次に、本発明を具体化した最良の実施形態について説明する。図1は本発明の画像記録装置の全体斜視図、図2は概略側断面図、図3は画像読取装置を除いた状態の画像記録装置の概略平面図、図4は記録部を示す斜視図、図5は記録部の一部切欠き拡大斜視図、図6はキャリッジと第1ガイド部材と第2ガイド部材とを示す左側面図、図7はキャリッジの下面図、図8はキャリッジに対する無端ベルト(タイミングベルト)の連結状態を示す説明図、図9はタイミングベルトの巻掛け状態を示す説明図である。
本実施形態の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1に示すように、装置における合成樹脂製の記録装置本体2の底部には、記録装置本体2の前側(図1において左側)の開口部2aから差込み可能な給紙カセット3が配置されている。以下、開口部2aがある側を前側または前方といい、これを基準に装置の前側、左右側、後側という。
本実施形態では、給紙カセット3は、被記録媒体としての例えばA4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺が用紙搬送方向(副走査方向、Y軸方向)と直交する方向(図1において紙面と直交する方向、主走査方向、X軸方向)に延びるようにして複数枚積層(堆積)されて収納できる形態とする(図1参照)。
なお、給紙カセット3の上部には、排紙トレイ3aがY軸方向に移動可能に装着されている。図1では、排紙トレイ3aが記録装置本体(ハウジング)2から外部に突出しない位置に押し込み配置されている状態を示している。
また、給紙カセット3の奥側(図2において右側)には、用紙分離用の土手部8が配置されている。また、記録装置本体2側には、上端部が上下方向に回動可能なアーム6aが装着され、このアーム6aの下端に設けられた給紙ローラ6と、傾斜分離板8とにより、給紙カセット3に堆積された被記録媒体である用紙Pを一枚ずつ分離搬送する。分離された用紙Pは上横向きのUターンパス(給送路)9を介して給紙カセット3より後方の上側(高い位置)に設けられた記録部7に給送される。記録部7は、後に詳述するように、プリンタ機能などを実現するためのインクジェット式の記録ヘッド4が下面に搭載された往復動可能なキャリッジ5等からなる。
記録部7にて記録された用紙Pがその記録面を上向きにして排出される排紙部10は、補助給紙カセット3aの上側に形成されており、排紙部10に連通する排紙口(開口部2aの上方)が記録装置本体2の前面に向かって開口されている。
記録装置本体2の上部には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための画像読取装置12が配置されている。
記録装置本体2の上側には、画像読取装置12の前方に各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部14とが設けられており、画像読取装置12と操作パネル部14との平面視投影面積内に、記録部7と排紙部10並びにこの排紙部10の一側に設けられたインク貯蔵部15が位置するように配置されている。
画像読取装置12の上面には、原稿カバー体13を上側に開けて原稿を載置することができる載置用ガラス板(図示せず)が設けられ、その下側に原稿読取り用のイメージスキャナ装置(CIS:Contact Image Sensor) (図示せず)が図1の紙面と直交する方向(主走査方向、図1におけるX軸方向)に往復移動可能に設けられている。
インク貯蔵部15は、記録装置本体2の上方に向かって開放されており、インク貯蔵部15には、フルカラー記録のための4色のインクを各々収容した平面視の面積が小さく、且つ高さ寸法の高いほぼ矩形箱状のインクカートリッジ19(個別の色、即ち、ブラック(BK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)用インクのカートリッジに対しては符号19a〜19dを付する、図3参照)を、Y軸方向に沿って一列状に収納でき、上方から着脱可能となるように構成されている。
