しかしながら、特許文献1に記載の粘性抵抗器は、流体である抵抗体中を攪拌羽がスライド移動するように構成したものであるから、筐体の内部に流体を漏れなく収容し、且つ攪拌羽を筐体にスライド自在に保持する必要がある。従って、粘性抵抗器は、流体の漏れを防ぐためのシール構造が必要になるなど、その構造が複雑であるため、コストが嵩むうえに小型化にも限界がある。従って、もっと簡単な構成によって、タイミングベルトの歯飛びを防止したいという要望があった。
本発明は、上記問題を解消するものであり、タイミングベルトの歯飛びを簡単な構成で確実に防止することのできるベルト歯飛び防止機構と、これを備えた画像記録装置の実現を目的とするものである。
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明におけるベルト歯飛び防止機構は、歯面を持つタイミングベルトに連結されたキャリッジを第1の方向に沿って往復動するように構成された装置のベルト歯飛び防止機構であって、前記タイミングベルトは、このタイミングベルトの歯面と噛合する歯面を持つ駆動プーリと、従動プーリとに掛け渡され、前記従動プーリを支持する従動プーリ支持体は、前記装置の枠体に対して摺動可能に取り付けられ、前記枠体と前記従動プーリ支持体との間には、前記タイミングベルトに張力を付与する方向に付勢する付勢手段が設けられ、前記従動プーリ支持体と前記枠体との摺動面には、粘性抵抗剤を介在させていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記粘性抵抗剤は、グリス等の粘性を有する潤滑剤であることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体と前記枠体との間の摺動面のうち少なくとも一方に、前記粘性抵抗剤を保持する溜り部を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体には、前記摺動面以外の表面に形成した開口と前記摺動面とを連通させる注入部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体には、前記注入部に前記粘性抵抗剤を注入するための注入管を沿わせる案内部を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構において、前記枠体は平板状部材であって、その表面側に、前記従動プーリ支持体が配置され、前記従動プーリ支持体は、前記付勢手段の一端が取り付けられる従動プーリ側取付部と、前記枠体に対する前記摺動面を有する摺動部とを有し、前記枠体には、前記付勢手段の他端が取り付けられる枠体側取付部が、前記従動プーリ側取付部よりも前記駆動プーリ寄りの位置に突設されていることを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記枠体には、前記従動プーリ支持体の取付位置に対応して第1穴部が穿設され、前記従動プーリ支持体の前記摺動部は、前記枠体における前記第1穴部の周囲の領域に対して摺動する第1摺動面を有することを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体には、前記第1穴部を通って前記枠体に係合し、前記摺動部の摺動方向への移動を案内する第1ガイド部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の発明は、請求項7または8に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体の前記摺動部は、前記付勢手段の配置位置よりもさらに前記駆動プーリ側へ拡張した形状を有し、前記摺動部は、前記枠体における前記付勢手段の配置位置よりもさらに前記駆動プーリ側の領域に対して摺動する第2摺動面を有することを特徴とするものである。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記枠体における前記付勢手段の配置位置よりもさらに前記駆動プーリ側の領域には、第2穴部が穿設され、前記摺動部には、前記第2穴部を通って前記枠体に係合し、且つ当該摺動部の摺動方向への移動を案内する第2ガイド部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項11に記載の発明は、請求項6から10のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構において、前記従動プーリ支持体の前記摺動部は、前記第1ガイド部に対して前記枠体を挟んで対向し、且つこの対向する領域から、摺動方向に直交する方向へ拡張した形状を有し、前記枠体には、前記摺動部における摺動方向に直交する方向の端部の位置に対応して第3穴部が穿設され、前記摺動部には、前記第3穴部を通って前記枠体に係合し、且つ当該摺動部の摺動方向への移動を案内する第3ガイド部が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項12に記載の発明は、請求項9から11のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構において、前記摺動部における第2摺動面では、前記駆動プーリ寄りの所定領域を除く領域に前記粘性抵抗剤を介在させていることを特徴とするものである。
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記摺動部の第2摺動面における前記粘性抵抗剤を介在させる領域には、前記粘性抵抗剤の配置すべき位置を指定するための表示が施されていることを特徴とするものである。
また、請求項14に記載の発明は、請求項9から13のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構において、前記摺動部には、前記第2摺動面の前記駆動プーリ側に隣接する位置に、前記枠体との間隔が拡大されて当該枠体に対して摺動しない非摺動面が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のベルト歯飛び防止機構において、前記非摺動面は、前記第2摺動面が摺動方向に移動することで前記枠体に付着した粘性抵抗剤を覆う大きさに設定されていることを特徴とするものである。
