本発明の第1の実施形態に係る車両用安全装置10について、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、各図に適宜示す矢印FR、矢印UP、矢印LH、及び矢印RHは、車両用安全装置10が適用された自動車11の車体前後方向の前方向(走行方向)、車体上下方向の上方向、矢印FR方向を向いた場合の左方向、及び右方向をそれぞれ示している。すなわち、矢印LH、矢印RHは、車幅方向中央を基準にすると、それぞれ車幅方向外側を示している。
図1には、自動車11に適用された車両用安全装置10が斜視図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置10は、自動車11の車体前部に設けられ、前方及びの上方を共に向く(鉛直面に対する後傾姿勢とされた)衝撃吸収体としての衝撃吸収構造体12を備えている。衝撃吸収構造体12は、自動車11の車体前部の骨格を成すフロントサイドメンバ14に対し、上記した後傾姿勢に支持されている。以下、具体的に説明する。
衝撃吸収構造体12は、それぞれ車体前後方向に長手とされた支持部としての左右一対のサイドフレーム16を備えている。この実施形態では、左右一対のサイドフレーム16は、パイプ材等の閉断面構造を有する高剛性部材として構成されている。各サイドフレーム16の断面形状は、例えば円形であっても矩形であっても良い。左右一対のサイドフレーム16は、それぞれ対応するフロントサイドメンバ14に対する上側に配置されており、それぞれの前端部16Aがブラケット18を介してフロントサイドメンバ14の前端部に車幅方向に沿った支軸19廻りに回転自在に支持されると共に、それぞれの長手方向中間部16Bが駆動手段としてのアクチュエータ20を介してフロントサイドメンバ14に支持されている。
この支持状態で、左右一対のサイドフレーム16は、それぞれ前端部16Aが長手方向中間部16Bすなわち後端部16Cよりも下側に位置するように、水平面(車体前後方向)に対し傾斜している。左右のサイドフレーム16は、車幅方向に長手とされた衝撃吸収部材22にて架け渡されている。この実施形態では、各サイドフレーム16の長手方向に離間して並列した複数(この実施形態では4つ)の衝撃吸収部材22が左右のサイドフレーム16間を架け渡している。
各衝撃吸収部材22は、車幅方向に長手とされた荷重入力部としての衝突体受け部24と、衝突体受け部24の長方向両端から垂下された一対の脚部26とを有して構成されている。この実施形態では、衝突体受け部24は、複数の衝撃吸収部材22の並列方向に沿った平板状に形成されており、一対の脚部26は、衝突体受け部24と略直角に折り曲げられたように該衝突体受け部24に同幅で連続している。したがって、衝撃吸収部材22は、その幅方向端部側から見て下向きに開口する略「コ」字状を成している。
図2(A)にも示される如く、各衝撃吸収部材22は、それぞれの脚部26における衝突体受け部24側とは反対側の端部26Aが、車幅方向の同じ側に位置するサイドフレーム16の上面側に固定されて、該一対のサイドフレーム16とで衝撃吸収構造体12を構成している。このため、衝撃吸収部材22の衝突体受け部24は、左右のサイドフレーム16よりも上方に位置している。そして、上記の如く略「コ」字上を成す衝撃吸収部材22は、一対の脚部26が、互いの端部26Aの相対変位(主に車幅方向の接離)を規制されサイドフレーム16の長手方向軸廻りの回転のみ許容するようにサイドフレーム16に固定されることで、図2(B)に示される如く衝突体受け部24の車幅方向中央部に矢印A方向の強制変位を付加した場合、図3に実線にて示される如き変位−荷重特性が得られるようになっている。
すなわち、各衝撃吸収部材22は、それぞれ衝突体受け部24の矢印A方向(板厚方向)への変位(撓み)の増加に伴って荷重の増加が抑制される変位領域B(ふんわり領域)が生じる構成とされている。この変位領域Bでの荷重や変位の範囲は、衝撃吸収部材22を構成する材料の材質、衝撃吸収部材22(衝突体受け部24、一対の脚部26)の寸法形状等によって適宜設定することができる。また、各衝撃吸収部材22の変位−荷重特性をその設置位置等に応じて異ならせても良い。
