JP2008001242A - 車両用安全装置 - Google Patents

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篤志 河口
Atsushi Kawamoto
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Norikazu Sato
範和 佐藤
Atsushi Suzuki
篤史 鈴木
Hidekazu Nishigaki
英一 西垣
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Abstract

【課題】衝突に伴う衝撃負荷を効果的に軽減することができる車両用安全装置を得る。
【解決手段】車両用安全装置10は、車体に設けられ、被衝突体との衝突に伴って車体に衝突方向との交差方向に相対変位を生じさせるための複数の衝突準備姿勢とり得るフロントバンパ12と、フロントバンパ12と被衝突体との衝突形態を予測又は検知した場合にフロントバンパ12が衝突形態に応じた衝突準備姿勢をとるようにフロントバンパ12の姿勢を制御する安全ECU46とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、衝突に伴う衝撃負荷を軽減するための車両用安全装置に関する。
大型車両のシャーシフレームにおける車両前端部にフロントアンダープロテクタを設けた技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、乗用車等の車両がオフセット衝突した場合にサイドブロックプロテクタにて衝撃エネルギが吸収されると共に、デフレクタプレートの斜辺部が衝突車両を側部外方に押し出すように案内する。また、貨物自動車における乗用車との衝突の際に、衝突前の車体から前方に突出させた衝突装置によって、乗用車が貨物自動車によってそらされるように誘導される技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2006−56404号公報 特開平1−301434号公報
しかしながら、上記のような各技術では、想定された衝突パターンで大型車両に衝突する小型車両の潜り込みを防止することができるものの、多くの衝突パターンに対応するためには改善の余地がある。
本発明は、上記事実を考慮して、衝突に伴う衝撃負荷を効果的に軽減することができる車両用安全装置を得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車両用安全装置は、車体に設けられ、被衝突体との衝突に伴って前記車体に衝突方向との交差方向に相対変位を生じさせるための複数の衝突準備形態をとり得る形態切替手段と、前記形態切替手段と被衝突体との衝突形態を予測又は検知した場合に、前記形態切替手段が衝突形態に応じた前記衝突準備形態をとるように該形態切替手段を制御する制御装置と、を備えている。
請求項1記載の車両用安全装置では、車体に設けた形態切替手段と被衝突体との衝突(が不可避である可能性が高いこと)及び衝突形態を予測又は検知した制御装置は、形態切替手段を制御して、該形態切替手段に衝突形態に応じた衝突準備形態とする。これにより、形態切替手段は、被衝突体と衝突すると、車体が被衝突体に対し衝突方向と交差する方向への相対変位を生じる。すなわち、車体と被衝突体とが互いにすれ違うようにして車体及び被衝突体での吸収エネルギを軽減し、衝撃負荷が軽減される。ここで、本車両用安全装置では、複数の衝撃準備形態のうちから衝突形態に応じた衝突準備形態をとることができるため、多くの衝突パターンに対応して動作することで、多くの衝突パターンにおいて衝撃負荷を軽減することができる。
このように、請求項1記載の車両用安全装置では、衝突に伴う衝撃負荷を効果的に軽減することができる。なお、複数の衝突準備形態は、例えば、無段階で連続的に変化するものであっても良く、段階的に変化するものであっても良い。
請求項2記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項1記載の車両用安全装置において、前記形態切替手段は、前記車体を被衝突体に対して前記衝突方向に交差する方向の一方側に相対変位させるための衝突準備形態、及び前記車体を被衝突体に対して前記衝突方向に交差する方向の他方側に相対変位させるための衝突準備形態を含む前記複数の衝突準備形態をとり得るように構成されている。
請求項2記載の車両用安全装置では、ある衝突準備形態においては、被衝突体との衝突方向に対する一方側(例えば、前面衝突に対し左側)に車体の相対変位を生じさせ、別の衝突形態においては、被衝突体に対する衝突方向に対する他方側(例えば、前面衝突に対し右側)に車体の相対変位を生じさせる。これにより、多くの衝突パターンに適切に対応して衝撃負荷を軽減することが可能となる。
請求項3記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項1又は請求項2記載の車両用安全装置において前記形態切替手段は、前記被衝突体と接触する部分の衝突予測方向に対する角度が異なる前記複数の衝突準備形態を取り得るように構成されている。
請求項3記載の車両用安全装置では、形態切替手段における被衝突体と接触する(接触すべき)部分の衝突方向に対する角度を変更することで、該角度に応じた上記交差方向に車体と被衝突体との相対変位を生じさせる。この衝突方向(車体)に対する角度を調節することで、衝突形態に応じた衝突準備形態をとることができる。
請求項4記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置において、前記形態切替手段は、車体外面に沿って延在した通常の形態と、少なくとも長手方向一端側を前記車体の外側に突出させて車体外面に対し傾斜した角度が異なる前記複数の衝突準備形態とをとり得る長手部材と、前記長手部材を前記通常の形態に保持する保持手段と、前記姿勢保持手段によって前記通常の形態に保持されている前記長手部材を前記衝突準備形態に切り替えるための駆動手段と、を含んで構成されている。
請求項4記載の車両用安全装置では、長手部材の長手方向端部を車体の外側に突出させることで、該突出量に応じて長手部材の車体との成す角を変化させることができるので、衝突形態に応じた衝突準備形態をとる。また例えば、車体外部に突出させる長手部材の端部を逆にすることで、被衝突体との衝突方向に対する相対変位方向を切り替えることができる。なお、長手部材の長手方向両端部をそれぞれ車体外部に突出させても良い。
請求項5記載の発明に係る車両用安全装置は、車体外面に沿って延在する通常姿勢と、少なくとも長手方向一端側を前記車体の外側に突出させて車体外面に対し傾斜した角度が異なる複数の衝突準備姿勢とをとり得る長手部材と、前記長手部材を前記通常姿勢に保持する保持手段と、前記姿勢保持手段によって前記通常姿勢に保持されている前記長手部材を前記衝突準備姿勢に切り替えるための駆動手段と、を備えている。
請求項5記載の車両用安全装置では、通常は長手部材が保持手段に保持されて、車体外面に疎って延在する通常姿勢をとる。一方、例えば被衝突体との衝突が予測された場合等に、駆動手段が衝突形態に応じて作動されて、長手部材における長手方向の少なくとも一端側が衝突形態に応じた量だけ車体外部に突出される。このようにして衝突形態に応じた衝突準備姿勢とされた長手部材は、該衝突準備姿勢で被衝突体と衝突する。この衝突準備姿勢では、長手部材が車体外面に対し傾斜しかつ突出しているので、例えば、被衝突体との衝突に伴って車体と被衝突体とは衝突方向との交差方向の相対変位を生じさせたり、また例えば、長手部材や駆動手段の変形によって衝撃エネルギを吸収したりすることができる。
請求項6記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項4又は請求項5記載の車両用安全装置において、前記駆動手段は、前記車体外面に沿って延在するベース部材と、それぞれ一端側が前記長手部材の長手方向一端側に相対角変位可能に連結されると共に、他端側が前記ベース部材に連結された一対のリンク部材と、前記長手部材と各リンク部材との連結部位の前記ベース部材に対する距離を変化させ得る駆動部と、を含んで構成されている。
請求項6記載の車両用安全装置では、長手部材と一対のリンク部材とベース部材とで、該ベース部材を固定リンクとした4節リンクが構成されており、この4節リンクに、長手部材と各リンク部材との連結部位のベース部材(車体)に対する距離(最短距離)を独立して変化させ(調整し)得る駆動部を組み合わせて駆動手段が構成されている。これにより、簡単な構造で、長手部材の長手方向一端側を車体外側に突出させて該長手部材の車体に対する角度(衝突準備形態又は衝突準備姿勢)を調整することができる。
