JP2008012419A - 触媒体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜に、水和処理を施す水和処理工程と、水和処理工程後、陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程とを具備し、水和処理が、温度5℃以上40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行われ、反応促進剤が、アンモニア、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、触媒体の製造方法。
【選択図】なし
Description
例えば、自己規制的に規則的な構造が形成される方法として、電解液中でアルミニウムに陽極酸化処理を施して得られる陽極酸化皮膜が挙げられる。陽極酸化皮膜には、数nm程度から数百nm程度の直径を有する複数の微細孔(マイクロポア)が規則的に形成されることが知られている。この陽極酸化皮膜の自己規則化を用い、完全に規則的な配列を得ると、理論的には、マイクロポアを中心に底面が正六角形である六角柱のセルが形成され、隣接するマイクロポアを結ぶ線が正三角形を成すことが知られている。
非特許文献1には、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜が記載されている。また、非特許文献2には、陽極酸化皮膜には、酸化の進行に伴って、細孔が自然形成されることが記載されている。また、非特許文献3では、多孔質酸化皮膜をマスクとしてSi基板上にAuドットアレイを形成することも提案されている。
陽極酸化皮膜の材料としての最大の特徴は、複数のマイクロポアが、基板表面に対してほぼ垂直方向に、ほぼ等間隔に平行に形成されたハニカム構造を採る点にあるとされている。これに加え、ポア径、ポア間隔およびポア深さを比較的自由に制御することができる点もほかの材料にない特徴であるとされている(非特許文献3参照。)。
触媒分野への応用としては、特許文献1にはアルマイトを、焼成してなる触媒担体が提案されている。特許文献2には、40℃〜350℃で熱水処理した後又は該熱水処理と同時に、アルミナ層に触媒活性を有する金属を担持せしめる触媒体の製造方法が記載されている。また、特許文献3には、陽極酸化皮膜を、水または温水で水和処理して細孔分布を調整する方法が提案されている。さらに、特許文献4には、陽極酸化されたアルマイト表面を水和処理、ゾルゲル処理、触媒担持処理および焼成処理した触媒担体が記載されている。特許文献5では陽極酸化されたアルマイト表面を酸処理よって形成されたアルマイト表面の細孔の孔径を拡大し、水和処理、焼成処理した触媒担体が記載されている。
すなわち、常温の純水を用いた水和処理は、効率に劣るため、短時間の処理では、十分な効果が得られなかった。
一方、温水や熱水を用いた水和処理は、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの開口部を閉塞する傾向があるため、その後、触媒を担時させる際に、マイクロポアの内部の深い部分まで均一に処理することが困難であった。また、40℃〜350℃で熱水処理と同時にアルミナ層に触媒活性を有する金属を担持せしめる方法(特許文献2参照。)は、反応が速く進行しすぎるため、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの開口部が急速に閉塞され、マイクロポアの内部の深い部分まで金属を担持させることができなかった。
そこで、本発明は、陽極酸化皮膜のマイクロポア内に触媒活性を有する金属を担持した触媒体の製造方法であって、マイクロポアの内部の深い部分まで触媒活性を有する金属を担持させることができ、得られる触媒体の触媒性能が優れたものになる、触媒体の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、触媒担持処理に用いられる液が、触媒活性を有する金属の錯体を含有し、かつ、温度を特定範囲にすることにより、触媒担持処理と同時に水和処理が行われ、マイクロポアの内部の深い部分まで触媒活性を有する金属を担持させることができることを見出し、本発明の第2の態様を完成させた。
(1)バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜に、水和処理を施す水和処理工程と、
前記水和処理工程後、前記陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程と
を具備し、
前記水和処理が、温度5℃以上40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行われ、
前記反応促進剤が、アンモニア、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、触媒体の製造方法。
(2)前記反応促進剤が、アンモニア、ケイ酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)に記載の触媒体の製造方法。
(3)前記触媒活性を有する金属を含有する液が、Pt、Pd、Au、Ag、ReおよびRhからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属またはその塩もしくは錯体を含有する、上記(1)または(2)に記載の触媒体の製造方法。
(4)バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程
を具備し、
前記触媒活性を有する金属を含有する液が、前記金属の錯体を含有し、温度5℃以上40℃未満である、触媒体の製造方法。
(5)前記金属の前記錯体が、白金の錯体である、上記(4)に記載の触媒体の製造方法。
(6)前記触媒活性を有する金属を含有する液が、ヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物の水溶液をアンモニアによりpH8〜12にpH調整した水溶液、または、ジクロロテトラアンミン白金(II)・n水和物の水溶液をアンモニアによりpH8〜12にpH調整した水溶液である、上記(4)に記載の触媒体の製造方法。
