JP5938216B2 - 電力変換回路の制御回路、この制御回路を用いた系統連系インバータシステムおよび単相pwmコンバータシステム - Google Patents

電力変換回路の制御回路、この制御回路を用いた系統連系インバータシステムおよび単相pwmコンバータシステム Download PDF

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Description

本発明は、電力変換回路の出力または入力を制御するための制御回路、この制御回路を用いた系統連系インバータシステムおよび単相PWMコンバータシステムに関する。
従来、太陽電池などによって生成される直流電力を交流電力に変換して、電力系統に供給する系統連系インバータシステムが開発されている。
図12は、従来の一般的な単相電力系統の系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。系統連系インバータシステムA100は、直流電源1が生成した電力を変換して単相電力系統B(以下、「電力系統B」とする。)に供給するものである。
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電圧をスイッチング素子(図示しない)のスイッチングにより交流電圧に変換する。フィルタ回路3は、インバータ回路2から出力される交流電圧に含まれるスイッチング周波数成分を除去する。変圧回路4は、フィルタ回路3から出力される交流電圧を電力系統Bの系統電圧に昇圧(または降圧)する。制御回路700は、電流センサ5および電圧センサ6などが検出した電流信号および電圧信号を入力され、これに基づいてPWM信号を生成してインバータ回路2に出力する。インバータ回路2は、制御回路700から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子のスイッチングを行う。
図13は、制御回路700の内部構成を説明するためのブロック図である。
電流センサ5から入力された電流信号は、ヒルベルト変換部73および回転座標変換部78に入力される。
ヒルベルト変換部73は、ヒルベルト変換によって、入力された電流信号の位相をπ/2(90度)だけ遅らせるものである。理想的なヒルベルト変換は、下記(1)式に示す伝達関数H(ω)で表される。なお、ωSは標本化角周波数であり、jは虚数単位である。つまり、ヒルベルト変換とは、振幅特性は周波数によらず一定で、位相特性は正負の周波数領域でπ/2(90度)遅らせるフィルタ処理である。理想的なヒルベルト変換を実現することはできないので、例えばFIR(Finite impulse response)フィルタとして近似的に実現している。
ヒルベルト変換した信号は、元の信号の位相をπ/2だけ遅らせるものになる。したがって、ヒルベルト変換後の信号と元の信号とを用いることで、いわゆる回転座標変換処理(dq変換処理)を行うことができるので、単相交流の場合でも三相交流の場合と同様に、回転座標系での制御を行うことができる。
回転座標変換部78は、電流センサ5から入力された電流信号(以下、「α軸電流信号Iα」とする。)およびヒルベルト変換部73から入力された電流信号(以下、「β軸電流信号Iβ」とする。)を、回転座標系のd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqに変換するものである。回転座標系は、直交するd軸とq軸とを有し、電力系統Bの系統電圧の基本波と同一の角速度で同一の回転方向に回転する直交座標系である。回転座標系の反対概念として、回転しない座標系を静止座標系とする。回転座標変換部78は、いわゆる回転座標変換処理(dq変換処理)を行うものであり、静止座標系のα軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβを、位相検出部71が検出した系統電圧の基本波の位相θに基づいて、回転座標系のd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqに変換する。
回転座標変換部78で行われる変換処理は、下記(2)式に示す行列式で表される。
LPF74aおよびLPF75aは、ローパスフィルタであり、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分だけを通過させる。回転座標変換処理によって、α軸電流信号Iαおよびβ軸電流信号Iβの基本波成分が、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分に変換されている。PI制御部74bおよびPI制御部75bは、それぞれd軸電流信号Idおよびq軸電流信号Iqの直流成分とその目標値との偏差に基づいてPI制御(比例積分制御)を行い、補正値信号Xd,Xqを出力するものである。目標値として直流成分を用いることができるので、PI制御部74bおよびPI制御部75bは、精度のよい制御を行うことができる。
静止座標変換部79は、PI制御部74bおよびPI制御部75bからそれぞれ入力される補正値信号Xd,Xqを、静止座標系の2つの補正値信号Xα,Xβに変換するものであり、回転座標変換部78とは逆の変換処理を行うものである。静止座標変換部79は、いわゆる静止座標変換処理(逆dq変換処理)を行うものであり、回転座標系の補正値信号Xd,Xqを、位相θに基づいて、静止座標系の補正値信号Xα,Xβに変換する。
静止座標変換部79で行われる変換処理は、下記(3)式に示す行列式で表される。
PWM信号生成部77は、静止座標変換部79が出力した補正値信号Xαに基づいてPWM信号を生成して出力する。
特開平2003−143860号公報
「ヒルベルト変換を用いた単相系統連系インバータの制御法」 電学論D,121巻10号,平成13年
