JP2008006665A - 伝動ベルトの製造方法 - Google Patents

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JP2008006665A JP2006178911A JP2006178911A JP2008006665A JP 2008006665 A JP2008006665 A JP 2008006665A JP 2006178911 A JP2006178911 A JP 2006178911A JP 2006178911 A JP2006178911 A JP 2006178911A JP 2008006665 A JP2008006665 A JP 2008006665A
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Hiroki Takechi
博樹 武市
Yorifumi Hineno
順文 日根野
Teruhiro Yoshida
彰宏 吉田
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Abstract

【課題】 良好な脱型性、剥離性を確保することが可能であり、かつ背面平滑性に優れた伝動ベルトの製造方法を提供する。
【解決手段】 ゴム14bと帆布14aの積層体である円筒状の母型14を装着した内型21の外周面に、伸張ゴム層15を配置した後、心線13を螺旋状にスピニングする。次いで、未加硫接着ゴムシート、未加硫圧縮ゴムシートを順次巻き付けることにより接着ゴム層12、圧縮ゴム層16を配置し、未加硫ベルトスリーブ11を形成する。次いで、この未加硫ベルトスリーブを内型に捲き付けた状態のままで、ジャケットを外挿してモールド組立体を構成し、このモールド組立体を加硫缶内部の基台上に載置固定して上下面を密閉した後、スチームを入気して未加硫ベルトスリーブを加熱加圧し、加硫をおこなう。
【選択図】 図2

Description

本発明は動力伝動に用いられる伝動ベルトの製造方法に関する。
近年、省エネルギー化、コンパクト化の社会的要請を背景に、自動車のエンジンルーム周辺の雰囲気温度は従来に比べて上昇し、これにともない動力伝動ベルトの使用環境温度も高くなってきた。従来、動力伝動ベルトは天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴムが主流であったが、高温雰囲気下では、熱により硬化したゴム層で早期にクラックを生じるという問題が発生した。これに代わり最近では、優れた耐熱性、耐寒性を有し、比較的に安価であると共に、環境負荷物質を含まない又は含有量が少ないポリマーであるエチレン・α−オレフィンエラストマーが注目されている。
動力伝動に用いられるVリブドベルトは、一般的には、ベルト長手方向に平行に延びて並列状態に配置された複数のリブが形成された圧縮ゴム層と、その圧縮ゴム層の上部に積層されてコードからなる心線が埋設された接着ゴム層と、この接着ゴム層の背面側に縫合された帆布からなる伸張層とを備えて構成されている。そして、このような一般的なVリブドベルトにおける伸張層としての帆布は、ベルトの耐縦亀裂性を保持するために設けられているものであり、例えば、経糸と緯糸とを織り込んだ平織布にゴム引き処理を施すことで形成されている。
しかし、上述したような一般的なVリブドベルトを駆動プーリと従動プーリとに掛架し、ベルト背面をアイドラープーリに接触係合させたときに、周期的に異音が発生することがあった。この異音は、帆布の縫合領域にて発生し易いが、その縫合領域以外の領域でも発生するものであり、縫合領域を平坦面となるように形成しても発生する。この縫合領域以外での異音発生の原因の一つとして、帆布の表面状態の影響があることが知られている。即ち、バイアス帆布や筒状帆布を成形中に、あるいは筒状帆布をベルト成形体に嵌入中に、帆布が機械的に変形して経糸と緯糸との交差角や経糸と緯糸とによって形成される開口部の大きさが変化し、開口部の大きい部分と小さい部分との差が広がってしまい、糸が局部的に収束する領域が発生する。このため、糸が局部的に収束した領域での帆布表面の凹凸等の形態が、他の領域の形態と異なることによって、走行時に異音が発生すると考えられる。
そこで、異音の発生を抑制する観点から、ベルト背面に帆布を積層しないVリブドベルト、即ち、伸張層をゴム組成物で構成したVリブドベルトが提案されつつあり、この伸張ゴム層をエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成する試みがなされている。しかし、このようなVリブドベルトは、ベルト背面においてゴムが直接露出している状態となるため、アイドラープーリに当接係合するときに、ベルト背面にて粘着磨耗が発生し易く、それによって逆にスリップ音等の異音が発生し易くなってしまうという問題があった。そこで、ベルト背面を、短繊維を配合したゴム組成物で構成することにより、粘着磨耗の抑制並びに異音の発生を抑制する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−162899号公報
