JP2007526474A - 電気化学センサー - Google Patents

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Abstract

【課題】敵対的環境または廃液あるいは汚水のような「汚濁」媒体中、さらに、室温以上の温度のような、様々な条件下で、正確にpHを測定する能力を有する、電気化学センサーを開発する。
【解決手段】ボルタメトリーpHセンサーで使用するための電極は、基板、例えばグラファイト電極、上に固定化した、化学感受性レドックス活性化合物、特に、4-ニトロベンジルアミン、1,2-ナフトキノンおよびフェナントレンキノンで修飾した、炭素粉末、特に炭素ナノチューブ、を含む。
【選択図】図13

Description

本発明は、非ダウンホール環境を含む、様々な環境で使用するための電気化学センサーに関する。例えば、センサーは、廃水およびその他の排気流ような、「汚濁」環境で物質のpHを測定するために使用することができる。また、本発明は、例えば、電気化学センサーの電極構成部で用いることのできる、様々な物質に関する。
米国特許第5,223,117号は、電気化学センサー内で用いられる自己組織化ミクロ電極に関する。センサー内の作用電極であるミクロ電極を、標準分子および指示分子の単層被覆で、同一電極上に存在する化学感受性を有するレドックス物質および化学感受性を有さないレドックス物質の両方で修飾する。ミクロ電極は、対極より充分小さい必要があり、例えば、対極面積は、作用電極面積の少なくとも102から103倍であるに違いない。内部標準を有するそのような小さい作用電極の利点は、センサーが最小で侵入でき、それ故、生体医療センシング(biomedical sensing)に利用できることである。
英国特許明細書第2 391 314号は、流体内の硫化水素またはチオールの量を測定するための電気化学センサーについて記載している。センサーは、硫化水素またはチオールと一緒になって、レドックス反応を起こす、前駆体および反応溶液を含む。該レドックス反応によって作り出される電流は、硫化水素またはチオールの濃度に依存する。本文書に記載されたセンサーは、ダウンホールでの用途に用いるセンサー、即ち、堀削作業中にボアホールにとどくセンサーである。ボアホール内に届く必要がある器具は大きさに限界があるため、センサーは、比較的小さい必要がある。
カーボンベースの電極素材は、何十年にわたって用いられてきた。通常用いられる炭素の主な形は、ガラス状カーボン、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、カーボンペーストおよびカーボンエポキシ電極である。炭素は、比較的、化学的に不活性であるが、高い表面活性および広い操作性のポテンシャルウィンドウ(約−1.0Vから+1.0V:水溶液中の飽和カロメル電極)を有するので、魅力的な電極素材である。
しかしながら、敵対的環境または廃液あるいは汚水のような「汚濁」媒体中で、正確な結果を提供できる、より丈夫な試薬不要センサーが必要である。さらに、室温以上の温度のような、様々な条件下で用いられるセンサーが必要である。高温で正確にpHを測定する能力を有するセンサーの開発に再び興味が持たれ始めている。本発明は、これらの結果を記述することを目標としている。
発明の概要
本発明に従って、電気化学センサーに用いるための電極が提供され、該電極は化学感受性を有するレドックス活性化合物で修飾された炭素を含み、該レドックス活性化合物は、アントラキノン、フェナントレンキノンまたはN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(N,N’-diphenyl-p-phenylenediamine)(DPPD)ではない。
また、本発明は、
化学感受性のレドックス素材を含む作用電極、および
対極
を含み、該作用電極の表面積:対極の表面積の比が1:10から10:1である、
pHセンサーを提供する。
さらに、本発明は、
化学感受性レドックス素材を含む作用電極、および
対極電極
を含み、該作用電極の面積が500μm2から0.1m2である、
pHセンサーを提供する。
これらのpHセンサーは、測定される液体中の汚濁物によって汚されたり妨げられたり、されにくいと考えられる点で、先行技術のセンサーより優れており、従って、該センサーは取り替えが必要になるまでの寿命がより長い。
本発明の電極は、電気化学センサーに、特に、pHセンサーに使用してよい。本発明の電極および本発明のpHセンサーは、好ましくは、非-ダウンホール環境での使用に適する。
また、本発明は、電気化学センサーに用いるための電極の製造方法を提供し、該方法は、化学感受性のレドックス活性素材で炭素を修飾することを含むが、但し、化学感受性レドックス活性素材は、アントラキノン、フェナントレンキノンまたはN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)ではない。
最終的に、本発明は、さらに、インサイチュで電極を製造する方法を提供し、該方法は、基板の表面に化学感受性レドックス活性素材で修飾された炭素を適用することを含み、該化学感受性レドックス活性素材は、サイクリックボルタメトリーを行った場合、不可逆化学反応を起こす。
発明の好ましい第一態様の詳細な説明
本発明の好ましい第一態様のpHセンサーおよび電極は、好ましくは、非ダウンホール環境内で用いられる。用語“非ダウンホール”(non-downhole)は、センサーがボアホール下の環境、またはその他の地下水量の液体以外の環境内で用いられることを意味する。適当な非ダウンホールでの用途には、環境、科学、汚水、工業および廃水でのpH測定が含まれる。用語「環境の」(”environmental”)は、川および海での様な試験を含む。用語「化学的な」(”chemical”)は、研究室または工場内での化学操作中の試験を含む。用語「工業的な」(”industrial”)は、工業過程からの廃棄物を含む。用語「廃液」は、液体廃棄物の排出物、例えば下水、を含む。廃液は、ほとんど、または完全に水を含んでいなくて良い。廃水は家庭内所有物および工業用所有物からの液体廃物を含む。廃水は水が主である。
以下の記載に於いて、用語「化学的に不可逆な挙動」(chemically irreversible behaviour)は、関係のある化合物が不可逆化学反応によって反応し、別の種を形成することを意味する。化合物および該化合物が変化する種は、電気化学的プロフィールが異なるであろう。用語「化学的に可逆な挙動」は、本発明のセンサーに用いた場合、可逆反応を起こし、従って、元の化合物に戻れない別の種には変化しないことを意味する。
用語「可逆的電気化学」は、句「電気化学的に可逆な挙動」と置き換えて用いられる。これは、化合物が、時間後にもその電気化学的プロフィールを変えることなく、繰り返し電子を獲得したり失ったりできることを意味している。
本発明の個々の構成要素および態様は、以下に、より詳細に記載される。
炭素
本発明で使用される炭素は、化学感受性レドックス活性素材によって修飾できる必要がある。好ましくは、炭素は炭素粉末の形である。特に、炭素は、グラファイト粒子の形であることが好ましく、その平均直径は、0.1から50μm、好ましくは1から30μmである。代わりに、炭素は、カーボンナノチューブの形であっても良い。これらは、実質上、グラファイトの「巻き上げ」シートである。通常、これらは、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes)(MWCNTs)のいずれかである。
化学感受性レドックス活性素材
化学感受性レドックス活性素材は、電子の放出および獲得を行う能力を有する、任意の有機素材であって良い。それは、好ましくは、固相素材である。基板、例えばガラス状カーボンまたは底面熱分解グラファイト(bppg)電極上に固定した場合、それは、酸化/還元時に陽子および電子の放出/獲得を同時に行う。
該素材は、検出されたり測定されたりするべき種に依存する電気化学応答を示さなくてはならないため、それは、「化学感受性」であると記載される。例えば、pHセンサー内で使用するため、化学感受性レドックス活性素材は、水素イオン濃度の変化に感受性である、電気化学応答を有する必要がある。
該素材は、1つの化合物のみを含む必要はなく、代わりに、異なる化学感受性レドックス活性素材化合物の混合物を含むこともできる。
好ましい化学感受性レドックス活性素材は、a)化学的かつ電気化学的に可逆的な挙動を示す化合物、およびb)電気化学的に可逆的な挙動を導く化学的に不可逆な挙動を示す化合物、を含む該素材である。後者の範疇で、好ましい素材には、b.1)ポリマーを形成する化合物、およびb.2)ニトロ基を含む化合物が含まれる。これらのグループのそれぞれについて、順次、考察する。
a)化学的および電気化学的に可逆な挙動を示す化合物を含むレドックス活性素材
これらレドックス活性素材内の化合物は、それらがサイクリックボルタメトリーおよび方形波(square wave)ボルタメトリーの両方に供された場合、安定な可逆的ボルタメトリーピークを作り出す。それらをネルンス挙動(Nernstian behaviour)という。該化合物を組み込んだセンサーをpH測定に用いようとする場合、個々の化合物についての、pHに対するピーク電位のプロットは、直線であり、以下の式:
Figure 2007526474
(式中、Epeak はピーク電位/Vであり、E0 formal/Vは式量電位であり、Rは(普遍)気体定数/J-1mol-1であり、Tは温度/Kであり、Fはファラデー定数/Cmol-1であり、nおよびmは、それぞれ、移動した電子および陽子の数である):
に従って、ネルンスト応答を生ずる。以下の例では、nおよびmは両方共、スキーム1に提案したように、2に等しいと考えられる。これらの化合物のピーク電位をモニターすることによって、pHを測定できる。
スキームI
DPA、PAQおよびアントラセンのレドックス経路(案)
Figure 2007526474
化学的および電気化学的に可逆的な挙動を示す適当な化合物には、キノンおよびアントラセンが含まれる。pHセンサーにおいて有効になる化合物は、可逆的であり、かつ陽子の吸収および遊離を含むレドックス反応を受けうる。当業者は、本発明のこの実施態様に適当であろうその他の化合物を決定できる。
b)電気化学的に可逆な挙動を導く、化学的に不可逆な挙動を示す化合物を含むレドックス活性素材
該レドックス活性素材中の化合物は、サイクリックボルタメトリーを行った場合、不可逆化学反応を受ける。この不可逆化学反応の結果として後に形成された物質(例えば、別の化合物または反応化合物のポリマー)は、上記段落a)中に記載された化合物に類似した電気化学的に可逆な挙動を示す。これらの物質のピーク電位は、測定される種(目標分析物)に対してネルンスト応答を示し、それ故、これらの物質を、pHセンサーのような電気化学センサーに用いることができる。
このグループの化合物を、以下に示す、多数の部分集合に分けることができる。
b.1)ポリマーを形成するもの
本発明の態様に有用な化合物はすべて、不可逆化学反応を経て、ポリマーを形成する。得られたポリマーは、サイクリックボルタメトリーを行った場合、測定される種に対して直線のネルンスト応答を示す、ピーク電位を有する。本発明の態様での使用に適当な化合物には、ジフェニルアミンおよびフェノチアジン染料が含まれるが、ジフェニルアミンがもっとも好ましい。好ましいフェノチアジン染料には、トルイジンブルー、メチレンブルー、およびチオニンが含まれる。これらの中では、メチレンブルーおよびチオニンが好ましい。
先行技術において、現存する電流測定pHセンサーの大部分は、薄いフィルムおよびメンブレンのpHにより切り替えできる(pH-switchable)選択透過性に基づいている。そのような伝導性ポリマーフィルムのファミリーの1つは、電解酸化法によって形成されたポリアニリン様構造をベースにしている。ジフェニルアミンの重合は、大部分の溶媒に溶解性の乏しいポリジフェニルアミンのための化学的手段を通して、溶液中よりむしろ非水溶媒中で電気化学的に行われた。先行技術中での議論の多くは、金または白金電極表面上に、非水溶媒中でジフェニルアミンからポリマーを形成するカップリングメカニズムに集中してきた。
しかしながら、本発明は、炭素を修飾するために化合物を用いることのできるという点で、先行技術とは異なる。例えば、それらは化合物を炭素粒子表面上に物理吸着することができる。これが起こるとき、化合物は、水溶液と接触する間、酸化電解重合反応を受けて、ポリマーを形成し、該ポリマーはそれ自体、その場所のpH変化に感受性を持つ。これを特定の化合物に適用するために、ジフェニルアミンを用いて炭素を修飾する場合、化合物は、水溶液と接触する間、酸化電解重合を受けて、ポリマーを形成することができ、それ自身は局所性pHの変化を感知することにおいて有用である。
一般的に、本発明の態様による化合物の挙動は、以下の通りである。サイクリックボルタメトリーを行った場合、レドックス活性素材の元の形に相当する、最初のピークが認められる。このピークは、徐々に消滅するが、これは、最終的に、炭素表面上のすべてのレドックス活性素材が重合されることによる。その後、レドックス活性素材の重合形に相当する、新たな可逆系が作り出される。この系に相当するピークは、繰り返し循環時に成長し、最終的に安定化する。
不可逆ピークおよび可逆ピークの両方のピーク電位をモニターすることによって、pHをモニターできる。不可逆系および可逆系の両方のpHに対するピーク電位のプロットの勾配の分析は、直線ネルンスト様式へのシフトを示す。
即ち、これらのレドックス活性素材は、広範囲にわたる強力な無試薬pHセンサーを提供するのみならず、使用位置で電極を製造する技術をも提供する。
b.2)ニトロ基を含む化合物
そのようなレドックス活性素材は、通常、1以上の炭素環および/または複素環を含む芳香族化合物であり、少なくとも1個のニトロ基によって置換されている。適当な炭素環式化合物は、フェニル、アントラセン、フルオランテン等を含む。適当な複素環式化合物は、1以上のヘテロ原子によって置換された環内に、1以上の炭素原子を有する炭素環式化合物を含む。ヘテロ原子は、好ましくは、窒素、酸素および硫黄から選択される。好ましくは、複素環式化合物は、環内に、1から5のヘテロ原子、好ましくは1から3のヘテロ原子を含む。好ましくは、化合物は、本発明の電気化学センサーによって測定される予定の種への応答を覆い隠すような、その他のいかなる競争化学変換(competing chemical transformation)をも受けるべきではない。
好ましい化合物には、ニトロアントラセン、特にアントラセン分子の9位が窒素原子によって置換されている;ニトロチリセン、特にニトロ基が6位にある;およびニトロフルオランテン、特にニトロ基が3位に存在する:が含まれる。用いうるその他の化合物には、ファストブラックK(fast black K)(FBK)も含まれる。
芳香族化合物の電気化学還元は、水性媒体および非水性媒体の両媒体内の、さらにニトロ基を含む油のミクロ小滴、電解水溶液および電極の間の三相の境界での、複雑なメカニズム経路(complex mechanistic pathway)に従う。ニトロ基還元の正確なメカニズムについての考察が行われ、溶液のpHに依存する異なる様々な経路が示唆される。しかしながら、現在では、一般的には、以下のスキーム2に示した経路が、認められている。このスキームは、化合物例としてニトロベンゼンを用いているが、その他のニトロ含有化合物についての一般的スキームも、同じである。
スキーム2
ここではニトロベンゼンを例として示したアリールニトロ部の
電気化学還元の一般的メカニズム
Figure 2007526474
このメカニズムで、ニトロ基は、6電子、6陽子還元を受けて、相当するアリールアミンを形成するが、ニトロソ中間体を経由してアリールヒドロキシアミンまでの4電子、4陽子還元;およびアリールアミンまでのさらなる2電子、2陽子還元:の2段階に分割される。
ポリマーを形成する化合物に関して言えば、該レドックス活性素材は、広範囲での強力な無試薬pHセンサーを提供するのみならず、使用位置で電極を製造する技術も提供する。
化学非感受性レドックス活性素材
化学感受性レドックス活性素材に加えて、本発明は、また、化学非感受性レドックス活性素材を用いても良い。従って、化学非感受性レドックス活性素材は、化学感受性レドックス活性素材と同じ基板上に存在して良い。
また、化学非感受性レドックス活性素材は、本発明による電気化学センサー内で用いられる別の電極上にあっても良い。
化学感受性素材と同様に、化学非感受性素材を用いて、炭素を修飾してよい。別法として、該素材を、直接、基板(例えばbppg)に適用することができる。素材がプリントされたスクリーンである場合、次いで、結合剤およびシンナーも必要になる。
化学非感受性レドックス活性素材は、化学感受性素材と同様、電子の損失と獲得を繰り返し受ける能力を持つ。しかしながら、該化合物の電気化学応答は、センサーで測定される種の濃度に依存しない。例えば、センサーがpHセンサーである場合、化学非感受性レドックス活性素材の電気化学応答は、水素イオンの濃度の変化に非感受性であり、それ故、pHの変化に非感受性になる。
また、化学非感受性レドックス活性素材の選択は、明らかに、電気化学センサーが検出する予定の種に依存することになる。pHセンサーの場合、適当な化合物には、不溶性フェリシアナイドまたはフェロシアナイド塩、オクタシアノモリブデート(IV)塩、またはポリビニルフェロセンのようなポリマーが含まれる。これらの化合物は、基準素材(reference material)として作用し、サイクリックボルタメトリーを行った場合、それ自身、基準信号を生成する。米国5,223,117に記載のように、化学感受性レドックス化合物と化学非感受性レドックス活性化合物のピーク間の電位差を用いて、センサーの精度を改良することができる。
基板
修飾された炭素をその上に適用した基板は、電極の製造に通常用いられる任意の基板であって良い。例えば、基板は、底面熱分解グラファイト(bppg)電極、またはガラス状カーボン、金あるいは白金のような金属電極、またはITOを含む電極のような、光学上透明な電極であって良い。好ましくは、基板は、修飾された炭素と良好な電気的接触を有し、また、修飾された炭素での良好な被覆を達成しうる表面を有する。
修飾された炭素を、任意の既知の方法によって、適用して良い。特に、スクリーンプリンティングは、適切な慣用の技術である。
作用電極
本発明のセンサーの作用電極の大きさは、表面積が、好ましくは10μm2から0.1m2、より好ましくは50μm2から0.1m2、さらにより好ましくは500μm2から0.1m2である様な大きさである。
本発明の電極を考察する場合のその他の関連するパラメーターは、作用電極表面積:対極表面積の比率である。該比率は、好ましくは1:10から10:1、より好ましくは、1:5から3:1である。
本発明の電極と比較すると、先行技術に開示された電極は、より小さい表面積の作用電極を有し、さらに/または実質上作用電極よりサイズの大きい対極を有する傾向がある。
本発明の電極は、分析に用いられている物質によって汚されにくいという利点を有する。それ故、センサーの作用寿命は、電極の取り替えが必要になる時点まで、延びる。
さらに、本発明の電極は、安価に作成でき、容易に処分することができる。先行技術で議論された電極よりは大きいが、まだ容易に運搬できるほど充分小さく、かつポータブル電気化学センサーとして用いうる。
本発明の作用電極は、同一基板上にレドックス活性素材の領域を1以上含んでいて良い。これらの領域は、好ましくは、互いに分離していて、従って、基板表面上に「スポット」として現れて良い。少なくとも1つの領域は、化学感受性レドックス活性素材で修飾された炭素を含むことになる。その他の領域または複数領域は、化学感受性レドックス活性素材または化学非感受性レドックス活性素材を含んで良い。
1つの実施態様によれば、作用電極は、2つの分離された領域を含み、該領域の内1領域は、化学感受性レドックス活性素材で修飾された炭素を含み、他は、化学非感受性レドックス活性素材を含む。もう一つの実施態様によれば、作用電極は、4つの分離領域を含み、該領域の内の2領域は、化学感受性レドックス活性素材を含み、他の2領域は、化学非感受性レドックス活性素材を含む。素材を含む分離領域が多数あることの長所の1つは、多数の電極を1つのセンサー上に存在させうること、または、多数の異なる素材を、1つの作用電極の異なる領域に沈積(deposit)させうることである。この結果、センサーの精度および感度を上げることができる。
pHセンサー
センサーの構造は、その最終用途に依存し、それ故、測定される物質、および測定が行われるであろう環境に依存する。公知のセンサー構造を本明細書において記載さえたアグロメレートと電極と共に用いてよい。
例示のセンサーは、2または3の端子装置(terminal arrangement)を有して良い。例えば、センサーは、本発明の作用電極1および対極-基準電極の複合電極1、または作用電極1、対極および基準電極1を含んで良い。基準電極および対極は、銀電極、カロメル電極または標準水素電極のような、本技術分野で既知の任意の慣用の電極であることができる。基準電極を前述の化学非感受性レドックス活性素材によって提供することもできる。
センサーに用いられる素材は、センサーが測定する予定の種およびセンサーが用いられるであろう環境に依存する。センサーが異なる種に対して感受性を持つように修正するために、単に、レドックス活性素材を、測定されるであろう種に対して感受性を有する別のレドックス活性素材で置換することが、当業者に要求される。
本発明による典型的pHセンサーを図11に示す。基板1は、電極2,3および4を有している。対極2および基準電極3は、両方とも銀を含む。この図では、作用電極は、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)で誘導化した炭素を含む、10質量%のDPPDを含む電極を有する。pHセンサーを3つの端子5を通して、サイクリックボルタメトリーを測定するための装置に接続する。
図12は、4つの異なるセンサーが1つの基盤上に存在する本発明のもう一つの実施態様を示す。センサーはスクリーンプリンティングによって製作され、必要に応じて、個々のセンサーストリップに切断できる。この図で用いた数字は、上記の図11で用い多数字と一致する。
修飾法
本発明で用いられた、炭素を修飾するための好ましい方法は、
a) 化学感受性レドックス活性素材での均一な化学的誘導化;
b) 化学感受性レドックス活性素材の物理的吸着による誘導化;
