JP2008026886A - 電子写真用トナーバインダーおよびトナー - Google Patents

電子写真用トナーバインダーおよびトナー Download PDF

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Abstract

【課題】 低温定着性、耐ホットオフセット性、および貯蔵安定性に優れたトナーを提供する。
【解決手段】 140℃における溶融粘度が100〜8,000mPa・sである低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)が不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)で変性された変性ポリエチレン系樹脂(A)と、(a2)のカルボキシル基と反応する官能基(b)を含有するスチレン共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の少なくとも一部がグラフトしていることを特徴とする電子写真用トナーバインダーからなるトナー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられるトナー及びこれに用いられる電子写真用トナーバインダーに関する。
電子写真プロセスでは、紙などの上に転写されたトナーを定着させるために、接触加熱型定着機[ヒートロールを用いる方法、加熱体と紙などの間にフィルムまたはベルトを介する方法]を用いることが広く採用されている。この方法では、定着下限温度は低いことが望ましく(低温定着性)、また、ヒートロール表面、フィルムまたはベルトへのホットオフセットが発生する温度は高いことが望ましい(耐ホットオフセット性)。さらに、複写機またはプリンターの内部では、定着機などから熱が発生するため、トナーが熱によって凝集し流動性が悪化してはならない(貯蔵安定性)。
この三つの要求性能を満足させるために、バインダー樹脂の分子量分布を広くする方法(特許文献1参照)や、低分子量ポリプロピレン系樹脂と低分子量ポリエチレン系樹脂の不飽和カルボン酸変性物を離型剤として用いることが提唱されている(特許文献2参照)。
特開平1−15752号公報 特開平7−281478号公報
しかしながらバインダー樹脂の分子量分布を広くしたり、低分子量ポリプロピレン系樹脂と低分子量ポリエチレン系樹脂の不飽和カルボン酸変性物を離型剤として用いるだけでは、上記問題に対して十分満足であるとは言えない。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、140℃における溶融粘度が100〜8,000mPa・sである低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)が不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)で変性された変性ポリエチレン系樹脂(A)と、(a2)のカルボキシル基と反応する官能基(b)を含有するスチレン共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の少なくとも一部がグラフトしていることを特徴とする電子写真用トナーバインダー;並びにこの電子写真用トナーバインダーと着色剤からなるトナー;である。
本発明のトナーバインダーは、トナーの性能として、低温定着性、耐ホットオフセット性、貯蔵安定性を高いレベルにすることができ、さらにランニング時の画質劣化といったトラブルがない、優れたトナーを得ることができる。
以下,本発明を詳述する。
本発明において、変性ポリエチレン系樹脂(A)の原料である低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)は、140℃における溶融粘度が100〜8,000mPa・sであるものであれば、低密度、中密度、高密度タイプのいずれにも限定されることなく使用できる。(a1)の溶融粘度が100mPa・s未満であれば、トナー流動性が低下し、8,000mPa・sを越えると、低温定着性が低下する。140℃で150〜6,000mPa・sのものを用いることが好ましい。ここで、溶融粘度はブルックフィールド型回転粘度計を用いて測定される。
低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)は、エチレンを構成単位の少なくとも一部として含有する樹脂であり、(a1)の具体例としては、エチレンの低分子量(共)重合体;高分子量ポリエチレン系樹脂の熱減成物;この熱減成物の部分酸化物;この熱減成物をさらにスチレン系モノマー〔スチレン;スチレンのハイドロカルビル(炭素数1〜24の、アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体(例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン等);ビニルナフタレン;アルコキシ基の炭素数が1〜12のアルコキシスチレン(p−メトキシスチレン等)〕、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等]、炭素数1〜20のアルキル基を有するマレイン酸ジアルキルエステル(マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジブチルエステル等)、ビニルシアニド[(メタ)アクリロニトリル等]等のカルボキシル基を有しないモノマーでグラフトした物;並びに、このグラフト化物の部分酸化物が挙げられる。これら(a1)の中では、高分子量ポリエチレン系樹脂の熱減成物と熱減成物から得られる樹脂が好ましい。
なお、ここで、(共)重合体とは、単独重合体または共重合体を意味し、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステルおよび/またはメタアクリル酸アルキルエステルを意味し、以下同様の記載法を用いる。
前記のエチレンの低分子量(共)重合体としては、例えば、エチレンの単独重合体;エチレンと他のオレフィン(プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどの炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐オレフィン)との共重合体が挙げられる。トナー流動性の観点から、(共)重合体中のエチレン単位の含有量は、90〜100%であることが好ましい。上記および以下において、%は、特に断りのない限り、重量%を意味する。
前記の高分子量ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体;エチレンと上記の他のオレフィンとの共重合体;並びに、これらの重合体を前述の、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、ビニルシアニドなどのカルボキシル基を有しないモノマーでグラフトした物が挙げられる。このうち、樹脂中のエチレン単位の含有量は、90〜100%であることが好ましい。
