従来より、音響信号処理部を、プログラムに従って動作可能なプロセッサ(例えば、ディジタル信号処理装置(DSP))を用いて構成するとともに、外部のPC(パーソナルコンピュータ)を用いて編集したミキサ構成(信号処理構成)に基づいて音響信号を処理できるようにした音響信号処理装置が知られている。このような音響信号処理装置を、本願では「ミキサエンジン」と呼ぶ。ミキサエンジンは、PCにより編集され転送された信号処理構成を内部に記憶し、その記憶している信号処理構成に基づいて単独で音響信号の処理を行うことができる。また、複数のミキサエンジンを組み合わせることにより大規模なミキサシステムを構成することもできる。非特許文献1に記載のミキサエンジンでは、複数のミキサエンジンを協同的に動作させるため「ゾーン」という考え方を導入している。また、特許文献1には、複数台のミキサエンジンを自由に組み合わせてゾーンを構成し、ゾーン単位で協同的な動作を実現する音響信号処理システムが開示されている。
ここでゾーンについて詳しく説明する。図18は、3台のミキサエンジンを用いて単一ゾーンを構成した例を示す。PC1801と3台のミキサエンジン1803〜1805とが、スイッチングハブ1802により相互に接続されている。3台のミキサエンジン1803〜1805は、1つのゾーン1806を構成している。ゾーンにはゾーンマスタと呼ばれる機器が必ず1台存在し、その他の機器はスレーブとなる。例えば図18(a)では、ミキサエンジン1803がゾーンマスタ、ミキサエンジン1804および1805がスレーブである。ゾーンマスタ1803からの制御により、スレーブ1804,1805をコントロールできる。また、PC1801からゾーンマスタ1803に指示を与えることにより、ゾーン内の全ての機器をコントロールすることができる。
図18(b)は、複数のゾーンを設定した例を示す。スイッチングハブ1813に3台のミキサエンジン1821〜1823が接続され、これによりゾーン1820が構成されている。同様にして、ミキサエンジン1831,1832でゾーン1830が、ミキサエンジン1841〜1843でゾーン1840が、それぞれ構成されている。上述したように各ゾーンにはそれぞれ1台のゾーンマスタが存在する。スイッチングハブ1813〜1815はルータ1812に接続され、該ルータ1812にはPC1811が接続されている。
なお、図18(a)及び(b)では、ミキサシステムの制御系の接続関係のみを図示した。ここでは不図示だが、実際は各ミキサエンジン間には音響信号を伝送する接続線が張られており、またマイクなどから入力した音響信号の入力線やアンプやスピーカなどへの出力線も存在する。ただし、本願はミキサシステムの制御系の部分に注目した発明に係るものであるので、以後でも制御系のみに注目し、音響信号の伝送関係は図示しない。
上述したゾーンは任意の方式で定義できるが、ここでは同じドメインを構成するIPアドレスが与えられた複数の機器で1つのゾーンを構成するようにしている。具体的には、クラスCアドレスのネットワークアドレスが同一の機器は同じゾーンに含まれるようにする。従って、1つのゾーンは最大で256台の機器から構成され、ゾーン間の接続はルータ(例えば図18(b)の1812)を介する必要がある。
以上のようなゾーンを設定することにより、1つのゾーン内の機器を協同的に動作させることができる。例えば、ゾーンに含まれる任意のミキサエンジンから1つのシーンを指定してリコールすると、ゾーン内の全てのミキサエンジンに一括してリコールされたシーンが設定される。なお、シーンとはコンフィグレーションとプリセットパラメータの組み合わせである。コンフィグレーションとは、目的のミキサシステムを構築するためのコンポーネントの組み合わせを言う。コンポーネントとは信号処理などを行う部品となる構成要素であり、例えばミキサ、コンプレッサ、エフェクト、クロスオーバなどのオーディオプロセッサや、フェーダ、スイッチ、パン、メータなどの操作子や表示器のコンポーネントが用意されている。ユーザは、PC上で所定のミキサ制御プログラムを実行してミキサ編集画面を表示し、該画面上で任意のコンポーネントを選択して配置し、各コンポーネントの端子間に結線を引いて音響信号の入出力関係を定義し、これにより所望のミキサ構成のコンフィグレーションを作成することができる。作成したコンフィグレーションは、コンパイル(ミキサエンジンが解釈できる情報に変換すること)した後、PCからミキサエンジンに転送される。ミキサエンジンは、そのコンフィグレーションをカレントメモリ上に呼び出して実行することにより、そのコンフィグレーションで定義されたミキサ構成のミキサが実現される。プリセットパラメータとは、上述したミキサ構成の各コンポーネントにおけるパラメータデータのセットである。