c) 化学感受性活性素材と結合剤との物理的混合:
である。均一な化学的誘導化とは、炭素および化学感受性レドックス活性素材を、2つの種の化学結合の原因となるための還元体(例えば次亜リン酸)の存在する溶媒中で、結合する方法を言う。用語「均一な」は、すべての還元体(および還元体のみ)が、溶液相内にあるという事実を指す。還元体および化学感受性レドックス活性素材(またはその前駆体)を溶液中に溶解させるのに対して、炭素は溶媒中に分散させる。化学反応は、溶液相内でのみ起こり、後に炭素表面に結合する種が作り出される。
物理的吸着による誘導化とは、炭素および化学感受性レドックス活性素材を、該レドックス活性素材が炭素表面上に物理的に吸着される原因となるような方法で、化合することを意味する。
上記の2つの工程は、物理的吸着の場合、当業者が、相対的疎水性によって炭素表面の誘導化を引き起こすことができるという点で異なる。化学的誘導化では、実際に化学結合が炭素と化学感受性レドックス活性素材の間で形成される。
物理的混合のオプションは、単に、炭素と化学感受性レドックス活性素材を、結合剤存在下で共に機械的に攪拌することを要求しているにすぎない。これは、炭素およびレドックス活性素材が、化学結合を形成することなく互いに関連することを可能にする。結合剤の選択は、電極をさらすことになるであろう条件に依存する。スクリーン-プリンティング工業で用いられているような慣用の結合剤およびシンナーは、候補になる可能性がある。
本発明の好ましい第一態様の実施例
試薬および装置
British Drug House Chemicalsより入手したメチレンブルーおよびチオニン、ならびに、Riedel de Haenより入手した塩化カリウムを除き、全試薬を、Aldrichから、入手できる最高級のものを入手し、さらなる精製を行うことなく使用した。全水溶液を、比抵抗が18MΩcm以上であるElgastat(Elga,UK)UHQ級水系からの脱イオン水を用いて調製した。全測定は、純粋なN2ガス(BOC gases,Guildford,Surrey,UK)で、30分間、溶液を脱気した後に行われ、また、特に記載しない限り、温度22±2℃で結果を記録した。
pH1から12までの範囲でpHが既知の溶液を、脱イオン水中で、以下のように、作製した:pH1、0.1M HCl;pH4.6、0.1M 酢酸+0.1M 酢酸ナトリウム;pH6.8、0.025M Na2HPO4+ 0.025M KH2PO4;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム;pH12、0.01M 水酸化ナトリウム。これら溶液は、加えて、付加的補助電解質として、0.1M KClを含んだ。
pH測定を、それぞれ新たに調製した溶液で行い、それが、Jenway 3030 pHメーターを用いて、正しいpHを有することを確認した。
電気化学的測定を、標準3電極配置を有するμAutolabコンピューター制御ポテンショスタット(Ecochemie,Netherlans)を用いて、記録した。全室温実験を、容量30cm3のセル内で行った。高温ボルタメトリー(30−70℃)を、
加熱した水浴から水を循環させることによって所望の温度に自動温度調節した、容量25cm3の二重壁ガラスセルを用いて行った。すべての場合、底面熱分解グラファイト(bppg、0.20cm2、Le Carbone Ltd.,Sussex,UK)電極は、作用電極として働く(以下を参照されたい)。プラチナロッドは、対極として働き、飽和カロメル電極(SCE,Radiometer,Copenhagen)は、セルの組み立てが完了した基準電極として働く。
特に記載しない限り、サイクリックボルタモグラムは、以下のパラメーター:歩幅電位 2mV;走査速度 100mVs-1:を用いて記録した。方形波ボルタメトリーパラメーターは、以下の通り:振動数 12.5Hz、歩幅電位 2mV、および振幅 5mV:であった。
走査電子顕微鏡(SEM)検査を、Cambridge 立体走査電子顕微鏡を用いて、倍率83xで行った。炭素粒子の大きさの初期特性を、走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて調査した。該方法は、炭素粒子を細長い導電性粘着テープ片に接着し、該テープからSEM像を得ることを含む。像の分析から、炭素粒子は1.5μmの平均直径を有することが示され、この値は、製造者(Aldrich,グラファイトパウダー、1−2μm、合成)によって記載されている該直径と一致する。
実施例1:炭素粉末誘導化法
a) 物理吸着による誘導化
炭素粉末上への物理吸着は、2gの炭素粉末を、25cm3の0.1M HCl+ 0.1M KCl、および10cm3のアセトン中の10mM 化合物(以下に示す)溶液と共に、混合することによって行われ、該化合物は、アントラセン、アゾベンゼン(AB)、ジフェニルアミン、9,10-ジフェニルアントラセン(DPA)、1,3-ジフェニルグアニジン、フロレセイン、メチレンブルー、3-ニトロフルオランテン(3-NF)、6-ニトロチリセン(6-NC)、9-ニトロアントラセン(9-NA)、9,10-フェナントラキノン(PAQ)またはトリフェニルアミン:の内の一つの化合物である。反応混合物を、ビーカー中で2時間連続攪拌し、次に水吸引によりろ過し、その後、蒸留水で洗浄して、酸および塩を除去した。次にろ過物を蒸発フード内に12時間置いて空気乾燥し、最終的に密閉容器内に保存した。
b) 均一な化学誘導化
最初に、2gの炭素粉末を、5mM Fast Black K(2,5-ジメトキシ-4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]ベンゼンジアゾニウムクロリド;FBK)を含む10cm3溶液と共に混合し、そこに50cm3の 次亜リン酸(H3PO2、50% Aldrich)を加えた。次に、反応混合物を、10分毎に攪拌しながら、30分間5℃に置いたままにし、その後、未反応の種を炭素から除去するために、溶液を水吸引でろ過した。さらに、脱イオン水での洗浄を行い、残ったいかなる酸をも取り除き、最後にアセトニトリルで洗浄して、混合物から未反応ジアゾニウムをすべて除去した。次に、炭素粒子を、蒸発フード内に12時間置いて、空気乾燥させ、その後、密閉容器内に保存した。
誘導化した炭素粉末の寿命
上記の方法の1つを用いて誘導化し、密閉容器内で保存した各々の化合物を、数カ月の期間にわたって調査し、該調査期間経過後も、安定なボルタモグラム(voltammogram)を示すことを見出した。このことは、炭素粉末表面からの脱離が殆ど又は全く起こらず、誘導化炭素粉末が、該期間中、安定であることを示す。
実施例2:基板上への誘導化炭素の固定化
新たに誘導化した炭素粉末を、特徴を調べる前に、bppg電極の表面上へ研磨固定(abrasive immobilisation)することによって、その特徴を調べた。研磨固定は、最初にガラス研磨紙(H00/240)上で電極を研磨することによって行われ、その後、炭化ケイ素紙(P1000C)上で平滑になるまで磨いた。次に、官能化炭素を含むファインフィルターペーパー(Whatman)上に電極表面を穏やかに擦りつけることによって、誘導化炭素をbppg電極上に機械的に固定化した。3-ニトロフルオランテン、6-ニトロチリセンおよび9-ニトロアントラセン誘導化炭素粉末の場合、ニトロ基の電気還元が化学的に不可逆であり、それ故、信号が最初の第1走査後に喪失する(以下を参照のこと)と言う事実から、誘導化炭素が、各々の実験の初期に、底面上に固定化されたことは、特記に値する。
特性プロトコール
調査される化合物のそれぞれが、物理吸着または誘導化法による共有結合のいずれかの方法で、炭素粒子に付着していることを確かめるために、新たに誘導化した炭素をbppg電極上に固定化し、該誘導化炭素のそれぞれについて、以下のプロトコールを、調査される全pH範囲(pH1-12)にわたって、サイクリックボルタメトリーを用いて行った。典型的には、+1.0Vから−1.0Vまでの最初の10回繰り返し走査(データは示さず)を行い、種の安定性を確認した。各々の場合において、迅速に安定して、酸化および還元ピーク間で約20mVの隔たりを有する対称波に近い波形を示し、電気化学可逆系を認めることができるが、固定化された種に関してのピーク-ピーク間の隔たりは理想的には0に近い。次に、電解溶液を新しい溶液と入れ替え、ボルタメトリー応答を記録した。相当するボルタメトリー応答(データは示さず)は、最終の走査と重なることが分かり、これにより、電解活性を有する種が電極表面に残っていることが確認された。最後に、走査速度を変え、ピーク電流対走査速度のプロットが直線になることが分かり、表面結合種と一致する。
同時に、これらの試験の各々から、調査した具体的化合物が炭素粒子の表面に付着していることが確認される。例として、6-ニトロチリセンの物理的誘導化炭素のボルタメトリー応答を図1に示すが、pH1.0(0.1M HCl + 0.1M KCl)で、可逆系発生後(以下を参照の事)、走査速度(25-1000mVs-1)を変化させた。差込図は、走査速度に対する相当するピーク電流のプロットであり、該プロットは、表面結合種に期待されるような直線である。
調査した化合物はすべて、固定化されており、チオニンおよびメチレンブルーを除いて、室温で、pH1-12にわたり、安定であったが、チオニンおよびメチレンブルーは両方とも、それぞれ6.8および4.6より大きいpHで、繰り返し循環時にゆっくりと脱離することが分かった。フルオレセイン、1,3-ジフェニルグアニジンおよびトリフェニルアミンは、どのpHにおいても、明らかなボルタメトリー波を非常に不充分にしか作り出さず、それらについては、さらなる分析を行わなかった。
実施例3:22℃におけるpH1から12の誘導化炭素のボルタメトリー応答
最初に、各pHでの誘導化炭素の応答を、個別的に、サイクリックボルタメトリー(CV)を用いて、次に、方形波ボルタメトリー(square wave voltammetry)(SWV)を用いて、調べた。SWVは、単一掃引で、調査される各レドックス系の可逆性による明確なボルタメトリーピークを提供すると言う、慣用のCVに対して明らかな長所があるので、系の電気化学調査に用いた。相関するサイクリックボルタモグラムおよび方形波ボルタモグラムを、pH溶液の範囲内で記録した(pH1.0、0.1M HCl + 0.1M KCl;pH4.6、0.1M 酢酸 +0.1M 酢酸ナトリウム + 0.1M KCl;pH6.8、0.025M Na2HPO4+ 0.025M KH2PO4 + 0.1M KCl;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム + 0.1M KCl;pH12、0.01M KOH + 0.1M KCl)。本発明の化合物のボルタメトリー挙動は、次の3つの型に分類できる:(1)化学的および電気化学的に可逆な挙動、(2)電気化学的に可逆な系を導く化学的に不可逆な系(ポリマー種形成を含む)、(3)電気化学的に可逆な系を導く化学的に不可逆な系(窒素含有化合物を含む)。
実施例3.1:化学的および電気化学的に可逆な挙動を示す化合物
実施例1の方法に従って、PAQおよびDPAで誘導化したグラファイト粉末のボルタメトリー応答を測定した。図2は、pH範囲1-12で測定したPAQのサイクリックボルタメトリー応答を重ねて示す。各pHでの酸化および還元ピーク間に約20mVのわずかな隔たりを有するが、ピークの形は対称に近い。より高い電位でのわずかな肩は、各ピークで認められたが、DPAおよびアントラセンでは認められなかった。これは、アントラキノンを炭素粉末上に誘導化した場合に認められるボルタメトリーと類似しており、各々、キノン−セミキノン種の還元/酸化中間体によるものと考えることができる。
図3Aは、pH範囲1-12でのDPAの酸化および還元によるSWV応答を重ねて示しており、図3Bは、pHに対する相当するピーク電位のプロットを示す。このプロットは、明らかに、pHに対する直線応答を示し、61mV/pH単位の勾配を有する。この直線応答は、理論(式1)と卓越した一致を示す。各化合物について、実験的に得られたpHによる電位シフトの、理論との比較を、この分類の各化合物について、表1に示す。
表1
アントラセン、DPAおよびPAQについて、理論的に計算したpHによるピーク電位シフト(58.1mV/pH単位、式1)と実験的に測定されたpHによるピーク電位のシフトの比較(22±2℃、酸化SWV走査による)
Figure 2007526474
実施例3.2:電気化学的に可逆な挙動を導く、化学的に不可逆な挙動を示す化合物−ポリマーを形成する化合物
ジフェニルアミンで誘導化された炭素粉末のサイクリックボルタメトリーは、第1走査時、酸化方向で、大きな電気化学的不可逆波が、pH6.8で、約+0.45V(対SCE)に認められることを示した(図4)。+1.0Vで走査方向を逆にした場合、新しい波が、+0.03V(対SCE)に認められ、この波は、繰り返し循環時に成長して、安定な可逆レドックス系になるが、+0.45Vの大きなピークは、4回以後、無くなった。この挙動は、溶液中のジフェニルアミンの電解重合について文献に報告されている挙動と類似しているが、この場合、重合は、水溶液と接する炭素粒子表面上に物理吸着されたジフェニルアミンで起こる。図4中の大きな電気化学的不可逆ピーク(I)は、スキーム3内に示したように、ジフェニルアニオンが相当する関連ラジカルカチオンへ酸化され、次に、付随するプロトンの損失および獲得を含む機構を通して重合することによると考えることができる。
スキーム3
ジフェニルアミンについての電解重合の機構(案)
Figure 2007526474
繰り返し循環時、最終的に、炭素表面上のジフェニルアミンのすべてが重合されるために、ピーク(I)は消える。新たな可逆系は、図4中(II)で示すように、繰り返し循環時に成長し、安定する。このことは、次に起こるポリマー構造内のイミン結合の酸化/還元、さらに、続いて起こるプロトンの損失/獲得を含む、ポリジフェニルアミンのレドックス応答によるものと考えることができる(案)(スキーム3)。非水媒体内では、重合は、ジフェニルアミンが二量体化し、ジフェニルベンジジンを形成する事で始まると考えられ、これに相当する二つの可逆波が、重合した種に相当する波より高い電位で認められた。この例では、2つの小さい可逆波が、最初の数回の走査で、約+0.25Vに認められる。これらは、試案的に、ジフェニルベンジジンの酸化/還元によるものと考えることができるが、これらは、また、次第になくなり、第10走査では、二量体は、さらに重合してポリジフェニルアミンを形成する(スキーム3)ため、ほとんど認めることができない。
このボルタメトリー応答は、調査したpH1-12の各pHでの、ジフェニルアミン誘導化炭素の特徴であり、ピーク(I)およびピーク(II)のピーク電位は、両方共、式(1)から予想されるように、負の方向へシフトしていることが、見出された。不可逆系(I)および可逆系(II)の両ピーク電位の、pHに対するプロットの勾配の分析から、データには示していないが、各系は、全pH範囲にわたって、直線のネルンスト様式を示し、それぞれ、56mV/pH単位および66mV/pH単位でシフトすることが分かった。このことは、後に電解重合を受けてポリジフェニルアミンを形成する、ジフェニルアミンで誘導化された炭素粒子が、pH範囲1-12にわたる丈夫な無試薬pHセンサーを提供するのみならず、水性環境中、使用位置で電極を製造する新たな技術をも提供することを示唆している。
実施例3.3:電気化学的に可逆な挙動を導く、化学的に不可逆な挙動を示す化合物−ポリマーを形成する化合物
別種のポリマーフィルムを、トルイジンブルーならびに本明細書中で重要なメチレンブルーおよびチオニンのようなフェノチアジン染料から誘導する。これらの分子は、時折、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)およびβ-d-グルコースのような、生理活性分子および酵素を検出する、Nafionフィルム内に被覆された電流計センサー内の仲介物質(mediator)としても、用いられている。メチレンブルーおよびチオニン誘導化炭素粒子のレドックス性は、ジフェニルアミン−炭素のそれより複雑であり、pHに大きく依存する。溶液中では、メチレンブルーおよびチオニンの両方で移動する電子数(n)は、常に2に等しいと報告されているが、移動するプロトン数(m)は、pH<5.4でm=3,pH5.4<6.0でm=2、pH>6.0でm=1、の様にpHで変化すると報告されている。
サイクリックボルタメトリーを用いて、メチレンブルーおよびチオニンの両方で誘導化した炭素粒子の特徴を調べていると、ある酸化電位(pHに依存するが、pH1.0では+1.2Vから、pH4.6では+1.0V、pH9.2では+0.65V、pH12.0では+0.4V対SCEまで異なる)以下では、可逆波が、種(モノマー)の酸化/還元に相当して認められることが分かった。電位をこの酸化電位を超えて掃引した場合、それぞれ、酸化電解重合したメチレンブルーまたはチオニンに相当すると文献に記載されているような、新しい波が認められる。走査方向を逆にした場合、モノマー種の還元に相当するピークが認められなかった。繰り返し循環時、モノマーに相当するピークより電位約0.2Vプラスに、幅広の低い未確定の波が認められ、該波は、文献に記載された波と類似しており、ポリマーのレドックス特性によるものと考えられる(図5)。pH4.6より下では、pHでのモノマー種のピーク電位の変化は、メチレンブルーでは86mV/pH単位、チオニンでは83mV/pH単位であり;pH6.8以上では、pHでのピーク電位のシフトは、それぞれ、33mV/pH単位、および33mv/pH単位であることが分かった。これは、溶液中の両方の種について、文献中に報告されている挙動に類似している。このことは、炭素粒子を、メチレンブルーおよびチオニンによって成功裡に修飾することができ、得られた修飾粒子は電気化学センサーに有用であることを示す。
実施例3.4:電気化学的に可逆な挙動に導く、化学的に不可逆な挙動を示す化合物−ニトロ基を含む化合物
9-NA、6-NCおよび3-NF誘導化炭素粉末の挙動は、一般的に、6-NCで認められたボルタメトリーを議論することによって、特徴付けることができる。化合物間の挙動に差異が生ずる場合は、その差異が議論されることになる。
新たに固定化した6-NCを、pH9.2で+1.0Vから−1.0V対SCEの減少方向に、最初のスキャニングを行った場合、大きな還元ピークが、−0.75Vに認められた(図6中、Iで示す)。−1.0Vで走査方向を逆にした場合、逆ピークは認められず、新たな酸化ピーク(図6中、(II)で示す)が約−0.25Vに認められ、より低く幅広の酸化波が約0.25V付近にも認められた。繰り返し循環時、−0.25Vでの電気化学的可逆系は安定したが、−0.75Vの電気化学的不可逆還元波は、急速に消滅した(図6)。9-NAの場合、繰り返し循環で、約−0.55Vにもさらなる可逆波が成長した(図6挿入図中、(III)で示した)。−0.25Vでの系の還元波は、波上に明らかな肩を有しており、このことは、以下に議論されるであろう。(I)および(II)の両波(および9−NAの場合は(III))は、1から12の範囲のそれぞれのpHで存在が認められ、3つの化合物、9−NA、6−NCおよび3−NFのすべてについて、ネルンスト直線様式(式1中、nはmと等しく、(I)で示した系では4,(II)で示した系では2に等しいようである)でシフトした。表2は、調べた各化合物についての、pH6.8での系(I)および(II)のそれぞれのピーク電位を比較のため、列挙しており、これに対して、表3は、調査したそれぞれの化合物についての、pHでの各ピークのシフトを示す。
表2
9-NA、6-NCおよび3-NFについての、6-電子、6-陽子のニトロ基還元に相当する系Iと、アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロソレドックス系に相当する系IIの、ピーク電位の比較(pH6.8)
Figure 2007526474
表3
9-NA、6-NCおよび3-NFについての、pHによるピーク電位の理論的に計算されたシフト(58.1mV/pH、式1)と、系Iおよび系IIのpHによるピーク電位の実験的に測定されたシフトの比較(22±2℃、酸化的SWV走査による)
Figure 2007526474
各波の起源については、順次、議論するつもりであるが、調査した全化合物について今まで議論した特性プロトコールは、数回の走査を行い系を安定化させた後、系IIについて行ったという事実を、最初に繰り返しておかねばならない。すべての場合において、プロトコール中に上記した3つの試験(安定な対称波を与える何回もの繰り返し走査、新しい溶液での緩衝溶液の置き換え、およびピーク電流と走査速度の間の直線関係)の結果のすべてから、各化合物は、pH1からpH12までの調査した各pHで、炭素粒子表面上に付着していることが確認された。
文献との比較により、上記の、および図6に示した、調査した化合物すべてのボルタメトリー応答は、ニトロ基を含む芳香族分子の電気化学的還元の特徴であり、スキーム2に示した一般的なメカニズムと矛盾しないことが示される。
ニトロベンゼンの還元から類推すると、ピーク(I)は、相当するアリールヒドロキシルアミンへのニトロ部分の4電子、4陽子の還元によるものであり、この還元は、2電子、2陽子の化学的不可逆還元、続いて起こる、さらなる2電子、2陽子の段階を含む。
次の循環時、図6中で「重合」と示した約0V(pH6.8)の不可逆系は、(系Iを過ぎて電位を掃引し、さらにアリールヒドロキシルアミンを相当するアリールアミンに還元することによって形成される)アリールアミン部分を、それに相当するラジカルカチオンに電解酸化することによってオリゴマーを形成し、次に重合することによると考えることができる。また、この波は、炭素表面上に残っているアリールアミン種のすべてが重合され、明らかに電気的に不活性であるポリマーを形成するので、急速に消滅する。
図6中に(II)で示した可逆系は成長して、各pHで10回走査の後、安定する。再度、これは、文献中に報告されたボルタメトリーの特徴であり、アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロソ部分の、化学的および電気化学的に可逆な2-電子、2-陽子の酸化/還元によるものと考えることができる。この系は、非常に低い値(pH6.8では約−1.2V)まで電位を掃引しない限り、安定なままであるが、その後、さらに、アリールヒドロキシルアミンのいくつかが、相当するアミンに不可逆的に還元されることにより、ピークは徐々に減少する。特に9-NAの場合、明確な肩がこの系のあるpHで認められ、これは、多分、アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロ部分の酸化/還元中間体によるものであろう。