左右のアクチュエータ20は、例えば油圧や空気圧又は電動で、それぞれの長手方向に伸縮可能に構成されており、上端20Aがサイドフレーム16に車幅方向に沿った支軸25廻りに回転自在に支持されると共に、下端20Bがフロントサイドメンバ14に車幅方向に沿った支軸27廻りに回転自在に支持されている。各アクチュエータ20は、通常は図1及び図4(A)に示される如く短縮した状態をとる構成とされており、作動して図4(A)に想像線にて示す如く伸張するようになっている。これらのアクチュエータが伸張することで、衝撃吸収構造体12が車体から離間するように支軸19廻りに回動し、該衝撃吸収構造体12が格納姿勢(図1参照)から衝突準備姿勢(図4(A)の想像線、図5参照)に姿勢変化される構成とされている。
衝突準備姿勢は、衝撃吸収構造体12が格納姿勢に対し支軸19廻りに角度θだけ回動した姿勢とされており、この実施形態で角度θは、略50°〜80°の範囲内で設定されている。図4(B)に示される如く、角度θが略50°〜80°の範囲で、衝突体の平均加速度(積分値)が低減されており、良好なエネルギ吸収に寄与することがわかる。なお、この角度θの有効(最適)な範囲は、衝突体の衝撃吸収構造体12に対する衝突速度に依存せず、ほぼ一定であることが確かめられている。
また、車両用安全装置10は、制御手段としてのECU32を備えている。図1に示される如く、ECU32は、各アクチュエータ20に電気的に接続されている(図1では一方のアクチュエータ20との接族のみを図示している)。また、図示は省略するが、ECU32は、ミリ波レーダ(距離センサ)、車速センサ、CCDカメラ(撮像手段)等の各種車両用センサからの信号が直接的又は他のECU等を介して入力されるようになっている。
これらの情報に基づいてECU32は、衝突体Pの衝突を予測するようになっている。このような予測方法は、公知の各種方法を用いることができるので、説明を省略する。そして、ECU32は、衝突体Pの衝突を予測した場合に、各アクチュエータ20を作動させるようになっている。したがって、車両用安全装置10では、ECU32が衝突を予測した場合に、衝撃吸収構造体12が格納姿勢から衝突準備姿勢に姿勢変化する構成とされている。
以上説明した衝撃吸収構造体12は、例えば柔構造とされたエンジンフードの下方(内側)に配置されても良く、少なくとも衝突体受け部24の車幅方向両端を除く部分がエンジンフード上に露出して配置されても良い。また、例えば、衝突体受け部24(衝撃吸収部材22)の集まりそのものが、被服層で覆われてエンジンフードを形成しても良い。この実施形態では、4つの衝撃吸収部材22が、エンジンフードを平面視で略等分するように配置されている。
また、車両用安全装置10は、誘導手段としての跳ね上げ部28を備えている。跳ね上げ部28は、左右のブラケット18におけるフロントサイドメンバ14の下側まで延設された下部18A間を、跳ね上げ棒30にて架け渡して構成されている。跳ね上げ棒30は、自動車11の前下端部に路面から所定高さだけ離間してされており、自動車11における路面上の衝突体に最初に接触する(実質的に荷重を受ける)部位として構成されている。したがって、図1に示される如く上下方向に長い衝突体Pの下部Plが跳ね上げ棒30に衝突した場合、該衝突体Pの下部Plが跳ね上げ(すくい上げ)られて、該衝突体Pが衝撃吸収構造体12上に倒れ込むように誘導されるようになっている。
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両用安全装置10が適用された自動車11では、ECU32は、衝突体Pが前面衝突することを予測(衝突確率が閾値以上であると判断)した場合、各アクチュエータ20を作動する。すると、各アクチュエータ20は、それぞれ所定量だけ伸張し、この伸張によって、図5(A)に示される如く、衝撃吸収構造体12が衝突準備姿勢に姿勢変化する。
この自動車11では、その前面側に衝突体Pが衝突する際に、先ず、図5(A)に示される如く、跳ね上げ部28の跳ね上げ棒30が衝突体Pの下部Plに接触し、衝突体Pは、図5(B)に示される如く、下部Plが掬われるようにして衝撃吸収構造体12上に(後下向きの速度成分をもって)誘導される。
すると、衝突体Pは、衝撃吸収構造体12を構成する各衝撃吸収部材22の衝突体受け部24に接触する。衝撃吸収部材22は、衝突体受け部24が衝突体Pの主に上部Puに押されるようにして、図5(C)に示される如く、衝突荷重を支持しつつ厚み方向における下(車体)側に撓ませられる。これにより、支持荷重を変位で積分した分の衝撃エネルギが衝撃吸収構造体12によって吸収される。