このように背面をゴム層で構成したVリブドベルトの製造方法としては、まず内型に未加硫伸張ゴムシート、未加硫接着ゴムシートを順次捲き付けた後、心線をスピニングし、次いで未加硫圧縮ゴムシートを捲き付けて無端状の未加硫ベルトスリーブを形成する。そして、該未加硫ベルトスリーブが捲装された内型に加硫用ゴムジャケットを外挿して加硫缶に載置し、加熱加圧によりゴム加硫を行った後、冷却を経て内型から脱型せしめ、加硫ベルトスリーブを得ることが一般的である。
しかし、背面をゴム層で構成した場合、背面を帆布で構成するのと比べて金型との摩擦係数が高くなり、加硫ベルトスリーブの脱型が非常に困難であった。またここで無理に脱型させると、心線乱れや蛇行などの変形が発生するといった問題があった。このような不具合に対して、金型表面に離型剤を塗布し、脱型性を確保することが考えられたが、金型表面に存在する離型剤の微塊が加硫中に気化・膨張し、得られた加硫ベルトスリーブ表面に微小な凹凸が発生して外観不良となることが判明した。
本願発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、良好な離型性を確保することが可能であり、かつ背面平滑性に優れた伝動ベルトの製造方法を提供することにある。
即ち、本願請求項1の発明は、少なくとも背面がエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成される伝動ベルトの製造方法において、円筒状の金型の外周に、少なくとも外層が不飽和ニトリルゴム加硫物で構成された円筒状の母型を被挿する(1)工程と、前記母型の外周に、エチレン・α−オレフィンゴム層、芯材、ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する(2)工程と、該未加硫ベルトスリーブを加硫し、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを形成する(3)工程と、前記金型から、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを脱型する(4)工程と、前記母型を剥離し、表面がエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成された加硫ベルトスリーブを形成する(5)工程とを有することを特徴とした伝動ベルトの製造方法である。
本願請求項2の発明は、請求項1記載の伝動ベルトの製造方法にあって、前記伝動ベルトが、背面が伸張ゴム層で構成されるVリブドベルトであり、(2)工程が、前記母型の外周に、伸張ゴム層、芯材、圧縮ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する工程であることを特徴とする。
本願請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の伝動ベルトの製造方法にあって、母型が、ゴム及び帆布の積層体からなることを特徴とする。
本願請求項4の発明は、請求項3に記載の伝動ベルトの製造方法にあって、ゴム及び帆布の積層体がゴムコーチング帆布であり、(1)工程において、ゴムコーチング面が外層になるよう配置されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、金型から、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを脱型させることで、離型剤を塗布しなくとも加硫ベルトスリーブの脱型性を向上せしめることができると共に、母型と加硫ベルトスリーブとの離型性が良好であることから、背面の平滑性が高い伝動ベルトを製造することができる。また優れた耐熱性、脱ハロゲンという特性を備えた伝動ベルトを得ることができる。更に、母型の耐久性、耐熱性に優れ、加えて母型の熱変形が少なく硬質であることから、伝動ベルトの心材並びが安定するといった利点がある。
請求項2の発明によれば、加硫ベルトスリーブの脱型性、離型性に優れたVリブドベルトの製造方法が提供できる。また背面の平滑性が高く、優れた耐熱性、脱ハロゲンという特性を備えると共に、心線ピッチの安定したVリブドベルトを得ることができる。
請求項3の発明によれば、母型の補強性が高くなり、耐久性に優れるといった効果がある。
請求項4の発明によれば、母型をゴムコーチング帆布とすることで、帆布と金型表面の脱型が容易であり、ベルト成形体にかかるストレスが少ないといった利点がある。