9-NAの場合、図6(挿入図)中に(III)で示した系は、ニトロソがヒドロキシルアミン部分に還元されるより低い電位で認められ、ニトロ還元の特徴を示さない。しかしながら、上で議論したアントラセンのボルタメトリー挙動との比較から、その同一性についての手がかりを示すことができる。系(III)のピーク電位およびpHでの該ピーク電位のシフトを比較すると、上記スキーム1に示した9位および10位での2-電子、2-陽子の環の還元を受けるアントラセンのボルタメトリーで認められた可逆系に適合する。
9-NA中の9位および10位での2-電子、2-陽子還元も可能であるが、電子を引きつけるニトロ基の存在は、還元電位にわずかな影響を与えうる。さらに、また、pHを、pH1からpH6.8に増加させた場合、ピーク電流の大きさもまた、局所の陽子濃度の減少に相当して減少することが、認められた。
実施例3.5:電気化学的に可逆な挙動を導く、化学的に不可逆な挙動を示す化合物−ニトロ基を含む化合物
FBK(2,5-ジメトキシ-4-[(4-ニトロフェニル)アゾ]ベンゼンジアゾニウムクロリド)誘導化炭素のボルタメトリーについても、調べた。該化合物中のニトロ基の還元は、アゾ環の存在によって、さらに複雑になる。最初に、電位減少方向への走査を、各pHでサイクリックボルタメトリーを用いて行った。2つの不可逆ピークが認められ(図7)、より高い電位の第一ピーク(図7中(II)で示す)は、現在のところ、まだ未同定である(下記を参照のこと)が、より低い電位で後に現れるピークは、今では周知のニトロ基の4電子、4陽子還元の特徴である(図7中(I)で示す)。しかしながら、FBKのボルタメトリーは、−1.0Vで走査方向を逆にすると、予想される様なニトロ還元についての逆ピークが認められないため、上で議論した化合物とは異なるが、ヒドロキシルアミン部分による新規の酸化ピークは認められなかった(が、低い幅広のピークがpHに依存する正確な電位で0Vより上に認められるため、ラジカルカチオンに酸化されるアミンによる重合が多分起こっているであろう)。次の繰り返し循環時には、どのpHにおいても、還元または酸化のどちらにも、ピークが認められなかった。しかしながら、各系、(I)および(II)は、pHで直線的ネルンスト様式でシフトすることが認められた。ニトロ系は、57mV/pH単位でシフトするが、系(II)は、61mV/pH単位でシフトした。電気化学を理解するために、さらに、CVを用いて、第一の未同定系までは電位を負の方向へ走査し、ピークが認められた後すぐに走査方向を逆にする、実験を行った。特性プロトコールを該実験に沿って行ったところ、化学結合によって炭素上に誘導化されたジアゾニウム塩の別の研究と矛盾せず、FBKが炭素粒子上に誘導化されていることが確認される、安定な可逆系を形成していることが分かった。図8は、pH4.6でのこの可逆系を示し、挿入図は、特性プロトコールで用いたように、走査速度を変化させたサイクリックボルタモグラムを示す。系(II)を越えて、系(I)と関連するニトロの還元が起こるまで、電位を掃引した場合にのみ、繰り返し走査で続く信号がすべて失われる。FBKが炭素表面上に固定化され脱離していないことを確認するために、この挙動について、別の説明を調べためた。
次に、アゾベンゼンを炭素粒子上に誘導化し、該アゾベンゼンが本当に炭素表面上に物理吸着されていることを、上記の特性プロトコールを用いて確かめた。各pHでサイクリックボルタメトリーを記録した。図9は、pH4.6でのアゾベンゼン−炭素についての30回掃引の結果を示す。約−0.3Vで130mVのピークの隔たりを有する、可逆系が認められ、その電位は、系(II)で認められた電位に近い。さらに、アゾベンゼンは炭素表面上に物理吸着され、いかなるpHでも脱離が認められないが、電位を約−1.0V対SCEの非常に低い電位まで掃引すると、アゾベンゼンピークは認められるが徐々に消滅することがわかる。ピークの隔たりが大きいことについての1つの可能な説明は、速度論的により可逆な特性を呈する溶液中のアゾベンゼンと比較した場合、プロトン化がアゾベンゼン吸着フィルムのレドックス速度論に影響を与えるので、反応速度が遅く準可逆であることである。pH1.0では、逆の(酸化)ピークは認められず、アゾ部分の還元型は、不可逆的にプロトン化されているか、またはプロトン化がアゾ結合の切断を誘導しているかのいずれかであることを暗に示す。また、このアゾ結合の切断は、電位を非常に低い電位に走査する場合、N-N結合をより還元できるため、アゾベンゼン−炭素から任意のボルタメトリー信号がゆっくりと喪失することについてのもっともらしい説明ともなる。
この結果を考慮して、FBK炭素の挙動を説明する1つの仮説をスキーム4に示す。
スキーム4
FBK誘導化炭素粉末の電気化学的還元について予想されるメカニズム経路
Figure 2007526474
最初に+1.0V対SCEから負の方向に走査すると、最初に、アゾ結合が、2-電子、2-陽子工程で、相当するヒドラゾ型に還元され、該ヒドラゾ型は、実験で認められるように、各pHでのピーク電位が相当するネルンストシフトを示す。次に、電位を逆にすると、関連する酸化プロセスが起こり、系は可逆性の挙動を示し、多数回の走査を行っても安定している。しかしながら、電位をより低い値に掃引し続ける場合、次にニトロ基が還元され、そのような低い電位で起こるニトロの還元により、ヒドラゾ結合を開裂に導く。走査方向を逆にした場合、(予想される)ニトロ基または(開裂してしまった)アゾ結合のいずれかに関連する酸化ピークは認められない。しかしながら、アミン重合の特徴である大きい幅広の波が、pHに依存して0.0から+0.4Vの間に認められる。その後、さらなるレドックスプロセスは、いかなる繰り返しボルタモグラムでも認められない。この仮説は、Heyrovskyらのメカニズム研究によって支持され、彼らのポーラログラムは、ニトロ基の還元と、これに続くヒドラゾ結合の開裂を含むメカニズムと一致する。さらに、ニトロ還元ピークのピーク面積は、常に、系(II)に相当する還元ピークの面積の6倍より明らかに大きいことが分かり、それ自身では、このメカニズムが正しいことの証明にはならないが、ニトロ基還元後に起こるヒドラゾ開裂にさらなる支持を提供することは確かである。
複雑なメカニズム、生成物による干渉およびその他の置換基相互作用にもかかわらず、本発明のニトロ化合物を還元する場合、NO2部の4-電子、4-陽子の還元に相当する大きく明確に分離した不可逆ピークを認め得ることが、即ち示された。このピークのピーク電位は、表3に詳述するように、pHでの一次ネルンスト様式でシフトする。それ故、炭素粉末上に誘導化されたこれらの化合物は、下水およびその他の不快な廃液のような、使い捨てセンサーが再利用可能センサーより好ましい環境中で使用するための、いわゆる「単発」(single-shot)の使い捨て無試薬pHセンサーを製造するための理想的な候補となる。
実施例4:高温でのpH試験
本実施例では、温度20℃から70℃の範囲で、pHに対する4化合物の応答を調べた。得られた実験結果は、式1を用いて理論的に予想される通り変化した。
温度を上げると、同様に、pHに対するピーク電位のプロットの勾配も増すことが、式(1)から分かる。考慮すべきさらなる事項は、温度が変化すると同様に、緩衝溶液の成分の解離定数が変化するため、溶液のpHが温度でどのように変わるかである。それ故、調査する各温度でのpHが分かっている4種類のIUPAC緩衝液(pH1.5、0.1M 四シュウ酸カリウム + 0.1M KCL;pH4.6、0.1M 酢酸 + 0.1M 酢酸ナトリウム + 0.1M KCl;pH6.8、0.025M Na2HPO4 + 0.025M KH2PO4 +0.1M KCl;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム + 0.1M KCl)を用いて、高温でのpHに対するPAQ、DPA、アントラセンおよび9-NAの応答を調べた。
図10は、pH4.6でのDPAのSWVボルタメトリーへの温度の影響を示しており、温度を上げるとピーク電流が強くなることを示す。式(1)より予想されるように、温度を上げると、ピーク電位が負の方向にシフトすることも、記載しておく価値がある。この挙動は、高温での調査に選択した化合物すべての特性である。表4は、各温度での各化合物のpHによるシフトについて詳述しており、その値を式(1)の理論的予想値と比較している。全温度およびpH範囲で、理論と実験の間に、良好な一致が認められ、これにより、様々な異なる化合物で誘導化した炭素粉末を、最大で70℃の高温で、pH1−9の無試薬pHセンサーとして使用できることを示す。
表4
アントラセン、DPAおよびPAQ(酸化SWVによる)ならびに9-NAのニトロ還元波(CVボルタモグラムによる)についての、pHでのピーク電位のシフトの、理論的計算値と実験による測定値の比較(温度範囲20-70℃)
Figure 2007526474
特許請求の範囲から離れることなく、上記のように、本発明に変更を加えうることは、当業者には明らかになる。
本発明の第二の好ましい態様の詳細な記述
本発明の第二の好ましい態様は、炭素および式(I):
Figure 2007526474
(式中、R1は、式-Yまたは-X-Yの基を示し、Yは、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび-NR34より選択され、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され、Xは、式-(CR56)n-の基を示し、nは0または1から4までの整数であり、R5およびR6は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシから選択される、またはR5とR6は一緒に、式=Oまたは=NR7の基を形成し、R7は、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシより選択され;
2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ;C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニルチオ、ニトロ、シアノ、-O-CO-R’、-CO-O-R’、-CO-NR’R”、-COR’、-S(O)R’および-S(O)2R’より選択され、各R’およびR”は、同一かまたは異なっており、水素、C1-4アルキルまたはC2-4アルケニルを示し;さらに、
mは0または1から4までの整数である)
のニトロベンゼン誘導体またはその塩である化合物を含む成分の使用に関し、その方法は、上記のような化合物を炭素内に部分的に挿入するに充分な時間、粉末化炭素を該化合物と混合し、得られた修飾炭素を単離することを含む。
本発明の第二の好ましい側面の個々の構成要素および側面を、ここに、より詳細に記載する。
ここに用いられているように、C1-4アルキル基または部分は、1から4の炭素原子を含む、直線状または枝分かれしたアルキル基または部分である。C1-4アルキル基または部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチルおよびt-ブチルが含まれる。2つのアルキル部分が1つの基に存在する懸念を排除するために、アルキル部分は、同一であっても、異なっていても良い。
ここに用いられるような、C2-4アルケニル基または部分は、2から4の炭素分子を含む直線状または枝分かれしたアルケニル基または部分である。2つのアルケニル部分が1つの基に存在するという懸念を排除するために、アルケニル部分は、同一であっても、異なっていても良い。
ここに用いられているような、ハロゲンは、典型的には、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素である。塩素、フッ素または臭素が好ましい。
ここに用いられているような、用語アミノは、式-NH2の基を示す。用語C1−4アルキルアミノは、式-NHR’の基を示し、式中、R’はC1-4アルキル基であり、上に定義したようにC1-4アルキル基が好ましい。用語ジ(C1-4アルキル)アミノは、式-NR’R”の基を示し、式中、R’およびR”は、同一かまたは異なっており、上に定義したように、C1-4アルキル基を示す。ここに用いられているような、用語アミドは、式-C(O)NH2の基を示す。
ここに用いられているような、アルコキシ基は、典型的には、酸素原子に結合した上記アルキル基である。同様に、アルケニルオキシ基は、典型的には、酸素原子に結合した上記アルケニル基である。
アルキルチオ基は、典型的には、チオ基に結合した上記アルキル基である。同様に、アルケニルチオ基は、典型的には、チオ基に結合した上記アルケニル基である。
本発明に用いられる化合物中のアルキルおよびアルケニル基または部分は、置換されていないか、または1、2または3の置換基で置換されており、該置換基は、同一かまたは異なっており、ヒドロキシ、ハロゲンおよび未置換のC1-2アルコキシ置換基から選択される。
ここで用いられているような、用語「部分的に挿入された」は、上記の化合物が完全にそのようなシートの間に位置すると言うよりむしろ、部分的に炭素シートの間に位置していることを意味している。化合物は、炭素表面に沿ったエッジ面欠陥部位(edge-plane defect site)に局在し、炭素の層内間隔をわずかに増加される原因となりうる。長い反応時間またはカップリング剤を必要とせず、化合物を自然に部分挿入する単純な方法で、素材内部に部分挿入された上記の化合物を有する新素材を製造できることが、分かった。
この部分挿入は、完全に挿入された挿入化合物を有する既知素材とは対照的である。完全挿入が起こる場合、挿入されている化合物は、完全にグラファイトの隣接するシートの間に位置し、該シート間の幅を広げる効果を有する。このことは、炭素の層間間隔を有意に広げ、代わってより大きい別の種のさらなる挿入を可能にする。完全に挿入された化合物を有する炭素の製造は、本発明の新規の方法より、実験的、合成的にさらに複雑なプロセスを必要とする。
上記化合物が炭素内に部分的に挿入されているか否かを決定するために、以下の実施例に示されているような、様々な方法を用いることができる。特に有効な技術は、X線回折法であり、該方法は、部分挿入化合物と完全挿入化合物を識別できる。もし化合物が炭素内に完全挿入されているならば、次に修飾炭素をX線回折法にかけた場合、修飾されていない天然炭素より、明らかにより大きい層間間隔に相当するピークが認められるであろう。しかしながら、もし化合物が部分的に挿入されているならば、用いた炭素の通常の層間間隔と同じか、またはわずかに大きい平均層間間隔を有する、より幅広のピークが認められることになる。特に、そのような化合物が多層の炭素ナノチューブ内に部分的に挿入されている場合、明らかにより幅広のピークが、わずかに増加した層間間隔で認められる。
炭素
本発明での使用に特に適している炭素の1つの形は、グラファイトである。グラファイトは、粉末状のグラファイトの形が好ましい。好ましい粒子の直径は、0.1から100μmであり、より好ましくは1から50μmであり、より好ましくは2から20μmである。
本発明での使用に特に適している炭素のもう一つの形は、多層炭素ナノチューブである。炭素ナノチューブ(Carbon nanotubes)(CNBs、また本明細書中ではナノチューブと呼ぶ)は、1991年に発見され(S.Iijima,Nature,1991,56,354)、以来、長年にわたって知られてきた。ナノチューブの研究および用途に大きな展開を見出した分野の1つは、電気化学である。炭素ナノチューブは、該ナノチューブの注目される機械的強度、構造および良好な電気伝導率により、電気化学の分野で特に有用である。これらの性質は、触媒検出、ならびに、ドーパミン、チトクロムcおよび炭水化物のような生体分子の分析から、過酸化水素、ヒドラジンおよびTNTのようなアナライトのセンシングまでの範囲にわたる、電気分析用途に用いられてきた。
構造的には、ナノチューブは、グラファイトの「巻き上げ」(rolled up)シートに近く、それ自体では、天然で比較的疎水性である。これらの「巻き上げ」シートの主な形状は2つある:単一、中空のグラファイトチューブとして成形されている単層炭素ナノチューブ(single-walled carbon nanotubes)(SWCNTs)、および1つのチューブの内側に他のチューブが重ね合わさった数個の同心のグラファイトチューブからなる多層炭素ナノチューブ(multi-walled carbin nanotubes)(MWCNTs)である。本発明では、MWCNTsを使用できる。
適当なナノチューブには、Nanolab Inc.(Brighton,MA,USA)から購入した該ナノチューブが含まれる。当業者らは、ナノチューブの物理的性質を、最適化することができるが、典型的なナノチューブは、直径1から50μm、好ましくは5から30μm、長さ1から50μm、好ましくは5から30μmである。好ましくは、炭素ナノチューブは、比較的高い純度を有し、好ましくは80から100%、より好ましくは90から100%、もっとも好ましくは95から100%の純度である。
部分挿入化合物
本発明に用いた化合物は、本明細書中のはじめの方に記載されている。化合物は、式(I)のニトロベンゼン誘導体またはその塩の形であって良い。化合物中のアルキルおよびアルケニル基または部分は、未置換、または1、2もしくは3の置換基で置換されており、該置換基は、同一かまたは異なっており、ヒドロキシ、ハロゲンおよび未置換のC1-2アルコキシ置換基より選択される。
好ましくは、R2置換基は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ、C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニルチオ、ニトロまたはシアノより選択される。より好ましくは、R2は、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノおよびジ(C1-4アルキル)アミノから選択される。より好ましくは、R2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシより選択される。
2の置換基の数は、0から4まで変化しうる。好ましくは、R2置換基の数は、mで表され、0、1または2である。より好ましくは、mは0または1であり、もっとも好ましくは0である。
Xは、式 -(CR56)n-の基を表し、式中、nは0または1から4までの整数である。好ましいR5およびR6基には、水素、ヒドロキシ、C1-2アルキルおよびC1-2アルコキシが含まれるが、水素が好ましい。
X基中のアルキル基または部分は、置換されていないか、または1、2、あるいは3つの置換基で置換されており、該置換基は、同一かまたは異なっており、ヒドロキシ、ハロゲンおよび未置換のC1-2アルコキシ置換基から選択される。好ましくは、X基中のR5およびR6置換基は、未置換である。
好ましくは、nは0、1または2である。もっとも好ましくは、nは1である。
基Yは、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび -NR34から選択され、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される。Y中のアルキル基または部分は、未置換か、または1、2あるいは3の置換基によって置換されており、該置換基は、同一かまたは異なっており、ヒドロキシ、ハロゲンおよび未置換C1-2アルコキシ置換基から選択される。好ましくは、Y中のアルキル基または部分は、未置換である。
好ましいY基は、-NR34 である。Yが-NR34 である場合、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、好ましくは、水素、ヒドロキシ、C1-2アルキルまたはC1-2アルコキシである。より好ましくは、R3およびR4は、水素およびC1-2アルキルから選択される。もっとも好ましくは、R3およびR4は、両方共に水素である。
好ましい化合物は、式(II)のニトロベンゼン誘導体:
Figure 2007526474
(式中、
2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
mは0、1または2であり;
Xは、式 -(CR56)n-の基を表し、式中nは0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、アルコキシより選択され;そして、
Yは、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび -NR34から選択され、式中、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される)
またはその塩である。
さらに好ましい化合物は、式(III)のニトロベンゼン誘導体:
Figure 2007526474
(式中、
2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
mは0、1または2であり;
Xは、式 -(CR56)n-の基を表し、式中nは0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシより選択され;そして、
3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される)
またはその塩である。
好ましくは、mは0または1であり、より好ましくは、mは0である。好ましくは、nは1であり、R5およびR6は同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシより選択される。より好ましくは、R5およびR6は同一かまたは異なっており、水素およびC1-4アルキルより選択される。もっとも好ましくは、R5およびR6は水素である。
(本発明中で用いた)より好ましい化合物は、式(IV)のニトロベンゼン誘導体;
Figure 2007526474
(式中、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される)
またはその塩である。より好ましくは、R3およびR4は、同一かまたは異なっており、水素、およびC1-4アルキルから選択される。