また、PCからの制御によりゾーン単位でミキサシステムの制御を行なうことができる。例えば、図18(b)のPC1811からゾーン1820を指定してシーンリコールを指示すると、ゾーン1820のミキサエンジン1821〜1823では、指示されたシーンのコンフィグレーションとプリセットパラメータが呼び出されて設定される。ゾーンは完全に独立して制御されるものであるので、あるゾーンに対する指示が他のゾーンに影響を及ぼすことはない。また、ゾーンに対する指示はそのゾーン内の全機器に対する指示であるので、ゾーンに対する指示が為されたときにはそのゾーン内の全機器で指示に応じた制御動作が実行されることになる。
このように複数のミキサエンジンを組み合わせてミキサシステムを構成する場合、各ミキサエンジンの接続関係などを見渡せるようにするため、全体の構成を表すようなゾーン構成画面を表示し、ユーザが該ゾーン構成画面上で各種の機器同士を結線し、全体の構成を表すような画面を作成できる機能を持つものがある(例えば、非特許文献2参照)。
図19は、図18(b)の3つのゾーンのそれぞれのゾーン構成画面の表示例を示す。メイン画面1900上に、ゾーン1(図18(b)のゾーン1820)のゾーン構成画面1901、ゾーン2(図18(b)のゾーン1830)のゾーン構成画面1902、およびゾーン3(図18(b)のゾーン1840)のゾーン構成画面1903が、それぞれ表示されている。
特開2005−252686
「DIGITAL MIXING ENGINE DME64N/24N 取扱説明書」、ヤマハ株式会社、2001年、第11頁
「DME Designer Version1.1 取扱説明書」、ヤマハ株式会社、2004年、第203〜207頁
以下、図面を用いてこの発明を実施するための一形態例を説明する。
本実施形態のミキサシステム(音響信号処理システム)では、ゾーンの下位にデバイスグループの概念を新たに導入している。従来技術ではゾーンのみを機器の連動単位としているが、本実施形態のミキサエンジンでは、最小連動単位をデバイスグループとしている。ゾーンは複数のデバイスグループで構成され、同一ゾーン内のデバイスグループは互いに通信可能である。また、特定のシーンにおいて、デバイスグループ内の特定の機器を連動させないような設定が可能であり、これにより最小連動単位をデバイスグループを構成する機器のうちの任意の台数の機器とすることも可能である。デバイスグループにはグループマスタと呼ばれる機器が必ず1台存在し、その他の機器はスレーブとなる。
デバイスグループ内のグループマスタは、同一ゾーン内にある他のデバイスグループの情報を知っている。他のデバイスグループ内の全ての機器のことを知っている必要はなく、グループマスタの情報さえ知っていればよい。これは、どのデバイスグループにおいても、何らかの制御動作を行なう際には、グループマスタが自分が管轄するスレーブに指示を与えるためである。全てのマスタの情報が記述されているテーブルをマスタテーブルと呼び、このテーブルを全マスタが共有することにより、デバイスグループ間で機器の連動が可能になる。
特に、本実施形態ではシーンに関するマスタテーブルであるシーンマスタテーブルを例として説明する。すなわち、シーンについては、デバイスグループ毎のシーンテーブル(「デバイスグループシーンテーブル」と呼ぶ)を用意するとともに、各デバイスグループシーンテーブルに登録されているデバイスグループで有意なシーン(「デバイスグループシーン」と呼ぶ)を組み合わせたもの(要するに各デバイスグループのデバイスグループシーンを特定するIDを組み合わせたものであり、「シーンリンク」と呼ぶ)を用意する。このシーンリンクを登録したテーブルがシーンマスタテーブルとなる。シーンマスタテーブルに登録するシーンリンクでは、特定のデバイスグループシーンについてはリコールしない、という設定が可能である。また、デバイスグループシーンテーブルに登録するデバイスグループシーンでは、特定の機器のについてはシーンリコールしない、という設定が可能である。なお、これらのテーブルについては後に詳しく説明する。
図1(a)は、単一のデバイスグループの構成例である。3台のミキサエンジン103〜105がスイッチングハブ102を介して接続され、1つのデバイスグループ106を構成している。ハブ102にはPC101が接続されている。