ここで、車両用安全装置10では、変位の増加に伴い支持荷重(≫0)の増加を抑制する変位領域B(図3参照)を生じる衝撃吸収部材22を用いて衝撃吸収構造体12が構成されているため、衝突体Pは、該衝撃吸収構造体12にふんわりと接触し、ふんわりとキャッチされるようにして衝撃エネルギが吸収されて衝突状態から解放される。これにより、衝撃エネルギの吸収過程で大きな荷重(ピーク荷重)が衝突体Pに作用することが防止される。
そして、車両用安全装置10では、衝撃吸収構造体12が衝突体Pとの衝突前に衝突準備姿勢をとるため、該衝撃吸収構造体12による衝撃吸収ストロークが十分に確保される。これにより、衝撃吸収過程で衝撃吸収構造体12(衝突体受け部24、衝突体P)の変位が規制されることがなく、衝撃吸収構造体12の良好な衝撃吸収特性(図3に示すふんわり特性)を十分に発揮させることができる。
このように、第1の実施形態に係る車両用安全装置10では、衝突体Pに作用する衝突荷重を緩和することができる。すなわち、衝突に対し衝突体Pを保護することができ、換言すれば、衝突体Pに対する衝突安全性能が向上する。
また、車両用安全装置10では、跳ね上げ部28を備えているため、衝突体Pを確実に衝撃吸収構造体12上に誘導して、上記の通り良好に衝撃エネルギを吸収する(衝突体Pを保護する)ことができる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成同一の符号を付して説明を省略し、また図示を省略する場合がある。
(第2の実施形態)
図6には、本発明の第2の実施形態に係る車両用安全装置40の格納状態が模式的な側面図で示されており、図7には、車両用安全装置40の展開状態が模式的な側面図にて示されている。これらの図に示される如く、車両用安全装置40は、格納状態と展開状態とをとり得る衝撃吸収構造42を備える点で、フロントサイドメンバ14に固定された衝撃吸収構造体12を備える車両用安全装置10とは異なる。
図6及び図8に示される如く、衝撃吸収構造42は、荷重入力部としての衝突体受け部44と、衝突体受け部44を車体に対し支持すると共に該衝突体受け部44を格納姿勢と展開姿勢との間で駆動するための駆動機構46とを含んで構成されている。
衝突体受け部44は、それぞれ前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム48と、左右一対のサイドフレーム48間を架け渡す衝突体受け止め部材50とを含んで構成されている。左右一対のサイドフレーム48は、それぞれ前後方向に長手の前部フレーム48Aの後端側に後部フレーム48Bを連結して構成されている。この実施形態では、前部フレーム48Aと後部フレーム48Bとは、互いに鈍角を成すと共に該角が一定に保持されるように、互いに固定されている。したがって、左右一対のサイドフレーム48は、それぞれ1部材で構成されても良い。
衝突体受け止め部材50は、それぞれ車幅方向に長手とされ、左右一対のサイドフレーム48の前後方向における異なる部分間を架け渡している。この実施形態では、左右一対のサイドフレーム48の前端間、中間部(前部フレーム48Aと後部フレーム48Bとの角部)間、後端部間をそれぞれ架け渡した3つの衝突体受け止め部材50が設けられている。したがって、衝突体受け部44は、平面視では略「日」字状に形成されている。図示は省略するが、衝突体受け部44は、例えばエンジンフードに平面視で略「日」字状に形成された格納部に進退可能に格納(収容)されるようになっている。この格納状態が、図6に示す如く衝突体受け部44が格納姿勢(近接位置)をとる状態とされている。
この衝撃吸収構造42を構成する各衝突体受け止め部材50は、撓み及び伸びが可能な柔軟性を有すると共に高強度の材料(例えば、ゴム材)にて構成されている。これにより、衝撃吸収構造42では、左右一対のサイドフレーム48を接離させることなく衝突体受け止め部材50を撓ませることができる構成とされている。なお、エンジンフードを柔軟構造として、衝撃吸収構造42を介して駆動機構46に連結するようにしても良い。
駆動機構46は、4節リンク機構部52と、4節リンク機構部52に駆動力を付与するアクチュエータ54とを含んで構成されている。4節リンク機構部52は、車体に固定された固定リンク56と、固定リンク56の前後端でリンク軸52A、52B廻りに回転自在に連結された前後一対の中間リンク58と、一対の中間リンク58の各上端にリンク軸52C、52D廻りに回転自在に連結された上側出力リンク60と、一対の中間リンク58の各中間部にリンク軸52E、52F廻りに回転自在に連結された下側出力リンク62とを含んで構成されている。固定リンク56、上側出力リンク60、及び下側出力リンク62は、互いに平行に設けられ、前後一対の中間リンク58は互いに平行に設けられている。