本発明の触媒体の製造方法の第1の態様は、バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜に、水和処理を施す水和処理工程と、前記水和処理工程後、前記陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程とを具備し、前記水和処理が、温度5℃以上40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行われ、前記反応促進剤が、アンモニア、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、触媒体の製造方法である。
本発明の触媒体の製造方法の第2の態様は、バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程を具備し、前記触媒活性を有する金属を含有する液が、前記金属の錯体を含有し、温度5℃以上40℃未満である、触媒体の製造方法である。
本発明の第1の態様および本発明の第2の態様(以下、両者を併せて「本発明」という。)に用いられる陽極酸化皮膜は、バルブ金属に陽極酸化処理を施して得ることができ、マイクロポアを有する。
バルブ金属としては、陽極酸化処理により表面がその金属の酸化物の皮膜で覆われる特性を示す金属を用いることができる。例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンが挙げられる。中でも、アルミニウムが好ましい。
本発明においては、アルミニウム純度が99質量%以上であるのが好ましく、99.5質量%以上であるのがより好ましく、99.9質量%以上であるのが更に好ましい。そのような純度を有するアルミニウムとしては、JIS1000番台のアルミニウムが容易に入手可能である。例えば、JIS 1N00、1200、1100、1N30、1230、1050、1060、1070、1080、1085、1N90および1N99材が挙げられる。
アルミニウムは、あらかじめ脱脂処理を施されるのが好ましい。
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
各種アルコール(例えば、メタノール)、各種ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム表面に接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)である。
起点形成処理は、後述する本陽極酸化処理において、マイクロポアを所望の位置に形成させるための起点を形成させる処理である。本発明においては、この起点形成処理を行うことが好ましい。
形成させる起点は、特に限定されないが、マイクロポアの形成が均一に進行するような窪みであるのが好ましい。窪みは、直径が10nm〜0.5μmであるのが好ましく、また、深さが10nmから数百μmであるのが好ましい。また、隣接する窪みの中心間隔は、数10nmから数μmであるのが好ましい。これらは、触媒体の構造等に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、陽極酸化処理により形成するマイクロポアが処理の進行により規則的に配列する現象を利用した自己規則化法、集束イオンビームを用いて起点を作成するFIB法、半導体分野の微細加工レジストを応用したフォトリソグラフィック法、規則的な鋳型をあらかじめ作製しておき、そのパターンを転写するスタンプ法が挙げられる。また、陽極酸化処理、ポアワイド処理および部分的な陽極酸化皮膜の溶解除去処理を複数回繰り返す多段階陽極酸化処理法も有用である。
以下、自己規則化法および多段階陽極酸化処理法を例に挙げて説明する。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、基板として高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、陽極酸化皮膜を形成させ、その後、脱膜処理を行う。
この方法においては、ポア径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。さらに、かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速を制御することができるため、より好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、マグネティックスターラーHS−50D(アズワン社製)が挙げられる。
電解液の温度は、通常、10〜70℃で適宜設定することができるが、15〜60℃であるのが好ましく、20〜60℃であるのがより好ましい。
電解液の電気伝導度は、通常、30〜400mS/cmであり、40〜300mS/cmであるのが好ましく、50〜200mS/cmであるのがより好ましい。
電流密度は、通常、0.1〜300A/dm2であり、0.3〜250A/dm2であるのが好ましく、0.5〜200A/dm2であるのがより好ましい。
電圧は、通常、3〜500Vであるが、電解液の種類に応じて適宜好適範囲を選択することができる。例えば、硫酸水溶液では10〜30Vであるのが好ましく、リン酸水溶液では150〜210Vであるのが好ましく、シュウ酸水溶液では30〜60Vであるのが好ましく、クエン酸水溶液では230〜250Vであるのが好ましく、マロン酸水溶液では100〜140Vであるのが好ましく、酒石酸水溶液では180〜210Vであるのが好ましい。
中でも、直流を用い、かつ、電圧を一定にすることによって、膜厚20μm以上の陽極酸化皮膜を形成させる定電圧電解が、高い規則性を得ることができる点で好ましい。
処理時間は、0.1〜20時間であるのが好ましく、0.3〜16時間であるのがより好ましく、0.5〜7時間であるのが更に好ましい。
したがって、脱膜処理は、アルミニウムを除去せず、酸化アルミニウムである陽極酸化皮膜のみを除去する方法であれば特に限定されない。具体的には、例えば、化学的な溶解処理、逆電解処理が挙げられる。
例えば、硝酸、リン酸、無水クロム酸、水酸化クロム、リン酸ジルコニウム系化合物、リン酸チタン系化合物、リチウム塩化合物、セリウム塩化合物、マグネシウム塩化合物、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物およびハロゲン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する水溶液を用いる方法が挙げられる。中でも、クロム酸およびリン酸の混合水溶液、リン酸および硝酸の混合水溶液、リン酸および無水クロム酸の混合水溶液が好ましい。