図1(b)は、単一ゾーン内に複数のデバイスグループを構成した例を示す。デバイスグループ120は3台のミキサエンジン121〜123で構成され、デバイスグループ130は2台のミキサエンジン131,132で構成され、デバイスグループ140は3台のミキサエンジン141〜143で構成されている。これら8台のミキサエンジン121〜123,131,132,141〜143は、スイッチングハブ112に接続され、該ハブ112にはPC111が接続されている。背景技術の欄で説明したように、クラスCアドレスのネットワークアドレスが同一の機器は同じゾーンに含まれるようにしているが、図1(b)では8台のミキサエンジンで単一のゾーンを構成しているので、これらのミキサエンジンはスイッチングハブ112で相互に接続可能である。高価なルータを用いる必要が無く、ハブで相互接続できるので、全体としてコストが低減できる。
上述したように、最小連動単位は1つのデバイスグループであり、複数のデバイスグループで1つのゾーンを構成している。また、ゾーンは従来技術のゾーンと同様の単位であるので、ゾーン単位で動作させれば、複数のデバイスグループを連動させることもできることになる。1つのデバイスグループには1台のグループマスタが存在するものとする。複数のデバイスグループのグループマスタ間で通信を行うことで、ゾーンを越えることなく他の連動単位と通信することができる。システム立ち上げ時には、各機器間で初期化のための通信が行なわれ、デバイスグループ内の全機器はそのデバイスグループ内のどの機器がグループマスタでどの機器がスレーブであるかの情報を共有するものとし、さらに各デバイスグループのグループマスタはゾーン内に存在する全デバイスグループについてどの機器がグループマスタであるかの情報を共有するものとする。
図2は、図1の各ミキサエンジンのハード構成図を示す。ミキサエンジンは、CPU(中央処理装置)201、ランダムアクセスメモリ(RAM)202、フラッシュROM(リードオンリメモリ)203、操作子204、検出回路205、表示部206、表示回路207、外部機器208、通信インターフェース(I/F)209、外部機器210、音声I/F211、および通信バス212を備える。
CPU201は、このミキサエンジン全体の動作を制御する処理装置である。RAM202は、CPU201が実行するプログラムをロードしたり各種バッファ領域を確保する揮発性メモリである。フラッシュROM203は、書き替え可能な不揮発性メモリであり、後述するシーンテーブルなどの各種の情報を格納する。操作子204は、本ミキサエンジンの外部パネル上に設けられたボタンやホイールなどの各種の操作子である。検出回路205は、操作子204の操作を検出し、CPU201に検出結果を送る。表示部206は、本ミキサエンジンの外部パネル上に設けられた各種の情報を表示するためのディスプレイである。表示回路207は、CPU201からの指示を受けて表示データを表示部206に送り表示させる。通信インターフェース(I/F)209は、外部機器208と接続するためのLAN(ローカルエリアネットワーク)のインターフェースである。図1(a)で各ミキサエンジンはハブ102に接続され、図1(b)で各ミキサエンジンはハブ112に接続されているが、これは通信I/F209によりハブに接続されているものである。音声I/F211は、外部機器210と接続するためのインターフェースである。図1では制御系の接続関係のみを図示し、音響信号を伝送する接続関係は省略しているが、実際にはミキサエンジン間で音響信号をやり取りする接続線などが張られており、音声I/F211はそのような音響信号の伝送を行なうためのインターフェースである。なお、図2に示した構成要素のほか、ミキサエンジンは音響信号の処理を行なうためのDSPを備えているがここでは省略した。
図1のPC101,111のハード構成も図2に示したものと同様である。図2の構成をPC101,111の構成と見た場合、PCで音響信号の処理を行なわないのであれば、音声I/F211は不要である。また、フラッシュROMは通常のROMでよく、通常はハードディスクなどの補助記憶装置が接続されている。操作子204はキーボードやマウス、表示部206はPCのディスプレイであるのでミキサエンジンのディスプレイよりは大型の表示器となる。