この高分子量ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1〜300、さらに好ましくは1〜250である。メルトフローレートは、JIS−K6760(温度190℃、荷重2.16kgf)に準じて測定することができる。
前記熱減成物は、熱分解によって分子量が減じられたものをいい、例えば、上記の高分子量ポリエチレン系樹脂を、熱の加わり方が均一である管状反応管を用い、250〜450℃で0.5〜10時間通過させることにより得られる。熱減成物の溶融粘度は、熱減成温度と熱減成時間で調整することができる。250℃以上であれば熱減成に長時間を要することがなく、450℃以下であれば熱減性時間が短かくなりすぎないため、溶融粘度の調整が容易である。
前記熱減成物は、炭素原子1,000個当たり好ましくは1〜15個、さらに好ましくは2〜10個の末端二重結合を有するものが使用できる。不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)を所望量付加し、トナーの流動性を向上させるため、末端二重結合は炭素原子1,000個当たり1個以上であることが好ましく、トナーのホットオフセット温度を向上させるために15個以下であることが好ましい。該二重結合の数は、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)で測定することができる。
前記熱減成物の数平均分子量は、好ましくは800〜20,000、さらに好ましくは1,000〜10,000である。800以上にすることでトナーの流動性を向上させやすく、20,000以下にすることで定着温度を低く保てる傾向にある。数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定することができる。
上記及び以下において、ポリエチレン系樹脂(a1)および変性ポリエチレン系樹脂(A)の分子量(数平均分子量および重量平均分子量)は、GPCを使用して以下の条件で測定される。
装置(一例) :Waters製 GPCV2000
カラム(一例):PL gel MIXED−B 2本
測定温度 :135℃
試料溶液 :0.3%のo−ジクロロベンゼン溶液
溶液注入量 :215μl
検出装置 :屈折率検出器
標準物質 :東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
前記熱減成物の軟化点は、好ましくは70〜200℃、さらに好ましくは90〜180℃である。70℃以上では、トナーの流動性向上に充分な効果が得られやすく。180℃以下であれば、トナーの低温定着性向上に効果が得られやすい。軟化点は、JIS−K2207(環球式)に準じ測定することができる。
本発明において、変性ポリエチレン系樹脂(A)を構成する不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)のうち、不飽和カルボン酸としては、炭素数3〜18の1塩基酸〔(メタ)アクリル酸など〕、炭素数4〜18の2塩基酸〔マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、ナジック酸など〕、これら2塩基酸のモノアルキル(アルキル基の炭素数:1〜18)エステル(モノメチルエステル、モノエチルエステル、モノブチルエステルなど)、およびそれらの混合物などがあげられる。好ましいものはマレイン酸である。不飽和カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水ナジック酸、およびそれらの混合物などがあげられる。好ましいものは無水マレイン酸である。また、不飽和カルボン酸とその無水物を併用することもできる。
変性ポリエチレン系樹脂(A)を構成する(a2)の単位の量は、ポリエチレン系樹脂(a1)に対して、好ましくは0.1〜50%、さらに好ましくは0.2〜40%、とくに好ましくは0.5〜30%である。(a2)の量を0.1%以上にすることでトナーの流動性向上に充分な効果が得られやすく、また、50%以下にすることで、変性ポリエチレン系樹脂(A)の吸湿性を抑えることができ、画像濃度の安定性を維持しやすい。
本発明における変性ポリエチレン系樹脂(A)は、好ましくは0.5〜100、さらに好ましくは1〜60の酸価を有するものが使用できる。酸価が0.5以上であれば、トナー流動性を改善でき、また、100以下であればホットオフセット温度を高く維持しやすい。
本発明における酸価はJIS K0070に規定の方法で測定される。
本発明における変性ポリエチレン系樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、さらに好ましくは1,500〜8,000である。該分子量が1,000以上であればトナー流動性が十分であり、また、10,000以下であれば低温定着性が向上しやすい。
また、(A)の140℃での溶融粘度は、好ましくは200〜20,000mPa・s、さらに好ましくは1000〜10,000mPa・sである。200mPa・s以上であればトナー流動性が十分であり、20,000mPa・s以下であれば低温定着性が向上しやすい。
本発明において、変性ポリエチレン系樹脂(A)は、たとえば、低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)に、不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)を、過酸化物触媒存在下もしくは無触媒下で、(a1)の融点以上300℃以下で、好ましくは融点以上250℃以下で、1〜20時間付加反応またはグラフトすることにより得ることができる。また、(a2)とともに、必要により、その他のラジカル重合性を有するモノマー[前述のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、ビニルシアニドなど]を用いることができる。他のラジカル重合性を有するモノマーは、(a2)とともに、低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)に付加またはグラフトすると、熱可塑性樹脂系バインダーへの分散性が向上して好ましい。
前記付加またはグラフト反応に用いられる過酸化物触媒としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
本発明に用いるスチレン共重合体(B)の有する、(a2)のカルボキシル基と反応する官能基(b)としては、変性ポリエチレン系樹脂(A)とグラフトさせるため、水酸基、エポキシ基およびアミノ基が好ましい。
