JP2007523914A - オレフィンメタセシスおよび原子またはグループ移動反応に使用するための金属錯体 - Google Patents

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Abstract

オレフィンメタセシスおよび原子またはグループ移動反応のような数多くの有機合成反応において有用な改良された触媒を、多座配位性シッフ塩基配位子と、1つ以上の他の配位子とを含む多配位金属錯体と酸とを、酸が少なくとも部分的に金属錯体の金属と多座配位性シッフ塩基配位子との間の結合を、任意でシッフ塩基配位子の中間体プロトン化を経て、開裂するような条件下で接触させることによって生成する。

Description

本発明は、オレフィンメタセシス、アセチレンメタセシスおよび原子またはグループのエチレン性、アセチレン性不飽和化合物または他の反応性物質への移動を伴う反応、たとえば、原子移動ラジカル重合、原子移動ラジカル付加、ビニル化、エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化、エポキシ化、酸化環化、アジリジン化、アルキンのシクロプロペン化、ディールス・アルダー反応、マイケル付加、ケトン類またはアルデヒド類のアルドール縮合、ロビンソン環化反応、ヒドロホウ素化、ヒドロシリル化、オレフィン類およびアルキン類のハイドロシアン化、アリルアルキル化、グリニャールクロスカップリング、有機化合物(飽和炭化水素類、硫化物類、セレン化物類、ホスフィン類およびアルデヒド類を含む)の酸化、ヒドロアミド化、アルコール類のアルデヒド類への異性化、オレフィン類のアミノ分解、オレフィン類のヒドロキシル化、ヒドリド還元、ヘック反応、オレフィン類およびアルキン類のヒドロアミノ化、およびオレフィン類またはケトン類の水素化を始めとする、多種多様な有機合成反応において、触媒成分として単独または助触媒または開始剤と組み合わせて有用な、遷移金属錯体に関する。
また、本発明は、前記金属錯体を生成する方法、およびそのような方法に関与する新規な中間体に関する。さらに詳しくは、本発明は、ルテニウムのような金属のシッフ塩基誘導体錯体、この錯体を生成する方法、およびそれらの、非環状モノオレフィン類、ジエン類およびアルキン類のような多数の不飽和炭化水素のメタセシス、特に、環状オレフィン類の開環メタセシス重合用の触媒として、およびスチレンまたは(メタ)アクリル酸エステル類の原子移動ラジカル重合用の、スチレンのシクロプロパン化用の、およびキノリン合成用の触媒としての用途に関する。
背景技術
オレフィンメタセシスは、重要なステップとして、下記式(1)に従って、第一オレフィンと第一遷移金属アルキリデン錯体との間の反応によって不安定な中間体メタラシクロブタン環を生成し、次いでこれを、第二オレフィンおよび第二遷移金属アルキリデン錯体に転換することを含む触媒プロセスである。この種の反応は、可逆的であり、もう1つと競合するので、全体的な結果は、それぞれの速度に大きく依存し、揮発性または不溶性の生成物が形成される場合、平衡状態が変化する。
Figure 2007523914
モノオレフィン類またはジオレフィン類のメタセシス反応の、限定されない数種類の例として、下記の式(2)〜(5)のものが示される。メチレン(M=CH)錯体を形成するためにエチレンはアルキリデン錯体と反応し、これは、アルキリデン錯体の中で最も反応性が高くまた最も不安定であるので、系から式(2)におけるエチレンのような生成物の除去によって、所望のメタセシス反応の過程および/または速度を劇的に変化することができる。
Figure 2007523914
ホモカップリング(式2)より潜在的により興味のあるものは、2つの異なる末端オレフィンの間のクロスカップリングである。ジエン類が関与するカップリング反応は、直鎖および環状ダイマー、オリゴマーを生成し、最終的に直鎖または環状ポリマーを生成する(式3)。一般的に、非環状ジエンメタセシスと呼ばれる後者の反応(以下、ADMETと言う)は、高濃度の溶液またはバルク状で有利であり、一方、環化は低濃度で有利である。ジエンの分子内カップリングが、環状アルケンを生成するように起こる場合、このプロセスは、閉環メタセシスと呼ばれる(以下、RCMと言う)(式4)。歪み環状オレフィンは、開環し、オリゴマー化またはポリマー化(式5で示す開環メタセシス重合(以下ROMPと言う))することができる。アルキリデン触媒が、成長するポリマー鎖において、炭素−炭素二重結合より環状オレフィン(たとえば、ノルボルネンまたはシクロブテン)とより速く反応する場合、「リビング開環メタセシス重合」が起こり、すなわち、重合反応後あるいはその間、殆ど停止は起こらない。
オレフィンメタセシスにおいて、明確に定義された単一成分金属カルベン錯体を含む多くの触媒システムが調整され、利用されている。オレフィンメタセシスの主要な開発の1つとして、グルブスおよびその仲間によって発見されたルテニウムおよびオスミウムカルベン錯体がある。米国特許第5,977,393号には、そのような化合物のシッフ塩基誘導体が開示され、それらは、金属がトリアリールホスフィンまたはトリ(シクロ)アルキルホスフィンのような中性電子供与体およびアニオン性配位子によって配位されている、オレフィンメタセシス触媒として有用である。そのような触媒は、極性プロトン性溶剤中でさえメタセシス性を保ちながら、熱安定性が改善されている。また、それらはジアリルアミン塩酸塩を環化し、ジヒドロピロール塩酸塩とすることができる。グルブスのカルベン錯体に関し、残っている解決するべき問題は、(i)触媒安定性(すなわち、分解の減速)およびメタセシス活性を同時に向上させることと、(ii)そのような触媒を用いて達成できる有機生成物の範囲を広くすること、たとえば、高度に置換されたジエンを閉環して、トリ−およびテトラ−置換オレフィンにする能力を提供することとがある。
一方、リビング重合システムは、アニオン性およびカチオン性重合で報告があるが、高純度モノマーおよび溶剤、反応性開始剤および無水の条件を必要とするため、それらの工業的用途は制限されていた。これとは対照的に、フリーラジカル重合は、高分子量ポリマーを得る最も普及している商業的なプロセスである。非常に多様なモノマーが、酸素の不存在を必要とするが、水の存在下でも実施可能な比較的単純な実験条件下で、ラジカル的にポリマー化およびコポリマー化される。しかし、フリーラジカル重合プロセスは、しばしば、分子量が調整されていない、高多分散性のポリマーが得られる。したがって、リビング重合およびラジカル重合の長所を組み合わせることが最も大きな関心事であり、(1)原子またはグループ移動経路と(2)ラジカル中間体とに関する米国特許第5,763
,548号の原子(またはグループ)移動ラジカル重合プロセス(以下、ATRPと言う)によって達成された。移動および停止反応のような連鎖切断反応が実質的にない、このタイプのリビング重合は、分子量、分子量分布および末端官能性などのマクロ分子構造の種々のパラメーターの調整を可能にする。また、ブロックおよび星型共重合体を含む種々の共重合体の調整も可能にする。リビング/調整されたラジカル重合は、種々の休止状態の化学種を有する平衡状態中に、低い定常濃度のラジカルがあることを必要とする。それは、種々の遷移金属化合物とハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類またはハロアルキルエステル類のような開始剤との間のレドックス反応において、成長するラジカルの可逆的な形成に基礎を置く、新規な開始システムに使用される。ATRPは、休止状態の化学種中にある炭素−ハロゲン共有結合を遷移金属の触媒で可逆的に開裂することを通して築かれる、成長ラジカルと休止状態の化学種との間の動的平衡状態に基礎を置く。この概念を利用する重合システムは、必要とされる平衡状態を築くために、たとえば、銅、ルテニウム、ニッケル、パラジウム、ロジウムおよび鉄の錯体とともに、開発されてきた。
ATRPの開発によって、近年、以下のスキーム:
Figure 2007523914
(式中、Xは水素、塩素または臭素でもよく、RおよびR’はそれぞれそれぞれ独立して、水素、C1−7アルキル、フェニルおよびカルボン酸またはエステルから選択されてもよい)に従う、ラジカル機構(最初にカラッシュらによって発行された、サイエンス(1945)102:169)によるオレフィンへのポリハロゲン化アルカンの付加からなる、カラシュ付加反応に関して、さらなる興味が現われた。
ATRPは、カラシュ付加反応に非常によく類似しているので、後者は、原子移動ラジカル付加(以下ATRAと言う)とも呼ばれ、遷移金属触媒反応において、注目を集めた。また、この分野の研究は、たとえば、欧州ポリマージャーナル(1980)16:821およびテトラヒドロン(1972)28:29に記載されるように、新しいオレフィンおよびテロゲンの使用に焦点が当てられ、広い範囲の分子内、末端および環状オレフィンおよびジオレフィン類が、ハロゲン原子としてフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む広い範囲のポリハロゲン化物と試験された。
国際公開第03/062253号パンフレットには、カルベン配位子、多座配位性配位子および1つ以上の他の配位子を含む5座配位性金属錯体およびその塩、溶媒和物、または鏡像体であって、前記他の配位子の少なくとも1個が少なくとも15のpKaを有する制約立体障害配位子であるものが開示されている。さらに詳しくは、前記公報には、図3に示される一般式(IA)および(IB)のうちの1つで表される5座配位性金属錯体、その塩、溶媒和物および鏡像体が開示されている。式中:
−Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
−Zは、酸素、イオウ、セレニウム、NR””、PR””、AsR””およびSbR””からなる群から選択され;
−R”、R’’’およびR””は、それぞれ、水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とが一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、各ラジカル(水素と異なる場合)は、1つ以上の、好ましくは1〜3個の、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される置換基Rで任意で置換され;
−R’は、一般式(IA)で表される化合物に含まれる場合は、R”、R’’’およびR””について定義されたものと同じであり、一般式(IB)で表される化合物に含まれる場合は、C1−6アルキレンおよびC3−8シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1つ以上の置換基Rで任意で置換され;
−Rは、少なくとも約15のpKaを有する制限立体障害基であり;
−Rは、アニオン性配位子であり;
−RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
−R’とRおよびRの1つとが互いに結合して、2座配位性配位子を形成してもよく;
−R’’’およびR””は互いに結合して、窒素、リン、ヒ素およびアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂環式環系を形成してもよく;
−RおよびRは一緒になって縮合芳香族環系を形成してもよく;
−yは、Mと、RおよびRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数である。
これらの5座配位性金属錯体は、非常に効率的なオレフィンメタセシス触媒であることが判明しているが、触媒反応またはATRPまたはATRAのような原子(またはグループ)移動ラジカル反応の開始反応、およびたとえばエノール−エステル合成のようなビニル化反応においても非常に効率的な成分である。また同じ公報で、米国特許第5,977,393号のルテニウムおよびオスミウムのシッフ塩基誘導体および他の遷移金属の対応誘導体もまた、触媒反応またはATRPまたはATRAのような原子(またはグループ)移動ラジカル反応の開始反応、およびたとえばエノール−エステル合成のようなビニル化反応において使用してもよいことが記載されている。
しかし、当業界には、触媒効率を向上させて、すなわち、所定の条件(たとえば、温度、圧力、溶剤、および反応原料/触媒比)その他の下、所定の反応収率で、ある時間後の前記触媒成分による触媒反応の収率を向上させて、より緩和した条件(より低い温度、大気圧に近い圧力、反応混合物からの生成物のより簡単な分離および精製)を提供し、またはより少ない触媒量(すなわち、より高い反応原料/触媒比)で済み、より経済的でより環境に優しい作動条件をもたらすという、継続した要求がある。この要求は、エンド−またはエクソ−ジシクロペンタジエンのバルク重合、またはその成形(これに限定されない)のような反応−射出成形(RIM)プロセスにおける用途では、さらにより切迫している。