本発明は、少なくとも背面がエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成される伝動ベルトの製造方法において、円筒状の金型の外周に、少なくとも外層が不飽和ニトリルゴム加硫物で構成された円筒状の母型を被挿する(1)工程と、前記母型の外周に、エチレン・α−オレフィンゴム層、芯材、ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する(2)工程と、該未加硫ベルトスリーブを加硫し、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを形成する(3)工程と、前記金型から、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを脱型する(4)工程と、前記母型を剥離し、背表面が伸張ゴム層で構成された加硫ベルトスリーブを形成する(5)工程とを有することを特徴とする。尚、(1)工程でいう外層とは、母型の外周面、即ち未加硫ベルトスリーブと接触する面を構成する層である。
以下、本発明における伝動ベルトとして、背面が伸張ゴム層で構成されるVリブドベルトの製造方法を図1〜3をもとに説明する。図1は金型に母型を装着した状態を示す断面図、図2は未加硫ベルトスリーブを形成した状態を示す断面図、図3は加硫ベルトスリーブを形成した後の状態を示す断面図である。
先ず、円筒状の金型21の外周面に、ゴム14bと帆布14aの積層体である円筒状の母型14を、帆布14aが内周側、ゴム14bが外周側になるよう被挿する(工程(1))。
ゴム14bは不飽和ニトリルゴム加硫物で構成される。ゴム14bを構成するゴム組成物に必要とされる特性は、加硫後の伸張ゴム層15を構成するゴム組成物と剥離性のよいことである。これは即ち、冷却後の加硫ベルトスリーブと母型が容易に剥離可能とするためである。具体的には、ベルトスリーブを構成するエチレン・α−オレフィンゴムと母型を構成する不飽和ニトリルゴムの極性、SP値が異なるため、優れた離型性を呈することができると考えられる。またゴム14bは、繰り返しの使用に対する耐久性、未加硫ベルトスリーブの加硫温度に耐える耐熱性を備えることが要求される。加えて、未加硫ベルトスリーブの形成時、具体的には心線のスピニング時に、心線並びに悪影響を与えない程度に硬質であることが望まれる。このようなゴムとして、具体的には不飽和ニトリルゴムが選択される。なかでも水素化ニトリルゴム(H−NBR)が好ましく用いられる。
H−NBRは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル10〜55重量%と、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの共役ジエン90〜45重量%とからなる共重合体、および更にこれらのモノマーに加えて共重合可能なエチレン性不飽和モノマーを共重合させた多元共重合体が挙げられる。エチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エトキシエチルアクリレート、マレイン酸、イタコン酸、モノメチルマレイン酸エステル、ジメチルマレイン酸エステルなどの不飽和ジカルボン酸、これらの不飽和ジカルボン酸のモノエステルおよびジエステルなどが挙げられる。
帆布14aは、母型の補強材となるものであり、金型21への良好な装着性・脱型性、繰り返しの使用に対する耐久性、また未加硫ベルトスリーブの加硫温度に耐える耐熱性などが必要とされる。帆布の形態としては、織物、編物、不織物などがある。具体的には、帆布として伸縮性帆布を用いると、母型の金型への装着、脱型を良好なものとすることができるため好ましい。構成糸としては、ナイロン66等のポリアミド繊維などを例示することができる。
母型14の作製方法としては、例えば不飽和ニトリルゴム組成物(未加硫物)をゴムコーチングした帆布をジョイントし、円筒状に加硫成形することで得ることができる。また例えば、ジョイントレスの帆布(予め円筒状に成形した帆布)にゴムコーチングして加硫成形したり、ゴムコーチング以外の方法で帆布にゴムを積層させたりすることも可能である。ゴム14bの厚みは1.30〜1.80mmであることが望ましい。
尚、本実施例では母型14としてゴム14bと帆布14aの積層体を例示しているが、母型は積層体に限るものではなく、ゴムのみで構成されていてもよい。また、実施例では母型14の外表面(ゴム14b表面)はフラットであるが、所望に応じて伸張ゴム層に転写するパターンを刻印していてもかまわない。
次いで、未加硫伸張ゴムシート、心線、未加硫接着ゴムシート、未加硫圧縮ゴムシートを順次無端状に捲き付けたフラット状の広幅未加硫ベルトスリーブ11を形成する。即ち、母型14を装着した金型21に、未加硫伸張ゴムシートを巻き付けることにより伸張ゴム層15を配置した後、心線13を螺旋状にスピニングすることにより芯材を配置する。次いで、未加硫接着ゴムシート、未加硫圧縮ゴムシートを順次巻き付けることにより接着ゴム層12、圧縮ゴム層16を配置し、未加硫ベルトスリーブ11を形成する(工程(2))。尚、「母型の外周に、伸張ゴム層、芯材、圧縮ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する」とは、伸張ゴム層、芯材、圧縮ゴム層のみを配置することを意味するものではなく、各要素に加えて(もしくは各要素の間に)別要素を配置することも可能である。また本実施例では芯材として心線を例示しているが、これに限定されるものではない。