請求項7記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項6記載の車両用安全装置において、前記駆動部は、前記各リンク部材の他端を前記ベース部材に対し相対角変位可能でかつ該ベース部材の長手方向にスライド可能に連結した連結部材と、該連結部材を前記ベース部材に長手方向にスライドさせるスライド手段と、前記長手部材のベース部材に対する姿勢を該ベース部材に対する前記連結部材の位置に応じた所定の姿勢に維持するための姿勢維持手段と、を含んで構成されている。
請求項7記載の車両用安全装置では、各リンク部材の他端とベース部材とを連結する一角連結部材のベース部材の長手方向における位置を変化させることで、リンク部材の車体との成す角すなわちベース部材から長手部材とリンク部材との連結部位までの最短距離が変化し、長手部材が衝突形態に応じた衝突準備形態又は衝突準備姿勢をとる。この衝突準備形態又は衝突準備姿勢は、姿勢維持手段によって維持される。これにより、駆動手段の4節リンクに組み合わされる駆動部が実現される。
請求項8記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項6又は請求項7記載の車両用安全装置において、前記駆動部は、前記一対のリンク部材を、それぞれ動力で伸縮するアクチュエータとして構成されている。
請求項8載の車両用安全装置では、駆動手段の4リンクを構成するリンク部材を動力による伸長させると該伸張側で長手部材が車体外側に突出し、この伸長量に応じて長手部材が衝突形態に応じた衝突準備形態又は衝突準備姿勢をとる。これにより、駆動手段の4節リンクに組み合わされる駆動部が実現される。
請求項9記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置において、前記形態切替手段は、車体内部に位置する通常の形態と、車体外面に対する突出量又は突出位置が異なる前記複数の衝突準備形態とをとり得る突出部材と、前記突出部材を前記通常の形態に保持する保持手段と、前記姿勢保持手段によって前記通常の形態に保持されている前記突出部材を前記衝突準備形態に切り替えるための駆動手段と、を含んで構成されている。
請求項9載の車両用安全装置では、突出部材は、車体外面に対し突出する突出量又は車体外面に対する該外面の延在方向(例えば車幅方向や車体前後方向)における突出位置を異ならせることで、衝突形態に応じた衝突準備姿勢をとる。また例えば、車体外面の延在方向中央部に対する突出位置を逆にすることで、被衝突体との衝突方向に対する相対変位方向を切り替えることができる。
請求項10記載の発明に係る車両用安全装置は、車体内部に位置する通常姿勢と、車体外面に対する突出量又は突出位置が異なる複数の衝突準備姿勢とをとり得る突出部材と、前記突出部材を前記通常姿勢に保持する保持手段と、前記姿勢保持手段によって前記通常姿勢に保持されている前記突出部材を前記衝突準備姿勢に切り替えるための駆動手段と、を備えている。
請求項10記載の車両用安全装置では、通常は突出部材が保持手段に保持されて車体内部に位置する通常姿勢をとる。一方、例えば被衝突体との衝突が予測された場合等に、駆動手段が衝突形態に応じて作動されて、突出部材は衝突形態に応じた突出量だけ車体外部に突出され、又は衝突形態に応じた車体外面の延在方向(例えば車幅方向や車体前後方向)における突出位置で突出される。このようにして衝突形態に応じた衝突準備姿勢とされた突出部材は、該衝突準備姿勢で被衝突体と衝突する。この衝突準備姿勢では、突出部材が車体外面に対し傾斜しかつ突出しているので、例えば、突出が単体で又は車体の他の部分と協働しつつ、被衝突体との衝突に伴って車体に被衝突体との衝突方向に対する交差方向の相対変位を生じたさせり、突出部材や駆動手段の変形によって衝撃エネルギを吸収したりすることができる。
請求項11記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項9又は請求項10記載の車両用安全装置において、前記突出部材は、車体外面に沿って延在する通常の形態から曲げによって長手方向中央部を車体の外側に突出させることで、前記通常の形態又は通常姿勢から前記衝突準備形態又は前記衝突準備姿勢に切り替わるようになっており、前記駆動手段は、前記突出部材の長手方向端部の位置を前記車体外面に沿って移動可能に構成されている。
請求項11記載の車両用安全装置では、駆動手段は、突出部材の長手方向端部が車体外面に沿って移動するように該突出部材を曲げる(撓み、折り曲げ、折り畳みを含む)。すると、突出部材の長手方向中央部が車体外部に突出して衝突準備形態又は衝突準備姿勢をとる。これにより、例えば突出部材の曲げ量(端部間距離)や端部の位置を調整することで、突出部材を車体外側の車体外面に対する突出量又は突出位置(衝突準備形態又は衝突準備姿勢)を調整することができる。
請求項12記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項9乃至請求項11の何れか1項記載の車両用安全装置において、前記駆動手段は、前記突出部材に長手方向両端の位置をそれぞれ独立して前記車体外面に沿って移動可能に構成されている。
請求項12記載の車両用安全装置では、駆動手段が突出部材の長手方向両端の位置を車体外面に沿って独立して移動させることで、任意の突出量及び突出位置すなわち複数の衝突準備形態又は衝突準備姿勢を得ることができる。
請求項13記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置において、前記形態切替手段は、車体に設けられた構造体と、前記構造体の一部の剛性を残余の一部の剛性に対し相対的に低くすることができるように構成され、前記構造体における相対的に剛性を低くする部分を異ならせることで前記構造体に前記複数の衝突準備形態をとらせる選択低剛性化手段と、を含んで構成されている。
請求項13記載の車両用安全装置では、車体に設けられた構造体の一部を選択低剛性化手段によって低剛性にすることで衝突準備形態とされ、この構造体は被衝突体との衝突に伴って相対的に低剛性化された部分が主に変形することで、衝突方向との交差方向に相対変位を生じさせる案内形状を成す。すなわち、本車両用安全装置では、構造体における低剛性化する部分(の配置)に応じて、衝突形態に応じた衝突準備形態をとることができ、なお、選択低剛性化手段は、相対的に低剛性化される部分以外の部分の剛性を高めるように構成されても良い。
請求項14記載の発明に係る車両用安全装置は、車体に設けられた構造体と、前記構造体の一部の剛性を残余の一部の剛性に対し相対的に低くして、該構造体の衝突に伴う変形形状を制御するための選択低剛性化手段と、を備えている。
請求項14記載の車両用安全装置では、例えば通常は構造体の各部の剛性がほぼ均等である通常の形態をとる。一方、例えば被衝突体との衝突が予測された場合等に、選択低剛性化手段が衝突形態に応じて作動されて、構造体は衝突形態に応じた一部が残余の一部に対し相対的に低剛性化される。このようにして衝突形態に応じた形態とされた構造体は、被衝突体との衝突に伴って低剛性化された部分が主に変形することで、例えば衝突方向との交差方向に相対変位を生じさせる案内形状を成したり、構造体の一部を衝撃エネルギ吸収部として機能させたりすることができる。なお、選択低剛性化手段は、相対的に低剛性化される部分以外の部分の剛性を高めるように構成されても良い。
請求項15記載の発明に係る車両用安全装置は、請求項13又は請求項14記載の車両用安全装置において、前記構造体は、複数の骨格を有して構成されており、前記選択低剛性化手段は、前記複数の骨格の少なくとも一部にそれぞれ設けられ、作動して自らが設けられている前記骨格を弱化する複数の弱化手段を含んで構成されている。
請求項15記載の車両用安全装置では、選択低剛性化手段は、構造体を構成する骨格の全部又は一部にそれぞれ設けられた複数の弱化手段を含んで構成されており、複数の弱手段の一部が衝突形態に応じて作動されることで、該弱化手段が設けられている骨格が弱化(破壊を含む)され、構造体は衝突形態に応じて一部が低剛性化される。これにより、簡単な構造で選択低剛性化手段を構成することができる。
以上説明したように本発明に係る車両用安全装置は、衝突に伴う衝撃負荷を効果的に軽減することができるという優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置10について、図1乃至図7に基づいて説明する。なお、各図に適宜示す矢印FR、矢印LH、及び矢印RHは、車両用安全装置10が適用された自動車Aの前方向(走行方向)、矢印FR方向を向いた場合の左方向、及び右方向をそれぞれ示している。すなわち、矢印LH、矢印RHは、車幅方向中央を基準にすると、それぞれ車幅方向外側を示している。
図2には、車両用安全装置10の概略全体構成が平面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置10は、長手部材としてのフロントバンパ(バンパ骨格)12を備えている。フロントバンパ12は、自動車Aの車体前端近傍で略車幅方向に沿って延在する衝突荷重入力部材として把握される部材であり、例えば長手方向に直交する断面視で閉断面構造を成している。