国際公開第93/20111号パンフレットには、歪みシクロオレフィン類の開環メタセシス重合用の純粋に熱的な触媒として、ホスフィン配位子を含むオスミウム−およびルテニウム−カルベン化合物が開示され、そこでは、ジシクロペンタジエンのようなシクロジエンが触媒阻害剤として作用し、重合されない。これは、たとえば、たとえホスフィン配位子を有する特定のルテニウムカルベン錯体の存在下、数日経過後であってもジシクロペンタジエンからいかなるポリマーも得られないという、米国特許第6,284,852号の実施例3によって確認されている。しかし、米国特許第6,235,856号は、カルベンのないルテニウム(II)−またはオスミウム(II)−ホスフィン触媒を使用した場合、ジシクロペンタジエンは、単一成分触媒で熱メタセシス重合に到達できることを教示する。
米国特許第6,284,852号は、式:ARu=CHR’(式中、x=0、1または2、y=0、1または2、およびz=1または2であり、R’は、水素、または置換されたまたはされていないアルキルまたはアリールであり、Lは任意の中性電子供与体であり、Xは任意のアニオン性配位子であり、Aは、基質または溶剤として存在しない特定量の酸の計画された付加反応によって、中性電子供与体およびアニオン性配位子に結合する共有結合構造を有する配位子である)のルテニウムカルベン錯体の触媒活性を増強することが開示され、この増強は、ROMP、RCM、ADMETおよび交互メタセシスおよび二量化反応を含む種々のオレフィンメタセシス反応のためになされる。米国特許第6,284,852号によれば、触媒がオレフィンモノマーの酸性溶液に導入された時により長い触媒寿命観察されることにより、有機または無機酸が、オレフィンとの反応の前または間に触媒に付加されてもよい。米国特許第6,284,852号の実施例3〜7に開示されている酸の量は、アルキリデンに対して0.3〜1当量の酸の範囲である。特に、実施例3の酸として、HClの存在下の触媒系(特に、触媒がアルキリデン配位子およびホスフィン配位子を含む、シッフ塩基置換錯体)は、溶剤の不存在下室温で、1分未満でジシクロペンタジエンのROMPを達成し、プロトン性溶剤(メタノール)の存在下、室温で、15分以内でオキサノルボルネンモノマーのROMPを達成するが、モノマー/触媒比は明記されていない。
また、米国特許第6,284,852号は、アルキリデンルテニウム錯体を示し、これは、水中で強酸を用い活性化させた後、水溶性ポリマーのリビング重合を迅速に定量的に開始し、このことは、既存のROMP触媒の顕著な改良をもたらす。さらに、触媒分解を起こす水酸化物イオンを取り除き、触媒活性もまたホスフィン配位子のプロトン化によって増強される点から、これらの反応における成長化学種は安定(成長アルキリデン化学種はプロトン核磁気共鳴によって観察された)であり、この系中の酸の効果は、2倍であるようであると主張する。また、意外なことに、酸はルテニウムアルキリデン結合と反応しないとも教示される。
米国特許第6,284,852号の教示は、既存のROMP触媒を超える改良を提供するが、多くの点で限界もある。すなわち、
−主張されている酸活性化の機構は、ホスフィン配位子のプロトン化を含むので、少なくとも1つのホスフィン配位子を含むアルキリデンルテニウム錯体に限定される;
−酸が金属とルテニウム錯体のシッフ塩基配位子との間の結合を少なくとも部分的に開裂する条件下で、シッフ塩基置換ルテニウム錯体を酸と反応させることは開示されていない。
また、米国特許第6,284,852号には、酸の存在下での、ルテニウムがビニリデン配位子、アレニリデン配位子またはN−複素環カルベン配位子と配位しているルテニウム錯体の挙動も教示していない。
したがって、米国特許第6,284,852号は、金属錯体、特に、ROMP、RCM、ADMETおよび交差メタセシスおよび二量化反応を含むオレフィンメタセシス反応に使用する場合、酸性、好ましくは強酸性環境下での多配位ルテニウムおよびオスミウム錯体を研究する未解決の方法が残されたままである。
したがって、本発明の1つの目的は、特に予期しえぬ特性と、オレフィンメタセシス反応およびATRPまたはATRAのような他の原子またはグループ移動反応において向上した効率とを有する多配位遷移金属錯体に基づいた新しく有用な触媒種を設計することである。
本発明の他の目的は、オレフィンメタセシス反応、特に、前記錯体において、ホスフィン配位子の必要性によって制限を受けることのない多配位遷移金属錯体の存在下での歪み環状オレフィン類(四級アンモニウム塩を含む歪み環状オレフィン類のようなカチオン性形態のものを含むが、これに限定されない)の開環重合を効率的に行うことである。
また、本発明のさらなる他の目的でもあるが、多配位遷移金属錯体、特に、配位子の種々の組み合わせを含むが、必ずしもホスフィン配位子を含む必要はないルテニウム錯体を使用して、反応射出成形(RIM)プロセス、樹脂転移成形(RTM)プロセスおよびエンド−またはエクソ−ジシクロペンタジエンのバルク重合、それと他のモノマーとの共重合、その成形(これらに限定されない)のような反応性回転成形(RRM)プロセスを改善するという、当業界での特別の要求がある。上記した必要性の全ては、本発明によって達成するべき種々の目的を構成するが、本発明の他の利点も、以下の説明により容易に明らかになるであろう。
発明の要約
本発明は、酸が少なくとも部分的に金属と金属錯体の多座配位性シッフ塩基配位子との間の結合を開裂させることができる条件下で、多配位金属錯体、好ましくは、少なくとも、多座配位性シッフ塩基配位子および国際公開第03/062253号パンフレットの金属錯体(これに限定されない)のような他の配位子1つ以上を含む4座配位性遷移金属錯体と、酸とを接触させることによって、オレフィンメタセシスおよび原子またはグループ移動反応(これらに限定されない)のような数多くの有機合成反応において有用な改良された触媒を得ることができるという予期しえぬ発見に基づいている。
本発明は、多配位金属錯体、好ましくは少なくとも多座配位性シッフ塩基配位子および、さらにアニオン性配位子、N−複素環カルベン配位子、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子(これらに限定されない)のような他の配位子を少なくとも1つ以上含む4座配位性遷移金属錯体と、酸を、ホスフィン配位子のプロトン化が含まれない条件下で反応させることによって、新しく有用な触媒種を好適に得ることができるという予期しえぬ発見に基づいている。特に、本発明は、多配位金属錯体、好ましくは少なくとも多座配位性シッフ塩基配位子およびさらに一組のいかなるホスフィン配位子も含まない他の配位子一組を含む4座配位性遷移金属錯体と、酸を反応させることによって、新しく有用な触媒種を好適に得ることができるという予期しえぬ発見に基づいている。さらに詳しくは、本発明は、酸と多配位金属錯体との間の酸活性化反応に好適な条件は、1または数工程において、多座配位性シッフ塩基配位子の少なくとも部分的なプロトン化と、金属中心へのイミン結合の開裂による多座配位性シッフ塩基配位子の少なくとも部分的な脱配位を可能にする条件であるという発見に基づいている
したがって、これらの発見に基づいて、本発明は、好ましくは多座配位性シッフ塩基配位子のプロトン化および/または金属中心へのイミン結合の開裂による多座配位性シッフ塩基配位子の脱配位に好適な条件の下での、出発多配位シッフ塩基置換金属錯体、好ましくは多座配位性シッフ塩基配位子を含み、さらに1つ以上の他の配位子(前記他の配位子は好ましくはホスフィン配位子以外のもの)を含む4座配位性遷移金属錯体の少なくとも1個と、酸との間の反応(以下「活性化」とも言う)によって生じる、新規触媒種または生成物、または種の混合物を提供する。広範囲に受け入れられるものとして、これらの化学種は、一般式:
[M(L)(L)(X)(SB)]X
(式中、
−Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
−SBは、プロトン化シッフ塩基配位子、好ましくは、プロトン化2座配位性シッフ塩基配位子であり;
−Lは、カルベン配位子、好ましくは、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択され;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外であり;
−Xは、アニオン性配位子であり;
−Xは、アニオンである)で表される単一金属種、これらの塩、溶媒和物および鏡像体であってもよい。
また、これらの化学種は、一般式:
[M(L)(SB)(X)(X)(M’)(X)(L)]X
(式中、
−MおよびM’は、それぞれ、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から独立して選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
−SBは、プロトン化シッフ塩基配位子、好ましくはプロトン化2座配位性シッフ塩基配位子であり;
−Lは、カルベン配位子、好ましくは、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択され;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外であり;
−X、XおよびXは、それぞれ独立して、アニオン性配位子から選択され;
−Xはアニオンである)で表される、二金属種、およびその塩、溶媒和物および鏡像体であってもよい。
多配位シッフ塩基置換単一金属錯体から出発する場合、そのような新規化学種または生成物は、たとえば、一般式(VI):
Figure 2007523914
で表される1つ以上のカチオン性単一金属種、または一般式(VII):
Figure 2007523914
で表される1つ以上のカチオン性単一金属種、
(式中、
−Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
−Wは、酸素、イオウ、セレニウム、NR””、PR””、AsR””およびSbR””からなる群から選択され;
−R”、R’’’およびR””はそれぞれ、水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とが一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、各ラジカル(水素とは異なる場合)は、1個以上の、好ましくは1〜3個の、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される置換基Rで任意で置換され;
−R’は、一般式(VI)で表される化合物に含まれる場合は、R”、R’’’およびR””で定義されたものと同じであり、一般式(VII)で表される化合物に含まれる場合は、C1−6アルキレンおよびC3−8シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1つ以上の置換基Rで任意で置換され;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外であり;
−Xは、アニオン性配位子であり;
−RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
−R’とRおよびRの1つとが互いに結合して、2座配位性配位子を形成してもよく;
−R’’’およびR””は互いに結合して、窒素、リン、ヒ素およびアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂環式環系を形成してもよく;
−RおよびRは一緒になって縮合芳香族環系を形成してもよく;
−yは、Mと、RおよびRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数である)
および、その塩、溶媒和物および鏡像体の形態を取ってもよく、前記カチオン性化学種は、酸活性化反応で使用される酸に由来するアニオンと結合する一般式(VI)および(VII)で表されてもよい。
多配位シッフ塩基置換二金属錯体から出発する場合、そのような新規化学種または生成物は、たとえば、一般式(X):
Figure 2007523914
で表される1つ以上のカチオン性二金属種、または一般式(XI):
Figure 2007523914
で表される1つ以上のカチオン性二金属種
(式中、
−MおよびM’は、それぞれ、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から独立して選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
−W、R’、R”、R’’’、R””、y、RおよびRは、前記式(VI)および(VII)に定義した通りであり;