ヒルベルト変換部73は、理想的なヒルベルト変換を実現することができないので、例えばFIRフィルタで構成されて、近似的なヒルベルト変換を実現している。FIRフィルタでは群遅延が生じるので、ヒルベルト変換部73から出力されるβ軸電流信号Iβはα軸電流信号Iαに対して時間遅れが生じる。このため、図13には示していないが、実際の処理では、電流センサ5と回転座標変換部78との間に遅延回路を設け、位相の調整を行う必要がある。ヒルベルト変換部73を構成するFIRフィルタは、次数nを大きくして変換帯域を広くすると、周波数特性におけるリプルを小さくできるが、群遅延が大きくなって検出が遅れるという特性がある。逆に、次数nを小さくして変換帯域を狭くすると、群遅延は抑制できるが、周波数特性におけるリプルが大きくなって検出精度が低下するという特性がある。
したがって、ヒルベルト変換部73を用いた場合、検出速度と検出精度のトレードオフを考慮して、構成するFIRフィルタの次数nを設計しなければならないという煩わしさがある。また、ある程度の検出精度を得ようとすると、FIRフィルタの次数nを高くする必要があり、それによりヒルベルト変換部73の構成が大きくなるため、制御回路700が複雑化するという問題もある。
また、制御回路700の制御系を設計することにも大変な労力が必要であるという問題がある。最近の系統連系インバータシステムには、瞬低に対して所定の時間以内に出力を復帰させるなど、制御に高速な応答性が求められている。このような要求を満たすように制御系を設計するために、LPF74aおよびLPF75aのパラメータや、PI制御部74bおよびPI制御部75bの比例ゲインおよび積分ゲインを最適に設計する必要がある。しかし、回転座標変換部78および静止座標変換部79は非線形時変処理を行うために、線形制御理論を用いて制御系を設計することができなかった。また、制御系が非線形時変処理を含むため、システム解析もできなかった。
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、簡単な構成で高速かつ高い精度の制御を行うことができ、線形性および時不変性を有する処理を行う制御回路を提供することをその目的としている。
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
本発明の第1の側面によって提供される制御回路は、単相交流に関する電力変換回路内の複数のスイッチング手段の駆動をPWM信号により制御する制御回路であって、前記電力変換回路の出力または入力に基づく信号とその目標値との偏差である偏差信号を生成する偏差信号生成手段と、前記偏差信号をゼロに制御するための補正値信号を生成する制御手段と、前記補正値信号に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成手段とを備えており、前記制御手段は、前記偏差信号を伝達関数G(s)によって信号処理することで前記補正値信号を生成し、前記伝達関数G(s)は、インパルス応答f(t)をもつ一入力一出力伝達関数をF(s)とし、前記単相交流の基本波の角周波数をω0、虚数単位をjとした場合、
であることを特徴とする。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KI/s(但し、KIは積分ゲイン)である。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KP+KI/s(但し、KPおよびKIは、それぞれ比例ゲインおよび積分ゲイン)である。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KP+KI/s+KD・s(但し、KP、KIおよびKDは、それぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン)である。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記基づく信号は、出力電流または入力電流を検出した信号である。
本発明の好ましい実施の形態においては、前記基づく信号は、出力電圧または入力電圧を検出した信号である。
本発明の好ましい実施の形態においては、制御系の設計が、ロバスト制御設計を用いて行われている。
本発明の好ましい実施の形態においては、制御系の設計が、H∞ループ整形法を用いて行われている。
本発明の第2の側面によって提供される系統連系インバータシステムは、インバータ回路と、本発明の第1の側面によって提供される制御回路とを備えていることを特徴とする。
本発明の第3の側面によって提供される単相PWMコンバータシステムは、コンバータ回路と、本発明の第1の側面によって提供される制御回路とを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、出力または入力に基づく信号から位相を90度遅らせた信号を生成する必要がないので、ヒルベルト変換処理のためのFIRフィルタを設計するという煩わしさがない。また、構成を簡単なものとすることができる。
また、本発明によれば、偏差信号を伝達関数G(s)によって信号処理することで、制御を行って補正値信号を生成している。伝達関数G(s)による信号処理は、回転座標変換を行ってから所定の制御処理を行って生成された補正値信号を静止座標変換するのと同様の処理である。したがって、簡単な構成で高速かつ高い精度の制御を行うことができる。また、伝達関数G(s)による信号処理は、線形性および時不変性を有する。したがって、線形制御理論に基づいた設計法を用いることができ、制御系の設計を容易にすることができる。また、システム解析も行うことができる。
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
