JP2008032420A - エバネッセント励起蛍光観察における背景蛍光を減弱する方法及び部材 - Google Patents
エバネッセント励起蛍光観察における背景蛍光を減弱する方法及び部材 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】エバネッセント波励起蛍光観察を行う際に、観察の最大の障害要因となる背景蛍光を、簡便、安価かつ効果的に除去する手段を提供する。
【解決手段】エバネッセント波励起蛍光観察において、導波路基板上に設けた反応槽中のプローブ溶液上に、光透過性の板状体からなる液層厚調整部材を載置し、プローブ溶液層の厚みを薄くすることにより背景光を低減する。
【選択図】図3
【解決手段】エバネッセント波励起蛍光観察において、導波路基板上に設けた反応槽中のプローブ溶液上に、光透過性の板状体からなる液層厚調整部材を載置し、プローブ溶液層の厚みを薄くすることにより背景光を低減する。
【選択図】図3
Description
本発明はエバネッセント励起蛍光観察における背景蛍光を減弱する方法及び該方法に使用する器具に関する。
エバネッセント場励起方式による蛍光観察手法は、顕微鏡の分野でタンパク質の1分子観察を可能とするなど、近年、高い成果を挙げている技術である。
このようなエバネッセント場励起方式による蛍光観察手法は、基板上に蛍光標識したプローブ溶液を接触させた基板内で光を全反射させたときに界面近傍数百nmに限定的に発生するエバネッセント波により基板-液層界面近傍の蛍光標識プローブ分子が選択的に励起されることを利用したものである。すなわち、入射光をスラブ型導波路基板端面より入射し、スライド基板内を繰り返し全反射させて導波させてエバネッセント波を発生させ、このエバネッセント波により励起されるプローブ分子が発する蛍光を観察することによって、スライド基板表面に固定化した分子とプローブ分子間の相互作用を観察することが出来る。(図1)
このようなエバネッセント励起による蛍光観察は、特に、多数の被被験分子を固定したマイクロアレイにおける上記分子と蛍光プローブとの結合状態の観察に適しており、このようなエバネッセント励起方式を利用したマイクロアレイ技術としては、例えば、水平方向に設置したスラブ型導波路を具備する基板上に設置された反応槽内部に蛍光プローブ試料溶液を注入することにより、蛍光プローブ試料をスラブ型導波路に接触させるように構成し、導波路内にある角度をつけて入射光を導入することで、導波路上に生じるエバネッセント波により界面近傍領域のプローブ分子を選択的に励起することを可能としたものがあり(特許文献1参照)、また、本発明者も数件出願している(PCT-JP2004009600、PCT-JP2004019333、特願2005-184171)。
しかし、エバネッセント場励起方式の選択的励起は理論上、界面結合分子に対する選択性ではなく界面からの距離の関数に依存した現象であり、界面よりはるか上層に存在する非結合分子の励起を完全にゼロにするものではない。また現実には装置内で非理想的に生じる全反射条件を逸脱した迷光が存在するため、実際の観察においてはエバネッセント領域よりも上層のプローブ溶液層が光る現象が観察されることが知られていた。このような迷光や導波路進行中に全反射条件を満たさなくなった光がプローブ液上層に到達し、プローブ分子を直接励起してしまうと背景光強度が上がる為結果的にS/N比の大幅な低下をもたらす。このようなことが、従来のエバネッセント励起方式で十分なS/N比と感度を両立させることを困難としてきた。また背景光が強い場合、高濃度プローブ溶液の使用が制限される要因になるため、弱い相互作用の検出が困難になるといった問題点があった。
これに対し、本発明者は、上記エバネッセント励起蛍光検出における高い背景蛍光を減弱する方法として、本発明者はプローブ液層にコロイド溶液を加えることでコロイドを分散させ、プローブ溶液上層から発生した蛍光が検出器に届かないようにする方法を開発している(特願2005-006298)。