これらの水溶液に含まれる化合物の濃度は、0.01〜10mol/Lであるのが好ましく、0.05〜5mol/Lであるのがより好ましく、0.1〜1mol/Lであるのが更に好ましい。
水溶液の温度は、0℃以上であるのが好ましく、20℃以上であるのがより好ましく、40℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰した水溶液を用いると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、水溶液は沸騰させないで用いるのが好ましい。
処理時間は、30分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上であるのが更に好ましい。
酸水溶液の電気伝導度が低すぎると、電流値の極小値が発生しないことがある。その場合には、酸水溶液中のイオン濃度を高くして、電流値の極小値が発生させるのが好ましい。逆に、酸水溶液中のイオン濃度が高すぎると、電流値の極小値が発生はするものの、短時間で終了し、その後、急速に電流値が増加してしまうので、制御が困難となる。更に、極小値に達する時間を超えると、腐食が発生してしまう。
水に溶解して酸性を示す金属塩化合物としては、例えば、シュウ酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、フッ化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムが挙げられる。
水に溶解して酸性を示す有機化合物は、カルボン酸であるのが好ましい。例えば、アジピン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、マレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、安息香酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、サリチル酸等の芳香族オキシカルボン酸が好適に挙げられる。
また、水に溶解して中性を示す塩、すなわち、中性塩を用いることもできる。中性塩としては、例えば、炭酸アンモニウム等の炭酸塩、ホウ酸アンモニウム等のほう酸塩が好適に挙げられる。
中性塩を用いる場合、更に、添加剤として、フッ化物、炭酸誘導体または酸アミドを添加した混合浴とするのも好適な態様の一つである。フッ化物としては、例えば、フッ化アンモニウムが挙げられる。炭酸誘導体としては、例えば、炭酸グアニジン、尿素、ホルムアルデヒドが挙げられる。酸アミドとしては、例えば、アセトアミドが挙げられる。
これらの中でも、シュウ酸、シュウ酸アルミニウム、硫酸、硫酸アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。特に、硫酸アルミニウム、硫酸が、入手性や廃液処理性の点で好ましい。
電解液濃度は、例えば、シュウ酸水溶液の場合、0.4〜10質量%、硫酸水溶液の場合、2〜20質量%、リン酸水溶液の場合、0.4〜5質量%であるのが好ましい。
電解液の温度は、一般的には、0〜50℃であるのが好ましく、10〜35℃であるのがより好ましい。
電流密度は、0.1〜200A/dm2であるのが好ましく、0.3〜50A/dm2であるのがより好ましく、0.5〜10A/dm2であるのが更に好ましい。上記範囲であると、はく離にムラが生じず、より均一に行うことができる。
電圧は、5〜500Vであるのが好ましく、10〜240Vであるのがより好ましい。逆電解が陽極酸化処理に引き続いて行われる場合は、陽極酸化処理と同じ電圧で、定電圧逆電解を行うのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。電圧を断続的に変化させる方法においては、電圧を順次低くしていくのが好ましい態様の一つである。電解時間は、1〜500秒であるのが好ましく、10〜120秒であるのがより好ましい。
したがって、この場合、逆電解処理後、化学処理を行って、陽極酸化皮膜の残存物を除去するのが好ましい。具体的には、各種の酸性またはアルカリ性の水溶液を陽極酸化皮膜に接触させることにより、除去することができる。
酸性水溶液は、pH0.3〜6であるのが好ましく、pH0〜4であるのがより好ましく、pH2〜4であるのが更に好ましい。酸性水溶液の温度は、20〜60℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
処理時間は、1秒〜6時間であるのが好ましく、5秒〜3時間であるのがより好ましく、10秒〜1時間であるのが更に好ましい。
アルカリ性水溶液は、pH10〜13.5であるのが好ましく、pH11〜13であるのがより好ましい。アルカリ性水溶液の温度は、10〜50℃であるのが好ましく、20〜40℃であるのがより好ましい。処理時間は、1秒〜10分であるのが好ましく、2秒〜1分であるのがより好ましく、3秒〜30秒であるのが更に好ましい。
<好適条件1>
陰極:濃度0.3mol/L、温度17℃のシュウ酸水溶液で、電圧40V、処理時間60分の条件で陽極酸化処理して得られる陽極酸化皮膜、厚さ60μm、ポア径35nm、ポア径の変動係数15%、マイクロポア周期63nm
陽極:カーボン電極
電解液:濃度0.04g/L(アルミニウムイオン換算)、pH3.8、電気伝導度0.6mS/cm、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液
電圧:40V(設定電圧)
電流密度:5A/dm2(極小値1A/dm2)
処理時間:40秒(極小時)
これに対し、この逆電解処理では、陽極酸化皮膜がアルミニウム基板との界面で固形の状態ではく離するため、フィルター等で簡便に分離することができ、逆電解処理に用いられる酸水溶液が劣化しない。
したがって、逆電解処理の処理時間および酸水溶液の消費量は、クロム酸とリン酸との混合水溶液による脱膜工程の処理時間および処理液の消費量に比べて、格段に短く、少ない。
