JP2008001701A - イソシアネートの合成のためのワンポット触媒法 - Google Patents

イソシアネートの合成のためのワンポット触媒法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、イソシアネートおよびポリイソシアネートの直接合成のための経済的で効果的な代替法を提供することである。
【解決手段】以下の段階を含む、イソシアネート、ポリイソシアネート、またはそれらの混合物の合成のためのワンポット法である:
i アミン、アルコール、酸素含有気体、一酸化炭素、大環状錯体触媒およびコバルトシッフ塩基触媒からなる群より選択される金属錯体触媒、ならびに、脂肪族または芳香族のハロカーボン、過ハロゲン化アルコール、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化ケトン、過フッ素化炭化水素、式中nが2〜10である式-(CF2-CFCl)nを有するクロロトリフルオロエチレンのポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒を含む混合物を調製する段階;
ii 得られた混合物を、圧力下で第一の加熱に供する段階;
iii 前段階で得られた混合物を冷却および減圧する段階;ならびに
iv 前段階の混合物を第二の加熱に供し、イソシアネート産物を該混合物から取り出す段階。
【選択図】なし

Description

発明の分野
本発明は、アミンのイソシアネートへの直接変換に関する。
発明の背景
イソシアネートは重要な化学物質である。例えば、イソシアネートの世界的生産量は、2001年に5メガトンを超えた。伝統的に、イソシアネートは、アミンまたはアミン塩を用いるホスゲンの反応によって工業規模で製造されている。しかしこの反応は、いくつかの重大な欠点を有する。ホスゲンは非常に毒性の強い試薬であり、化学量論量のHClが副産物として産生される。さらに、HClは重大な腐食を生じ、HClを中和するためには化学量論量のNaOHが必要となるが、ここで同量のNaClが形成される。化学工業において、ホスゲンなどの非常に毒性の強い物質の使用の際の制限が厳密に実施されるようになってきたため、イソシアネートの合成におけるホスゲンの代替法の開発に対する関心が増大している。
代替法として、ジメチルカルボネートまたはジメチルスルフェートをホスゲンの代用として使用することは、商業用途には比較的高コストである(非特許文献1、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照されたい)。
カルボニル供給源としてCOを用いることによる還元的カルボニル化および酸化的カルボニル化を含む、非ホスゲン経路のためのその他多くの戦略が報告されている。ここ数年の研究対象であった一つの有望な代替的アプローチには、通常はメタノールで行う、アルコール存在下でのアミンのカルバメートへの酸化的カルボニル化、およびそれに引き続くカルバメートのイソシアネートへの接触分解が含まれる。
AlperおよびHartstock(非特許文献2)は、アミンからカルバメートを産生するための、塩化パラジウム、塩化銅、および塩酸を含む触媒系を開示している。PdCl2-CuCl2-HClからなるこのワッカー(Wacker)型の触媒系は、高収率のカルバメートを産生するためのアミンの酸化的カルボニル化において、穏和な条件(1気圧および室温)で効果的であるとして開示されている。この系において、一酸化炭素(CO)および酸素(O2)は、PdCl2および最終的にはアミンが添加されるアルコールを通過して、泡になって出る(bubble)。混合物を、室温、圧力下で一晩撹拌し、濾過する。濾液を回転式蒸発(rotary evaporation)に供する。得られる油を、ジエチルエーテルまたはアセトンのいずれかで処理し、濾過して、濾液の濃縮によってカルバメートエステルを得る。さらなる精製は、薄層クロマトグラフィーまたはカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)によって行う。
GupteおよびChaudhari(非特許文献3)は、Pd/C-NaI触媒系を用いて、アミンの酸化的カルボニル化を研究した。カルバメートの産生に効果的ではあるが、この触媒系は可燃性の許容範囲内であるモル比5/1のCO/O2を使用する。
特許文献4では、気-固(gas-solid)カルボニル化プロセスにおける不均質酸化的カルボニル化を通してカルバメートエステルを産生するための、ハロゲン化物促進剤を有する第VIII族金属触媒および/または銅ベースの触媒を使用する。産生されたカルバメートは触媒表面に残存し、高コストの抽出および蒸留工程を通じて回収しなければならない。
非特許文献4および特許文献5は、以下の段階を含む、均質触媒を用いてカルバメートを産生するための方法を記載している:少なくとも1つの金属大環状錯体を含む触媒組成物の存在下で、好ましくはさらに1つのヨウ素成分の存在下で、一級アミン成分、二級アミン成分、尿素成分、およびそれらの混合物から選択される第一の反応物と、一酸化炭素と、少なくとも1つの酸素含有酸化剤とを接触させる段階。大環状錯体は、周期表の第IIIa族〜第Va族および第VIII族の金属から選択される金属を含む金属ポルフィリンまたは金属フタロシアニンからなる群より選択され、少なくとも1つのヨウ素成分は、カルバメートの形成を促進するのに効果的な量で存在する。
非特許文献5では、メタノール中での芳香族一級アミンのN,N-ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)触媒性酸化的カルボニル化を介した、少量のカルバメートおよびアゾ誘導体を用いる、良好な収率の尿素の形成が教示されている。
非特許文献6は、尿素、イソシアネート、カルバメート、およびアゾ誘導体の混合物を得るための、メタノール中での置換された芳香族一級アミンのN,N-ビス(サリチリデン)エチレンジアミノコバルト(II)触媒性酸化的カルボニル化を記載している。該混合物は、市販のイソシアネートの合成には適していない。さらに、長い反応時間(48時間)が必要であることが、産業的適用を妨げている。
特許文献6は、イソシアネートを得るための、アミンとジメチルカルボナートとの反応およびその後の加熱による、イソシアネートのワンポット合成を記載している。反応条件のせいで、さらに精製しなければならない不純型イソシアネートを得るために、イソシアネート産物の分離は、水の添加、更なる加熱、濾過、および多くの蒸留を含む複雑な分離プロセスを伴う。
したがって、イソシアネートおよびポリイソシアネートの産生に言及した文献は大量に存在する。最も一般的に用いられている手順には、第一段階においてアミンを対応するカルバメートに変換し、その後、所望のイソシアネートまたはポリイソシアネートを得るために該カルバメートを熱分解することが含まれる。大量の先行刊行物が、これら二段階の1つに言及している。
たとえば、上述のとおり、特許文献5はカルバメートを調製するための方法を開示している。しかし、対応するイソシアネートの合成については示唆しかされておらず、かつ、単離後の、対応するカルバメートからの合成のみである。さらに、特許文献5によると、所望のイソシアネートへの変換前にカルバメート中間体を単離することが必要である。
