JP2007530484A - パーキンソンプラス症候群の治療及び予防のためのロチゴチンの使用 - Google Patents

パーキンソンプラス症候群の治療及び予防のためのロチゴチンの使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、パーキンソンプラス症候群の予防及び/又は治療のための医薬品としてのロチゴチン、その塩及びプロドラッグの使用に関する。

Description

パーキンソンプラス症候群との概念には、複数の特発性の疾病が包括され、前記疾病はパーキンソン類似性の症状の出現と関連していて、これはしかしながら診断的に、かつ臨床的/病態生理学的にパーキンソン病とは区別される。
前記パーキンソンプラス病(PPS)の疾病複合体には、多系統萎縮(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CBGD)、及びレビ小体型痴呆(DLB)が分類される。
多系統萎縮には、特にシャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)及び線条体黒質変性症(SND)が包含される(Mark et al, Neurol Clin. 2001,19 (3) : 607)。
ピック病、アルツハイマー患者及びALS患者の際の片側パーキソニズム及びパーキンソニズム並びにハンチントン舞踏症のウェストファール変形のPPSへの分類は専門文献において統一されておらず、しかしながらこれらの疾病は本特許出願において、Hobson et al.による区分に相応して、PPSの概念下に包含されるものである(Hobson et al, Can J Neurol Sci. 2003 Mar ; 30Suppl 1 : S2)。
パーキンソンプラス症候群に包含される疾病は、欠失する又は急激に弱まる、L−ドパ又はドパミンアゴニストに対する応答並びに付加的な症状、例えば小脳の又は錐体路の付加的な症状、早期の又は深刻な痴呆並びに初期相における言語障害及び嚥下障害が共通である(Mark 2001, supra ; Gerlach et al, Die Parkinson-Krankheit, Springer, Wien New York, 2003)。
統一されたパーキンソンプラス症候群及びパーキンソン病(特発性パーキンソン症候群、IPSとも呼称される)の様々な診断基準に関する概要は、表1に示した。
表1:パーキンソン類似性の運動障害の統一した疾病症状の分類及び様々な診断的特徴に関する概要
Figure 2007530484
SND:線条体黒質変性症、OPCA:オリーブ橋小脳萎縮症
KBD:皮質基底核変性症、PSP:進行性核上性麻痺、IPS:特発性パーキンソン症候群
(Mark MH, Lumping and splitting the Parkinson Plus syndromes : dementia with Lewy bodies, multiple system atrophy, progressive supranuclear palsy, and cortical-basal ganglionic degeneration. Neurol Clin. 2001 Aug ; 19 (3) : 607-27及びGerlach M, Reichmann H, Riederer P, Die Parkinson-Krankheit, Springer Wien New York, 2003に従って改変)。
IPSとPPSの間の重要な相違基準はコンピューター断層撮影法である。IPSを有する患者はSPECTにおいてこの末期の検査まで、通常のドパミンレセプター数を示す;PPS患者はこれに対して、シナプス前及びシナプス後のドパミン作動性ニューロンのより早期の損失を示し、これはドパミンレセプター密度の明白な減少を伴う。PET分析は、IPS患者における減少したL−ドパ含量及びL−ドパ代謝を証明する(Gerlach et al., 2003, supra)。
PPSの医薬による治療は、このしばしばの欠失する又は良好でないL−ドパの応答に基づいて困難であり、かつ一般的に一定の単独症状の対症療法、例えば低血圧症の療法にある。
ドパミンレセプターアゴニストは、PPSの療法では通常は効果はない(Mark, 2001, supra)。例外的な場合には、単独のドパミンアゴニストを用いた特定の療法過程が報告されているが、これらの効果は物質特異的のようである。例えば、Wenning et al (Lancet, 2004,3, 93)は、6人の患者を伴う試験において、ブロモクリプチンの療法過程を報告したが、これに対してリスリドを用いた対照試験は有効性を示さなかった。大抵のドパミンアゴニストは、ドパミンレセプターに対して作用するだけでなく複合的なレセプター特性を有することが公知であるので(Newman-Tancredi, J Pharmacol Exp Ther 2002, 303, 805)、ブルモクリプチンの作用に対する結果は、前記のレセプター特性の独自性又はその他の、更に特性決定されていない物質特異的な特性に基づいている可能性がある。