回転座標変換および静止座標変換を伴う処理を線形時不変の処理に変換する方法について説明するためのブロック線図である。 回転座標変換および静止座標変換を伴う処理を線形時不変の処理に変換する方法について説明するためのブロック線図であり、行列で表したものである。 行列の計算を説明するためのブロック線図である。 回転座標変換を行ってからPI制御を行った後に静止座標変換を行う処理を示すブロック線図である。 回転座標変換を行ってからI制御を行った後に静止座標変換を行う処理を示すブロック線図である。 行列GIの各要素である伝達関数を解析するためのボード線図である。 第1実施形態に係る系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。 行列GPIの各要素である伝達関数を解析するためのボード線図である。 第2実施形態に係る制御回路を説明するためのブロック図である。 第3実施形態に係る制御回路を説明するためのブロック図である。 第4実施形態に係る単相PWMコンバータシステムを説明するためのブロック図である。 従来の一般的な単相電力系統の系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。 制御回路の内部構成を説明するためのブロック図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
まず、回転座標変換および静止座標変換を伴う処理を線形時不変の処理に変換する方法について説明する。
図1(a)は、回転座標変換および静止座標変換を伴う処理を説明するための図である。当該処理では、まず、信号αおよびβが、回転座標変換によって、信号dおよびqに変換される。信号dおよびqに対して、それぞれ所定の伝達関数F(s)で表される処理が行われ、信号d’およびq’が出力される。次に、信号d’およびq’が静止座標変換によって、信号α’およびβ’に変換される。図1(a)に示す非線形時変の処理を、図1(b)に示す線形時不変の伝達関数の行列Gを用いた処理に変換する。
図1(a)に示す回転座標変換は下記(4)式の行列式で表され、静止座標変換は下記(5)式の行列式で表される。
したがって、図1(a)に示す処理を、行列を用いて、図2(a)のように表すことができる。図2(a)に示す3つの行列の積を計算し、算出された行列を線形時不変の行列にすることで、図1(b)に示す行列Gを算出することができる。このとき、静止座標変換および回転座標変換の行列を行列の積に変換したうえで、算出を行う。
回転座標変換の行列は、下記(6)式に示す右辺の行列の積に変換することができる。
但し、jは虚数単位であり、exp()は自然対数の底eの指数関数であり、
である。なお、T-1は、Tの逆行列である。
となり、オイラーの公式より、exp(jθ)=cosθ+jsinθ、exp(−jθ)=cosθ−jsinθを代入して計算すると、
であることが、確認できる。
また、静止座標変換の行列は、下記(7)式に示す右辺の行列の積に変換することができる。当該行列の積の中央の行列は線形時不変の行列である。
但し、jは虚数単位であり、exp()は自然対数の底eの指数関数であり、
である。なお、T-1は、Tの逆行列である。
となり、オイラーの公式より、exp(jθ)=cosθ+jsinθ、exp(−jθ)=cosθ−jsinθを代入して計算すると、
であることが、確認できる。
上記(6)式および(7)式を用いて、図2(a)に示す3つの行列の積を計算して、行列Gを算出すると、下記(8)式のように計算される。
上記(8)式の中央の3つの行列の1行1列目の要素に注目し、これをブロック線図で表すと、図3に示すブロック線図になる。図3に示すブロック線図の入出力特性を計算すると、
となる。ただし、F(s)はインパルス応答f(t)をもつ一入力一出力伝達関数である。
ここで、θ(t)=ω0tとすると、θ(t)−θ(τ)=ω0t−ω0τ=ω0(t−τ)=θ(t−τ)となるので、図3に示すブロック線図の入出力特性は、インパルス応答f(t)exp(−jω0t)を持つ線形時不変系のものに等しい。インパルス応答f(t)exp(−jω0t)をラプラス変換すると、伝達関数F(s+jω0)が得られる。また、図3に示すブロック線図のexp(jθ(t))とexp(−jθ(t))とを入れ換えた場合の入出力特性は、伝達関数F(s−jω0)の入出力特性になる。
したがって、上記(8)式からさらに計算を進めると、
と計算される。
これにより、図2(a)に示す処理を、図2(b)に示す処理に変換することができる。図2(b)に示す処理は、回転座標変換を行ってから所定の伝達関数F(s)で表される処理を行った後に静止座標変換を行う処理と等価の処理であって、当該処理のシステムは線形時不変のシステムである。
PI制御(比例積分制御)コントローラの伝達関数は、比例ゲインおよび積分ゲインをそれぞれKPおよびKIとすると、F(s)=KP+KI/sで表される。したがって、図4に示す処理、すなわち、回転座標変換を行ってからPI制御を行った後に静止座標変換を行う処理と等価の処理を示す伝達関数の行列GPIは、上記(9)式を用いて、下記(10)式のように算出される。
また、I制御(積分制御)コントローラの伝達関数は、積分ゲインをKIとすると、F(s)=KI/sで表される。したがって、図5に示す処理、すなわち、回転座標変換を行ってからI制御を行った後に静止座標変換を行う処理と等価の処理を示す伝達関数の行列GIは、上記(9)式を用いて、下記(11)式のように算出される。
図6は、行列GIの各要素である伝達関数を解析するためのボード線図である。同図(a)は行列GIの1行1列要素(以下では、「(1,1)要素」と記載する。他の要素についても同様に記載する。)および(2,2)要素の伝達関数を示しており、同図(b)は行列GIの(1,2)要素の伝達関数を示しており、同図(c)は行列GIの(2,1)要素の伝達関数を示している。同図は、系統電圧の基本波の周波数(以下では、「中心周波数」とする。また、中心周波数に対応する角周波数を「中心角周波数」とする。)が60Hzの場合(すなわち、角周波数ω0=120πの場合)のものであり、積分ゲインKIを「0.1」,「1」,「10」,「100」とした場合を示している。