対応するイソシアネートへのアミンの直接変換の可能性について言及または示唆している文献は、ほんのわずかである。しかし、特許文献6のように、これらは通常、複雑な分離段階を必要とする。
JP 20044262835 国際公開公報第98/56758号 国際公開公報第99/47493号 US 2002/0183541 US 5,194,660 US 03/0162995 M. Selva et. al., Tetrahedron Letters. 2002, 43(7), 1217-1219 J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1141, 1985 Journal of Catalysis, 114, 246-258, 1988 T. W. Leung, J. Chem. Soc. Chem. Comm., 3, 1992, 205-6 A. Bassoli et al., J. Mol. Catal. 1990, 60, 41 E. Bolzacchini et al., J. Mol. Catal. A: Chemical, 111, 1996, 281-287
上記のすべての観点から、イソシアネートおよびポリイソシアネートの直接合成のための経済的で効果的な代替法を提供する必要性が存在する。
発明の概要
本明細書において、驚くべきことに、イソシアネート産物の合成のための効果的で安全かつ経済的なワンポット法が見出された。
本明細書において開示されるワンポット触媒法は、イソシアネート産物を産生できる産業的に実行可能な酸化的カルボニル化法に関する、当技術分野における必要性を満たし、かつ同時に、カルバメート中間体の単離を必要としない。
さらに、本発明による方法は、複雑な分離段階を伴わない。イソシアネート産物は、反応混合物の蒸留によって分離され、かつ通常、イソシアネート産物は本質的に純粋な形態で得られる。
さらに、本発明は、反応物気体を反応溶媒(例えばハロカーボンおよび/または酸化フッ素化炭化水素)中に溶解させることによる有機化合物の存在下での一酸化炭素と酸素の直接反応に伴う危険性を、大幅に克服するものである。
したがって、本発明の局面は、以下の段階を含む、イソシアネート、ポリイソシアネート、またはそれらの混合物の合成のためのワンポット法である:
i アミン、アルコール、酸素含有気体、一酸化炭素、大環状錯体触媒およびコバルトシッフ塩基触媒からなる群より選択される金属錯体触媒、ならびに、脂肪族または芳香族のハロカーボン、過ハロゲン化アルコール、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化ケトン、過フッ素化炭化水素、式中nが2〜10である式-(CF2-CFCl)nを有するクロロトリフルオロエチレンのポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒を含む混合物を調製する段階;
ii 得られた混合物を、圧力下で第一の加熱に供する段階;
iii 前段階で得られた混合物を冷却および減圧する段階;ならびに
iv 前段階の混合物を第二の加熱に供し、イソシアネート産物を該混合物から取り出す段階。
より具体的には、本発明は以下を提供する。
本発明(1)は、以下の段階を含む、イソシアネート、ポリイソシアネート、またはそれらの混合物の合成のためのワンポット法である:
i アミン、アルコール、酸素含有気体、一酸化炭素、大環状錯体触媒およびコバルトシッフ塩基触媒からなる群より選択される金属錯体触媒、ならびに、脂肪族または芳香族のハロカーボン、過ハロゲン化アルコール、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化ケトン、過フッ素化炭化水素、式中nが2〜10である式-(CF2-CFCl)nを有するクロロトリフルオロエチレンのポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒を含む混合物を調製する段階;
ii 得られた混合物を、圧力下で第一の加熱に供する段階;
iii 前段階で得られた混合物を冷却および減圧する段階;ならびに
iv 前段階の混合物を第二の加熱に供し、イソシアネート産物を該混合物から取り出す段階。
本発明(2)は、溶媒が、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフルオロ-n-ヘプタン、パーフルオロ-n-ノナン、パーフルオロデカリン、ノナフルオロtertブタノール、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、本発明(1)の方法である。
本発明(3)は、溶媒が2,2,2-トリフルオロエタノールであることを特徴とする、本発明(2)の方法である。
本発明(4)は、アルコールが、(共)溶媒および反応物の両方として作用するように、化学量論量を上回る量で存在することを特徴とする、本発明(1)〜(3)のいずれか一発明の方法である。
本発明(5)は、第一の加熱における温度が100〜200℃の間に含まれ、および圧力が5〜100 barの間に含まれることを特徴とする、本発明(1)〜(4)のいずれか一発明の方法である。
本発明(6)は、第一の加熱における温度が120〜180℃の間に含まれ、および圧力が20〜70 barの間に含まれることを特徴とする、本発明(5)の方法である。
本発明(7)は、第二の加熱における温度が50〜240℃の間に含まれることを特徴とする、本発明(1)〜(6)のいずれか一発明の方法である。
本発明(8)は、共溶媒が第二の加熱の前に添加されることを特徴とする、本発明(1)〜(7)のいずれか一発明の方法である。
本発明(9)は、段階iv が、溶媒を除去するための少なくとも1回の蒸留、および、イソシアネート産物を分離するための少なくとも1回の蒸留を含むことを特徴とする、本発明(1)〜(8)のいずれか一発明の方法である。
本発明(10)は、蒸留が、圧力下の蒸留、吸引下の蒸留、または大気圧での蒸留から独立して選択されることを特徴とする、本発明(9)の方法である。
本発明(11)は、第一の蒸留が、50〜180℃の間に含まれる温度および0.1〜10 barの間に含まれる圧力下で行われ、第二の蒸留が、140〜240℃の間に含まれる温度および1〜900 mbarの間に含まれる圧力下で行われることを特徴とする、本発明(9)または(10)のいずれか一発明の方法である。
本発明(12)は、蒸留された溶媒がさらなる反応に再利用されることを特徴とする、本発明(9)〜(11)のいずれか一発明の方法である。
本発明(13)は、連続工程であることを特徴とする、本発明(1)〜(12)のいずれか一発明の方法である。
本発明(14)は、空間速度が20〜40.000 h-1の間に含まれることを特徴とする、本発明(13)の方法である。
本発明(15)は、蒸留された溶媒が反応に再利用されることを特徴とする、本発明(13)または(14)のいずれか一発明の方法である。
本発明(16)は、金属錯体触媒の金属が、第VIII族の金属から選択されることを特徴とする、本発明(1)〜(15)のいずれか一発明の方法である。