多段階陽極酸化処理法は、表面に陽極酸化皮膜を有するアルミニウム基板に、少なくとも、前記陽極酸化皮膜の一部を溶解させる第1皮膜溶解処理と、前記第1皮膜溶解処理後の陽極酸化処理とを含む工程を1回以上行う規則化処理と、前記陽極酸化皮膜を溶解させる、第2皮膜溶解処理とをこの順に施して、表面にマイクロポアを有する微細構造体を得る方法である。
この場合、第1皮膜溶解処理の前の陽極酸化皮膜の膜厚は、10μm以上であるのが好ましく、15μm以上であるのがより好ましく、20μm以上であるのが更に好ましい。上記範囲であると、第2皮膜溶解処理後の表面の規則化度を85%以上にすることが容易となる。
本発明では、上述したように用途に合わせてアルミニウム表面に窪みを形成させた後、陽極酸化処理により、陽極酸化皮膜を形成させることができる。本明細書においては、この陽極酸化処理を、自己規則化法に用いられる陽極酸化処理等と区別して、「本陽極酸化処理」という。
本陽極酸化処理は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができるが、上述した自己規則化法と同一の条件で行われるのが好ましい。
本陽極酸化処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、0.5〜600μmであるのが好ましく、10〜400μmであるのがより好ましく、20〜200μmであるのが更に好ましい。上記範囲であると、得られる触媒体の触媒性能が優れたものになる。
陽極酸化皮膜の膜厚は、概ね電気量に比例するので、処理時間と電流密度とを適宜選択することにより、調節することができる。
本陽極酸化処理により、バルブ金属の一部が陽極酸化され、陽極酸化皮膜とそれを支持するバルブ金属部材とが得られる。
ポアワイド処理は、本陽極酸化処理後、浸せき法等により、陽極酸化皮膜を酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより、陽極酸化皮膜を溶解させ、マイクロポアのポア径を拡大する処理である。
これにより、マイクロポアの配列の規則性およびポア径のばらつきを制御することが容易となる。
ポアワイド処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
浸せき法の場合、酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜60分であるのが好ましく、10〜50分であるのがより好ましく、15〜30分であるのが更に好ましい。
本発明の第1の態様においては、上述した陽極酸化皮膜に水和処理を施す水和処理工程を行う。水和処理は、表面積を増大させるために行われる。
水和処理は、温度5℃以上40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行われる。温度およびpHが上記範囲であると、処理効率に優れ、かつ、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの開口部が閉塞されることが防止される。
水溶液の温度は、10〜35℃であるのが好ましく、20〜30℃であるのがより好ましい。
水溶液は、pH10〜12であるのが好ましく、pH11〜12であるのがより好ましい。
水溶液中の反応促進剤の量は、通常、1〜50質量%であり、3〜40質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
水和処理の条件が、上記範囲であると、マイクロポアの内部に微細凹凸構造が形成することによって表面積を増大させることができるとともに、マイクロポアの開口部が塞がれることを防止することができる点で好ましい。
本発明の第1の態様においては、上記水和処理工程後、触媒担時処理工程を行う。本発明の第2の態様においては、好ましくは水和処理工程を行わずに、触媒担時処理工程を行う。
触媒担持処理工程は、陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る工程である。
触媒活性を有する金属を含有する液に用いられる触媒活性を有する金属は、その種類および存在状態を特に限定されず、例えば、触媒活性を有する公知の金属、合金および金属化合物が挙げられる。
具体的には、金属としては、例えば、Pt、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Mo、Ru、Cu、Co、Au、Agが挙げられる。合金としては、例えば、これらの金属の合金、より具体的には、例えば、Pt−Rh−Pd3元触媒、Re−Pt合金が挙げられる。金属化合物としては、例えば、これらの金属または合金の塩、錯体が挙げられる。
中でも、微粒子状態での取り扱いが容易で触媒活性が高いため、広汎に使われている貴金属触媒が好ましい。
特に、本発明の第1の態様においては、Pt、Pd、Au、Ag、ReおよびRhからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属またはその塩もしくは錯体であるのが好ましい。
また、本発明の第2の態様においては、触媒活性を有する金属の錯体が用いられる。中でも、白金の錯体が好ましい。触媒活性を有する金属を含有する液において、触媒活性を有する金属が錯体として存在すると、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に吸着しやすく、また、結晶化したときに微細になるため、得られる触媒体の触媒性能が優れたものになる。
上記陽極酸化皮膜を、上記触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせる。これにより、陽極酸化皮膜のマイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得ることができる。具体的には、触媒活性を有する金属を陽極酸化皮膜に吸着させ、さらに、触媒反応に用いられる物質(例えば、流体)と接触しても脱着しない程度に固定化させる。
触媒活性を有する金属を含有する液は、触媒活性を有する金属のイオンを含有する水溶液であるのが好ましく、触媒活性を有する貴金属のイオンを含有する水溶液であるのがより好ましい。
触媒活性を有する金属を含有する液の温度は、本発明の第1の態様においては、5〜80℃であるのが好ましく、10〜50℃であるのがより好ましく、5〜40℃未満であるのが更に好ましい。