また、請求項16に記載の発明における画像記録装置は、請求項1から15のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構を備え、前記キャリッジには、被記録媒体にインクを吐出する記録ヘッドが搭載されているものである。
請求項1に記載の発明によれば、従動プーリ支持体と枠体との摺動面に、粘性抵抗剤を介在させているので、タイミングベルトの張力が急激に増加したときには、粘性抵抗剤が大きな抵抗として作用し、枠体に対する従動プーリ支持体の摺動を抑制する。その結果、従動プーリ支持体に軸支されている従動プーリの変位も抑制されるから、従動プーリと駆動プーリとの距離が急激に短くなることがなく、タイミングベルトの歯面が駆動プーリの歯面から外れて歯飛びすることを防止することができる。
一方、キャリッジが定常状態で移動しているとき(急激な加減速を行わないとき)には、粘性抵抗剤は小さい抵抗として作用するから、タイミングベルト24の張力の変動に応じてコイルバネ34が適宜伸縮し、タイミングベルト24を歯飛びの生じない張力に保つことができる。
請求項2に記載の発明によれば、粘性抵抗剤はグリス等の粘性を有する潤滑剤であるから、粘性抵抗剤を、従動プーリ支持体と枠体との摺動面に、注入したり塗布したりするだけで容易に介在させることができ、極めて簡単にタイミングベルトの歯飛びを抑制することができる。
請求項3に記載の発明によれば、粘性抵抗剤が溜り部に保持されるので、粘性抵抗剤の飛散を防止することができる。
請求項4に記載の発明によれば、従動プーリ支持体に、摺動面以外の表面に形成した開口と摺動面とを連通させる注入部を設けているから、従動プーリ支持体と枠体との組み付け後であっても、摺動面もしくは溜り部への粘性抵抗剤の注入や補充が可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、従動プーリ支持体に、注入部に粘性抵抗剤を注入するための注入管を沿わせる案内部を設けているから、注入部の入口が小さくても、速やかに注入管を注入部の入口に案内することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記従動プーリ支持体は、前記付勢手段の一端が取り付けられる従動プーリ側取付部と、前記枠体に対する前記摺動面を有する摺動部とを有し、前記枠体には、前記付勢手段の他端が取り付けられる枠体側取付部が、前記従動プーリ側取付部よりも前記駆動プーリ寄りの位置に突設されているから、従動プーリ支持体の従動プーリ側取付部と枠体の枠体側取付部との間に取り付けられた付勢手段によって、従動プーリ支持体が駆動プーリから離れる方向に付勢され、タイミングベルトの張力が付与される。
請求項7に記載の発明によれば、従動プーリ支持体の摺動部は、枠体における第1穴部の周囲の領域に対して摺動する第1摺動面を有しているから、摺動部と第1摺動面との間に介在する粘性抵抗剤によって、タイミングベルトの歯面が駆動プーリの歯面から外れて歯飛びすることを防止することができる。
請求項8に記載の発明によれば、従動プーリ支持体には、第1穴部を通って枠体に係合し、摺動部の摺動方向への移動を案内する第1ガイド部が設けられているから、従動プーリ支持体は安定した摺動方向に移動することができる。
請求項9に記載の発明によれば、従動プーリ支持体の摺動部は、付勢手段の配置位置よりもさらに駆動プーリ側へ拡張した形状を有し、前記付勢手段の配置位置よりもさらに駆動プーリ側の枠体の領域に対して摺動する第2摺動面を有している。従って、請求項7に記載したような第1摺動面を有する形状に比べて、枠体に対して摺動する面積が増大し、粘性抵抗剤が介在する領域が増えるから、タイミングベルトの歯飛びを防止する効果を向上させることができる。
また、従動プーリ支持体の駆動プーリ側の位置は、タイミングベルトが掛け渡された部分の下方になるため、一般的にはデッドスペースである。このデッドスペースを利用して、従動プーリ支持体の摺動部を拡張しているので、装置全体の大型化を招来することがない。
請求項10に記載の発明によれば、摺動部には、枠体における付勢手段の配置位置よりもさらに駆動プーリ側の領域に穿設された第2穴部を通って、枠体に係合する第2ガイド部が設けられている。すなわち、従動プーリ支持体は、摺動方向に離間して設けられた第1ガイド部と第2ガイド部とによって、摺動方向への移動が案内されるから、より安定的に摺動することができる。
請求項11に記載の発明によれば、従動プーリ支持体の摺動部は、第1ガイド部材と枠体を挟んで対向する領域から、摺動方向に直交する方向へ拡張した形状を有している。従って、請求項6に記載した形状に比べて、枠体に対して摺動する摺動部の面積が増大し、粘性抵抗剤が介在する領域が増えるから、タイミングベルトの歯飛び防止効果を向上させることができる。
また、摺動部には、枠体に設けた第3穴部を通って枠体の裏面に係合する第3ガイド部が設けられている。すなわち、従動プーリ支持体は、摺動方向と直交する方向に離間した第1ガイド部と第3ガイド部とによって、摺動方向への移動が案内されるから、より安定的に摺動することができる。
請求項12に記載の発明によれば、摺動部における第2摺動面では、駆動プーリ寄りの所定領域を除く領域に粘性抵抗剤を介在させているから、従動プーリ支持体が摺動しても、その駆動プーリ側へ、粘性抵抗剤がはみ出し難くなるという効果を奏する。粘性抵抗剤が従動プーリ支持体からはみ出して外部に露出していると、他の部品に付着しやすい。特に、粘性抵抗剤が高粘度のグリスであると、これが付着した他の部品の動作に支障を来たす虞がある。この発明では、粘性抵抗剤が他の部品に付着することによる不都合を、未然に防止できる。