本発明の第二の好ましい側面の組成物を作るために用いられる化合物には、式(I)から(IV)のニトロベンゼン誘導体の塩が含まれる。これらの塩は、化合物を電極および電気化学センサーに有用にする電気化学メカニズムで妨害されない任意の適当な塩であり得る。特に、無機および有機酸付加塩は注目に値する。使用できる適当な無機酸には、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸が含まれる。使用できる適当な有機酸には、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸が含まれる。また、塩は、塩基、例えばアルカリ金属(例えばナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)水酸化物、ならびにアルキルアミン、アラルキルアミンまたは複素環アミンのような有機塩基で形成されて良い。
理論に束縛されることは望まないが、本発明に使用した化合物は、グラファイトおよび炭素ナノチューブの両方の炭素表面に沿った局在するエッジ面欠陥部位に部分的に挿入されていると考えられる。これらの化合物で修飾された炭素のレドックス特性は、修飾された素材を電気化学センサー、例えばpH測定用に使用できることを示す。
特に、本発明で使用した化合物および本発明の修飾された炭素は、pHを測定するための電極の製造に有用である。この点に関して、該化合物のボルタメトリーを調べた。pH感受性の該化合物のボルタメトリーは、電極表面上に分子固体として固定化した場合、以下のネルンスト式(1)
Figure 2007526474
(式中、Ep/Vはピーク電位であり、E0 f/Vは、レドックス対の式量電位であり、R/JK-1は、普遍気体定数であり、T/Kは温度であり、mおよびnは、それぞれ、レドックスプロセス中に含まれる陽子および電子の数である)
に従って表すことのできる、ネルンスト挙動を示すことが分かった。
従って、例えばサイクリックボルタメトリーおよび方形波ボルタメトリーを用いて、これらの化合物のボルタメトリー応答を調べることによって、pHに対するピーク電位の直線応答が期待されるであろう。
他のレドックス活性素材
上記の化合物と同様に、他のレドックス活性素材を本発明の素材に含むことができる。これらのさらなるレドックス活性素材は、電子の損失および獲得を受ける能力を有する任意の有機素材であって良い。好ましくは、さらなるレドックス活性素材は、固相素材である。基板、例えばガラス状カーボンまたは底面熱分解グラファイト(bppg)電極、上に固定化した場合、該素材は、酸化/還元時にそれに伴う陽子および電子の損失/獲得を受ける。
さらなるレドックス活性素材は、検出または測定する予定の種に対して、感受性であっても、非感受性であって良い。どちらの場合も、前に定義した化合物とさらなるレドックス活性素材の電流ピーク間の電位差を測定することによって、測定される種の濃度を定量できる。
本発明の電極は、pHメーターの製造に有効であることが好ましく、従って、1つの実施態様では、さらなるレドックス活性素材は、陽子の濃度に感受性である。好ましくは、さらなるレドックス活性素材のピーク電位は、局所の陽子濃度に依存する。本発明で使用した化合物(即ち、ニトロベンゼン誘導体またはその塩)に関連して上に議論したように、pHに感受性であるレドックス活性素材のボルタメトリーは、ネルンスト挙動を示すことを見出した。従って、例えば、サイクリックボルタメトリーまたは方形波ボルタメトリーを用いて、これらの化合物のボルタメトリー応答を調べることによって、pHに対するピーク電位の直線応答が期待されるであろう。
1つ以上のさらなるレドックス活性素材を、本発明に使用できる。適当なさらなるレドックス活性素材には、キノンおよびアントラセン、例えば、9,10-アントラセン、9-ニトロアントラセン、フェナントラキノン(PAQ)および1,2-ナフサキノン(NQ)が含まれる。使用できるその他の素材には、アゾベンゼン、ジフェニルアミン、メチレンブルー、3-ニトロフルオランテン、6-ニトロチリセンおよびチオニンが含まれる。
さらなるレドックス活性素材が存在する場合、該素材を、任意の適当な方法によって、修飾された炭素と結合することができる。例えば、本発明の1つの実施態様では、さらなるレドックス活性素材を、化学還元剤として次亜リン酸を用いたアリールジアゾニウム塩の化学吸着によって、修飾炭素と結合することができる。本発明の他の実施態様では、フェナントラキノン(PAQ)をグラファイト上に物理吸着することができる。
本発明の他の実施態様では、さらなるレドックス活性素材を、アグロメレーションによって、前記の修飾炭素と結合することができる。そのようなアグロメレートは、(i)式(I)のニトロベンゼン誘導体またはその塩である上記のような化合物を有し、該化合物が部分的に挿入された、炭素ナノチューブ、および(ii)結合剤がさらなるレドックス活性素材である、該結合剤、を含む。ナノチューブ、化合物およびさらなるレドックス活性素材は、上記の通りであって良い。
この実施態様では、アグロメレートは、結合剤中にナノチューブを分散させることによって作られる。好ましい方法は、上記のような部分挿入された化合物を有するMWCNTs(以後「修飾MWCNTs」)および結合剤素材を溶媒中で化合し、次に溶液からアグロメレートを沈殿させることを含む。特に、該方法は、
・ 修飾MWCNTsと結合剤を溶媒中で化合し;
・ 溶媒からアグロメレートを沈殿させるために、過剰の水溶液を加え;そして、
・ アグロメレートを回収する:
工程を含んで良い。
好ましくは、溶媒は、疎水性溶媒であり、小有機分子を含む。溶媒は、レドックス活性化合物および炭素ナノチューブの両方が該溶媒中に可溶であるように、選択されるべきではない。適当な溶媒には、アセトン、アセトニトリルおよびジメチルホルムアミドのような、一般の有機溶媒がすべて含まれる。
この実施態様では、さらなるレドックス活性素材は、水溶解度が低く、疎水性であることが好ましい。このことは、それらが、アグロメレート製造中に、炭素ナノチューブと溶液中で混合することを可能にし、さらに、過剰の水溶液を加えると、溶液からアグロメレートが沈殿する。
好ましくは、アグロメレートは、修飾MWCNTsおよびさらなるレドックス活性素材のみを含み、他の素材を含まない。しかしながら、アグロメレートは、アグロメレート製造工程で除去される、残留溶媒のような不純物を含んでいて良い。好ましくは、これら不純物は、アグロメレートの1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下を含む。アグロメレート中に受け入れうる不純物の正確な程度は、不純物がどの程度アグロメレートのボルタメトリーに影響を与えるかに依存することになる。
アグロメレートの大きさは、製造に用いられる成分の性質および割合、ならびに製造されるプロセス条件による。しかしながら、例示的アグロメレートは、直径おおよそ10μmであり、アグロメレートを共に結合する無定型分子固体の中に、およびいたるところにランニングするナノチューブの束からなる。
好ましくは、アグロメレートを、研磨による固定化によって、電極基板に適用する。
基板
修飾された炭素を適用する基板は、電極の製造に慣用に用いられる任意の基板であってよい。例えば、基板は、底面熱分解グラファイト(bppg)電極、またはガラス状カーボン、金もしくは白金のような金属電極、または所望によりITOを含む電極のような透明な電極であって良い。好ましくは、基板は、炭素ナノチューブと良好な電気接触を有し、また、炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材で良好な被覆を達成できる様な表面を有する。
センサー
本発明によるセンサーの構造は、センサーの最終的用途に依存することになり、そして、センサーが測定しようとする物質、および、測定が行われるであろう環境に依存する。既知のセンサー構造を、本明細書中に記載のアグロメレートおよび電極と共に用いてよい。
例示のセンサーは、2または3の端子装置を有していて良い。即ち、それらは、本発明の作用電極および対極と基準電極の合併電極、または、作用電極、対極および分離した基準電極、を含んでいて良い。基準電極および対極は、この技術分野で既知の任意の慣用の電極であることができる。
センサーに使用される素材は、センサーが測定しようとする種、およびセンサーを使用しようとする環境に依存する。異なる種に感受性であるセンサーを修飾するために、上記の部分挿入化合物(即ちニトロベンゼン誘導体またはその塩)、または別の部分挿入化合物を有するさらなるレドックス活性素材、または測定されようとする種に対して感受性を有するさらなるレドックス活性素材を取り替えることが当業者に要求されるのみである。
本発明の修飾炭素素材は、特に、センサーの回収が所望されないであろう、廃液または下水のような、「汚濁」環境で使用するための「単発(single-shot)」のpHセンサーでの使用に適している。
修飾炭素の製造方法
炭素を溶媒中で上記の部分挿入化合物と共に混合することによる本発明の方法に従って、該炭素を修飾する。適当な溶媒には、共通の非プロトン性溶媒が含まれる、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、クロロホルム、塩化メチレンの名を挙げることができる。溶媒を脱気して良く、または、例えば、溶存酸素のような溶存気体を含んでいて良い。
炭素、溶媒および化合物を、炭素内へ化合物が部分挿入されるに充分な時間、混合する。適当な時間は、1から5時間であるが、また、これより長い、または短い時間を用いることもできる。この時間の後、修飾された炭素をろ過し、任意の物理吸着された種を除去するために溶媒で洗浄し、さらに乾燥させる。この方法の特別な利点の一つは、カップリング剤を必要とせずに該方法が進行できることである。
当業者は、修飾炭素の最終用途に従って、化合物と炭素の相対量を選択できる。
驚くべきことに、本発明に使用した化合物は、炭素内に、自然に部分挿入する。得られた素材は丈夫であり、例えば、電気化学センサーとして用いられる場合、高温でも安定した応答を作り出す。さらに、化合物は高い割合で部分挿入する、即ち、多量の化合物を部分挿入できる。このことは、結果として、大きい電流応答および高い感受性を生じる。
本発明の第二の好ましい態様の実施例
以下の薬品を除き、全薬品を、Aldric(Gillingham,UK)から入手した。以下の薬品とは、塩化カリウム(Riedel de Haen,Seelze,Germany)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(tetorabuthylammonium perchlorate)(TBAP)、過塩素酸リチウム(Fluska Chemicals,Gillingham,UK)、アセトニトリル(合成用、99.9%、無水、Fischer Scientific,Loughborough,UK)、ジエチルエーテル(British Drug House Chemicals,Poole,UK)である。使用した薬品は、入手可能な最高級のものであり、さらなる精製を行うことなく使用した。
4-ニトロベンジルアミン(4-NBA)を、塩酸塩の形で入手した。遊離アミンを遊離させるために、以下の方法を用いた:4-ニトロベンジルアミン塩酸塩(2.0g、0.011mmol)を水(40cm3)に溶解し、水酸化ナトリウム(1M水溶液、20cm3)を加えた。溶液を2時間攪拌し、その後、溶液をジエチルエーテル(2 x 50cm3)で洗浄した。化合した有機層を食塩水(50cm3)で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下で濃縮すると、4-ニトロベンジルアミン(1.2g、収率78%)が赤色の結晶固体として得られ、これをさらに精製することなく使用した。純粋な化合物が再結晶されたことを確認するために、相当する核磁気共鳴スペクトルを記録し、ライブラリースペクトルと比較した。4-NBAの結晶は、使用するまで、密閉容器内に4℃で保存した。
18.2MΩcm以上の比抵抗を用いた、Elgastat(Elga,UK)UHQ級水系からの脱イオン水を用いて、水溶液を調製した。非水溶液は、アセトニトリル(99.99%無水物として供給されている)を用いて調製され、該非水溶液は使用前に5Åモレキュラーシーブ上で24時間乾燥して、いかなる微量水分をも除去した。純粋N2ガス(BOC gases,Guildford,Surrey,UK)で溶液を脱気した後、サイクリックボルタメトリー測定を、20±2℃で行った。
合成グラファイト粉末(2−20μm直径)を、Aldrichから購入した。多層炭素ナノチューブ(順度 >95%、直径10−40nm、長さ5−20μm)を、NanoLab Inc.(Brighton,MA,USA)から購入し、さらなる精製を行わずに使用した。
pH1.0からpH12.0の範囲の既知pHの溶液を、以下のように、脱イオン水中に作成した;pH1.0、0.10M HCl;pH4.6、0.10M 酢酸 +0.10M 酢酸ナトリウム;pH6.8、0.025M Na2HPO4 + 0.025M KH2PO4 ;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム;pH12、0.01M 水酸化ナトリウム。該溶液は、支持電解質として、0.10 M KClをさらに含んでいた。pH測定は、Jenway 3030 pHメーターを用いて行った。
電気化学測定を、標準的な3電極配置を有する μAutolab コンピューター制御ポテンショスタット(Ecochemie,Utrecht,Netherlans)を用いて記録した。全実験は、容量25cm3のガラスセル内で行われた。底面グラファイト電極(bppg,0.20cm2、Le Carbone Ltd,Sussex,UK)は、作用電極(下を参照のこと)として作用した。白金コイル(99.99% 、Goodfellow,Cambridge,UK)は、対極として作用する。セルの組み立ては、水溶液中の基準電極としての飽和カロメル電極(SCE,Radiometer,Copenhagen,Denmark)を用いる、または非水溶液中の準基準電極としてシルバーワイヤ(99.99% Goodfellow,Cambridge,UK)を用いるかのどちらかによって、完成した。
別に記載しない限り、サイクリックボルタメトリーを、以下のパラメーター:歩幅電位2mV、走査速度100mVs-1:を用いて記録した。方形波ボルタメトリーパラメーターは、以下の通りであった:周波数12.5Hz、歩幅電位2mVおよび振幅25mV。
走査電子顕微鏡(SEM)像を、Jeol 6500F 装置を用いて記録した。高分解能遷移電子顕微鏡(HRTEM)像を、Jeol 2010F 装置を用いて記録した。
X線粉末回折実験を、銅Kα1バンド(λ=1.54Å)からのX線照射を用いるPanalytical Xpet Pro 装置を使用して、行った。
実施例5
グラファイト粉末および多層炭素ナノチューブ(MWCNTs)を、4-NBAで誘導化し、bppg電極の表面上にそれらを研磨固定するための方法:
別に記載しない限り、グラファイト粉末(0.5g)またはMWCNTs(50mg)の、4-ニトロベンジルアミン(4-NBA)での誘導化を、グラファイト粉末サンプルまたはMWCNTsサンプルのいずれかを、アセトニトリル中の4-NBA溶液(10mM,25cm3)中で120分間、室温で攪拌することによって、成し遂げた。次に、サンプルを吸引下でろ過し、アセトニトリルで洗浄(5x50cm3)して、いかなる物理吸着種をも除去し、12時間空気乾燥させた。次に、サンプルを、使用前まで、空気密閉容器内で保存した。
次に、誘導化した炭素粉末またはMWCNTsを、任意の電気化学実験前に、清潔なbppg電極表面上に研磨固定した。これは、最初にガラス研磨紙(H00/240)上でbppg電極を磨き、その後、該電極を炭化ケイ素紙(P1000C)上でなめらかになるまで磨くことによって、成し遂げられた。次に、4-NBA炭素(即ち、部分挿入された4-NBAを有するグラファイト)または4-NBAMWCNTs(即ち、部分的に挿入された4-NBAを有するMWCNTs)は、4-NBA炭素または4-NBAMWCNTsを含むファインフィルターペーパー(Whatman)上で電極表面を穏やかにこすり磨くことによって、bppg電極上に研磨固定された。
実施例6:
4-ニトロベンジルアミンで誘導化したグラファイト粉末およびMWCNTsのボルタメトリー特性:
4-NBA分子がグラファイト粉末(4-NBA炭素)上、またはMWCNTs(4-NBAMWCNTs)上に付着し、それら自身がbppg電極上に研磨固定されていることを確認するために、サイクリックボルタメトリー(CV)を用いた。(下記の)標準的方法を、全pH範囲(pH1.0からpH12.0)に用いた。
最初に、20回繰り返し走査を記録し、問題のレドックス種(4-NBA)が水溶液と接触した場合安定であり、電極表面から脱離しないことを確認した。図15aは、pH6.8緩衝液中でのbppg上の4-NBA炭素の20回繰り返し循環を示す。図3aから分かるように、約−0.1V対SCEでの電気化学的にほぼ可逆な対(図15aおよび図14中、「系II」と示す)を作り出すためには、約−0.6V対SCEの不可逆レドックス段階(図15aおよび図14中、「系I」と示す)を通り越して、約−1.0V対SCEまで、負の方向に電位を掃引する必要がある。上に議論したレドックスプロセスの精密電位は、溶液のpHに依存することになる。pH1.0からpH12.0までの範囲で調べた全pHで、波型はほぼ対称であり、走査速度を増加すると共に、わずかにピークとピークの間が離れることが分かった。20回の繰り返し走査後、ピーク電流は、(最初にわずかな減少が認められるが、)安定なままであり、酸化および還元のピークプロセスの両方の電荷(ピーク面積)は、互いにほぼ等しいことが分かった(図15a)。
次の工程は、電解溶液を新しい溶液と取り替え、ボルタメトリー応答を記録することであった。相当するサイクリックボルタモグラムは、調査した全pHでの最終走査に重なることが分かり、それにより、電気活性な種は、電極上に残っており、溶液中に遊離しなかったことが確認された。図15bは、新たな溶液でpH6.8溶液を入れ替えた後のCVsの重なりを示す。
最後に、可逆対の形成(系II)の後、上記のように、走査速度を25から900mVs-1に変化させる(図15c)と、ピーク電流対走査速度のプロット(図15d)はほぼ直線であり、表面結合種と一致することが見出された。しかしながら、(約100mVの遅い走査速度での)ピークの隔たりは、理想的な固定化した電気化学可逆種での理論上のピークとピークの隔たりが0であることと比べると、明らかに大きい。これらの矛盾は、より速い走査速度でのいくらかのわずかなオームのひずみ、および/または、電極速度論因子による可能性があり得る。実際に、走査速度を上げた場合の波形およびピーク電位の変化から、電気化学的に準可逆な固定化系は、調査したpH範囲にわたって存在することが示唆される。
実施例7:
pH1.0からpH12.0での4-NBA炭素および4-NBAMWCNTsのボルタメトリー応答:
この実施例では、サイクリックボルタメトリーを用いて、これらの素材のpH1.0からpH12.0までの特徴を調べ、該修飾炭素素材をpHの分析センシング(analytical sensing)として使用できることを示す。図14に示すように、4-NBAのような芳香族ニトロ化合物の電気化学還元は、4電子、4陽子を含む不可逆反応をはじめに受けて、相当するアリールヒドロキシルアミンを形成する。繰り返し循環時、アリールヒドロキシルアミンは、次に、さらなる2-電子および2-陽子を含む、化学的に可逆で、電気化学的に準可逆な酸化を受け、相当するアリールニトロソ化合物になる。
それ故、これらの反応のピーク電位は、局在する陽子濃度に依存し、このため、pHの変化に感受性であるに違いない。pHでのピーク電位の変化は、前に議論したネルンスト式(1)によって、作図できる。この例では、n=mで、可逆反応の場合、2に等しいであろう(図14中系II)。
図16aは、bppg上の4-NBA炭素について、異なるpH溶液の範囲(pH1.0、0.10M HCl;pH4.6、0.10M 酢酸 +0.10M 酢酸ナトリウム;pH6.8、0.025M Na2HPO4 + 0.025M KH2PO4 ;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム;pH12、0.01M 水酸化ナトリウム)で、サイクリックボルタモグラム(第一走査)を重ねて記録した。図14の系Iに相当するピークについてのピーク電位対pHのプロットおよび図2の系IIに相当する酸化還元の両ピークを図16bに示す。ピーク電位対pHのプロットは、各々の場合、0.9943以上の相当するR2値を有する直線応答を示した。系IIの酸化還元ピークについてのそのようなプロットの勾配は、それぞれ、60.4mV/pH単位および59.8mV/pH単位の値を得た。これは、ネルンスト式から予想される298Kでの理想理論勾配59.1mV/pH単位に近い。
不可逆系IでのpHに対するピーク電位の同様のプロットは、42.5mV/pH単位の勾配を生じた。これは、明らかに、式(1)によって予想されるネルンスト挙動に反する。このことは、系Iは明らかに化学的電気化学的に不可逆であるが、ネルンストの式(1)は可逆速度論を示す系について誘導される、と言う事実によって部分的に説明できる。さらに、約40mV/pH単位シフトの類似の結果が、Wainらによる、様々なpH水溶液中に浸したbppg電極上の4-ニトロフェノール-ノニル-エーテルの微小滴についての研究から得られた。彼らは、ネルンスト挙動からの逸脱が、H+とK+、特にLi+ のようなアルカリ金属カチオンとの間の競合の可能性にあると考えた。系Iが第一対の走査後急速に消滅すると言う事実は、センサーの回復を所望しないような、廃液および汚水のような媒体中で使用するための「単発」pHセンサーとしての使用に理論上適した、本発明のこれらの修飾炭素素材を作る。