図3を参照して、シーンテーブルについて説明する。図3(c)および(d)は、従来のミキサシステムにおけるシーンテーブルの例を示す。例えば、図3(c)は図18(b)のゾーン1820のシーンテーブルであり、図3(d)は図18(b)のゾーン1840のシーンテーブルである。図3(c)のシーンテーブルは、PC1811上で所定のミキサ制御プログラムを実行して作成され、PC1811からゾーン1820内のミキサエンジン1821〜1823のそれぞれに転送され、各ミキサエンジン1821〜1823のフラッシュROM203に格納されたものである。例えば、ゾーン1820内の何れかのミキサエンジンにおける操作で、あるいはPC1811からゾーン1820を指定した上での操作で、シーンNo.001がリコールされたとすると、ミキサエンジン1821〜1823のそれぞれで図3(c)のテーブルが参照されConfig01が読み出されて各ミキサエンジンのミキサ構成が設定され、さらにゾーンマスタであるミキサエンジン1821ではPreset001が、スレーブ1であるミキサエンジン1822ではPreset001が、スレーブ2であるミキサエンジン1823ではPreset002が、それぞれ読み出されてパラメータとして設定される。なお、Config01やConfig02はコンポーネントの組み合わせと結線関係の実体データであるコンフィグファイルのファイル名であり、その実体データであるコンフィグファイルは、予めPC1811上のミキサ制御プログラムで作成され各ミキサエンジン1821〜1823に転送されているものである。Preset001などのプリセットファイルも同様である。
図3(d)も図3(c)のシーンテーブルと同様のものである。ただし、図3(c)はゾーン1820のテーブルであり、図3(d)はゾーン1840のテーブルであるので、同じシーンNo.であってもその内容は一般的には異なる。コンフィグやプリセットのファイル名も図3(d)と図3(c)とで同じものがあるが、そのファイルの内容は一般的には異なる。
このような従来のシーンテーブルに対し、本実施形態のミキサエンジンは図3(a)及び(b)に示すようなシーンテーブルを有する。
図3(a)は、デバイスグループ単位で連動したシーンリコールを行なうためのデバイスグループ内のシーンテーブル(デバイスグループシーンテーブル)を示す。このテーブルは図3(c)や(d)の従来のゾーン単位のシーンテーブルと同様の構成であり、図3(c)や(d)の説明も「ゾーン」を「デバイスグループ」と読み替えればそのまま適用されるものである。ただし、従来技術のシーンテーブルでは各ミキサエンジンに対応するプリセットファイルが必ず指定されているが、本実施形態の図3(a)のデバイスグループシーンテーブルではプリセットファイルの指定が無く「−」が記載されている部分がある。これは、そのシーンNo.がリコールされたときに、プリセットの欄が「−」であるミキサエンジンについてはコンフィグ及びプリセットのリコールを行なわないこと(すなわち現時点の状態のままとする)を意味している。
このようなデバイスグループシーンテーブルが、デバイスグループ内の全ミキサエンジンに記憶されているので、デバイスグループ内の何れかのミキサエンジンにおける操作で、あるいはPCからデバイスグループを指定した上での操作で、シーンNo.が指定されてリコールが指示されると、デバイスグループ内の全ミキサエンジンが連動して(ただし、テーブルで「−」が指定されているミキサエンジンは除く)、シーンリコールが実行される。なお、各ミキサエンジンは、自機が属するデバイスグループのデバイスグループシーンテーブルを記憶しておけば良く、他のデバイスグループのデバイスグループシーンテーブルは記憶しておく必要はない。
図3(b)は、ゾーン単位で連動したシーンリコールを行なうためのシーンテーブル(シーンマスタテーブル)を示す。シーンリンクNo.(Scene Link No.)に対応して、各デバイスグループ毎にリコールすべきシーンNo.の組み合わせであるシーンリンクが登録されている。このようなシーンマスタテーブルは、例えば図1(b)のPC111上で所定のミキサ制御プログラムを実行して作成され、PC111から全デバイスグループのそれぞれのグループマスタに転送され、グループマスタ経由で各デバイスグループの全スレーブにも転送され、結果としてゾーン内の全てのミキサエンジンのフラッシュROM203に格納される。図1(b)の単一ゾーン内の任意のミキサエンジンにおける操作で、あるいはPC111からゾーンを指定した上での操作で、シーンリンクNo.が指定されてゾーンのシーンリコールが指示されると、各デバイスグループのグループマスタは当該シーンリンクNo.のシーンリンクで自グループに指定されているシーンNo.のシーンをデバイスグループシーンテーブルを参照して取得し、自デバイスグループ内で前記取得したシーンをリコールすればよい。これにより、ゾーン内の全デバイスグループで連動したシーンリコールが実行される。