請求項13に記載の発明によれば、摺動部の第2摺動面における粘性抵抗剤を介在させる領域には、粘性抵抗剤の配置すべき位置を指定するための表示が施されているから、粘性抵抗剤の塗布位置や塗布量を規定でき、ばらつきを抑制することができる。
請求項14に記載の発明によれば、摺動部には、第2摺動面の駆動プーリ側に隣接する位置に、枠体との間隔が拡大されて当該枠体に対して摺動しない非摺動面が設けられているから、従動プーリ支持体が摺動しても、非摺動面は枠体に対して擦れない。従って、従動プーリ支持体の摺動によって、第2摺動面から駆動プーリ側へ粘性抵抗剤がはみ出しても、第2摺動面に隣接する非摺動面が、はみ出した粘性抵抗剤を、接触せずに覆うことになる。その結果、従動プーリ支持体は、粘性抵抗剤が外部に露出することを防止でき、粘性抵抗剤が他の部品に付着することによる不都合をなくすことができる。
請求項15に記載の発明によれば、非摺動面は、第2摺動面が摺動方向に移動することで枠体に付着した粘性抵抗剤を覆う大きさに設定されているから、第2摺動面からはみ出した粘性抵抗剤を、非摺動面が外部に露出しないように確実に覆うことができる。
請求項16に記載の発明によれば、画像記録装置に請求項1から15のいずれかに記載のベルト歯飛び防止機構を備えているから、記録ヘッドから被記録媒体にインクを吐出して記録を行うときに、タイミングベルトの歯飛びによる記録の位置ズレや、異音の発生、タイミングベルトの磨耗、破損等を防止して、良好な記録を行うことができる。
以下に、本発明を具体化した最良の実施形態について説明する。本実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD :Multi Function Device)に本発明を適用したものであり、図1に示すように、装置における合成樹脂製の記録装置本体2の底部には、記録装置本体2の前側(図1において左側)の開口部2aから差込み可能な給紙カセット3が配置されている。以下、開口部2aがある側を前側または前方といい、これを基準に装置の前側、左右側、後側という。
本実施形態では、給紙カセット3は、被記録媒体としての例えばA4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、Y軸方向)と直交する方向(図1において紙面と直交する方向、主走査方向、X軸方向)に延びるようにして複数枚積層(堆積)して収納できる形態とする(図1参照)。
なお、給紙カセット3の上部の前端には、小サイズの用紙(図示せず)を複数枚堆積させて供給する補助カセット3aがY軸方向に移動可能に装着されている。図1では、補助カセット3aが記録装置本体(ハウジング)2から外部に突出しない位置に押し込み配置されている状態を示している。
また、給紙カセット3の奥側(図1及び図2において右側)には、用紙分離用の土手部である傾斜分離板8が配置されている。また、記録装置本体2側には、上端部が上下方向に回動可能なアーム6aが装着され、このアーム6aの下端に設けられた給紙ローラ6と、傾斜分離板8とにより、給紙カセット3及び補助給紙カセット3aに堆積された被記録媒体である用紙Pを1枚ずつ分離搬送する。分離された用紙Pは上横向きのUターンパス(給送路)9を介して給紙カセット3より後方の上側(高い位置)に設けられた記録部7に給送される。記録部7は、後に詳述するように、プリンタ機能などを実現するためのインクジェット式の記録ヘッド4が搭載されて往復移動可能なキャリッジ5等からなる。
記録部7にて記録された用紙Pがその記録面を上向きにして排出される排紙部10は、補助カセット3aの上側に形成されており、排紙部10に連通する排紙口10a(開口部2aの上方)が記録装置本体2の前面に向かって開口されている。
記録装置本体2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための画像読取装置12が配置されている。画像読取装置12の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14が設けられており、画像読取装置12と操作パネル部14との平面視投影面積内に、記録部7と排紙部10並びにこの排紙部10の一側に設けられたインク貯蔵部15が位置するように配置されている。
画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板(図示せず)が設けられ、その下側に原稿読取用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor、図示せず)が図2の紙面と直交する方向(主走査方向、X軸方向)を往復移動可能に設けられている。
インク貯蔵部15は、記録装置本体2の上方に向かって開放されており、インク貯蔵部15には、フルカラー記録のための4色のインクを各々収容した平面視の面積が小さく、且つ高さ寸法の高いほぼ矩形箱状のインクカートリッジ19(個別の色、即ち、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)用インクのカートリッジに対しては符号19a〜19dを付する、図3参照)を、Y軸方向に沿って一列状に収納でき、上方から着脱可能となるように構成されている。
そして、各インクカートリッジ19から、インクジェット式の記録ヘッド4に複数本(実施形態では4本)のインク供給管(インクチューブ)20(個別には符号20a〜20dで示す、図4、5参照)を介してインクを供給するように構成されている。なお、4色よりも多数のインク色を使用する場合(6色〜8色等)には、そのインク色の数に応じたインクカートリッジをインク貯蔵部15に収納可能に構成すれば良いし、インク供給管20もインクカートリッジの数に合わせて増やせばよい。