−X、XおよびXは、それぞれ独立して、アニオン性配位子から選択され;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外である)
および、その塩、溶媒和物および鏡像体の形を取ってもよい。
また、本発明の新規化学種または生成物は、一般式(VIII):
Figure 2007523914
(式中、
−M、X、y、RおよびRは、式(VI)および(VII)に定義した通りであり;−X’はアニオン性配位子であり;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外である)で表される1つ以上の単一金属錯体、およびその塩、溶媒和物および鏡像体の形を取ってもよい。
また、本発明の新規化学種または生成物は、一般式(IX):
Figure 2007523914
(式中、
−MおよびXは、式(VI)および(VII)に定義した通りであり;
−Sは、溶剤、たとえば水、であり;
−Yは、溶剤、またはSがアルコールの場合、YはCOであり;
−Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外である)で表される金属一水素化錯体、およびその塩、溶媒和物および鏡像体の形を取ってもよい。
本発明の新規触媒種は、同時に生成し、分離し、精製し、後の有機合成反応で別途使用するために調整してもよく、または出発原料のシッフ塩基金属錯体の導入の前、同時にあるいは後で、反応混合物に酸を導入することによって、関連する化学反応(たとえばメタセシス)の間にイン・サイチューで生成してもよい。また、本発明は、前記新規な触媒種または反応生成物に加えて、第二の触媒成分(たとえば、ルイス酸助触媒、ラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤、ラジカル開始剤、または二金属金属錯体)および/または前記触媒種または反応生成物を支持するのに適した担体を含む触媒系を提供する。
また本発明は、そのような新規な触媒種または反応生成物、そのような化学種の任意の混合物、またはそのような触媒系の、オレフィンメタセシス反応、アセチレンメタセシス反応、および原子移動ラジカル重合、原子移動ラジカル付加、ビニル化、エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化などの原子またはグループのエチレン性またはアセチレン性不飽和化合物または他の反応性基質への移動が関与する反応などの多種多様な有機合成反応における用途を提供する。特に本発明は、ジシクロペンタジエン(これに限定されない)のような歪み環状オレフィン類の開環重合の改善されたプロセスを提供する。
定義
本明細書で使用される用語錯体または配位化合物は、金属(受容体)とそれぞれ非金属性原子またはイオンを含む数種の配位子と呼ばれる中性分子またはイオン性化合物(供与体)との間の供与体−受容体機構またはルイス酸−塩基反応の結果を言う。孤立電子対を持つ複数の原子(すなわち、金属中心への複数の結合点)を有し、したがって複数の配位部位を占める配位子は、多座配位性配位子と呼ばれる。これらとして、占められる配位部位の数に依るが、2座配位性、3座配位性、4座配位性配位子が挙げられる。
本明細書で使用される用語「単一金属」は、単一金属中心がある錯体を言う。本明細書で使用される用語「ヘテロ二金属」は、2つの異なる金属中心のある錯体を言う。本明細書で使用される用語「ホモ二金属」は、2つの同一金属中心を持つ錯体であるが、同一配位子または配位数を必ずしも有しない錯体を言う。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関し、用語「Cl−7アルキル」は、1〜7個の炭素原子を持つ、直鎖および分岐鎖の飽和非環状炭化水素の一価ラジカルを意味し、たとえば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、1−メチルエチル(イソプロピル)、2−メチルプロピル(イソブチル)、1,1−ジメチルエチル(ter−
ブチル)、2−メチルブチル、n−ペンチル、ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、n−ヘプチルなどが挙げられ、任意でこの基の炭素鎖の長さは、20個の炭素原子まで伸びてもよい。
本明細書で使用される連結基に関して、用語「C1−7アルキレン」は、上で定義したCl−7アルキルに対応する二価の炭化水素ラジカルを意味し、たとえば、メチレン、ビス(メチレン)、トリス(メチレン)、テトラメチレン、ヘキサメチレンなどが挙げられる。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関して、用語「C3−10シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を持つ、単環式または多環式飽和炭化水素一価ラジカルを意味し、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられる。または、たとえば、ノルボルニル、フェンキル、トリメチルトリシクロヘプチルまたはアダマンチルのような7〜10個の炭素原子を持つC7−10多環式飽和炭化水素一価ラジカルが挙げられる。
本明細書で使用される連結基に関し、特に明記しない限り、用語「C3−10シクロアルキレン」は、上で定義したC3−10シクロアルキルに対応する二価の炭化水素ラジカルを意味し、たとえば、1,2−シクロヘキシレンおよび1,4−シクロヘキシレンが挙げられる。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関し、特に明記しない限り、用語「アリール」は、6〜30個の炭素原子を持つ、任意の単環式または多環式芳香族一価炭化水素ラジカルを示し、たとえば、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラシル、フルオランテニル、クリセニル、ピレニル、ビフェニルイル、テルフェニル、ピセニル、インデニル、ビフェニル、インダセニル、ベンゾシクロブテニル、ベンゾシクロオクテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、縮合ベンゾ−C4−8シクロアルキルラジカル(後者は先に定義した通り)も含み、たとえば、インダニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルなどが挙げられる。これらのラジカルは全て、任意で、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルフヒドリルおよびニトロからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、たとえば、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2,6−ジイソプロピル−4−ブロモフェニル、ペンタフルオロフェニルおよび4−シアノフェニルが挙げられる。
本明細書で使用される連結基に関し、特に明記しない限り、用語「アリーレン」は、先に定義したアリールに対応する二価の炭化水素ラジカルを意味し、たとえば、フェニレン、ナフチレンなどが挙げられる。
本明細書で使用される、2個の置換炭化水素ラジカルの組合せに関し、特に明記しない限り、用語「同素環」は、4〜15個の炭素原子を持ち、しかし環内にヘテロ原子は含まない、単環式または多環式の飽和またはモノ不飽和またはポリ不飽和炭化水素ラジカルを意味する。たとえば、前記組合せとしては、テトラメチレンのような、前記2個の置換炭化水素ラジカルが結合する炭素原子とともに環化しているC2−6アルキレンラジカルが挙げられる。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基(2個の置換ラジカルの組合せを含む)に関して、特に明記しない限り、用語「複素環」は、2〜15個の炭素原子を持ち、1個以上の複素環内に1個以上のヘテロ原子を持つ、単環式または多環式の飽和、モノ不飽和またはポリ不飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、前記各リングは、3〜10個の原子(および任意で、たとえば、カルボニル、チオカルボニルまたはセレノカルボニル基
の形で環の1つ以上の炭素原子におよび/または、スルホン、スルホキシド、N−オキシド、リン酸塩、ホスホネートまたはセレニウムオキシド基の形で環の1つ以上のヘテロ原子に結合する1つ以上のヘテロ原子も含む)を含み、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、イオウ、セレニウムおよびリンからなる群から独立して選択され、また、複素環が、たとえば、ベンゾ縮合、ジベンゾ縮合およびナフト縮合複素環ラジカルの形で、1つ以上の芳香族炭化水素環に縮合しているラジカルも含み、この定義には以下のような複素環ラジカルが含まれるが、これらに限定されない。ジアゼピニルピニル、オキサジアジニル、チアジアジニル、ジチアジニル、トリアゾロニル、ジアゼピノニル、トリアゼピニル、トリアゼピノニル、テトラアゼピノニル、ベンゾキノリニル、ベンゾチアジニル、ベンゾチアジノニル、ベンゾオキサチイニル、ベンゾジオキシニル、ベンゾジチイニル、ベンゾオキサゼピニル、ベンゾ−チアゼピニル、ベンゾジアゼピニル、ベンゾジオキセピニル、ベンゾジチエピニル、ベンゾオキサゾシニル、ベンゾチアゾシニル、ベンゾジアゾシニル、ベンゾオキサチオシニル、ベンゾジオキソシニル、ベンゾトリオキセピニル、ベンゾオキサチアゼピニル、ベンゾオキサジアゼピニル、ベンゾチアジアゼピニル、ベンゾトリアゼピニル、ベンゾオキサチエピニル、ベンゾトリアジノニル、ベンゾオキサゾリノニル、アゼチジノニル、アザスピロウンデシル、ジチアスピロデシル、セレンアジニル、セレンアゾリル、セレノフェニル、ヒポキサンチニル、アザヒポキサンチニル、ジピラジニル、ジピリジニル、オキサゾリジニル、ジセレノピリミジニル、ベンゾジオキソシニル、ベンゾピレニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフェナジニル、ベンゾキノリジニル、ジベンゾカルバゾリル、ジベンゾアクリジニル、ジベンゾフェナジニル、ジベンゾチエピニル、ジベンゾオキセピニル、ジベンゾピラノニル、ジベンゾキノキサリンイル、ジベンゾチアゼピニル、ジベンゾイソキノリル、テトラアザマダマンチル、チアテトラアザマダマンチル、オキサウラシル、オキサジニル、ジベンゾチオフェニル、ジベンゾフラニル、オキサゾリニル、オキサゾロニル、アザインドリル、アゾロニル、チアゾリニル、チアゾロニル、チアゾリジニル、チアザニル、ピリミドニル、チオピリミドニル、チアモルフォリニル、アズラクトニル、ナフチンダゾリル、ナフチンドリル、ナフトチアゾリル、ナフトチオキゾリル、ナフトキンドリル、ナフトトリアゾリル、ナフトピラニル、オキサビシクロヘプチル、アザベンズイミダゾリル、アザシクロヘプチル、アザシクロオクチル、アザシクロノニル、アザビシクロノニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピロニル、テトラヒドロ−キノレイニル、テトラヒドロチエニルおよびそのジオキシド、ジヒドロチエニルジオキシド、ジオキシインドリル、ジオキシニル、ジオキセニル、ジオキサジニル、チオキサニル、チオキソールイル、チオウラゾリル、チオトリアゾリル、チオピラニル、チオピロニル、クマリニル、キノレイニル、オキシキノレイニル、キヌクリジニル、キサンチニル、ジヒドロピラニル、ベンゾジヒドロフリル、ベンゾチオピロニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フェノチオキシニル、フェノチアゾリル、フェノチエニル(ベンゾチオフラニル)、フェノピロニル、フェノキサゾリル、ピリジニル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、トリアゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピロールイル、フリル、ジヒドロフリル、フロイル、ヒダントイニル、ジオキソラニル、ジオキソールイル、ジチアニル、ジチエニル、ジチイニル、チエニル、インドリル、インダゾリル、インドリニル、インドリジジニル、ベンゾフリル、キノリル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、キサンチニル、プリニル、ベンゾチエニル、ナフトチエニル、チアントレニル、ピラニル、ピロニル、ベンゾピロニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、フェノキサチイニル、インドリジニル、キノリジニル、イソキノールイル、フタルアジニル、ナフチリジニル、シンノリニル、プテリジニル、カルボリニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、イミダ