そして、各インクカートリッジ19からインクジェット式の記録ヘッド4に複数本(実施形態では4本)のインク供給管(インクチューブ)20を介してインクを供給するように構成されている。なお、4色よりも多数のインク色を使用する場合(6色〜8色等)には、そのインク色の数に応じたインクカートリッジをインク貯蔵部15に収納可能に構成すれば良いし、インク供給管20もインクカートリッジの数に合わせて増やせばよい。
記録部7は、図2〜図6に示すように、上面開放された枠状のメインフレーム21における左右一対の側板21a、21bにて支持されている。即ち、X軸方向(主走査方向)に延びる横長の板状(プレート状)の第1ガイド部材22、第2ガイド部材23と、これら両ガイド部材22、23に跨がって摺動自在に支持(搭載)されて往復移動可能に構成されたキャリッジ5と、記録ヘッド4が搭載されたキャリッジ5を往復移動させるために第2ガイド部材23の上面にそれと平行状に配置された無端ベルトの一例としてのタイミングベルト24と、そのタイミングベルト24を駆動するCR(キャリッジ)モータ25(実施形態ではDCモータであるが、ステッピングモータ等他のモータでもよい。)と、記録ヘッド4の下面側にて搬送される用紙Pを支持する板状のプラテン26と、主走査方向に沿って延びるように配置されてキャリッジ5のX軸方向(主走査方向)の位置とその方向の移動速度を検知するためのエンコーダストリップ47等を備える。この帯状のエンコーダストリップ47は検査面(X軸方向に一定間隔で配置されたスリットの形成面)が垂直方向に沿うように配置されている。なお、プラテン26上で用紙Pが通過する方向での用紙搬送方向(矢印A方向、図3、図4、図5、図6参照)の上流側に、第1ガイド部材22が配置され、下流側に第2ガイド部材23が配置されることになる。
また、プラテン26を挟んで搬送上流側にレジストローラ対27が配置されて用紙Pを記録ヘッド4の下面のノズル面4aとプラテン26との隙間に送られる。プラテン26の下流側には、用紙Pの上面に接する拍車28bと下面側の駆動する排紙ローラ28aとが配置され記録済みの用紙Pが排紙部10に搬送される。
また、搬送される用紙Pの幅(用紙Pの短辺)より外側には、その一端側(実施形態では図3及び図4で左側の側板21aに近い部位)にインク受け部48が、また、他端側(図3及び図5で右側の側板21aに近い部位)にメンテナンスユニット50がそれぞれ配置されている。これにより、記録ヘッド4はインク受け部48に設けられたフラッシング位置にて記録動作中に定期的にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部にてインクを受ける。メンテナンスユニット50部分では、キャリッジ5は待機位置であって、色毎にインクを選択的に吸引したり、記録ヘッド4上の図示しないバッファタンク内の気泡を除去するための回復処理等を行う。また、メンテナンスユニット50には図示しないが、ワイパーが設けられており、キャリッジ5をメンテナンスユニット50部分から画像記録領域方向に移動させるときに記録ヘッド4のノズル面4aのクリーニングを行う。
さらに、左側板21aの内面に固定した用紙搬送用の駆動モータ(図示せず)の駆動軸に取付られたピニオンギヤからレジストローラ対27の駆動ローラ27aに同軸状に直結した第1伝動ギヤ32bに動力伝達する。駆動ローラ27aには、大径のロータリエンコーダ検出円盤33が設けられ、ロータリエンコーダ検出円盤33の上部は左側板21aの上面より上側に突出している。第1伝動ギヤ32bに噛合う中間ギヤ34と同軸で直結された第1プーリと排紙ローラ28aに取付られた第2プーリとに無端タイミングベルトが巻掛けされて、動力伝達されている。