官能基(b)を含有するスチレン共重合体(B)を構成するモノマーは、必須成分であるスチレンと、水酸基含有モノマー(c)、エポキシ基含有モノマー(d)およびアミノ基含有モノマー(e)等から選ばれる1種以上の(b)を含有するモノマー、並びに任意成分であるその他のビニルモノマーからなる。
水酸基含有モノマー(c)としてはつぎのものが挙げられる。
(c−1) 炭素数5〜16のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;
(c−2) 炭素数2〜12のアルケノール、例えば(メタ)アリルアルコール、1−ブテン−3−オール及び2−ブテン−1−オール;
(c−3) 炭素数4〜12のアルケンジオール、例えば2−ブテン−1,4−ジオール;
(c−4) 炭素数3〜30のヒドロキシアルケニルエーテル、例えば2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び蔗糖アリルエーテル等。
エポキシ基含有モノマー(d)としてはつぎのものが挙げられる。
グリシジル(メタ)アクリレート、ジエンモノオキサイド(ペンタジエンモノオキサイド、ヘキサジエンモノオキサイドなど)等。
アミノ基含有モノマー(e)としてはつぎのものが挙げられる。
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、メチルα−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン等。
その他のビニルモノマーとしては、以下の(f)〜(k)のモノマー及びこれらの併用が挙げられる。
(f)カルボキシル基含有ビニルモノマー:
(f−1) 炭素数3〜20の不飽和モノカルボン酸:(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等;
(f−2) 炭素数4〜30の不飽和ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体[酸無水物及びモノ若しくはジアルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル]:マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びこれらの無水物並びにこれらのモノ若しくはジアルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル(メチルエステル及びエチルエステル等)等
(g)エステル基含有ビニルモノマー:
(g−1) 炭素数3〜30の不飽和カルボン酸アルキル(炭素数1〜24)エステル:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート及びエチル−α−エトキシ(メタ)アクリレート等;
(g−2) 炭素数3〜30の不飽和カルボン酸多価(2〜3)アルコールエステル:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等;
(g−3) 炭素数2〜18の不飽和アルコール[ビニル、イソプロペニル等]と炭素数1〜12のモノ若しくはポリカルボン酸とのエステル:酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、メチル−4−ビニルベンゾエート、ビニルメトキシアセテート及びビニルベンゾエート等。
(h)ビニル炭化水素:
(h−1) スチレン以外の芳香族ビニル炭化水素(炭素数8〜20):スチレンのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体、例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン;並びにビニルナフタレン。
(h−2) 脂肪族ビニル炭化水素:炭素数2〜20のアルケン類、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び前記以外のα−オレフィン等;炭素数4〜20のアルカジエン類、例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン;
(h−3) 脂環式ビニル炭化水素:モノ及びジシクロアルケン及びアルカジエン類、例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン;テルペン類、例えばピネン、リモネン及びインデン。
(i)ニトリル基含有ビニルモノマー:
(メタ)アクリロニトリル等。
これらのうち好ましいものは、(f)、(g)、およびこれらの併用であり、これらをスチレンと、(c)、(d)、および(e)から選ばれる1種以上とともに使用するのが好ましい。
官能基(b)含有スチレン共重合体(B)中の構成単位としてのスチレンの含有量は、トナーの定着性、貯蔵安定性及び帯電性の観点から、好ましくは50〜98%、さらに好ましくは70〜95%、特に75〜94%である。
官能基(b)含有スチレン共重合体(B)中の構成単位として水酸基含有モノマー(c)を用いる場合、(B)中の(c)の含有量は、好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは0.6〜8%である。(c)の含有量は(B)の水酸基価が、好ましくは1〜30、さらに好ましくは2〜20になるように設定される。
(B)中の構成単位としてエポキシ基含有モノマー(d)を用いる場合、(B)中の(d)の含有量は、好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは0.6〜8%である。(d)の含有量は(B)のエポキシ当量が、好ましくは80〜300、さらに好ましくは100〜200になるように設定される。
(B)中の構成単位としてアミノ基含有モノマー(e)を用いる場合、(B)中の(e)の含有量は、好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは0.6〜8%である。(e)の含有量は(B)のアミン価が、好ましくは1〜30、さらに好ましくは2〜20になるように設定される。
本発明において、水酸基価はJIS K0070に規定の方法で測定される。エポキシ当量はJIS K7236に規定の方法で測定される。アミン価はJIS K7236に規定の方法で測定される。
(B)は、前記モノマーをラジカル重合開始剤(j)を用いて溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合等の公知の重合法で合成することができる。
重合温度は、通常60〜230℃、好ましくは80〜230℃である。
重合時間は、通常1〜30時間、好ましくは2〜20時間である。