同図(a),(b)および(c)が示す振幅特性は、いずれも、中心周波数にピークがあり、積分ゲインKIが大きくなると、振幅特性が大きくなっている。また、同図(a)が示す位相特性は、中心周波数で0度になる。つまり、行列GIの(1,1)要素および(2,2)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号を位相を変化させることなく通過させる。同図(b)が示す位相特性は、中心周波数で90度になる。つまり、行列GIの(1,2)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号の位相を90度進めて通過させる。一方、同図(c)が示す位相特性は、中心周波数で−90度になる。つまり、行列GIの(2,1)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号の位相を90度遅らせて通過させる。
位相が90度異なる信号αおよび信号β(信号αの位相が信号βより90度進んでいるとする。)を行列GIで処理する場合を検討する。信号αに行列GIの(1,1)要素の伝達関数に示す処理を行っても、位相は変化しない(図6(a)参照)。また、信号βに行列GIの(1,2)要素の伝達関数に示す処理を行うと、位相が90度進む(図6(b)参照)。したがって、両者の位相が信号αと同じ位相になるので、両者を加算することで強め合うことになる。一方、信号αに行列GIの(2,1)要素の伝達関数に示す処理を行うと、位相が90度遅れる(図6(c)参照)。また、信号βに行列GIの(2,2)要素の伝達関数に示す処理を行っても、位相は変化しない。したがって、両者の位相が信号βと同じ位相になるので、両者を加算することで強め合うことになる。
行列GIの(1,1)要素および(2,2)要素の伝達関数に示す処理は、位相を変化させずに通過させる(図6(a)参照)。したがって、上記(11)式に示す行列GIの(1,2)要素および(2,1)要素を「0」にした下記(12)式に示す伝達関数の行列G’Iを用いても、同様の処理を行うことができる。なお、下記(12)式の場合、上記(11)式の場合と比べて強め合う分がないので、積分ゲインKIをその分大きい値に設計する必要がある。
つまり、信号αおよび信号βに、下記(13)式に示す伝達関数GI(s)に示す処理を行えば、回転座標変換を行ってからI制御を行った後に静止座標変換を行う処理と同様の処理をすることになる。単相システムの場合、信号αにのみ処理を行えばよいので、位相を90度遅らせた信号βを生成する必要はない。
以下に、上記(13)式の伝達関数GI(s)で表される処理を行う電流コントローラを系統連系インバータシステムの制御回路に適用した場合を、本発明の第1実施形態として説明する。
図7は、第1実施形態に係る系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
同図に示すように、系統連系インバータシステムAは、直流電源1、インバータ回路2、フィルタ回路3、変圧回路4、電流センサ5、電圧センサ6、および制御回路7を備えている。
直流電源1は、インバータ回路2に接続している。インバータ回路2、フィルタ回路3、および変圧回路4は、この順で、出力ラインに直列に接続されて、単相交流の電力系統Bに接続している。電流センサ5および電圧センサ6は、変圧回路4の出力側に設置されている。制御回路7は、インバータ回路2に接続されている。系統連系インバータシステムAは、直流電源1が出力する直流電力を交流電力に変換して電力系統Bに供給する。なお、系統連系インバータシステムAの構成は、これに限られない。例えば、電流センサ5および電圧センサ6を変圧回路4の入力側に設けてもよいし、インバータ回路2の制御に必要な他のセンサを設けていてもよい。また、変圧回路4をフィルタ回路3の入力側に設けるようにしてもよいし、変圧回路4を設けない、いわゆるトランスレス方式にしてもよい。また、直流電源1とインバータ回路2との間にDC/DCコンバータ回路を設けるようにしてもよい。
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源1は、生成された直流電力を、インバータ回路2に出力する。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源1は、燃料電池、蓄電池、電気二重層コンデンサやリチウムイオン電池であってもよいし、ディーゼルエンジン発電機、マイクロガスタービン発電機や風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
インバータ回路2は、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換して、フィルタ回路3に出力するものである。インバータ回路2は、単相インバータであり、図示しない2組4個のスイッチング素子を備えたPWM制御型インバータ回路である。インバータ回路2は、制御回路7から入力されるPWM信号に基づいて、各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、直流電源1から入力される直流電圧を交流電圧に変換する。なお、インバータ回路2はこれに限定されず、例えば、マルチレベルインバータであってもよい。
フィルタ回路3は、インバータ回路2から入力される交流電圧から、スイッチングによる高周波成分を除去するものである。フィルタ回路3は、リアクトルとコンデンサとからなるローパスフィルタを備えている。フィルタ回路3で高周波成分を除去された交流電圧は、変圧回路4に出力される。なお、フィルタ回路3の構成はこれに限定されず、高周波成分を除去するための周知のフィルタ回路であればよい。変圧回路4は、フィルタ回路3から出力される交流電圧を系統電圧とほぼ同一のレベルに昇圧または降圧する。
電流センサ5は、変圧回路4から出力される交流電流(すなわち、系統連系インバータシステムAの出力電流)を検出するものである。検出された電流信号Iは、制御回路7に入力される。電圧センサ6は、電力系統Bの系統電圧を検出するものである。検出された電圧信号Vは、制御回路7に入力される。なお、系統連系インバータシステムAが出力する出力電圧は、系統電圧とほぼ一致している。