用紙搬送方向(矢印A方向)の上流側の第1ガイド部材22及び下流側の第2ガイド部材23はそれぞれほぼ水平状態に配置されている。第1ガイド部材22の側断面は、図5及び図6に示すように、キャリッジ5における用紙搬送方向(矢印A方向)の上流側部位を水平状に摺動可能に支持するための第1摺動面51を有する平板部22aと、キャリッジ5の後述するホルダ体61における用紙搬送方向の上流側部位の係合凹部70に嵌まる側面Z字状の突片22bとが一体的に形成されている。
第2ガイド部材23の側断面は、図5及び図6に示すように、上記タイミングベルト24、CR(キャリッジ)モータ25、エンコーダストリップ47等の取付けの鉛直軸方向(Z軸方向)の基準面となる水平広幅片23aと、水平広幅片23aを挟んで用紙搬送方向の上流側部位で上向き屈曲させたほぼ鉛直な上流側ガイド片23cと、水平広幅片23aを挟んで用紙搬送方向(副走査方向、Y軸方向)の下流側部位で上向き屈曲させたほぼ鉛直な下流側ガイド片23dと、下流側ガイド片23dの上端より下流側部位に向かって平板状に屈曲させた平板部23bとを有する。この平板部23bの上面には、キャリッジ5における用紙搬送方向の下流側部位を水平状に摺動可能に支持するための第2摺動面52が形成されている。
第1ガイド部材22における第1摺動面51と、第2ガイド部材23における第2摺動面52とは、キャリッジ5における記録ヘッド4の下面(ノズルが形成されたノズル面4a)と平行になるように、各ガイド部材22、23の上面に形成されている。上流側ガイド片23cには、用紙搬送の下流側に向く第3摺動面53が形成されている(図5及び図6参照)。また、下流側ガイド片23dには、用紙搬送の上流側に向く第4摺動面54が形成されている(図5及び図6参照)。第1、第2、第3、第4摺動面51、52、53、54はそれぞれX軸方向に長く直線的に形成されている。
キャリッジ5は、図5、図6及び図7に示すように、平面視でほぼ矩形状の合成樹脂製のホルダ体61からなり、ホルダ体61の用紙搬送上流側部位には記録ヘッド4が下面側に収納される下向き高さ寸法の大きいヘッド収納部61aが形成されている。ホルダ体61の用紙搬送下流側部位には上記複数本のインク供給管20の先端部が横向きに接続されて記録ヘッド4にインクを供給するインク流路(図示せず)やフレキシブルフラットケーブル40の先端部を接続するための接続支持部61bや、エンコーダストリップ47を通過させて位置及び移動速度を検知するための光透過式のセンサ(ホトカプラ)61cのためのガイド溝85が一体的に設けられている。
実施形態では、図5に示すように、キャリッジ5におけるホルダ体61の上面を覆う合成樹脂製の上蓋66の上面には、エンコーダストリップ47がX軸方向に通過し得る上方開放状で且つX軸方向にも開放されたガイド溝85が一体的に形成されている。ガイド溝85内の中途部には、エンコーダストリップ47の表裏両面を挟んで通過可能とするホトカプラ61cが配置されている。なお、エンコーダストリップ47の両端は、第2ガイド部材23の左右両端から立て起こした支持片86にて張設されている。
キャリッジ5の用紙搬送上流側部位には、その下面側から突出して第1ガイド部材22における第1摺動面51に当接する1つの第1摺動凸部55aが、ホルダ体61のX軸方向の中央部に設けられている(図7参照)。
キャリッジ5(ホルダ体61)の用紙搬送下流側部位には、その下面側から突出して第2ガイド部材23における第2摺動面52に当接する左右一対の第2摺動凸部55bが、ホルダ体61のX軸方向の中央線OXを挟んで寸法X1だけ隔てて左右対称状に設けられている(図7参照)。したがって、キャリッジ5の平面視(または下面視)において、1つの第1摺動凸部55aと左右一対の第2摺動凸部55bとの各中心部を結ぶ形状が二等辺三角形となる。この構成により、第1及び第2ガイド部材22、23に対してキャリッジ5が安定して支持される。