記録部7は、上面開放された枠状のメインフレーム21における左右一対の側板21a、21bにて支持され、図3〜図5に示すように、X軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状(プレート状)の第1ガイド部材22、第2ガイド部材23と、これら両ガイド部材22、23に跨って摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能に構成されたキャリッジ5と、記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5を往復移動させるために第2ガイド部材23の上面(表面)にそれと平行状に配置された無端帯であるタイミングベルト24と、そのタイミングベルト24を駆動するCR(キャリッジ)モータ25(実施形態では、DCモータであるが、ステッピングモータ等他のモータでもよい)と、記録ヘッド4の下面側にて搬送される用紙Pを支持する板状のプラテン26と、主走査方向に沿って延びるように配置されてキャリッジ5のX軸方向(主走査方向)の位置とその方向の移動速度を検知するための光学式リニアエンコーダの構成部品であるテープスケール47等を備える。キャリッジ5上の記録ヘッド4には、フレキシブルフラットケーブル40を介して駆動信号が入力される。
プラテン26を挟んで用紙搬送方向(矢印A方向、図3及び図4参照)の上流側には、レジストローラ対27が配置されて、用紙Pが記録ヘッド4の下面のノズル面とプラテン26との隙間に送られる(図2参照)。プラテン26の下流側には、用紙Pの上面に接する拍車(図示せず)と下面側を駆動する排紙ローラ28とが配置され記録済みの用紙Pが排紙部10に搬送される。
また、搬送される用紙Pの幅(用紙Pの短辺)より外側には、その一端側(実施形態では図3及び図4で左側の側板21aに近い部位)にインク受け部48が、また、他端側(図3で右側の側板21bに近い部位)にはメンテナンスユニット50がそれぞれ配置されている。これにより、記録ヘッド4はインク受け部48に対応して設けられたフラッシング位置にて記録動作中に定期的にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部48にてインクを受ける。
メンテナンスユニット50に対応して設けられたキャリッジ5の待機位置では、記録ヘッド4から色毎にインクを選択的に吸引したり、記録ヘッド4上の図示しないバッファタンク内の気泡を除去するための回復処理等を行う。また、メンテナンスユニット50には図示しないが、ワイパーが設けられており、キャリッジ5をメンテナンスユニット50部分から画像記録領域方向に移動させるときに記録ヘッド4のノズル面のクリーニングを行う。
板状の第1及び第2ガイド部材22,23はいずれも広幅面が略水平状に取り付けられており、第1ガイド部材22がプラテン26に対して用紙搬送方向(矢印A方向)の上流側に配置され、第2ガイド部材23が下流側に配置されている。第2ガイド部材23の上面には、その主走査方向(X方向)に沿う両端部のうち、側壁21b側に近い側の端部に駆動プーリ30が配置され、側壁21aに近い側の端部に従動プーリ31が配置されている。従って、この実施形態では、第2ガイド部材23が請求項の枠体に相当している。駆動プーリ30と従動プーリ31の周面にはそれぞれ歯面(歯型)が形成されており、駆動プーリ30と従動プーリ31とに巻き掛けられたタイミングベルト24に設けられている歯面(歯型)と噛み合っている(図5参照)。また、タイミングベルト24は、キャリッジ5の用紙搬送方向(矢印A方向)下流側の下面にて、当該キャリッジ5と連結されている。また、駆動プーリ30と従動プーリ31のうち、少なくとも駆動プーリ30にタイミグベルト24の歯面と噛合する歯面が設けられていればよく、従動プーリ31には必ずしもタイミングベルト24の歯面と噛合する歯面が設けられていなくともよい。
第2ガイド部材23の側壁21b側に近い側の下面には、CRモータ25が配置されており、その軸が第2ガイド部材23を貫通して駆動プーリ30に連結されている。このようにすると、第2ガイド部材23は、キャリッジ5の摺動支持と、両プーリ30、31及びCRモータ25等の取り付けとの両機能を果たすことができて、コストダウンを図ることができるとともに、記録部7ひいては画像記録装置1を小型化できるという効果を奏する。
従動プーリ31は、図6及び図7に示すように、これを回転自在に軸支する従動プーリ支持体32を介して、第2ガイド部材23に取り付けられている。第1実施形態の従動プーリ支持体32は、図7(a)及び図7(b)に示すように、第2ガイド部材23の広幅面に平行に配置される上壁32a、下壁(請求項の摺動部に相当)32b、及び補助壁(請求項の第1ガイド部に相当)32dと、第2ガイド部材23の広幅面に直交する方向に延び、上壁32aと下壁32bとを正面視コの字状に繋ぐ側壁32cとを有している。この従動プーリ支持体32は、側壁32cが駆動プーリ30に近い側となるように、第2ガイド部材23に対して取り付けられ、上壁32aと下壁32bとの間に、従動プーリ31がその軸を側壁32cと略平行にして軸支され、従動プーリ31に巻き掛けられるタイミングベルト24がX方向(主走査方向)に沿って延びる。
下壁32bは平面視略長方形状を有し、側壁32cは下壁32bの駆動プーリ30に近い側の辺寄りの位置から、下壁32bの幅寸法(Y方向の寸法)よりも細幅で立設され、側壁32cの上端からこれと同幅で上壁32aが延設されている。補助壁32dは、下壁32bの下方であって、側壁32cの立設された側寄りの部位で且つ下壁32bのX方向に平行な2つの辺寄りの各部位に、下壁32bとの間に、第2ガイド部材23の板厚分と略同じ距離をあけて設けられている。下壁32bと各補助壁32dは、下壁32bの中央部寄りの位置で、それぞれ上下に連結されており、下壁32bと補助壁32dとの間は、第2ガイド部材23の板厚を挟持するための挟持部32eを構成している。
一方、第2ガイド部材23には、図7(c)に示すように、従動プーリ支持体32を装着するための開口部(請求項の第1穴部に相当)33が、平面視でX軸方向に細長い形状に穿設されており、そのY軸方向の幅は、駆動プーリ30に近い側が広幅部33aに、駆動プーリ30に遠い側は細幅部33bに形成されている。細幅部33bのX軸方向に沿う両縁部(広幅部33aより幅が狭い分の領域)は、従動プーリ支持体32の挟持部32eにそれぞれコの字状に挟持されるレール部33cとなり、このレール部33cと挟持部32eとの間で摺動が生じる。