(j)としては、アゾ系重合開始剤(例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等及び有機過酸化物系重合開始剤(例えばt−ブチルパーオキシビバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノニルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニトリルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシラウレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジイソブチルジパーオキシフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジt−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ピナンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド、1,1ジt−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4ジt−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのはジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート及び1,1ジt−ブチルパーオキシシクロヘキサンである。
重合開始剤の使用量は、モノマーの全量に基づいて0.1〜10%、好ましくは0.2〜8%、特に0.3〜6%である。
溶液重合の場合の溶剤(k)としては、炭素数5〜12のシクロアルカン系溶剤(シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン等);炭素数6〜12の芳香族系溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びクメン等);エステル系溶剤(酢酸エチル及び酢酸ブチル等);エーテル系溶剤(メチルセルソルブ、エチルセルソルブ及びブチルセルソルブ等)等が用いられる。
これらのうち好ましいものはトルエン、キシレン及びエチルベンゼンである。
また、懸濁重合を行う場合、無機酸塩系分散剤(炭酸カルシウム及びリン酸カルシウム等)及び有機系分散剤(ポリビニルアルコール及びメチルセルロース等)等を用いて水中で重合することができる。
スチレン共重合体(B)には、GPCのクロマトグラムにおいて、分子量2000〜500万に単一のピークを有するものと複数のピークを有するものが含まれる。複数のピークを有するものは低分子量ポリマー(l)と高分子量ポリマー(m)を混合したり、(l)または(m)のどちらか一方の存在下で他方を重合するなど、公知の方法で合成できる。
単一のピークを有する場合、そのピーク分子量は、粉砕性の観点から、好ましくは8000〜8万、さらに好ましくは1万〜5万である。また、その重量平均分子量は、好ましくは8000〜12万、さらに好ましくは1万〜7万である。
複数のピークを有する場合は、低分子量領域(分子量2000〜2万の範囲)と高分子量領域(分子量5万〜500万の範囲)にそれぞれ少なくとも1個のピークを有し、それぞれの範囲における最大ピークがクロマトグラム全体における最大ピークと2番目に大きいピークの関係にあることが好ましい。また、その重量平均分子量は、好ましくは3000〜100万、さらに好ましくは4000〜90万である。
上記低分子量領域における最大ピーク分子量は、低温定着性及びトナーのランニング安定性の観点から、好ましくは2500〜2万、特に3000〜15000である。
高分子量領域における最大ピーク分子量は、耐ホットオフセット性及びトナー化時の顔料分散性の観点から、好ましくは20万〜200万、特に40万〜100万である。
上記及び以下において、スチレン共重合体(B)、後述する官能基(b)を含有しないスチレン(共)重合体(C)、およびトナーバインダーの分子量(最大ピーク分子量、数平均分子量、および重量平均分子量)は、GPCを使用して以下の条件で測定される。
装置(一例) :東ソー製 HLC−8120
カラム(一例):TSKgelGMH 2本(東ソー製)
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25%のTHF溶液
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
標準物質 :東ソー製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
(B)のガラス転移点(Tg)は、貯蔵安定性と低温定着性の観点から、好ましくは50〜75℃、さらに好ましくは50〜70℃、特に53〜65℃である。
尚、上記及び以下において、Tgはセイコー電子工業(株)製 DSC20,SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
本発明のトナーバインダーにおいては、変性ポリエチレン系樹脂(A)と官能基(b)を含有するスチレン(共)重合体(B)の少なくとも一部がグラフトしている。
(A)と(B)とをグラフトさせる方法としては、下記の方法などが挙げられる。
〔1〕 (A)と(B)とを温度150〜200℃に加熱する方法、その際、必要により溶剤(トルエン、キシレン等)を用いたり、公知のエステル化触媒等を用いてもよい。
〔2〕 (A)と官能基(b)を有するモノマーを反応させた後、引き続き(b)以外の(B)を構成するモノマーを重合する方法。
〔3〕 (A)の存在下で(B)を重合する方法。
(A)と(B)がグラフトしていないと仮定したときの(A)と(B)の重量比、すなわち、(A)および(A)と(B)のグラフト体中の(A)の構成単位の合計と、(B)および(A)と(B)のグラフト体中の(B)の構成単位の合計との重量比は、好ましくは1/99〜50/50、さらに好ましくは2/98〜40/60である。(A)の比率を1以上にすることで低温定着性が向上し、50以下にすることでとランニング時の画質劣化を防止することができる。
(B)がGPCのクロマトグラムにおいて複数のピークを有する場合、(A)は(B)の分子量3万以上の成分とグラフトするとランニング安定性がよくなる。
(A)と(B)のグラフト率は(b)の官能基の減少量を測定することにより計算できる。官能基の量は、酸価、水酸基価、エポキシ当量、アミン価等から求められる。
グラフト率(%)=[1−グラフト後の(b)官能基量/グラフト前の(b)官能基量]
×100
〔ただし、(A)の官能基量≧(b)の官能基量のとき〕
グラフト率(%)=[1−〔グラフト後の(b)官能基量−(グラフト前の(b)官能基
量−グラフト前の(A)の官能基量)〕/グラフト前の(b)官能基
量]×100
〔ただし、(A)の官能基量<(b)の官能基量〕
(A)と(B)のグラフト体を製造する際の、グラフト率の好ましい範囲は50〜100%であり、70〜100%であることがより好ましい。