この方法は、背景光を減弱する点では優れている方法であるが、その反面、添加するコロイド溶液の内容物によって、平衡反応が変化する可能性がある点や、コロイド粒子に対してプローブ分子が吸着するケースには不適であることから充分ではない点もあった。
本発明の課題は、スラブ型導波路を具備した基板を用いてエバネッセント波励起蛍光観察を行う際に、観察の最大の障害要因となる背景蛍光を効果的に除去し、これにより高いS/N比で蛍光観察可能であり、しかも、上記背景光の除去が簡便かつ安価に実施可能であるとともに、全自動化解析機器等へも適用し得る、背景蛍光の新規除去手段を提供することにある。
本発明者は、エバネッセント励起蛍光観察装置内に残存する、光学的設計意図から外れた非理想的迷光や、導波路内部に入射されて全反射を繰り返す間にスラブ型導波路基盤内部での全反射条件を逸脱した迷光が、基板上の蛍光プローブ溶液上層へ達し、蛍光分子を励起してしまう現象が背景光の大きな一因となっていることに着目し、これを低減させるための手段として、光透過性の板状体を用いることにより、プローブ溶液層の厚みを極限まで薄くすることができ、この結果、エバネッセント波励起蛍光観察時の背景光の大幅な低減を達成した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)底部に被験分子を固定した導波路基板を有する反応槽に蛍光標識したプローブ分子を含有するプローブ溶液を導入して、上記固定分子とプローブ分子とを結合させた後、上記導波路基板に光を導入してエバネッセント波励起蛍光観察を行うに際し、背景蛍光を低減させる方法であって、上記反応槽の導波路基板上の残存プローブ溶液上に、光透過性の板状体からなる液層厚制御部材を載置することを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察における背景光を低減させる方法。
(2)エバネッセント波励起蛍光観察に使用する部材であって、各反応槽に挿入可能な寸法を有し、かつ光透過性の板状体からなることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
(3)エバネッセント波励起蛍光観察に使用する、導波路基板上に複数設けられた各反応槽中におけるプローブ溶液の液厚を同時に制御する部材であって、光透過性の基板上に、各反応槽に挿入可能な寸法を有しかつ光透過性の板状体が、上記各反応槽の位置と対応ざせて複数突設されていることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
(4)上記光透過性の基板と板状体が一体成形されたものである、(3)に記載の液層厚制御部材
(5)光透過性の板状体がホウ珪酸ガラスである、(2)〜(4)のいずれかに記載の液層厚制御部材。
(6)上記(3)〜(5)に記載の液層厚制御部材と複数の反応槽を有する導波路基板とが、ヒンジ部材を介して連結されていることを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察用部材。
(7)ヒンジ部材が、液層厚制御部材と複数の反応槽を有する導波路基板のうち、少なくとも一方を着脱可能に把持する把持手段を有することを特徴とする、上記(6)に記載の部材。
(1)底部に被験分子を固定した導波路基板を有する反応槽に蛍光標識したプローブ分子を含有するプローブ溶液を導入して、上記固定分子とプローブ分子とを結合させた後、上記導波路基板に光を導入してエバネッセント波励起蛍光観察を行うに際し、背景蛍光を低減させる方法であって、上記反応槽の導波路基板上の残存プローブ溶液上に、光透過性の板状体からなる液層厚制御部材を載置することを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察における背景光を低減させる方法。
(2)エバネッセント波励起蛍光観察に使用する部材であって、各反応槽に挿入可能な寸法を有し、かつ光透過性の板状体からなることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