ゾリニル、イミダゾリジニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ウリジニル、チミジニル、シチジニル、アジリニル、アジリジニル、ジアジリニル、ジアジリジニル、オキシラニル、オキサジリジニル、ジオキシラニル、チイラニル、アゼチル、ジヒドロアゼチル、アゼチジニル、オキセチル、オキセタニル、チエチル、チエタニル、ジアザビシクロオクチル、ジアゼチル、ジアジリジノニル、ジアジリジンチオニル、クロマニル、クロマノニル、チオクロマニル、チオクロマノニル、チオクロメニル、ベンゾフラニル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾカルバゾリル、ベンゾクロモニル、ベンズイソアリオキサジニル、ベンゾクマリニル、チオクマリニル、フェノメトキサジニル、フェノパーオキサジニル、フェントリアジニル、チオジアジニル、チオジアゾリル、インドキシル、チオインドキシル、ベンゾジアジニル(たとえば、フェタラジニル)、フェタリジル、フェタリミジニル、フェタラゾニル、アロキサジニル、ジベンゾピロニル(すなわちキサントニル)、キサンチオニル、イサチル、イソピラゾリル、イソピラゾロニル、ウラゾリル、ウラジニル、ウレチニル、ウレチジニル、スクシニル、スクシンイミド、ベンジルスルチミル、ベンジルスルタミル、などが挙げられ、これらの可能性異性体を全て含み、また、前記複素環の各炭素原子は、以下の置換基からなる群から選択される置換基で、独立して置換されてもよい。ハロゲン、ニトロ、C1−7アルキル(任意で、カルボニル(オキソ)、アルコール(ヒドロキシル)、エーテル(アルコキシ)、アセタール、アミノ、イミノ、オキシイミノ、アルキルオキシイミノ、アミノ酸、シアノ、カルボン酸エステルまたはアミド、ニトロ、チオC1−7アルキル、チオC3−10シクロアルキル、C1−7アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、シクロアルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヒドロキシルアルキルアミノ、メルカプトアルキルアミノ、複素環アミノ、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノ、フェニルヒドラジノ、スルホニル、スルフォンアミドおよびハロゲンからなる群から選択される1つ以上の官能基またはラジカルを含む)、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、ハロC1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルアシル、アリールアシル、ヒドロキシル、アミノ、C1−7アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、シクロ−アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、メルカプトアルキルアミノ、複素環アミノ、ヒドラジノ、アルキルヒドラジノ、フェニルヒドラジノ、スルフヒドリル、C1−7アルコキシ、C3−10シクロアルコキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、オキシ複素環、複素環置換アルキルオキシ、チオC1−7アルキル、チオC3−10シクロアルキル、チオアリール、チオ複素環、アリールアルキルチオ、複素環置換アルキルチオ、ホルミル、ヒドロキシルアミノ、シアノ、カルボン酸またはそのエステル類、チオエステル類またはアミド類、チオカルボン酸またはそのエステル類、チオエステル類またはアミド;3〜10員環中の不飽和の数に依るが、複素環ラジカルは、ヘテロ芳香族(または「ヘテロアリール」)ラジカルおよび非芳香族複素環ラジカルにサブ分割してもよく;前記非芳香族複素環ラジカルのヘテロ原子が窒素の場合、これは、C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリール、アリールアルキルおよびアルキルアリールからなる群から選択される置換基で置換されてもよい。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関し、特に明記しない限り、用語「Cl−7アルコキシ」、「C2−7アルケニルオキシ」、「C2−7アルキニルオキシ」、「C3−10シクロアルコキシ」、「アリールオキシ」、「アリールアルキルオキシ」、「オキシ複素環」、「チオCl−7アルキル」、「チオC3−10シクロアルキル」、「アリールチオ」、「アリールアルキルチオ」および「チオ複素環」は、Cl−7アルキル、C2−7アルケニルまたはC2−7アルキニル(任意で、そのような基の炭素鎖の長さが、炭素原子20個まで伸びてもよい)が、それぞれ、C3−10シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたは複素環ラジカル(これらのそれぞれは本明細書に定義する通り)が、単結合を介して酸素原子または二価のイオウ原子に結合している置換基
を言い、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、イソペントキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、チオメチル、チオエチル、チオプロピル、チオブチル、チオペンチル、チオシクロプロピル、チオシクロブチル、チオシクロペンチル、チオフェニル、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、メルカプトベンジル、クレゾキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される置換原子または配位子に関し、用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素からなる群から選択される任意の原子を意味する。
本明細書で使用される置換ラジカルまたは基に関し、特に明記しない限り、用語「ハロCl−7アルキル」は、Cl−7アルキルラジカル(先に定義したように、すなわち、任意で、そのような基の炭素鎖の長さが、炭素原子20個まで伸びてもよい)であって、1個以上の水素原子が独立して1個以上のハロゲン(好ましくはフッ素、塩素または臭素)で置き換わっているラジカルを意味し、たとえば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、オクタフルオロペンチル、ドデカフルオロヘプチル、ジクロロメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関し、特に明記しない限り、用語「C2−7アルケニル」は、1つ以上のエチレン性不飽和結合を持ち、2〜7個の炭素原子を持つ、直鎖または分岐状の非環状炭化水素一価ラジカルを意味し、たとえば、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、3−ヘキセニル、2−ヘキセニル、2−ヘプテニル、1,3−ブタジエニル、n−ペンタ−2,4−ジエニル、ヘキサジエニル、ヘプタジエニル、ヘプタトリエニルなどが挙げられ、可能性のある異性体を全て含み;任意で、そのような基の炭素鎖の長さが、炭素原子20個まで伸びてもよい(たとえば、n−オクタ−2−エニル、n−ドデカ−2−エニル、イソドデセニル、n−オクタデカ−2−エニルおよびn−オクタデカ−4−エニル)。
本明細書で使用される置換ラジカル、配位子または基に関し、特に明記しない限り、用語「C3−10シクロアルケニル」は、3〜8個の炭素原子を持つモノ環状のモノまたはポリ不飽和炭化水素一価ラジカルを意味し、たとえば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、1,3,5,7−シクロオクタテトラエニルなどが挙げられる。あるいは、7〜10個の炭素原子を持つ、C7−10多環式のモノまたはポリ不飽和炭化水素一価ラジカルが挙げられ、たとえば、ジシクロペンタジエニル、フェンケニル(α−ピノレニルのようなその異性体の全てを含む)、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エニル(ノルボルネニル)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエニル(ノルボルナジエニル)、シクロフェンケニルなどが挙げられる。
本明細書で使用される、置換ラジカル、配位子または基に関し、用語「C2−7アルキニル」は、1個以上の三重結合(すなわち、アセチレン性不飽和結合)と、任意で少なくとも1つの二重結合とを含み、2〜7個の炭素原子を持つ直鎖および分岐状鎖炭化水素ラジカルと定義する。たとえば、アセチレニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、1−ペンチニル、3−メチル−2−ブチニル、3−ヘキシニル、2−ヘキシニル、1−ペンテン−4−イニル、3−ペンテン−1−イニル、1,3−ヘキサジエン−1−イニルなどが挙げられ、可能性のある異性体を全て含み
;任意で、そのような基の炭素鎖の長さが、炭素原子20個まで伸びてもよい。
本明細書で使用される用語「アリールアルキル」、「アリールアルケニル」および「複素環置換アルキル」は、特に明記しない限り、アリールまたは複素環ラジカル(先に定義したような)がすでに結合し、前記脂肪族ラジカルおよび/または前記アリールまたは複素環ラジカルが任意でハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、スルフヒドリルおよびニトロからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよい、脂肪族飽和または不飽和炭化水素一価ラジカル(好ましくは先に定義したC1−7アルキルまたはC2−7アルケニルラジカル、すなわち、任意でそのような基の炭素鎖の長さが、炭素原子20個まで伸びてもよい)を言い、たとえば、ベンジル、4−クロロベンジル、フェニルエチル、3−フェニルプロピル、α−メチルベンジル、フェンブチル、α,α−ジメチルベンジル、1−アミノ−2−フェニルエチル、1−アミノ−2−[4−ヒドロキシフェニル]エチル、1−アミノ−2−[インドール−2−イル]エチル、スチリル、ピリジルメチル、ピリジルエチル、2−(2−ピリジル)イソプロピル、オキサゾリルブチル、2−チエニルメチルおよび2−フリルメチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される用語「アルキルシクロアルキル」、「アルケニル(ヘテロ)アリール」、「アルキル(ヘテロ)アリール」および「アルキル置換複素環」は、特に明記しない限り、それぞれ、すでに1つ以上の脂肪族飽和または不飽和炭化水素一価ラジカルが、好ましくは先に定義したC1−7アルキル、C2−7アルケニルまたはC3−10シクロアルキルラジカルの1つ以上が結合しているアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたは複素環ラジカル(先に定義した通り)を言い、たとえば、o−トルイル、m−トルイル、p−トルイル、2,3−キシリル、2,4−キシリル、3,4−キシリル、o−クメニル、m−クメニル、p−クメニル、o−シメニル、m−シメニル、p−シメニル、メシチル、ルチジニル(すなわち、ジメチルピリジル)、2−メチルアジリジニル、メチルベンズイミダゾリル、メチルベンゾフラニル、メチルベンゾチアゾリル、メチルベンゾ−トリアゾリル、メチルベンゾオキサゾリル、メチルシクロヘキシルおよびメンチルが挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される用語「アルキルアミノ」、「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「シクロアルケニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アリール-アルキルアミノ」、「複素環アミノ」、「ヒドロキシアルキルアミノ」、「メルカプトアルキルアミノ」および「アルキニルアミノ」は、特に明記しない限り、それぞれ、1個(つまりモノ置換アミノ)または2個(つまりジ置換アミノ)のC1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、C2−7アルケニル、C3−10シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、複素環、モノまたはポリヒドロキシC1−7アルキル、モノまたはポリメルカプトC1−7アルキルまたはC2−7アルケニルラジカル(これらは各基はそれぞれ先に定義した通り)が、単結合を介して窒素に結合し、あるいは複素環の場合窒素原子も含むことを意味し、たとえば、アニリノ、ベンジルアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、プロペニルアミノ、n−ブチルアミノ、ter−ブチルアミノ、ジブチルアミノ、モルフォリノアルキルアミノ、モルフォリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒドロキシメチルアミノ、β−ヒドロキシエチルアミノおよびエチニルアミノが挙げられるが、これらに限定されない。また、この定義は、窒素原子が、2つの異なるサブセットに属する2個のラジカル、たとえば、アルキルラジカルおよびアルケニルラジカル、または同じサブセット内の2個の異なるラジカル、たとえば、メチルエチルアミノに結合する混合ジ置換アミノラジカルも含み;ジ置換アミノラジカルの中では、普通、対称的に置換されているのが好ましく、より容易にアクセス可能である。