本発明のトナーバインダー中に、変性ポリエチレン系樹脂(A)と官能基(b)を含有するスチレン(共)重合体(B)以外に、官能基(b)を含有しないスチレン(共)重合体(C)を含有してもよい。(C)を含有することで、トナーの帯電特性の制御が容易になる。
官能基(b)を含有しないスチレン(共)重合体(C)の構成モノマーは、必須構成モノマーであるスチレンの他に、(B)の構成モノマーの任意成分として例示したものの中から任意に選択される。
このうち、好ましくは、(f)カルボキシル基含有ビニルモノマーと(g)エステル基含有ビニルモノマーである。
(C)中のスチレン系モノマーの含有量は、トナーの帯電性の観点から60%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。(C)の分子量は、(B)と同様に単一のピークのものと分子量2000〜500万の間に複数のピークを持つものを任意に設定できる。(C)の重量平均分子量は、好ましくは3000〜100万、さらに好ましくは4000〜90万である。(C)のTgは、貯蔵安定性と低温定着性の観点から、好ましくは50〜75℃、さらに好ましくは50〜70℃、特に53〜65℃である。(C)は(B)の合成方法と同様の方法で合成できる。また、分子量およびTgも(B)と同様の方法で測定される。
本発明の電子写真用トナーバインダー中の、官能基(b)を含有しないスチレン(共)重合体(C)の含有量は、好ましくは94%以下、さらに好ましくは1〜90%、とくに好ましくは20〜85%である。
本発明の、(A)、(B)、(A)と(B)のグラフト体、および必要により(C)からなるトナーバインダーの物性は、次のようなものであることが好ましい。
Tgは、好ましくは50〜70℃、さらに好ましくは53〜65℃である。重量平均分子量は、好ましくは8000〜40万、さらに好ましくは1万〜35万である。数平均分子量は、好ましくは2000〜2万、さらに好ましくは2200〜15000である。酸価は、好ましくは0〜20、さらに好ましくは0.3〜15である。
Tgが上記範囲内であると、低温定着性と貯蔵安定性の観点で好ましい。重量平均分子量および数平均分子量が上記範囲内であると、低温定着性とランニング安定性の観点で好ましい。酸価が上記範囲内であると、帯電特性の観点から好ましい。
本発明のトナーバインダーにおいて、さらに低温定着性を向上させるために、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸、融点90〜150℃のポリオレフィン、およびこれらの混合物等を添加することができる。天然ワックスとしては、例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックスが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、例えばトリアコンタノールが挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。融点90〜150℃のポリオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、およびこれらの混合物等のモノマーの(共)重合体および(共)重合体の熱減成物であって融点が90〜150℃のものが挙げられる。
トナーバインダー中のこれらの含有量は、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは1〜8%である。
また、(A)と(B)のグラフト体を形成後に、変性ポリエチレン系樹脂(A)を別途添加してもよい。(A)と(B)とがグラフトしていることで別途添加した(A)の分散性が向上し、低温定着性を向上させることができる。(A)を別途添加する場合の添加量は、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは1〜8%である。また、トナーバインダー中の、元々含有している(A)〔(A)と(B)のグラフト体中の(A)の構成単位を含む〕と添加する(A)の合計含有量が、前記の(A)と(B)の好ましい重量比を満たすように添加するのが好ましい。
本発明のトナーは本発明のトナーバインダーと着色剤から構成され、必要に応じて離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等種々の通常用いられる添加剤を含有することができる。
着色剤としては公知の顔料、染料及び磁性粉を用いることができる。具体的には、カーボンブラック、スーダンブラックSM、ファーストイエロ−G、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、バラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、プリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB、オイルピンクOP及び磁性粉[例えば強磁性金属の粉末(鉄、コバルト及びニッケル等)、マグネタイト、ヘマタイト及びフェライト]等が挙げられる。
トナー中の着色剤の含有量は、染料又は顔料を使用する場合は、好ましくは2〜15%、さらに好ましくは3〜10%であり、磁性粉を使用する場合は、好ましくは15〜70%、さらに好ましくは30〜60%である。
離型剤としては、(A)以外のポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの具体例としては、前記のものが挙げられる。
トナー中の離型剤の含有量は、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは1〜8%である。
荷電制御剤としては、例えば含金属アゾ染料、ニグロシン染料及び四級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
トナー中の荷電制御剤の含有量は、好ましくは0〜5%、さらに好ましくは1〜5%である。
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等公知のものが挙げられる。
トナー中の流動化剤の含有量は、好ましくは0〜5%である。
トナーの製造方法としては、公知の混練粉砕法等が挙げられる。例えば、上記トナー構成成分をヘンシェルミキサー等を用いて乾式ブレンドした後、二軸押出機等を用いて70℃〜190℃で溶融混練して、その後粗粉砕し、最終的にジェット粉砕機などを用いて微粒化し、さらに分級して体積平均粒径(D50)が5〜20ミクロンの微粒子として得られる。
尚、D50は、コールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、上記方法において、流動化剤はトナーを微粒子した後に混合(外添)して使用することもできる。