(3)エバネッセント波励起蛍光観察に使用する、導波路基板上に複数設けられた各反応槽中におけるプローブ溶液の液厚を同時に制御する部材であって、光透過性の基板上に、各反応槽に挿入可能な寸法を有しかつ光透過性の板状体が、上記各反応槽の位置と対応ざせて複数突設されていることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
(4)上記光透過性の基板と板状体が一体成形されたものである、(3)に記載の液層厚制御部材
(5)光透過性の板状体がホウ珪酸ガラスである、(2)〜(4)のいずれかに記載の液層厚制御部材。
(6)上記(3)〜(5)に記載の液層厚制御部材と複数の反応槽を有する導波路基板とが、ヒンジ部材を介して連結されていることを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察用部材。
(7)ヒンジ部材が、液層厚制御部材と複数の反応槽を有する導波路基板のうち、少なくとも一方を着脱可能に把持する把持手段を有することを特徴とする、上記(6)に記載の部材。
本発明の液層厚制御部材を使用すれば、スラブ型導波路を具備した基板を用いてエバネッセント波励起蛍光観察を行う際に、観察の最大の障害要因となる背景蛍光を効果的に除去し、これにより高いS/N比で蛍光観察可能となる。しかも、このために本発明の液層厚制御器具は、簡便かつ安価であり、全自動化マイクロアレイ解析機器等へも適用可能である。
本発明は、スライド基板そのものをスラブ型導波路として用いるエバネッセント励起蛍光観察する方式に関するものである。
図2に示すように、この方式のエバネッセント励起光観察においては、スライド基板上に被験分子を固定し、プローブ溶液を接触させた後プローブ溶液を除去し、次いで入射光を基板端面より入射し、基板内で繰り返し全反射させることで、導波路上にエバネッセント波を発生させる。これにより、被験分子と結合した蛍光標識プローブ分子は、エバネッセント波による蛍光励起により蛍光を生じ、該蛍光を検出器で検出し、画像データ化して、基板上のプローブ分子と結合した被験分子を特定できる。
このとき界面から滲み出すエバネッセント場の強度は基板界面から鉛直方向に指数関数的に減衰する性質を持ち、蛍光分子の励起に関与する領域は界面から鉛直方向に数百nm程度であることが知られているので、残存するプローブ溶液の厚さが厚くても、原理的には基板上の被験分子に結合したプローブ分子あるいは被験分子の近傍にあって被験分子と相互作用を及ぼしているプローブ分子が特異的に検出されることになる。しかし、実際の光学系では導波路となるスライド基板に入射した光の中で全反射条件を満たす光(図2の破線)が基板内部を進むのに対し、入射または反射の過程で全反射条件を満たさなくなった光の一部(図2の実線)が残存するプローブ溶液上層中の蛍光標識プローブ分子を直接励起して背景光を発生させるため、S/N比が低下して良好な画像を感度よく得ることできない問題点があった。
これに対して、本発明の液層厚制御手法は、プローブ溶液除去後、反応槽中に残存するプローブ溶液上に光透過正の板状体を載置し、これによりプローブ溶液を導波路基板上の被験分子固定領域から押しのけ、プローブ溶液の鉛直方向の厚さを非常に薄くするとともに均一化するものである。 これにより、光学系内にて生じた迷光が基板の上方向に抜ける際に励起するプローブ溶液上層の蛍光分子の数を均一に減らし、エバネッセント励起蛍光観察時の背景光を大幅に低減することが可能となり、S/N比の向上した良好な画像が得られる(図3)。
本発明で使用する光透過性の板状体の寸法は、反応槽に挿入できる寸法でよく、少なくとも反応槽における被験分子の固定領域を覆う寸法を有していればよい。反応槽の寸法及びの被験分子の固定領域の大きさは様々な場合があり、したがって、上記板状体の寸法は一概に特定できないが、例えば、反応槽の内寸に対し、板状体の外寸は0.5〜0.8mm程度小さいサイズであり、厚さには特に制限はない。
また、上記板状体としては反射光を生じない光透過性のものであればよいが、好ましくは、自家蛍光ができるだけ少ないものがよい。このような板状体の材料としては例えば、ホウ珪酸ガラス、白板ガラス、石英ガラス、合成石英、その他光学用途ガラス(BK7, SF03等)を挙げることができる。