本明細書で使用される用語「(チオ)カルボン酸(チオ)エステル」および「(チオ)
カルボン酸(チオ)アミド」は、特に明記しない限り、カルボキシルまたはチオカルボキシル基が、アルコール、チオール、ポリオール、フェノール、チオフェノール、第一級または第二級アミン、ポリアミン、アミノアルコールまたはアンモニアのハイドロカルボニル残基に結合している置換基を言い、ハイドロカルボニル残基は、C1−7アルキル、C2−7アルケニル、C2−7アルキニル、C3−10シクロアルキル、C3−10シクロアルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、シクロアルケニルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、複素環アミノ、ヒドロキシアルキルアミノ、メルカプト−アルキルアミノまたはアルキニルアミノ(各基はそれぞれ先に定義した通り)からなる群から選択される。
本明細書で使用される金属配位子に関して、用語「アルキルアンモニウム」および「アリール−アンモニウム」は、1個以上のC1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基に結合する4座配位性窒素原子を意味し、これらはそれぞれ、先に定義した通りである。
本明細書で使用される金属配位子に関し、特に明記しない限り、用語「シッフ塩基」は、従来より、前記配位子中にイミノ基(通常、第一級アミンとアルデヒドまたはケトンとの反応の結果得られる)が存在することを言い、多座配位性配位子(たとえば、http://www.ilpi.com/organomet/coordnum.html中で定義されている)の一部であり、前記イミノ基の窒素原子に加え、さらに、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択されるヘテロ原子の少なくとも1つを介して金属に配位している。前記多座配位性配位子としては、たとえば、以下のものを挙げることができる。
−ルマジンまたは置換ルマジン、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾ−ル、または(2’−ヒドロキシフェニル)−2−チアゾリンのようなN,O−2座配位性シッフ塩基配位子。
−チオルマジンまたは置換チオルマジンのようなN,S−2座配位性シッフ塩基配位子。−図1に示すN,Z−2座配位性シッフ塩基配位子であって、図1に示す式中、Zが、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される原子でありまたはこの原子を含むものであり;この2座配位性シッフ塩基配位子がさらに、イミノ基の炭素−窒素二重結合と共役する炭素−炭素二重結合を含むものが好ましい。
−たとえば、6−アミノ−5−ホルミル−1,3−ジメチルウラシルと、セミカルバジド、アセチルヒドラジンまたはベンゾイルヒドラジンとに由来する、または7−ホルミル−8−ヒドロキシキノリン(オキシン)と、2−アミノフェノールまたは2−アミノピリジンに由来するN,N,O−3座配位性シッフ塩基配位子。
−6−アミノ−5−ホルミル−1,3−ジメチルウラシル−ベンゾイル−ヒドラゾン、図5の式(IV)で示されるもの、N−(2−メトキシフェニル)サリチリデンアミン、サリチルアルデヒド−2−ヒドロキサニル、1−アミノ−5−ベンゾイル−4−フェニル−1H−ピリミジン−2−オンと2−ヒドロキシナフタルデヒドとの反応で得られる複素環シッフ塩基、テノイル−トリフルオロアセトンと4−アミノアンチピリンとの反応で得られるテノイルトリフルオロアセトアンチピリンシッフ塩基のようなO,N,O−3座配位性シッフ塩基配位子。
−サリチルアルデヒド−2−メルカプタニル、S−ベンジル−2−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]ジチオカルバゼート、または2−[(2−ヒドロキシフェニル)メチレン]−N−フェニルヒドラジンカルボチオアミドのようなO,N,S−3座配位性シッフ塩基配位子。
−6−アミノ−5−ホルミル−1,3−ジメチルウラシルチオ−セミカルバゾネートのようなN,N,S−3座配位性シッフ塩基配位子。
延長することによって、多座配位性配位子は、たとえば、図2の式(IIA)および(I
IB)および図3の式(IIIA)に示すように2個のイミノ基のように、複数のシッフ塩基を含んでもよく、その結果、O,N,N,O−4座配位性またはO,N,N,N−4座配位性シッフ塩基配位子を得ることも可能である。
本明細書で使用される用語「制限立体障害」は、基または配位子、通常、分岐状のあるいは置換された基または配位子を言い、動きにおいて制限されている、つまり、基のサイズによって、X線回折で測定可能な分子歪み(角度歪みまたは結合の伸び)を生み出す。
本明細書で使用される用語「立体異性体」は、特に明記しない限り、本発明の化合物が有し得る可能性のある異なる異性体および立体配置的形態の全てを言い、特に、基本的な分子構造の全ての立体化学的および立体配置的異性体形態、全てのジアステレオマー、鏡像体および/またはコンフォーマーを言う。本発明の化合物の中には、異なる互変異性体が存在するものもあり、それら全ても本発明の範囲内に含まれる。
本明細書で使用される用語「鏡像体」は、特に明記しない限り、本発明のそれぞれの化合物の光学的に活性な形を意味し、その光学純度または鏡像体過剰率(業界で標準化されている方法で測定される)は、少なくとも80%(すなわち、1つの鏡像体が少なくとも90%で、他の鏡像体は最大で10%である)、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも98%である。
本明細書で使用される用語「溶媒和物」は、特に明記しない限り、本発明の化合物と好適な無機溶剤(たとえば、水と形成される水和物)またはアルコール類(特に、エタノールおよびイソプロパノール)、ケトン類(特に、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン)、エステル類(特に、酢酸エチル)など(これらに限定されない)のような有機溶剤によって形成されてもよい、任意の組合せを含む。
発明の詳細な説明
最も広い意味において、本発明は、先ず、多配位金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体を修飾する方法であって、該多配位金属錯体は、(i)イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子を少なくとも1個と、(ii)1個以上の他の配位子とを含み、前記方法は、金属と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)との間の結合を、前記酸が少なくとも部分的に開裂できるような条件下で、該多配位金属錯体を該酸に接触させることを含むことを特徴とし、前記他の配位子(ii)が、前記条件下で前記酸によるプロトン化が不可能であるように選択される方法に関する。好ましくは、前記条件は、以下の1つ以上の条件を含む。
−前記酸と前記多配位金属錯体との間のモル比は、約1.2を超える、好ましくは約2を超える、さらに好ましくは約3を超える、最も好ましくは約5を超える。
−前記酸と前記多配位金属錯体との間のモル比は、約40以下であり、好ましくは約30以下、さらに好ましくは約20以下、最も好ましくは約15以下である。
−接触時間は、5秒を超える、好ましくは30秒を超える、さらに好ましくは少なくとも1分、たとえば、少なくとも10分である。
−接触時間は、100時間未満、好ましくは24時間以下、さらに好ましくは4時間以下、最も好ましくは90分以下である。
−接触温度は、約−50℃〜約80℃、好ましくは約10℃〜約60℃、さらに好ましくは約20℃〜約50℃である。
前記反応条件の任意の組合せが、本発明のフレームの範囲内であると考えられ、さらに
好適な条件は、使用される酸と金属中心の回りの配位子の設定によって、特に、シッフ塩基配位子によって決まるが、それは、本明細書に含まれる情報に基づいて当業者によって容易に決定できることを理解すべきである。
また、前記他の配位子(ii)は、前記反応条件下で酸によってプロトン化しうるので、アミン類、ホスフィン類、アルシン類およびスチビン類からなる群から選択されないことが好ましい。
ある特定の実施形態において、本発明の方法は、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)のpKaを決定し(たとえば測定する)、前記酸のpKaが予め決定した(たとえば、前記測定工程で測定した)多座配位性シッフ塩基配位子(ii)のpKaより低くなるように、前記酸を選択する、付加的な工程を含む。
本発明の方法の実施に関して、以下の状態の一つが起こることが好適である。
−前記他の配位子(ii)の少なくとも1つは、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子である。
−前記イミノ基の窒素原子と、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)の前記配位ヘテロ原子との間の、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)における炭素原子の数は、2または3である。
−多座配位性シッフ塩基配位子(i)のイミノ基の窒素原子は、実質的に立体障害を持つ基、たとえば、置換フェニルまたは好ましくはアダマンチルのようなC3−10シクロアルキルで置換されている。
−前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、カルベン配位子、好ましくは、N−複素環カルベン配位子、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択されるものである。
−前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、アニオン性配位子である。
−前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、非アニオン性配位子、たとえば、カルベン配位子以外のものである。
−酸は、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸または硝酸(これらに限定されない)のような強無機酸、p−トルエンスルホン酸(これらに限定されない)のような強有機酸である。
前記反応条件の任意の組合せが、本発明のフレームの範囲内であると考えられ、さらに好適な条件を、本明細書に含まれる情報に基づいて当業者によって容易に決定できることを理解すべきである。
第二に、本発明は、以下の反応生成物に関する。
(a)多配位金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体であって、前記多配位金属錯体は、(i)イミノ基を含み、該イミノ基の窒素に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して、金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子を少なくとも1個と、(ii)1つ以上の他の配位子とを含む、および
(b)前記多配位金属錯体(a)に関して、約1.2を超える(好ましくは先に規定したモル比)モル比で反応した酸、ただし、前記他の配位子(ii)は、前記反応条件下で前記酸によってプロトン化できないように選択される。
本発明の反応生成物をさらに詳しく記載すると、以下の状態の一つが起こることが好ましい。