また、触媒活性を有する金属を含有する液の温度は、本発明の第2の態様においては、5℃以上40℃未満である。上記範囲であると、触媒担持と同時に水和処理が行われ、かつ、マイクロポアの開口部が閉塞されることがない。
触媒活性を有する金属を含有する液は、pH7.5〜13であるのが好ましく、pH8〜12であるのがより好ましく、pH9〜12であるのが更に好ましい。
処理時間は、0.1〜12時間であるのが好ましく、0.5〜10時間であるのがより好ましく、1〜8時間であるのが更に好ましい。
金化合物を用いる水溶液としては、例えば、テトラクロロ金(III)酸(塩化金酸)・四水和物、シアン化金(I)、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム・二水和物、テトラクロロ金(III)酸・四水和物,ジシアノ金(I)酸カリウム、テトラシアノ金(III)酸カリウム、テトラクロロ金(III)酸カリウム・n水和物、テトラクロロ金(III)酸アンモニウム・n水和物等の水溶液が挙げられる。中でも、テトラクロロ金(III)酸・四水和物の水溶液をアンモニアによりアルカリ性にpH調整した水溶液、テトラクロロ金(III)酸アンモニウム・n水和物の水溶液をアンモニアによりアルカリ性にpH調整した水溶液が好ましい。
銀化合物を用いる水溶液としては、例えば、クロム酸銀(I)、シアン化銀臭化銀(I)、炭酸銀、ヨウ素酸銀(I)、ヨウ化銀(I)、硝酸銀、硫酸銀、ジシアノ銀酸カリウム、亜硝酸銀、塩素酸銀、酢酸銀(I)の各水溶液をアンモニアによりアルカリ性にpH調整した水溶液が好ましい。
これらの水溶液においては、白金イオンがアンモニアと反応して錯イオンを形成し、[Pt(NH3)4]2+錯体が形成される。
この水溶液を用いて浸せき処理を施すと、微細な結晶となり、触媒体として高い性能を示すことが期待され、また、触媒担持処理と同時に、水和処理が行われるので、製造効率の点で好ましい。
本発明においては、触媒体の陽極酸化皮膜側の表面積を増大させたり、陽極酸化皮膜に吸着した触媒活性を有する金属を固着させたりすることを目的として、更に、焼成処理を施すことができる。
焼成処理は、空気中または不活性ガス雰囲気中、100〜600℃で0.1〜5時間保持することにより行うのが好ましく、不活性ガス雰囲気中、350〜600℃で0.5〜3時間保持することにより行うのがより好ましい。
本発明により得られる触媒体は、特に高温環境下で使用する場合、バルブ金属部材を除去した態様で用いるのが好ましいことがある。このため、触媒担持処理の前または後に、バルブ金属部材を除去する処理を行うことができる。
バルブ金属部材を除去する処理の方法は、特に限定されないが、例えば、陽極酸化処理については難溶性または不溶性であり、かつ、バルブ金属については溶解性である溶剤を用いて、好ましくは0〜80℃、より好ましくは10〜60℃、更に好ましくは20〜40℃の温度で、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上、更に好ましくは1時間以上、この溶剤に、バルブ金属部材を、場合により陽極酸化皮膜とともに接触させる方法が挙げられる。
溶剤は、バルブ金属としてアルミニウムを用いた場合は、臭素、ヨウ素等のハロゲン;希硫酸、リン酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸性溶剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ性溶剤が好ましく、臭素、ヨウ素がより好ましい。
バルブ金属部材を溶剤に接触させる方法は、特に限定されないが、例えば、浸せき法、滴下法が挙げられる。
また、バルブ金属部材を除去する処理の方法として、上述した逆電解処理も好適に用いられる。
本発明により得られる触媒体は、マイクロポアの底部を貫通させ、マイクロポアの両端が開口した形態とすることができる。この形態では、触媒反応に気体、液体等の流体を用いる場合に、流体をマイクロポアの中を流通させた状態で反応を行うことができるため、触媒効率が優れたものとなる。
貫通処理は、必要に応じて上述したバルブ金属の除去処理を施した後、化学溶解処理、イオンミリング処理等を行うことにより施すことができ、これにおり、マイクロポアの底部が貫通し、両端が開口した形態の触媒体が得られる。
水溶液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸、マロン酸等の酸性水溶液が好ましい。水溶液の濃度は、通常、0.1〜6mol/Lであり、0.2〜5mol/Lであるのが好ましく、0.3〜4mol/Lであるのがより好ましい。水溶液の温度は、通常、10〜70℃であり、15〜60℃であるのが好ましく、20〜60℃であるのがより好ましい。
化学溶解処理の方法は、特に限定されないが、例えば、バルブ金属を除去して得られた陽極酸化皮膜を、バリアー層側が上記水溶液と接触するように減圧フィルターホルダーに鋏み、上から上記水溶液を入れ、吸引ろ過瓶にセットして吸引することにより行うことができる。この方法では、マイクロポアの底部が貫通し、水溶液が浸透して滴下するようになったら、吸引を中止して、水溶液を中性の水に入れ替えて水洗する。その後、自然乾燥してメンブランフィルター状の貫通膜を得ることができる。
本発明により得られる触媒体においては、陽極酸化皮膜側の表面について、200℃で2時間保持した後にBET法により測定した実表面積を、幾何学的表面積で除して得られる表面積比が、5000〜30万であるのが好ましい。
実表面積は、200℃で2時間保持した後に、BET法により測定される。触媒体を200℃で2時間保持することにより、後のBET法において、測定される実表面積が安定した値となる。
触媒体を200℃で2時間保持する方法としては、例えば、真空中で加熱する方法、真空中で保管した後、不活性流通ガス中で加熱する方法が好適に挙げられる。
本発明においては、BET法は、常法により行うことができる。例えば、触媒学会編,「触媒実験ハンドブック」,講談社,1989年,p.167−168の記載を参照して行うことができる。
BET法に用いられる測定器は、特に限定されず、例えば、市販の測定器が挙げられる。具体的には、例えば、島津製作所社製のフローソーブ、カンタクローム社製のオートソーブが挙げられる。
