JP2007529631A - 金属酸化物の電気化学的還元 - Google Patents

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Abstract

固体状態の金属酸化物原料の電気化学的還元方法が開示される。この方法は、電解質と電解質中の金属酸化物粉末を攪拌するステップ、電解質と接触しているカソードとアノードとの間に電圧をかけるステップ、及び金属酸化物を電気化学的に還元するステップを含む。

Description

本発明は金属酸化物の電気化学的還元に関する。
本発明は特に、低酸素濃度(典型的には0.2重量%以下)を有する金属を製造するための、粉末状の金属酸化物の電気化学的還元に関する。
本発明は、本出願人によって行なわれている、金属酸化物の電気化学的還元についての進行中の研究プロジェクトの途中でなされた。この研究プロジェクトは、酸化チタン、より詳細にはチタニア(TiO)の還元に焦点を合わせていた。
研究プロジェクトの途中で、本出願人は、溶融したCaCl系電解質のプール、グラファイトからなるアノード、及びカソード(様々なもの)を含む電解槽中でのチタニアの還元を調べる一連の実験を行なった。
実験において使用されたCaCl系電解質は市販のCaCl、すなわち塩化カルシウム二水和物であって、加熱により分解し極少量のCaOを生成した。
本出願人は電解槽を、CaOの分解電圧を超え、CaClの分解電圧未満で運転した。
本出願人は、これらの電圧でこの槽がチタニアを、低酸素濃度(すなわち0.2wt%未満の濃度)のチタンに電気化学的に還元することを見出した。
本出願人は、電解槽を様々に異なる運転上の構成と条件の下で運転した。
本発明は、顔料グレードのチタニアのサブミクロン粉末についての2つの実験を通じて、予想外になされた。この粉末を、電解槽中において、CaOを含む溶融したCaCl系電解質と混合した。この電解槽は、電解質/粉末の浴と接触する、アノード及びカソードを備える。本出願人は、チタニア粉末が溶融電解質浴において成功裡に還元されることを、予想外に見出した。本出願人はまた、実験では、槽中に留まるカーボンの生成が非常に少ないことを、予想外に見出した−これは、炭素汚染が相当になり得ることを考えれば、重要となり得る知見である。本出願人はこれらの結果を得られると予想していなかった。
実験の予想外の成功により、これまで可能であると考えられていたよりはるかに簡単に、チタニアなどの金属酸化物から金属を工業的に生産する可能性が開かれる。
本発明によれば、電解質と電解質中の金属酸化物粉末とを攪拌するステップ、(a)電解質と接触しているカソードと(b)アノードとの間に電圧をかけるステップ、及び金属酸化物を電気化学的に還元するステップを含む、固体状態の金属酸化物原料を電気化学的に還元する方法が提供される。
撹拌が、粉末粒子とカソードとの間の断続的な接触を引き起こし、この接触は、チタニア粉末の還元を可能にし、かつ、未還元又は部分還元粉末の低減に悪影響を与え得る粉末粒子同士の焼結を制限するのに十分であるものであると、本出願人は推測する。
好ましくは、粉末の粒径は、電解質と粉末が、粉末粒子が電解質中に懸濁したスラリー、すなわち2相混合物を生成するように選択される。
電解質及び金属酸化物粉末は適切な任意の手段によって攪拌してもよい。
例として、電解質及び金属酸化物粉末を物理的手段、例えばスターラーにより攪拌してもよい。
別法として、或いは追加として、電解質及び金属酸化物粉末をガスの注入によって攪拌してもよい。
本出願人は、前記の2つの実験において、ガスの注入は、実験中に生成したカーボン汚染物質を浴の表面に、チタンを浴の底に分離できることを見出した。これは、本発明の方法においてカーボンとチタンを分離するという点で重要な特徴である。
金属酸化物粉末はどのような適切な金属酸化物であってもよい。上記のように、本発明は、酸化チタン粒子(特にチタニア粒子)の固相還元に特に適用される。
好ましくは、電解質は、CaOを含むCaCl系電解質である。
CaOを含むCaCl系電解質の場合には、好ましくは、粉末はサブミクロンの大きさである。
CaOを含むCaCl系電解質の場合には、好ましくは、本発明の方法は、CaOの分解電圧を超え、CaClの分解電圧より小さい電圧をアノードとカソードとの間にかけることを含む。
本発明の方法はバッチ方式、半連続方式、及び連続方式で実施できる。
本発明の方法は、棒又は板又はシートなどの部材を、還元された粉末がその部材の上に析出できるように、電解質に接触させて配置することによって実施できる。