ここでは、従動プーリ支持体32がその自重で鉛直下方に押し付けられるから、レール部33cと挟持部32eとの対向面のうち、レール部33cの上面と、挟持部32eの天面(下壁32bの下面)とが、それぞれ摺動面となる。また、下壁32bの下面の摺動面を以下第1の摺動面と記載する。そして、これら摺動面の間には、粘性抵抗剤37となる高粘度のグリスを介在させているが、その他の対向面に粘性抵抗剤37が介在してもよい。この粘性抵抗剤37は、せん断粘度(粘性)の高い潤滑剤が好適で、グリスや高粘度のオイル等が望ましい。この粘性抵抗剤37の効果を確認した実験結果については、後述する。
従動プーリ支持体32の側壁32cには、駆動プーリ30側に向けて突起部(請求項の従動プーリ側取付部に相当)36が形成されるとともに、開口部33の駆動プーリ30に近い側には、図7(c)に示すように、突起部35aを有する取付片部(請求項の枠体側取付部に相当)35が切り起こし形成されており、図6(a)に示すように、突起部36と突起部35aとに被嵌して、取付片部35と側壁32cとの間には、従動プーリ支持体32を駆動プーリ30から離れる方向に付勢する付勢手段としてコイルバネ34が取り付けられる。
第1実施形態では、従動プーリ31が軸支された従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に取り付ける際には、まず、各挟持部32eの内面、主に下壁32bの下面(第1摺動面43)に、粘性抵抗剤37を塗布する。その後、従動プーリ支持体32の補助壁32dを、開口部33の広幅部33aから、第2ガイド部材23の下面側に落とし込み、従動プーリ支持体32の挟持部32eに、開口部33のレール部33cを差し込むように従動プーリ支持体32をスライドさせ、従動プーリ支持体32を摺動方向(X方向)に沿って前後に大きく複数回移動させることによって、粘性抵抗剤37を挟持部32eとレール部33cとの摺動面全体に拡散させる。
次いで、従動プーリ支持体32の突起部36と、第2ガイド部材23の取付片部35の突起部35aとの間にコイルバネ34が嵌め込まれ、従動プーリ31と駆動プーリ30とに、タイミングベルト24が巻き掛けられる。
これにより、上記実施形態では、従動プーリ支持体32と第2ガイド部材23との摺動面に粘性抵抗剤37が介在した状態で、従動プーリ支持体32が、コイルバネ34の付勢力によって、タイミングベルト24に張力を付与する方向に付勢されているから、キャリッジ5が定常状態で移動している場合(急激な加減速を行わない場合)には、粘性抵抗剤37は、従動プーリ支持体32の動きに対して小さい抵抗として作用し、タイミングベルト24の張力の変動に応じてコイルバネ34が適宜伸縮することで、タイミングベルト24を歯飛びの生じない張力に保つことができる。この状態では、温度や湿度、時間等の変化によって、タイミングベルト24の張力が微妙に変動しても、これに追随してコイルバネ34が伸縮するから、タイミングベルト24の張力を良好な状態に維持して歯飛びを防止することができる。
一方、CRモータ25の立ち上がり時や停止時、往復移動の反転時等の、キャリッジ5が急激な加減速を行う場合には、キャリッジ5の慣性によってタイミングベルト24の張力が急激に増加し、従動プーリ支持体32を急激に摺動させようとするが、このとき粘性抵抗剤37が、従動プーリ支持体32に対して大きい抵抗として作用するから、従動プーリ支持体32の摺動が抑制され、その結果、キャリッジ5の急激な加減速が緩和されて、タイミングベルト24の歯飛びも防止できる。そして、再び、キャリッジ5の移動が定常状態に近づくと、タイミングベルト24の張力も低下し、粘性抵抗剤37が低い抵抗として作用して、従動プーリ支持体32の摺動を許容する。
このように、上記実施形態では、従動支持プーリ32の挟持部32eと、第2ガイド部材23のレール部33cとの間に、グリス等の粘性抵抗剤37を介在させる(塗布する)という、極めて簡単な構成で、タイミングベルト24の歯飛びを防止することができるのである。
次に、上記の第1実施形態を変形した第2実施形態について、図8を用いて説明する。第2実施形態では、下壁32bの下面(各挟持部32eの天面)に、粘性抵抗剤37を保持する溜り部38を設けており、これにより、粘性抵抗剤37が保持され易く、その飛散を防止することができる。この場合には、あらかじめ溜り部38に十分に粘性抵抗剤37を充填した後に、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に組み付けて摺動させることで、粘性抵抗剤37を溜り部38に保持しながら、摺動面全体に拡散させることができる。
溜り部38の形状としては、下壁32bの下面に摺動方向(X軸方向)に沿って長い溝状に形成することが望ましい。図8(b)及び図8(c)は、各挟持部32eに対応して溝状の溜り部38を1本ずつ設けたものであり、図8(d)及び図8(e)は、各挟持部32eに対応して溝状の溜り部38を2本ずつ設けたものであり、図8(f)及び図8(g)は、図8(b)及び図8(c)に比べて広幅の溝状の溜り部38を各挟持部32eに対応して1本ずつ設けたものである。図8(b)、図8(d)、図8(f)では、粘性抵抗剤37を明確にするためにハッチングで図示している。
なお、図8に示す第2実施形態では、いずれも溜り部38を下壁32bの下面に設けているが、この他に、挟持部32eとレール部33cとの対向面のうち他の面(レール部33の上面または下面、挟持部32eの底面等)に溜り部38を設けたり、これらの溜り部38を組み合わせたりしてもよい。
また、前述した第1実施形態をさらに応用した形態として、図9に示す第3実施形態では、挟持部32eとレール部33cとの摺動面に粘性抵抗剤37を注入するために、従動プーリ支持体32に注入部39を設けている。注入部39は、図9(b)及び図9(c)に示すように、側壁32cの根元の各挟持部32eに対応する位置に、下壁32bの表裏面を連通させる貫通穴を穿設することで形成している。