さらに、板状体におけるプローブ溶液と接する面は平滑面とし、市販のギャップガラスと同様に撥水印刷層を設けてもよい。このようにして、板状体と反応槽底部の導波路基板との距離を一定にすることができる。
さらに、板状体におけるプローブ溶液と接する面は平滑面とし、市販のギャップガラスと同様に撥水印刷層を設けてもよい。このようにして、板状体と反応槽底部の導波路基板との距離を一定にすることができる。
このような板状体はピンセット等で把持して、反応槽の残存プローブ溶液上に載置し、反応槽の基板端面から入射光を入射し、エバネッセント励起蛍光観察を行えばよい。
本発明の液層厚制御部材の他の形態は図6に示される。
この形態の液層厚制御部材は、導波路基板上に反応槽形成ラバー2によって複数形成される各反応槽1中におけるプローブ溶液の液層の厚さを同時に制御するために設計されたものであって、光透過性の基板3上に、液層厚制御部材として上記板状体4を複数突設したものであり、各板状体4は、各反応槽1に挿入可能な寸法を有し、上記各反応槽の位置と対応ざせて設けられている。基板3上に突設した各板状体4の寸法、材質等については前述したとおりであるが、基板3の材質も上記板状体と同様に自家蛍光のない若しくは少ないものがよく、例えば、ホウ珪酸ガラス、白板ガラス、石英ガラス、合成石英、その他光学用途ガラス(BK7, SF03等)を挙げることができる。基板3と板状体4とは接着剤等により接着することも可能であるが、同一材料を使用して一体成形することが好ましい。
この形態の液層厚制御部材は、導波路基板上に反応槽形成ラバー2によって複数形成される各反応槽1中におけるプローブ溶液の液層の厚さを同時に制御するために設計されたものであって、光透過性の基板3上に、液層厚制御部材として上記板状体4を複数突設したものであり、各板状体4は、各反応槽1に挿入可能な寸法を有し、上記各反応槽の位置と対応ざせて設けられている。基板3上に突設した各板状体4の寸法、材質等については前述したとおりであるが、基板3の材質も上記板状体と同様に自家蛍光のない若しくは少ないものがよく、例えば、ホウ珪酸ガラス、白板ガラス、石英ガラス、合成石英、その他光学用途ガラス(BK7, SF03等)を挙げることができる。基板3と板状体4とは接着剤等により接着することも可能であるが、同一材料を使用して一体成形することが好ましい。
図6においては、上記光透過性基板と、各反応槽を設けた導波路となるスライド基板とをヒンジ部5を介して連結させた場合を示すが、ヒンジ部を設けなくとも特段の不都合はない。
しかし、図6のようにヒンジ部5を設けて連結した場合は、観察時、反応槽1に対する板状体4の装着がより簡便となる。ヒンジ部は両基板に固定されてもよいが、図6に記載のように、その一端を板状体が突設した基板に固定して、反応槽を設けたスライド基板を脱着可能としてもよく、その反対でもよい。また、図7に示すようにヒンジ部5の両端にクリップ部6を設け両基板をともに脱着可能としてもよく、このようにすることにより、洗浄が容易になるとともに基板が破損した場合に、ヒンジ部を再利用することが可能となる。このようなヒンジ部を設けた場合、一方の反応槽を設けた基板に対し板状体を有する基板を回動して装着するが、この装着時に置いて各反応層におけるスライド基板と板状体との離間距離(ギャップ)が同じになるようにする。
なお、上記導波路となるスライド基板上に反応槽を設ける場合、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、ガラス製導波路基板上に黒色のシリコンゴム製の反応槽形成用ラバーを接着して反応槽を形成することができる。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(1)液層厚制御部材の材質