第1摺動凸部55aに隣接して設けられた第1補助摺動凸部56aは、キャップのノズル面4aとプラテン26との隙間(ペーパーギャップ)PGを、上記第1摺動凸部55aで当接する場合より大きくするときに、第1摺動凸部55aの下面よりも選択的に下向きに突出するように構成されている。同様に、一対の第2摺動凸部55bに隣接して設けられた第2補助摺動凸部56bは、キャップのノズル面4aとプラテン26との隙間(ペーパーギャップ)PGを上記と同様に大きくするときに、第2摺動凸部55bの下面よりも選択的に下向きに突出するように構成されている。図6では、第1補助摺動凸部56aが第1摺動面51に当接し、且つ第2補助摺動凸部56bが第2摺動面52に当接することにより、隙間(ペーパーギャップ)PGが大きい状態を示す。なお、キャリッジ5には、第1補助摺動凸部56a及び第2補助摺動凸部56bを選択的に昇降させる機構(詳細な説明は省略する)とその作用片57a、57bがX軸方向に往復移動可能且つ出没可能に設けられている。キャリッジ5がX軸方向に沿って移動したときの一方の移動端と他方端にて、第1ガイド部材22及び第2ガイド部材23の切り起こし片22e、23eに、作用片57a、57bが衝突することにより、第1補助摺動凸部56a及び第2補助摺動凸部56bを選択的に昇降させる構成である(図4、図6、図7参照)。
キャリッジ5(ホルダ体61)には、第2ガイド部材23における第3摺動面53に当接させる左右一対の第3摺動凸部60a、60b(請求項でいう一方の一対の摺動凸部に該当する)が一体的に形成されている。即ち、左右一対の第3摺動凸部60a、60bは、図7において、X軸方向の中央線OXを挟んで寸法X2、X2′だけ隔てて略左右対称状に設けられている。
この左右一対の第3摺動凸部60a、60bは、図6及び図7に示すように、記録ヘッド4側に近く、且つY軸方向の重心Gに近い側(上流側ガイド片23cを挟んで、ベルト連結部63と反対側)に設けられている。
さらに、キャリッジ5(ホルダ体61)には、鉛直方向の下流側ガイド片23dにおける第4摺動面54に当接する左右一対の第4摺動凸部65a、65b(請求項でいう他方の一対の摺動凸部に該当する)が配置されるものとし、この一対の第4摺動凸部65a、65bは弾力付勢手段の一例としての挟持体62(図8において影線が施された部分を参照)の両端部に形成されている。一対の第4摺動凸部65a、65bは、図7において、X軸方向の中央線OXを挟んで寸法X3(<X2)だけ隔てて左右対称状の位置に配置されている。
図8に示すように、合成樹脂製の左右長手の弾性部材としての挟持体62の左右の中央部がホルダ体61への取付部62aであり、左右両端の膨出部62bとの間はそれ自体で可撓性を有する断面の小さい連設部62cである。各膨出部62b内には、図示しない圧縮コイルバネが配置されており、この圧縮コイルバネの付勢力にて、一対の第4摺動凸部65a、65bが下流側ガイド片23dを搬送下流側に向かって弾性的に押圧する。しかして、第2ガイド部材32における上流側ガイド片23cの第3摺動面53を左右一対の第3摺動凸部60a、60bが搬送上流側に押し付け、逆に下流側ガイド片23dの第4摺動面54を一対の第4摺動凸部65a、65bが搬送下流側に向かって押し付ける。換言すると、上流側ガイド片23cと下流側ガイド片23dとに対して、第3摺動凸部60a、60bと第4摺動凸部65a、65bとで突っ張るように水平力が作用する。
キャリッジ5(ホルダ体61)の下面側には、副走査方向(Y軸方向)において、第3摺動凸部60a(60b)と第4摺動凸部65a(65b)との間に、タイミングベルト24の一部が連結されるベルト連結部63が設けられている(図6及び図7参照)。より詳しく説明すると、ベルト連結部63は、接続支持部61bの下面側に設けられて、キャリッジ5の下面側及び主走査方向の両側に開放されてタイミングベルト24が嵌まる溝部を有する。