フロントバンパ12の長手方向一端である右端部12Aには、軸線方向が車体上下方向に略一致された回転ジョイント(ヒンジ)14を介して、リンク部材としてのリニアアクチュエータ16の前端16Aが略水平面に沿った相対角変位可能に連結されている。一方、フロントバンパ12の長手方向他端である左端部12Bには、回転ジョイント14を介して、リンク部材としてのリニアアクチュエータ18の前端18Aが略水平面に沿った相対角変位可能に連結されている。
リニアアクチュエータ16、18は、その長手方向に動力にて伸縮可能に構成されており、本発明における駆動部を構成している。このようなリニアアクチュエータ16、リニアアクチュエータ18としては、例えば一端がシリンダの外側に突出したロッドの他端をシリンダ内に摺動可能に設けたピストンに連結し、ピストンの前後に作用する圧力差によってロッドのシリンダに対する突出量を変化させる構造のエアシリンダや油圧シリンダを用いることができ、また例えば、送りねじ機構やラックアンドピニオン機構などによって電気モータの回転を直線運動に変換する直動機構やリニアモータによって、基部に対し伸縮部を相対変位させる構造のものを用いることができる。
この実施形態では、リニアアクチュエータ16、18は、アクチュエータ駆動部20の動作によって伸縮する(長さが調整される)ようになっている。また、リニアアクチュエータ16、18は、それぞれスプリング22によって短縮側に付勢されており、伸長する際にアクチュエータ駆動部20からの動力(空気圧、油圧、又は電力)を利用する構成とされている。さらに、アクチュエータ駆動部20は、リニアアクチュエータ16、18の長さを検出(長さ信号を出力)可能に構成されている。
リニアアクチュエータ16、18の後端16B、18Bは、それぞれ回転ジョイント14を介して並進ジョイント(スライダ)24、26に相対角変位可能にされている。この回転ジョイント14と並進ジョイント24又は並進ジョイント26とが、本発明における連結部材に相当する。並進ジョイント24、26は、それぞれベース部材としての送りねじ28、30に螺合した図示しないめねじが形成されたナットとして構成されており、送りねじ28、30が自軸廻りに回転することで、回転方向に応じて右方又は左方に移動する構成とされている。
送りねじ28、30は、車幅方向に沿って延在されており、それぞれの車幅方向外端28A、30Aが駆動モータ32、34に接続されると共に、それぞれの車幅方向内端28B、30Bが軸受36によって回転自在に軸支されている。したがって、この実施形態では、並進ジョイント24と送りねじ28と駆動モータ32とを主要構成要素として、本発明における駆動部としての送りねじ機構38を構成しており、また並進ジョイント26と送りねじ30と駆動モータ34とを主要構成要素として、本発明における駆動部としての送りねじ機構40を構成している。また、この実施形態では、駆動モータ32、34は、それぞれサーボモータとされており、それぞれの回転角によって並進ジョイント24、26の位置を検出(位置信号を出力)可能とされている。
以上により、車両用安全装置10では、フロントバンパ12と、左右一対のリニアアクチュエータ16、18と、送りねじ28、30とで、該送りねじ28、30(すなわち車体)を固定リンクとした4節リンク35を構成している。そして、この実施形態では、フロントバンパ12の右端部12Aを送りねじ28に対し車体前後方向に接離させるために、駆動部としてのリニアアクチュエータ16(の動力伸縮構造)、及びリニアアクチュエータ16の後端16Bを車幅方向に移動させる(リニアアクチュエータ16の車体前後方向に対する角度を変化させる)送りねじ機構38が上記した4節リンク35に組み合わされており、かつフロントバンパ12の左端部12Bを送りねじ30に対し車体前後方向に接離させるために、駆動部としてのリニアアクチュエータ18、及びリニアアクチュエータ18の後端18Bを車幅方向に移動させる送りねじ機構40が上記した4節リンク35に組み合わされている。
この車両用安全装置10は、通常は図1(A)に示される如く、フロントバンパ12を車幅方向(車体前面Sf)に沿って車体(フロントバンパカバー)内部に延在させた格納姿勢に保持するようになっている。この実施形態では、格納姿勢は、リニアアクチュエータ16、18をそれぞれ最も短縮した状態で、並進ジョイント24、並進ジョイント26を車幅方向内側に移動限に位置させた状態とされている。そして、図1(B)に示される如く、車両用安全装置10は、送りねじ28、30に対する並進ジョイント24、26の各位置(リニアアクチュエータ16、18の車体前後方向に対する角度)、リニアアクチュエータ16、18の長さに応じてフロントバンパ12の車幅方向に沿って延在する車体前面Sfに対する傾斜角、突出量が変化する構成とされている。図1(B)に示すフロントバンパ12が車体前方に突出すると共に車幅方向に対し傾斜した姿勢は、衝突準備姿勢の一例である。
また、車両用安全装置10は、フロントバンパ12を衝突準備姿勢に維持するための姿勢維持手段としてのワイヤ42、44を備えている。ワイヤ42、44は互いに交差するように、4節リンク35の対角に位置する回転ジョイント14間に張設されている。ワイヤ42、44は、図示しない張力付与機構45によって、常に所定値以上の張力が付与されるようになっている。これにより、車両用安全装置10では、図1(B)に例示する如きフロントバンパ12の衝突準備姿勢を維持することができる。この実施形態では、ワイヤ42、44は、フロントバンパ12を格納姿勢に保持する保持手段としても機能する構成とされている。
張力付与機構45としては、例えば一方側の回転ジョイント14に設けられワイヤ42等の端部が巻き回された電動リールや、ワイヤ44等の中間部が巻き掛けられ車体前後方向に移動可能なプーリや、回転ジョイント14とワイヤ42等との間に介在するスプリングなどにて構成することができる。また、姿勢維持手段として、ワイヤ42、44及び張力付与機構45に代えて、又はこれらと共に、上記した4節リンク35を少なくとも2つの回転ジョイント14廻りに回転付勢するスプリング等を用いることも可能である。
車両用安全装置10における以上説明した機械部分の構成が、本発明における形態切替手段に相当する。
さらに、図2に示される如く、車両用安全装置10は、制御装置としての安全ECU46を備えている。安全ECU46は、自動車Aの前部に対する各種の衝突予測用の情報が入力されるようになっており、これらの情報に基づいて、衝突、衝突対象(被衝突体が何であるか)、車体前部に対する衝突位置等の衝突形態を予測するように構成されている。安全ECU46に入力される衝突予測用の情報としては、例えば前方の障害物との距離情報(ミリ波レーダの出力等)や車速情報などの自動車A自体に搭載されたセンサ出力の他、高度道路交通システム(所謂ITS)、先進安全自動車(ASV)、等で用いられる通信(例えば車車間通信や道路に設けた通信装置等との通信)による情報があり、安全ECU46は、高い精度で衝突形態を予測し得る。
そして、安全ECU46は、アクチュエータ駆動部20、駆動モータ32、34、及び張力付与機構45のそれぞれに電気的に接続されており、予測した衝突形態に応じてフロントバンパ12が最適な衝突準備姿勢をとるように、アクチュエータ駆動部20、駆動モータ32、駆動モータ34、及び張力付与機構45を制御する(作動させる)ようになっている。安全ECU46は、アクチュエータ駆動部20からのリニアアクチュエータ16、18の長さ信号、駆動モータ32、34からの並進ジョイント24、26の位置信号に基づいて、フロントバンパ12の姿勢を検知するようになっている。
次に、第1の実施形態の作用を、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の車両用安全装置10では、安全ECU46は、ステップS10で衝突予測用の各種情報が入力され、これらの情報に基づいてステップS12で自動車Aの前部の被衝突体との衝突(の確立)を予測する。衝突が生じない(確率が閾値以下である)と判断した場合、安全ECU46はステップS10に戻り、自動車Aの走行中には衝突を予測するまでこれを繰り返す。したがって、自動車Aの通常走行中は、安全ECU46は車両用安全装置10のアクチュエータ駆動部20、駆動モータ32、34、張力付与機構45を作動することなく、フロントバンパ12は図1(A)に示す格納姿勢に保持される。
一方、ステップS12で衝突を予測(確率が閾値を超えると判断)した安全ECU46は、ステップS14に進み、車速、被衝突体との距離、動力の収支状況、衝突対象、及び予測衝突位置などから、フロントバンパ12の最適な衝突準備姿勢(車体前面Sfに対する傾斜角や車体前面Sfからの突出量など)を推定する。次いで、ステップS16に進み、安全ECU46は、フロントバンパ12がステップS14で推定した衝突準備姿勢をとるように、アクチュエータ駆動部20、駆動モータ32、駆動モータ34を作動させる(又は非作動とする)。
