧ωにノイズが混入した場合でも出力z(出力電流の制御目標値と実際の出力電流値との偏差)への影響がないように設計されている。
なお、図11において、系統電圧ωに含まれるノイズ成分として基本波成分と高調波成分のみを考慮すればよいので、フィルタ101は、例えばカットオフ周波数が600Hz程度のローパスフィルタとして設計される。これにより、コントローラ105の周波数帯域を600Hzまで制限することができるので、コントローラ105の高精度化が可能になっている。また、重み付け回路104は、応答速度を調整するためのものである。ユーザは、重み付け回路104の重みWを適当に設定することにより応答速度を所望の速度に調整することができる。
また、図11において、プラント102の入力uはインバータ装置1の出力電圧であり、プラント102からの出力x,yはそれぞれ状態変数と出力である。フィルタ101からの出力nはノイズ成分であり、プラント102からの出力iはインバータ装置1の出力電流である。
図11に示すオブザーバ10を用いた場合は、重み付け回路104からの出力z(k)が状態変数xc(k)の推定値として使用される。すなわち、出力z(k)を用いて図9に示すフローチャートを実行することにより第1出力電流波形N0と第2出力電流波形Mmが演算され、更に両出力電流波形N0,Mmの交点の時刻tbmが算出されるとともに、この時刻tbmをオフ・タイミングの時刻とするか否かの処理が行われる。具体的には、図9のステップS3において、出力電流の検出値Id(t0)に代えてオブザーバ10により推定される出力電流の推定値Is(t0)が設定され、この推定値Is(t0)を用いてステップS6で第1出力電流波形N0が算出される。他のステップの処理は上述したものと同じである。
図11に示すオブザーバ10を設けた場合は、出力電流の検出値Id(t0)を用いた第1出力電流波形N0と第2出力電流波形Mmからオフ・タイミングの時刻tbmを求める演算処理と、オブザーバ10により推定される出力電流の推定値Is(t0)を用いた第1出力電流波形N0'と第2出力電流波形Mm'からオフ・タイミングの時刻tbm'を求める演算処理が行われるので、例えば、演算結果の平均値を取ることによりオフ・タイミングの時刻tbmが決定される。
上記実施形態では説明の便宜上、単相の系統連系インバータ装置について説明したが、本発明を図12に示す三相のインバータ装置1′に適用することができることはいうまでもない。
なお、図12において、図1のインバータ装置1と同一の機能を果たす回路には同一の符号を付している。インバータ回路3には、第1,第2アームに加えてスイッチング素子TR5及びスイッチング素子TR6の直列接続からなる第3アームが設けられている。第1アーム、第2アーム及び第3アームの各接続点a,b,cからU相、V相、W相の出力電圧の出力ラインが出力されている。3本の出力ラインにはそれぞれインダクタLFが直列に接続されるとともに、各出力ライン間にキャパシタCFが接続されている。各出力ライン間のインダクタLFとキャパシタCFの逆L字型接続によりU相、V相、W相の各相の出力ラインのローパスフィルタが構成されている。従って、フィルタ回路5は、U相、V相、W相の各相に対応して3個のローパスフィルタを有している。
同様に、出力電流検出器7及び系統電圧検出器8もそれぞれ3個の検出器を備え、各検出器によりU相、V相、W相の出力電流と出力電圧を検出し、それらの検出値をインバータ制御部4に入力する。
また、インバータ制御部4は、第1アーム、第2アーム及び第3アームに対応して3個のPWM信号生成部41,42,43を備えている。すなわち、インバータ制御部4は、U相、V相、W相の各出力電流を制御するためのPWM信号を生成する3個のPWM信号生成部41,42,43を備えている。PWM信号生成部41,42,43から出力される3個のPWM信号は、相互に120度ずつ位相がずれている点を除いて同一である。従って、PWM信号生成部41,42,43の具体的な機能ブロックは、図8に示したものと同一であるので、インバータ制御部4についての詳細説明は省略する。
ところで、三相のインバータ装置1′のPWM信号生成回路は、一般に、図13に示すように、pq変換器11、FB制御器12及び逆pq変換器13を有し、三相を二相に変換してpq軸上で制御信号を生成する機能を備えている。同図示すPWM信号生成回路では、フィードバックされたU相、V相、W相の出力電流の検出値iU,iV,iWがpq変換器11により下記(16)式により二相の電流値ip,iqに変換され、これらの電流値ip,iqと制御目標値ipo,iqoとの誤差を用いてFB制御器12により制御信号ep,eqが生成される。これらの制御信号ep,eqは、逆pq変換器13より三相の制御信号eu,eV,eWに変換され、これらの制御信号eu,eV,eWからPWM回路14によりU相、V相、W相の各出力電流を制御するためのPWM信号が生成される。
本発明に係る三相のインバータ装置1′ではPWM信号を生成するための演算処理をpq軸上でも行うことができるので、図13に対応するブロック図は図14のようになる。なお、同図において、モデル予測型PWM回路15は、図3に示したインバータ制御部4の機能ブロック図全体に対応するものである。
本発明に係る三相インバータ装置1′においても出力電流の制御目標値をpq軸上の制御目標値として入力することができるので、従来の三相インバータ装置と同様にpq変換の考え方を本発明に係る三相インバータ装置1′にも適用することができる。
なお、上記実施形態では、系統を負荷とする系統連系インバータ装置について説明したが、本発明は、系統以外の負荷に交流電力を供給にするためのインバータ装置、例えばモータ駆動用のインバータ装置にも適用することできる。
1 インバータ装置
2 直流電源
211 太陽光電池
212 電圧検出器
D1 ダイオード
3 インバータ回路
TR1〜TR4 スイッチング素子
D2〜D5 帰還ダイオード
4 インバータ制御部
41,42,43 PWM信号生成部
401 Ip設定部