パーキンソンプラス症候群は通常は、黒質中のドパミン作動性神経の変性に関連している(Mark, 2001, supra)。成功した療法は従って、効果のある神経保護物質の使用が言及されるものであり、前記物質はドパミン作動性ニューロンの進行性の崩壊を阻害する(Dawson and Dawson VL, Nat Neurosci. 2002 Nov ;5 Suppl : 1058)。
ロチゴチン[(−)−5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトール]は公知技術から、ドパミンアゴニストとして、そして症候性パーキンソン治療薬として公知である。
WO002/089777は例えば、パーキンソン患者でのロチゴチンの経皮投与、及びこれに関連するUPDRS(Unified Parkinson's Disease Rating Scale)スコアの改善を、様々な他の著者と同様に記載する(Metman et al, Clin Neuropharmacol. 2001, 24(3):163 ; Mucke HA, Rotigotin Schwarz Pharma. IDrugs. 2003 Sep ; 6 (9) : 894 ; The Parkinson Study Group, Arch Neurol. 2003 60 (12) :1721)。
前記UPDRSスコアは、パーキンソン病患者の診断又は治療のための重要な手段である(Fahn S, Elton RL, Members of the UPDRS Development Committee (1987) Unified Parkinson's Disease Rating Scale. : Fahn, S, CD Marsden, DB Calne, M Goldstein (eds) Recent Deviopments in Parkinson's Disease. 第II巻. Macmillan Healthcare Information, Florham Park (NJ), 153-163頁,293-304)。もっとも、前記UPDRSスコアは、パーキンソン病の総体的症状に対する作用物質の効果のみを包含する。これは作用物質が、前記の総体的症状に基づくドパミン作動性細胞崩壊に影響を及ぼすかについて直接的な言及を認めるものではない。
アポトーシス過程はしかしながら、パーキンソンプラスの病原論におけるドパミン作動性ニューロンの崩壊の際に特に重要な役割を果たす(Lev et al, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2003 ; 27(2):245 ; Michel et al, Rev Neurol (Paris). 2002 ; 158 Spec no 1 : 24頁)。更に、様々なその他の神経変性経過が、パーキンソニズム及びパーキンソンプラスの発生に決定的な影響を及ぼす(Hirsch et at, Ann N Y Acad Sci. 2003 ; 991 : 214)。
従って、ドパミン作動性細胞の崩壊を停止するか、それどころか反転できる神経保護性物質が所望される(Vila etal, Nat Rev Neurosci. 2003 ; 4 (5) : 365)。MTPTモデルが、必要とされる神経保護性特性に対して予測的であるとみなされる(Dawson, 2002, supra ; Eberhardt O, Schulz JB,Toxicol Lett. 2003,139 (2-3) : 135)。
実験的試験は意外にも、これまでに特発性パーキンソン疾病の対症療法のためのみに使用されたロチゴチンが神経保護特性を有することを示した。ロチゴチンは、急性の、また同様に亜急性のMPTPモデルにおいて、意外にもこの所望の薬理学特性を示した(表2:図1及び2)。この試験結果により、ロチゴチンを用いてアポトーシス過程を妨げることが示唆される。
ロチゴチンは例えば、神経保護作用をマウスのパーキンソンモデル中で示した:ヒトではサルの場合と同様にパーキンソン症状を発生させるMPTPの急性投与後に、一方ではこの急性相において変性するニューロンの数を測定し、そして他方ではこの線条体の機能的な統一性を、この亜急性相において、末端の神経終末中のドパミントランスポーターの密度の測定により確認した。両者の場合に、ロチゴチンが神経保護性に作用したことが示された:一方では中脳中の変性するニューロンの数はロチゴチンの投与により減少し(表2)、他方では線条体のドパミン作動性の神経支配は、ほぼ完全に維持されるか、又は再度回復した(図1及び2)。