次に、この未加硫ベルトスリーブ11を金型21に捲き付けた状態のままで、ジャケット22を外挿してモールド組立体を構成し、このモールド組立体を加硫缶(図示せず)内部の基台20上に載置固定して下面をシールし、その上面を内蓋26で密閉した後、モールド組立体の外面と金型21の内部にスチームを入気して未加硫ベルトスリーブ11を内外面より加熱加圧し、加硫をおこなう(工程(3))。
このように加硫されたモールド組立体を加硫缶から取り出して冷却させた後、金型21から、母型14を被着させた加硫ベルトスリーブ11’を脱型し、母型14を被着させた加硫ベルトスリーブ11’を得る(工程(4))。次いで、加硫ベルトスリーブ11’から母型14を剥離し、表面が伸張ゴム層で構成された加硫ベルトスリーブを得る(工程(5))。この加硫ベルトスリーブの圧縮ゴム層に、円周方向に延びる複数のV溝を研削・研磨することによりリブ部を形成し、次いで、加硫ベルトスリーブを円周方向に所定幅に切断し、反転させることにより、周長が一定で、円周方向に延びるリブが形成されたVリブドベルトを複数本得ることができる。
上述の図1〜3における実施形態では、伸張ゴム層15と圧縮ゴム層16との間に接着ゴム層12が存在してなるが、本発明においては接着ゴム層12を必須とするものではない。一方で、未加硫伸張ゴムシート、未加硫接着ゴムシートを順次捲き付けた後に、心線をスピニングすることも可能である。また未加硫伸張ゴムシート、未加硫接着ゴムシートを順次捲き付けた後に、心線をスピニングし、更に未加硫接着ゴムシート、未加硫圧縮ゴムシートを順次捲き付けることも可能である。また更には、伸張ゴム層と接着ゴム層を積層したゴムシートを巻き付けたり、接着ゴム層と圧縮ゴム層を積層したゴムシートを巻き付けたりすることなどもできる。
尚、心線をとりまくゴム層がすべて短繊維を含む配合となると、心線とベルト本体との接着性に難があるため、心線と接するゴム層のうちいずれかは短繊維を含有しないゴム組成物で構成することが望ましい。ここで、心線の落ち込みを抑制するためには、伸張ゴム層には短繊維を含有させることが望ましい。このときベルトの可撓性を考慮すると、短繊維がベルト幅方向に配向するよう構成することが好ましい。また伸張ゴム層は、短繊維をランダム配向状態で含有するものであってもよい。これにより、一定の方向に対する方向性を示すことなく多方向から作用する力に対して耐性があるため、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制でき、これによりベルト寿命が向上するという効果を奏することができる。このとき短繊維は屈曲を有する短繊維であることが好ましい。
また、本発明におけるVリブドベルトの製造方法に用いる装置としては、上述のものに限定されるものではない。また本発明の製造方法は、圧縮ゴム層表面に植毛を施す工程などを含むものでもよい。
上記製造方法により得られるVリブドベルトの一実施形態を図4に示す。Vリブドベルト1は、背面8が短繊維をランダム配向させた伸張ゴム層5で形成されており、該伸張ゴム層5に隣接してベルト長手方向に心線3が配置され、しかも心線3の一部が伸張ゴム層5に埋設された状態となっている。そして伸張ゴム層5の下層には接着ゴム層2、そして短繊維を含有する圧縮ゴム層6(短繊維はベルト幅方向に配向)を配置した構成を有している。また前記圧縮ゴム層6にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部7が設けられている。
第5図にVリブドベルトの別の一実施形態を示す。Vリブドベルト1は、背面8が短繊維をランダム配向させた伸張ゴム層5で形成されており、該伸張ゴム層5に隣接してベルト長手方向に心線3が配置され、しかも心線3の一部が伸張ゴム層5に埋設された状態となっている。そして伸張ゴム層5の下層には接着ゴム層2、そして短繊維を含有する圧縮ゴム層6(短繊維はリブ形状に沿って配向)を配置した構成を有している。また前記圧縮ゴム層6にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部7が設けられている。
第6図にVリブドベルトの更に別の一実施形態を示す。Vリブドベルト1は、背面8が短繊維を幅方向に配向させた伸張ゴム層5で形成されており、該伸張ゴム層5に隣接してベルト長手方向に心線3が配置され、しかも心線3の一部が伸張ゴム層5に埋設された状態となっている。そして伸張ゴム層5の下層には短繊維を含有しない圧縮ゴム層6を配置した構成を有している。また前記圧縮ゴム層6にはベルト長手方向に伸びる断面略三角形の複数のリブ部7が設けられており、その表面は植毛層9を有する構成となっている。