この配置構成では、本発明の方法は、その部材を電解質から取り出し、堆積した還元粉末を部材から剥がすことを含む。
本発明の方法は、電解質と金属酸化物粉末の浴、アノード、及びカソードを含む槽において実施できる。
アノードはどのような適切な材料から作製してもよい。アノードは消耗又は非消耗アノードであってもよい。通常、アノードは消耗アノードである。
カソードはどのような適切な材料から作製してもよい。
本発明の方法が多段階法として実施されてもよく、電解質と部分的に還元された粉末及び未還元粉末とが、スラリー状で、第1段階から、多段階法における1つ又は2つ以上の次の段階に送られ、各段階において還元されてもよい。
多段階法は、スラリーを排出し再び槽に戻して、前記の槽において実施できる。
多段階法は、一連の前記の槽において実施してもよい。
本発明の方法は、前記の槽において実施されることに限定されない。
例として、本発明の方法は、入口と出口との間でスラリーの流れの経路を定め、その経路の長さ方向に沿って1つ又は2つ以上のアノードと1つ又は2つ以上のカソードを含む反応器(例えばパイプ反応器)の中に、電解質と金属酸化物とのスラリーを通すことによって、連続方式で実施してもよい。
この反応器は、経路に沿ってスラリーが乱流パターンで流れるようにする手段(例えば、経路内のバッフルなど)によってスラリーを攪拌することを含み得る。
別法として、或いは追加として、本発明の方法は、スラリーを反応器に乱流として導入することによってスラリーを攪拌することを含み得る。
連続運転する場合、好ましくは、本発明の方法は、経路の出口の下流で還元された粉末を電解質から分離すること、及び必要に応じて還元された粉末を処理することを含む。
本発明によれば、金属酸化物粉末(例えば、酸化チタン粉末)を電気化学的に還元するための装置もまた提供され、その装置は、(a)溶融電解質と電解質中の金属酸化物粒子の浴を収容する手段、(b)電解質と接触しているカソード、(c)アノード、(d)アノードとカソードとの間に電圧をかける手段、及び(e)電解質を攪拌する手段、を含む。
前記装置を、バッチ方式、半連続方式、又は連続方式での運転に適合させることができる。
好ましくは、アノードとカソードとの間に電圧をかける手段は、(a)電源と、(b)電源、アノード、及びカソードを電気的に接続する電気回路を含む。
(a)溶融電解質と電解質中の金属酸化物粒子の浴を収容する手段、(b)電解質と接触しているカソード、(c)アノード、(d)アノードとカソードとの間に電圧をかける手段からなる基本的な槽構成は、本出願人の他の特許群(例えば、WO2003/016594、WO2003/076690、WO2004/035873及びWO2004/053201)に例として記載されている通りである。
上記のように、本発明は、CaOを含む溶融したCaCl系電解質、アノード及びカソードを含む電解槽において顔料グレードのチタニアのサブミクロン粉末が還元された2つの実験において予想外になされた。
第1の実験では、アノード及びカソードを槽の中まで延びるように配置構成し、カソードは槽の大きさに比べて比較的大きな表面積をもっていた。チタニア粉末は粉末と電解質の全重量に対して10重量%であった。チタニア粉末はサブミクロンの大きさであった。槽を3Vの一定電圧で7時間運転した。実験の間、槽は8Aまでの電流を達成した。
第1の実験の成功の後で行なわれた第2の実験では、槽の壁面がカソードをなし、アノードを槽内にまで延びるように配置を構成した。この実験では、固体の投入は5%であった。言い換えると、チタニア粉末が粉末と電解質の全量に対して5重量%であった。チタニア粉末はサブミクロンの大きさであった。槽を3Vの一定電圧で7時間運転した。実験の間、槽は30Aまでの電流を達成した。
両実験において、
・実験の進行中、浴内で粉末が確実に動くように、不活性ガスの注入により浴を攪拌した;
・3Vの運転電圧は電解質中のCaOの分解電圧を超え、CaClの分解電圧より小さい;また
・カソード上に還元粉末が蓄積したが、反応速度を制限するか或いは他の点で実験に悪影響を与える、還元粉末の明らかな焼結は全く無かった。
第1の実験の終わりまでに、チタニア粉末のいくつかの区域が50%まで還元された。
第2の実験の終わりまでに、チタニア粉末は95%まで還元された。
第2の実験の終わりに、本出願人は槽を室温まで冷まし、次いで、槽を分割した。
本出願人は、槽が、槽の底面のチタン金属粉末層と、この金属層上の実質的に「清浄な」電解質層とを含んでいることを見出した。
本出願人はまた、槽の側面に炭化チタンの層があることも見出した。
本発明の精神と範囲から逸脱することなく、上記の本発明に多くの修正をなし得る。