吸着質としては、窒素、クリプトン、ベンゼン、トルエン等の有機化合物が用いられる。中でも、窒素、窒素とヘリウムとの混合ガスが一般的に用いられる。触媒体の実表面積が比較的小さい場合には、クリプトンガスが好適に用いられる。
BET法における吸着時間は、触媒体の実表面積、測定する触媒体の量等によって、異なるが、例えば、25mm×2mmの大きさでは、概ね30分〜15時間の範囲である。脱着時間は、5〜10分程度で行われる。
実表面積は、脱着時に計測される面積の値を用いる。
本発明により得られる触媒体においては、陽極酸化皮膜側の表面に存在するマイクロポアのうち、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上が直管状のマイクロポアである。
一般に、触媒反応の効率を高くするためには、触媒体の表面積比を大きくすることが必要であるが、例えば、陽極酸化皮膜の膜厚を厚くしてマイクロポアを深くすることにより表面積比を大きくすると、触媒反応に用いられる液体、気体等の流体がマイクロポアの深部まで到達しにくくなり、触媒反応の効率が高くなりにくくなる。
これに対し、直管状のマイクロポアにおいては、触媒反応に用いられる液体、気体等の流体が、マイクロポアの深部まで円滑に移動することができる。したがって、直管状のマイクロポアの割合(直管度)が上記範囲であると、マイクロポアを深くした場合であっても、触媒反応の効率が高くなるため好ましい。
ポアの直管度は、例えば、触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEMによって観察し、マイクロポアの中間部から底部にかけて合計5箇所の写真を倍率5万倍で撮影し、視野の中で、直管状になっているマイクロポアの個数Cと、分岐しまたは閉塞しているマイクロポアの個数Dとから、下記式(1)により算出する。
図2は、ポアの直管度を算出する方法の説明図である。図2(A)においては、4個のマイクロポア10はいずれも分岐や閉塞がない。したがって、直管状のマイクロポアの割合は、4/4×100=100(%)である。一方、図2(B)においては、6個のマイクロポアのうち、分岐状のマイクロポア12が4個、他のマイクロポアの中間部で閉塞しているマイクロポア14が1個あるため、直管状のマイクロポア10は1個となっている。したがって、直管度は、1/6×100=17(%)である。
本発明により得られる触媒体においては、陽極酸化皮膜のマイクロポアの規則化度が10%以上であるのが好ましく、20%以上であるのが好ましく、30%以上であるのが更に好ましい。
規則化度は、マイクロポアの規則性の指標であり、上述したバルブ金属部材除去処理およびその後の貫通処理によりマイクロポアの底部を貫通させて、裏面からFE−SEMによる写真を撮影し、下記式(2)により算出する。
図3(A)に示されるマイクロポア1は、マイクロポア1の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円3(マイクロポア2に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア1以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア1は、Bに算入される。
図3(B)に示されるマイクロポア4は、マイクロポア4の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円6(マイクロポア5に内接している。)を描いた場合に、円6の内部にマイクロポア4以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア4は、Bに算入されない。また、図3(C)に示されるマイクロポア7は、マイクロポア7の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円9(マイクロポア8に内接している。)を描いた場合に、円9の内部にマイクロポア7以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア7は、Bに算入されない。
1.触媒体の作製
(実施例1〜24および比較例1〜4)
第1表に示されるように、基板に、脱脂処理、起点形成処理(実施例1のみ)、本陽極酸化処理、ポアワイド処理、触媒担持処理および逆電解処理(実施例22のみ)を順次施して、各触媒体を得た。
構造体の作製に用いた基板は、以下のとおりである。これらを10cm四方の範囲で陽極酸化処理を施すことができるような大きさにカットして用いた。
基板1:JIS 1N99材、日本軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.30mm
基板2:JIS 1050材、日本軽金属社製、純度99.5質量%、厚さ0.24mm
基板3:JIS 1050材、日本軽金属社製、純度99.5質量%、厚さ3mm
圧延油を除去するため、中性洗剤(チャーミー、ライオン社製)の水希釈液(濃度10質量%、温度40℃)に浸せきさせ、スポンジ(PSスポンジ、富士写真フイルム(株)製)により10分間擦って洗浄した。
実施例1においては、以下に示すようにして、マイクロポアの形成の起点(開始点)となる窪みを形成させる起点形成処理を施した。実施例2〜24および比較例1〜4においては、起点形成処理を行わなかった。
陽極酸化処理は、電解浴として、濃度1mol/L、温度55℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を45分間行うことにより施し、膜厚52μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約10A/dm2であった。
陽極酸化処理においては、冷却装置としてNeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)、電源としてGP0650−2R(高砂製作所社製)を用いた。
化学溶解処理は、無水クロム酸濃度0.3mol/L、リン酸濃度1mol/L、温度50℃のクロム酸/リン酸混合水溶液中に、12時間浸せきさせることにより施し、陽極酸化皮膜を溶解させて、膜厚0.1μm以下とした。なお、陽極酸化皮膜の膜厚は、SEMにより測定した。