402 周期検出部
403 ゼロ位相検出部
404 出力電流目標値演算部
405 第1出力電流波形演算部
406 第2出力電流波形演算部
407 出力電流検出値設定部
408 オフ・タイミング演算部
408a ΔE(k)演算部
408b kmin演算部
408c オフ・タイミング判定部
409 オン・タイミング設定部
410 オフ・タイミング設定部
411 計時部
412 パルス信号生成部
5 フィルタ回路
6 変圧器
7 出力電流検出器
8 系統電圧検出器
9 系統
10 オブザーバ
101 フィルタ
102 プラント
103 加算器
104 重み付け回路
105 コントローラ
11 pq変換器
12 FB制御器
13 逆pq変換器
14 PWM回路
15 モデル予測型PWM回路
LF インダクタ
CF キャパシタ
2 直流電源
211 太陽光電池
212 電圧検出器
D1 ダイオード
3 インバータ回路
TR1〜TR4 スイッチング素子
D2〜D5 帰還ダイオード
4 インバータ制御部
41,42,43 PWM信号生成部
401 Ip設定部
402 周期検出部
403 ゼロ位相検出部
404 出力電流目標値演算部
405 第1出力電流波形演算部
406 第2出力電流波形演算部
407 出力電流検出値設定部
408 オフ・タイミング演算部
408a ΔE(k)演算部
408b kmin演算部
408c オフ・タイミング判定部
409 オン・タイミング設定部
410 オフ・タイミング設定部
411 計時部
412 パルス信号生成部
5 フィルタ回路
6 変圧器
7 出力電流検出器
8 系統電圧検出器
9 系統
10 オブザーバ
101 フィルタ
102 プラント
103 加算器
104 重み付け回路
105 コントローラ
11 pq変換器
12 FB制御器
13 逆pq変換器
14 PWM回路
15 モデル予測型PWM回路
LF インダクタ
CF キャパシタ
Claims (9)
- 直流電圧を出力する直流電源と、
前記直流電源から出力される直流電圧を交流電圧に逆変換するための、複数のスイッチング素子をブリッジ接続してなるブリッジ回路と、
PWM信号を生成し、このPWM信号により前記複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を制御することにより前記ブリッジ回路の逆変換動作を制御する制御回路と、
前記ブリッジ回路から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路から出力される交流電圧を変成して負荷に出力する変圧器とを備えたインバータ装置であって、
前記直流電源から出力される直流電圧を検出する第1の電圧検出手段と、
前記変圧器から出力される交流電流を検出する電流検出手段と、
前記変圧器から出力される交流電圧を検出する第2の電圧検出手段とを備え、
前記制御回路は、
前記PWM信号のレベルが、前記ブリッジ回路を前記直流電圧が前記負荷側に供給される状態とする第1のレベルに切り換えられると、前記電流検出手段で検出される電流値を初期値として、前記PWM信号が第1のレベルに設定された第1のタイミングから所定の単位時間を所定の整数値で整数倍した時間だけ進んだ第2のタイミングまでの前記変圧器から出力される第1の電流波形を、前記フィルタ回路及び前記変圧器をモデル化した数式モデルの第1の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第1の演算式を用いて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングの時間方向に演算する第1の波形演算手段と、
前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第1の目標電流演算手段と、
前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない状態において前記変圧器から出力される交流電流が前記第2のタイミングで前記制御目標値となる第2の電流波形を、前記第1の状態方程式とは異なる入出力条件で導出される前記数式モデルの第2の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第2の演算式を用いて、前記第2のタイミングから前記第1のタイミングの時間方向に演算する第2の波形演算手段と、
前記第1の波形演算手段により算出される前記第1の電流波形と前記第2の波形演算手段により算出される前記第2の電流波形とが交差する第3のタイミングを演算する交差タイミング演算手段と、
前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第3のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第2の目標電流演算手段と、
前記第2の目標電流演算手段により算出された制御目標値が予め設定された許容範囲内であるか否か判別する判別手段と、
前記判別手段により前記制御目標値が許容範囲内でないと判別されると、当該制御目標値が許容範囲内であると判別されるまで、前記第2のタイミングを前記単位時間分だけ短くしたタイミングに変更して、前記第1の目標電流演算手段、前記第2の波形演算手段、前記第2の目標電流演算手段及び前記判別手段の各手段の動作を繰り返させる演算制御手段と、
前記判別手段により許容範囲内であると判別されると、前記第3のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない回路状態となる第2のレベルに切り換えるタイミングに設定するとともに、前記第2のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記第1のレベルに切り換える次の第1のタイミングとして設定するタイミング設定手段と、