そして、上側出力リンク60は、前側の中間リンク58との連結点であるリンク軸52Cよりも前方に延設された先端が衝突体受け部44(サイドフレーム48)における長手方向中間部にリンク軸52G廻りに回転自在に連結され、下側出力リンク62は、前側の中間リンク58との連結点であるリンク軸52Eよりも前方に延設された先端が衝突体受け部44(サイドフレーム48)における前端部にリンク軸52H廻りに回転自在に連結されている。この実施形態では、リンク軸52G、52Hは、サイドフレーム48における衝突体受け止め部材50との連結部位に配置されている。
アクチュエータ54は、この実施形態ではモータアクチュエータ(減速機付モータ)とされており、作動することで、固定リンク56に対して後側の中間リンク58をリンク軸52B廻りに回転させる構成とされている。アクチュエータ54は、正逆回転可能とされ、正転して中間リンク58を図6に示す矢印C方向に回転させ、逆転して前後一対の中間リンク58を矢印D方向に回転させるようになっている。
図6及び図8に示す衝突体受け部44の格納姿勢から、アクチュエータ54を正転させると、図7及び図9に示す如く衝突体受け部44は、格納姿勢から矢印E方向に移動し、展開姿勢(離間位置)に姿勢変化するようになっている。展開姿勢は、車体に対する所定の姿勢として設定されても良いが、この実施形態ではアクチュエータ54の回転量に応じた所望の姿勢に調整し得る構成とされている。また、衝撃吸収構造42では、展開姿勢からアクチュエータ54を逆転させることで、衝突体受け部44を格納姿勢への復帰側すなわち車体側に変位するようになっている。さらに、図6に示される如く、衝撃吸収構造42は、アクチュエータ54を制御する制御手段としてのECU64を備えている。このECU64の制御については、後述する。
また、図6乃至図9に示される如く、車両用安全装置40は、誘導手段としての跳ね上げ機構66を備えている。跳ね上げ機構66は、それぞれの上端が左右一対のサイドフレーム48に独立して回転自在に支持された左右一対の進退部材としての揺動アーム68と、左右一対の揺動アーム68の下端間を架け渡した誘導部材としての跳ね上げ棒70と、左右一対の揺動アーム68の上下方向中間部間を架け渡した連結棒72と、左右一対の揺動アーム68を独立して回転駆動するための一対の誘導駆動手段としてのアクチュエータ74(図6に一方のみ図示している)とを含んで構成されている。
跳ね上げ棒70及び連結棒72は、それぞれ撓み及び伸びが可能な柔軟性を有すると共に高強度の材料(例えば、ゴム材)にて構成されている。跳ね上げ棒70は、図6及び図8に示す姿勢が格納姿勢とされ、図6に想像線にて示す姿勢が跳ね上げ姿勢とされている。
跳ね上げ機構66は、左右一対の揺動アーム68を矢印F方向に回転させて跳ね上げ棒70を前方に移動(突出)させることで、衝突体Pの下部Plを跳ね上げ(すくい上げ)て、該衝突体Pを衝突体受け部44上に誘導する(跳ね上げる)ようになっている。また、跳ね上げ機構66では、左右の揺動アーム68の回転量を異ならせることで、跳ね上げ棒70を平面視で車幅方向に対し傾斜した姿勢で前方に移動させ得る。これにより、衝突体Pが車幅方向中央部に対しオフセットして跳ね上げ棒70に接触する場合、該オフセット側(衝突側)の揺動アーム68を反対側の揺動アーム68よりも大きく矢印F方向に回動させることで、図10(A)及び図10(B)に例示される如く、衝突体Pを衝突体受け部44の車幅方向中央部に誘導することができる構成とされている。
また、跳ね上げ機構66は、オフセット側の揺動アーム68よりも反対側(反衝突側)の揺動アーム68を矢印F方向に大きく回動させることで、図11(A)及び図11(B)に例示される如く、衝突体Pを自動車11の車幅方向外側に誘導(排除)することができる構成とされている。すなわち、この実施形態では、跳ね上げ機構66は、本発明における排除手段としても機能する構成とされている。