本発明(17)は、金属錯体触媒が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、本発明(1)〜(16)のいずれか一発明の方法である:
式Iのコバルトポルフィリン
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;または
R1およびR2は共に、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルケニル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルを形成し;
R3は、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
式IIのコバルトフタロシアニン
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2は式I中と同じ意味を有する;ならびに
式IIIのコバルトシッフ塩基触媒
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2は式I中と同様の意味を有し;
R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていない直鎖状アルキル、置換されたもしくは置換されていない分枝アルキル、置換されたもしくは置換されていないアルコキシ、式中、R10は置換されたもしくは置換されていないアルキルである-O-Si-R10、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;
R9およびR8はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
またはそれらの混合物である。
本発明(18)は、R4、R5、R6、およびR7がそれぞれ独立して、置換されたまたは置換されていない分枝アルキル基より選択されることを特徴とする、本発明(17)の方法である。
本発明(19)は、R5およびR7がそれぞれ独立して、C1〜C4-アルコキシ基より選択されることを特徴とする、本発明(17)の方法である。
本発明(20)は、触媒が、シリカ、無機耐熱金属酸化物、ゼオライト、炭素、およびポリマー、またはそれらの混合物からなる群より選択される固体支持体を含むことを特徴とする、本発明(1)〜(19)のいずれか一発明の方法である。
本発明(21)は、アミンが、置換されたまたは置換されていないアリールアミン、置換されたまたは置換されていないアリールジアミン、ポリアミノポリフェニルメタン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、本発明(1)〜(20)のいずれか一発明の方法である。
本発明(22)は、アミンが、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、本発明(21)の方法である。ならびに
本発明(23)は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、オニウムハロゲン化物、接触条件でオニウムハロゲン化物を形成できる化合物、ハロゲン原子のオキソ酸およびそれらの塩、有機ハロゲン化物、ハロゲン分子、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるハロゲン化物促進剤が、圧力下の第一の加熱の前に添加されることを特徴とする、本発明(1)〜(22)のいずれか一発明の方法である。
本発明により、イソシアネートおよびポリイソシアネートの直接合成のための経済的で効果的な代替法が提供される。
発明の詳細な説明
200℃および大気圧における酸素中の一酸化炭素の爆発濃度は14.2〜95.3%であることが公知であり、したがって、非常に範囲が広い。また、気体混合物を窒素のような不活性ガスで希釈しても下方の限界濃度を変化させることがほとんどないことも、公知である。さらに、1〜200気圧の間での圧力の変動および0〜200℃の間での気温の変動は、爆発範囲に対してささやかな効果しか有さない。さらに、これらの反応物を、均質条件下で、可燃性の許容範囲の外側となる割合で混合した場合であっても、純粋な成分からの均質性の確立には、可燃性の許容範囲を少なくとも一時的に超えることが伴う。これらの理由のため、一酸化炭素と酸素の直接接触に伴う爆発の危険性は、容易に軽減されるものではない。さらに、不幸なことに、一酸化炭素および酸素は、先行技術において溶媒および反応物として用いられるアルコールにごくわずかしか溶解できず、このことによって反応混合物中でのこれら2成分の濃度が制限され、したがって、反応速度が低くなる。
本発明において、溶媒は、脂肪族または芳香族のハロカーボン、過ハロゲン化アルコール、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化ケトン、過フッ素化炭化水素、式中nが2〜10である式-(CF2-CFCl)nを有するクロロトリフルオロエチレンのポリマー、およびそれらの混合物の群より選択される。これらの溶媒は、高い酸素溶解度を有し、かつ、所与の酸素分圧における反応混合物中での酸素の高濃度を可能にする。したがって、本発明の溶媒を用いることにより、良好な反応速度が得られるように、酸素の分圧を減少させることおよび反応混合物中で許容可能な酸素濃度をさらに維持することが可能になり、また同時に、可燃性の許容範囲の十分外側でおよび先行技術で用いられるよりも低い温度と低い圧力の条件下で作用させることによって、方法の安全性が改善される。
好ましくは、ハロカーボンは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、およびトリクロロベンゼンなどのアリールハロカーボン、フルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ならびにヒドロクロロフルオロカーボンである。好ましい反応溶媒は、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフルオロ-n-ヘプタン、パーフルオロ-n-ノナン、パーフルオロデカリン、またはノナフルオロtertブタノールなどの完全フッ素置換C5〜C10炭化水素である。これらの液体は、3M(商標) Performance Fluids(Minneapolis, Minn)などの様々な商品名で入手可能である。米国のHalocarbon Product Corporation製の0.8級など、クロロトリフルオロエチレンのポリマーも市販されている。混合物の形成(work up)を促進するため、またはその冷却を促進するために、これらのハロカーボンを反応混合物に添加することができ、または反応器の流出口に添加することができる。
ハロカーボンおよび特にフッ素化炭化水素は、酸素を含む強い酸化剤に対してとりわけ不活性であり、気体を容易に溶解する。例えば、パーフルオロアルカンにおける酸素の溶解度が非常に高いことが公知である(Clark L. C. et al. Pure Appl. Chem., 1982, 54, 2383-2406およびMarrucho, I. M., Fluid Phase Equilibria, 222-223, 2004, 325-330)。これは、本方法が、反応の液体媒体中の反応性気体の同じ濃度を達成するのに、カルバメートを産生する先行技術の方法よりも低い圧力を使用でき、かつ、液体反応系上で反応物の任意の爆発混合物を含む気体環境を容易に回避するからである。