制御回路7は、インバータ回路2を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどによって実現されている。制御回路7は、電流センサ5から入力される電流信号I、および、電圧センサ6から入力される電圧信号Vに基づいて、PWM信号を生成してインバータ回路2に出力する。制御回路7は、系統連系インバータシステムAが出力する出力電圧の波形を指令するための指令値信号を各センサから入力される検出信号に基づいて生成し、当該指令値信号に基づいて生成されるパルス信号をPWM信号として出力する。インバータ回路2は、入力されるPWM信号に基づいて各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、指令値信号に対応した波形の交流電圧を出力する。制御回路7は、指令値信号の波形を変化させて系統連系インバータシステムAの出力電圧の波形を変化させることで、出力電流を制御している。これにより、制御回路7は、各種フィードバック制御を行っている。
図7においては、出力電流制御を行うための構成のみを記載して、その他の制御のための構成を省略している。実際には、制御回路7は、直流電圧制御(入力直流電圧が予め設定された電圧目標値となるように行うフィードバック制御)や無効電力制御(出力無効電力が予め設定された無効電力目標値となるように行うフィードバック制御)なども行っている。なお、制御回路7が行う制御の手法は、これに限られない。例えば、出力電圧制御や有効電力制御を行うようにしてもよい。
制御回路7は、系統対抗分生成部72、電流コントローラ74、およびPWM信号生成部77を備えている。
系統対抗分生成部72は、電圧センサ6から電圧信号Vを入力されて、系統指令値信号Kを生成して出力する。系統指令値信号Kは系統連系インバータシステムAが出力する出力電圧の波形を指令するための指令値信号の基準となるものであり、系統指令値信号Kが後述する補正値信号Xで補正されることにより指令値信号が生成される。
電流コントローラ74は、電流センサ5が検出した電流信号Iと電流目標値との偏差を入力され、電流制御のための補正値信号Xを生成するものである。電流コントローラ74は、上記(13)式の伝達関数GI(s)で表される処理を行う。つまり、電流信号Iと電流目標値との偏差をΔIとすると、下記(14)式に示す処理を行っている。角周波数ω0は系統電圧の基本波の角周波数(例えば、ω0=120π[rad/sec](60[Hz]))があらかじめ設定されており、積分ゲインKIはあらかじめ設計されている。また、電流コントローラ74は、安定余裕を最大化する処理を行っており、この中で、制御ループでの位相の遅延分の補正も行われている。
本実施形態において、電流目標値には、d軸電流目標値およびq軸電流目標値を静止座標変換して生成されたα軸上の電流目標値が用いられる。d軸電流目標値には図示しない直流電圧制御のための補正値が用いられ、q軸電流目標値には、図示しない無効電力制御のための補正値が用いられる。なお、α軸上の電流目標値が直接与えられる場合は、当該目標値をそのまま用いればよい。
本実施形態において、電流コントローラ74は、周波数重みに伝達関数GI(s)を用いて、線形制御理論の1つであるH∞ループ整形法によって設計される。電流コントローラ74で行われる処理は、伝達関数GI(s)で示されるので、線形時不変の処理である。したがって、線形制御理論を用いた制御系設計を行うことができる。
電流コントローラ74には、出力電流が正弦波目標値に追従すること、および、瞬低時に出力を所定の時間内に所定の割合まで戻すこと(速応性)が、設計仕様として求められている。システムの出力がある目標値に完全追従するには、閉ループ系が目標発生器と同じ極を持ち、かつ、閉ループ系が漸近安定でなければならない(内部モデル原理)。正弦波目標値の極は±jωoであり、伝達関数GI(s)に含まれる1/(s2+ω0 2)の項の極も±jωoである。したがって、閉ループ系と目標発生器の極は同じである。また、H∞ループ整形法を用いれば、閉ループ系が漸近安定になるコントローラを設計することができる。したがって、速応性の条件を満たすようにH∞ループ整形法を用いて設計を行うことで、設計仕様に適合し最も安定な制御系を容易に設計することができる。
なお、制御系の設計に用いる設計方法はこれに限られず、その他の線形制御理論を用いることもできる。例えば、ループ整形法、最適制御、H∞制御、混合感度問題などを用いて設計するようにしてもよい。
系統対抗分生成部72が出力する系統指令値信号Kと、電流コントローラ74が出力する補正値信号Xとが加算されて、指令値信号X’が算出され、PWM信号生成部77に入力される。
PWM信号生成部77は、入力される指令値信号X’および指令値信号X’を反転させた信号と、所定の周波数(例えば、4kHz)の三角波信号として生成されたキャリア信号とに基づいて、三角波比較法によりPWM信号Pp,Pnを生成する。三角波比較法では、例えば、指令値信号X’とキャリア信号とが比較され、指令値信号X’がキャリア信号より大きい場合にハイレベルとなり、小さい場合にローレベルとなるパルス信号がPWM信号Ppとして生成される。また、同様に、反転させた信号とキャリア信号とが比較され、PWM信号Pnが生成される。生成されたPWM信号Pp,Pnは、インバータ回路2に出力される。また、PWM信号生成部77は、PWM信号Pp,Pnを反転させた信号も、インバータ回路2に出力する。
本実施形態において、制御回路7は、電流信号Iから位相を90度遅らせた信号を生成する必要がないので、図13に示すヒルベルト変換部73を設ける必要がない。また、電流信号Iのみを処理すればよいので(90度遅らせた信号を処理する必要がないので)、構成が簡単になる。さらに、ヒルベルト変換部73が不要なので、ヒルベルト変換部73を構成するFIRフィルタの次数nを設計するという煩わしさがない。