トナーは必要に応じて、ガラスビーズ及び/又は樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリアー粒子と混合されて現像剤として用いられる。また、キャリアー粒子のかわりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、帯電させることもできる。
次いでトナーを感光体上の静電潜像に移動させ、さらに支持体(紙、ポリエステルフィルム等)上に移動させる。
さらに、公知の熱ロール定着方法等により支持体に定着して記録材料とされる。
以下実施例により本発明をさらに説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。実施例中、部はいずれも重量部を表す。
トナーの試験法は以下の通りである。
(1)最低定着温度
トナー30部とフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)800部を均一混合し二成分現像剤として試験する。
市販モノクロ複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて現像した未定着画像を、市販モノクロ複写機[SF8400A、シャープ(株)製]の定着ユニットを改造し、ヒートローラー温度を可変にした定着機でプロセススピード145mm/secで定着する。画像濃度(I.D.)=0.6の画像を学振式摩擦堅牢度試験(紙で摩擦)により5回の往復回数で摩擦し、定着率(摩擦後のI.D.×100/摩擦前のI.D.)が70%以上となるヒートローラー温度を最低定着温度とする。
(2)ホットオフセット発生温度
上記(1)と同様に定着し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視判定する。ホットオフセットが発生しはじめた温度をホットオフセット発生温度とする。
(3)ランニング安定性
上記(1)と同様に二成分現像剤として、市販モノクロ複写機[AR5030、シャープ(株)製]を用いて連続コピーを行い、画質変化を以下の基準で評価する。
○:1万枚コピー後も画質に変化なく、カブリの発生もない。
△:1万枚コピー後カブリが発生している。
×:1千枚コピー後でもカブリが発生している。
(4)貯蔵安定性
50℃の恒温水槽中で8時間放置した後、42メッシュのフルイ上で10秒間一定の振動(ホソカワミクロン製パイダーテステーPT−Eを用い、振動数1600/分とする)を与え,フルイ上に残ったトナー量から判定。
○:フルイ上の残存トナー量10%未満
△:フルイ上の残存トナー量10%以上〜20%未満
×:フルイ上の残存トナー量20%以上
製造例1
高分子量ポリエチレン(宇部興産製J5019、MFR=50)を、スタティックミキサーを組み込んだ管に連続的に通しながら300〜305℃で150分間熱減成を行い、140℃での溶融粘度が280mPa・sの低分子量ポリエチレン樹脂(a1−1)を得た。得られた低分子量ポリエチレン樹脂(a1−1)300gと無水マレイン酸20gとキシレン400gを1Lのオートクレーブに仕込み、系内を窒素置換後、昇温、攪拌しながら180℃に保持し、ジーt−ブチルパーオキサイド2gを溶解させたキシレン溶液20gを15分間連続的に滴下した。同温度で1時間保持した後、140℃まで冷却後、生成物を温度計、攪拌棒を備えた1L4ツ口コルベンに仕込み、180℃、5mmHg以下の減圧下で2時間脱気処理し、キシレン、未反応の無水マレイン酸などの揮発分を除去した。このようにして、140℃での溶融粘度3800mPa・s、酸価28の無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A−1)を得た。
製造例2
高分子量ポリエチレン(宇部興産製J5019、MFR=50)を、スタティックミキサーを組み込んだ管に連続的に通しながら270〜275℃で150分間熱減成を行い、140℃での溶融粘度が6000mPa・sの低分子量ポリエチレン樹脂(a1−2)を得た。得られた低分子量ポリエチレン樹脂(a1−2)300gと無水マレイン酸8gとキシレン400gを1Lのオートクレーブに仕込み、系内を窒素置換後、昇温、攪拌しながら180℃に保持し、ジーt−ブチルパーオキサイド2gを溶解させたキシレン溶液2
0gを15分間連続的に滴下した。同温度で1時間保持した後、140℃まで冷却後、生成物を温度計、攪拌棒を備えた1L4ツ口コルベンに仕込み、180℃、5mmHg以下の減圧下で2時間脱気処理し、キシレン、未反応の無水マレイン酸などの揮発分を除去した。このようにして、140℃での溶融粘度9000mPa・s、酸価10の無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A−2)を得た。
製造例3
無水マレイン酸20gをマレイン酸24gとする以外は製造例1と同様にして、140℃での溶融粘度4200mPa・s、酸価56のマレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A−3)を得た。
製造例4 熱減成温度を320℃とする以外は製造例1と全く同様に反応させ、140℃での溶融粘度が150mPa・sの低分子量ポリエチレン樹脂(a1−3)、さらに140℃での溶融粘度2300mPa・s、酸価30の無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A−4)を得た。
比較製造例1
高分子量ポリエチレン(宇部興産製J5019、MFR=50)を、スタティックミキサーを組み込んだ管に連続的に通しながら260〜265℃で150分間熱減成を行い、140℃での溶融粘度が10000mPa・sの低分子量ポリエチレン樹脂(a1’−4)を得た。得られた低分子量ポリエチレン樹脂(a1’−4)300gと無水マレイン酸6gとキシレン400gを1Lのオートクレーブに仕込み、系内を窒素置換後、昇温、攪拌しながら180℃に保持し、ジーt−ブチルパーオキサイド2gを溶解させたキシレン溶液20gを15分間連続的に滴下した。同温度で1時間保持した後、140℃まで冷却後、生成物を温度計、攪拌棒を備えた1L4ツ口コルベンに仕込み、180℃、5mmHg以下の減圧下で2時間脱気処理し、キシレン、未反応の無水マレイン酸などの揮発分を除去した。このようにして、140℃での溶融粘度13000mPa・s、酸価8の無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A’−5)を得た。
比較製造例2
高分子量ポリエチレン(宇部興産製J5019、MFR=50)を、スタティックミキサーを組み込んだ管に連続的に通しながら350〜355℃で150分間熱減成を行い、140℃での溶融粘度が80mPa・sの低分子量ポリエチレン樹脂(a1’−5)を得た。得られた低分子量ポリエチレン樹脂(a1’−5)300gと無水マレイン酸20gとキシレン400gを1Lのオートクレーブに仕込み、系内を窒素置換後、昇温、攪拌しながら180℃に保持。ジーt−ブチルパーオキサイド2gを溶解させたキシレン溶液2