上記のように、ベルト連結部63に近い側の第3摺動凸部60a(60b)が、上流側ガイド片23cの第3摺動面53に対して進退動しない形態にしておくと、第3摺動凸部60a(60b)をホルダ体61と一体成形できるから、Y軸方向の寸法をコンパクトに形成できる。他方、弾力付勢手段(挟持体62)により、第4摺動凸部65a、65bは、下流側ガイド片23dの第4摺動面54に対して進退動し得るものであるので、部品点数が多くなる。従って、ベルト連結部63よりもY軸方向の下流側に離した位置に、第4摺動凸部65a、65b及び弾力付勢手段を配置することで、ベルト連結部63をY軸方向において、上流側ガイド片23c、ひいては重心位置Gに接近させて配置できる。その結果、キャリッジ5をタイミングベルト24により、X軸方向に引っぱって移動させるときの、Z軸回りの重心位置Gに対するキャリッジ5に与える回動モーメントを可及的に小さくできるという効果を奏する。
タイミングベルト24を巻き掛ける駆動プーリ89と従動プーリ90とを、図3、図9(但し、図4では従動プーリ90のみ示す)に示すように、第2ガイド部材23における水平広巾片23aの上面側の主走査方向の両端部に配置する。このようにすると、第2ガイド部材23はキャリッジ5の摺動支持と、駆動プーリ89とCRモータ25及び従動プーリ90等の移動手段の取付けとの両機能を果たすことができて、コストダウンを図ることができると共に、記録部7ひいては画像記録装置1を小型化できるという効果を奏する。
なお、キャリッジモータ(CRモータ)25の首部25aから突出する駆動軸25bに嵌着した駆動プーリ89の最大直径D1は首部25aの直径D2より小さく形成しておく(図9参照)。そして、予め、駆動軸25bに駆動プーリ89を装着固定した状態で、第2ガイド部材23における水平広巾片23aに穿設されている取付け孔(首部25aの直径D2に等しい)に、下方から駆動プーリ89及び首部25aを差し込む。次いで、水平広巾片23aの上面からねじ(図示せず)にて駆動モータ25を固定する。
このように、駆動プーリ89の最大直径D1を駆動モータ25の首部25aの直径D2より小さく形成し、且つ第2ガイド部材23に首部25aの直径D2とほぼ等しい取付け孔23bを形成しておくと、駆動モータ25を第2ガイド部材23に取付けする前に駆動プーリ89を駆動軸25bに嵌着することができる。また、第2ガイド部材23の水平広巾片23aには、駆動モータ25を取付けするための取付け孔のみを穿設しておけば良いから、第2ガイド部材23の機械的強度を極端に弱めることがない。さらには、首部25aと駆動プーリ89との間に水平広巾片23aが配置されるような取付け構造に比べて、首部25aに対して駆動プーリ89を極めて接近させて配置することができる。駆動プーリ89の円周面にはタイミングベルト24用の歯面(歯型)89aが形成されていると、駆動モータ25の回転とタイミングベルト24の移動との間にスリップ現象が発生しない。また、駆動プーリ89の上端側にはタイミングベルト24の離脱防止用のフランジ部89bが一体的に形成されている。
従動プーリ90はタイミングベルト24が巻回するプーリ部90aと、このプーリ部90aからその回転中心軸線に沿って両方方向に突出する軸部90bと、タイミングベルト24の幅方向の両縁を軸部90b方向に離脱させない大径のフランジ部90cとが、合成樹脂材により一体的に形成されたものである(図9参照)。そして、従動プーリ90が回転可能に支持されたホルダ92を駆動プーリ89から離間する方向に図示しないばねにて弾力付勢する。
駆動プーリ89と従動プーリ90とに巻回した(掛け渡した)タイミングベルト24のうち、キャリッジ5への連結固定された側片の延びる方向が、第2ガイド部材23における上流側ガイド片23cとX軸方向に沿ってほぼ平行状となるように、換言すると、小径の駆動プーリ89の軸心(回転中心)から上流側ガイド片23cまでの最短距離が、大径の従動プーリ90の軸心(回転中心)から上流側ガイド片23cまでの最短距離よりも小さく(短く)なるように、駆動プーリ89と従動プーリ90との配置位置を偏倚させる。これにより、キャリッジ5が主走査方向(X軸方向)に移動するとき、上流側ガイド片23cと平行となるように、タイミングベルト24でキャリッジを牽引でき、上流側ガイド片23cにおける第3摺動面53(基準面)に沿って安定して移動でき画像の記録性能を向上させることができる。その場合、大径の従動プーリ90を上流側ガイド片23cから離して配置することで、第2ガイド部材23の矢印A方向の幅寸法を小さくでき、コンパクトにできる。