また、本実施形態において、制御回路7は、回転座標変換および静止座標変換を行うことなく、静止座標系で制御を行っている。上述したように、伝達関数GI(s)は、回転座標変換を行ってからI制御を行った後に静止座標変換を行う処理と同様の処理を示す伝達関数である。したがって、伝達関数GI(s)で表される処理を行う電流コントローラ74は、図13に示す回転座標変換部78、静止座標変換部79、およびI制御処理(図13におけるPI制御部74bが行うPI制御処理に対応する。)と同様の処理を行っている。また、図6(a)のボード線図が示すように、伝達関数GI(s)の振幅特性は、中心周波数でピークを形成している。つまり、電流コントローラ74は、中心周波数成分だけがハイゲインになっている。したがって、図13に示すLPF74aを設ける必要がない。したがって、制御回路7は、簡単な構成で高速かつ高い精度の制御を行うことができる。
また、電流コントローラ74で行われる処理は、伝達関数GI(s)で示されるので、線形時不変の処理である。また、制御回路7には非線形時変処理である回転座標変換処理および静止座標変換処理が含まれておらず、電流制御システム全体が線形時不変システムになっている。したがって、線形制御理論を用いた制御系設計やシステム解析が可能となる。このように、伝達関数GI(s)を用いることで、回転座標変換を行ってからI制御を行った後に静止座標変換を行う非線形の処理を、線形時不変の多入出力系へ帰着させることができ、これによりシステム解析や制御系設計が容易になる。
なお、上記第1実施形態においては、電流コントローラ74がI制御に代わる制御を行う場合について説明したがこれに限られない。例えば、PI制御に代わる制御を行うようにしてもよい。第1実施形態において、電流コントローラ74がPI制御に代わる制御を行うようにする場合は、上記(10)式に示される伝達関数の行列GPIの(1,1)要素の伝達関数を用いればよい。
図8は、行列GPIの各要素である伝達関数を解析するためのボード線図である。同図(a)は行列GPIの(1,1)要素および(2,2)要素の伝達関数を示しており、同図(b)は行列GPIの(1,2)要素の伝達関数を示しており、同図(c)は行列GPIの(2,1)要素の伝達関数を示している。同図は、中心周波数が60Hzの場合のものであり、積分ゲインKIを1に固定して、比例ゲインKPを「0.1」,「1」,「10」,「100」とした場合を示している。
同図(a)が示す振幅特性は中心周波数にピークがあり、比例ゲインKPが大きくなると、中心周波数以外の振幅特性が大きくなっている。また、位相特性は、中心周波数で0度になる。つまり、行列GPIの(1,1)要素および(2,2)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号を位相を変化させることなく通過させる。
同図(b)および(c)が示す振幅特性も、中心周波数にピークがある。また、振幅特性および位相特性は、比例ゲインKPに関係なく一定である。また、同図(b)が示す位相特性は、中心周波数で90度になる。つまり、行列GPIの(1,2)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号の位相を90度進めて通過させる。一方、同図(c)が示す位相特性は、中心周波数で−90度になる。つまり、行列GPIの(2,1)要素の伝達関数は、中心周波数(中心角周波数)の信号の位相を90度遅らせて通過させる。
第1実施形態において、電流コントローラ74がPI制御に代わる制御を行うようにする場合は、下記(15)式に示す伝達関数GPI(s)を用いればよい。
PI制御に代わる制御を行う場合、比例ゲインKPを調整することにより、過渡時のダンピング効果を付加することができるというメリットがあるが、モデル化誤差の影響を受けやすくなるというデメリットがある。逆に、I制御に代わる制御を行う場合、過渡時のダンピング効果を付加することができないというデメリットがあるが、モデル化誤差の影響を受けにくくなるというメリットがある。
なお、電流コントローラ74がI制御およびPI制御以外の制御に代わる制御を行うようにしてもよい。下記(16)式に示す伝達関数G(s)(上記(9)式に示す行列Gの(1,1)要素)において、伝達関数F(s)を各制御の伝達関数とすることで、回転座標変換を行ってから当該制御を行った後に静止座標変換を行う処理と同様の処理を示す伝達関数を算出することができる。
したがって、PID制御(伝達関数は、比例ゲインをKP、積分ゲインをKI、微分ゲインをKDとすると、F(s)=KP+KI/s+KD・sで表される。)に代わる制御を行うようにすることができるし、D制御(微分制御:伝達関数は、微分ゲインをKDとすると、F(s)=KD・sで表される。)、P制御(比例制御:伝達関数は、比例ゲインをKPとすると、F(s)=KPで表される。)、PD制御、ID制御などに代わる制御を行うようにすることができる。
上記第1実施形態においては、出力電流を制御する場合について説明したが、これに限られない。例えば、出力電圧を制御するようにしてもよい。以下に、出力電圧を制御する場合について、第2実施形態として説明する。
図9は、第2実施形態に係る制御回路を説明するためのブロック図である。同図において、図7に示す系統連系インバータシステムAと同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図9に示すインバータシステムA’は、電力系統Bではなく負荷Lに電力を供給する点で、第1実施形態に係る系統連系インバータシステムA(図7参照)と異なる。負荷Lに供給される電圧を制御する必要があるので、制御回路8は、出力電流ではなく出力電圧を制御する。制御回路8は、電圧センサ6から入力される電圧信号Vに基づいてPWM信号を生成する点で、第1実施形態に係る制御回路7(図7参照)と異なる。インバータシステムA’は、出力電圧をフィードバック制御によって目標値に制御しながら、負荷Lに電力を供給する。