4-NBAの4-アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロソ部分の酸化/還元に相当する可逆的ネルンスト-レドックス反応は、何十回の走査を行っても安定なままである。pHでの該レドックス対の変化を、さらに方形波ボルタメトリー技術を用いて調べた。方形波ボルタメトリーは、アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロソ対が可逆に近い速度論挙動を有するように、明確なボルタメトリーピークを作り出す単一掃引を行う手段を提供するので、慣用のサイクリックボルタメトリー以上に有意の長所を有する。図17aは、4-NBAMWCNTsについて調査した各pHで重ねて記録した、相当する還元方形波ボルタモグラムを示す。pH1.0では、酸化波は、レドックス化学に影響を与えるアソキシ結合の存在によリ幾分ゆがめられていると記録するに値する。これは、低pH値で、pHに対するピーク電位のプロットが直線性から多少逸脱する原因となる(図17b)。さらに、pH12.0では、このpHでのサイクリックボルタモグラムで認められない特別なピークが認められる。このピークの存在は、そのようなアルカリpHで比較的安定かつ電気化学的に可逆である還元時に、ニトロ基のラジカルアニオンが形成されることによると考えられる。その存在は、方形波では認められるが、サイクリックボルタメトリーでは技術の感受性の高さ故、認められない。方形波データから得られたpHに対するピーク電位のプロットが、酸化反応および還元反応でそれぞれ62.8mV/pH単位および59.2mV/pH単位の勾配であり、0.9998以上のR2値を有する直線ネルンスト様応答を(低pHでの逸脱は別として)作り出すことは、図17bより明らかである。これは、再び、理論(式1)との卓越した一致を示す。
実施例8:4-NBA炭素および4-NBAMWCNTsの特性
次に、式(I)の化合物(本実施例では4-NBA)が本当に挿入されていたかを決定し、特に、部分的に挿入されていたかを決定するために、前実施例中で使用した炭素の表面修飾の性質を調査した。化合物による炭素の修飾と言う点では、一般的可能性が3つある:(i)物理的吸着(physisorption)、(ii)化学的吸着(chemisorption)および(iii)全挿入または部分挿入。
実施例8.1:グラファイトおよびMWCNTs上の4-NBAの物理的吸着(physisorption)に関する試験
発明者らは、誘導化工程中の反応混合物を攪拌する時間の長さが、炭素素材により吸着される4-NBAの量にどのように影響するかを調べた。これを行うために、アセトニトリル中の4-NBAの10mM溶液中に懸濁したグラファイト粒子またはMWCNTsを含む、反応混合物のアリコートを採取し、ろ過し、乾燥アセトニトリルで洗浄して、160分間攪拌しながら、その間40分間隔で乾燥させた。次に、サンプルをbppg電極上に研磨固定し、サイクリックボルタメトリーを、pH6.8緩衝液中で行った。各サンプルについて、5回の走査を記録し、規定時間で取り出した各アリコートについて、5つのサンプルを別々に研磨固定した。各サンプルについて記録された5回のサイクリックボルタモグラムから、図15a中、−0.6V対SCEのニトロ基部分の不可逆な4電子、4陽子還元に相当するピーク面積、および、図3a中、−0.1V対SCEの、可逆な2電子、2陽子アリールヒドロキシルアミン/アリールニトロソ対に相当するピーク面積を、測定した。これらのピークは、図14中、系Iおよび系IIで示す。
ピーク面積は、レドックスプロセス中に通過した電荷量であり、それ故、ファラデーの法則を用いて、炭素表面上の4-NBAのモル数と直接関係し得る。これは、各時間間隔を置いて採取した5サンプルのそれぞれについて繰り返した。研磨固定を用いると、電極表面上に固定化された素材の正確な量を厳格には制御できなかったため、5サンプルのそれぞれについて記録した5サイクリックボルタモグラムそれぞれからのデータ(調査した各時間につき全体で25サイクリックボルタモグラム)を平均し、時間に対してプロットした。標準偏差を計算し、各時間間隔で行った5つの研磨固定物のデータの分散を、各点についてエラーバー線として示した。
図18は、4-NBA誘導化グラファイトの0.6V対SCEでの不可逆還元ピークについて記録した、時間に対するピーク面積のプロットを示す。また、比較として該グラフ上に示した点線は、bppg電極の幾何学的領域を被覆する単層の4-NBA分子についての、および、電極の幾何学的表面上に単層で最密にパックされた(球体と見なした)グラファイト粒子表面を被覆する単層の4-NBAについての、通過する電荷の理論的最高値である。このモデルは、著しく単純化しすぎであり、なぜなら、第一に、bppgの真の表面積は、完全になめらかでない表面により、該幾何学的面積より常に大きいこと、第二に、電極表面上へのグラファイト粒子の研磨固定は、粒子の均一でない形および大きさにより、必ずしも最密にパッキングされないであろうことによる。しかしながら、そのような計算は、4-NBA分子による修飾度合の指標を我々に提供してくれるので、有用である。
図18は、反応時間をより長くすると、固定化された4-NBA量が、飽和を示す最大値に到達することを示す。類似の結果が、図2の系IIに属する酸化および還元の両ピークで、ならびにMWCNTsの誘導化の場合にも、認められた。この実験は、それ自身では、挿入の証拠を提供しないが、4-NBAが炭素表面を修飾できる部位の「充填度」(“filling-up”)に興味深い洞察を与える。また、この結果は、物理吸着が表面上に単層のみを形成する場合に、認められるであろう。事実上、4-NBAがMWCNTsまたはグラファイト粉末を修飾できる部位の数に限度があるという事実は、本明細書中で、物理吸着、化学吸着または4-NBAの挿入と表される任意の3つの仮定と一致することを、特記しておくことは重要である。
非水溶媒で処理した場合に脱離することが知られている任意の物理吸着素材を除去する具体的な目的で、誘導化炭素粉末/MWCNTsを、誘導化工程中に多量の乾燥アセトニトリルで洗浄する。それ故、この例では、表面吸着が修飾のメカニズムである可能性は非常に低い。
物理吸着に反するさらなる証拠は、支持電解質(以下を参照のこと)として0.1M TBAPおよび0.1M LiClO4を有するアセトニトリル溶液中の4-NBA炭素および4-NBAMWCNTsで、サイクリックボルタメトリーを用いて電気化学実験を行った事実から明らかになる。しかしながら、MWCNTsまたはグラファイト粉末からの4-NBAの緩慢な脱離速度論は、アセトニトリル中の4-NBA炭素および4-NBAMWCNTsからもボルタメトリーを認めることができると言う事実を説明していても良い。それ故、上記の我々の実験結果が緩慢な脱離速度論によるものでないことを確かめるために、以下の実験を行った。この実験では、4-NBA炭素をbppg電極上に研磨固定した。次いで、電極をアセトニトリル中に浸し、1週間保存した。一週間後、電極を取り出し、水溶液中に移し、サイクリックボルタメトリーを記録した。ピーク電流の大きさまたはピーク電位のいずれにも、水性ボルタメトリー応答の有意の低下は認められなかった。
次のサイクリックボルタメトリーを、支持電解質として0.1M TBAPまたは0.1M LiClO4のいずれかを含むアセトニトリル溶液中の固定化4-NBAで行った。負の方向に掃引した場合、ボルタメトリーピークは、各電解質塩と共に、付着したニトロ基部分の還元に応答して、観察された。支持電解質として0.1M TBAPを用いた場合、不充分に分解した電気化学可逆対が約−1.0V対Agに認められた。これは、ニトロ基の、相当するラジカルアニオンへの可逆的1電子還元によるものと考えることができる。0.1M LiClO4を支持電解質として用いた場合、不可逆還元波が約−0.8V対Agに認められ、還元系は、繰り返し循環で、約−0.4V対Agに形成された。
さらに、支持電解質として0.1M TBAPを含むアセトニトリル中のbppg電極上に研磨固定した4-NBA炭素を用いて、サイクリックボルタメトリー実験を行った。次に、電極を非水溶液から取り出し、水溶液(pH6.8)中に置いた。再び、4-NBAの水性レドックス電気化学に相当して、安定なボルタメトリー応答が認められた。次に、研磨固定した4-NBA炭素を含む電極を、直接水性電解質(pH6.8)中に置き、ボルタメトリーを記録した。pH6.8緩衝液中でボルタメトリーを行う前に、非水溶液中でサイクリックボルタメトリーを行う、および行わなかった)両例について得られたサイクリックボルタモグラムの比較は、ボルタメトリーで認められたピーク電流の大きさおよびピーク電位が殆ど同一であったことを示した。
4-NBAがグラファイト表面上に物理的に吸着されていたならば、アセトニトリル中で脱離することが予想され、さらに、非水性アセトニトリル溶液中、または水性電解質溶液中のいずれに置いても、応答が認められないであろう。
それ故、物理吸着は、グラファイトまたはMWCNTsの炭素表面が4-NBAで修飾されるメカニズムではないと、断定できる。
実施例8.2:グラファイトおよびMWCNTs上への4-NBAの化学吸着(ケミソープション)(chemisorption)に関する試験
先の研究で、炭素上への有機分子の化学吸着は、2つの方法で達成される。第一の方法は、ジアゾニウム塩の直接的電気化学還元またはアミンの電気化学酸化を用いる、「不均一な」での方法である。第二の方法は、「均一な」(用語「均一な」は、ここでは、変性剤および酸化剤/還元剤の両方が溶液相内にあるという意味で使われる)、例えば、グラファイト粒子存在中、次亜リン酸でのアリールジアゾニウム塩の還元、で行われる。
Barbierらは、直接電気化学酸化によって4-NBAをガラス状カーボン電極表面に「不均一」化学結合できることを示した。電極表面へのアミン結合形成のメカニズムは、アミン基の相当するラジカルカチオンArNH2 +への酸化を通して進行し、ArNH2 +は、次に、炭素表面と反応してC-N共有結合を形成できる。
「均一な」方法を用いて4-NBAの化学吸着が達成されたかを試験するために、以下の実験を行った:グラファイト粉末およびMWCNTsを4-NBA(アセトニトリル中10mM)で誘導化した。次に、該誘導化法を、新たなバッチのグラファイトおよびMWCNTsで繰り返したが、今回はアセトニトリルを使用前に20分間窒素ガスで脱ガスした。反応混合物を誘導化工程中窒素で覆い、溶液中に拡散する大気中の酸素を防いだ。この処理により、溶解酸素または大気中酸素による4-NBAのラジカルカチオンへの空気酸化の可能性、および次に起こる炭素素材との反応の可能性を防いだ。最後に、新たなバッチのグラファイトおよびMWCNTsを前記の方法で誘導化したが、今回は、強酸化剤、トリス(4-ブロモフェニル)アンモニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAHCA、アセトニトリル中25mM)を反応混合物に加えた。TBPAHCAを用いて、相当するラジカルカチオンへのアミン基の酸化および次の炭素素材との反応を促進した。
3つの異なる製造方法(強酸化剤を用いる方法、溶存酸素を含むアセトニトリルを用いる方法、および脱気アセトニトリルを用いる方法)のそれぞれから得られた4-NBA誘導化グラファイトおよびMWCNTsを、別々に、bppg電極上に固定化し、関連するサイクリックボルタモグラムを、pH6.8中緩衝液中およびアセトニトリル(0.1M TBAP)中で記録した。3例のすべてで、水性媒体または非水媒体のいずれに於いても、4-NBA炭素または4-NBAMWCNTsのボルタメトリー挙動に、差は観察できなかった。該グラファイトおよびMWCNTsは、誘導化を、脱気アセトニトリル中、溶存酸素を含むアセトニトリル中または強酸化剤の存在下のいずれで行っても、全く同様の様式で4-NBAによって誘導化されることが、この結果から推測できる。これは、アミン基の相当するラジカルカチオンの形成が起こりにくい場合でさえ、4-NBAは炭素素材を修飾することを、意味している。このように、ラジカルカチオンの形成および次に起こる炭素表面への攻撃を通しての4-NBAの化学吸収は、炭素修飾の有望なメカニズムでないと結論できる。
4-NBA分子がそれ自身で表面へ化学攻撃できるもう一つの可能なメカニズムは、表面カルボン酸基との反応によるものであり、製造中に合成グラファイトおよびMWCNTsの表面上に形成され、相当するアミドを形成する。しかしながら、これは、2つの理由で、もっともらしくない。第一に、アミドは、高いpHおよび低いpHで加水分解による開裂を受けやすいが、これに対して、我々は、サイクリックボルタメトリーを用いて、多数回繰り返し時にも安定なボルタメトリー応答が認められたことにより、4-NBAは、pH1.0およびpH12.0で炭素表面上に安定のまま残っていることを証明した。第二に、有意量の4-NBAが、ほんの40分間、反応混合物中で攪拌しただけで炭素表面を修飾していることを証明する実験を行った。数週間より短い時間単位でアミド化を起こすためには、アミノによるカルボン酸への求核攻撃を容易にし、OH-遊離基の飛び出しを援助する触媒として、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCC)のようなカップリング剤を用いることが、通例である。該誘導化工程中には、アミド化が起こるためのカップリング剤も充分な時間も存在しない。
実施例8.3:グラファイトおよびMWCNTs内への4-NBAの全体または部分挿入に関する試験:ボルタメトリーによる証明
本実施例の前の2節で、4-NBAはグラファイト粉末またはMWCNTsの表面上に吸着されそうにないことが確定したので、次に、発明者らは、炭素表面上に局在するエッジ面様欠陥での4-NBAの全体または部分的挿入の可能性を考慮した。第一に、グラファイト挿入化合物の課題に専心した広範囲の文献を参考に、電気化学的証拠を研究した。
アセトニトリル中に一週間、4-NBA修飾電極を浸した後でさえ非水溶液内でボルタメトリーを認めうると言う事実、および、4-NBAは炭素表面上に物理吸着または化学吸着されていないらしいことを示した事実から、4-NBAは炭素素材内へいくらか部分挿入していることが暗に示される。これは、グラファイトあるいはMWCNTsのいずれかの表面上のエッジ面欠陥またはエッジ面様欠陥で起こるらしい。これに関するさらなる電気化学的証拠は、アセトニトリル溶液中で用いられた支持電解質の影響から生する。
次に、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を支持電解質塩として用いる場合、4-NBA炭素または4-NBAMWCNTsのサイクリックボルタメトリーの姿は、小さく明確でない。しかしながら、次に、TBAP塩を過塩素酸リチウムと置き換えると、明確なボルタメトリーが認められる(図19)。特に、4-NBAは、Li+イオン存在下で電気化学的に還元されていなければ、アセトニトリル中で炭素との結合を残しており、溶液相内に浸出しないらしいことは特記に値する。これが起こる場合、TBAPの例とは異なって、ボルタメトリーで明らかなピークを生ずる。約−0.4V対Agで認められる電気化学的可逆対の調査から、繰り返し循環時、相当するピークは急速に減少し、10回走査によって完全に消えることがわかる。実験を繰り返し、電極を溶液中に浸したまま溶液を穏やかに攪拌することによって第一走査と第二走査の記録の間、溶液をかき混ぜると、このレドックスプロセスと関係するピークは、第二走査ではもはや存在しない。このことは、4-NBAの還元型であるレドックス種が溶液相内にあり、溶液の攪拌はこの種を電極表面から拡がる拡散層からバルク溶液中に移すことを暗示している。それ故、この種と関連するシグナルは、攪拌後は、もはやボルタメトリーで認められない。
この挙動は、4-NBAが炭素表面に沿ったエッジ面欠陥部位に部分挿入されるか否かを、説明できる。乱れた欠陥部位内への該NBu4 +カチオンの部分挿入によって形成される「ポケット」の内側に4-NBA分子が位置するので、NBu4 +カチオンを、4-NBA分子との接近および複合から立体的に妨害できる。さらに、典型的には、NBu4 +カチオンは、弱いイオン対結合複合体を形成する。それ故、0.1M TBAPを含むアセトニトリル中で認められるNBA炭素および4-NBAMWCNTsのボルタメトリーは、弱い。他方、リチウムカチオンは、大きさが非常に小さく、それ故、4-NBAが部分挿入されている場合でも、4-NBAに近づき得る。ニトロ基還元時、リチウムイオンは、高い極性を持ち、ラジカルカチオンまたはアリールニトロソ/アリールヒドロキシルアミンのいずれかとしての4-NBAの還元型と複合体を形成できる。このLi+イオンとの複合体は、溶液内に浸出する[Li 4-NBA]イオン対の原因となり得る。[Li 4-NBA]イオン対の形成は、0.1M LiClO4中の還元によるピーク電位が、0.1M TBAP中のピーク電位と比べて、正の方向にシフトしているという事実によって確認される。Li+との複合時のピーク電位のこの正方向へのシフトは、文献によく記載されている。はじめは、[Li 4-NBA]イオン対は、電極表面に隣接した拡散層内に残り、その結果、さらなるレドックスボルタメトリーを認めることができる。しかしながら、溶液攪拌時、これらのイオン対は、拡散層の外側のバルク溶液内に運ばれ、これにより、相当するボルタメトリーは、もはや認められない。
小サイズの溶解Li+イオンは、四級アンモニウムカチオンの大きさが、過塩素酸テトラエチルアンモニウムおよびテトラメチルアンモニウム(それぞれTEAPおよびTMAP)と共に実験を繰り返すことにより減少する場合ですら、ボルタメトリーは、わずかに残るので、多分、この方法には不適当である。
天然(即ち未修飾あるいは処理済)のグラファイトまたは(グラファイトの「巻き上げ」(“rolled-up”)シートと類似の)MWCNTsの層内領域への深い4-NBAの完全挿入は、全くありそうにない。注文したグラファイトシート間の層内間隔(Ic)は、3.35Å(MWCNTs内ではIc=3.44Å)であり、4-NBA分子を合理的に収容するには小さすぎる(図9)。完全挿入が起こるためには、層間間隔が増さねばならない。大規模な文献検索から、(1)アセトニトリルが天然グラファイト内に自然に挿入される証拠はなく、それ故、4-NBA挿入を容易にするであろうアセトニトリル内への侵入によって、グラファイト分子またはMWCNTsをふくらませる証拠はない;(2)天然グラファイト内へ自然に挿入される4-NBAと大きさが類似した有機芳香族分子を示唆する証拠はない;(3)Yがアミン基である式(I)化合物の場合、天然グラファイト内への(アンモニアおよびメチルアミンを含む)アミンの挿入に関する直接的証拠はない:ことが明らかである。しかしながら、上記の全シナリオは、グラファイトシート間の層内間隔(Ic)を増す場合には可能である。このことは、グラファイト内にLi+、K+の様なアルカリ金属イオンを挿入し、グラファイト挿入化合物(graphite intercalation compounds)(GICs)、例えば、C8Li、C24Li、を作り出すことにより、または、グラファイト酸化物およびグラファイト酸を用いることにより、容易に達成可能である。SWCNTsは、チューブ構造を壊すことなく、K+およびFeCl3を挿入できることを示唆する証拠さえある。それ故、本誘導化法は、いかなる上記のシステムまたは基準も含んでおらず、グラファイト内への4-NBAの完全挿入は起こらないと、結論付けることができる。
実施例8.4:グラファイトおよびMWCNTs内への4-NBAの完全または部分挿入に関する試験;電子顕微鏡および粉末X線回折からの証拠
電気化学手段を用いた4-NBAによるグラファイトおよびMWCNTsの修飾の原因が挿入にあることを推論するために、他の技術による証拠をここに示す。
挿入は、グラファイトのエッジ面でのみ起こるらしい。これらのエッジ面表面部位は、グラファイト粉末粒子上に多数あり、化学的電気化学的表面活性の大部分の部位もある。広範囲のこれらのエッジ面欠陥は、良く知られたグラファイト結晶構造が壊れた「乱れた」(“disordered”)グラファイト領域を導く。グラファイト粉末中の比較的大規模な乱れたドメイン、および不規則な形態、およびグラファイト粒子(2-20μm直径)のサイズ分布により、電子顕微鏡技術を用いた4-NBAでの修飾前および後の表面像は、表面修飾の姿および影響を見抜けない。しかしながら、MWCNTsは、比較的明確な大きさおよび形態を有し、それ自体では、4-NBAでの表面の修飾から起こるいかなる変化または相違も明らかになるはずである。
MWCNTs内への4-NBAの挿入は、チューブをふくらませる原因となる、隣接するグラファイトシート間の間隔の大きさまたは表面上のグラファイト素材の領域を、ある程度広げる原因となるはずである。極端な例では、これらの歪みは、チューブを歪めるおよび/または破裂させる原因にさえなることができた。任意のふくらみを4-NBA修飾MWCNTs内で認めることができるか否かを決定するために、SEMを用いて、未修飾の「天然」MWCNTsおよび4-NBA修飾MWCNTsの両方を、bppg電極表面上への研磨固定後、像を描いた(図10aおよび10b)。CNTs直径の細心な分析から、天然、未修飾のMWCNTsの平均直径は、約40nmであり、これに対して4-NBAMWCNTsの平均直径は約60nmである(天然および4-NBAMWCNTsについて、それぞれ、1サンプル当たり50測定を基本とし、両例での標準偏差は約10nmであった)ことが、示される。
多数の研究グループが、CNTの形成および成長を制御する方法を設計することに、少なからぬ時間および努力を捧げた。CNTs合成のモデルとして化学蒸気沈降(chemical vapour deposition)(CVD)を用いたCNT形成を描写するために用いられた一般の理論モデルは、ステップフロー成長速度論モデル(the steo-flow growth kinetics model)である。このモデルに於いて、成長するナノチューブ壁に沿った炭素原子の表面拡散速度の差は、多島核形成領域(regions of multi-island nucleation)の作りだし、その後、表面欠陥数および乱れた「無定形」領域を増加できる増殖「段階」(the propagatin “step”)に至る。さらに、MWCNTs形成中に別の層を成長させる表面拡散流動の本質的不均質は、「竹」構造(“bamboo” structure)を導く。これらの構造では、グラファイトシートは、ナノチューブの軸に角度をつけて並び、エッジ面欠陥としてチューブの表面で終わる。ほぼ全シートが表面で終わるはずであるので、エッジ面欠陥の数は大きい。こられの構造の描写に用いられた一つの像は、<<<<<<<(<は、複数のナノチューブの層を示す)の様に、一つの層の内側にもう一つの層を積み重ねた多数の紙コップに似た、竹-MWCNTである。
「竹-MWCNT」(“bamboo-MWCNTs”)の形成は、温度に依存する。本実施例で用いたMWCNTは、NanoLab Incから入手した。NanoLab Incは、約900Kの温度で行われるCVD技術を用いてこのサンプルを製造した。理論モデルは、いくらかの多島核形成および次に起こるMWCNTsに沿った竹様領域の形成が、この温度領域内で起こるらしいと予想している。