Claims (17)

  1. 電解質と電解質中の金属酸化物粉末とを攪拌するステップ、
    (a)電解質と接触しているカソードと(b)アノードと、の間に電圧をかけるステップ、及び、
    金属酸化物を電気化学的に還元するステップ
    を含む、固体状態の金属酸化物原料を電気化学的に還元する方法。
  2. チタニア粉末の還元を可能にし、かつ、未還元又は部分還元粉末の低減に悪影響を与え得る粉末粒子同士の焼結を制限するのに十分であるように、粉末粒子とカソードとの間の断続的な接触を引き起こすのに必要とされる程度に、電解質及び金属酸化物粉末を攪拌することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 電解質と粉末が、電解質中に粉末粒子が懸濁しているスラリー、すなわち2相混合物を生成するように、粉末の粒径を選択することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 電解質と金属酸化物粉末を、物理的手段(例えばスターラー)によって及び/又はガスの注入によって、攪拌することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  5. 粉末がサブミクロンの大きさである前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  6. 電解質が、CaOを含むCaCl系電解質である前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  7. アノードとカソードとの間に、CaOの分解電圧を超え、CaClの分解電圧より小さい電圧をかけることを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 棒又は板又はシートなどの部材を、還元された粉末がその部材の上に析出できるように、電解質に接触させて配置することを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  9. 部材を電解質から取り出し、堆積した還元粉末を部材から剥がすことを含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記方法が多段階法であり、
    電解質と部分的に還元された粉末及び未還元粉末とが、スラリー状で、第1段階から、多段階法における1つ又は2つ以上の次の段階に送られ、
    各段階において還元される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記方法は、反応器(例えばパイプ反応器)中を、電解質と金属酸化物とのスラリーを通すことを含む連続法であり、
    前記反応器は、入口と出口との間でスラリーの流れの経路を定めるものであり、その経路の長さ方向に沿って1つ又は2つ以上のアノードと1つ又は2つ以上のカソードを含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
  12. 経路に沿ってスラリーが乱流パターンで流れるようにする、経路中の手段(例えば、経路内のバッフルなど)によってスラリーを攪拌することを含む、請求項11に記載の方法。
  13. スラリーを反応器内に乱流として導入することによってスラリーを攪拌することを含む、請求項11又は12に記載の方法。
  14. 連続運転する場合に、前記経路の出口の下流で電解質から還元粉末を分離すること、及び必要に応じて還元粉末を処理することを含む、請求項11から13までのいずれか一項に記載の方法。
  15. 金属酸化物粒子が酸化チタン粒子(例えばチタニア粒子)である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
  16. (a)溶融電解質と電解質中の金属酸化物粒子の浴を収容する手段、
    (b)電解質と接触しているカソード、
    (c)アノード、
    (d)アノードとカソードとの間に電圧をかける手段、及び
    (e)電解質を攪拌する手段、
    を含む、金属酸化物粉末を電気化学的に還元するための装置。
  17. アノードとカソードとの間に電圧をかける手段が、
    (a)電源と、
    (b)電源、アノード、及びカソードを電気的に接続する電気回路と、
    を含む請求項16に記載の装置。
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