跳ね上げ機構66は、誘導制御手段としてのECU64によって各アクチュエータ74の作動が制御されるようになっている。すなわち、車両用安全装置40では、衝撃吸収構造42の制御手段と、跳ね上げ機構66の制御手段とが共通化されている。ECU64は、図6に示される如く、アクチュエータ54、一対のアクチュエータ74のそれぞれに電気的に接続されている。また、図示は省略するが、ECU64は、ミリ波レーダ(距離センサ)、車速センサ、CCDカメラ(撮像手段)等の各種車両用センサからの信号が直接的又は他のECU等を介して入力されるようになっている。
これらの情報に基づいてECU64は、衝突が予測されるか否か、衝突が不可避であるか否か、衝突速度、衝突体の大きさを予測、検知するようになっている。これらの予測、検知方法は、公知の各種方法を用いることができるので、説明を省略する。また、この実施形態では、ECU64は、上記の情報に基づいて、衝突体Pの衝突予測位置の車幅方向中央部に対するオフセットの有無(オフセット量)、跳ね上げ機構66によりオフセットして衝突する衝突体Pを衝突体受け部44の車幅方向中央部に誘導することができるができるか否かを予測、検知するようになっている。そして、ECU64は、上記した如き各種の予測、検知結果に基づいて、アクチュエータ54、一対のアクチュエータ74の制御を行うようになっている。この制御については、本実施形態に作用と共に後述する。
次に、第2の実施形態の作用を、図12に示すフローチャート参照しつつ説明する。
上記構成の車両用安全装置40では、ECU64は、ステップS10で各種センサ等からの情報を入力し、ステップS12で衝突(前面衝突)が予測されるか否かを判断する。衝突が予測されない場合は、ステップS10に戻る。一方、ECU64は、衝突が予測される場合、ステップS14に進み、衝突が不可避であるか否かを判断する。衝突が不可避でないと判断したECU64は、ステップS16に進み、回避動作指令を出力し、ステップS10に戻る。ステップS12で衝突が予測されない(衝突を回避した)と判断されるか、ステップS16で衝突が不可避であると判断するまで、ステップS16を通るループを繰り返す。なお、衝突回避動作としては、運転者にブレーキ操作や操舵を促す警報の作動や、自動(強制)ブレーキ、自動(強制)転舵等をあげることができる。
ステップS16で衝突が不可避であると判断した場合、ECU64は、ステップS18に進み、衝突速度を算出し、ステップS20に進む。ステップS20でECU64は、衝突体Pの予測衝突位置が車幅方向中央に対しオフセットしているか否かを判断する。衝突体Pの予測衝突位置がオフセットしていると判断した場合、ECU64は、ステップS22に進み、衝突体Pを車幅方向中央部に誘導し得るか否かを判断する。
ステップS22で、衝突体Pを車幅方向中央部に誘導し得ないと判断した場合(でかつ排除が有効であると判断した場合)、ECU64は、ステップS24に進み、衝突体Pの反衝突側の揺動アーム68が衝突側の揺動アーム68よりも大きく回転するように一対のアクチュエータ74を作動させる。これにより、図11(A)及び図11(B)に示される如く、跳ね上げ棒70は、車幅方向における衝突体Pのオフセット側の前方への突出量が反対側の突出量よりも小さい傾斜姿勢をとる。そして、衝突体Pが跳ね上げ棒70に接触すると、衝突体Pは、衝突体受け部44上の自動車11の車幅方向外側に誘導される。ステップS24の実行後、ECU64は制御を終了する。
一方、ステップS22で、衝突体Pを車幅方向中央部に誘導し得ると判断した場合、ECU64は、ステップS26に進み、衝突体Pの衝突側の揺動アーム68が反対側の揺動アーム68よりも大きく回転するように一対のアクチュエータ74を作動させる。これにより、図10(A)及び図10(B)に示される如く、跳ね上げ棒70は、車幅方向における衝突体Pのオフセット側を反対側よりも大きく前方に突出させた傾斜姿勢をとる。そして、衝突体Pが跳ね上げ棒70に接触すると、衝突体Pは、衝突体受け部44上の車幅方向中央部に誘導される。
他方、ステップS20で衝突体Pの予測衝突位置がオフセットしていないと判断した場合、ECU64は、ステップS28に進み、左右一対の揺動アーム68を等量回転させる。そして、衝突体Pが跳ね上げ棒70の車幅方向中央部に接触すると、衝突体Pは、衝突体受け部44上の車幅方向中央部に誘導される。
ステップS26又はステップS28の実行後、ECU64は、ステップS30に進む。ステップS30でECU64は、衝突体の大きさを判断する。衝突体が大きいと判断したECU64は、ステップS32に進み、ステップS18で算出した衝突速度に応じた大きい衝突体用のふんわりモードを実行し、ステップS18で算出した衝突速度に応じた衝突体が大きくないと判断したECU64は、ステップS34に進み、小さい衝突体用のふんわりモードを実行する。