電圧コントローラ84は、電圧センサ6が検出した電圧信号Vと電圧目標値との偏差を入力され、電圧制御のための補正値信号Xを生成するものである。電圧コントローラ84は、上記(13)式の伝達関数GI(s)で表される処理を行う。つまり、電圧信号Vと電圧目標値との偏差をΔVとすると、下記(17)式に示す処理を行っている。角周波数ω0は系統電圧の基本波の角周波数(例えば、ω0=120π[rad/sec](60[Hz]))があらかじめ設定されており、積分ゲインKIはあらかじめ設計されている。また、電圧コントローラ84は、安定余裕を最大化する処理を行っており、この中で、制御ループでの位相の遅延分の補正も行われている。
本実施形態において、電圧目標値には、d軸電圧目標値およびq軸電圧目標値を静止座標変換して生成されたα軸上の電圧目標値が用いられる。なお、α軸上の電圧目標値が直接与えられる場合は、当該目標値をそのまま用いればよい。
本実施形態において、制御回路8は、電圧信号Vから位相を90度遅らせた信号を生成する必要がない。また、伝達関数GI(s)で表される処理を行う電圧コントローラ84は、図13に示す回転座標変換部78、静止座標変換部79、およびI制御処理と同様の処理を行っている。さらに、電圧コントローラ84で行われる処理は、伝達関数GI(s)で示されるので線形時不変の処理であり、電圧制御システム全体が線形時不変システムになっている。したがって、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、電圧コントローラ84が、I制御に代わる制御を行うのではなく、他の制御(例えば、PI制御、D制御、P制御、PD制御、ID制御、PID制御など)に代わる制御を行うようにしてもよい。
次に、出力電圧の制御と出力電流の制御とを切り替える場合について、第3実施形態として説明する。
系統連系インバータシステムは、通常、電力系統に連系して、出力電流を制御しながら電力系統に電力を供給する。そして、電力系統内で事故が発生した場合、電力系統との接続が切り離され、インバータ回路の運転も停止される。しかし、電力系統内で事故が発生した場合に、系統連系インバータシステムを自律運転させて、系統連系インバータシステムに接続されている負荷に電力を供給する非常用電源として機能させる要求が高まっている。系統連系インバータシステムを自律運転させて負荷に電力を供給する場合、出力電圧を制御する必要がある。第3実施形態に係る系統連系インバータシステムは、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものであり、出力電圧の制御と出力電流の制御とを切り替えることができる系統連系インバータシステムである。
図10は、第3実施形態に係る制御回路を説明するためのブロック図である。同図において、図7に示す系統連系インバータシステムAと同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図10に示す系統連系インバータシステムA”は、負荷Lに電力を供給しつつ、電力系統Bに連系しているときは電力系統Bにも電力を供給する。なお、第1実施形態に係る系統連系インバータシステムAも同様であるが、第1実施形態においては、電力系統Bに連系している状態のみを説明していたので、負荷Lの記載および説明を省略していた。系統連系インバータシステムA”は、電力系統Bに連系しているときは電流制御を行い、電力系統Bとの接続が切り離されているときは電圧制御を行う。
図10に示す制御回路8’は、電圧コントローラ84、電圧制御のためのPWM信号生成部77、および、制御切替部85を備えている点で、第1実施形態に係る制御回路7(図7参照)と異なる。
電圧コントローラ84は、第2実施形態に係る電圧コントローラ84(図9参照)と同じものであり、電圧センサ6から入力される電圧信号Vに基づいて補正値信号Xを生成する。そして、後段のPWM信号生成部77によって、電圧制御のためのPWM信号が生成される。一方、電流コントローラ74は、電流センサ5から入力される電流信号Iに基づいて補正値信号Xを生成する。そして、後段の系統対抗分生成部72およびPWM信号生成部77によって、電流制御のためのPWM信号が生成される。制御切替部85は、電力系統Bに連系していない場合、電圧コントローラ84が生成した補正値信号Xに基づく電圧制御のためのPWM信号を出力し、電力系統Bに連系している場合、電流コントローラ74が生成した補正値信号Xに基づく電流制御のためのPWM信号を出力する。
本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。さらに、系統連系インバータシステムA”は、電力系統Bに連系しているときに電流制御を行って電力系統Bに電力を供給することができ、電力系統Bに連系していないときに電圧制御を行って負荷Lに電力を供給することができる。
上記第1ないし第3実施形態においては、本発明に係る制御回路を系統連系インバータシステム(インバータシステム)に用いた場合について説明したが、これに限られない。本発明は、例えば、静止型無効電力補償装置(SVC、SVG)、電力用アクティブフィルタ、無停電電源装置(UPS)などに用いられるインバータ回路を制御する制御回路にも適用することができる。また、モータや発電機の回転を制御するインバータ回路を制御する制御回路にも適用することができる。また、直流を単相交流に変換するインバータ回路を制御する場合に限られず、例えば、単相交流を直流に変換するコンバータ回路や、単相交流の周波数を変換するサイクロコンバータなどの制御回路にも適用することができる。以下に、本発明をコンバータ回路の制御回路に適用した場合を、第4実施形態として説明する。
図11は、第4実施形態に係る単相PWMコンバータシステムを説明するためのブロック図である。同図において、図7に示す系統連系インバータシステムAと同一または類似の要素には、同一の符号を付している。
図11に示す単相PWMコンバータシステムCは、電力系統Bから供給される交流電力を直流電力に変換して負荷L’に供給するものである。負荷L’は、直流負荷である。単相PWMコンバータシステムCは、変圧回路4、フィルタ回路3、電流センサ5、電圧センサ6、コンバータ回路9、および制御回路7を備えている。