これにより、図9(a)に示すように、穴状の注入部39に、粘性抵抗剤37となるグリスが収容されたシリンジ41の注入管41aを差し込んで注入することができ、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に装着した後でも、摺動面となる下壁32bの下面に粘性抵抗剤37を充填することができる。従って、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23から取り外さなくても、粘性抵抗剤37を摺動面に注入したり補充したりすることができる。なお、注入部39の形状は、図9(d)及び図9(e)に示すように、貫通穴状ではなく、切欠状に形成してもよい。また、摺動面に溜り部38が設けられている場合には、溜り部38と外部とを連通させるように注入部39を設けてもよい。
また、第3実施形態を変形した形態として、図10に示す第4実施形態では、注入部39へシリンジ41の注入管41aを差し込むときの作業性を向上させるために、注入管41aを沿わせる案内部42を設けている。図10(a)及び図10(b)では、図9(d)及び図9(e)と同様の切欠状の注入部39が形成されており、この各注入部39の上方にはそれぞれ、側壁32cから傾斜状の案内部42が一体的に突設されており、この傾斜状の案内部42の下面側に注入管41aの周面を押し当てることで、注入管41aの先端を注入部39に導くことができるようにしている。
次に、第1実施形態を変形した第5実施形態を、図11を用いて説明する。第5実施形態の下壁32bは、第1実施形態の下壁32bを、コイルバネ34の配置位置よりも駆動プーリ30側に拡張した形状に形成している。この下壁32bには、第2ガイド部材23に立設した取付片部35を挿通させるための、挿通用開口部60が穿設されており、下壁32bの平面視での外形形状は、摺動方向(X方向)に長い略長方形状に形成されている。以下、便宜上、挿通用開口部60よりも駆動プーリ30に近い側の下壁32bの部分を、拡張部61と記載する。
拡張部61も第2ガイド部材23に対して摺動するため、拡張部61の下面が第2摺動面62となり、これに対向する第2ガイド部材23の上面の摺動面との間には粘性抵抗剤37が介在している。なお、下壁32bの下面である第1摺動面43と第2摺動面62とは、実際には、挿通用開口部60の両側部を介して繋がっており、同一平面に含まれている。
拡張部61の摺動方向(X方向)に平行な両側縁のうち、駆動プーリ30側の端部からは、下方に向かって第2補助片部(請求項の第2ガイド部に相当)64が突設されている。第2補助片部64はその下端がY方向の外側に向かって屈曲したL字状に形成されている。一方、第2ガイド部材23には、拡張部61における第2補助片部64に対応する位置に、それぞれ第2穴部63が穿設されている。第2穴部63の開口は、摺動方向(X方向)に沿って細長く、駆動プーリ30に遠い側が細幅部63aに、駆動プーリ30に近い側が、摺動方向に交差する方向(Y方向)の外側に向かって拡幅された広幅部63bに形成されている。
従って、第5実施形態の従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に取り付ける際には、補助壁32dを開口部33の広幅部33a(図7参照)に落とし込むとともに、第2補助片部64を第2穴部63の広幅部63bに落とし込む。次いで、コイルバネ34及びタイミングベル24を組み付けた後に、従動プーリ支持体32を駆動プーリ30から離れる方向にスライドさせて、補助壁32dを開口部33の細幅部33b(図7参照)に位置させるとともに、第2補助片部64を第2穴部63の細幅部63aに位置させる。これにより、補助壁32dと第2補助片部64は第2ガイド部材23に係合し、従動プーリ支持体32の取り付けが完了する。
粘性抵抗剤37は、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に組み付ける前に、あらかじめ第1摺動面43となる下壁32bの下面と、第2摺動面62となる拡張部61の下面とに塗布しておく。その後、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に対して摺動させることで、従動プーリ支持体32側から第2ガイド部材23の摺動面に付着し、それぞれの摺動面に拡散させることができる。
このように構成した第5実施形態では、第1実施形態に比べて、下壁23bを駆動プーリ30側に拡張して第2摺動面62を設け、摺動面全体の面積を増加させ、粘性抵抗剤37が介在する領域を拡大している。従って、第1実施形態で説明した粘性抵抗剤37によるタイミングベルトの歯飛びを防止する効果を、さらに向上させることができる。
また、第5実施形態では、下壁32bの面積の拡張を、駆動プーリ30側に向かって行っている。通常、この部位は、駆動プーリ30と従動プーリ31とに掛け渡されているタイミングベルト24の下方であるため、特別な部品は配置されないので、デッドスペースとなっている。従って、このデッドスペースを活用しているから、装置全体を大型化することなく、粘性抵抗剤37が介在する領域を拡大することができる。
また、この実施形態では、従動プーリ支持体32が摺動方向(X方向)に長い形状に形成されているが、摺動方向(X方向)に離隔した補助壁32dと第2補助片部64とで、第2ガイド部材23に係合しているから、摺動方向への移動を安定化させることができる。また、前記2つの係合によって、下壁32dが第2ガイド部材23から浮き上がることも抑制できる。
次に、第6実施形態を、図12を用いて説明する。第6実施形態の下壁32bは、第1実施形態の下壁32bを、補助壁32dと対向する領域から、摺動方向(X方向)と直交する方向(Y方向)の外側に拡張した形状に形成している。すなわち、第6実施形態の下壁32bの下面の第1摺動面43が、第1実施形態に比べて、Y方向の外側に連続して広がっており、第2ガイド部材23の上面の摺動面との間には、粘性抵抗剤37が介在している。