表2:FluoroJade染色を用いた、ロチゴチンの一回投与有り又はなしでの急性に変性するニューロンのMPTPマウスモデル中での数を示す
Figure 2007530484
パイロットスタディにおいて、サルに対するロチゴチンの神経保護作用もまた試験した。
この使用したモデルにおいては、前記モデルは霊長類に対するドパミン作動性の細胞崩壊の進行性の経過を反映するが、サル(マカク属)にMPTPの閾下の中毒量を数日にわたり注入した。このパーキンソニズム総体的症状は、前記モデルにおいて約2週間の期間にわたり発達した。この損傷の一定の程度に達するとすぐに、組成物中のロチゴチンの日毎の注入を実行し、前記組成物は連続的な血漿濃度を24時間にわたり生じた。この対照中での運動活性が、一定の程度だけ減少されるとすぐに(約5日後)MPTPの注入を停止した。この動物の挙動を日毎に評価した。前記MPTP適用の開始後6週間でロチゴチンの注入を停止し、この動物を更なる2週間処置なしに観察した。前記動物の運動活性が、処置下でも、またこの後続の洗い出し相においても明らかに改善されることが観察された。
ロチゴチン適用の終了時又は前記洗い出し相の終了時に、動物のそれぞれの群を屠殺し、この基底核の状態を、組織学的にかつ生化学的に試験した。線条体の神経終末の密度は、この未処置の動物に対して明らかに高まっていた。プレ−プロ−エンケファリンの含量、基底核の「非直接経路」における損傷のない架橋のための指標は、前記処置後及び前記洗い出し相後に通常化への傾向を示した。
この結果は、ロチゴチンの神経保護性の可能性を、ドパミン作動性の細胞崩壊の霊長類モデルにおいても証明できることを示した。これにより、抗アポトーシス性の神経保護作用をヒトの場合でも仮定することができる。
ロチゴチンにより従って前記療法に作用物質が提供され、前記作用物質は理想的な様式で、パーキンソンプラス症候群を有する患者におけるドパミン作動性神経の損失の治療及び/又は予防のための医薬品又は予防薬の製造に適し、というのも、神経保護作用の他に、ロチゴチンのドパミン作動性の作用も同様に有利に作用するからである。
純粋に症候性のドパミン作動性のパーキンソン病の治療に限定されていたロチゴチンのこれまでの適用に比較して、これにより、新規の適用領域としてパーキンソンプラス症候群を有する患者の治療が開発され、つまり神経保護作用のないL−ドパ又はドパミンアゴニストを用いた治療に対して応答しないか又は不十分にしか応答しない患者の治療が開発された。
本発明の対象は従って、パーキンソンプラス症候群の予防及び/又は治療のための医薬品としてのロチゴチン、その塩及びプロドラッグの使用であり、その際パーキンソンプラス症候群の概念には、以下の疾病が含まれる:多系統萎縮、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、レビ小体型痴呆、ピック病、アルツハイマー患者及びALS患者の際の片側パーキンソニズム、パーキンソニズム、並びにハンチントン舞踏病のウェストファール変形。ロチゴチンを用いて治療すべき疾病はこの際、有利には多系統萎縮、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、びまん性レビ小体型痴呆のグループから選択されている。
本発明の更なる対象は、パーキンソンプラス症候群を有する患者の、治療的に十分な量のロチゴチン、その塩及び/又はプロドラッグの投与、又は前記ロチゴチン、その塩及び/又はプロドラッグを含有する医薬品の投与による治療方法である。
ロチゴチンの「プロドラッグ」とは、本特許出願において特に、ヒトの体中で、特に血漿中で、又は皮膚又は粘膜を介した侵入の際に、治療的な効果量がロチゴチンへと分解され、反応され、又は代謝される化合物が理解される。
ロチゴチンは以下の式
Figure 2007530484
を有する。
ロチゴチンのプロドラッグとして従って、特にフェノール性ヒドロキシ基の誘導体が考慮され、特にエステル、例えばアリールカルボニルエステル、アルキルカルボニルエステル、又はシクロアルキルカルボニルエステル、特に、それぞれ6つまでの炭素原子を有するアルキルカルボニルエステル及びシクロアルキルカルボニルエステル;カルボナート;カルバマート;アセタール;ケタール;アシルオキシアルキルエーテル;ホスファート;ホスホナート;スルファート;スルホナート;チオカルボニルエステル;オキシチオカルボニルエステル;チオカルバマート;エーテル及びシリルエーテルが考慮される。