好ましい態様によると、溶媒は、酸化された同族の少なくとも1つのアルキル水素がフッ素で置換された、酸化フッ素化炭化水素(例えば、フッ素化アルコールならびに、フッ素化エーテルおよび/またはケトンとのその混合物)である。好ましい酸化フッ素化炭化水素は、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール、フルオロフェノール、およびそれらの混合物であり、好ましくは2,2,2-トリフルオロエタノールである。好ましいフッ素化エーテルはノナフルオロブチルメチルエーテルである。好ましいフッ素化ケトンは、ヘキサフルオロアセトンである。
最も好ましい態様によると、溶媒中の酸素のモル分率で測定される酸素溶解度に基づいて、好ましい溶媒を定義することができる。したがって、好ましい溶媒は、酸素溶解度が10-5〜10-1の範囲内(この場合でも以下の場合でも、範囲の境界値は含まれる)のものであり、より好ましい溶媒は、5・10-5〜5・10-1の範囲内のものであり、さらにより好ましい溶媒は、10-4〜5・10-2の範囲内のものであり、最終的に最も好ましい溶媒は、4・10-4〜7・10-3の範囲内のものであり、例えば、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフルオロ-n-ヘプタン、パーフルオロ-n-ノナン、パーフルオロデカリン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール、または2,2,2-トリフルオロエタノールなどである。
本発明の方法においてアルコールが試薬として作用するので、酸化的カルボニル化を行うために、アルコールの存在が必要である。好ましい態様によると、該アルコールは過ハロゲン化アルコールである。上述のように、過ハロゲン化アルコールは優れた酸素溶媒である。したがって、過ハロゲン化アルコールが、化学量論量を上回る量で段階iの混合物中に存在することができ、かつ同時に、反応物および(共)溶媒の両方として作用することができる。
原料および酸化剤を、任意の順番で反応溶媒中に溶解させてもよく、または反応溶媒への別々の流れで同時に供給してもよい。例えば、反応溶媒中に酸素を溶解させて飽和させ、続いて、得られた酸素飽和反応溶媒を、管状ミキサー中の芳香族アミン、触媒、および一酸化炭素と接触させることができる。上述の反応溶媒を用いると、一酸化炭素溶解度は通常、反応溶媒中の酸素の存在に、ごくわずかな程度しか影響されない。
さらなる態様において、反応溶媒中に酸素を、および芳香族アミンまたはポリアミン中に一酸化炭素を独立して溶解させることにより、反応物の気相接触の危険性もまた排除されうる。この場合、全試薬を混合する前に、例えば別々の撹拌タンク中で、溶解段階を行ってもよい。したがって、同一の反応容器中でまたは同時に全試薬を溶解させる必要はない。前に溶解させた反応物を含む反応溶媒を、触媒の固定層を通過させるか、またはスラリー反応器中で反応させることは、確かに可能である。後者の場合、機械的なかき混ぜ(例えば撹拌、振とう、振動など)を用いて、触媒と反応物との間の接触を引き起こすことができる。“Perry's Chemical Engineers' Handbook, Sixth edition”, 1984 p4-25, 4-26, 20-3および20-58〜20-75に記載のように、一酸化炭素気体の流れを用いて、触媒の液体流動層を使用することも可能である。
ある態様によると、第一の加熱の間の温度は、100〜200℃、好ましくは120〜180℃の間に含まれ、および圧力は、5〜100 bar、好ましくは20〜70 barの間に含まれる。これらの条件により、効果的な酸化的カルボニル化が確実となる。使用する反応系によって変化しうる反応時間、触媒、およびその他反応条件が選択される。典型的な反応時間は、約1分間〜約3時間の範囲内である。
さらなる態様によると、蒸留によって溶媒を分離してイソシアネート産物を回収するために、反応混合物を冷却した後、第二の加熱の間の温度は、50〜240℃の間に含まれる。段階iiiとivの間に、触媒を反応混合物から分離することを含む追加の段階を任意で実行してもよい。
さらなる態様によると、1回、2回、またはそれ以上、好ましくは2回の、連続的蒸留プロセスを通じて、溶媒の分離(段階iv)を行うことができる。イソシアネート産物の相対的沸点および性質ならびに用いた溶媒に応じて、加熱およびその後の蒸留によってイソシアネート産物を直接得ることができる。イソシアネート産物を分離したら、さらなる処置を行うことなく、第一の蒸留により得られた混合物のその後の第二の蒸留によって、溶媒を回収してもよい。溶媒の沸点がイソシアネート産物の沸点よりも低い場合、溶媒を回収するために第一の蒸留を行い、その後イソシアネート産物を分離することができる。イソシアネート産物の相対的沸点および性質ならびに用いた溶媒に応じて、その他の組み合わせが当業者には明らかであろう。いかなる場合でも、回収された溶媒を、さらなる反応における使用のために再循環させてもよい。
さらなる態様によると、該第一の蒸留は、50〜180℃の間に含まれる温度で、および0.1〜10 barの間に含まれる圧力下で行われ、該第二の蒸留は、140〜240℃の間に含まれる温度で、および1〜900 mbarの間に含まれる圧力下で行われる。第一の装置由来の溶媒の凝縮熱を、第二の装置中の溶媒を部分的に気化するために使用できる。この分離により生じた、回収された反応溶媒は通常、最も経済的に、さらなる反応のために反応器の反応溶媒相に戻される。
さらなる態様によると、該第二の加熱(段階iv)の前に、例えば1,2-ジクロロベンゼンまたは1,2,4-トリクロロベンゼンの共溶媒を反応混合物に添加することができる。共溶媒の添加はさらに、カルバメート中間体の溶解、および、高純度のイソシアネート産物の将来の分離を促進する。このように、反応の発展が容易になる。
必要に応じて、得られた粗イソシアネートを、最高圧1〜950 mbar、好ましくは5〜250 mbarで、最低温度60〜250℃のカラム中で精製することができ、かつ純粋イソシアネートの流れは、液体または気体の形態で、好ましくはカラムの副流内で回収される。
本発明の方法に従って得られたイソシアネート産物は、さらなる精製を必要とせず、本質的に純粋であることが見出されている。したがって、本発明の方法によって、イソシアネートの良好な収率および純度を達成するために中間体産物を単離および/または精製する必要なく、イソシアネート産物を産業的に合成するための簡単な手段が提供される。
バッチ式、または、反応系に反応物を連続的に供給する一方で反応系から反応混合物を連続的に除去することによる連続プロセスのいずれかで、本発明による方法を行うことができる。本発明の1つの態様によると、本方法は、空間速度が20〜40.000 h-1の間に含まれ、および蒸留した溶媒が反応に再利用される、連続プロセスである。