第2ガイド部材23には、下壁32bにおけるY方向の両端部の位置に対応して、それぞれ第3穴部65が穿設されている。第3穴部65の開口は、摺動方向(X方向)に沿って細長く、駆動プーリ30から遠い側が細幅部65aに、駆動プーリ30に近い側がY方向の外側に向かって拡幅された広幅部65bに形成されている。
下壁32bには、第1実施形態と同様の補助壁32dが設けられていることに加えて、そのY方向の外側に第3補助片部(請求項の第3ガイド部に相当)66も設けられている。第3補助片部66はその下端がY方向の外側に向かって屈曲したL字状に形成されている。
取り付けに際しては、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に取り付ける前に、あらかじめ第1摺動面43となる下壁32bの下面に塗布しておく。そして、補助壁32dを開口部33の広幅部33a(図7参照)に落とし込むとともに、第3補助片部66を第3穴部65の広幅部65bに落とし込む。次いで、コイルバネ34及びタイミングベルト24を組み付けた後に、従動プーリ支持体32を駆動プーリ30から離れる方向にスライドさせて、補助壁32を開口部33の細幅部33b(図7参照)に位置させるとともに、第3補助片部64を第3穴部65の細幅部65aに位置させる。これにより、補助壁32dと第3補助片部66は第2ガイド部材23に係合し、従動プーリ支持体32の取り付けが完了する。また、粘性抵抗剤37は、従動プーリ支持体32を第2ガイド部材23に対して摺動させることで、第2ガイド部材23に付着して、各摺動面に拡散する。
このように構成した第6実施形態では、第5実施形態と同様に、粘性抵抗剤37が介在する摺動面の面積が増大するので、粘性抵抗剤37によるタイミングベルト24の歯飛び防止効果をさらに向上させることができる。
また、従動プーリ支持体32のY方向に隣接した部分は、デッドスペースになる場合が多いため、このデッドスペースとなる領域を活用して、下壁23bを拡大しているから、装置全体を大型化することなく、摺動面を拡大することができる。
また、この実施形態では、従動プーリ支持体32が摺動方向と直交する方向(Y方向)に長い形状に形成されているが、Y方向に離隔して、補助壁32dと第3補助片部62とが、第2ガイド部材23に係合しているから、安定して摺動方向に移動することができる。また、従動プーリ支持体32が第2ガイド部材23から浮き上がることも防止できる。
次に、第5実施形態と第6実施形態とを応用した第7実施形態を、図13を用いて説明する。第7実施形態の下壁32bは、第5実施形態と同様に、コイルバネ34の配置位置よりも駆動プーリ30側に拡張した部分と、第6実施形態と同様に、摺動方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に拡張した部分とを有するように形成している。そして、下壁32bには、補助壁32dに加えて、第5実施形態の第2補助片部64と、第6実施形態の第3補助片部66とが設けられている。
これに対応して、第2ガイド部材23には、第1実施形態の開口部33に加えて、第5実施形態の第2穴部63と、第6実施形態の第3穴部65とが設けられている。
第7実施形態は、第5及び第6実施形態をあわせた形態であるから、これらよりもさらに摺動面が増大し、粘性抵抗剤37が介在する領域を拡大することができ、装置のデッドスペースを利用して、より一層、タイミングベルト24の歯飛び防止効果を高めることができる。
次に、第5実施形態を応用した第8実施形態を、図14を用いて説明する。第8実施形態の従動プーリ支持体32では、その下壁32bを、第5実施形態と同様に、コイルバネ34の配置位置よりも駆動プーリ30側に拡張した形状に形成している。その拡張部61の裏面には、第2摺動面62が形成されているが、第2摺動面62のうち駆動プーリ30側の所定領域71には、粘性抵抗剤37を介在させないようにしている。
なお、第8実施形態では、下壁32bと補助壁32dとの間には第1実施形態のような挟持部32eは設けていない。
粘性抵抗剤37が介在する領域には、組み立て工程の時に粘性抵抗剤37の塗布すべき位置を示す表示部70を設けている。この実施形態では、表示部70としてリング状の浅い溝を4つ形成しており、リングの内側にディスペンサー等を用いて規定量の粘性抵抗剤37を塗布することで、粘性抵抗剤37の塗布位置及び塗布量のばらつきを抑えることができる。表示部70の大きさや塗布する粘性抵抗剤37の量は、もちろん、粘性抵抗剤37の粘度や、その広がる範囲(図14(c)に点線で図示)を考慮して算出される。
第2摺動面62に粘性抵抗剤37があらかじめ塗布された状態の従動プーリ支持体32を、第2ガイド部材23に取り付ける手順について説明する。まず、開口部33の広幅部33a(図7参照)に補助壁32dを、第2穴部63の広幅部63bに第2補助片部34を、それぞれ差し込むが、このとき、従動プーリ支持体32は、図15(a)に示すように、その稼動範囲の中で、駆動プーリ30に最も近い位置にある。
次いで、図15(b)に示すように、従動プーリ支持体32を駆動プーリ30から遠い側(矢印A参照)に摺動させて、コイルバネ34を取り付け、図15(c)に示すように、タイミングベルト24を従動プーリ30に掛ける。これにより、取り付けは完了する。
しかしながら、取り付け手順のやり直しや、間違い等により、一旦、駆動プーリ30から遠い側(矢印A参照)に摺動させた従動プーリ支持体31を、駆動プーリ30に最も近い側(図15(a)、矢印B参照)に摺動させ、再び、駆動プーリ30から遠い側(図15(c)、矢印A参照)に摺動させることがある。
仮に、第2摺動面62の全体に(駆動プーリ30側の所定領域71も含めて)、粘性抵抗剤37を塗布していると、前述した摺動方向への往復動作を一回行うことで、粘性抵抗剤37が、従動プーリ支持体32とともに駆動プーリ30に近い側に付着する。そのため、第2ガイド部材23において、取り付け完了後に外部に露出する露出領域72に、粘性抵抗剤37がはみ出したままになる。