4-NBAの多量の取り込みの原因となるMWCNTsに沿ったこれらの竹様領域が存在し、その結果、竹様領域の上で行われるボルタメトリー実験の間、大きな電流が流れると、仮定される。
MWCMTsの形態にさらなる洞察を提供するために、HRTEMイメージングを行った。図23aおよび23bは、MWCNTsサンプルのHRTEM像を示す。これらの像は、「竹様」構造(以下を参照のこと)と中空管構造の両方がMWCNTsの長さに匹敵することを示す。
MWCNTsに沿った「竹様」領域の発見は、4-NBA炭素、特に4-NBAMWCNTsの還元/酸化の間、比較的大きい(mA)電流が流れることについての可能な説明を提供する。これらの大電流は、グラファイト粒子およびMWCNTs上の4-NBAの被覆度が高いことを示唆している。もし4-NBAが本当にMWCNs上のエッジ面欠陥内に部分挿入されているならば、これらの欠陥部位は非常に多数存在すると考えられるため、該4-NBAは、ナノチューブの解放末端に位置するのみならず、ナノチューブの表面に沿っても位置できるはずである。
次に、X線粉末回折(XPD)を用いて、4-NBAによるグラファイト粉末およびMWCNTsの修飾の影響について試験した。X線粉末解析データの分析に用いた基本式は、ブラッグの法則、式(2):
Figure 2007526474
(式中、nは1セットの平面からの反射次数を示す整数であり、λはX線照射波長/Åであり、dは層間間隔/Åであり、θはX線照射がサンプルに当たる入射角である)で示される。格子内への4-NBAの挿入による層間間隔の任意の増加は、d値を増加させ、従って、修飾サンプルのディフラクトグラムを未修飾サンプルのディフラクトグラムと比較することによって、見出すことができる。
4-NBA炭素および未修飾グラファイト粉末のX線粉末ディフラクトグラムを記録した。ディフラクトグラムの比較では、ピークの位置またはピーク幅および形のいずれに於いても、質的または量的な差は、認められなかった。両サンプルの層間間隔の値は、3.37±0.01Åであり、この値は、文献値3.35±0.05Åと良く一致する。この結果は、グラファイト格子内への4-NBAの完全挿入の可能性を排除する。しかしながら、このことは、エッジ面欠陥階段および欠陥を含む無秩序部位での4-NBAの部分挿入の可能性を排除するものではない。これは、XPDが、周知の値θで反射X線を得る周知の結晶構造を持つ高秩序領域を調べるためにのみ用いうることによる。任意の無秩序領域は、構造による干渉なしに、ランダムなθ値でX線を単に散乱させ、それ故、これらの信号はノイズとして失われる。MWCNTsはグラファイト粉末粒子と比較してより一層秩序ある形態を有するため、XPDを用いた4-NBAMWCNTsと天然MWCNTsの比較は、4-NBAによる表面修飾の姿に関して、より一層有益である。
この目的のために、4-NBAMWCNTsおよび「天然」の未修飾MWCNTsのX線粉末ディフラクトグラムを記録し、比較した(図24)。言及すべき第一の点は、修飾および未修飾のMWCNTs両方のピーク位置が実験誤差の範囲内で同一であり、層間距離は、3.47Åに相当し、文献値3.44±0.04Åと再び一致する。特記すべき第二の点は、両例共、ピークは、幅広であり、各ピークの左端に「尾」(“tail”)を持ち非対称であることである。これは、ナノチューブの結晶構造内にある程度の無秩序を導く層間間隔の変動による影響である。特記すべき重要点は、4-NBAMWCNTsピークが、天然MWCNTピークより明らかに幅広であることである。標準化したピークの分析から、天然MWCNTピークの半値幅は0.9446であるが、4-NBAMWCNTsの半値幅は、40%近く増加した1.3855であることが、明らかになる。これは、明らかな崩壊および無秩序なMWCNT構造の増加が存在したことを示しており、エッジ面表面欠陥で4-NBA分子が部分挿入されていることを支持する証拠を提供することができる。グラファイトシート間の無秩序化の増加を、Scherrerの式(3)を用いて、量的に測定することができ、該式(3)は、X線反射が起こる秩序ある結晶部分に存在する面の平均数と半値幅の関連を示す。
Figure 2007526474
Figure 2007526474
式中、λおよびθは、上記の式(2)に定義した通りであり、βは、半値幅であり、tは、結晶領域の厚さである。それ故、層間間隔(d)、次に結晶中の層の数(m、この場合グラファイトシート)が分かれば、秩序領域を式(4)から計算できる。表1は、4-NBAMWCNTsおよび天然MWCNTsのXPDから得られたデータを比較列挙している。 天然MWCNTsについてのグラファイトシートの秩序ある層の値 m=9は、平均9の同心円チューブ壁が存在することが分かったMWCNTsのHRTEM検査と一致する。この値は、CNTsを4-NBAで修飾するとm=6に減少し、エッジ面欠陥は、最大で最初の3層のグラファイト層を剥ぐことができるようなので、不合理な値ではない。
表1
未修飾の天然MWCNTsおよび4-NBA修飾CNTsについて実験的に定量されたX線回折のデータの比較
Figure 2007526474
本発明の第三の好ましい態様の詳細な説明
電極表面上に研磨固定され、電解質溶液と接触している、純粋な有機固体の固体状態の電気化学は、電極表面−有機固体−溶液界面の3相の境界で起こるはずである。酸化/還元時に電荷中立を維持するために、溶液相から結晶内への付随イオンの挿入が起こるはずである。図25は、電子の移動が起こり得るこの三相の境界を、白色描影法で図式的に表している。
しかしながら、電子の移動はこの三相の境界でのみ起こり得るので、個々の結晶それぞれの電気活性表面領域は、電極表面と溶液の両方と接触している非常に狭い面積に限定される。
従って、bppg電極表面上へ有機固体とグラファイト粉末の物理的混合物を研磨固定することを含む、もう一つの方法を採用した(図26を参照のこと)。
図26に示す電極の電気活性表面面積は、図25に示したものより大きい。これは、電極表面−有機固体−溶液の三相境界を形成できるだけでなく、炭素粒子が有機固体結晶と接触する場所でもさらなる炭素粒子−有機固体−溶液の三相境界が形成され、それ故、電荷の移動を増加させることによる。しかしながら、この方法を用いると電気活性は改良されるが、グラファイト粒子と有機結晶の間の接触度は、グラファイト粒子の大きさによって制限される。
本発明の第三の好ましい態様は、結合剤内に分散させた炭素ナノチューブを含むアグロメレート(agglomerates)を用いることに関し、該結合剤は、レドックス活性素材である。炭素ナノチューブは、好ましくは、多層炭素ナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes)(MWCNTs)である。
アグロメレートから作られた電極は、基板上に堆積させた炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を含む。炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材は、アグロメレート形で混合する必要はない。代わりに、それらを、基板表面上に単純に研磨固定して良い。しかしながら、本発明の第一の実施態様に記載したように、炭素ナノチューブとレドックス活性素材をアグロメレートの形で電極上に堆積させることが好ましい。さらに、炭素ナノチューブがMWCNTsの形であることが好ましい。
これらの電極の電気活性は、先行技術の電極より大きい。結果として、同じ応答を達成するために必要な素材は少量で良く、それ故、電極それ自身の大きさを小さくでき、該素材を用いる電気化学センサーの小型化を可能にする。
電気化学センサー内で使用するためのアグロメレートの製造方法は、結合剤内に多層炭素ナノチューブを分散させることを含み、該結合剤は、レドックス活性素材である。次に、このアグロメレートは、電極製造方法に使用でき、該方法は、基板を提供し、炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を基板表面に適用することを含む。
アグロメレートおよび電極は電気化学センサーに使用できる。そのようなセンサーを用いて、pH、一酸化炭素、硫化水素、酸素、二酸化炭素、金属イオン等のような、多数の異なる種をモニターできる。該センサーは、pHの測定、環境、化学、汚水、工業および廃液の様な、多数の分野で重要な測定に、特に有用である。
基板に適用した炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を有する電極を製造することによって、レドックス活性素材の表面とのより大きい接触が達成されるために、電気活性を有意に改善する。実質上、ナノチューブは、ナノチューブ−レドックス活性素材−溶液間に多くの三相境界を形成する分子ワイヤとして働く。ナノチューブおよびレドックス活性素材のアグロメレートが作られる場合でさえ、より大きい電気活性が達成される。この場合、ナノチューブは、レドックス素材によって共に束(bundles)に固められ、その結果、ナノチューブは、表面に沿うだけでなく、アグロメレートの中へ、また、それを通り抜けて、存在する。有機固体とナノチューブと溶液の間の全接触点で、三相の境界が形成される。より大きい電気活性表面積内での結果を先行技術と比較した。
このように、本発明の長所は、電気活性面積が増加することであり、同じ結果を達成するために必要とされる素材の量がより少ないことを意味している。結果として、電極、ならびに、該電極を使用するセンサーは、大きさを小さくすることができる。センサーの小型化は、それらを適用できる用途の数を増加する。例えば、該センサーは、患者の身体内に導入する必要がありうる生体医療での用途に使用できた。代わりに、該センサーを、センシング装置を制限された空間内で使用する必要のあるその他の用途に用いることができた。また、小型化は、センサーの携帯性を増加させる。
当業者は、本発明で用いたナノチューブとレドックス活性素材の比率を変更できる。ナノチューブとレドックス活性素材の機械的混合物を基板上に固定化する場合、これらの成分の割合は、好ましくは質量で10:1から1:10、より好ましくは5:1から1:5、より好ましくは、1:2から2:1である。成分が基板上にアグロメレートの形で存在する場合には、比率を有意に変更できる。原則的には、存在する炭素ナノチューブの量の下限はない。
本発明の第三の態様の個々の成分および態様を、以下にさらに詳しく、今記載する。
炭素ナノチューブ
炭素ナノチューブ(Carbon nanotubes)(CNTs、本明細書中では、ナノチューブとも言う)は長年にわたって知られているが、1991年に発見された(S.Iijima,Nature,1991,56,354)。研究に大きな展開が認められた分野およびナノ中部の用途は、電気化学である。炭素ナノチューブは、それらの注目に値する機械的強度、構造および良好な電気伝導率により、この分野で特に有用である。これらの性質は、触媒検出ならびにドーパミン、チトクロムcおよび炭水化物のような生体分子の分析から、過酸化水素、ヒドラジンおよびTNTのようなアナライトのセンシングまでの範囲にわたり、電気分析用途に用いられてきた。
構造的に、ナノチューブは、グラファイトの巻き上げシートに近く、それ自体は、天然で比較的疎水性である。これらの「巻き上げ」シートには2つの主な配置:単層炭素ナノチューブおよび複層炭素ナノチューブ(multi-walled carbon nanotubes)(MWCNTs):がある。本発明では、どちらの配置を使用しても良い。
適当なナノチューブには、Nanolab Inc.(Brighton,MA,USA)から購入したナノチューブが含まれる。当業者らは、ナノチューブの物理的性質を最適化できるが、典型的なナノチューブは、直径1−50nm、好ましくは5−30nmであり、長さは1−50nm、好ましくは5−30nmである。好ましくは、炭素ナノチューブは、比較的高い純度、好ましくは80−100%、より好ましくは90−100%、もっとも好ましくは、95−100%を有する。
レドックス活性素材
レドックス活性素材は、電子の放出および獲得を受ける能力を有する任意の有機素材であって良い。好ましくは、レドックス活性素材は、固相素材である。基板、例えばガラス状カーボンまたは底面熱分解性グラファイト(basal plane pyrolytic graphite)(bppg)電極、上に固定化された場合、該素材は、酸化/還元時に付随する陽子および電子の損失/獲得を受ける。
電気化学センサーに用いるために、少なくともレドックス活性素材の一部分は検出または測定すべき種に対して感受性である必要があるだろう。電極は、pHメーターの製造に有用であることが好ましく、従って、レドックス活性素材のピーク電位は、局所の陽子濃度に依存することが好ましい。。
pHに対して感受性であるそのような化合物のボルタメトリーは、電極表面上に分子固体として固定化した場合、以下のネルンスト式によって説明できるネルンスト挙動を示すことが分かった。
Figure 2007526474
式中、Ep/Vはピーク電位であり、Ef 0/Vはレドックス対の式量電位であり、R/JK-1は普遍気体定数であり、T/Kは温度であり、mおよびnはそれぞれレドックスプロセス中に含まれる陽子および電子の数である。以下の実施例中で試験された素材では、mおよびnは、しばしば2に等しい。
従って、例えばサイクリックボルタメトリーまたは方形波ボルタメトリーを用いて、これら化合物のボルタメトリー応答を調査することによって、pHに対するピーク電位は、直線応答を示すと予想される。
レドックス活性素材は、1より多い化合物を含むことができる。例えば、素材は、化学感受性レドックス素材および化学非感受性レドックス素材を含んで良い。この実施態様では、化学非感受性レドックス素材を対称標準素材として取り扱う。化学感受性レドックス素材と化学非感受性レドックス素材についての電流ピーク間の電位差を測定することによって、測定される種の濃度を定量できる。
代わりに、レドックス活性素材は、同一種に対して感受性であるの化学感受性素材を1つ以上含んでいて良い。化学感受性素材の電流ピーク間の電位差を、基準電極の電位と比較して測定することによって、測定される種のより正確な濃度を得ることができる。
好ましくは、実施例で用いられたレドックス活性素材は、疎水性であり、水溶解性は低い。このことは、アグロメレートを製造する場合、該レドックス活性素材を炭素ナノチューブと溶液中で混合することを可能にし、過剰量の水溶液を加えると、結果として溶液からアグロメレートが沈殿する。
適当なレドックス活性素材には、キノンおよびアントラセン、例えば、9,10-アントラセン、9-ニトロアントラセン、フェナントラキノン(PAQ)および1,2-ナフタキノン(NQ)が含まれる。使用できるその他の素材には、アゾベンゼン、ジフェニルアミン、メチレンブルー、3-ニトロフルオランテン、6-ニトロチリセンおよびチオニンが含まれる。
アグロメレート
本発明のアグロメレートは、ナノチューブおよび結合剤を含み、該結合剤はレドックス活性素材である。ナノチューブおよびレドックス活性素材の種類は、上記の通りであって良い。
アグロメレートは、ナノチューブを結合剤中に分散することによって、作られる。好ましい方法は、ナノチューブおよび結合剤素材を溶媒中で結合させ、次に、溶液からアグロメレートを沈殿させることを含む。特に、該方法は、
・ 炭素ナノチューブおよび結合剤を溶媒中で結合させる;
・ 溶媒からアグロメレートを沈殿させる原因となるために、過剰量の水溶液を加える;
・ アグロメレートを回収する:
工程を含んでよい。
好ましくは、溶媒は、疎水性溶媒であり、小有機分子を含む。溶媒は、レドックス活性化合物および炭素ナノチューブの両方が可溶であるように選択するべきである。適当な溶媒は、アセトン、アセトニトリルおよびジメチルホルムアミドのような一般的な溶媒をすべて含む。
好ましくは、アグロメレートは、炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材のみを含み、その他の素材を含まない。しかしながら、アグロメレートは、アグロメレートの製造プロセスの結果として残る、残余溶媒のような多少の不純物を含んでいて良い。これらの不純物は、好ましくはアグロメレートの1重量%以下、より好ましくは0.5%以下、含まれる。アグロメレートに混入しても良い不純物の正確な量は、不純物がどの程度アグロメレートのボルタメトリーに影響を与えるかによる。
アグロメレートの大きさは、それらの製造物中に用いられる成分の種類および割合、ならびにアグロメレート製造工程の条件に依存する。しかしながら、典型的なアグロメレートは、直径おおよそ10μmであり、アグロメレートを共に結合する非結晶分子固体の中およびいたるところに走るナノチューブの束からなる。
基板
炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を適用する基板は、電極の製造に慣用に使用される任意の基板であって良い。例えば、基板は、底面熱分解グラファイト(basal plane pyrolytic graphite)(bppg)またはガラス状カーボン、金あるいは白金のような金属電極、またはITOを含む電極のような光学的に透明な電極であって良い。好ましくは、基板は、炭素ナノチューブと良好な電気的接触を有し、また、炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材での良好な被覆を達成できるような表面を有する。
センサー
センサーの構造は、その最終用途に依存し、それ故、測定すべき物質および測定が行われるであろう環境に依存するであろう。周知のセンサー構造を、本明細書中に記載のアグロメレートと電極の組み合わせで使用できる。
典型的センサーは、2または3のターミナル装置を有して良い。即ち、該センサーは、本発明の作用電極と対極-基準電極の複合電極、または、作用電極と対極と基準電極を含んでいて良い。基準電極および対極は、この技術分野で既知の任意の慣用の電極であることができる。
センサーに用いられる素材は、センサーが測定する予定の種およびセンサーを使用する予定の環境に依存する。異なる種に感受性であるようにセンサーを修飾するために、当業者には、レドックス活性素材を、測定しようとする種に感受性を有する別のレドックス活性素材に置換することが、要求されるのみである。
本発明の第三の好ましい態様の実施例
実施例9:ナノチューブアグロメレートの形成および底面熱分解性グラファイト表面上へのナノチューブの研磨固定
試薬および装置
試薬は、塩化カリウムをRiedel de Haen(Seelze,Germany)から入手したのを除いて、全試薬をAldrich(Gillingham,UK)から、入手できる最高級のものを入手し、さらに精製することなく使用した。全水溶液は、18.2MΩcm以上の抵抗率を有する、Elgastat(Elga,UK)UHQ級う水系からの脱イオン水を用いて、調製した。全サイクリックボルタメトリー測定は、溶液を純粋なN2ガス(BOC Gases,Guildford,Surrey,UK)で30分間脱気した後に行い、特に記載しない限り、20∀2ECの温度で記録した。
純度〜95%の複層炭素ナノチューブ(MWCNTs)を、Nanolab Inc.(Brighton,MA,USA)から購入し、さらに精製することなく使用した。
pH1-12の既知pH溶液を、脱イオン水を用いて、以下の通り:pH1、0.1M HCl;pH4.6、0.1M 酢酸 +0.1M 酢酸ナトリウム;pH6.8、0.025M Na2HPO4 + 0.025M KH2PO4 ;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム;pH12、0.01M 水酸化ナトリウム:作成した。該水溶液は、さらなる支持電解質として、さらに0.1M KClを含む。pH測定を、Jenway 3030 pHメーターを用いて行った。
電気化学測定を、標準3電極配置を有する μAutolabコンピューター制御されたポテンショスタット(Ecochemie,Netherland)を用いて、記録した。全測定は、加熱浴から水を循環させることによって所望の温度(20−70EC)に自動調温した、容量25cm3の二重壁ガラスセルを用いて、行った。底面熱分解グラファイト(basal plane pyrolytic graphite)(bppg)電極(0.20cm2、Le Carbone Ltd.,Sussex,UK)は、作用電極として作用した(以下を参照のこと)。白金コイルは対極として、飽和カロメル電極はセル組み立てを完成させた基準電極(SCE,Radiometer,Copenhagen)として作用した。
別に記載しない限り、サイクリックボルタモグラムを、次のパラメーター:歩幅電位 2mV;走査速度50mVs-1:を用いて、記録した。方形波ボルタメトリーパラメーターは、次の通り:周波数 12.5Hz、歩幅電位 2mVおよび振幅25mV:であった。走査電子顕微鏡検査(SEM)を、Jeol 6500F装置を用いて、行った。
9,10-フェナントラキノンおよび1,2-ナフタキノンの両方の毒物学が未だ完全に調査されていないことは、特記に値する。両化合物は、有害、または皮膚接触あるいは吸入による刺激性、の可能性があり、発ガン物質の疑いがある。
ナノチューブアグロメレートの形成および底面熱分解グラファイト表面上への該アグロメレートの研磨固定
9,10-フェナントラキノン(phenanthraquinone)(PAQ)または1,2-ナフサキノン(napthaquinone)(NQ)のいずれかでのMWCNTsのアグロメレーションは、50mg MWCNTsをアセトン中のPAQまたはNQのいずれかの10mM 溶液10cm3と共に混合し、さらに25cm3の0.1M HCl + 0.1M KCl 水溶液をゆっくりと加えることによって、達成された。反応混合物を、ビーカー内で2時間連続攪拌し、次に、吸引によりろ過し、その後、蒸留水で洗浄して、酸および塩を除去した。次に、12時間の間、ヒュームフードの内側に置いて空気乾燥させ、最終的に、必要とされるまで、密閉容器内で保存した。
次に、ナノチューブとPAQまたはNQのいずれかとのアグロメレートをbppg電極表面上に研磨固定して、特徴を調べた。該アグロメレートは、最初にガラス研磨紙(H00/240)上で電極を研磨し、その後、平滑にするために炭化ケイ素紙(P1000C)上で研磨した。次に、ナノチューブ-PAQまたはナノチューブ-NQのアグロメレートを、アグロメレートを含むファインフィルターペーパー(Whatman)上で電極表面を穏やかにこすることによって、bppg上に機械的に固定化した。