本発明によりイソシアネートに変換される適切なアミンおよびポリアミンには、以下が含まれる:置換されたおよび置換されていないアリールアミン、例えば、アニリン、トルイジン、3,3'-ジメチル-4-4'-ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、トルエンジアミン、2-4'-および4,4'-メチレンジアニリン、スルホニルジアニリン、チオジアニリン、ジアミノジフェニルメタンおよび相同性の高いポリアミノポリフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、1,5-ナフチレンジアミンなど、ならびにそれらの混合物;ならびに、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタンもしくはポリアミノポリフェニルメタンのような置換されたおよび置換されていないアリールジアミンもしくは高官能性ポリアミン、またはそれらの任意の混合物。
好ましくは、本発明による触媒の金属は、第VIII族金属から選択される金属であり、より好ましい金属はコバルトである。本発明のある態様によると、金属錯体触媒は以下から選択される:
式Iのコバルトポルフィリン
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;または
R1およびR2は共に、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルケニル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルを形成し;
R3は、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
または式IIのコバルトフタロシアニン
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2は式I中と同様の意味を有する;
または式IIIのコバルトシッフ塩基触媒
Figure 2008001701
式中、
R1およびR2は式I中と同様の意味を有し;
R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていない直鎖状アルキル、置換されたもしくは置換されていない分枝アルキル、置換されたもしくは置換されていないアルコキシ、式中、R10は置換されたもしくは置換されていないアルキルである-O-Si-R10、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;
R9およびR8はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
またはそれらの混合物。
好ましい態様によると、R5およびR7はそれぞれC1〜C4-アルコキシ基である。
好ましい態様によると、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、置換されたまたは置換されていない分枝アルキル基から選択される。
好ましい態様によると、本発明の触媒は固体支持体を含む。触媒支持体は、活性触媒成分を分散させて活性触媒成分を固定化するための高い表面積を提供でき、かつ触媒の容易な回収を可能にする。一酸化炭素、酸素、およびアミンが触媒表面上で反応する場合、反応産物は有機相内に移動し、そこからイソシアネート産物を従来の蒸留によって回収することができる。有用な支持体は当技術分野で周知であり、非限定的例として以下を含みうる:活性炭および/または活性白土、すなわちモンモリロナイト;ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)、ポリスチレン、およびポリイミドなどのポリマー支持体;ゼオライト、MCM-41、ZSM-5、HZSM-5、アンモニウムZSM-5、およびSBA-15などのメソポーラスな材料;ならびにγ-Al2O3、SiO2やTiO2、およびMgO、シリカまたは無機耐熱金属酸化物などの金属酸化物。
上記の支持された触媒を、公知の方法によって調製することができる。例えば、サレンリガンドをモンモリロナイトの中間層内に固定し、続いて、Choudhariらにより記載された方法(J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1987, 1505)によって、酢酸コバルトと錯体形成し、例えば、US 2005/0131252に記載の方法により、I. C. Chisem et al., Chem .Commun. 1998, 1949; P. Sutra et al. Chem. Commun. 1996, p. 2485; X.-G Zhou et al. Chem. Commun. 1999, 1789またはR.J.P. Corriu et al., J. Mater. Chem., 2002, 12, 1355-1362 に従ってグラフト反応を用いて、Co-サレン誘導体をメソポーラスなシリカゲルおよびMCM-41上に固定化することによって、Co-白土を調製することができる。
さらに、本発明の方法は、促進剤の非存在下または存在下で行うことができる。ある態様によると、ハロゲン化物促進剤は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、オニウムハロゲン化物、接触条件でオニウムハロゲン化物を形成できる化合物、ハロゲン原子のオキソ酸およびそれらの塩、有機ハロゲン化物、ならびにハロゲン分子から選択することができる。ヨウ素を含むこれらの化合物が特に好ましい。これらは、KI、NaI、LiI、CsI、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラへプチルアンモニウム、亜ヨウ素酸(iodous acid)、ヨウ素などを含む。
上述の方法および化合物の定義ならびに明細書および添付の特許請求の範囲において、以下の用語は示された意味を有する。
「ワンポット」とは、必要な段階の数にかかわらず、最終産物の回収前にいずれの中間体を単離することも含まない方法を指す。
「圧力下」という用語は、大気圧を上回る圧力、すなわち1気圧を上回る圧力として理解される。
「本質的に純粋」とは、さらなる使用の前に精製を必要としない化合物を指す。典型的には、純度98% w/wを上回る産物は、本質的に純粋であると見なされる。しかし、一部の適用に関しては、純度95% w/wを上回るイソシアネート産物も、本質的に純粋であると見なされる。
「過ハロゲン化」とは、2つまたはそれ以上の部位において、好ましくは全部位において、水素がハロゲン基で置換された有機分子を指す。例えば、過ハロゲン化アルキル基は、例えば少なくとも2つの水素原子がハロゲン原子で置換されたものである。
「ハロゲン化」とは、少なくとも1部位において水素がハロゲン基で置換された有機分子を指す。したがって、過ハロゲン化分子は、ハロゲン化分子の群の中に含まれる。
「イソシアネート産物」とは、イソシアネートおよびポリイソシアネートを含む、本発明による方法の実行によって得られる産物を指す。