ここで、ふんわりモードは、衝突体受け部44に衝突した衝突体Pの衝突荷重を支持しながら衝撃吸収構造42が変位して衝撃エネルギを吸収する過程で、変位の増加に伴い支持荷重(≫0)の増加を抑制する変位領域B(図3参照)を生じるように、アクチュエータ54の駆動力で(アクティブに)衝突体受け部44を展開姿勢から格納姿勢側(図7、8に示す矢印G方向)に駆動する動作をいう。ECU64は、大きい衝突体用ふんわりモードにおいては、図13に実線にて示す如く制御量をアクチュエータ54(駆動機構46)に与える(フィードフォワード制御を行う)。一方、小さい衝突体用ふんわりモードでは、ECU64は、図13に破線にて示す如く制御量をアクチュエータ54に与える。なお、図13に示す制御量は一例であり、ECU64は、衝突パターン(この実施形態では衝突速度)に応じた複数の制御パターン(衝突体Pの動特性)が記憶されており、ステップS18で算出した衝突速度に応じた制御パターンを選択するようになっている。
先ず、衝突体Pの衝突直前から大きい衝突体用ふんわりモードの実行まで、図14及び図15を参照して説明する。図14(A)に示される如く衝突体Pが車両用安全装置40(自動車11)に接近し、衝突が不可避であると判断された場合、図14(B)に示される如くECU64は跳ね上げ機構66を作動させ、跳ね上げ棒70にて衝突体Pの下部Plを跳ね上げる。そして、ECU64は、大きい衝突体用ふんわりモードを開始する。
具体的には、ECU64は、衝突体Pが衝突体受け部44に衝突する前にアクチュエータ54を正転して、該衝突体受け部44を展開姿勢(衝突準備位置)に駆動する。衝突体Pは、図14(C)及び図15(A)に示される如く、展開姿勢に位置する衝突体受け部44(の車幅方向中央部)に衝突する。さらに、図14(D)に示される如く、時間の経過に伴い衝突体Pの上部Puが衝突体受け部44上に倒れ込むように衝突を開始する。この際、ECU64は、アクチュエータ54を逆転して、図14(E)及び図15(B)に示される如く、衝突体受け部44を格納姿勢側に移動させる。これにより、衝撃エネルギの吸収過程における衝突体P、衝突体受け部44の格納姿勢側への移動に伴い衝突体Pに作用する衝突荷重(反力)の増加が抑制され、図3に示されるのと同様にほぼ一定の荷重で衝撃エネルギを吸収することができる。
これにより、車両用安全装置40では、図16に示される如く、ふんわりモードを実行しなかった場合(同図の破線参照)と比較して、衝突体Pに作用する衝突荷重(ピーク荷重)を著しく小さく抑えることができる。なお、図16は、衝突体Pが大きい場合における、衝突時に衝突体Pに作用する加速度(荷重)の数値計算例を示しており、比較対象は、図23及び図24(A)、図24(B)に示される如く、車両用安全装置40を備えた自動車11において衝突体受け部44を常に格納姿勢に保持した場合に衝突体Pに作用する加速度である。
次に、小さい衝突体用ふんわりモードについて、大きい衝突体用ふんわりモードとは異なる部分を説明する。図17(A)に示される小さい衝突体用ふんわりモードの展開姿勢は、図15(A)に示す大きい衝突体用ふんわりモードの展開姿勢と比較して、格納姿勢に対する移動量すなわち衝撃吸収ストロークが小さく設定されている(図13も参照)。そして、小さい衝突体用ふんわりモードにおいても、ECU64は、衝突体Pの上部Puが衝突体受け部44に衝突した後にアクチュエータ54を逆転して、図17(B)に示される如く、衝突体受け部44を格納姿勢側に移動させる。
したがって、衝突体Pが小さい場合、すなわち衝突速度が同じであるとすれば大きい衝突体が衝突する場合と比較して衝突エネルギが小さい場合にも、衝撃エネルギの吸収過程において、衝突体P、衝突体受け部44の格納姿勢側への移動に伴い衝突体Pに作用する衝突荷重(反力)の増加が抑制され、図3に示されるのと同様にほぼ一定の荷重で衝撃エネルギを吸収することができる。図13には線にて示す制御により、衝突速度が同じ場合には、小さい衝突体に作用する荷重は、大きい衝突体に作用する荷重よりも小さく抑えられ、小さい衝突体がよりふんわりとキャッチされるようになっている。