実施例10:ナノチューブアグロメレートの特徴
はじめに、アグロメレートの形成を、SEMおよびCVを用いて確かめ、次に、bppg表面上へのアグロメレートの固定化を、CVを用いたボルタメトリーで確認した。
アグロメレーション度の測定
PAQまたはNQのいずれかの微小結晶とMWCNTsとの物理的混合物よりむしろ、PAQまたはNQのMWCNTsとのアグロメレートが形成されていることを確認するために、走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy)(SEM)を用いた。清潔なbppg電極表面上への研磨固定を行った後、各素材の像を、別々に描いた。はじめに、純粋な(有機固体を含まない)MWNCNTsのSEM像を記録した(図29)。次に、2.2節に記載の方法に従って修飾した、MWCNTsのSEM像を比較として記録した(図30および31)。
表面の上方に平らに分散させたbppg上の未修飾MWCNs(図29)と違って、MWCNTs-PAQ素材は、図28に図示したように、PAQによって共に束に固められたナノチューブのアグロメレートを本当に形成していたことが、これらの像より確認された(図30および31)。
最後に、PAQ結晶、MWCNTsとPAQ結晶の機械混合物、およびMWCNT-PAQアグロメレートのサイクリックボルタモグラム(図35に重ねて示した)を、bppg電極表面上に研磨固定した後、pH6.8で別々に記録した。各場合、類似したピーク高を有する対称に近い波形が、約−0.23V対SCEで認められ、ピークとピークのわずかな隔たりは、約20mMであった。
実験的には、bppg電極表面上に研磨固定した素材の正確な量を調節することは不可能である。しかしながら、図8、9および10から明らかなように、それら自身上のいずれのPAQ結晶と比べても同様の大きさのピーク電流を得るためには、目に見えない程度のMWCNT-PAQアグロメレート素材が、電極表面上に必要であった。図30は、MWCNTアグロメレートによるbppg電極上の表面被覆が事実上まばらであることを、示す。MWCNTsとPAQ結晶の機械的混合物は、中間の結果を示す。
MWCNT-PAQアグロメレートの有効な電気活性表面積の粗計算を試みた。PAQ分子は面積2.5×10-19cm2の方形を占領していると考え、酸化または還元された分子の数を相当するサイクリックボルタモグラムのピーク面積から計算した。即ち、該素材のおおよその電気活性表面積は、典型的には、bppg電極それ自身の面積の3倍よりも大きいことが分かった。
この粗計算は、電極表面積がその幾何図形面積に等しいと仮定していることは、特記に値する。実際には、研磨した表面は、幾何図形面積より実質的に大きい表面積を有して良い。さらに、MWCNT表面上の不純物がbppg/MWCNT界面領域の伝導率を損ないうるため、PAQまたはNQ結合剤の一部分は、電極表面の非能率な電荷移動により反応できない。しかしながら、これらの制限を記憶に留めながらも、なお、結果は、MWCNTアグロメレートを表面上に固定化する場合、電極の電気活性表面積が有意に増加することを示す。
これに関する一つの可能な説明は、炭素ナノチューブで修飾した電極の長所の一つが、明らかに分析上の恩恵を有する有効な電気活性表面積がより大きいと考えることにより見出される。研磨固定されたMWCNTアグロメレートの構造は、基板電極表面上の非結晶有機固体内に共に固められたMWCNTsの束と一致することが示された(上記)。本明細書中で議論したように、そのような構造は、純粋な有機結晶または有機固体とグラファイト粉末の物理的混合物を用いた場合の状況より、三相の境界が形成されうる電気活性表面積を有意に大きくする。これ故、上で調査した他の2例におけるように、同程度の強さのシグナルを作り出すために、アグロメレート素材をほとんど必要としない。
表面固定化の測定
bppg表面上への固定化を、サイクリックボルタメトリーを用いて確認した。次に、2つのアグロメレートをpH1-12の全pH範囲にわたって調査した。方法の第一段階は、かつてPAQまたはNQについてのレドックスプロセスの電位領域を測定したが、種の安定性を確実にするために、20回繰り返し走査を行うことであった(該走査の精密な電位範囲は、PAQおよびNQの間で、ならびにpHで、変化させた)。MWCNT-PAQアグロメレートおよびMWCNT-NQアグロメレートの両例では、走査速度の増加に伴って増加するピークのわずかな隔たりを伴う対称に近い波形(以下を参照のこと)は、全pHで認められた(図36aおよび36b)。20回の繰り返し操作後、ピーク電流は、(最初にわずかに減少することが分かったが)安定なままであり、酸化および還元の両ピークプロセスの電荷(ピーク面積)は、互いに等しい、ことが分かった。
方法の次の段階は、新たな溶液で電解質溶液を置き換え、ボルタメトリー応答を記録することである。関連するサイクリックボルタモグラム(図36aおよび36bに重ねて示した)は、最終走査に重なり、それによって、電気活性種が電極表面に残り、溶液に放出されていないことを確認した。最後に、走査速度を25から900mVs-1に変化させ(図37aおよび37b)、ピーク電流対走査速度のプロットがほぼ直線であることを見出した。ピークの隔たり(低走査速度で約20mV)は、固定化された電気化学可逆種についての理想的なピーク間の隔たり0に近い。しかしながら、実験によるピークの隔たりと理論的な隔たりとの間の不一致、およびピーク電流対走査速度のプロットの直線性からの逸脱は、わずかなオームの歪みおよび/または電極速度論因子に帰するであろう。実際、走査速度を上げた場合の波形およびピーク電位の変化は、電気化学的に準可逆な系が、調査した全pH範囲にわたって存在することを示唆している。
実施例11:室温でのpHに対するアグロメレートのボルタメトリー応答
安定で電気化学的にほぼ可逆な系が、pH1からpH12の全pH範囲にわたって、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQの両アグロメレートで認められることを、実施例2のサイクリックボルタメトリーを用いて確立するために、以下に詳細に記載する全調査で系を探る電気化学的方法として、方形波ボルタメトリーを用いた。この方法は、ほぼ可逆な電極速度論的挙動を有するPAQおよびNQによる周知のボルタメトリーピークを作る、単一掃引を行う手段を提供するため、慣用のサイクリックボルタメトリーと比較して、明らかな長所を有する。それ故、方形波ボルタメトリーは、特に、酸素還元が興味あるレドックスプロセスの電位とよく似た電位で競合し得るより高いpHで、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQ還元波の解像を助けることができる。方形波ボルタモグラムは、pH溶液の範囲内(pH1、0.1M HCl;pH4.6、0.1M 酢酸 +0.1M 酢酸ナトリウム;pH6.8、0.025M Na2HPO4 +0.025M KH2PO;pH9.2、0.05M 四ホウ酸二ナトリウム;pH12、0.01M 水酸化ナトリウム)でのMWCNT-PAQおよびMWCNT-NQアグロメレートについて記録し、それぞれ、図38aおよび38bに重ねて示す。図38aおよび38bより、pHを高くすると、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQのピーク電位は、予想通り、より低い電位にシフトすることが明らかである。この挙動は、bppg電極上に研磨固定されたPAQ結晶について認められた挙動と一致する。
pHに対するピーク電位の関連プロットは、pH1からpH12まで、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQについて、それぞれ、55.2および53.2mV/pH単位の勾配を有する、直線応答を示し、この応答は、前述の通り、繰り返しの多い電極を製造する場合にも再現できる。この応答は、先に議論した式によって与えられるようなネルスタイン応答に近く、炭素粉末での前述の調査と再度一致する。
実施例12:高温でのpHに対するアグロメレートのボルタメトリー応答
素材を高温環境下における適当なpHプローブとして用いて良いか否かを決めるために、アグロメレートのボルタメトリー応答への温度の影響を調査した。
系への温度の影響を調べるに当たって注記すべき一つの因子は、緩衝溶液中の成分の解離定数が温度で変化するので、溶液のpHが温度でどのように変化するかである。この目的のために、与えられた温度で既知のpHセットを有する3つのIUPAC緩衝液(pH4.6、pH6.8およびpH9.2)を用いた。それぞれ、希HClまたはNaOHのpH1およびpH12の溶液を、高温での調査に用いることによる誤差は、全緩衝液の温度によるpH変化が小さく、該溶液はプロットの末端であるので、無視して良い。
方形波ボルタモグラムを、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQの両方について、温度範囲20−70ECにわたって、pH1からpH12の範囲で、調査した各pHについて、記録した。この温度範囲の上限は、温度が溶液の沸点に達したことにより、電極上で泡が形成され始めることによって制限されることを、注記しておく。図15aおよび15bは、pH6.8 IUPAC緩衝液中で、温度範囲20−70ECにわたり、MWCNT-PAQおよびMWCNR-NQの方形波ボルタモグラムをそれぞれ重ねて示す。同様の応答は、調査した他の全pHでも得られた。温度上昇でより負の値にピーク電位がシフトするが、これは、一部、前に議論したネルンストの式中の、SCE基準対、式量電位(Ef 0)の温度依存、および温度条件の変化の組み合わせによると考えうる。ピーク電流は、はじめ、温度で上昇するが、その後30EC以降、着実に減少することは特記に値する。高温でのアグロメレートの安定性を調べるために、サイクリックボルタメトリーを、20−70ECの範囲で調査した全温度で行った。走査速度200mVs-1で研磨固定したMWCNTアグロメレートについて、各温度で、500走査を行い、5走査毎に記録した(これは約35秒の時間間隔に相当する)。すべての場合において、前述したような、単一の、可逆でほぼ対称な波が、MWCNT-PAQまたはMWCNT-NQアグロメレートに関連して認められた。これらのボルタモグラムよりピーク面積を測定した。該面積は、電極表面にMWCNTアグロメレートの形で残っている電気活性種の量と比例する。時間に対するピーク面積のプロット(表示せず)から、シグナルは、20ECでは約1時間にわたる500走査の間、安定のままであったが、30ECより上の温度では、シグナルの大きさに減少が認められることが分かった。この挙動は、シグナルの大きさが温度の上昇に伴って着実に増加する、グラファイト粒子上に化学吸着したアントラキノンと対照的であるが、グラファイト粒子表面上に物理吸着したPAQの前の調査と一致する。このことは、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQアグロメレートについて高温で認められたシグナルの減少は、アグロメレートの部分的溶解によるものであると示唆される。しかしながら、70ECで500走査(約1時間)の後でさえ、感知できるシグナル、元の値の約10%、がまだ残っている。
図40は、70ECでのNQについての方形波ボルタモグラムを重ねて示しており、この高い温度でも分析上有用な応答を認めうることを示す。
MWCNT-PAQおよびMQCNT-NQの両アグロメレートについて、調査した各温度でのピーク電位対pHのプロットは直線になり、R2値は0.998以下でなく、その勾配を表6に示す。ネルンスト式によって予想される理論勾配も、比較として表6に示す。認められるように、pHでのピーク電位の勾配の変化はネルンスト様ではなく、50ECの温度範囲で約3mV/pH単位変化し、温度に比較的非感受性である。このことは、これらアグロメレートを高温でpHセンサーとして用いうることのみならず、温度のきわめて有意な変化によっても大きな影響を受けないことを示しており、都合がよい。
表6
研磨固定したMWCNT-PAQおよびMWCNT-NQアグロメレートについて、調査した各温度での、pHに対するピーク電位のプロットの勾配(実験による)
Figure 2007526474
実施例11および12に示したように、pHに対するピーク電位の直線応答は、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQの両アグロメレートについて、調査した全pH範囲および温度範囲にわたって認められた。さらに、各温度でのpHに対するピーク電位のプロットの勾配を比較すると、MWCNT-PAQおよびMWCNT-NQの両アグロメレートが温度変化の影響に比較的非感受性であることが分かる。そのような性質は、異なる温度範囲でサンプルが得られる場合のpH測定に好都合である。
本発明の第四の好ましい態様の詳細な説明
本発明の第四の好ましい態様では、電極は、炭素組成物およびレドックス活性化合物の基板上に層を含み、該層は、層を切断することによって形成されるエッジ(edge)を有するし、炭素およびレドックス活性化合物をさらす。
本発明の第四の好ましい態様の電極は、どのような化学物質を分析に使用する予定でも、最初に、結晶と混合しインク化した炭素を用いて、基板上にプリントすることによって、作ることができる。次に、図41に示したように、プリントした電極を薄板にし、ストリップの形にする。はさみでストリップの端を切断することによって、電極を活性化し、プリントの断面を露わにする。次に、図42に示すように、該断面は、その表面にさらされた、炭素(インク)およびインクと混合した化学物質の結晶を有することになる。
次に、カット電極を溶液中に浸すと、炭素、固体結晶および分析溶液の間の三相の境界で、反応が誘導されて起こる。
「切断」(“cut”)電極に関連した感受性の増加は、図43および44で認めることができる。図43は、印刷電極を用いて記録した方形波ボルタモグラム(Square Wave Voltammmagram)(SWV)を示す。また、該図は、端を切断した後の同一電極で記録したSWV(上の線)も示す。切断電極についてSWV上に認められる鋭いピーク(上の線)は、溶液と接触しているさらされた結晶によるものである。
印刷電極を薄板にしても、さらされた電極表面は存在しない。しかしながら、エッジを電極ストリップに切断した場合、さらされた表面(図41を参照のこと)は、図44の一番下の線で表したSWVに似たSWVを作り出す。また、図44に示した曲線は、比較として示した図43からの曲線である。また、プロットは、薄板にし切断した電極で達成される明らかな信号を表示する。
クレイムの範囲から逸脱することなく、上記のように本発明を修飾できることは、当業者に明らかであろう。
図1は、pH1.0(0.1M HCl + 0.1M KCl)で可逆系を発現させた後の、bppg上に固定化した6-ニトロチリセン炭素のボルタメトリー応答を、走査速度(25、50、100、200、300、400、500、750、1000mVs-1を変えて示した図、および酸化ピーク電位対走査速度の関連プロットを示した図(挿入図)である。 図2は、調査した各pH(pH1、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)でのPAQのサイクリックボルタモグラムを、歩幅電位2mV、走査速度100mVs-1で示す。 図3は、a) 調査した各pH(pH1、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)でのDPAの基準線を修正した酸化および還元の方形波ボルタモグラムである。b) 酸化ピーク電位対pHの関連プロットである。 図4は、pH6.8緩衝液中のジフェニルアミン誘導化炭素のサイクリックボルタメトリーであり、その第1走査、第2走査、および第10走査を示す。 図5は、pH12.0緩衝液(0.1M NaOH + 0.1M KCl)中でのbppg電極上に固定化したチオニン誘導化炭素粒子のサイクリックボルタモグラムであり、第1および第4走査を示す。 図6は、pH9.2緩衝液(0.05M 四ホウ酸ナトリウム + 0.1M KCl)中でのbppg電極上に固定化した6-ニトロチリセン誘導化炭素粉末のサイクリックボルタモグラムであり、第1走査および第10走査を示す。挿入図:bppg電極上に固定化した9-ニトロアントラセン誘導化炭素粉末の可逆系、pH6.8での10CV走査を示す(本文を参照のこと)。 図7は」、pH4.6緩衝液(0.1M 酢酸 + 0.1M 酢酸ナトリウム + 0.1M KCl)中での、bppg電極上に固定化したFBK誘導化炭素粉末のサイクリックボルタモグラムであり、第1および第2走査を示す。 図8は、pH4.6緩衝液(0.1M 酢酸 + 0.1M 酢酸ナトリウム + 0.1M KCl)中での、bppg電極上に固定化したFBK誘導化炭素粉末のサイクリックボルタモグラムであるが、電位を系(II)の周囲でのみ循環させ(本文を参照のこと)、その第1および第10走査を示す。挿入図:同一系でのCV走査であるが、走査速度を変化させた(25、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800および900mVs-1)。 図9は、アゾベンゼン誘導化炭素のpH4.6での30回繰り返しCVであり、非常に低い電位への掃引の影響を示す。 図10は、pH4.6(0.1M 酢酸 + 0.1M 酢酸ナトリウム + 0.1M KCl)緩衝液中での、DPA-炭素の基準線を修正した酸化SWVボルタモグラムであり、25−80℃の温度範囲を5℃毎に示す。 図11は、本発明の第一の好ましい態様に従った、pHセンサーを示す。 図12は、本発明の第一の好ましい態様に従った、単一基板上のpHセンサーのアレーを示す。 図13は、MWCNT表面に沿って位置するエッジ面欠陥部位内への4-NBAの部分挿入(案)を説明する概略図を開示する。 図14は、アリールニトロ部分の電気化学的還元についての一般的機構を開示する(本図ではニトロベンゼンによって説明している)。 図15aは、pH6.8緩衝液中でのN-NBA炭素の20連続サイクリックボルタモグラムを示す。 図15bは、pH6.8溶液を新しい溶液で入れ替える前および後に記録したサイクリックボルタモグラムを重ねて示す。 図15cは、系IIに相当する可逆対の形成後の4-NBA炭素のサイクリックボルタモグラムを、pH6.8緩衝液中、異なる走査速度(25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900mVs-1)で、重ねて示す。 図15dは、ピーク電流対走査速度の関連プロットを示す。 図16aは、異なるpH溶液(pH1.0、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)中で記録した、4-NBA炭素の第1サイクリックボルタモグラムを示す。 図16bは、ピーク電位対pHの関連プロットを示す。 図17aは、異なるpH溶液(pH1.0、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)中で記録した、4-NBA誘導化MWCNTsの方形波ボルタモグラム(負の掃引)を重ねて示す。 図17bは、相応するピーク電位対pHのプロットを示す。 図18は、様々な誘導化時間で採取した、4-NBA炭素についての系Iピーク面積対時間のプロットである。誤差バーは、5サンプルでの標準偏差を示す。 図19は、0.1M LiClO4を含むアセトニトリル中での4-NBA炭素の5連続サイクリックボルタモグラムを示す。 図20は、グラファイト内に部分挿入された4-NBAの略図モデルであり、溶媒化したLi+カチオンが4-NBA分子と密接に接触できるが、溶媒化したNH4 +カチオンは接触できないことを示す。 図21は、グラファイト構造の略図モデルであり、4-NBA分子のおおよその寸法および比較としてグラファイト層の間隔を示す。 図22aは、4-NBAで修飾したMWCNTsの走査電子顕微鏡像を示す。 図22bは、未修飾の「天然」MWCNTsの走査電子顕微鏡像を示す。 図23aは、MWCNTの「竹様」領域の高分解能透過電子顕微鏡像を示す。 図23bは、MWCNTの「中空様」領域の高分解能透過電子顕微鏡像を示す。 図24は、未修飾「天然」MWCNTsを、4-NBA修飾MWCNTsと比較したX線粉末回折を示す。 図25は、有機結晶のようなレドックス活性素材を電極表面上に固定化した場合に三相境界の形成が起こり得る領域を示す概略図である。 図26は、有機結晶のようなレドックス活性素材を炭素粒子と混合し、電極表面上に固定化した場合に三相境界の形成が起こり得る領域を示す概略図である。 図27は、有機結晶のようなレドックス活性素材を炭素ナノチューブと混合し、電極表面上に固定化した場合に三相境界の形成が起こり得る領域を示す概略図である。透明なため、電極表面は示されていない。 図28は、有機結晶のようなレドックス活性素材を炭素ナノチューブとアグロメレートし、電極表面上に固定化した場合に三相境界の形成が起こり得る領域を示す概略図である。透明なため、電極表面は示されていない。 図29は、bppg電極表面上に分散した研磨固定ナノチューブのSEM像である。 図30は、bppg電極表面上に研磨固定された多層炭素ナノチューブおよび9,10-フェナントラキノンのアグロメレート(MWCNT-PAQアグロメレート)のSEM像である。 図31は、MWCNT-PAQアグロメレートの拡大SEM像である。 図32は、純粋なPAQ結晶を研磨固定した後のbppg電極のデジタル像である。 図33は、PAQ結晶と複層炭素ナノチューブ(MWCNTs)の物理的混合物を研磨固定した後のbppg電極のデジタル像である。 図34は、MWCNT-PAQアグロメレートの研磨固定後のbppg電極のデジタル像である。 図35は、図8、9および10に描かれた各素材から記録したサイクリックボルタモグラムを重ねて示しおり、ピーク電流の大きさの比較は、bppg電極表面上に存在が認識できる素材量との比較を可能にする。 図36は、a)bppg上のMWCNT-PAQアグロメレート;ならびに、b)bppg上の多層ナノチューブおよび1,2-ナフタキノンのアグロメレート(MWCNT-NQアグロメレート);の、pH6.8緩衝液中での20回繰り返し循環(走査速度50mVs-1)を示したサイクリックボルタモグラムである。新鮮な溶液で緩衝液を置き換えた後記録したサイクリックボルタモグラムを各例に重ねて示す。 図37は、a)bppg上のMWCNT-PAQアグロメレート;ならびに、b)bppg上のMWCNT-NQアグロメレート:の、pH6.8緩衝液中で記録した異なる走査速度(25−900mVs-1でのサイクリックボルタモグラムである。挿入図は、ピーク電流対走査速度のプロットを示す。 図37は、a)bppg上のMWCNT-PAQアグロメレート;ならびに、b)bppg上のMWCNT-NQアグロメレート:の、pH6.8緩衝液中で記録した異なる走査速度(25−900mVs-1でのサイクリックボルタモグラムである。挿入図は、ピーク電流対走査速度のプロットを示す。 図38は、a)bppg上のMWCNT-PAQアグロメレート;および、b)bppg上のMWCNT-NQのアグロメレート:の、20EC、次の緩衝液の範囲(pH1.0、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)で記録した、酸化および還元方形波ボルタモグラムを重ねて示す。 図39は、a)bppg上のMWCNT-PAQアグロメレート;および、b)bppg上のMWCNT-NQアグロメレート:の、pH6.8緩衝液中、異なる温度(20、30、40、50、60および70EC)での方形波ボルタモグラムを、重ねて示す。 図40は、次の緩衝液の範囲(pH1.0、pH4.6、pH6.8、pH9.2およびpH12)、70ECでの、MWCNT-NQアグロメレートの酸化および還元方形波ボルタモグラムを、重ねて示す。 図41は、本発明の第四の好ましい態様による、プリント、層板および切断(PLC)電極の略図である。 図42は、PLC電極の顕微鏡写真である。 図43は、非切断電極の第1走査(下方プロット)および切断後の同一電極の第1走査(上方プロット)を示す。 図44は、薄板にした切断電極から生じた方形波ボルタモグラム(SWV)(一番下のプロット)であり、図43と同じデータも示す。