本陽極酸化処理は、第1表に示されるように、以下の陽極酸化処理A〜Eのいずれかを行った。
<陽極酸化処理A>
電解浴として、濃度1mol/L、温度55℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を45分間行うことにより施し、膜厚50μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約10A/dm2であった。
電解浴として、濃度1mol/L、温度55℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を90分間行うことにより施し、膜厚90μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約10A/dm2であった。
電解浴として、濃度1mol/L、温度55℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧40Vの定電圧条件で電解処理を14時間行うことにより施し、膜厚500μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約10A/dm2であった。
電解浴として、濃度0.5mol/L、温度16℃の硫酸水溶液を用い、電解浴中で、電圧25Vの定電圧条件で電解処理を7時間行うことにより施し、膜厚90μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電流密度は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理中の平均値で、約0.5A/dm2であった。
電解浴として、濃度0.44mol/L、温度20℃のシュウ酸水溶液を用い、電解浴中で、電流密度0.5A/dm2の定電流条件で電解処理を252分間行うことにより施し、膜厚50μmの陽極酸化皮膜を形成させた。電圧は、特に制御しなかったが、陽極酸化処理の開始時が60V、終了時が35Vであり、その間、漸減しており、平均値で約45Vであった。
なお、シュウ酸および硫酸は、いずれも関東化学社製の試薬を用いた。
ポアワイド処理は、基板を、濃度5質量%、温度30℃のリン酸水溶液に15分間浸せきさせることにより行った。
触媒担持処理は、第1表に示されるように、以下の方法T1〜T3のいずれかにより行った。
<方法T1>
化学式:H2PtCl6・6H2Oで表されるヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物(関東化学社製試薬)を純水に溶解させた。ついで、アンモニア水(関東化学社製試薬)を添加してpHが第1表に示される値となるようにpHを調整した後、純水を添加してPt濃度が第1表に示される値となるように濃度を調整した。
得られた水溶液を室温下で6時間かくはんし、水溶液の色彩が当初の黄色から無色透明に近い状態に変化して安定したことを確認した後、プログラム低温インキュベーター(IQ820、ヤマト科学社製)中に前記水溶液が入ったポリ瓶を密閉した状態で置いて第1表に示される温度にし、その後、基板を第1表に示される時間浸せきさせることにより、触媒担持処理を施し、触媒体を得た。
触媒担持処理後の触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEM(S−900、日立製作所社製)によって観察したところ、いずれも触媒体の上面およびマイクロポアの内部表面に粒状の析出物が生成していた。また、触媒担持処理後の触媒体の表面を反射型赤外分光光度計で測定したところ、いずれも700〜900cm-1の位置にベーマイト(AlO(OH))に起因するブロードなピークが観察された。
化学式:Pt(NH3)4Cl2・H2Oで表されるジクロロテトラアンミン白金(II)・一水和物(和光純薬工業社製)を純水に溶解させた。ついで、アンモニア水(関東化学社製試薬)を添加してpHが第1表に示される値となるようにpHを調整した後、純水を添加してPt濃度が第1表に示される値となるように濃度を調整した。
得られた水溶液をプログラム低温インキュベーター(IQ820、ヤマト科学社製)中に前記水溶液が入ったポリ瓶を密閉した状態で置いて第1表に示される温度にし、その後、基板を第1表に示される時間浸せきさせることにより、触媒担持処理を施し、触媒体を得た。
触媒担持処理後の触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEM(S−900、日立製作所社製)によって観察したところ、粒状の析出物が生成していた。また、触媒担持処理後の触媒体の表面を反射型赤外分光光度計で測定したところ、700〜900cm-1の位置にベーマイト(AlO(OH))に起因するブロードなピークが観察された。
基板のバリアー皮膜の厚さを薄層化して、電着の均一性を向上させるために、濃度5質量%、温度30℃のリン酸水溶液に、基板を30分間浸せきさせた。ついで、表面積を増大させるために、温度25℃、pH11.0のアンモニア水に、基板を30分間浸せきさせ、水和処理を施した。
別途、化学式:Pt(NH3)4Cl2・H2Oで表されるジクロロテトラアンミン白金(II)・一水和物(和光純薬工業社製)を純水に溶解させた。ついで、アンモニア水(関東化学社製試薬)を添加してpHが第1表に示される値となるようにpHを調整した後、純水を添加してPt濃度が第1表に示される値となるように濃度を調整した。
得られた水溶液をプログラム低温インキュベーター(IQ820、ヤマト科学社製)中に前記水溶液が入ったポリ瓶を密閉した状態で置いて第1表に示される温度近傍に到達させ、その後、前記水溶液を1L容のガラスビーカーに移し、このガラスビーカーをクールスターラー(CSB−900N、アズワン社製)に入れて第1表に示される温度にし、その後、水和処理後の基板を第1表に示される時間浸せきさせ、60Hzの交流電源を用い、11Vの定電圧(スライダックで調整)で、第1表に示される時間電着処理を行うことにより、触媒担持処理を施し、触媒体を得た。
実施例22においては、以下のようにして、逆電解処理を施し、陽極酸化皮膜を基板からはく離させた。実施例1〜21、23および24ならびに比較例1〜4においては、逆電解処理を施さなかった。