「アルキルカルボニルエステル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(O)−アルキルに結合している化合物が含まれる。アルキルカルボニルエステルは形式的に、前記のフェノール性ヒドロキシ基の、アルカン酸との、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸又は吉草酸とのエステル化から生じる。
「シクロアルキルカルボニルエステル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(O)−シクロアルキルに結合している化合物が含まれる。
「アリールカルボニルエステル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(O)−アリールに結合している化合物が含まれる。
「カルボナート」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(O)−O−Rに結合している化合物が含まれる。
「カルバマート」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(O)−NRR1、−C(O)−NH−R1又は−C(O)−NH2に結合している化合物が含まれる。
「アセタール」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−CH(OR)R1に結合している化合物が含まれる。
「ケタール」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(OR)R1R2に結合している化合物が含まれる。
「アシルオキシアルキルエーテル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−CHR−O−C(O)−R1又はCH2−O−C(O)−R1に結合している化合物が含まれる。
「ホスファート」の概念は、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−P(O2H)ORに結合している化合物が含まれる。
「ホスホナート」の概念は、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−P(O2H)Rに結合している化合物が含まれる。
「スルファート」の概念は、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−S(O)2ORに結合している化合物が含まれる。
「スルホナート」の概念は、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−S(O)2Rに結合している化合物が含まれる。
「チオカルボニルエステル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(=S)−Rに結合している化合物が含まれる。
「オキシチオカルボニルエステル」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(=S)−O−Rに結合している化合物が含まれる。
「チオカルバマート」の概念には、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−C(=S)−N−RR1、−C(=S)−NH−R1、又は−C(=S)−NH2に結合している化合物が含まれる。
「エーテル」の概念は、そのつど、ロチゴチンの酸素原子が基−Rに結合している化合物が含まれる。
前記プロドラッグの上述の概念において、R、R1、R2はそのつど、相互に独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールから、有利には、基C1〜6アルキル、C3〜10シクロアルキル、及びフェノールのグループから選択されている。
「アルキル」は、分枝の又は非分枝のアルキル基であってよく、これは有利には1〜10つのC原子、特に有利には1〜6つのC原子を有する。アルキル基は付加的に1つ又は複数の置換基、例えばハロゲンによって置換されていてよい。
「シクロアルキル」は、純粋な環形成性のC原子のみから成るか又は選択的に更なる分枝したC原子を有してよいアルキル基である。有利な鎖長はC原子3〜10つ、特に有利には4〜8つ又は4〜6つである。
「アリール」は有利にはフェニルである。フェニルは場合により付加的に、1つ又は複数の位置で置換されていてよく、例えばアルコキシ、アルキル、ハロゲン又はニトロによって置換されていてよい。