0gを15分間連続的に滴下した。同温度で1時間保持した後、140℃まで冷却後、生成物を温度計、攪拌棒を備えた1L4ツ口コルベンに仕込み、180℃、5mmHg以下の減圧下で2時間脱気処理し、キシレン、未反応の無水マレイン酸などの揮発分を除去した。このようにして、140℃での溶融粘度1200mPa・s、酸価30の無水マレイン酸で変性された変性ポリエチレン樹脂(A’−6)を得た。
製造例5
オートクレーブにキシレン500部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で185℃まで昇温した。スチレン980部、n−ブチルアクリレート20部、ジ−t−ブチルパーオキサイド30部及びキシレン200部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を185℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合させた。さらに同温度で1時間保ち重合を完結させて、樹脂溶液(C−1)を得た。(C−1)の固形分の重量平均分子量は4700、ピーク分子量は4400、Tgは62℃であった。
製造例6
n−ブチルアクリレート20部をn−ブチルアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート6部とする以外は製造例5と同様にして、樹脂溶液(B−1)を得た。(B−1)の固形分の重量平均分子量は4800、ピーク分子量は4500、Tgは63℃であった。
製造例7
オートクレーブにキシレン200部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で140℃まで昇温した。スチレン800部、n−ブチルアクリレート190部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、ジ−t−ブチルパーオキサイド2部及びキシレン100部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら3時間かけて滴下し、さらに同温度で1時間保った後、180℃ヘ昇温し、同温度で1時間保ち反応を完結させて、変性ポリエチレン樹脂(A−1)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G−1)を得た。(G−1)の固形分の重量平均分子量は9.8万、酸価、水酸基価から求めたグラフト率は80%であった。
製造例8
2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部をグリシジルメタクリレート10部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)50部を変性ポリエチレン樹脂(A−3)50部をとする以外は製造例7と同様にして、変性ポリエチレン樹脂(A−3)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G−2)を得た。(G−2)の固形分の重量平均分子量は10.1万、酸価、エポキシ等量から求めたグラフト率は70%であった。
製造例9
変性ポリエチレン樹脂(A−1)を(A−2)とする以外は製造例7と同様にして、変性ポリエチレン樹脂(A−2)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G−3)を得た。(G−3)の固形分の重量平均分子量は10.1万、酸価、水酸基価から求めたグラフト率は90%であった。
製造例10
変性ポリエチレン樹脂(A−1)を(A−4)とする以外は製造例7と同様にして、変性ポリエチレン樹脂(A−4)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G−4)を得た。(G−4)の固形分の重量平均分子量は9.9万、酸価、水酸基価から求めたグラフト率は83%であった。
比較製造例3
変性ポリエチレン樹脂(A−1)を(A’−5)とする以外は製造例7と同様にして、変性ポリエチレン樹脂(A’−5)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G’−5)を得た。(G’−5)の固形分の重量平均分子量は10.2万、酸価、水酸基価から求めたグラフト率は90%であった。
比較製造例4
変性ポリエチレン樹脂(A−1)と2−ヒドロキシエチルメタクリエートを用いず、n−ブチルアクリレートを200部とする以外は製造例7と同様にして、樹脂溶液(C−2)を得た。(C−2)の固形分の重量平均分子量は9.7万、ピーク分子量は91000、Tgは63℃であった。
比較製造例5
変性ポリエチレン樹脂(A−1)を(A’−6)とする以外は製造例7と同様にして、変性ポリエチレン樹脂(A’−6)にスチレン共重合体がグラフトした樹脂溶液(G’−
6)を得た。(G’−6)の固形分の重量平均分子量は10.2万、酸価、水酸基価から求めたグラフト率は81%であった。
製造例11
4口フラスコに水750部、ポリビニルアルコール[(株)クラレ製PVA235]の3%水溶液50部を加え、これにスチレン375部、n−ブチルアクリレート125部、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン1.5部からなる混合液を加えて撹拌し、懸濁液とした。フラスコを充分窒素で置換した後、95℃まで昇温し、重合を開始した。同温度で重合を継続させ、15時間後にスチレンの転化率が98%になったことをガスクロマトグラフィーにより確認した後、100℃に昇温し、同温度で2時間保ち、重合を完結させた。後処理として濾別、水洗、乾燥し、樹脂(C−3)を得た。(C−3)の重量平均分子量は70万、ピーク分子量は68万、Tgは60℃であった。
製造例12
n−ブチルアクリレート125部をn−ブチルアクリレート110部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部とする以外は製造例11と同様にして、樹脂(B−2)を得た。(B−2)の重量平均分子量は68万、ピーク分子量は65万、Tgは64℃であった。
実施例1
オートクレーブに樹脂溶液(C−1)を105部、樹脂溶液(G−1)を20部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)を5部、樹脂(C−3)を25部、キシレンを20部仕込み、キシレン還流下で樹脂(C−3)を溶解した。次にキシレンを溜去しながら170℃に昇温した後、減圧として1kPaで2時間保持して、本発明のトナーバインダー(H−1)を得た。
実施例2
融点69℃のパラフィンワックス3部を添加する以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−2)を得た。
実施例3