粘性抵抗剤37は、高粘度のグリスであるため、第2ガイド部材23上で外部に露出していると、他の部品にも付着して、不具合が発生する虞が大きい。特に、タイミングベルト24で駆動されるキャリッジ5に付着すると、キャリッジ5の走行不良を引き起こすこともある。また、間接的に、インク供給管20やテープスケール47やフレキシブルフラットケーブルに付着してこれらに係わる動きを規制する虞もある。
従って、この実施形態では、あらかじめ、第2摺動面62における駆動プーリ30側の所定領域71に塗布しないでおくことによって、粘性抵抗剤37が従動プーリ支持体32から駆動プーリ30側へはみ出すことを防止している。もちろん、所定領域71の設定範囲、換言すると、粘性抵抗剤37の塗布範囲(表示部40の位置、大きさ)は、従動プーリ支持体32の稼動範囲(図15(a)〜図15(c)参照)や、露出領域72の大きさ等を考慮して決定している。
次に、第8実施形態を変形した第9実施形態を、図16を用いて説明する。第9実施形態の従動プーリ支持体32は、第8実施形態の所定領域71に相当する部分を、第2ガイド部材23に対して摺動しない非摺動面にするように、くぼみ部73として形成している(図16(c)参照)。くぼみ部73は、第2ガイド部材23の表面との間隔(ギャップ)が大きいため、第2ガイド部材23の摺動面に付着した粘性抵抗剤37が、くぼみ部73に移ることがない。
従って、第2摺動面62と第2ガイド部材23とが摺動しても、これらの摺動面に介在する粘性抵抗剤37は、くぼみ部73には付着しないから、第2ガイド部材23において、取り付け完了後に外部に露出する露出領域72に、粘性抵抗剤37がはみ出ることがない。換言すれば、粘性抵抗剤37は、第2摺動面62から駆動プーリ30側へはみ出すことはあっても、これをくぼみ部73が覆うように隠すから、粘性抵抗剤37が外部に露出することを防止できるのである。
次に、第8及び第9実施形態を変形した第10実施形態を、図17を用いて説明する。第10実施形態の従動プーリ支持体32は、第8実施形態の従動プーリ支持体32(図13参照)における駆動プーリ30側の端部に、第9実施形態と同様の非接触面(くぼみ部73)を設けた形状に形成している。
第10実施形態の従動プーリ支持体32は、その稼動範囲の中で、最も駆動プーリ30に近い位置にあるときには図17(c)に示すように、くぼみ部73が駆動プーリ30側に突出して、第2ガイド部材23を覆っている。
従動プーリ支持体32の下面側は、図17(b)に示すように、第2摺動面62における駆動プーリ30から遠い側に、粘性抵抗剤37を塗布するための表示部70が設けられ、その駆動プーリ30側に隣接して、粘性抵抗剤37を塗布しない(介在させない)所定領域71、さらにその駆動プーリ30側に隣接して、くぼみ部73を設けている。
これにより、粘性抵抗剤37が介在する領域を増やして、タイミングベルト24の歯飛び防止効果を高めながら、粘性抵抗剤37が従動プーリ支持体32からはみ出して他の部品を付着することを、確実に防止することができる。また、このように駆動プーリ30側へ従動プーリ支持体32を拡張することは、装置のデッドスペースを活用したものであるから、装置の大型化を招く心配もない。
次に、粘性抵抗剤37の効果について説明する。図18に示す実験結果は、粘性抵抗剤がタイミングベルトの歯飛びの発生に与える影響について調べたものである。実験には、第1実施形態で説明した記録部7の構成のみを備えた簡易型の試験機を用いた。
粘性抵抗剤37には、せん断粘度の異なる7種類(1000、2000、3000、4200、6200、7600、9800[Pa])のグリスを用意し、各粘性抵抗剤37を従動プーリ支持体32の挟持部32eと第2ガイド部材23のレール部33cとの摺動面に介在させた後、CR(キャリッジ)モータ25の駆動電圧を段階的に上昇させ、どの駆動電圧になるとタイミングベルト24に歯飛びを生じるかを調べ、歯飛びが生じたときの電圧値を歯飛び電圧とした。CR(キャリッジ)モータ25の駆動電圧を高めると、タイミングベルト24に与える張力変化が大きくなるから、歯飛び電圧が高いということは、換言すると、タイミングベルト24が歯飛びを生じ難いということになる。
実験は2回行い、実験1は、初期のタイミングベルト24の張力を18.3〜18.5[N]に設定して、前記7種類の粘性抵抗剤37全てに対して実験を行ったものであり、実験2は、初期のタイミングベルト24の張力を16.4〜16.5[N]に設定して、前記7種類の粘性抵抗剤37のうちの3種類に対して実験を行ったものである。なお、実験1、実験2のいずれも、せん断粘度が0[Pa]は、粘性抵抗剤37を適用しないときの結果を示している。
図11の実験結果から、実験1及び実験2のいずれの場合も、歯飛び電圧は、粘性抵抗剤37を用いる場合には、用いない場合(0[Pa])に比べて上昇し、また、粘性抵抗剤37のせん断粘度が増加すると、歯飛び電圧も上昇する傾向があることがわかった。すなわち、粘性抵抗剤を用いることで、タイミングベルトの歯飛びを防止する効果が得られ、且つ、せん断粘度が高い粘性抵抗剤の方が歯飛びに対する防止効果が高くなることが確認できた。
また、実験1と実験2とを比較すると、実験1の結果の方が、歯飛び電圧が高い傾向を有していることから、当初に設定するタイミングベルトの張力を高くする方が、ベルトの歯飛びが生じ難いことも確認できた。
なお、キャリッジ5を第1及び第2ガイド部材22,23に沿って摺動させるときに、その摺動面にもグリス等の潤滑剤を添加するが、粘性抵抗剤37に用いる潤滑剤を選択する場合には、前述したキャリッジ用の潤滑剤に比べて、画像記録装置1を使用する環境温度範囲の全てにおいてせん断粘度が高い潤滑剤を選択することが望ましい。これは、使用
環境温度が低下すると、キャリッジ用の潤滑剤の粘度が上昇し、キャリッジ5が移動し難くなる、つまりタイミングベルトの歯飛びが生じ易くなるが、これと同時に、キャリッジ用の潤滑剤の粘度以上に、粘性抵抗剤37に用いる潤滑剤の粘度が上昇していれば、確実に歯飛びを抑制することができるからである。