さらに、キャリッジ5を取付けた側のタイミングベルト24による張力の力成分(分力)がキャリッジ5を第2ガイド部材23の平板部23b及び鉛直片である上流側ガイド片23c、下流側ガイド片23dに押圧する方向に働くように、駆動プーリ89と従動プーリ90と、タイミングベルト24に対するキャリッジ5のベルト連結部63の配置関係を設定するのが好ましい。これにより、キャリッジ5の移動が安定するからである。
図9は、キャリッジ5を第2ガイド部材23の水平広巾片23aの上面の第2摺動面52に押圧付勢する実施形態を示す。タイミングベルト24に対するキャリッジ5のベルト連結部63の高さ位置を、駆動プーリ89及び従動プーリ90へのタイミングベルト24の巻回部位の高さ位置より上方に偏倚させるものである。その場合、ベルト連結部63では、ブロック63bの下端両側に突出させた一対の係止爪部63cにより、ブロック63a、63bの間に嵌めて挟持させたタイミングベルト24の下端縁を下向きに脱落不能に係止しており、駆動プーリ89の上端のフランジ部89bによりタイミングベルト24の上端縁を上向きに離脱させないように規制し、さらに、従動プーリ90における上側のフランジ部90cでもタイミングベルト24の上端縁を上向きに離脱させないように規制している。
本実施形態では、キャリッジ5全体の重心位置Gは、X軸方向(キャリッジ5の左右幅方向)に対して、図7に示すX軸方向の中央線OX上にあり、Y軸方向に対しては、図6に示すように、キャリッジ5における収納部61a側にあって、第3摺動凸部60a、60b側からY軸に沿って距離Y1の短い(近い)位置にある。また、Z軸方向(鉛直方向)に対するキャリッジ5全体の重心位置Gの高さ位置はベルト連結部63のZ軸方向(鉛直方向)の高さ位置と実質上同じ高さ位置に設定したものである(図6参照)。これらの構成により、キャリッジ5が主走査方向に移動開始するとき(キャリッジ5が加速度の影響を受けるとき)にも、キャリッジ5の重心位置Gを通るY軸回りのモーメントも第2摺動凸部55b(第2摺動面52)側で支持でき、その結果、上記重心位置Gを通るY軸回りのキャリッジ5の回転モーメントに対して主走査方向への安定したキャリッジ5の移動を確保することができる。
また、図7で示すように、キャリッジ5における1つの第1摺動凸部55aと、左右一対の第2摺動凸部55b、55bとにより、第1ガイド部材22(第1摺動面51)と第2ガイド部材23(第2摺動面52)に対して平面視で三角形状にて支持され、しかも、左右一対の第2摺動凸部55b、55bのX軸方向の配置間隔X1を大きく取っているので、キャリッジ5の重心位置を通るY軸回りのキャリッジの支持姿勢が安定する。特に、キャリッジ5が主走査方向(X軸方向)に移動開始するとき(キャリッジが静止状態から加速度を受けて移動するとき)のタイミングベルト24による上記X軸方向分力F4の作用で、Y軸回りにキャリッジ5が回転しようとする力を、左右に離れた左右一対の第2摺動凸部55b、55bと、第2摺動面52との箇所で効率良く受け止めることができる。その結果、Y軸回りのキャリッジ5の姿勢変化を無くし、主走査方向への安定した移動を確保することができる。