なお、シーンマスタテーブルに登録されているシーンリンクには、シーンNo.が記載されておらず「−」が記載されている部分がある。これは、そのシーンリンクがリコールされたときに、シーンリンクNo.が記載されておらず「−」が記載されているデバイスグループについてはリコールを行なわないこと(すなわち現時点の状態のままとする)を意味している。これにより、ゾーン内の任意のデバイスグループを対象として、連動したシーンリコールが実現できる。
次に、本実施形態のミキサシステムの各ミキサエンジンにおいてシーンリコールを指示する操作手順について説明する。
図4(a)は、本実施形態のミキサエンジンの外部パネル(一部)上の外観を示す。外部パネル400上に、表示部206に相当する液晶表示装置(LCD)401と、操作子204に相当するホイール402、シーンボタン403、エンターボタン404、およびキャンセルボタン405が設けられている。シーンボタン403を押下すると、図4(b)に示すメニュー411がLCD401に表示される。メニュー411はリコールするシーンがゾーンのシーンかデバイスグループのシーンかを選択するメニューである。ゾーンのシーンとは、図3(b)のシーンマスタテーブルに登録されている何れかのシーンリンクのことである。デバイスグループのシーンとは、図3(a)のデバイスグループシーンテーブル(シーンボタン403の押下が行なわれたミキサエンジンが属するデバイスグループのもの)に登録されている何れかのシーンのことである。ホイール402を操作して、メニュー411でゾーンまたはデバイスグループの何れかを選択し、エンターボタン404を押下すると、図4(c)に示すようなメニューが表示される。このメニュー412は、メニュー411でゾーンが選択されたときは図3(b)のシーンマスタテーブルに登録されているシーンリンクの一覧のメニューであり、メニュー411でデバイスグループが選択されたときは図3(a)のデバイスグループシーンテーブルに登録されているシーンの一覧のメニューである。このメニュー412から1つのシーンまたはシーンリンクを選択して、エンターボタン404を押下することにより、そのシーンまたはシーンリンクをリコールする。なお、メニュー412ではシーンまたはシーンリンクの一覧に名称が付けられているが、これはユーザが任意に付けられるものとする。
図5は、あるデバイスグループのグループマスタから当該デバイスグループ内のシーンリコールを行う場合(図4(b)のメニューでデバイスグループを選択した場合)のグループマスタとスレーブの処理手順を示す。グループマスタは、ステップ501で、図4で説明したUI(ユーザインタフェース)操作によるリコールの指示を受付け、またはPC101から送信されるシーンリコールのコマンドを受信する。ステップ502で、自デバイスグループの全てのスレーブに、操作されあるいは受信したシーンリコールの指示を通知する。その後、ステップ503で、自機におけるシーンリコールを実行する。当該デバイスグループのスレーブは、ステップ511で、シーンリコールの指示を受信する。ステップ512で、指示されたシーンをリコールする。
図6は、あるデバイスグループのスレーブから当該デバイスグループ内のシーンリコールを行う場合(図4(b)のメニューでデバイスグループを選択した場合)のグループマスタとスレーブの処理手順を示す。スレーブは、ステップ611で、図4で説明したUI操作によるリコールの指示を受付け、またはPC101から送信されるシーンリコールのコマンドを受信する。ステップ612で、そのシーンリコールの指示をグループマスタに通知する。グループマスタは、ステップ601でその通知を受信し、ステップ602で自デバイスグループの全てのスレーブに当該シーンリコールの指示を通知する。その後、グループマスタは、ステップ603で、自機において指示されたシーンをリコールする。一方、スレーブ(当該デバイスグループの全てのスレーブ)は、ステップ613でグループマスタからシーンリコールの指示を受信し、ステップ614で自機において指示されたシーンをリコールする。
図7は、複数デバイスグループが存在する場合において、あるデバイスグループのグループマスタからゾーン内のシーンリコールを行う場合(図4(b)のメニューでゾーンを選択した場合)のグループマスタとスレーブの処理手順を示す。あるデバイスグループ700のグループマスタは、ステップ701で、図4で説明したUI操作によるリコールの指示を受付け、またはPC101から送信されるシーンリコールのコマンドを受信する。ステップ702で、他デバイスグループのグループマスタに、そのグループマスタで実行すべきシーンリコールの指示を通知する。その後のステップ703,704,711,712の処理は、それぞれ図5のステップ502,503,511,512と同じ処理である。