−前記他の配位子(ii)は、アミン類、ホスフィン類、アルシン類およびスチビン類からなる群から選択されない。
−前記酸(b)のpKaは、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)の
pKaより低い。
−前記イミノ基の窒素原子と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)の前記ヘテロ原子との間の、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)における炭素原子の数は、2または3である。
−前記多配位金属錯体(a)の少なくとも1個の前記他の配位子(ii)は、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子である。
−多座配位性シッフ塩基配位子(i)のイミノ基の窒素原子が、実質的に立体障害を持つ基、たとえば、置換フェニルまたは好ましくは、マダマンチルのようなC3−10シクロアルキルで置換されている。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個が、カルベン配位子、好ましくは、N−ヘテロ環状カルベン配位子、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択されるものである。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個がアニオン性配位子である。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個が非アニオン性配位子、たとえば、カルベン配位子以外のものである。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個が、溶剤Sであり、前記錯体(a)が、アニオンAと結合するカチオン性化学種である。
−前記多配位金属錯体(a)が、二金属錯体(2個の金属は同じか異なる)であり、好ましくは(1)前記二金属錯体の1個の金属が、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)および前記1個以上の配位子(ii)と5座配位し、もう1個の金属が1つ以上の中性配位子および1つ以上のアニオン性配位子と4座配位している、または(2)前記二金属錯体の各金属が、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)および前記1つ以上の配位子(ii)と6座配位している。
−前記多配位金属錯体(a)は単一金属錯体である。
−前記多配位金属錯体(a)の金属は、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される遷移金属であり、たとえば、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属である。
−前記多配位金属錯体(a)は、5座配位性金属錯体または4座配位性金属錯体、たとえば、(1)前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)が2座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)が2個の他の配位子(ii)を含むもの、あるいは(2)前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)が3座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)が、単一の他の配位子(ii)を含むものである。
−前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)が、図1に示される一般式(IA)および(IB)(式中、
−Zは、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択され;
−R”およびR’’’は、それぞれ、水素、C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とは一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、このラジカルはそれぞれ、任意で、1個以上、好ましくは1〜3個の、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される置換基Rによって置換されており、
−R’は、一般式(IA)で表される化合物に含まれる場合は、R”およびR’’’について定義されたものと同じであり、一般式(IB)で表される化合物に含まれる場合は、C1−7アルキレンおよびC3−10シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1個以上の置換基Rで置換されている場合もある)で表されるいずれか1である。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個が、1個以上の水素原子が、イミダゾール−2−イリデン、ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、オキサゾール−2−イリデン、トリアゾール−5−イリデン、チアゾール−2−イリデン、ビス(イミダゾリン−2−イリデン)ビス(イミダゾリン−2−イリデン)、ピロリリデン、ピラゾリリデン、ジヒドロピロリリデン、ピロールイリジンイリデンおよびこれらのベンゾ−縮合誘導体からなる群から選択されるN−複素環カルベン、または非イオン性プロフォスファトラン超塩基の制限立体障害を提供する基で置換されている誘導体である。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個が、C1−20アルキル、C1−20アルケニル、C1−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C1−20アルケニルオキシ、C1−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、ハロゲン、C1−20アルキルジケトネート、アリールジケトネート、ニトロおよびシアノからなる群から選択されるアニオン性配位子である。
−前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個が、一般式:=[C=]CR(式中、
−yは、0〜3(両端を含む)の整数であり、
−RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C1−20アルケニル、C1−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C1−20アルケニルオキシ、C1−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり、またはRおよびRは互いに結合して、フェニルインデニリデン配位子のような、図4で示される式(IVC)で表される(これらに限定されない)縮合芳香族環構造を形成してもよい)で示されるカルベン配位子である。
−前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)は、4座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)が、芳香族および不飽和シクロ脂肪族基、好ましくは、アリール、ヘテロアリールおよびC4−20シクロアルケニル基からなる群から選択される非アニオン性配位子Lである他の配位子(ii)を含み、前記芳香族または不飽和シクロ脂肪族基は、任意で、1個以上のCl−7アルキル基またはハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子吸引性基で置換されている。
第一態様において、以下、酸による反応によって修飾される多配位金属錯体(a)の、数種の好ましい実施形態に関して、本発明を説明する。
本発明による、酸を使用する反応に好適な多配位金属錯体(a)の第一実施形態は、国際公開第03/062253号パンフレットに開示されているような、5座配位性金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体であり、すなわち、カルベン配位子、多座配位性配位子および1つ以上の他の配位子を含み、
−前記他の配位子の少なくとも1個は、pKaが少なくとも15(このpKaは標準的条件、すなわち、通常、約25℃で、配位子の溶解性によってジメチルスルホキシド(DMSO)または水中で測定される)の制限立体障害配位子であり、
−多座配位性配位子は、イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子であり、
−前記他の配位子は、反応条件において前記酸によってプロトン化することができないものである。
この第一実施形態の5座配位性金属錯体は、単一金属錯体であっても、1個の金属が5座配位性しており、もう1個の金属が1個以上の中性配位子および1個以上のアニオン性配位子と4座配位性している二金属錯体でもよい。後者においては、2個の金属MおよびM’は同じでも異なっていてもよい。このような二金属錯体の特定の例として、図4に示される一般式(IVA)および(IVB)が挙げられる。ここで、式中、
−Z、R’、R”およびR’’’は、それぞれ、先に、式(IA)および(IB)に関して定義した通りであり;
−MおよびM’はそれぞれ、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから独立して選択される金属であり;
−yは、Mと、RおよびRを持つ炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数であり;
−RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
−R’とRおよびRの1つとが互いに結合して、2座配位性配位子を形成してもよく;
−X、XおよびXは、以下に規定するアニオン性配位子であり;
−Lは中性電子供与体であり;
−RおよびRは一緒になって縮合芳香族環構造、すなわち、フェニルインデニリデン配位子を形成してもよい。
また、この錯体の塩、溶媒和物および鏡像体も含む。
含有される多座配位性シッフ塩基配位子は、この第一実施形態多配位金属錯体(a)が2個の他の配位子を含む、2座配位性シッフ塩基配位子であっても、金属錯体が単一の他の配位子を含む3座配位性シッフ塩基配位子であってもよい。
好ましくは、本発明の5座配位性金属錯体の金属は、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される遷移金属であり、さらに好ましくは、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属である。
本発明の5座配位性金属錯体のカルベン配位子は、アルキリデン配位子、ベンジリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子、フェニルインデニリデン配位子、ア
レニリデン配位子またはキュムレニリデン配位子、たとえば、ブタ−1,2,3−トリエニリデン、ペンタ−1,2,3,4−テトラエンイリデンなどでもよく、すなわち、1〜3個のsp炭素原子が、金属Mと炭素原子を持つ基との間に存在してもよい。
錯体を有機溶剤の存在下に使用する場合に言わば有用な一態様では、本発明の5座配位性金属錯体中に存在する前記他の配位子の1つは、アニオン性配位子であり、用語アニオン性配位子は、業界で通常のものを意味し、好ましくは米国特許第5,977,393号に記載されている定義の範囲内であって、たとえば、好ましくは、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、ハロゲン(好ましくは塩素)、ニトロ、C1−20アルキル−ジケトネート(たとえばアセチルアセトネート)、アリールジケトネートおよびシアノ(これらに限定されない)からなる群から選択される配位子である。
錯体を水の存在下で使用する場合に言わば有益な、他の態様では、前記他の配位子1つは溶剤であり、錯体はアニオンと結合するカチオン性化学種である。後者の目的のために好適なアニオンは、テトラフルオロホウ酸塩、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩、アルキルスルホネートからなる群から選択され、該アルキル基は、1個以上のハロゲン原子およびアリールスルホネートで置換されていてもよい。このようなカチオン性化学種において金属と配位させるために好適な溶剤は、プロトン性溶剤、極性非プロトン性溶剤、および非極性溶剤からなる群から選択されてもよく、たとえば、芳香族炭化水素類、塩素化炭化水素類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、アミド類および水を挙げることができる。