そして、車両用安全装置40では、図18に示される如く、ふんわりモードを実行しなかった場合(同図の破線参照)と比較して、小さい衝突体Pに作用する衝突荷重(ピーク荷重)を著しく小さく抑えることができる。なお、図18は、衝突体Pが小さい場合における、衝突時に衝突体Pに作用する加速度(荷重)の数値計算例を示しており、比較対象は、図25(A)、図25(B)に示される如く、車両用安全装置40を備えた自動車11において衝突体受け部44を常に格納姿勢に位置させた場合に衝突体Pに作用する加速度である。
以上説明したように、第2の実施形態に係る車両用安全装置40では、衝撃吸収構造42を駆動機構46にて駆動することで、衝突体に変位の増加に伴って荷重の増加を抑制する変位領域を生成する(ふんわりモードを実行する)ことができる。具体的には、車両用安全装置40では、衝突前に衝突体受け部44を展開姿勢に移動することで、衝撃吸収ストロークを創出し、かつ衝突体が衝突した衝突体受け部44を駆動機構46(アクチュエータ54)の駆動力で格納姿勢側に移動することで、ふんわりモードを実現することができる。
また、車両用安全装置40では、ECU64が衝突体Pの衝突速度、大きさを予測し、該予測結果に応じたふんわりモードを選択、実行するため、各種の衝突パターンに応じて適切に衝撃エネルギを吸収することができる。すなわち、車両用安全装置40では、予め想定された衝突パターンで効果的な衝撃エネルギの吸収を行うのではなく、衝突パターンに応じて適切な衝撃エネルギの吸収を果たし、各種の衝突パターンにおいて衝突体Pを保護することができる。また、これにより、衝突体Pの衝突に対し自動車11を保護することもできる。
さらに、車両用安全装置40では、跳ね上げ機構66を備えているため、衝突体Pを確実に衝撃吸収構造42の衝突体受け部44上に誘導して、上記の通り良好に衝撃エネルギを吸収する(衝突体Pを保護する)ことができる。しかも、車両用安全装置40では、跳ね上げ機構66が跳ね上げ棒70の車幅方向における衝突体Pの衝突位置に依らず、衝突体Pを衝突体受け部44の車幅方向中央部に誘導することができるため、衝突体Pの衝突位置に依らず、適切な衝撃エネルギの吸収を行うことができる。また、跳ね上げ機構66は、跳ね上げ棒70の両端側に設けられた左右一対の揺動アーム68を独立して駆動可能とすることで、簡単な構造で、跳ね上げ棒70の車幅方向中央部からオフセットした位置に衝突する衝突体Pを、衝突体受け部44の車幅方向中央部に誘導することができる。なお、この跳ね上げ機構66を、跳ね上げ部28に代えて車両用安全装置10に適用しても良い。
またさらに、車両用安全装置40では、跳ね上げ機構66によって衝突体Pを衝突体受け部44の車幅方向中央部に誘導し得ない場合には、該跳ね上げ機構66によって衝突体Pを自動車11の車幅方向外側に誘導(排除)するので、衝突体Pが衝突体受け部44以外の部位に衝突することが防止される。
(第3の実施形態)
図19には、本発明の第3の実施形態に係る車両用安全装置80が模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、車両用安全装置80は、衝撃吸収構造82が駆動機構46に代えて駆動機構84を備える点で、第2の実施形態に係る車両用安全装置40とは異なる。
衝撃吸収構造82では、衝突体受け部44が前端部(最前の衝突体受け止め部材50の設置位置近傍)において車幅方向に沿った回動軸86廻りに回転自在に軸支されている。以上により、衝突体受け部44は、格納姿勢は車両用安全装置40における格納姿勢に一致し、展開姿勢は、図20に示される如く、回動軸廻りに矢印H方向に回転した位置とされる。この衝撃吸収構造82の駆動機構84は、下側出力リンク62を有せず、上側出力リンク60の先端が対応するサイドフレーム48に対し長手方向にスライド可能に係合している(図示は省略するが、例えばサイドフレーム48の長孔に上側出力リンク60に設けたピンを入り込ませている)。
これにより、駆動機構84では、アクチュエータ54が正転すると、中間リンク58が矢印C方向に回転して衝突体受け部44が展開位置に移動され、展開位置からアクチュエータ54が逆転すると、中間リンク58が矢印D方向に回転して衝突体受け部44が格納位置側(矢印I方向に)に移動する(ふんわりモードを実行する)ようになっている。車両用安全装置80の他の構成は、車両用安全装置40の対応する構成と同じである。したがって、第3に実施形態に係る車両用安全装置80によっても、第2の実施形態に係る車両用安全装置40と同様の作用によって、同様の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