「アルキル」とは、飽和しておらず、1〜12個の、好ましくは1〜8個の炭素原子を有し、かつ単結合により残りの分子に付着している、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチルなど、炭素原子および水素原子からなる直鎖状または分枝状の炭化水素鎖ラジカルを指す。アルキルラジカルは、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、OPr、OBn、OBz、カルボキシ、シアノ、カルボニル、アシル、アルコキシカルボニル、アミノ、イミノ、ニトロ、メルカプト、およびアルキルチオなどの、1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。
「アルコキシ」とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなど、式中Raが上記で定義されたアルキルラジカルである式-ORaのラジカルを指す。
「アリールオキシ」とは、式中Rbが下記で定義されるアリールラジカルである式-ORbのラジカルを指す。
「アミノ」とは、式-NH2、-NHRa、-NRaRbのラジカルを指す。
「アリール」とは、フェニル、ナフチル、またはアントラシルなどの、芳香族炭化水素ラジカルを指す。アリールラジカルは、本明細書で定義された、ヒドロキシ、メルカプト、ハロ、アルキル、フェニル、アルコキシ、ハロアルキル、ニトロ、シアノ、ジアルキルアミノ、アミノアルキル、アシル、およびアルコキシカルボニルなどの1つまたは複数の置換基で置換されてもよい。
「アラルキル」とは、ベンジルおよびフェネチルなどの、アルキル基に連結したアリール基を指す。
「アルコール」とは、1〜12個の炭素原子を含みかつ少なくとも1つの水酸基で置換されたアルキルに言及するものである。
「シクロアルキル」とは、3〜8個の炭素原子を有する飽和環状炭素を指す。
「ヘテロシクリル」とは、炭素原子ならびに、窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1〜5個のヘテロ原子からなる、安定した3員環〜15員環を指し、好ましくは、1つまたは複数のヘテロ原子を含む4員環〜8員環を、より好ましくは、1つまたは複数のヘテロ原子を含む5員環または6員環を指す。本発明の目的に関して、複素環は、縮合環系を含みうる、単環系、二環系、または三環系であってよく;かつ、ヘテロシクリルラジカル中の窒素原子、炭素原子、または硫黄原子は任意で酸化されていてもよく;窒素原子は任意で四級化されていてもよく;かつ、ヘテロシクリルラジカルは部分的にまたは完全に飽和されるかまたは芳香族であってもよい。このような複素環の例には、アゼピン、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、フラン、イソチアゾール、イミダゾール、インドール、ピペリジン、ピペラジン、プリン、キノリン、チアジアゾール、テトラヒドロフランが非限定的に含まれる。
本発明において「芳香族ハロカーボン」とは、1つまたは複数のハロゲン原子で置換された芳香族残基を含む化合物に言及するものである。
「錯体」とは、ドナーおよびアクセプターの2成分で形成された分子を指す。アクセプターが収容可能な、非共有電子対またはπ軌道上の電子がドナーによって提供されうるので、両成分を結合させて錯体を形成することが可能である。錯体において、複数のドナーおよび/または複数のアクセプターが可能である。また、同じ「錯体」において、1つのドナーが複数のアクセプターに結合されてもよく、逆もまた同様である。上述のドナー-アクセプター相互作用に加えて、共有結合などの、当業者に公知のその他の種類の結合が、ドナーとアクセプターの間に存在してもよい。
本明細書における、本発明の化合物中の置換基への言及は、例えば以下の、1つまたは複数の利用可能部位において1つまたは複数の適切な基で置換されうる特定の部分を指す:フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードなどのハロゲン;シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;アシルなどのC1-12アルカノイル基などのアルカノイル;カルボキサミド;1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子、およびより好ましくは1〜3個の炭素原子を有する基を含む、アルキル基;1つまたは複数の不飽和結合、および2〜約12個の炭素原子または2〜約6個の炭素原子を有する基を含む、アルケニル基およびアルキニル基;1つまたは複数の酸素結合および1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する、アルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ;1つまたは複数のチオエーテル結合および1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含む、アルキルチオ基;1つまたは複数のスルフィニル結合および1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含む、アルキルスルフィニル基;1つまたは複数のスルホニル結合および1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する部分を含む、アルキルスルホニル基;1つまたは複数のN原子および1〜約12個の炭素原子または1〜約6個の炭素原子を有する基などの、アミノアルキル基;6個またはそれ以上の炭素、特にフェニルまたはナフチルおよびベンジルなどのアラルキルを有する、炭素環アリール。特記しない限り、置換されてもよい基は、該基の各置換可能部位に置換基を有しうり、および各置換はそれぞれ独立したものである。
特記しない限り、本発明の方法により入手可能な化合物はまた、1つまたは複数の同位体濃縮された(isotopically enriched)原子が存在するという点でのみ異なる化合物を含むものである。例えば、水素が重水素またはトリチウムで置換されている以外、または炭素が13C-濃縮炭素、もしくは14C-濃縮炭素、もしくは15N-濃縮窒素で置換されている以外は同じ構造を有する、本発明の方法により入手可能な化合物は、本発明の範囲に含まれる。
実施例を用いて本発明をさらに説明するが、これは、添付の特許請求の範囲を制限するとみなされるべきではない。
実施例1:シッフ塩基型リガンド触媒を形成するための一般的手順
アルデヒドを、エタノール95%中の対応するジアミン(モル比2:1)の存在下で還流する。濾過および、無水エタノールによるさらなる洗浄により、本質的に純粋なシッフ塩基型リガンドがもたらされた。
上記で得られたシッフ塩基型リガンドを、不活性大気下で、Co(OAc)2・4H2O水溶液と共にアルコール溶液中で還流する。結晶沈殿物が直ちに生じるが、還流は約1時間続ける。得られた沈殿物を真空下で濾過し、水、エタノール、およびエーテルで洗浄し、その後真空下で乾燥する。
実施例2:固体支持体への触媒の固定化