逆電解処理は、マスキングを行った後、陰極として触媒担持処理後の基板を用い、陽極としてPt電極を用い、濃度4.5g/L、温度33℃の硫酸アルミニウム水溶液中で、電圧16Vの定電圧条件で電解処理を行うことにより施し、これにより陽極酸化皮膜と基板とをはく離させた。
逆電解処理においては、電流値のモニタリングを行い、電流値が初期電流値の10%以下となったときに逆電解処理を終了した。
陽極酸化皮膜の表面における逆電解において電解液と接触した部分と接触しなかった部分との境界(半径1.7cmの円状)にカッターで切り込みを入れて、陽極酸化皮膜を基板から分離した。
なお、逆電解処理の後に貫通処理は、行わなかった。
(1)表面積比
上記で得られた触媒体を小型裁断機により40mm×3mmの大きさに裁断した。裁断後の触媒体を、市販の真空保管容器の中に入れ、真空度1×10-1Paで12時間保管した。
ついで、触媒体を流動式比表面積自動測定装置(フローソーブIII2305、島津製作所社製)に入れ、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、200℃で2時間保持し、脱気した。
その後、感度設定1/1として、short Passを使用し、0.1%クリプトンを含有した窒素ガス流通下で、液体窒素温度で1時間吸着させたところ、シグナルが消え、吸着が完了した。ついで、室温に戻したところ、5分後にシグナルが消え、脱着が完了した。
脱着データより得られた実表面積を幾何学的面積(0.00012m2)で除して、表面積比を算出した。結果を第1表に示す。
上記で得られた触媒体を折り曲げて、陽極酸化皮膜の破断面を作製し、FE−SEM(S−900、日立製作所社製)によって観察し、マイクロポアの中間部から底部にかけて合計5箇所の写真を倍率5万倍で撮影し、視野の中で、直管状になっているマイクロポアの個数Cと、分岐しまたは閉塞しているマイクロポアの個数Dとから、上記式(1)により直管度を算出した。結果を第1表に示す。
上記で得られた触媒体について、ミクロトームを用いて断面を露出させた後、X線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、白金(Pt)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の元素分布を測定した。
EPMA分析の結果の模式的なグラフを図4に示す。なお、図4においては、Oの元素分布は省略してある。
図4に示されるように、陽極酸化皮膜と陽極酸化されていないアルミニウム基板との界面から、触媒体の表面側(図4中、右側)ではPtのX線強度がある分布をしている(なお、陽極酸化皮膜と陽極酸化されていないアルミニウム基板との界面の位置は、AlとOの強度が大きく変化していたため、明確に確定することができた。)。
そこで、陽極酸化皮膜と陽極酸化されていないアルミニウム基板との界面から触媒体の表面側に10μmの位置におけるPtのX線強度の値を、触媒体の表面付近におけるPtのX線最大強度の値で除した値を白金均一度とし、Ptがマイクロポアの内部の深い部分まで到達しているか否かの指標とした。
結果を第1表に示す。
流通式微分反応装置(化学工学論文集,第19巻,第1号(1993),p.42のFig.1に示されるもの。)を用いて、以下のようにしてメチルシクロヘキサンの脱水素反応を行って触媒体の脱水素反応率を測定し、触媒体の性能評価を行った。
前処理として、350℃で12時間空気酸化を行った後、水素による還元処理を2時間行い、ついで、窒素でパージしながら200℃まで降温させた。
つぎに、5℃のメチルシクロヘキサンをバブリングによって気化させてキャリアガスとして用いた窒素ガスに接触させ、温度とバブリングの程度とを適宜制御することにより、メチルシクロヘキサンのガス濃度を制御した。導入濃度は200ppmとした。反応圧力は1気圧であった。
メチルシクロヘキサンを触媒体に1時間接触させた後、発生したトルエン濃度を検量線法で求めた。発生したトルエン濃度から、下記式により、脱水素反応率を算出した。結果を第1表に示す。
3、6、9 円
10 直管状のマイクロポア
12 分岐状のマイクロポア
14 閉塞しているマイクロポア
Claims (6)
- バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜に、水和処理を施す水和処理工程と、
前記水和処理工程後、前記陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程と
を具備し、
前記水和処理が、温度5℃以上40℃未満、pH8〜12である反応促進剤の水溶液を用いて行われ、
前記反応促進剤が、アンモニア、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、ケイ酸ナトリウム、重クロム酸カリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、触媒体の製造方法。 - 前記反応促進剤が、アンモニア、ケイ酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の触媒体の製造方法。
- 前記触媒活性を有する金属を含有する液が、Pt、Pd、Au、Ag、ReおよびRhからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属またはその塩もしくは錯体を含有する、請求項1または2に記載の触媒体の製造方法。
- バルブ金属に陽極酸化処理を施して得られる、マイクロポアを有する陽極酸化皮膜を、触媒活性を有する金属を含有する液に浸せきさせ、前記陽極酸化皮膜の前記マイクロポアの内部に前記金属を担持させて触媒体を得る触媒担時処理工程
を具備し、
前記触媒活性を有する金属を含有する液が、前記金属の錯体を含有し、温度5℃以上40℃未満である、触媒体の製造方法。 - 前記金属の前記錯体が、白金の錯体である、請求項4に記載の触媒体の製造方法。
- 前記触媒活性を有する金属を含有する液が、ヘキサクロロ白金(IV)酸・六水和物の水溶液をアンモニアによりpH8〜12にpH調整した水溶液、または、ジクロロテトラアンミン白金(II)・n水和物の水溶液をアンモニアによりpH8〜12にpH調整した水溶液である、請求項4に記載の触媒体の製造方法。
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