図21には、本発明の第4の実施形態に係る車両用安全装置90の格納状態が模式的な斜視図で示されており、図22には、車両用安全装置90の展開状態が模式的な斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、車両用安全装置90の衝撃吸収構造92が、左右一対のサイドフレーム48間が衝突体受け止め部材50にて架け渡されて構成された衝突体受け部44に代えて、サイドフレーム48間が衝撃吸収部材22にて架け渡されて構成された衝突体受け部94を備える点で、第2の実施形態に係る車両用安全装置40とは異なる。
衝突体受け部94は、衝撃吸収部材22を構成する一対の脚部26の衝突体受け部24側と反対側の端部26Aが対応するサイドフレーム48の上面側に固定されて構成されている。車両用安全装置90の他の構成は、車両用安全装置40の対応する構成と同じである。したがって、第4に実施形態に係る車両用安全装置90によっても、第2の実施形態に係る車両用安全装置40と同様の作用によって、同様の効果を得ることができる。
また、車両用安全装置90では、衝撃吸収構造92を構成する衝撃吸収部材22自体が衝突体Pの変位増加に伴い支持荷重の増加を抑制する変位領域(ふんわり領域)を生成し得るため、衝突体受け部94のより小さい動作ストロークで良好なふんわりモードを実現することができる。例えば、衝撃吸収部材22による支持荷重の増大幅が所定値以上になった場合に、衝突体受け部94の駆動機構46による格納位置側への駆動を開始する制御を行うことができる。
なお、上記した実施形態では、車両用安全装置10、40、80、90が車体前部に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、車体の各位置に本発明の車両用安全装置を適用することができる。
また、上記した第2乃至第4の実施形態では、フィードフォワード制御によってふんわりモードを実現する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、衝突体受け部44等による支持荷重を検出してフィードバック制御を行ったり、このようなフィードバック制御を上記フィードフォワード制御に付加したりする等、各種の制御によってふんわりモードを実現することができる。
さらに、上記した第2乃至第4の実施形態では、4節リンク機能を含む駆動機構46、84により衝突体受け部44、94を駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、モータ等のアクチュエータによって衝突体受け部44を回動軸86廻りに回転駆動するようにしても良い。なお、車両用安全装置40、80、90は、上下2つの出力リンク60、62を有する4節リンクを用い、又は回動軸86から離間した位置を押圧する上側出力リンク60を有する4節リンクを用いるため、モータ等のアクチュエータによって衝突体受け部44を回動軸86廻りに回転駆動する構成と比較して、衝突体Pの支持剛性を得やすい。
同様に、第1の実施形態では、動力で伸縮する2左右のアクチュエータで衝撃吸収構造体12を駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されず、各種のアクチュエータや機構(の組み合わせ)を用いることができることはいうまでもない。
また、上記した第2乃至第4の実施形態では、衝突体受け止め部材50又は衝撃吸収部材22が衝突体Pに対する接触部を構成する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、エンジンフード等の板状の荷重入力部を駆動機構46等で駆動する構成としても良い。
またさらに、上記した各実施形態では、跳ね上げ部28、跳ね上げ機構66を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、これらを備えない構成としても良く、また他の構造の跳ね上げ部28、跳ね上げ機構66を備えて車両用安全装置を構成しても良い。
さらに、上記した各実施形態では、図3に実線にて示される変位−荷重特性すなわち変位増加に伴い支持荷重の増加が抑制されるふんわり領域を実現する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図3に2点鎖線にて示される如く、変位増加に伴い荷重増加率が低減される如き変位−荷重特性でふんわり領域を実現しても良い。