例えば、自動車Aが乗用車であり、被衝突体が乗用車であり、かつフルラップ衝突に近い衝突形態が予測された場合、車両用安全装置10(安全ECU46)は、フロントバンパ12を図4(A)に示される如く被衝突体の進行方向に対し傾斜した衝突準備姿勢とする。この状態で衝突すると、フロントバンパ12によって被衝突体(相手方車両)を車幅方向外側(この例では左方)に押し出すと共に、自動車Aは右方に押し出される。すなわち、被衝突体と自動車Aとは、衝突に伴って衝突方向に交差する方向の相対変位が与えられ、すれ違うようにして車体同士の衝突(侵襲)を回避する。
すなわち、自動車A及び被衝突体の衝突前における運動エネルギの一部が衝突後の自動車A及び被衝突体の走行(相対変位)に用いられるので、衝突によって自動車A及び被衝突体の車体変形で吸収すべきエネルギが軽減され、自動車A及び被衝突体に作用する衝撃荷重が軽減される。このため、これら自動車A及び被衝突体の乗員に対する負荷も軽減される。
さらに、安全ECU46は、自動車Aの被衝突体Bとの衝突に際して、ステップS18に進み、4節リンク35を衝撃吸収に適した構造体となるように制御する。具体的には、例えば張力付与機構45すなわちワイヤ42、ワイヤ44の張力を制御して、4節リンク35の剛性を変化させ、また例えば伸長しているリニアアクチュエータ16、リニアアクチュエータ18の動作圧力(流体作動の場合)を変化させて減衰特性を変化させることで、衝突形態に応じた衝撃吸収特性を得る。これにより、車両用安全装置10では、車体に入力する衝撃荷重(加速度)が一層軽減される。
図5及び図6には、被衝突体B側にも車両用安全装置10を備え、自動車Aと同様の衝突準備姿勢をとるフロントバンパ12が自動車Aのフロントバンパ12と衝突した場合の衝突形態を示す。図5(A)に示される如くフルラップ衝突に近い衝突形態が予測された場合、自動車A(及び被衝突体B)は、フロントバンパ12を最適な衝突準備形態とし、図5(B)に示される如く衝突に至る。この場合、各フロントバンパ12が衝突方向(及び車幅方向)に対し傾斜しているので、図5(C)に示される如く、自動車Aと被衝突体Bとは互いに側方へ押し出すように車幅方向の位置がずれ(矢印C参照)だし、図5(D)に示される如くすれ違うようにして車体同士の衝突を回避する。
平面図である図6を参照して説明すると、被衝突体Bと自動車Aとは、衝突に伴って衝突方向Xに交差する方向Yの相対変位が与えられ、上記の通りすれ違うようにして車体同士の衝突を回避する。このとき、上記の通り4節リンク35の弾性特性、減衰特性を制御することによって、自動車A、被衝突体Bの車体に入力される衝撃荷重はさらに緩和される。図7は、図6に示す衝突回避、衝撃吸収動作を行った場合の車体加速度(衝撃荷重)の時間変化を示しており、この図から、車両用安全装置10備えない自動車Aと被衝突体Bとをフルラップ前面衝突させた比較例と比較して、ピーク加速度が著しく(半分以下に)減じられることが判る。なお、被衝突体Bが車両用安全装置10を備えない場合でも、フロントバンパ12による衝突回避及び4節リンク35による衝撃吸収にて自動車A及び被衝突体Bのピーク加速度を大幅に低減することができる。
ここで、車両用安全装置10では、安全ECU46が予測する衝突形態に応じてフロントバンパ12の衝突準備姿勢を異ならせることができるため、多くの衝突状況(周囲の状況を含む衝突パターン)に対応して適切な衝撃軽減作用(衝突回避、衝撃荷重緩和、衝撃エネルギ吸収等)を果たすことができる。したがってフロントバンパ12は、例えば、オフセット前面衝突に適した衝突準備姿勢、前方車両への追突に適した衝突準備姿勢、他の被衝突体となり得る周辺物体との2次衝突を避けることをも考慮した(1次衝突と併せた被害が最小になるような)衝突準備姿勢(以上は主にSfに対する傾斜角)をとったり、歩行者等の軽量の被衝突体との衝突に適した衝突準備姿勢(被衝突体をエンジンフード上に乗り上げさせるための所謂足払いを選択肢に含む)をとったり、地上固定物(壁面等)への衝突に適した衝突準備姿勢(例えば衝突側のリニアアクチュエータ16、18を主にダンパとして用いるように荷重を伝える姿勢など)をとったりすることが可能である。
またここで、車両用安全装置10では、フロントバンパ12を含む4節リンク35にリニアアクチュエータ16、リニアアクチュエータ18の伸縮構造、及び並進ジョイント24、28(リニアアクチュエータ16、18の各後端16B、18B)を独立して駆動するための送りねじ機構38、40を組み合わせることで、簡単な構造で、フロントバンパ12を衝突形態に応じた衝突準備姿勢をとる構成が実現された。
なお、上記した第1の実施形態では、フロントバンパ12が、すれ違うように衝突を回避する(衝突方向と交差する方向の相対変位を生じさせる)ための衝突準備姿勢をとる例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種姿勢をとり得るフロントバンパ12を異なる目的にのみ用いる構成(安全ECU46による制御)を採用しても良い。したがって、車両用安全装置10(の機械構成部分)は、例えば衝突形態に応じた被衝突体との衝突回避動作のためにだけ用いられても良く、また例えば衝突形態に応じた姿勢での衝撃吸収機能を果たすためだけに用いられても良い。
また、上記した第1の実施形態では、4節リンク35に、リニアアクチュエータ16、リニアアクチュエータ18の伸縮構造、及び送りねじ機構38、40を共に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リニアアクチュエータ16、18の各後端16B、18Bが連結された回転ジョイント14を車体に固定した構成としても良く、また例えば、リニアアクチュエータ16、18に代えて長さが一定のリンク部材を設けた構成としても良い。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部分等については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する場合があり、また図示を省略する場合がある。
(第2の実施形態)
図8(A)には、本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置100の概略全体構成が平面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置100は、車幅方向に延在するフロントバンパ102を備えている。フロントバンパ102は、例えば鋼板や樹脂板等にて中実に構成されており、図8(B)に示される如く、曲げ変形を生じ易い構成とされている。
フロントバンパ102の長手方向一端である右端部102Aには、軸線方向が車体上下方向に略一致された回転ジョイント(ヒンジ)103を介して、並進ジョイント104が略水平面に沿った相対角変位可能に連結されており、フロントバンパ12の長手方向他端である左端部102Bには、回転ジョイント103を介して並進ジョイント106が相対角変位可能に連結されている。並進ジョイント104、106は、それぞれベース部材としての送りねじ108、110に螺合した図示しないめねじが形成されたナットとして構成されており、送りねじ108、110が自軸廻りに回転することで、回転方向に応じて右方又は左方に移動する構成とされている。
送りねじ108、110は、車幅方向に沿って延在されており、それぞれの車幅方向外端108A、110Aが駆動モータ112、114に接続されると共に、それぞれの車幅方向内端108B、110Bが軸受116によって回転自在に軸支されている。したがって、この実施形態では、並進ジョイント104と送りねじ108と駆動モータ112とを主要構成要素として、本発明における駆動手段としての送りねじ機構118を構成しており、また並進ジョイント106と送りねじ110と駆動モータ114とを主要構成要素として、本発明における駆動手段ととしての送りねじ機構120を構成している。また、この実施形態では、送りねじ機構118、120は、本発明における保持手段としても機能する。
また、この実施形態では、駆動モータ112、114は、それぞれサーボモータとされており、それぞれの回転角によって並進ジョイント104、106の位置を検出(位置信号を出力)可能とされている。さらに、この実施形態では、駆動モータ112、114は、それぞれの回転角によって並進ジョイント104、106の位置を検出可能とされると共に、それぞれ図示しないロードセルが内蔵されており、フロントバンパ102に作用する負荷を検出(負荷信号を出力)するようになっている。
この車両用安全装置100では、並進ジョイント104、106がそれぞれ車幅方向外側の移動限に位置している状態で、フロントバンパ102が車体前面Sfの内側で車幅方向に沿って直線的に延在する通常姿勢をとる構成とされている。並進ジョイント104、106すなわちフロントバンパ102の長手方向両端が近接すると、フロントバンパ102は曲げられて長手方向中央部102Cを車体前面Sfよりも前側に突出させるようになっている。そして、図8(B)に示される如く、車両用安全装置100では、並進ジョイント104、106の間隔に応じて車体前面Sfに対する長手方向中央部102Cの突出量を変化させることができ、また並進ジョイント104、106の位置に応じて車体前面Sfの長手方向(車幅方向)における長手方向中央部102Cの突出位置を変化させることができる構成とされている。