Claims (76)

  1. 電気化学センサーに使用するための、炭素およびレドックス活性化合物を含む、電極であって、該レドックス活性種が、アントラキノン、フェナントレンキノンまたはN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンより選択される該種を少なくとも一種含む、2種の該レドックス活性種で誘導化された炭素をベースにした電極を除外する、電極。
  2. レドックス活性化合物がアントラキノン、フェナントレンキノンまたはN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンでない、請求項1記載の電極。
  3. レドックス活性化合物が化学感受性化合物である、請求項1または2記載の電極。
  4. 電極形成前に、炭素およびレドックス活性化合物が共に調合されている、請求項1、2または3記載の電極。
  5. 炭素が1以上の以下の方法:
    ・ 化学感受性レドックス活性素材での均一な化学的誘導化;
    ・ 化学感受性レドックス活性素材の物理吸着による誘導化;および、
    ・ 化学感受性レドックス活性素材と結合剤の物理的混合:
    によって修飾される、請求項1−4のいずれか1項記載の電極。
  6. レドックス活性素材で修飾された炭素を含む電極であって、該電極をサイクリックボルタメトリーにかける場合、レドックス活性素材が不可逆化学反応を受ける、電極。
  7. 請求項1−6のいずれか1項記載の電極を含む電気化学センサー。
  8. 化学感受性レドックス活性素材で修飾された炭素を含む作用電極;および
    対極を含むpHセンサーであって、作用電極の表面積と対極の表面積の比率が1:10から10:1である、pHセンサー。
  9. 作用電極の表面積が10μm2から0.1m2である、請求項8記載のpHセンサー。
  10. 作用電極の表面積が50μm2から0.1m2である、請求項9記載のpHセンサー。
  11. 化学感受性レドックス活性素材で修飾された炭素を含む作用電極、および対極を含むpHセンサーであって、作用電極の面積が500μm2から0.1m2である、pHセンサー。
  12. 作用電極の表面積と対極の表面積の比率が1:5から3:1である、請求項8−11のいずれか1項記載のpHセンサー。
  13. 作用電極の表面積が0.5mm2から10mm2である、請求項8−12のいずれか1項記載のpHセンサー。
  14. 化学感受性レドックス活性素材がpHの変化に感受性である、請求項8−13のいずれか1項記載のpHセンサー。
  15. 炭素が一以上の以下の方法:
    1) 化学感受性レドックス活性素材での均一な化学的誘導化;
    ・ 化学感受性レドックス活性素材の物理吸着による誘導化;および、
    ・ 化学感受性レドックス活性素材と結合剤との物理的混合:
    の一つ又はそれより多くによって修飾されている、請求項14記載のpHセンサー
  16. 作用電極が、少なくとも化学非感受性レドックス活性素材をさらに含む、請求項8−15のいずれか1項記載のpHセンサー。
  17. 化学感受性レドックス活性素材が1以上の別の化合物を含む、請求項8−16のいずれか1項記載のpHセンサー。
  18. 作用電極が、pHの変化に感受性である2つのレドックス活性素材、およびpHの変化に非感受性である2つのレドックス活性素材を含む、請求項17記載のpHセンサー。
  19. 電極をサイクリックボルタメトリーにかける場合、化学感受性レドックス活性素材が不可逆化学反応を受ける、請求項14−18のいずれか1項記載のpHセンサー。
  20. 電極をサイクリックボルタメトリーにかける場合、不可逆化学反応生成物が可逆電気化学を示す、請求項17記載のpHセンサー。
  21. 電気化学センサーに使用するための電極を製造する方法であって、化学感受性素材が2つのレドックス活性種ではなく、その1つをアントラキノン、フェナントレンキノンまたはN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンから選択する条件で、一つの化学感受性レドックス活性素材で炭素を修飾することを含む方法。
  22. 炭素を修飾する工程が1以上の以下の方法:
    1) 化学感受性レドックス活性素材での均一な化学的誘導化;
    ・ 化学感受性レドックス活性素材の物理吸着による誘導化;および、
    ・ 化学感受性レドックス活性素材と結合剤との物理的混合:
    の一つ又はそれより多くを含む、請求項21記載の方法。
  23. サイクリックボルタメトリーにかける場合、化学感受性レドックス活性素材が不可逆化学反応を受ける、請求項21または22記載の方法。
  24. 電極をサイクリックボルタメトリーにかける場合、不可逆化学反応の生成物が可逆電気化学を示す、請求項23記載の方法。
  25. 化学感受性レドックス活性素材で修飾した炭素を基板に適用する工程をさらに含む、請求項21−24のいずれか1項記載の方法。
  26. 化学感受性レドックス活性素材が水素イオンの濃度の変化に感受性である、請求項19−23のいずれか1項記載の方法。
  27. 化学感受性レドックス活性素材で修飾した炭素を基板表面に適用することを含む、適用位置で電極を製造する方法であって、サイクリックボルタメトリーを行うと、化学感受性レドックス活性素材が不可逆化学反応を受ける、方法。
  28. 電極をサイクリックボルタメトリーにかけると、不可逆化学反応生成物が可逆電気化学を示す、請求項27記載の方法。
  29. サイクリックボルタメトリーを行うと、化学感受性レドックス活性素材が重合を受ける、請求項27または28記載の方法。
  30. 化学感受性レドックス活性素材がニトロ置換基を有する、請求項28または29記載の方法。
  31. 請求項1−6のいずれか1項記載の電極、または請求項8−20のいずれか1項記載のpHセンサーの部分を形成する電極であり、さらに、基板上に配置された、炭素および式(I)化合物:
    Figure 2007526474
    式中、R1は、式 -Yまたは-X-Yの基であり、式中Yは水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび-NR34から選択され、式中R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシから選択され、また、式中Xは式 −(CR56)n- の基を表し、式中nは0または1から4の整数であり、R5およびR6は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される、またはR5とRが一緒に式=Oまたは=NR7を形成し、式中R7は、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ;C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニルチオ、ニトロ、シアノ、-O-CO-R’、-CO-O-R’、-CO-NR’R”、-COR’、-S(O)R’ および -S(O)2R’ より選択され、式中、R’ およびR” は各々同一かまたは異なり、水素、C1-4アルキル、またはC2-4アルケニルを示し;さらに、
    mは、0または1から4の整数である:
    またはその塩を含み、該式(I)化合物が炭素内に部分的に挿入されている、電極。
  32. 粉末化した炭素がグラファイトまたは多層炭素ナノチューブの形である、請求項31記載の電極
  33. 化合物が、式(II)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、R2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    mは0、1または2であり;
    Xは、式-(CR56)n- の基であり、式中nは、0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;さらに、
    Yは、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび -NR34から選択され、R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:
    またはその塩である、請求項31および32記載の電極。
  34. 化合物が、式(III)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、
    2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    mは0、1または2であり;
    Xは、式−(CR56)n- の基であり、式中nは、0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;さらに、
    3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:
    またはその塩である、請求項31、32または33記載の電極。
  35. 化合物が、式(IV)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:またはその塩である、請求項31−34のいずれか1項記載の電極。
  36. 作用電極および対極を含む電気化学センサーであって、該作用電極が、請求項31−35のいずれか1項記載の電極を含む、電気化学センサー。
  37. 基準電極をさらに含む、請求項36記載のセンサー。
  38. 電気化学センサーに使用するための電極を製造する方法であって、基板を提供し、請求項31記載の組成物を該基板表面に適用することを含む、方法。
  39. 適用工程が基板表面上に組成物を研磨固定することを含む、請求項38記載の方法。
  40. 請求項1−6のいずれか1項記載の電極、または請求項8−20のいずれか1項記載のpHセンサーの部分を形成する電極であって、基板上に、炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を配置することを含む、電極。
  41. レドックス活性素材が、電気化学センサーによって検出される種の濃度に化学感受性であるボルタメトリー応答を有する、請求項40記載の電極。
  42. レドックス活性素材がプロトンの濃度に感受性である、請求項40または41記載の電極。
  43. レドックス活性素材が、電気化学センサーで検出される種の濃度に化学的に非感受性である、さらなるレドックス活性素材を含む、請求項40または41記載の電極。
  44. レドックス活性素材が、電気化学センサーによって検出される種の濃度に化学的に感受性である、少なくとも2つのレドックス活性素材を含む、請求項40−43のいずれか1項記載の電極。
  45. 炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を、機械混合物の形、またはアグロメレートの形のいずれかで基板上に適用する、請求項40−44のいずれか1項記載の電極。
  46. アグロメレートを基板上に研磨固定する、請求項45記載の電極。
  47. 作用電極および対極を含む電気化学センサーであって、該作用電極が請求項40−46のいずれか1項記載の電極を含む、電気化学センサー。
  48. さらに基準電極を含む、請求項47記載のセンサー。
  49. レドックス活性素材がプロトンの濃度に感受性であり、センサーがpHセンサーである、請求項48記載のセンサー。
  50. 電気化学センサーに使用するための電極を製造する方法であって、基板を提供し、該基板表面に炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を提供することを含む、方法。
  51. 炭素ナノチューブおよびレドックス活性素材を、機械混合物の形またはアグロメレートの形で基板に提供する、請求項50記載の方法。
  52. 適用工程が、炭素ナノチューブおよびレドックス素材を基板上へ研磨固定することを含む、請求項50または51記載の方法。
  53. 方法が、
    ・ 炭素ナノチューブおよび結合剤を溶媒中で結合する;
    ・ アグロメレートが溶媒から沈殿する様な過剰量の水溶液を加える;そして、
    ・ アグロメレートを回収する:
    工程を含む、請求項51記載の方法。
  54. 請求項1−6のいずれか1項記載の電極、または請求項8−20のいずれか1項記載のpHセンサーの部分を形成する電極であって、該炭素および該レドックス活性化合物の組成物の基板上の層を含み、該層は、該層を切断することによって形成されるエッジ(edge)を有し、炭素およびレドックス活性素材をさらす、電極。
  55. 層が、炭素ベースインクおよび該レドックス活性化合物の混合物を含む、請求項54記載の電極。
  56. レドックス活性化合物が結晶の形である、請求項54または55記載の電極。
  57. レドックス活性化合物がフェナントレンキノンである、請求項54、55、または56記載の電極。
  58. 作用電極および対極を含む電気化学センサーであって、該作業電極が請求項54−57のいずれか1項記載の電極を含む、センサー。
  59. 電気化学センサー内への、請求項1−6、31−35、40−46、52−57のいずれか1項記載の電極の使用。
  60. センサーがpHセンサーである、請求項59記載の使用。
  61. 非ダウンホール環境での、請求項8−20、36、37、47−49のいずれか1項記載のセンサーの使用。
  62. 式(I)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、R1は、式 -Yまたは-X-Yの基であり、式中Yは水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび-NR34から選択され、式中R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシから選択され、また、式中Xは式 −(CR56)n- の基を表し、式中nは0または1から4の整数であり、R5およびR6は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される、またはR5とRは一緒に式=Oまたは=NR7を形成し、式中R7は、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ;C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニルチオ、ニトロ、シアノ、-O-CO-R’、-CO-O-R’、-CO-NR’R”、-COR’、-S(O)R’ および -S(O)2R’ より選択され、式中、R’ およびR” は各々同一かまたは異なり、水素、C1-4アルキル、またはC2-4アルケニルを示し;さらに、
    mは、0または1から4の整数である:
    またはその塩である化合物の部分挿入によって、炭素を修飾する方法であって、粉末化炭素を、上記の様な化合物と、該化合物の炭素内への部分挿入を可能にするのに充分な時間、混合し、得られた修飾炭素を単離することを含む、方法。
  63. 粉末化炭素および化合物を、溶媒内で混合し、該溶媒は非プロトン性有機溶媒である、請求項62記載の方法。
  64. 粉末化炭素がグラファイトまたは多層ナノチューブの形である、請求項62または63記載の方法。
  65. 化合物が、式(II)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、R2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    mは0、1または2であり;
    Xは、式−(CR56)n- の基であり、式中nは、0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;さらに、
    Yは、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび −NR34から選択され、R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:
    またはその塩である、請求項62、63または64記載の方法。
  66. 化合物が、式(III)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、
    2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    mは0、1または2であり;
    Xは、式−(CR56)n- の基を表し、式中nは、0、1または2であり、R5およびR6は同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;さらに、
    3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:
    またはその塩である、請求項65記載の方法。
  67. 化合物が、式(IV)のニトロベンゼン誘導体:
    Figure 2007526474
    式中、R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される:
    またはその塩である、請求項66記載の方法。
  68. 炭素および式(I)の化合物:
    Figure 2007526474
    式中、R1は、式 -Yまたは-X-Yの基であり、式中Yは水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよび-NR34から選択され、式中R3およびR4は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキル、およびC1-4アルコキシから選択され、また、式中Xは式 −(CR56)n- の基を表し、式中nは0または1から4の整数であり、R5およびR6は、同一かまたは異なり、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択される、またはR5とRは一緒に式=Oまたは=NR7を形成し、式中R7は、水素、ヒドロキシ、C1-4アルキルおよびC1-4アルコキシから選択され;
    2は、ヒドロキシ、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、アミノ、C1-4アルキルアミノ、ジ(C1-4アルキル)アミノ;C1-4アルキルチオ、C2-4アルケニルチオ、ニトロ、シアノ、-O-CO-R’、-CO-O-R’、-CO-NR’R”、-COR’、-S(O)R’ および -S(O)2R’ より選択され、式中、R’ およびR” は各々同一かまたは異なり、水素、C1-4アルキル、またはC2-4アルケニルを表し、;さらに、
    mは、0または1から4の整数である:
    またはその塩を含む組成物であり、式(I)の該化合物が炭素内に部分挿入されている、組成物。
  69. 炭素がグラファイトまたは多層炭素ナノチューブの形である、請求項68記載の組成物。
  70. 式(I)の化合物が請求項4から6のいずれか1項記載な化合物である、請求項68または69記載の組成物。
  71. アグロメレートが結合剤内に分散させた炭素ナノチューブを含み、該結合剤がレドックス活性化合物である、電気化学センサーに使用するためのアグロメレート。
  72. レドックス活性素材が、電気化学センサーによって検出される種の濃度に化学感受性である、ボルタメトリー応答を有する、請求項71記載のアグロメレート。
  73. レドックス活性素材がプロトン濃度に感受性である、請求項71または72記載のアグロメレート。
  74. レドックス活性素材が、電気化学センサーによって検出される種の濃度に化学非感受性である、さらなるレドックス活性素材を含む、請求項71、72または73記載のアグロメレート。
  75. レドックス活性素材が、電気化学センサーによって検出される種の濃度に化学感受性である、少なくとも2つのレドックス活性素材を含む、請求項71−74のいずれか1項記載のアグロメレート。
  76. 請求項71−75のいずれか1項記載のアグロメレート、または、請求項6−10のいずれか1項記載の電極の、電気化学センサー内の使用。
    .
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