ステップ702の通知を受けた他デバイスグループ720のグループマスタは、ステップ721で、当該シーンリコールの指示を受信する。その後のステップ722,723,731,732の処理は、それぞれ図5のステップ502,503,511,512と同じ処理である。
図8は、複数デバイスグループが存在する場合において、あるデバイスグループのスレーブからゾーン内のシーンリコールを行う場合(図4(b)のメニューでゾーンを選択した場合)のグループマスタとスレーブの処理手順を示す。あるデバイスグループ800のスレーブは、ステップ811で、図4で説明したUI操作によるリコールの指示を受付け、またはPC101から送信されるシーンリコールのコマンドを受信する。ステップ612で、そのシーンリコールの指示を自デバイスグループのグループマスタに通知する。当該グループマスタは、ステップ801で、当該シーンリコールの指示を受信する。その後の当該デバイスグループ800でのステップ802,803,804,813,814の処理は図7のステップ702,703,704,711,712と同じ処理である。また、他デバイスグループ820でのステップ821,822,823,831,832の処理は図7のステップ721,722,723,731,732と同じ処理である。
図5〜図8から分るように、本実施形態では、デバイスグループ内の制御は、まずグループマスタに指示を通知し、グループマスタからグループ内のスレーブに該指示を通知する、という手順で行なうようにしている。
図9は、各ミキサエンジンにおけるシーンリコールの処理手順を示す。この処理は、図5のステップ503,512、図6のステップ603,614、図7のステップ704,712,723,732、及び図8のステップ804,814,823,832のそれぞれで実行される処理である。
ステップ901で、現在当該ミキサエンジンに設定されているミキサ構成(コンフィグ)が、リコールするシーンに登録されているコンフィグと同じか、判定する。異なるときは、ステップ902で、リコールするシーンのコンフィグ情報を自機内のデバイスグループシーンテーブル(図3(a))から読み込む。次にステップ903で、そのコンフィグ情報に従いコンポーネントを配置し、ステップ904で、そのコンフィグ情報に従いコンポーネントを結線し、ステップ905に進む。ステップ903,904の処理は、具体的には自機のDSPにそのコンフィグ情報に従った音響信号処理を行なうマイクロプログラムをロードする処理である。ステップ901で同じコンフィグのときは、そのままステップ905に進む。ステップ905では、リコールするシーンのプリセット情報をデバイスグループシーンテーブルから読み込む。ステップ906で、そのプリセット情報に従い、コンポーネントのパラメータ値をセットし、終了する。
図10は、図4で説明したUI操作によるシーン切り替えルーチンの手順を示す。この処理は、図4(a)のシーンボタン403が押下されたとき起動されるものであり、図5のステップ501、図6のステップ611、図7のステップ701、及び図8のステップ811で実行が開始される処理である。なお、PCからのシーンリコールコマンドを受信した場合も同様の処理である(ただし、ユーザの選択操作の代わりにコマンドで指示された情報を用いるものとする)。
ステップ1001で、シーンを切り替える対象がゾーン全体かまたは自デバイスグループのみかを判定する。図4(b)のメニュー411でゾーンが選択されてエンターボタン404が押下されたときはステップ1002に進み、メニュー411でデバイスグループが選択されてエンターボタン404が押下されたときはステップ1005に進む。
ステップ1002では、ゾーンのシーンテーブル(図3(b)で説明したシーンマスタテーブル)を取得し、そのシーンリンクの一覧を図4(c)のメニュー412のように表示する。ステップ1003で、選択されたシーン番号(正確にはシーンリンクの番号である)、すなわちユーザによりメニュー412から選択されエンターボタン404が押下されたシーン番号を取得する。ステップ1004で、リコールするシーン情報を取得し、ステップ1008に進む。これにより、各デバイスグループでリコールすべきシーンNo.が取得されたことになる。
ステップ1005では、自デバイスグループのシーンテーブル(図3(a)で説明したデバイスグループシーンテーブル)を取得し、そのシーンの一覧を図4(c)のメニュー412のように表示する。ステップ1006で、選択されたシーン番号、すなわちユーザによりメニュー412から選択されエンターボタン404が押下されたシーン番号を取得する。ステップ1007で、リコールするシーン情報を取得し、ステップ1008に進む。これにより、自デバイスグループでリコールすべきシーンNo.が取得されたことになる。