本発明のこの第一実施形態による、5座配位性金属錯体の生成方法は、すでに国際公開第03/062253号パンフレットに広範囲にわたって開示されている。
本発明による、酸との反応に好適な多配位金属錯体(a)の第二の実施形態は、多座配位性配位子および1個以上の他の配位子を含む4座配位性単一金属錯体であって、
−前記他の配位子の少なくとも1個は、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子、または芳香族および不飽和シクロ脂肪族から選ばれる基、好ましくはアリールおよびC4−20シクロアルケニル(たとえば、シクロオクタジエニル、ノルボルナジエニル、シクロペンタジエニルおよびシクロオクタトリエニル)基であり、この基は、任意で1個以上のC1−7アルキル基で置換されており、
−多座配位性配位子は、イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子であり、
−前記他の配位子は、前記反応条件下では前記酸のプロトン化ができない錯体である。
第一実施形態のように、本発明の第二実施形態の4座配位性単一金属錯体に存在する前記他の配位子の1個は、先に定義したようなアニオン性配位子でもよい。
特に、本発明の第一実施形態および第二実施形態の両方に含まれてもよい、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子は、1つ以上の水素原子が、以下に示す基である、制限立体障害を提供する基で置換されている誘導体であってもよい。
−イミダゾール−2−イリデン(pKa=24)、
−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン(pKaは24を超える)、
−オキサゾール−2−イリデン、
−トリアゾール−5−イリデン、
−チアゾール−2−イリデン、
−ピロリリデン(pKa=17.5)、
−ピラゾリリデン、
−ジヒドロピロリリデン、
−ピロリリジニリデン(pKa=44)、
−ビス(イミダゾリン−2−イリデン)およびビス(イミダゾリジン−2−イリデン)、−インドリリデン(pKa=16)のようなベンゾ−縮合誘導体および
−非イオン性プロフォスファトラン超塩基、すなわち、米国特許第5,698,737号に記載されている、好ましくは、フェルカーデ超塩基として知られるトリメチルトリアザプロフォスファトラン:P(CHNCHCHN。
制限立体障害基は、たとえば、分岐状のまたは置換された基であってよく、たとえば、ter−ブチル基、置換C3−10シクロアルキル基、2個以上のCl−7アルキル置換基(たとえば、2,4,6−トリメチルフェニル(メシチル)、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニルまたは2,6−ジイソプロピルフェニル)を持つアリール基、2個以上のCl−7アルキル置換基を持つヘテロアリール基(たとえばピリジニル)が挙げられる。
先に示したように、第一実施形態の5座配位性金属錯体中、または第二実施形態の4座配位性単一金属錯体中のどちらかに含まれる多座配位性シッフ塩基配位子は、図1で示される一般式(IA)および(IB)(式中、Z、R’、R”およびR’’’は、先に定義した通り)のうちの1で示されるものでもよい。一般式(IA)で表される配位子の定義において、基R’は、メチル、フェニルおよび置換フェニル(たとえばジメチルブロモフェニルまたはジイソプロピルフェニル)から選択されるのが好ましい。一般式(IB)で表される配位子の定義において、基R’は、メチリデンまたはベンジリデンであるのが好ましい。
本発明のこの第二実施形態による、4座配位性単一金属錯体の生成方法は、すでに、国際公開第03/062253号パンフレットに広範囲にわたって開示されている。
本発明による、酸との反応に好適な多配位金属錯体(a)の第三実施形態は、少なくとも4座配位性金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体であって、
−イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子と;
−芳香族および不飽和シクロ脂肪族基、好ましくはアリール、ヘテロアリールおよびC4−20シクロアルケニル基から選択される非アニオン性不飽和配位子Lと、ここで前記芳香族または不飽和シクロ脂肪族基は、任意で、1個以上のC1−7アルキル基または、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子吸引性基で置換されており;
−C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリールおよび複素環からなる群から選択される非アニオン性配位子Lとを含み、この基は、任意で、1つ以上の、好ましくはハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)から選択される電子吸引置換基で置換される場合もあり、
ただし、前記他の配位子LおよびLは、前記反応条件下では前記酸のプロトン化ができないものである。
本発明のこの第三実施形態において、多座配位性配位子は、N,O−2座配位性シッフ塩基配位子またはN,S−2座配位性シッフ塩基配位子が好ましく、図1の、式(IA)または(IB)で示される2座配位性シッフ塩基配位子が最も好ましく、金属錯体が4座配位性である場合は、先により詳しく記載した。多座配位性配位子は、金属錯体が5座配位性となる3座配位性シッフ塩基であってもよい。
本発明のこの第三実施形態による少なくとも4座配位性金属錯体は、単一金属錯体が好ましい。好ましくは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される遷移金属である。さらに好ましくは、この金属は、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される。
各金属、配位子Lおよび配位子Lは、互いに独立して、そのような基または置換基の、先に記載した定義中に挙げられた個々の意味も含み、前記金属の任意のものまたはそのような基について列挙された置換基の任意のものを持つ前記基の任意のものである。非アニオン性配位子Lは、tert−ブチル、ネオペンチルおよびモノまたはポリ置換フェニル、たとえば、ペンタフルオロフェニル(これらに限定されない)のような制限立体障害を持つものが好ましい。また、Lは、メチルのような直鎖Cl−7アルキル、またはフェニルのようなアリールでもよい。また、非アニオン性不飽和配位子Lは、制限立体障害(たとえば、アルキルアリールおよびアルキルヘテロアリール、たとえば、キシリル、クメニルまたはメシチルが挙げられるが、これらに限定されない)を持つのが好ましい。
本発明のこの第三実施形態による、少なくとも4座配位性金属錯体は、たとえば、以下の手順で生成されてもよいが、これは限定ではない。先ず、多座配位性配位子(たとえば2座配位性または3座配位性シッフ塩基)の金属(たとえばタリウム)塩と、好ましくは所望の金属の二金属金属錯体、さらに好ましくは、所望の金属が、非アニオン性不飽和配位子Lと、少なくとも1個のアニオン性配位子、たとえば[RuCl(p−シメン)]、[RuCl(COD)]または[RuCl(NBD)](式中CODおよびNBDは、それぞれ、シクロオクタジエンおよびノルボルナジエンを意味する)に配位するホモ二金属錯体とを反応させる。アニオン性配位子によって形成した金属塩、たとえば塩化タリウムを除去した後、生成された中間錯体、すなわち、所望の金属が非アニオン性不飽和配位子L、多座配位性配位子(たとえば2座配位性または3座配位性シッフ塩基)およびアニオン性配位子に配位した錯体を、非アニオン性配位子Lと、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえばC1−7アルキルリチウム、C1−7アルキルナトリウム、フェニルリチウムまたはフェニルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムブロマイドまたはペンタフルオロフェニルマグネシウムクロライドのようなグリニャール試薬との組み合わせと反応させる。本発明の第三実施形態の、所望の少なくとも4座配位性金属錯体の回収は、アニオン性配位子で生成したアルカリまたはアルカリ土類金属塩の除去、それに続けて従来の技術を用いた精製によって、適切に達成することができる。このように、この実施形態の純粋な少なくとも4座配位性金属錯体が、簡易な2工程法によって、高い収率で得られる。
本発明による、酸との反応に適した多配位金属錯体(a)の第四実施形態は、6配位金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体であって、
−イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムから
なる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子と;
−多座配位性配位子とは異なる少なくとも1個の非アニオン性2座配位性配位子Lと;−最大で2個のアニオン性配位子Lとを含み、
ただし、前記配位子LおよびLは、前記反応条件下では前記酸のプロトン化ができないものである。
前記6配位金属錯体は、各金属が6配位である二金属錯体が好ましい。2個の金属は同じでも異なっていてもよい。各金属は、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される遷移金属が好ましい。前記各金属は、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから独立して選択されるのがさらに好ましい。
上記多座配位性配位子は、本発明の先の実施形態で定義したものが好ましく、すなわち、2座配位性または3座配位性シッフ塩基が好ましい。非アニオン性2座配位性配位子Lとしては、ポリ不飽和C3−10シクロアルケニル基が好ましく、たとえば、ノルボルナジエン、シクロオクタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンまたはシクロヘプタトリエン、またはヘテロアリール基、たとえば(これらに限定されない)、フランまたはチオフェンのような1−ヘテロ−2,4−シクロペンタジエン、またはベンゾフラン、チエノフランまたはベンゾチオフェンのようなその縮合環誘導体、ピランのような6員ヘテロ芳香族化合物またはシクロペンタピラン、クロメンまたはキサンチンのようなその縮合環誘導体のような、前記した基(金属錯体を修飾するために使用される酸によってプロトン化されるリスクを避けるため、ヘテロ原子が、窒素、リン、ヒ素またはアンチモンではないのが好ましい)が挙げられる。各アニオン性配位子Lは、好ましくは、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−7アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、アルキルジケトネート(たとえば、アセチルアセトネート)、アリール−ジケトネート、ハロゲン、ニトロおよびシアノからなる群から選択され、前記基のそれぞれは、先に定義した通りである。前記6配位金属錯体が単一金属である場合、好ましくは、1個だけのアニオン性配位子Lを有するのが好ましい。
本発明の第四実施形態による6配位金属錯体は、たとえば(これは限定ではない)、多座配位性配位子(たとえば2座配位性または3座配位性シッフ塩基)の金属(たとえばタリウム)を、好ましくは所望の金属の二金属の金属錯体、さらに好ましくは、所望の金属が、非アニオン性2座配位性配位子Lと、少なくとも1個のアニオン性配位子、たとえば[RuCl、具体的には[RuCl(COD)]または[RuCl(NBD)](式中、CODおよびNBDはそれぞれシクロオクタジエンおよびノルボルナジエンを意味する)とに配位するホモ二金属錯体と反応させる、一工程手順で高い収率および純度で生成してもよい。アニオン性配位子によって形成された金属塩、たとえばタリウムクロライドの除去の後、所望の6配位金属錯体を従来の技術を使用して精製してもよい。
本発明のこの第四実施形態の金属錯体を水の存在下で使用する場合に言わば有益な、特定の実施形態では、前記6配位金属錯体の1個以上のアニオン性配位子Lが引き抜かれ、配位子として溶剤Sで置き換わる場合が有利であるかもしれない。このアニオン性配位