樹脂溶液(G−1)20部を樹脂溶液(G−2)20部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を変性ポリエチレン樹脂(A−3)5部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−3)を得た。
実施例4
樹脂溶液(G−1)20部を樹脂溶液(G−3)20部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を変性ポリエチレン樹脂(A−2)5部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−4)を得た。
実施例5
樹脂溶液(C−1)105部を樹脂溶液(B−1)105部、樹脂(C−3)25部を樹脂(B−2)25部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−5)を得た。
実施例6
変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を2部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−6)を得た。
実施例7
樹脂溶液(C−1)105部を樹脂溶液(B−1)105部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−7)を得た。
実施例8
変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を低分子量ポリエチレンワックス([三洋化成工業(株)製 サンワックスLEL−400P、融点120℃]2部と低分子量ポリプロピレン[三洋化成工業(株)製 ビスコール550P、融点140℃]1部とする以外は実施例1と同様にして、本発明のトナーバインダー(H−8)を得た。
実施例9
オートクレーブに樹脂溶液(C−1)を87部、樹脂溶液(G−4)を22部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)を2部、樹脂(C−3)を33部、キシレンを40部仕込み、キシレン還流下で樹脂(C−3)を溶解した。次にキシレンを溜去しながら170℃に昇温した後、減圧として1kPaで2時間保持して、本発明のトナーバインダー(H−9)を得た。
実施例10
オートクレーブに樹脂溶液(C−1)を104部、樹脂溶液(G−1)を26部、低分子量ポリエチレンワックス([三洋化成工業(株)製 サンワックスLEL−400P、融点120℃]を2部、樹脂(B−2)を20部、キシレンを20部仕込み、キシレン還流下で樹脂(B−2)を溶解した。次にキシレンを溜去しながら170℃に昇温した後、減圧として1kPaで2時間保持して、本発明のトナーバインダー(H−10)を得た。
比較例1
樹脂溶液(G−1)20部を樹脂溶液(G’−5)20部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を変性ポリエチレン樹脂(A’−5)5部とする以外は実施例1と同様にして、比較のトナーバインダー(R−1)を得た。
比較例2
樹脂溶液(G−1)20部を樹脂溶液(C−2)20部とする以外は実施例1と同様にして、比較のトナーバインダー(R−2)を得た。
比較例3
樹脂溶液(G−1)20部を樹脂溶液(G’−6)20部、変性ポリエチレン樹脂(A−1)5部を変性ポリエチレン樹脂(A’−6)5部とする以外は実施例1と同様にして、比較のトナーバインダー(R−3)を得た。
本発明のトナーバインダー(H−1)〜(H−10)、および比較のトナーバインダー(R−1)〜(R−3)の、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Tg、酸価、および水酸基価を表1に示す。
Figure 2008026886
トナーの作成
トナーバインダー(H−1)〜(H−10)、および(R−1)〜(R−3)の各々88部に、カーボンブラック[三菱化成(株)製 MA100]7部、低分子量ポリプロピレン[三洋化成工業(株)製 ビスコール550P]3部および荷電調整剤(保土谷化学製 スピロンブラックTRH)2部を均一混合した後、樹脂温130℃の二軸押出機で混練し、冷却物をジェット粉砕機で微粉砕し、デイスパージョンセパレータで分級して、体積平均粒径9μmの本発明のトナー(T−1)〜(T−10)、および比較のトナー(RT−1)〜(RT−3)を得た。
試験例
トナー(T−1)〜(T−10)、および(RT−1)〜(RT−3)の各々3部にフェライトキャリア[EFV 200/300、日本製粉(株)製]97部を均一混合し、最低定着温度及びホットオフセット発生温度の測定並びにランニング安定性及び貯蔵安定性の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2008026886
表2に示したように、本発明のバインダー(H−1)〜(H−10)によるトナー(T−1)〜(T−10)は、優れた低温定着性及び耐ホットオフセット性を有しており、ランニング安定性及び貯蔵安定性にも優れている。一方、比較例のバインダー(R−1)〜(R−3)によるトナー(RT−1)〜(RT−3)は、定着温度幅が狭くなったり、画像にカブリを生じるなどランニング特性に劣るものであった。
本発明のトナーバインダー、およびそれを用いたトナーは、低温定着性、耐ホットオフセット性、貯蔵安定性に優れ、トナーのランニング時の画質劣化に問題のないトナーであるので、電子写真、静電記録、静電印刷などに用いられるトナーとして有用である。

Claims (5)

  1. 140℃における溶融粘度が100〜8,000mPa・sである低分子量ポリエチレン系樹脂(a1)が不飽和カルボン酸および/またはその無水物(a2)で変性された変性ポリエチレン系樹脂(A)と、(a2)のカルボキシル基と反応する官能基(b)を含有するスチレン共重合体(B)を含有し、(A)と(B)の少なくとも一部がグラフトしていることを特徴とする電子写真用トナーバインダー。
  2. ポリエチレン系樹脂(a1)が熱減成によって得られた樹脂である請求項1記載の電子写真用トナーバインダー。
  3. さらに官能基(b)を含有しないスチレン(共)重合体(C)を含有する請求項1または2記載の電子写真用トナーバインダー。
  4. (A)〔(A)と(B)のグラフト体中の(A)の構成単位を含む〕と(B)〔(A)と(B)のグラフト体中の(B)の構成単位を含む〕の重量比が(A)/(B)=1/99〜50/50である請求項1〜3のいずれか記載の電子写真用トナーバインダー。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の電子写真用トナーバインダーと着色剤からなるトナー。
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