3 -グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社、以降GTMS)によるコーティング処理を施した、長さ76.2 mm × 幅25.4 mm (±0.05 mm)、厚さ1.0 mm (±0.05 mm)の白板ガラス製導波路基板上に、黒色のシリコンゴム製の反応槽形成用ラバーを接着して基板上に8つの液体を満たすことの出来る反応槽(反応槽内寸8×12mm)を形成した。続いてこの反応槽内に白板ガラス製試作品(厚さ1mm)、ポリスチレン製試作品(厚さ0.1 mm)、硼珪酸ガラス製試作品(厚さ0.15 mm)をセットし、エバネッセント励起スキャナー(GTMASScanIV モリテックス社製)にて反応槽内の背景蛍光を観察することで、材質自体の持つ自家蛍光の大きさを評価した。結果を図4に示す。
これによれば、ポリスチレン製試作品は他の2者と比べ自家蛍光が大きいことが分かる。ただし、ポリスチレン製であっても背景光低減能力は十分あり、液層厚制御部材として、使用できないというものではない。
以上の結果を含め、自家蛍光の低さ、硬質性、価格と生産供給面の多角的見地から最終的に硼珪酸ガラス(厚さ0.15 mm)を液層厚制御部材の材質として選定した。なお、寸法は、反応槽の内寸から7.4× 11.2 (mm) のサイズが好適であり、この寸法のガラスを以下の実験に用いた。
(2)蛍光標識化タンパク質プローブの調製
蛍光標識化タンパク質プローブは、アシアロフェツイン(以下ASF)(SIGMA社)を550 nm付近に吸収極大波長を持つ蛍光色素であるCy3 Mono-reactive Dye(アマシャムファルマシア社、以下Cy3)を用いて蛍光標識化して調製した。ASFをリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4(以下PBS)に終濃度1 mg/mLになるよう調製した後、1 mLについて1.0 mgのCy3粉末と混合させ、1時間、適時攪拌しながら暗所で反応させた。 次に担体としてSephadex G-25(アマシャムファルマシア社)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより未反応のCy3分子を除去することで、Cy3-ASF標品として精製した。
(3)マイクロアレイ基板の作成
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社)によるコーティング処理を施した、長さ76.2 mm × 幅25.4 mm (±0.05 mm)、厚さ1.0 mm (±0.05 mm)の白板ガラス製導波路基板上にレクチンを、非接触スポッターを用いて約4 nLずつ分注操作を繰り返すことで中心間間隔0.65mmのタンパク質43種を3スポットずつスポットしたタンパクアレイを作製した。ここに、黒色のシリコンゴム製の反応槽形成用ラバーを接着して基板上に8つの液体を満たすことの出来る反応槽を形成した。続いて反応槽内に1% BSAを含むPBS溶液を100 μLずつ満たし、湿度を90%以上に保った保存容器中で25℃、1時間放置し、反応槽内スライド基板上面へのプローブ試料分子の非特異的吸着を抑制するためのブロッキング操作を行った。
(4)エバネッセント励起蛍光観察における背景光の低減
上記(3)の工程を経て作製した反応槽内のマイクロアレイに対し、蛍光標識化タンパク質プローブとして通常の使用時より1000倍も高濃度の100μg/mLの濃度に調製したCy3-ASF溶液を加え、遮光して20℃に設定したインキュベーターの中に3時間静置し、アレイ上に固定化したタンパクと反応させた。このスライド基板に対し4つの異なる条件で観察を行い、液層厚制御法の効果を検証することとした。基板上の反応槽にCy3-ASF溶液を加えたまま何もしない系(従来法)、反応槽内に液層厚制御装置を乗せた系(液層厚制御法)、1%の黒色コロイド溶液をプローブ液に加えた系(コロイド添加法)、プローブ液を除去してから、1回バッファーで洗浄してしまい、さらにその後バッファーのみ加え反応槽内の蛍光標識化タンパク質プローブを完全に除去してしまった系(バッファー交換系)の4条件を作成し、これをスキャナーで読み取った画像を比較した。