ロチゴチンと、この相応する活性のある前駆体、例えば酸塩化物、酸無水物、カルバモイル塩化物、スルホニル塩化物その他との反応による製造は、当業者に臨床化学の領域で公知であり、かつ関連する専門文献から取り出される。文献部の例は、Bundgaard:Design of Prodrugs,Elsevier,Amsterdam,1985;Higuchi及びStella:Pro-drugs as novel drug delivery systems in American Chemical Society,Washington DC,1975;Sloan:Prodrugs-Topical and Ocular Drug Delivery,Ed:M.Dekker,1992;Roche:Design of biopharmaceutical properties through prodrugs and analogs,Washington,DC,1977である。
ロチゴチン(N−0437)のラセミ体の様々なプロドラッグ並びに相応する製造指示及び試験方法は例えば、Den. Haas et al, Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol 1990,342, 655 ; Den Haas et al,. Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol. 1990,341, 186及びDen Haas et al, J Pharm Pharmacol1991,43. 11に記載されている。
ロチゴチン誘導体のプロドラッグとしての基本的な適性は、このそのつどの化合物を一定の条件下で酵素カクテル、細胞ホモジネート又は酵素含有細胞画分とインキュベーションし、そしてロチゴチンが十分な程度で形成されることを証明することにより決定されてよい。適した酵素混合物は例えば、Gentest社(Woburn,MA,USA)のS9−肝臓調製物中に含有されている(実施例5)。選択的に、新鮮な血液又は血漿でのインキュベーション又は皮下組織ホモジネートのインキュベーションを、前記プロドラッグから作用成分へと肝臓に依存しない代謝を実証するために行ってよい。経皮適用のためには、切除した皮膚に対する浸透のin vitro試験が必要である。
前記適性及び可能性のある有効性のこの最終的な証明を疾病モデル中で、この前記プロドラッグから形成されたロチゴチンの血漿中での測定により行う:in vivoではプロドラッグは、治療的に有効な定常状態のロチゴチン濃度が血漿中で達成されるだけロチゴチンを放出することが望ましく、これは例えば臨床又は前臨床試験で既に既知である。有効な濃度としてこの際、一般的には0.01〜50ng/mL、有利には0.05〜20ng/血漿mL、特に有利には0.1ng〜10ng/血漿mLのロチゴチン濃度が考えられる。
ロチゴチンは、5,6,7,8−テトラヒドロ−6−[プロピル[2−(2−チエニル)エチル]アミノ]−1−ナフトールのS−(−)−エナンチオマーである。これは、医薬品におけるこの(R)−エナンチオマーの割合は、本発明によれば少ないことを意味する。前記(R)−エナンチオマーは有利には、ロチゴチン総量に対して、<10モル%の割合で、特に有利には<2モル%の割合で、とりわけ特に有利には<1モル%の割合で医薬品中に存在する。
ロチゴチン及びそのプロドラッグは、遊離の塩基として、又は生理学的に許容可能な塩の状態で、例えば塩酸塩の状態で医薬品中に存在してよい。
「生理学的に許容可能な塩」は、有機又は無機酸、例えばHClを有するロチゴチンの非毒性の付加塩が含まれる。
ロチゴチン及びそのプロドラッグの投与のために様々な適用方法が使用可能であって、前記適用方法は当業者が、患者の必要、状態、及び年齢に従って、必要な用量及び所望の適用間隔を選択しかつ調節してよい。
ロチゴチンの投与の有利な方法は、経皮投与である。この製剤は基本的に、例えば軟膏、ペースト、スプレー、シート、プラスター、又はイオントフォレシス装置から選択してよい。
有利にはロチゴチンをこの際プラスターの形で前記患者の皮膚に設けてよく、その際この作用物質は有利には、接着性ポリマー、例えば自己付着性の接着性ポリシロキサンからなるマトリックス中で存在する。適した経皮製剤の例は、WO99/49852、WO02/89777、WO02/89778、WO04/58247、WO04/12730、WO04/12721又はWO04/50083に見出される。係る製剤は、更なる一定の血漿濃度の調節を可能にし、これにより一定のドパミン作動性刺激を、この全ての適用間隔にわたり可能にする(WO02/89778;Metman, Clinical Neuropharmacol.24, 2001, 163)。