前記タイミング設定手段で設定される前記第1のタイミングで前記第1のレベルとし、前記第3のタイミングで前記第2のレベルとするように、信号レベルを交互に切り換えることより前記PWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
からなることを特徴とする、インバータ装置。 - 前記交差タイミング演算手段は、離散時間演算における各サンプリング時刻の前記第1の電流波形の値と前記第2の電流波形の値の差を演算する電流差演算手段と、この電流差演算手段により算出される複数の電流差のサンプリング時刻うち、最小の電流差を有するサンプリング時刻を前記第3のタイミングとして算出するタイミング算出手段とからなることを特徴とする請求項1に記載のインバータ装置。
- 前記単位時間の長さを変更する第1の変更手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ装置。
- 前記整数値を変更する第2の変更手段を更に備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインバータ装置。
- 前記制御目標値は、前記交流電流の許容範囲の中心から偏差した値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインバータ装置。
- 前記直流電源は太陽電池からなるとともに、前記ブリッジ回路は三相ブリッジ回路からなり、前記変圧器から出力される交流電圧は商用電力系統に連系させて出力される三相交流電圧であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のインバータ装置。
- 直流電圧を出力する直流電源と、前記直流電源から出力される直流電圧を交流電圧に逆変換するための、複数のスイッチング素子をブリッジ接続してなるブリッジ回路と、PWM信号を生成し、このPWM信号により前記複数のスイッチング素子のオン・オフ動作を制御することにより前記ブリッジ回路の逆変換動作を制御する制御回路と、前記ブリッジ回路から出力される交流電圧に含まれるスイッチングノイズを除去するフィルタ回路と、前記フィルタ回路から出力される交流電圧を変成して負荷に出力する変圧器と、前記直流電源から出力される直流電圧を検出する第1の電圧検出手段と、前記変圧器から出力される交流電流を検出する電流検出手段と、前記変圧器から出力される交流電圧を検出する第2の電圧検出手段とを備えたインバータ装置のPWM制御方法であって、
前記PWM信号のレベルが、前記ブリッジ回路を前記直流電圧が前記負荷側に供給される状態とする第1のレベルに切り換えられると、前記電流検出手段で検出される電流値を初期値として、前記PWM信号が前記第1のレベルに設定された第1のタイミングから所定の単位時間を所定の整数値で整数倍した時間だけ進んだ第2のタイミングまでの前記変圧器から出力される第1の電流波形を、前記フィルタ回路及び前記変圧器をモデル化した数式モデルの第1の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第1の演算式を用いて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングの時間方向に演算する第1の工程と、
前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第2のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算するとともに、前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない状態において前記変圧器から出力される交流電流が前記第2のタイミングで前記制御目標値となる第2の電流波形を、前記第1の状態方程式とは異なる入出力条件で導出される前記数式モデルの第2の状態方程式から得られる前記変圧器からの出力電流の第2の演算式を用いて、前記第2のタイミングから前記第1のタイミングの時間方向に演算する第2の工程と、
前記第1の電流波形と前記第2の電流波形とが交差する第3のタイミングを演算し、前記第1の電圧検出手段により検出される直流電圧と前記第2の電圧検出手段により検出される交流電圧とに基づいて、前記第3のタイミングにおける前記変圧器から出力される交流電流の制御目標値を演算する第3の工程と、
前記第3の工程で演算された制御目標値が予め設定された許容範囲内であるか否か判別し、前記制御目標値が許容範囲内でないと判別されると、当該制御目標値が許容範囲内であると判別されるまで、前記第2のタイミングを前記単位時間分だけ短くしたタイミングに変更して、前記第1の工程乃至前記第3の工程を繰り返す第4の工程と、
前記第3の工程で演算された制御目標値が前記許容範囲内であると判別されると、前記第3のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記ブリッジ回路が前記直流電圧を前記負荷側に供給しない回路状態となる第2のレベルに切り換えるタイミングに設定するとともに、前記第2のタイミングを、前記PWM信号のレベルを前記第1のレベルに切り換える次の第1のタイミングとして設定し、前記第1のタイミングで前記第1のレベルとし、前記第3のタイミングで前記第2のレベルとするように、信号レベルを交互に切り換えることより前記PWM信号を生成する第5の工程と、
からなることを特徴とするインバータ装置のPWM制御方法。 - 前記第3のタイミングは、離散時間演算における各サンプリング時刻の前記第1の電流波形の値と前記第2の電流波形の値の差を演算し、最小の電流差を有するサンプリング時刻が前記第3のタイミングとして算出されることを特徴とする請求項7に記載のインバータ装置のPWM制御方法。
- 前記制御目標値は、前記交流電流の許容範囲の中心から偏差した値であることを特徴とする請求項7または8に記載のインバータ装置のPWM制御方法。
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