なお、スキャニングには、エバネッセント励起方式マイクロアレイスキャナー(GTMAS Scan IV)を使用し、エバネッセント波励起蛍光観察を行った。スキャニング時のパラメーターはGain「4000倍」、積算回数「4回」、露光時間「34 msec」で行った。スキャニング画像の輝度の数値化には市販のマイクロアレイ用解析ソフトであるArray-Pro Analyzer (version 4.0 for Windows、Media Cybernetics社)を使用した。
3 -グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社、以降GTMS)によるコーティング処理を施した、長さ76.2 mm × 幅25.4 mm (±0.05 mm)、厚さ1.0 mm (±0.05 mm)の白板ガラス製導波路基板上に、黒色のシリコンゴム製の反応槽形成用ラバーを接着して基板上に8つの液体を満たすことの出来る反応槽(反応槽内寸8×12mm)を形成した。続いてこの反応槽内に白板ガラス製試作品(厚さ1mm)、ポリスチレン製試作品(厚さ0.1 mm)、硼珪酸ガラス製試作品(厚さ0.15 mm)をセットし、エバネッセント励起スキャナー(GTMASScanIV モリテックス社製)にて反応槽内の背景蛍光を観察することで、材質自体の持つ自家蛍光の大きさを評価した。結果を図4に示す。
これによれば、ポリスチレン製試作品は他の2者と比べ自家蛍光が大きいことが分かる。ただし、ポリスチレン製であっても背景光低減能力は十分あり、液層厚制御部材として、使用できないというものではない。
以上の結果を含め、自家蛍光の低さ、硬質性、価格と生産供給面の多角的見地から最終的に硼珪酸ガラス(厚さ0.15 mm)を液層厚制御部材の材質として選定した。なお、寸法は、反応槽の内寸から7.4× 11.2 (mm) のサイズが好適であり、この寸法のガラスを以下の実験に用いた。
(2)蛍光標識化タンパク質プローブの調製
蛍光標識化タンパク質プローブは、アシアロフェツイン(以下ASF)(SIGMA社)を550 nm付近に吸収極大波長を持つ蛍光色素であるCy3 Mono-reactive Dye(アマシャムファルマシア社、以下Cy3)を用いて蛍光標識化して調製した。ASFをリン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4(以下PBS)に終濃度1 mg/mLになるよう調製した後、1 mLについて1.0 mgのCy3粉末と混合させ、1時間、適時攪拌しながら暗所で反応させた。 次に担体としてSephadex G-25(アマシャムファルマシア社)を用いたゲルろ過クロマトグラフィーにより未反応のCy3分子を除去することで、Cy3-ASF標品として精製した。
(3)マイクロアレイ基板の作成
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社)によるコーティング処理を施した、長さ76.2 mm × 幅25.4 mm (±0.05 mm)、厚さ1.0 mm (±0.05 mm)の白板ガラス製導波路基板上にレクチンを、非接触スポッターを用いて約4 nLずつ分注操作を繰り返すことで中心間間隔0.65mmのタンパク質43種を3スポットずつスポットしたタンパクアレイを作製した。ここに、黒色のシリコンゴム製の反応槽形成用ラバーを接着して基板上に8つの液体を満たすことの出来る反応槽を形成した。続いて反応槽内に1% BSAを含むPBS溶液を100 μLずつ満たし、湿度を90%以上に保った保存容器中で25℃、1時間放置し、反応槽内スライド基板上面へのプローブ試料分子の非特異的吸着を抑制するためのブロッキング操作を行った。
(4)エバネッセント励起蛍光観察における背景光の低減
上記(3)の工程を経て作製した反応槽内のマイクロアレイに対し、蛍光標識化タンパク質プローブとして通常の使用時より1000倍も高濃度の100μg/mLの濃度に調製したCy3-ASF溶液を加え、遮光して20℃に設定したインキュベーターの中に3時間静置し、アレイ上に固定化したタンパクと反応させた。このスライド基板に対し4つの異なる条件で観察を行い、液層厚制御法の効果を検証することとした。基板上の反応槽にCy3-ASF溶液を加えたまま何もしない系(従来法)、反応槽内に液層厚制御装置を乗せた系(液層厚制御法)、1%の黒色コロイド溶液をプローブ液に加えた系(コロイド添加法)、プローブ液を除去してから、1回バッファーで洗浄してしまい、さらにその後バッファーのみ加え反応槽内の蛍光標識化タンパク質プローブを完全に除去してしまった系(バッファー交換系)の4条件を作成し、これをスキャナーで読み取った画像を比較した。