実施例1の手順に従って調製したN,N'-(ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-サリチリデン)エチレンジアミノ)コバルト(II) [Co-tBu-サレン] 1.9 gを、撹拌しながら2-プロパノール 125 mlに添加し、混合液を70℃まで加熱する。シリカ粉末(5 g、Grace Davison XPO 2407、比表面積 250 m2/g)を該溶液に添加し、温度および撹拌をさらに5時間維持する。懸濁物を濾過し、固体残渣を25ml無水ジクロロメタンで2回洗浄し、最後に5時間真空下で乾燥する。
実施例3:比較
アニリン(13.2 mmol)、実施例1に従って調製したコバルト錯体 [Co-tBu-サレン](0.25 mmol)、NaI(2.72 mmol)、および1-ブタノール(20 ml)の混合物を、100 mlオートクレーブに充填する。オートクレーブに、全圧52.7 barまで、容量比(volumetric ratio)19/1の一酸化炭素および酸素を流し込む(flush)。温度は110℃まで上昇させる。一定に激しく撹拌しながら、3時間反応を維持する。3時間後、反応器を室温まで冷却し、減圧して、97.8 gの1,2-ジクロロベンゼン(DCB)を反応器に充填する。その後、大気圧下で温度を180℃まで上昇させる。蒸気の凝縮によって1-ブタノールは全く回収されない。反応残渣の分析により、尿素誘導体の存在が確認されるが、フェニルイソシアネートの痕跡は全く見出せない。
実施例4:フェニルイソシアネートの合成
1000 ml高圧撹拌オートクレーブ内に、アニリン15.5 g、実施例2の[Co-tBu-サレン]/シリカ触媒7.6 g、NaI 1.78 g、および2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)488 gを充填する。容量比19/1の一酸化炭素および酸素でオートクレーブを加圧する。温度を120℃まで上昇させ、全圧を40 barで一定に維持する。一定に激しく撹拌しながら、3時間反応を維持する。3時間後、反応器を室温まで冷却し、減圧して、97.8 gの1,2-ジクロロベンゼン(DCB)を反応器に充填する。その後、大気圧下で温度を180℃まで上昇させる。TFEの蒸気を分離し、凝縮して、その後の実施例で再利用する。反応器の底部で、DCBとフェニルイソシアネートの混合物が得られる。蒸留によって、この混合物からフェニルイソシアネートを純度99% w/wで回収する。
カルバメート中間体の収率は94%であり、最終イソシアネートの収率は54.6%(全収率51.3%)であった。
実施例5:2,4-トルエンジイソシアネートの合成
1000 ml高圧撹拌オートクレーブ内に、2,4-トルエンジアミン(TDA)10 g、実施例2の[Co-tBu-サレン]/シリカ触媒7.6 g、NaI 1.7 g、および2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)484 gを充填する。容量比19/1の一酸化炭素および酸素でオートクレーブを加圧する。温度を最大120℃まで上昇させ、全圧を40 barで一定に維持する。一定に激しく撹拌しながら、3時間反応を維持する。3時間後、反応器を室温まで冷却し、減圧して、97.8 gの1,2-ジクロロベンゼン(DCB)を反応器に充填する。その後、大気圧下で温度を180℃まで上昇させる。TFEの蒸気を分離し、凝縮して、その後の実施例で再利用する。反応器の底部で、DCBと2,4-トルエンジイソシアネートの混合物が得られる。蒸留によって、この混合物から2,4-トルエンジイソシアネートを純度99% w/wで回収する。
カルバメート中間体の収率は84.1%であり、最終イソシアネートの収率は83%(全収率69.8%)であった。
実施例6:2,4-トルエンジイソシアネートの合成
350 ml高圧撹拌オートクレーブ内に、2,4-トルエンジアミン(TDA)2 g、実施例1に記載のように合成されたN,N'-(ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-サリチリデン)エチレンジアミノ)コバルト(II) [Co-tBu-サレン] 0.37 g、NaI 0.18 g、および2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)48.7 gを充填する。容量比19/1の一酸化炭素および酸素でオートクレーブを加圧する。温度を最大120℃まで上昇させ、全圧を40 barで一定に維持する。一定に激しく撹拌しながら、3時間反応を維持する。3時間後、反応器を室温まで冷却し、減圧して、97.8 gの1,2-ジクロロベンゼン(DCB)を反応器に充填する。その後、大気圧下で温度を180℃まで上昇させる。TFEの蒸気を分離し、凝縮して、その後の実施例で再利用する。反応器の底部で、DCBと2,4-トルエンジイソシアネートの混合物が得られる。蒸留によって、この混合物から2,4-トルエンジイソシアネートを純度99% w/wで回収する。
カルバメート中間体の収率は82%であり、最終イソシアネートの収率は78%(全収率64%)であった。
実施例7:2,4-トルエンジイソシアネートの合成
350 ml高圧撹拌オートクレーブ内に、2,4-トルエンジアミン(TDA)1 g、実施例1に記載のように合成された(±)-トランス-N,N'-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミノコバルト(II) 0.2 g、NaI 0.18 g、および2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)48.9 gを充填する。容量比19/1の一酸化炭素および酸素でオートクレーブを加圧する。温度を最大120℃まで上昇させ、全圧を40 barで一定に維持する。一定に激しく撹拌しながら、3時間反応を維持する。3時間後、反応器を室温まで冷却し、減圧して、97.8 gの1,2-ジクロロベンゼン(DCB)を反応器に充填する。その後、大気圧下で温度を180℃まで上昇させる。TFEの蒸気を分離し、凝縮して、その後の実施例で再利用する。反応器の底部で、DCBと2,4-トルエンジイソシアネートの混合物が得られる。蒸留によって、この混合物から2,4-トルエンジイソシアネートを純度99% w/wで回収する。
カルバメート中間体の収率は88.1%であり、最終イソシアネートの収率は62.4%(全収率55%)であった。

Claims (23)

  1. 以下の段階を含む、イソシアネート、ポリイソシアネート、またはそれらの混合物の合成のためのワンポット法:
    i アミン、アルコール、酸素含有気体、一酸化炭素、大環状錯体触媒およびコバルトシッフ塩基触媒からなる群より選択される金属錯体触媒、ならびに、脂肪族または芳香族のハロカーボン、過ハロゲン化アルコール、ハロゲン化エーテル、ハロゲン化ケトン、過フッ素化炭化水素、式中nが2〜10である式-(CF2-CFCl)nを有するクロロトリフルオロエチレンのポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される溶媒を含む混合物を調製する段階;
    ii 得られた混合物を、圧力下で第一の加熱に供する段階;