上記圧縮ゴム層6に使用されるゴムとしては、エチレン・α−オレフィンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を添加したもの、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロプレン、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、CSM、ACSM、SBRなどが挙げられる。なかでも、優れた耐熱性を有しているとともに比較的に安価なポリマーであり、脱ハロゲンという要求を満たしているエチレン・α−オレフィンゴムが好ましく用いられる。
エチレン・α−オレフィンエラストマーとしては、エチレンとα−オレフィン(プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなど)の共重合体、あるいは、エチレンと上記α−オレフィンと非共役ジエンの共重合体などであり、具体的にはEPMやEPDMなどのゴムをいう。上記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンが挙げられる。
上記エチレン・α−オレフィンゴムの加硫剤としてパーオキサイドを添加することができる。また、共架橋剤(co−agent)としTAIC、TAC、1,2ポリブタジエン、不飽和カルボン酸の金属塩、オキシム類、グアニジン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、硫黄など通常パーオキサイド架橋に用いるものである。
この中でもN,N’−m−フェニレンジマレイミドが好ましく、これを添加することによって架橋度を上げて粘着摩耗等を防止することができる。N,N’−m−フェニレンジマレイミドの添加量はエチレン・α−オレフィンゴム100重量部に対して0.2〜10重量部であり、0.2重量部未満の場合には、架橋密度が小さくなり耐摩耗性、耐粘着摩耗性の改善効果が小さく、一方10重量部を越えると加硫ゴムの伸びの低下が著しく、耐屈曲性に問題が生じる。
更に、上記圧縮ゴム層6には、硫黄をエチレン・α−オレフィンゴム100重量部に対して0.01〜1重量部添加することにより、加硫ゴムの伸びの低下を制御することができる。1重量部を越えると、架橋度が期待できる程に向上しないため、加硫ゴムの未耐摩耗性、耐粘着摩耗性も向上しなくなる。
また、圧縮ゴム層6には、ナイロン6、ナイロン66、ポリエステル、綿、アラミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールなどからなる短繊維を混入して圧縮ゴム層6の耐側圧性を向上させるとともに、プーリと接する面になる圧縮ゴム層6の表面をグラインダーによって研磨加工して該短繊維を突出させることができる。アラミド繊維は分子構造中に芳香環をもつアラミド、例えば商品名コーネックス、ノーネックス、ケブラー、テクノーラ、トワロン等を挙げることができる。これにより圧縮ゴム層16の表面の摩擦係数が低下して、ベルト走行時の騒音を軽減する効果がある。繊維の繊維長さは1〜20mmが好ましく、その添加量はエチレン・α−オレフィンゴム100重量部に対して1〜30重量部が望ましく用いられる。
更に、圧縮ゴム層6には、必要に応じてカーボンブラック、シリカなどの補強剤、クレー、炭酸カルシウムなどの充填剤、軟化剤、加工助剤、老化防止剤、共架橋剤などの各種薬剤を添加してもよい。
また図6のようにVリブドベルト1の圧縮ゴム層表面に短繊維を植毛し、ベルト走行時の騒音を軽減させることも可能である。
心線3は、接着処理を施した撚糸コードを用いることができる。撚糸コードを構成する繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ナイロン66などのポリアミド繊維、ガラス繊維、またはアラミド繊維等を挙げることができる。寸法安定性、吸湿性などを考慮すると好ましくはPET繊維である。
伸張ゴム層5はエチレン・α−オレフィンゴム組成物が用いられる。本実施例において、伸張ゴム層5は、短繊維を含有するゴム組成物で形成されているが、短繊維としては、ポリエステル、アラミド、ポリアミド、綿、PBOなどの短繊維を所望に応じて配合することができる。図4,5において短繊維はランダム方向に配向しているが、図6のようにベルト幅方向に配向させるなど一方向に配向していてもかまわない。尚、ランダム方向に配向させた場合、多方向からの裂きや亀裂の発生を抑制できるといった特徴があるが、このとき短繊維として屈曲部を有する短繊維(例えばミルドファイバー)を選択すると、より多方向から作用する力に対して耐性ができるといった特徴がある。ミルドファイバーは、例えばポリアミド製のものを用いることができ、繊維長が0.1〜3.0mmの範囲であることが望ましい。また、伸張ゴム層5における短繊維の配合量は、ゴム100重量部に対して短繊維が35〜100の範囲の割合となるように、短繊維が含有されていることが望ましい。なお、屈曲部を有する短繊維とともに、屈曲部を有さない短繊維も含有するものであってもよい。また本実施例においては、少なくとも背面を構成する伸張ゴム層5がエチレン・α−オレフィンゴム組成物にて構成されるが、いうまでもなくVリブドベルト本体を構成するゴム全てをエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成することが可能である。