以上説明した車両用安全装置100では、駆動モータ112、駆動モータ114がそれぞれ制御装置としての安全ECU122に電気的に接続されている。安全ECU122は、安全ECU46と同様に、自動車Aの前部に対する各種の衝突予測用の情報が入力されるようになっており、これらの情報に基づいて、衝突、衝突対象(被衝突体が何であるか)、車体前部に対する衝突位置等の衝突形態を予測するように構成されている。そして、安全ECU122は、フロントバンパ102が衝突形態に応じた衝突準備姿勢をとるように、予測した衝突形態に応じて駆動モータ112、駆動モータ114を制御する(作動させる)ようになっている。安全ECU122は、駆動モータ112、114からの並進ジョイント104、106の位置信号に基づいて、フロントバンパ12の姿勢を検知するようになっている。また、安全ECU122は、駆動モータ112、114に内蔵したロードセルからの信号によって、フロントバンパ102に作用する荷重を検知するようになっている。さらに、この実施形態では、安全ECU122は、衝突を予測した場合に、自動的に操舵して衝突回避(軽減)動作を行い得る(選択肢に含む)構成とされている。
次に、第2の実施形態の作用を、図9及び図10に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の車両用安全装置100では、安全ECU122は、ステップS100で衝突予測用の各種情報が入力され、これらの情報に基づいてステップS102で自動車Aの前部の被衝突体との衝突(の確立)を予測する。衝突が生じない(確率が閾値以下である)と判断した場合、安全ECU122はステップS100に戻り、自動車Aの走行中には衝突を予測するまでこれを繰り返す。したがって、自動車Aの通常走行中は、安全ECU122は車両用安全装置100の駆動モータ112、114を作動することなく、フロントバンパ102は図8(A)に示す格納姿勢に保持される。
一方、ステップS102で衝突を予測(確率が閾値を超えると判断)した安全ECU122は、ステップS104に進み、車速、被衝突体との距離、動力の収支状況、衝突対象、及び予測衝突位置などから、フロントバンパ102の最適な衝突準備姿勢(車体前面Sfからの突出量や車幅方向における突出位置など)を推定する。次いで、ステップS106に進み、安全ECU122は、フロントバンパ102がステップS104で推定した衝突準備姿勢をとるように、駆動モータ112、駆動モータ114を作動させる(又は非作動とする)。
例えば、被衝突体Bが車体前部の右側部分に衝突すると予測した安全ECU122は、ステップS106を右側に移動して、図11(A)に示される如くフロントバンパ102を、長手方向中央部102Cを車幅方向中央部よりも右側でSfの前方に突出した衝突準備姿勢に変形させる。より具体的なケースとして、例えば、自動車A及び被衝突体Bが共に乗用車であり、安全ECU122が操舵による衝突回避を試みた場合、車両用安全装置100(安全ECU122)は、例えば図11(A)に示される如くフロントバンパ102を、操舵側(左側)とは車幅方向に反対側となる右側で長手方向中央部102Cが車体前面Sfの前方に突出する衝突準備姿勢とする。
そして、フロントバンパ102は、その長手方向中央部102C(衝突準備姿勢での頂部)よりも右方(車幅方向外側)の傾斜部分102Dに衝突した被衝突体Bに、該傾斜部分102Dの法線方向の斥力(図11(A)参照)を付与して車幅方向外側に押し出す。一方、自動車Aは右方に押し出される。すなわち、車両用安全装置100が適用された自動車Aと被衝突体Bとは、衝突準備姿勢でフロントバンパ102衝突方向に対し交差する方向の相対変位が生じさせられ、すれ違うようにして車体同士の衝突(侵襲)が回避される。
すなわち、自動車A及び被衝突体Bの衝突前における運動エネルギの一部が衝突後の自動車A及び被衝突体の走行(相対変位)に用いられるので、衝突によって自動車A及び被衝突体Bの車体変形で吸収すべきエネルギが軽減され、自動車A及び被衝突体に作用する衝撃荷重が軽減される。このため、これら自動車A及び被衝突体の乗員に対する負荷も軽減される。
さらに、安全ECU122は、自動車Aの被衝突体Bとの衝突に際して、ステップS108に進み、必要に応じてフロントバンパ102による衝撃吸収を行う。具体的には、図10に示される如く、安全ECU122は、ステップS1081で駆動モータ32、34に内蔵したロードセルの出力信号を読み取り、ステップS1083に進んでフロントバンパ102に作用する衝撃荷重が所定の閾値を超えるか否かを判断する。フロントバンパ102に作用する衝撃荷重が閾値以下である(自動車A、被衝突体B共に衝撃に耐え得る)場合、安全ECU122は、ステップS1085に進み、フロントバンパ102が被衝突体Bをさらに側方に押し出すように駆動モータ32、34(上の例では、駆動モータ34)を駆動する。
一方、ステップS1083でフロントバンパ102に作用する衝撃荷重が閾値を超えると判断した場合、安全ECU122は、ステップS1087に進み、フロントバンパ102が衝撃吸収動作をするように駆動モータ32、34を駆動する。具体的には、例えば図11(B)に示されるように衝撃荷重の作用状況に合わせてフロントバンパ102の両端間の間隔を広げる。
安全ECU122は、ステップS1085、S1087の実行後、ステップS1081に戻り、上記の動作を繰り返す。したがって、フロントバンパ102は、作用する衝撃荷重に応じて、長手方向両端の間隔を拡縮する場合もある。以上により、車両用安全装置100では、車体に入力する衝撃荷重(加速度)が一層軽減される。
図12には、被衝突体Bも車両用安全装置100を備え、自動車Aと同様の衝突準備姿勢をとるフロントバンパ102が自動車Aのフロントバンパ102と衝突した場合の衝突形態を示す。図12(A)に示される如くフルラップ衝突に近い衝突形態が予測されえる状態から自動車A、被衝突体Bの各安全ECU122が操舵による回避を試みた場合、安全ECU122は、図12(B)に示される如く、操舵による衝突回避側(左側)とは反対の右側でフロントバンパ102の長手方向中央部102Cを車体前面Sfの前方に突出させる。この場合、上記した操舵による回避によって、図12(C)に示される如くフロントバンパ102の傾斜部分102D同士が接触するので、自動車Aと被衝突体Bとは互いに側方へ押し出すようにして、すれ違うように車体同士の衝突(侵襲)を回避する。すなわち、図12(C)に示される如く、被衝突体Bと自動車Aとは、衝突に伴って衝突方向Xに交差する方向Yの相対変位が与えられ、上記の通りすれ違うようにして車体同士の衝突を回避する。このとき、上記の通りフロントバンパ102の突出量(両端間距離)を制御することによって、自動車A、被衝突体Bの車体に入力される衝撃荷重はさらに緩和される。
ここで、車両用安全装置100では、安全ECU122が予測する衝突形態に応じてフロントバンパ102の衝突準備姿勢を異ならせることができるため、多くの衝突状況(衝突パターン)に対応して適切な衝撃軽減作用(衝突回避、衝撃荷重緩和、衝撃エネルギ吸収等)を果たすことができる。したがってフロントバンパ102は、例えば、フルラップ前面衝突に適した衝突準備姿勢、前方車両への追突に適した衝突準備姿勢、他の被衝突体となり得る周辺物体との2次衝突を避けることをも考慮した(1次衝突と併せた被害が最小になるような)衝突準備姿勢をとったり、歩行者等の軽量の被衝突体との衝突に適した衝突準備姿勢(被衝突体をエンジンフード上に乗り上げさせるための所謂足払いを選択肢に含む)をとったり、地上固定物(壁面等)への衝突に適した衝突準備姿勢(例えばフロントバンパ102を主にダンパ又はスプリングとして用いる姿勢など)をとったりすることが可能である。
またここで、車両用安全装置100では、曲げ可能なフロントバンパ102の両端を独立して車幅方向に移動可能に構成したので、単一のフロントバンパ102で車体前面Sfからの突出量、突出位置をそれぞれ異ならせることができる構成が実現された。
なお、上記した第2の実施形態では、フロントバンパ102が、すれ違うように衝突を回避する(衝突方向と交差する方向の相対変位を生じさせる)ための衝突準備姿勢をとる例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種姿勢をとり得るフロントバンパ102を異なる目的にのみ用いる構成(安全ECU122による制御)を採用しても良い。したがって、車両用安全装置100(の機械構成部分)は、例えば衝突形態に応じた被衝突体との衝突回避動作のためにだけ用いられても良く、また例えば衝突形態に応じた姿勢での衝撃吸収機能を果たすためだけに用いられても良い。