変圧回路4は、電力系統Bから入力される交流電圧を所定のレベルに昇圧または降圧する。フィルタ回路3は、変圧回路4より入力される交流電圧から高周波成分を除去して、コンバータ回路9に出力する。電流センサ5は、コンバータ回路9に入力される交流電流を検出する。検出された電流信号Iは、制御回路7に入力される。電圧センサ6は、コンバータ回路9に入力される交流電圧を検出するものである。検出された電圧信号Vは、制御回路7に入力される。コンバータ回路9は、入力される交流電圧を直流電圧に変換して、負荷L’に出力する。コンバータ回路9は、単相PWMコンバータであり、図示しない2組4個のスイッチング素子を備えた電圧型コンバータ回路である。コンバータ回路9は、制御回路7から入力されるPWM信号に基づいて、各スイッチング素子のオンとオフとを切り替えることで、入力される交流電圧を直流電圧に変換する。なお、コンバータ回路9はこれに限定されず、電流型コンバータ回路であってもよい。
制御回路7は、コンバータ回路9を制御するものである。制御回路7は、第1実施形態の制御回路7と同様に、PWM信号を生成してコンバータ回路9に出力する。図11においては、入力電流制御を行うための構成のみを記載して、その他の制御のための構成を省略している。図示していないが、制御回路7は、直流電圧コントローラおよび無効電力コントローラも備えており、出力電圧および入力無効電力も制御している。なお、制御回路7が行う制御の手法は、これに限られない。例えば、コンバータ回路9が電流型コンバータ回路の場合、出力電圧制御に代えて、出力電流制御を行うようにすればよい。
本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。単相PWMコンバータシステムCを小型化するためにフィルタ回路3を小さくした場合、電流制御の精度が落ちるために制御系の設計が難しくなるが、本実施形態においては、線形制御理論を用いて容易に制御系の設計を行うことができる。したがって、制御系設計の困難さによって小型化が妨げられることなく、単相PWMコンバータシステムCを小型化することができる。
なお、単相PWMコンバータシステムCの構成は上記に限られない。例えば、制御回路7に代えて、制御回路8,8’を用いるようにしてもよい。また、コンバータ回路9の出力側にインバータ回路を設け、直流電力をさらに交流電力に変換して交流負荷に供給する、いわゆるサイクロコンバータとしてもよい。
本発明に係る制御回路、この制御回路を用いた系統連系インバータシステムおよび単相PWMコンバータシステムは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る制御回路、この制御回路を用いた系統連系インバータシステムおよび単相PWMコンバータシステムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
A,A” 系統連系インバータシステム
A’ インバータシステム
1 直流電源
2 インバータ回路(電力変換回路)
3 フィルタ回路
4 変圧回路
5 電流センサ
6 電圧センサ
7,8,8’ 制御回路
72 系統対抗分生成部
74 電流コントローラ(制御手段)
84 電圧コントローラ(制御手段)
85 制御切替部
77 PWM信号生成部
9 コンバータ回路(電力変換回路)
B 電力系統
C 単相PWMコンバータシステム
L,L’ 負荷

Claims (10)

  1. 単相交流に関する電力変換回路内の複数のスイッチング手段の駆動をPWM信号により制御する制御回路であって、
    前記電力変換回路の出力または入力に基づく信号とその目標値との偏差である偏差信号を生成する偏差信号生成手段と、
    前記偏差信号をゼロに制御するための補正値信号を生成する制御手段と、
    前記補正値信号に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成手段と、
    を備えており、
    前記制御手段は、
    前記偏差信号を伝達関数G(s)によって信号処理することで前記補正値信号を生成し、
    前記伝達関数G(s)は、インパルス応答f(t)をもつ一入力一出力伝達関数をF(s)とし、前記単相交流の基本波の角周波数をω0、虚数単位をjとした場合、
    である、
    ことを特徴とする制御回路。
  2. 前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KI/s(但し、KIは積分ゲイン)である、請求項1に記載の制御回路。
  3. 前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KP+KI/s(但し、KPおよびKIは、それぞれ比例ゲインおよび積分ゲイン)である、請求項1に記載の制御回路。
  4. 前記所定の制御処理を表す伝達関数が、F(s)=KP+KI/s+KD・s(但し、KP、KIおよびKDは、それぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲイン)である、請求項1に記載の制御回路。
  5. 前記基づく信号は、出力電流または入力電流を検出した信号である、請求項1ないし4のいずれかに記載の制御回路。
  6. 前記基づく信号は、出力電圧または入力電圧を検出した信号である、請求項1ないし4のいずれかに記載の制御回路。
  7. 制御系の設計が、ロバスト制御設計を用いて行われている、請求項1ないし6のいずれかに記載の制御回路。
  8. 制御系の設計が、H∞ループ整形法を用いて行われている、請求項7に記載の制御回路。
  9. インバータ回路と、請求項1ないし8のいずれかに記載の制御回路とを備えた系統連系インバータシステム。
  10. コンバータ回路と、請求項1ないし8のいずれかに記載の制御回路とを備えた単相PWMコンバータシステム。
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