ステップ1008では、自機がグループマスタか否か判定し、グループマスタであるときは、ステップ1009でシーンリコール(図11の処理)した後、終了する。自機がスレーブのときは、ステップ1010で自グループのデバイスマスタに通知し、終了する。ステップ1010の通知は、図6のステップ612及び図8のステップ812に相当する。
図11は、図10のステップ1009の詳細な処理手順を示す。ステップ1101で、シーンリコールするのがゾーン全体か自デバイスグループのみかを判定する。ゾーン全体であるとき(すなわち図10のステップ1002〜1004を通ってきたとき)は、ステップ1102で、他デバイスグループのグループマスタにシーンリコールを通知し(ステップ1004で各デバイスグループでリコールすべきシーンNo.が取得されているので、各デバイスグループのグループマスタにそのデバイスグループでリコールすべきシーンNo.を通知する)、ステップ1103で、シーンマスタテーブルから自デバイスグループでリコールするシーンNo.を取得し(実際にはステップ1004で各デバイスグループでリコールすべきシーンNo.が取得されているので、その中から自デバイスグループでリコールすべきシーンNo.を取得すればよい)、ステップ1104に進む。ステップ1101で自デバイスグループのみのとき(すなわち図10のステップ1005〜1007を通ってきたとき)は、直接ステップ1104に進む。ステップ1104で、自デバイスグループのスレーブにシーンリコールを通知する。これは、既に自デバイスグループでリコールすべきシーンNo.が取得されているので、そのシーンNo.を通知してリコールを指示するものである。ステップ1105で、リコールするシーン(コンフィグとプリセット)があるか判定する。あるときは、ステップ1106で自機のシーンをリコールし、終了する。リコールするシーンが無いときは、そのまま終了する。ステップ1106では上記図9の処理を行なう。
上記ステップ1102の通知は、図7のステップ702及び図8のステップ802に相当する。上記ステップ1104の通知は、図5のステップ502、図6のステップ602、図7のステップ703,722、及び図8のステップ803,822に相当する。なお、ステップ1102の通知を受けた他のデバイスグループのグループマスタ(図7のグループ720のグループマスタや図8のグループ820のグループマスタ)では、当該通知を受けて、図11の処理を実行するものである。
図12は、デバイスグループのスレーブにおけるシーンリコールルーチンを示す。この処理は、図11のステップ1104の通知を受けたスレーブで実行される処理であり、図5のステップ512、図6のステップ614、図7のステップ712,732、及び図8のステップ814,832で実行されるものである。まずステップ1201で、リコールするシーンがあるか判定する。ある場合は、ステップ1202で自機のシーンをリコールし終了する。無い場合はそのまま終了する。
次に、本実施形態のミキサシステムにおけるゾーンの構成の表示編集機能について説明する。本実施形態のミキサシステムでは、図1に示したPC101,111から複数のミキサエンジンの制御を行なうことができるが、その制御のためにPC101,111で実行するミキサ制御プログラムは、ゾーンの構成の表示編集機能を備えている。これは、ユーザが任意に画面上にミキサエンジンを示すブロックを配置し、それらの接続関係を示す結線を引き、これにより全体としてのミキサシステムの構成を一目で見渡せるようにする機能である。特に、本実施形態では、上述したようなデバイスグループの概念を導入しているので、画面上に配置したミキサエンジンがどのデバイスグループに属するものかが一目で分るように表示上の工夫をしている。以下では、そのような表示上の工夫をしたゾーンの構成の表示編集機能について説明する。
図13は、PC上で図1で説明したようなミキサシステムの構成を示す画面例である。メイン画面1300内に、ツールキットのウインドウ1301と編集画面(以下、CAD画面と呼ぶ)のウインドウ1303が表示されている。CAD画面1303は1つのゾーン内の各機器構成について表示するものであり、ここではデバイスグループ1331〜1333が表示されている。ユーザは、ツールキット1301からミキサエンジンを選択し画面1303にドラッグ&ドロップして配置することができる。また、ミキサエンジン以外の要素も同様にして画面1303に配置でき、任意に結線を引いて、全体としてのミキサシステムの構成図を作成編集することができる。CAD画面1303上に、新たにミキサエンジンをドラッグ&ドロップして配置したときには、指定したデバイスグループ内に含めるように呼び出すこともできるし、新しいデバイスグループを定義しその中に呼び出すこともできる。特に、表示されている要素を指定して色を変える操作が為された場合以外は、通常、同じデバイスグループに属するミキサエンジンのブロックは同じ色で表示するようにしている。これにより、離れた位置に表示されても同じデバイスグループに属するミキサエンジンが判別しやすくなるという利点がある。