また、上記した第2の実施形態では、フロントバンパ102が曲げ(撓み)によって長手方向中央部102Cを車体前面Sf前方に突出させる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リンクピンにて相対角変位可能に連結した折り曲げ(折り畳み)可能なフロントバンパをフロントバンパ102に代えて設けた構成としても良い。
(第3の実施形態)
図13(A)には、本発明に第3に実施形態に係る車両用安全装置130が平面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置130は、複数(この実施形態では2本)のフロントバンパ132、134を備える点で、第2の実施形態とは異なる。
フロントバンパ132、134は、フロントバンパ102と同様に曲げが生じ易い構成とされている。フロントバンパ132は、右端部132Aが回転ジョイント103を介して並進ジョイント104に連結されており、左端部132Bが回転ジョイント14を介して車体に支持されている。フロントバンパ134は、右端部134Aが回転ジョイント103を介して車体に支持されており、左端部134Bが回転ジョイント103を介して並進ジョイント106に連結されている。車両用安全装置130の他の構成(機械部分)は、車両用安全装置100の対応する構成と同じである。
車両用安全装置130では、図13(B)に示される如く、フロントバンパ132を主に車幅方向左側で、フロントバンパ134を主に車幅方向右側で車体前面Sfから突出させることができる。
したがって、第3の実施形態に係る車両用安全装置130によっても、単一のフロントバンパ102を用いることによる効果を除いて、第2の実施形態に係る車両用安全装置100と同様の作用(制御)によって同様の効果を得ることができる。また、2つのフロントバンパ132、フロントバンパ134の突出量を異ならせて、例えば、全体として車両用安全装置10のフロントバンパ12を車体に対し傾斜させたのと同様にフルラップ衝突の回避動作を、車両用安全装置130単独で(車体に頼らず)行うことが可能になる。
なお、第3の実施形態では、フロントバンパ132、フロントバンパ134の一端が車体に固定された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロントバンパ132、フロントバンパ134の両端をそれぞれ車幅方向に移動可能に構成しても良い。
以上説明した第2又は第3の実施形態にかかる車両用安全装置100、車両用安全装置130は、車両用安全装置10と比較して、軽衝突の回避、衝撃緩和の用途に好適に適用される。
(第4の実施形態)
図14には、本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置200の概略構成が平面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置200では、フロントバンパ202が構造体204を介して車体に取り付けられたフローディング構造とされている。
構造体204は、トラス構造体とされており、具体的には、車体前後方向に長手とされ車幅方向に等間隔で並列した複数(図14では4つ)の縦柱部206と、車幅方向に長手とされ車体前後方向に等間隔で並列した複数(図14では4つ)の横柱部208と、それぞれ隣接する縦柱部206と横柱部208とで囲む9つの矩形枠部210の対角間をそれぞれ架け渡す複数の左前傾斜柱212と、各矩形枠部210の中央部で左前傾斜柱212と交差して該複数の左前傾斜柱212とは別の対角間をそれぞれ架け渡す右前傾斜柱214とを主要部としている。
また、車両用安全装置200は、所定の場合に構造体204の一部を選択的に低剛性化するための選択低剛性化手段216を備えている。この実施形態では、選択低剛性化手段216は、構造体204における衝突形態に応じて低剛性化する可能性のある左前傾斜柱212、右前傾斜柱214に設けられ、作動して自らが設けられている左前傾斜柱212又は右前傾斜柱214を脆弱化(破断、破壊を含む)する複数の弱化手段218、220を含んで構成されている。各弱化手段218、220は、例えば小規模な爆破によって左前傾斜柱212又は右前傾斜柱214を脆弱化する爆破装置にて構成することができる。
この実施形態では、各左前傾斜柱212の右前傾斜柱214との交差部222に対する両側部分のうち、構造体204の右前傾斜柱214に沿った対角線DL1よりも前側に位置する全部分に、それぞれ弱化手段218が設けられている。また、各右前傾斜柱214の交差部222に対する両側部分のうち、構造体204の左前傾斜柱212に沿った対角線DL2よりも前側に位置する全部分に、それぞれ弱化手段220が設けられている。複数の弱化手段218と、弱化手段220とは、互いに独立して作動可能に構成されている。
図15(A)には、各弱化手段218が作動した場合の状態が模式的に例示されており、図15(B)には、各弱化手段218の作動後の構造体204の構造が模式的に示されている。この図15(B)に示される如く、各弱化手段218の作動によって、構造体204は、対角線DL1よりも前方で左前傾斜柱212がなくなり(骨格として機能しなくなり)、該対角線DL1よりも前方部分が後方部分に対し相対的に低剛性化されるようになっている。図示は省略するが、各弱化手段220が作動した場合に構造体204は、対角線DL2よりも前方部分が後方部分に対し相対的に低剛性化される構成とされている。
以上説明した車両用安全装置200では、各弱化手段218、220がそれぞれ制御装置としての安全ECU224に電気的に接続されている。安全ECU224は、安全ECU46と同様に、自動車Aの前部に対する各種の衝突予測用の情報が入力されるようになっており、これらの情報に基づいて、衝突、衝突対象(被衝突体が何であるか)、車体前部に対する衝突位置等の衝突形態を予測するように構成されている。そして、安全ECU224は、構造体204が衝突形態に応じた衝突準備形態をとるように、予測した衝突形態に応じて選択低剛性化手段216を制御する(作動させる)ようになっている。
次に、第4の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両用安全装置200では、安全ECU224は、衝突を予測されない場合には、選択低剛性化手段216を作動させず、構造体204は、全体的に均一な剛性を有するトラス構造を成す通常の形態が維持される。安全ECU224は、他の車両との衝突が不可避であると判断すると、予測した衝突形態に応じて、選択低剛性化手段216の複数の各弱化手段218又は各弱化手段220を作動する。
例えば、自動車Aが乗用車であり、被衝突体が乗用車であり、かつフルラップ衝突に近い衝突形態が予測された場合、車両用安全装置10(安全ECU224)は、選択低剛性化手段216の各弱化手段218を作動させる。すると、構造体204は、図15(B)に示される如く対角線DL1よりも前方部分が選択的に低剛性化された衝突準備形態をとり、被衝突体との衝突に伴って該低剛性化部分が選択的に変形する。これにより、フロントバンパ202は、構造体204の対角線DL1に沿って衝突方向に傾斜した姿勢をとるので、該フロントバンパ202によって被衝突体(相手方車両)を車幅方向外側(この例では左方)に押し出すと共に、自動車Aは右方に押し出される。すなわち、被衝突体と自動車Aとは、衝突に伴って衝突方向に交差する方向の相対変位が与えられ、すれ違うようにして車体同士の衝突(侵襲)を回避する。
すなわち、自動車A及び被衝突体の衝突前における運動エネルギの一部が衝突後の自動車A及び被衝突体の走行(相対変位)に用いられるので、衝突によって自動車A及び被衝突体の車体変形で吸収すべきエネルギが軽減され、自動車A及び被衝突体に作用する衝撃荷重が軽減される。このため、これら自動車A及び被衝突体の乗員に対する負荷も軽減される。
図16には、被衝突体Bも車両用安全装置200を備え、自動車Aと同様の衝突準備形態をとる場合の衝突形態を示す。図16(A)に示される如くフルラップ衝突に近い衝突形態が予測された場合、自動車A(及び被衝突体B)は、それぞれ構造体204における対角線DL1よりも前方部分を低剛性化し、衝突に至る。この衝突に伴って、各構造体204の対角線DL1よりも前側部分が選択的に変形してフロントバンパ202が対角線DL1に沿うようにして衝突方向(及び車幅方向)に対し傾斜しているので、図16(B)に示される如く、自動車Aと被衝突体Bとは互いに側方へ押し出すように車幅方向の位置がずれだし、換言すれば、被衝突体Bと自動車Aとは、衝突に伴って衝突方向Xに交差する方向Yの相対変位が与えられ、すれ違うようにして車体同士の衝突を回避することができる。