本実施形態では、ベルト連結部63におけるタイミングベルト24に対する張力F1のX軸方向分力F4及びZ軸方向分力F5のうち、Z軸方向の分力F5と、キャリッジ5の自重とが、第1摺動凸部55aと第2摺動凸部55bとを介して上記第1ガイド部材22の第1摺動面51及び第2ガイド部材23の第2摺動面52にZ軸(鉛直)の下向き方向に作用する。そして、図6に示すように、キャリッジ5の重心位置Gから第1摺動凸部55aまでのY軸に沿っての距離Y2と、同じく第2摺動凸部55bまでの距離Y3とが大きいから、キャリッジ5の静止時及び一定速度でのX軸方向(主走査方向)への移動時にも、Y軸に沿って大きく離間した第1摺動凸部55a及び第2摺動凸部55bを介して第1ガイド部材22及び第2ガイド部材23にてキャリッジ5を安定して支持させることができ、キャリッジ5に搭載した記録ヘッド4の下面とプラテン26上の用紙Pとの隙間寸法(PG)が安定し、これによっても画像の記録性能が向上するのである。
第2ガイド部材23における上流側ガイド片23cには、第2摺動面52に対して実質上直交するように縦方向の第3摺動面53が形成され、下流側ガイド片23dにも、同様の縦方向の第4摺動面54が形成されている。これら第3摺動面53と第4摺動面54とは、Y軸方向において、第1摺動面51と第2摺動面52との間に位置するように備えられ、且つベルト連結部63を挟んでY軸方向の上流側と下流側とに距離Y4だけ隔てて配置されている。そして、キャリッジ5には、第3摺動面53に当接して摺動可能な左右一対の第3摺動凸部60a、60bと、この第3摺動面53と対向するように形成された第4摺動面54に当接すべき左右一対の第4摺動凸部65a、65bを第4摺動面54の方向に弾力付勢するための弾性部材である挟持体62とを備える。
しかも、左右一対の第4摺動凸部65a、65bは、Y軸方向において、ベルト連結部63を挟んで重心位置Gと反対側であって、大きく離れた位置にある。このように構成すると、上記タイミングベルト24の張力にてキャリッジ5がZ軸回りに回転しようとする回転モーメントを、キャリッジ5に設けられた第4摺動凸部65a、65bが鉛直方向(Z軸方向)の第4摺動面54に当接することで受け止めることができる。また、第4摺動面54と第4摺動凸部65a、65b間の摩擦力も回転モーメントを打ち消す方向に発生する。そして、第3摺動凸部60a、60bと第4摺動凸部65a、65bとは、第3摺動面53と第4摺動面54との間にあって、第3摺動凸部60a、60bと第4摺動凸部65a、65bとにより、第3摺動面53と第4摺動面54とを外向きに(互いに反対向きに)突っ張るように押圧付勢するものであるから、上記Z軸回りのキャリッジ5の姿勢変化を無くし、主走査方向(X軸方向)への安定した移動を確保することができる。そのときの、第4摺動凸部65a、65bが第4摺動面54に当接する押圧力も少ない状態で達成できる。
ベルト連結部63の高さ位置が、タイミングベルト24の第2ガイド部材23に対する装着部(駆動プーリ89及び従動プーリ90)より高い位置に設定すれば、特にキャリッジ5が主走査方向に移動開始するとき(キャリッジ5が静止状態から加速度を受けて移動するとき)、キャリッジ5におけるベルト連結部63の位置で、キャリッジ5には、タイミングベルト24の張力の鉛直方向(Z軸方向)の分力F5が作用する。その場合、その分力にてベルト連結部63を通るX軸回りにキャリッジ5が回転しようとする回転モーメントを、第2摺動凸部55b(第2摺動面52)と第3摺動凸部60a、60b(第3摺動面53)の箇所で効率良く受け止めることができる。その結果、上記ベルト連結部63を通るX軸回りのキャリッジ5の姿勢変化を無くし、主走査方向への安定した移動を確保することができる。
装置本体2の静止位置に備えたインク貯蔵部15からインクを供給する湾曲可能な複数本のインク供給管20が、キャリッジ5におけるX軸方向と対面する一側部(接続支持部61b)に接続されており、インク供給管20がキャリッジに接続する箇所(管接続部72)は、Y軸方向において、第1摺動凸部55aと第2摺動凸部55bとの間に位置すると、その接続部(接続支持部61b)には、鉛直(Z軸)方向の荷重が掛かる。その荷重によるキャリッジ5の重心位置Gを通るX軸回りのモーメントも第2摺動凸部55b(第2摺動面52)側で支持でき、その結果、上記重心位置Gを通るX軸回りのキャリッジ5の姿勢変化をなくし、主走査方向への安定した移動を確保することができる。