図14(a)は、図13のCAD画面1303上に、新たにミキサエンジンをドラッグ&ドロップしたときにポップアップ表示されるダイアログボックスを示す。ユーザは、ラジオボタン1401または1402の何れかをオンして、いまドラッグ&ドロップしたミキサエンジンが、既に存在するデバイスグループに属するものか、新しいデバイスグループに属するものかを選択する。既に存在するデバイスグループに属するものとしたい場合は、ラジオボタン1401をオンし、リストボックス1403により既に存在するデバイスグループのうち1つを選択し、OKボタン1406をオンする。これにより、CAD画面1303上に、新たなミキサエンジンが、選択されたデバイスグループに既に割当てられている色で表示される。
新たに追加するミキサエンジンを新しいデバイスグループに属するものとしたい場合は、ラジオボタン1402をオンし、デバイスグループ名の入力領域1404に任意の名称を入力し、さらにセレクトカラーボタン1405をオンして、新たに追加するデバイスグループの色を指定した後、OKボタン1406をオンする。これにより、新しいデバイスグループがCAD画面1303内に表示され、そのデバイスグループ内に新たなミキサエンジンの表示がなされ、その色はユーザが指定した色とされる。なお、キャンセルボタン1407をオンすると、ミキサエンジンの追加はキャンセルされる。
図14(b)は、デバイスグループの表示色を変更するダイアログボックスである。図13のCAD画面から、任意のデバイスの表示要素を選択し、例えばマウスの右クリックなどの所定の操作を行なうと、図14(b)のダイアログボックスが表示される。選択したデバイスのみについて表示色を変更したいときは、ラジオボタン1411をオンし、セレクトカラーボタン1413をオンして変更する色を指定する。選択したデバイスが属するデバイスグループ内の全ての機器の色を変更したいときは、ラジオボタン1412をオンし、セレクトカラーボタン1413をオンして変更する色を指定する。
図15は、CAD画面上に1台目を追加する操作がなされたときの処理を示す。CAD画面上に1台のミキサエンジンも表示されていないときは、ドラッグ&ドロップで新たなミキサエンジンを追加したとき本処理が実行される。ステップ1501で、CAD画面上に描画する色をユーザに指定させる。ステップ1502で、追加した新たなミキサエンジンをグループマスタに設定する。ステップ1503で、CAD画面上に前記指定された色でミキサエンジンを描画し、終了する。
図16は、CAD画面上に2台目以降を追加する操作がなされたときの処理を示す。このときは、まず図14(a)のダイアログボックスが表示される。ステップ1601で、新たにデバイスグループを作成するか否か判定する。これは図14(a)のダイアログボックスでラジオボタン1401と1402のどちらがオンされているかを判別することによる。新たにデバイスグループを作成する場合は、ステップ1602で追加するミキサエンジンをグループマスタに設定し、ステップ1603でCAD画面上に描画する色を指定させ、ステップ1606でCAD画面上に描画する。新たなグループを作成しない場合は、ステップ1604でミキサエンジンを追加するデバイスグループを選択させ、ステップ1605でグループマスタの描画色をCAD画面上に描画する色として設定した後、ステップ1606に進む。
図17は、CAD画面上の機器の表示色を後で変更するときの処理手順を示す。所定の操作で図14(b)のダイアログボックスが表示される。その後、ステップ1701で、CAD画面上に描画する色を指定させする。ステップ1702で、選択されたミキサエンジンが属するデバイスグループ内の機器の表示色を全て変更する選択がなされているか判定する。全て変更する場合は、ステップ1703で、当該デバイスグループ内の全ての機器の表示色を変更する。選択された機器のみ表示色を変更する場合は、ステップ1704で、当該機器の表示色のみを変更する。ステップ1703,1704の後、ステップ1705でCAD画面上に描画し、終了する。