これに対して、皮下の又は筋肉内のデポー剤形の状態にある医薬品が所望される場合には、ロチゴチンを例えば塩の結晶として、例えば結晶性の塩酸塩として、疎水性の水不含媒体中で懸濁し、かつ注入するか(WO02/15903に記載のとおり)、又は生体分解高分子ベースのマイクロカプセル、マイクロ粒子、又はインプラントの形(WO02/38646に記載のとおり)で投与してもよい。
ロチゴチン及びそのプロドラッグの投与のその他に考えうる形は、経粘膜用製剤、例えば舌下スプレー又は点鼻薬、直腸用製剤、又は肺投与のためのエアゾールである。
ロチゴチンの適した用量は、0.05〜約50mg/日であり、その際有利には一日量は0.1〜40mg/日、特に有利には0.2〜20mg/日が投与される。この際、前記用量を緩やかに増量してよく、即ち、この処置を場合により少ない用量で開始し、これを次いで維持量にまで上昇させてよい。
当業者には、前記投薬間隔を適用した量、適用方法、及び患者の一日の必要に依存して変えてよいことは明らかである。従って経皮適用形、例えば一日一回、三日に一回、又は七日に一回の投与のための経皮適用形が考慮されてよく、その一方で皮下又は筋肉内のデポー注入を例えば、一週間リズム、二週間リズム、又は四週間リズムで可能にしてよい。
神経保護性の製剤中にはロチゴチンの他にまだその他の作用物質が存在してよく、これは前記のドパミン作動性細胞の損失の進行を妨げる。
このための例は、抗アポトーシス的に作用する物質(ミノサイクリン、FK−506、サイクロスポリンA、zVAD)、並びにニュートロフィン、例えばグリア細胞由来の神経栄養因子(GDNF)である。
組み合わせ製剤中では、前記のそのつど使用される作用物質の放出は更に、同時に、しかしながら又は逐次的に行われてよい。逐次放出が例えば達成されてよく、製剤、例えば経口タブレット(異なる医薬的活性成分のために相違する放出特性を有する2つの異なる層を有する)によって逐次放出が達成されてよい。ロチゴチン組成物を含有する本発明による組み合わせ製剤はまた、いわゆる「パーツキット(Kit of parts)」として入手されていてもよく、前記キット中では、投与すべき抗アポトーシス性作用物質が相互に分かれた組成物中に存在し、これを次いで同時に又は時間的に段階的に投与する。
当業者に明らかであるのは、本発明の文脈において様々な製剤及び適用様式が考慮でき、これは全て本発明の対象であることである。
実施例:
1.実施例:ロチゴチンプラスター
1.8gのロチゴチン(遊離塩基)を、2.4gのエタノール中に溶解させ、0.4gのKollidon 90F(1gのエタノール中に溶解)に添加した。この混合物を、シリコーンポリマー(8.9gのBioPSA 7−4201+8.9gのBIO−PSA 7−4301[Dow Corning])のヘプタン中の74%溶液に添加した。石油エーテル2.65gの添加の後に、この混合物を700rpmで1時間撹拌し、均質な分散液を得た。ポリエステル上にラミネートした後に、50℃で乾燥させた。このプラスター質量は最終的に50g/cm2であった。
2.実施例:ロチゴチンデポー懸濁液
(a) 1411.2gのMiglyol 812をDuranフラスコ中に量り取った。14.4gのImwitor 312を、前記Miglyolに添加し、引き続き30分間撹拌下で80℃に加熱した。この澄んだ溶液を室温にまで冷却し、濾過した。
(b) (a)で製造した溶液1188gをガラスの実験室反応器中に移し、ロチゴチンHCl12gを添加し、10分間ウルトラチュラックス(Ultraturrax)を用いて10000rpmで窒素存在下で均質化した。この懸濁液を、ウルトラチュラックスが運転する際に(2000rpm)、茶色のガラスフラスコ中にデカンテーションした。
3.実施例:亜急性MPTPモデル
中毒のためにマウスに80mg/kgの神経毒1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(MPTP)を投与し(20mg/kgの部分を2時間の間隔で、図1及び2の群3〜6)、これは約50〜60%の、黒質のニューロンの変性を生じた(最大の変性、図1及び2の群3)。ロチゴチンを日毎にそれぞれ0.3、1、又は3mg/kgの用量で7日間にわたり、いわゆる「徐放性組成物」(実施例2参照)として投与した(図1及び2の群4〜6)。MPTP処置した動物の群(群3)は、ロチゴチン−ビヒクル−溶液を投与され(実施例2、ロチゴチンHClなしを参照)、そして参照として用いた。対照として群1、2、及び7を用い、その際群1は処置を全く経ず、群2はMPTP及びロチゴチンのためのビヒクル溶液で処置し、そして群7はロチゴチンのみで処置した。8日目にこれらの動物を屠殺し、この脳を取り出し、かつ凍結させた。凍結切片を、リン酸緩衝液、pH7.4中の100ppmの[125I]PE2l([125I]−(E)−N(3−ヨードプロパ−2−エニル)−2β−カルボキシメチル−3β−(4’−メチルフェニル)−ノルトルパン)でインキュベーションし、線条体でまだなお存在するドパミントランスポーターの量を標識し、これを機能性の神経終末の量の指標として用いた。ロチゴチンは、前記ニューロンの生残及びその神経終末を用量依存性に改善した。これは前記物質の神経保護特性に対する明らかな示唆である(図1及び2)。