図17(A)及び図17(B)は、それぞれ自動車A及び被衝突体Bにおける構造体204の低剛性化部分をとり除いた衝突解析モデルであって、図17(A)は衝突直前の姿勢、図17(B)は衝突直後の姿勢を示す。一方、図17(C)及び図17(D)は、構造体204が衝突準備形態をとらない比較例に係る自動車A及び被衝突体Bの衝突解析モデルであって、図17(C)は衝突直前の姿勢、図17(D)は衝突直後の姿勢を示す。これらのモデルを用いた数値解析結果を図18に示す。図18から、構造体204が衝突準備形態をとることによって、ピーク加速度(減速度)が比較例と比較して著しく(半分程度に)減じられることが判る。なお、被衝突体Bが車両用安全装置200を備えない場合でも、自動車Aの車両用安全装置200が選択低剛性化手段216の作動により構造体204を衝突準備形態にすることで、自動車A及び被衝突体Bのピーク加速度を大幅に低減することができる。
ここで、車両用安全装置200では、車体に固定した構造体204の一部を選択的に低剛性化することで衝突準備形態をとることができるので、換言すれば、衝突に伴って被衝突体との衝突方向に対する交差方向の相対変位を生じさせる形状に変形する構造であるため、衝突の予測が衝突直前になった場合でも、車体本体の衝突を回避するための衝突準備形態への移行が可能である。
また、車両用安全装置200では、安全ECU224が予測する衝突形態に応じて、各弱化手段218を作動させる衝突準備形態と、弱化手段220を作動させる衝突準備形態とをとり得るため、多くの衝突状況(衝突パターン)に対応して適切な衝撃軽減作用(衝突回避、衝撃荷重緩和、衝撃エネルギ吸収等)を果たすことができる。
またここで、車両用安全装置200では、車体とフロントバンパ202との間に配設された構造体204に選択低剛性化手段216を設けた簡単な構造で、衝突直前でも衝突形態に応じた衝突準備形態をとり得る構成が実現された。
なお、上記した第4の実施形態では、選択低剛性化手段216が複数の弱化手段218及び弱化手段220をそれぞれ含む例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、選択低剛性化手段216が複数の弱化手段218及び複数の弱化手段220の何れか一方だけを含んで構成されても良い。
(第5の実施形態)
図19には、本発明に第5の実施形態に係る車両用安全装置230の概略構成が平面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置230では、構造体204に代えて、構造体232を備える点で、第4の実施形態とは異なる。
構造体232は、トラス構造体であり、構造体204と比較して多数の縦柱部206、横柱部208、左前傾斜柱212、右前傾斜柱214を含んで構成されている。この実施形態では、それぞれ13本(13枚)の縦柱部206、横柱部208が構成する144個の矩形枠部210の各対角がそれぞれ左前傾斜柱212、右前傾斜柱214にて架け渡されて構成されている。
また、この実施形態では、選択低剛性化手段216に代えて選択低剛性化手段234を備えている。選択低剛性化手段234は、弱化手段218、220と同様に構成された複数の弱化手段236を含んで構成されている。複数の弱化手段236は、構造体232のの対角線DL1、DL2よりも前方に位置する全ての左前傾斜柱212、右前傾斜柱214における交差部222の両側に、それぞれ設けられている。
図示は省略するが、各選択低剛性化手段234は、それぞれ制御装置としての安全ECU238に電気的に接続されており、それぞれ独立して、又は予め設定された衝突準備形態に対応する領域内に位置する群ごとに、複数の弱化手段236によって作動が制御されるようになっている。この実施形態では、図20(A)に示される如く、対角線DL1よりも前側の全ての弱化手段236が作動して構造体232における対角線DL1の前方が低剛性化される衝突準備形態と、図20(B)に示される如く、仮想線VLよりも前側の弱化手段236が作動して構造体232における仮想線VLの前方が低剛性化される衝突準備形態と、これら2つの衝突準備形態を左右反転した如き各衝突準備形態とをとり得るように、複数の弱化手段236作動が安全ECU238にて制御されるように構成されている。
車両用安全装置230の他の構成(機械部分)は、車両用安全装置200の対応する構成と同じである。
したがって、第5の実施形態に係る車両用安全装置200によっても、基本的に第4の実施形態に係る車両用安全装置200と同様の作用によって同様の作用を得ることができる。また、車両用安全装置200では、構造体232における低剛性化される部分を、図20(A)に示される対角線DL1の前方領域と、図20(B)に示される仮想線VLの前方領域とに切り替え得るため、換言すれば、衝突の際のフロントバンパ202の構造体232による支持方向(衝突方向に対するフロントバンパ202の傾斜角)を変化させ得るため、衝突後の自動車Aの走行方向(及び被衝突体Bの変位方向)を制御することができる。これにより、例えば、被衝突体B以外の周辺物体への2次衝突を回避する等、より多くの衝突状況に応じた衝撃軽減作用(衝突回避、衝撃荷重緩和、衝撃エネルギ吸収等)を果たすことができる。
例えば、図21(A)に示される如く、自動車A及び被衝突体Bの構造体232がフロントバンパ202と衝突方向Xとのなす角θ1が小さくなる衝突準備形態をとる場合と、図21(B)に示される如く、自動車A及び被衝突体Bの構造体232がフロントバンパ202と衝突方向Xとのなす角θ2が大きくなる衝突準備形態をとる場合とでは、後者のほうが衝突に伴う旋回(方向転換)及び衝突方向への移動量が抑制される。
なお、上記した第4及び第5の実施形態では、トラス構造体である構造体204、232が車体に対しフロントバンパ202を支持する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、左右一対の車体骨格(フロントサイドメンバ等)とフロントバンパ202との間にそれぞれクラッシュボックスを設け、左右のクラッシュボックスに長手方向の一部を選択的に低剛性化又は弱化するための選択低剛性化手段を設けた構成としても良い。
また、上記した第4及び第5の実施形態では、構造体204、構造体232の衝突準備形態を対角線DL1を基準に設定した例を示したが、本発明はこれに限定されず、仮想線VLと同様に任意の範囲を低剛性化する衝突準備形態を設定し得ることは言うまでもない。また、第5の実施形態に係る車両用安全装置230においても、左右対称の衝突準備形態を取り得る例に限定されることはなく、例えば、図20に示す2形態だけを取り得る構成としても良い。
さらに、上記した各実施形態では、車両用安全装置10、100、130、200、230がそれぞれ車体前部に設けられた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、車両用安全装置10等を車体後部や側部に設け、後面衝突や側面衝突の際に車体同士の衝突(車体への侵襲)を回避するようにしても良い。
本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置を示す図であって、(A)は格納姿勢の平面図、(B)は衝突準備姿勢の一例を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置を模式的に示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置を構成する安全ECUの制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置の衝突準備姿勢の一例を示す図であって、(A)は衝突前の平面図、(B)は衝突後の平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作を模式的に示す図であって、(A)衝突直前の斜視図、(B)はフロントバンパ同士の衝突瞬間の斜視図、(C)は衝突回避中の斜視図、(D)は衝突後回避後の斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作による、該自動車及び被衝突体の姿勢変化を示す平面図である。 本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置の衝突回避動作に伴う車体への加速度を示す線図である。 本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置を示す図であって、(A)は基本構成を示す平面図、(B)は衝突準備姿勢を例示する平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置を構成する安全ECUの衝突回避動作用の制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置を構成する安全ECUの衝撃吸収用の制御フローを示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置の衝突準備姿勢の一例を示す図であって、(A)は衝突回避動作の例を示す平面図、(B)は衝撃エネルギ吸収動作の例を示す平面図である。 本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作を模式的に示す図であって、(A)は衝突直前の操舵による衝突回避状態を示す平面図、(B)は衝突直前にフロントバンパを衝突準備姿勢とした状態の平面図、(C)はフロントバンパ同士の衝突瞬間の平面図である。 