    iii 前段階で得られた混合物を冷却および減圧する段階;ならびに
    iv 前段階の混合物を第二の加熱に供し、イソシアネート産物を該混合物から取り出す段階。
  2. 溶媒が、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-オール、パーフルオロ-n-ヘキサン、パーフルオロ-n-ヘプタン、パーフルオロ-n-ノナン、パーフルオロデカリン、ノナフルオロtertブタノール、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 溶媒が2,2,2-トリフルオロエタノールであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
  4. アルコールが、(共)溶媒および反応物の両方として作用するように、化学量論量を上回る量で存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. 第一の加熱における温度が100〜200℃の間に含まれ、および圧力が5〜100 barの間に含まれることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  6. 第一の加熱における温度が120〜180℃の間に含まれ、および圧力が20〜70 barの間に含まれることを特徴とする、請求項5記載の方法。
  7. 第二の加熱における温度が50〜240℃の間に含まれることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  8. 共溶媒が第二の加熱の前に添加されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  9. 段階iv が、溶媒を除去するための少なくとも1回の蒸留、および、イソシアネート産物を分離するための少なくとも1回の蒸留を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  10. 蒸留が、圧力下の蒸留、吸引下の蒸留、または大気圧での蒸留から独立して選択されることを特徴とする、請求項9記載の方法。
  11. 第一の蒸留が、50〜180℃の間に含まれる温度および0.1〜10 barの間に含まれる圧力下で行われ、第二の蒸留が、140〜240℃の間に含まれる温度および1〜900 mbarの間に含まれる圧力下で行われることを特徴とする、請求項9または10のいずれか一項記載の方法。
  12. 蒸留された溶媒がさらなる反応に再利用されることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項記載の方法。
  13. 連続工程であることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  14. 空間速度が20〜40.000 h-1の間に含まれることを特徴とする、請求項13記載の方法。
  15. 蒸留された溶媒が反応に再利用されることを特徴とする、請求項13または14のいずれか一項記載の方法。
  16. 金属錯体触媒の金属が、第VIII族の金属から選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  17. 金属錯体触媒が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法:
    式Iのコバルトポルフィリン
    Figure 2008001701
    式中、
    R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;または
    R1およびR2は共に、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルケニル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルを形成し;
    R3は、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
    式IIのコバルトフタロシアニン
    Figure 2008001701
    式中、
    R1およびR2は式I中と同様の意味を有する;ならびに
    式IIIのコバルトシッフ塩基触媒
    Figure 2008001701
    式中、
    R1およびR2は式I中と同様の意味を有し;
    R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていない直鎖状アルキル、置換されたもしくは置換されていない分枝アルキル、置換されたもしくは置換されていないアルコキシ、式中、R10は置換されたもしくは置換されていないアルキルである-O-Si-R10、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択され;
    R9およびR8はそれぞれ独立して、水素、シアノ、置換されたもしくは置換されていないアルキル、置換されたもしくは置換されていないシクロアルキル、置換されたもしくは置換されていないアルケニル、置換されたもしくは置換されていないアルキニル、置換されたもしくは置換されていないアリール、置換されたもしくは置換されていないヘテロシクリルから選択される;
    またはそれらの混合物。
  18. R4、R5、R6、およびR7がそれぞれ独立して、置換されたまたは置換されていない分枝アルキル基より選択されることを特徴とする、請求項17記載の方法。
  19. R5およびR7がそれぞれ独立して、C1〜C4-アルコキシ基より選択されることを特徴とする、請求項17記載の方法。
  20. 触媒が、シリカ、無機耐熱金属酸化物、ゼオライト、炭素、およびポリマー、またはそれらの混合物からなる群より選択される固体支持体を含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  21. アミンが、置換されたまたは置換されていないアリールアミン、置換されたまたは置換されていないアリールジアミン、ポリアミノポリフェニルメタン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
  22. アミンが、トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項21記載の方法。
  23. アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、オニウムハロゲン化物、接触条件でオニウムハロゲン化物を形成できる化合物、ハロゲン原子のオキソ酸およびそれらの塩、有機ハロゲン化物、ハロゲン分子、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるハロゲン化物促進剤が、圧力下の第一の加熱の前に添加されることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
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