4.実施例:急性のMPTPモデル(アポトーシスを含む)
中毒のためにマウスに80mg/kgの神経毒1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロ−ピリジン(MPTP)を投与し(20mg/kgの部分を2時間の間隔で)、これは約50〜60%の、黒質のニューロンの変性を生じた。約16時間前にロチゴチンをそれぞれ0.3、1、又は3mg/kgの用量でいわゆる「徐放性組成物」(実施例2参照)として投与した。拡散潜在性及び吸収潜在性は、MPTPを与えた場合にロチゴチンが最適に使用可能であることを表す。ビヒクル溶液(参照、実施例2、ロチゴチンHClなし)を与えただけの動物を対照として用いた。24時間後に前記動物を屠殺し、この脳を固定処理した。この脳切片を、変性細胞の同定のためのFluoroJadeを用いて染色した。チロシンヒドロキシラーゼの免疫組織化学的な標識は、ドパミン作動性ニューロンの同定に用いた。前記チロシンヒドロキシラーゼの染色は、処置及び未処置動物の間で差異を生じなかった;FluoroJadeでの染色は、多数の変性ニューロンを示した;前記ニューロンはしかしながら、まだ完全には除去されていなかった(これは、前記チロシンヒドロキシラーゼ染色の欠失する差異を説明する);これは、この細胞の崩壊がアポトーシスにより進行し、測定時間時にはまだ完結していないことを示唆する(このアポトーシス性の細胞は完全には溶解されていないか又は貪食されていない)。前記の変性ニューロンの数は、ロチゴチンの適用後約50%だけ少なく、これは前記物質の神経保護特性を更に裏付ける(表2)。
5.実施例:プロドラッグの作用物質へのin vitro変換
ヒト、サル、イヌ、ラット又はマウスの肝臓細胞ホモジネートから分画遠心法により、このミクロソーム分画を得、これは本質的な代謝酵素を含有する;代替的に、この細胞質分画をも得てよい。この細胞成分分画を緩衝液中で懸濁し、これにより定義されたタンパク質含量を有する溶液を得た。1μMのこの試験すべきプロドラッグの添加後に、37℃で60分間のインキュベーションを行った。引き続きロチゴチンを、HPLC/UVを用いるか又はHPLC/MSも用いて定量し、かつ使用した量と関連付けた。より詳細な分析に関しては、濃度系列又は時系列を調べた。
図1は、線条体中に残存する神経終末の密度のための指標としてドパミントランスポーターの密度に関して測定したロチゴチンの神経保護作用のための代表的な例 図2は、様々な群における線条体の背部及び腹部におけるドパミントランスポーター(DAT)結合を示す図である。

Claims (7)

  1. パーキンソンプラス症候群の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のためのロチゴチン、その塩及びプロドラッグの使用。
  2. 前記パーキンソンプラス症候群は、多系統萎縮、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、及びびまん性レビ小体型痴呆のグループから選択されている、請求項1記載の使用。
  3. 前記パーキンソンプラス症候群は、L−ドパの欠失する応答により特徴付けられている、請求項1又は2記載の使用。
  4. 非経口的、経皮的又は経粘膜的投与のための医薬品が予定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
  5. ロチゴチンが、一日当たり0.5〜50mgの用量で投与される、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
  6. 前記プロドラッグが、ロチゴチンのフェノール性ヒドロキシ基のエーテル、エステル、チオカルボニルエステル、カルバマート、チオカルバマート、カルボナート、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、オキシチオカルボニルエステル、ホスファート、ホスホナート、スルファート、スルホナート、又はシリルエーテルである、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
  7. 前記プロドラッグが、6つまでの炭素原子を有するアルキルカルボニルエステルである、請求項6記載の使用。
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