本発明の第3の実施形態に係る車両用安全装置を示す図であって、(A)は基本構成を示す平面図、(B)は衝突準備姿勢を例示する平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置を示す図であって、(A)は基本構成を示す平面図、(B)は制御系統を示す模式図である。 本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置を示す図であって、(A)は選択低剛性化手段の作動状況を模式的に示す平面図、(B)は構造体の衝突準備形態の一例を示す平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作を模式的に示す図であって、(A)は衝突直前に構造体を衝突準備姿勢とした状態の平面図、(B)はフロントバンパ同士の衝突瞬間の平面図である。 (A)及び(B)は、本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作の解析モデルを示す図であって、(A)は衝突直前の斜視図、(B)は衝突後の斜視図であり、(C)及び(D)は、比較例の解析モデルを示す図であって、(C)は衝突直前の斜視図、(D)は衝突後の斜視図である。 図17に示す解析モデルによる解析結果を示す線図である。 本発明の第5の実施形態に係る車両用安全装置を模式的に示す平面図である。 本発明の第5の実施形態に係る車両用安全装置を模式的に示す図であって、(A)は構造体の衝突準備形態の一例を示す平面図、(B)は構造体の衝突準備形態の他例を示す平面図である。 本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置を備えた自動車と被衝突体の衝突回避動作を模式的に示す図であって、(A)は図20(A)の衝突準備形態での衝突回避例を示す平面図、(B)は図20(B)の衝突準備姿勢での衝突回避例を示す平面図である。
符号の説明
10 車両用安全装置
12 フロントバンパ(長手部材、形態切替手段)
16・18 リニアアクチュエータ(リンク部材)
24・26 並進ジョイント(連結部材)
35 4節リンク(駆動手段、形態切替手段)
38・40 送りねじ機構(駆動手段、駆動部)
42 ワイヤ(姿勢維持手段、保持手段)
45 張力付与機構(姿勢維持手段、保持手段)
46 安全ECU(制御装置)
100 車両用安全装置
102 フロントバンパ(突出部材、形態切替手段)
118・120 送りねじ機構(駆動手段、保持手段)
122 安全ECU(制御装置)
130 車両用安全装置
132・134 フロントバンパ(突出部材、形態切替手段)
200 車両用安全装置
204 構造体(形態切替手段)
212 左前傾斜柱(骨格)
214 右前傾斜柱(骨格)
216 選択低剛性化手段(形態切替手段)
218・220 弱化手段
224 安全ECU(制御装置)
230 車両用安全装置
232 構造体(形態切替手段)
234 選択低剛性化手段(形態切替手段)
236 弱化手段
238 安全ECU(制御装置)

Claims (15)

  1. 車体に設けられ、被衝突体との衝突に伴って前記車体に衝突方向との交差方向に相対変位を生じさせるための複数の衝突準備形態をとり得る形態切替手段と、
    前記形態切替手段と被衝突体との衝突形態を予測又は検知した場合に、前記形態切替手段が衝突形態に応じた前記衝突準備形態をとるように該形態切替手段を制御する制御装置と、
    を備えた車両用安全装置。
  2. 前記形態切替手段は、前記車体を被衝突体に対して前記衝突方向に交差する方向の一方側に相対変位させるための衝突準備形態、及び前記車体を被衝突体に対して前記衝突方向に交差する方向の他方側に相対変位させるための衝突準備形態を含む前記複数の衝突準備形態をとり得るように構成されている請求項1記載の車両用安全装置。
  3. 前記形態切替手段は、前記被衝突体と接触する部分の衝突予測方向に対する角度が異なる前記複数の衝突準備形態を取り得るように構成されている請求項1又は請求項2記載の車両用安全装置。
  4. 前記形態切替手段は、
    車体外面に沿って延在した通常の形態と、少なくとも長手方向一端側を前記車体の外側に突出させて車体外面に対し傾斜した角度が異なる前記複数の衝突準備形態とをとり得る長手部材と、
    前記長手部材を前記通常の形態に保持する保持手段と、
    前記姿勢保持手段によって前記通常の形態に保持されている前記長手部材を前記衝突準備形態に切り替えるための駆動手段と、
    を含んで構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置。
  5. 車体外面に沿って延在する通常姿勢と、少なくとも長手方向一端側を前記車体の外側に突出させて車体外面に対し傾斜した角度が異なる複数の衝突準備姿勢とをとり得る長手部材と、
    前記長手部材を前記通常姿勢に保持する保持手段と、
    前記姿勢保持手段によって前記通常姿勢に保持されている前記長手部材を前記衝突準備姿勢に切り替えるための駆動手段と、
    を備えた車両用安全装置。
  6. 前記駆動手段は、
    前記車体外面に沿って延在するベース部材と、
    それぞれ一端側が前記長手部材の長手方向一端側に相対角変位可能に連結されると共に、他端側が前記ベース部材に連結された一対のリンク部材と、
    前記長手部材と各リンク部材との連結部位の前記ベース部材に対する距離を変化させ得る駆動部と、
    を含んで構成されている請求項4又は請求項5記載の車両用安全装置。
  7. 前記駆動部は、前記各リンク部材の他端を前記ベース部材に対し相対角変位可能でかつ該ベース部材の長手方向にスライド可能に連結した連結部材と、該連結部材を前記ベース部材に長手方向にスライドさせるスライド手段と、前記長手部材のベース部材に対する姿勢を該ベース部材に対する前記連結部材の位置に応じた所定の姿勢に維持するための姿勢維持手段と、を含んで構成されている請求項6記載の車両用安全装置。
  8. 前記駆動部は、前記一対のリンク部材を、それぞれ動力で伸縮するアクチュエータとして構成されている請求項6又は請求項7記載の車両用安全装置。
  9. 前記形態切替手段は、
    車体内部に位置する通常の形態と、車体外面に対する突出量又は突出位置が異なる前記複数の衝突準備形態とをとり得る突出部材と、
    前記突出部材を前記通常の形態に保持する保持手段と、
    前記姿勢保持手段によって前記通常の形態に保持されている前記突出部材を前記衝突準備形態に切り替えるための駆動手段と、
    を含んで構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置。
  10. 車体内部に位置する通常姿勢と、車体外面に対する突出量又は突出位置が異なる複数の衝突準備姿勢とをとり得る突出部材と、
    前記突出部材を前記通常姿勢に保持する保持手段と、
    前記姿勢保持手段によって前記通常姿勢に保持されている前記突出部材を前記衝突準備姿勢に切り替えるための駆動手段と、
    を備えた車両用安全装置。
  11. 前記突出部材は、車体外面に沿って延在する通常の形態から曲げによって長手方向中央部を車体の外側に突出させることで、前記通常の形態又は通常姿勢から前記衝突準備形態又は前記衝突準備姿勢に切り替わるようになっており、
    前記駆動手段は、前記突出部材の長手方向端部の位置を前記車体外面に沿って移動可能に構成されている請求項9又は請求項10記載の車両用安全装置。
  12. 前記駆動手段は、前記突出部材に長手方向両端の位置をそれぞれ独立して前記車体外面に沿って移動可能に構成されている請求項9乃至請求項11の何れか1項記載の車両用安全装置。
  13. 前記形態切替手段は、
    車体に設けられた構造体と、
    前記構造体の一部の剛性を残余の一部の剛性に対し相対的に低くすることができるように構成され、前記構造体における相対的に剛性を低くする部分を異ならせることで前記構造体に前記複数の衝突準備形態をとらせる選択低剛性化手段と、
    を含んで構成されている請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の車両用安全装置。
  14. 車体に設けられた構造体と、
    前記構造体の一部の剛性を残余の一部の剛性に対し相対的に低くして、該構造体の衝突に伴う変形形状を制御するための選択低剛性化手段と、
    を備えた車両用安全装置。
  15. 前記構造体は、複数の骨格を有して構成されており、
    前記選択低剛性化手段は、前記複数の骨格の少なくとも一部にそれぞれ設けられ、作動して自らが設けられている前記骨格を弱化する複数の弱化手段を含んで構成されている請求項13又は請求項14記載の車両用安全装置。
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