なお、スキャニングには、エバネッセント励起方式マイクロアレイスキャナー(GTMAS Scan IV)を使用し、エバネッセント波励起蛍光観察を行った。スキャニング時のパラメーターはGain「4000倍」、積算回数「4回」、露光時間「34 msec」で行った。スキャニング画像の輝度の数値化には市販のマイクロアレイ用解析ソフトであるArray-Pro Analyzer (version 4.0 for Windows、Media Cybernetics社)を使用した。
結果を図5に示す。これによれば、従来法では非常に高い蛍光が観察された(図5左端)。これは通常の使用時より1000倍も高濃度であるので当然の結果であるといえる。この時、上層のプローブ分子を洗浄・除去したバッファー交換法のデータ(図5右端)において背景蛍光が非常に低いことから従来法の高い背景蛍光はプローブ液上層の蛍光分子由来の蛍光であることが分かる。この条件で、液層厚制御法は従来のコロイド添加法よりも高い、背景蛍光低減効果を示した。またシグナルに目を向けるとバッファー交換法では液層厚制御法に比べ、シグナルが弱くなっているスポットが複数みうけられた。これは(バッファー交換法の欠点である)プローブ分子と被検分子間の結合が、洗浄効果により解離してしまい、シグナル輝度が落ちてしまっているためと考えられる。結果として液層厚制御法は高いS/N比を確保するために非常に有用であることが分かる。
Claims (7)
- 底部に被験分子を固定した導波路基板を有する反応槽に蛍光標識したプローブ分子を含有するプローブ溶液を導入して、上記固定分子とプローブ分子とを結合させた後、上記導波路基板に光を導入してエバネッセント波励起蛍光観察を行うに際し、背景蛍光を低減させる方法であって、上記反応槽の導波路基板上の残存プローブ溶液上に、光透過性の板状体からなる液層厚制御部材を載置することを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察における背景光を低減させる方法。
- エバネッセント波励起蛍光観察に使用する部材であって、各反応槽に挿入可能な寸法を有し、かつ光透過性の板状体からなることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
- エバネッセント波励起蛍光観察に使用する、導波路基板上に複数設けられた各反応槽中におけるプローブ溶液の液厚を同時に制御する部材であって、光透過性の基板上に、各反応槽に挿入可能な寸法を有しかつ光透過性の板状体が、上記各反応槽の位置と対応させて複数突設されていることを特徴とする、反応槽中のプローブ溶液の液層厚制御部材。
- 上記光透過性の基板と板状体が一体成形されたものである、請求項3に記載の液層厚制御部材
- 光透過性の板状体がホウ珪酸ガラスからなるものである、請求項2〜4のいずれかに記載の液層厚制御部材。
- 請求項3〜5のいずれかに記載の液層厚制御部材と、複数の反応槽を有する導波路基板とが、ヒンジ部材を介して連結されていることを特徴とする、エバネッセント波励起蛍光観察用部材。
- ヒンジ部材が、液層厚制御部材と複数の反応槽を有する導波路基板のうち、少なくとも一方を着脱可能に把持する把持手段を有することを特徴とする、請求項6に記載の部材。
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JP2006203257A JP2008032420A (ja) | 2006-07-26 | 2006-07-26 | エバネッセント励起蛍光観察における背景蛍光を減弱する方法及び部材 |
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