また、湾曲可能なインク供給管20が、キャリッジ5における主走査方向と対面する一側部(接続支持部61b)に接続されている箇所は、副走査方向において、ベルト連結部63と第2摺動面52との間に位置するものであるので、接続されたインク供給管20がキャリッジ5の移動につれて湾曲する箇所が変化することで、キャリッジ5にZ軸回りの回転モーメントが作用しても、キャリッジ5が第3摺動面53に対して一対の第3摺動凸部60a、60bで摺動するので、Z軸回りの回転モーメントを効果的に受け止めることができる結果、主走査方向への安定したキャリッジ5の移動を確保することができるという効果を奏する。
また、Y軸方向において、インク供給管20がキャリッジに接続する箇所(管接続部72)は、第2摺動凸部55bと第3摺動凸部60a、60bとの間に位置するものである。即ち、管接続部72はベルト連結部63に近い第3摺動凸部60a、60bに位置するのであるから、インク供給管20が接続された場合の荷重によるキャリッジ5の重心位置Gを通るX軸回りのモーメントも第2摺動凸部55b(第2摺動面52)と、第3摺動凸部60a、60b(第3摺動面53)とで支持でき、その結果、上記X軸回りのキャリッジ5の姿勢変化を無くし、主走査方向への安定した移動を確保することができる。
上記X軸とY軸とを含む平面上におけるキャリッジ5の平面視形状は、X軸方向に実質上対称状に形成され(換言すると、重心位置Gを含むY軸線に対して左右対称状に形成され)、X軸とY軸とを含む平面上におけるキャリッジ5の重心位置Gは、第3摺動面53及びベルト連結部63に接近するように設定されているので、重心位置Gを通るZ軸回りの第3摺動面53に対する回転モーメントを小さくすることができ、Z軸回りの回転モーメントに対してキャリッジ5の姿勢が安定する。そして、第4摺動面54に対する一対の第4摺動凸部65a、65bを弾力付勢するための弾性部材の付勢力も小さくすることができる。
さらに、キャリッジ5における左右一対の第3摺動凸部60a、60bが、第2ガイド部材23における上流側ガイド片23cの第3摺動面53に対して、図7に示すように、キャリッジ5のX軸方向の中央線OXを挟んで大きい間隔X2にて当接する。しかも、挟持体62の両端部に形成された一対の第4摺動凸部65a、65bは、図7において、X軸方向の中央線OXを挟んで寸法X3(<X2)だけ隔てて左右対称状の位置に配置されて、上流側ガイド片23cから距離Y4だけ大きく離れた下流側ガイド片23dに弾性的に押圧しているので、キャリッジ5が主走査方向(X軸方向)に移動開始するとき(キャリッジが静止状態から加速度を受けて移動するとき)のタイミングベルト24による上記X軸方向分力F4の作用で、Z軸回りにキャリッジ5が回転しようとする力を、左右に離れた左右一対の第3摺動凸部60a、60bと第3摺動面53との箇所、及び、一対の第4摺動凸部65a、65bと、第4摺動面54との箇所で互いに突っ張りあい、効率良く受け止めることができる。その結果、Z軸回りのキャリッジ5の姿勢変化を無くし、主走査方向への安定した移動を確保することができる。
また、キャリッジ5の下面側にて、第1摺動凸部55aと、第2摺動凸部55bと、第3摺動凸部60a、60bと、第4摺動凸部65a、65bとが、ほぼ平面的な高さ位置に配置されているので、キャリッジ5の高さ寸法を大きくする必要がなくコンパクトに形成できる。
なお、本発明では、第1ガイド部材22を副走査方向の下流側に配置し、第2ガイド部材23を副走査方向の上流側に配置した状態であっても、上記と同様の効果が得られることはいうまでもない。なお、その場合、キャリッジ5における接続支持部61bを上流側に向けて配置するのである。