また接着ゴム層2を配置する場合、圧縮ゴム層6と同様のマトリクスゴム、配合剤などが使用可能である。しかし、心線である繊維コードと良好に接着するためには、パーオキサイドを含まない硫黄加硫によるエチレン・α−オレフィンゴム組成物や、クロロスルフォン化ポリエチレン組成物もしくは水素化ニトリルゴム組成物などを使用することが好ましい。また短繊維は配合しないことが望ましい。
上記実施形態では、接着ゴム層2を配置し、圧縮ゴム層6として短繊維を含有するゴム組成物で構成したVリブドベルト(図4,5)と、接着ゴム層2を配置せず、圧縮ゴム層6として短繊維を含有しないゴム組成物で構成し、表面に短繊維9を植毛したVリブドベルト(図6)を例示したが、例えば接着ゴム層2を配置し、圧縮ゴム層6として短繊維を含有しないゴム組成物で構成したVリブドベルトや、圧縮ゴム層6として短繊維を含有するゴム組成物で構成し、且つ表面に植毛層9を設けたVリブドベルトなども本発明の技術的範囲に属する。またVリブドベルト以外の伝動ベルト、Vベルト、平ベルト、歯付ベルトなどにも本発明を適用することができる。
本発明にかかる製造方法により得られた伝動ベルトは、自動車用あるいは一般産業用の駆動装置などに装着できる。
本発明に係るVリブドベルトの製造方法において内型に母型を装着した状態を示す断面図である。 本発明に係るVリブドベルトの製造方法において母型を装着した内型に未加硫ベルトスリーブを形成した状態を示す断面図である。 本発明に係るVリブドベルトの製造方法においてベルト加硫機にて加硫ベルトスリーブを形成した状態を示す断面図である。 本発明に係る製造方法により得られたVリブドベルトの断面図である。 本発明に係る製造方法により得られた別のVリブドベルトの断面図である。 本発明に係る製造方法により得られた更に別のVリブドベルトの断面図である。
符号の説明
1 Vリブドベルト
2 接着ゴム層
3 心線
5 伸張ゴム層
6 圧縮ゴム層
7 リブ部
8 背面
9 植毛層
11 未加硫ベルトスリーブ
11’ 加硫ベルトスリーブ
12 接着ゴム層
13 心線
14 母型
14a 帆布
14b ゴム
15 伸張ゴム層
16 圧縮ゴム層
21 金型

Claims (4)

  1. 少なくとも背面がエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成される伝動ベルトの製造方法において、
    円筒状の金型の外周に、少なくとも外層が不飽和ニトリルゴム加硫物で構成された円筒状の母型を被挿する(1)工程と、前記母型の外周に、エチレン・α−オレフィンゴム層、芯材、ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する(2)工程と、該未加硫ベルトスリーブを加硫し、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを形成する(3)工程と、前記金型から、母型を被着させた加硫ベルトスリーブを脱型する(4)工程と、前記母型を剥離し、表面がエチレン・α−オレフィンゴム組成物で構成された加硫ベルトスリーブを形成する(5)工程とを有することを特徴とした伝動ベルトの製造方法。
  2. 前記伝動ベルトが、背面が伸張ゴム層で構成されるVリブドベルトであり、(2)工程が、前記母型の外周に、伸張ゴム層、芯材、圧縮ゴム層を順次配置した未加硫ベルトスリーブを作製する工程である請求項1記載の伝動ベルトの製造方法。
  3. 母型が、ゴム及び帆布の積層体からなる請求項1又は2に記載の伝動ベルトの製造方法。
  4. ゴム及び帆布の積層体がゴムコーチング帆布であり、(1)工程において、ゴムコーチング面が外層になるよう配置されている請求項3に記載の伝動ベルトの製造方法。
JP2006178911A 2006-06-29 2006-06-29 伝動ベルトの製造方法 Pending JP2008006665A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011214663A (ja) * 2010-03-31 2011-10-27 Mitsuboshi Belting Ltd 動力伝動用ベルト
US8979690B2 (en) 2010-05-26 2015-03-17 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Toothed belt and method of manufacturing the same

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