子の引き抜きおよび置き換わりは、たとえば、溶剤Sの存在下に、本発明のこの第四実施形態の6配位金属錯体を、式:A−E(式中、Eは、トリメチルシリル基または銀のような金属である)で表される化合物、当量で処理することによって行うことができ、その結果、6配位金属錯体は修飾されて、配位子として溶剤Sを(Lの代わりに)持ち、アニオンAに結合するカチオン性化学種となる。また、この処理によって、化合物LE(たとえば、銀クロライドまたはクロロトリメチルシラン)を形成し、これは従来の技術により反応混合物から除去することができる。この目的のために、好適なアニオンAとしては、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロ亜ヒ酸塩、過塩素酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、テトラ(ペンタ−フルオロフェニル)ホウ酸塩、およびアルキル基が1個以上のハロゲン原子で置換されてもよいアルキルスルホネートおよびアリールスルホネート(たとえばトルエンスルホネート)からなる群から選択してもよいが、これらに限定されない。そのようなカチオン性化学種において金属と配位するための好適な溶剤Sとしては、プロトン性溶剤、極性非プロトン性溶剤および非極性溶剤からなる群から選択してもよく、たとえば、芳香族炭化水素類、塩素化炭化水素類、エーテル類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、アミド類および水を挙げることができる。
さらに詳しくは、本発明の第三実施形態の少なくとも4座配位性金属錯体も、本発明の第四実施形態の6配位金属錯体も、多座配位性配位子として、図1で示される一般式(IA)または(IB)(式中、Z、R’、R”およびR’’’は先に定義した通り)の一つで表される2座配位性シッフ塩基を持ってもよい。この特定のケースにおいては、R”とR’’’とが一緒になって、1個以上の、好ましくはイソプロピルまたはtert−ブチルのような分岐状のアルキル基で置換されてもよい、フェニル基を形成するのが好ましい。一般式(IA)で表される2座配位性シッフ塩基のクラスは業界でよく知られており、たとえば、サリチルアルデヒドを好適に置換されたアニリンで縮合することによって生成してもよい。一般式(IB)で表される2座配位性シッフ塩基のクラスは、たとえば、ベンズアルデヒドを、o−ヒドロキシアニリン(Zが酸素の場合)、アミノチオール(Zがイオウの場合)のような好適に選択されたアミノアルコールで縮合することによって生成してもよい。
本発明による、酸を使用する反応に好適な多配位金属錯体(a)の第五実施形態は、少なくとも5座配位性金属錯体、およびその塩、溶媒和物または鏡像体であって、
−前記2個のシッフ塩基の窒素原子がC1−7アルキレンまたはアリーレン連結基Aを介して互いに結合している、2個のシッフ塩基を含む4座配位性配位子と;
−芳香族および不飽和シクロ脂肪族基からなる群、好ましくはアリール、ヘテロアリールおよびC4−20シクロアルケニル基からなる群から選択される非アニオン性配位子Lとを含み、前記芳香族または不飽和シクロ脂肪族は、任意で、1個以上のC1−7アルキル基またはハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子吸引性基で置換されている。
配位子Lおよびその置換された基はそれぞれ、互いに独立して、前記基の任意のものでよく、前に記載した定義に列挙したそのような基または置換基に関する個々の意味の任意のものを含む。好ましくは、非アニオン性配位子Lは、モノまたはポリ置換フェニル、たとえば、キシリル、クメニル、シメニルまたはメシチル(これらに限定されない)などの制限立体障害を持つ。
本発明のこの第五実施形態による少なくとも5座配位性金属錯体で好ましいものは、単一金属錯体である。金属は、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属か
らなる群から選択される遷移金属が好ましい。前記金属は、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択されるのが、さらに好ましい。
さらに詳しくは、第五実施形態のそのような少なくとも5座配位性金属錯体において、前記非アニオン性配位子Lのそれぞれはクメンでもよく、C1−7アルキレンまたはアリーレン連結基Aは、好ましくは、塩素、臭素、トリフルオロ、メチルおよびニトロからなる群から選択される置換基1個以上で置換されてもよい。2個の連結窒素原子と一緒になったC1−7アルキレンまたはアリーレン連結基Aは、o−フェニレンジアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサンまたは1,7−ジアミノヘプタンに由来するのが好ましい。また、4座配位性配位子の各シッフ塩基は、そのような各シッフ塩基に含まれるサリシリデンまたはアセチリデン基が、好ましくは塩素、臭素、トリフッ素、メチルおよびニトロからなる群から選択される置換基1個以上で置換されてもよい、サリチルアルデヒドまたはアセチルアセトンに由来するものが好ましい。
好適な、しかし限定ではない、本発明のこの第五実施形態の範囲内にある4座配位性配位子の例として、図2に示される、一般式(IIA)および(IIB)で表されるものが挙げられる。さらに特定の例として、所謂サレン(すなわち、ビス(サリチルアルデヒド)エチレンジアミン)、サロフ(すなわち、ビス(サリチルアルデヒド)−o−フェニレンジアミン)、ヒドロキシ−acetophおよびaccac(すなわち、ビス(アセチルアセトン)エチレンジアミン)配位子およびその置換誘導体が挙げられる。式(IIA)および(IIB)において、好ましい置換基Xは、クロロ、ブロモ、トリフルオロ、メチルおよびニトロからなる群から選択される。式(IIA)において、好ましい置換基Yは、水素およびメチルからなる群から選択される。好ましい4座配位性配位子は、N,N−ビス(5−ニトロ−サリチリデン)−エチレンジアミンである。他の好適な配位子として、N,N’−1,2−シクロヘキシレンビス(2−ヒドロキシアセトフェノニリデンイミン)、1,2−ジフェニルエチレンビス(2−ヒドロキシ−アセトフェノニリデンイミン)および1,1’−ビナフタレン−2,2’−ジアミノビス(2−ヒドロキシアセトフェノニリデンイミン)が挙げられ、これらは全て、Molecules(2002)7:511−516に記載してある。
本発明のこの第五実施形態による、少なくとも5座配位性金属錯体は、先に定義した好適な4座配位性配位子と、好ましくは所望の金属の二金属錯体、さらに好ましくは、所望の金属が、非アニオン性配位子Lと、少なくとも1個の[RuCl(p−シメン)]、[RuCl(COD)]または[RuCl(NBD)](式中、CODおよびNBDはそれぞれシクロオクタジエンおよびノルボルナジエンを意味する)のようなアニオン性配位子とに配位したホモ二金属錯体とを反応させることによって生成されてもよい。
第二態様において、以下、多配位金属錯体(a)の修飾に好適な酸および反応のいくつかの好ましい実施形態に関して、本発明を説明する。この態様に関して、酸の選択は、重要な要因である。特に、前記酸のpKaが多座配位性シッフ塩基配位子のpKaより低いのが好ましい。入手可能な、主な有機酸および無機酸のpKa(通常、室温(約25℃)、水溶液中で測定する)は、文献に広く載っている(たとえば、化学物理便覧第81編(2000)、CRCプレス、8−44〜8−56頁)が、種々の可能性のある多座配位性シッフ塩基配位子のデータベースは、必ずしも業界で入手可能ではない(たとえば、ボードウェルpKa表は、限られた数のイミンのデータしか提供していない)。このことは先ず、酸の選択をする前に前記多座配位性シッフ塩基配位子のpKaを決定、測定または評
価する必要性があるという実際上の結果をもたらす。このようなpKa測定は、まさに、当業者の知識の範囲内で、標準のプラクティスに従って行うことができ、すなわち、通常室温(約25℃)で、溶剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)中で行う。一度そのような測定の結果を得ると、多座配位性シッフ塩基配位子のpKaより少なくとも2単位まで低いpKaを持つ酸を選択することが安全であろう。
特に、多配位金属錯体(a)の修飾に使用される前記酸のpKa(室温、すなわち約25℃で、水溶液中で測定)は、約4より低い、すなわち所謂弱酸を除くのが好ましい。上記の基準を基に、本発明の実施に好適な酸としては、主に、ヨウ化水素、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、硫酸、硝酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸および過塩素酸、さらにHOClO、HOClOおよびHOIO(これらに限定されない)などの無機酸が挙げられる。いくつか有機酸もまた本発明の実施に好適である。以下のものが挙げられる。
−メタンスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸(その異性体3個全て)、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルファニル酸およびトリフルオロメタンスルホン酸(これらに限定されない)などのスルホン酸類;
−アセト酢酸、バルビツール酸、ブロモ酢酸、ブロモ安息香酸(オルソおよびメタ異性体の両方)、クロロ酢酸、クロロ安息香酸(3個の異性体全て)、クロロフェノキシ酢酸(3個の異性体全て)、クロロプロピオン酸(αおよびβ異性体の両方)、cis−ケイ皮酸、シアノ酢酸、シアノ酪酸、シアノフェノキシ酢酸(3個の異性体全て)、シアノプロピオン酸、ジクロロ酢酸、ジクロロ−アセチル酢酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシリンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸、ジニコチン酸、ジフェニル酢酸、フルオロ安息香酸、ギ酸、フランカルボン酸、フロン酸、グルコール酸、馬尿酸、ヨード酢酸、ヨード安息香酸、乳酸、ルチジン酸、マンデル酸、α−ナフトエ酸、ニトロ安息香酸、ニトロフェニル酢酸(3個の異性体全て)、o−フェニル安息香酸、チオ酢酸、チオフェン−カルボン酸、トリクロロ酢酸およびトリヒドロキシ安息香酸(これらに限定されない)などのモノカルボン酸;および
−ピクリン酸(2,4,6−トリニトロフェノール)および尿酸(トリヒドロキシ−2,6,8−プリンまたはそのケトン型)(これらに限定されない)などの他の酸性物質。
また、代わりの実施形態として、本発明の実施のために好適な酸は、業界で利用可能な方法によってイン・サイチューで生成される上記の酸も含む。たとえば、これは、所謂光酸発生剤、すなわち、放射線、たとえば可視光線源または深紫外(UV)線源に約100nm〜約350nmの範囲のような短い波長で、あるいは電子ビームやX線のようなイオン化放射線で曝露された時、酸に変換しうる化合物を含む。このような光酸発生剤の例は、画像を基質に変換する分野、特に、フォトレジスト組成物およびパターンニングプロセスの分野ではよく知られており、ビススルフォニルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、米国特許第6,689,530号のスルホニルジアゾメタン、ヨードニウム塩類およびスルホニウム塩類(特に、スルホニウムカチオンの2個の基が一緒になって、オキソ置換アルキレン基を形成している、米国特許第6,638,685号のスルホニウム塩混合物を含む)であって、アニオン成分は、パーフルオロアルキルスルホネート、カンファスルホネート、ベンゼンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、フッ素置換ベンゼンスルホネート、フッ素置換アルキルベンゼンスルホネートおよびハロゲンからなる群から選択され(ただし前記アニオンは、pKaが約4未満の酸を形成することができる)および/またはカチオン成分は、ナフチルチエニルおよびペンタフルオロフェニルのような基を1個以上含む塩類のような、モノマーの発生剤を含む。また、このような光酸発生剤は、分子量が約500〜約1,000,000で、スルホニウム塩をその主鎖および/または側鎖に持ち、さらに1個以上の有機光酸発生基をその側鎖に持って光の曝露によって酸を生成するポリマーのような、ポリマー発生剤も含む。そのようなポリマーとして、米国特許第6,660,479号の製造例1および2において、塩がp−トルエンスルフォン酸塩、ナフトールスルフォン酸塩または9,10−ジメトキシ
−2−アントラセンスルフォン酸塩であるものがある。
また、2個以上の前記酸は、前記酸を反応条件下で一緒に使用され得る限り(すなわち、それらの物理的形態が、多配位金属錯体との同時反応を可能にさせる限り)において混合物の形態で、あるいは、2以上の工程における多配位金属錯体との逐次反応のためには本発明の実施に好適である。多配位金属錯体と酸との間の好ましい反応条件は、以下の1つ以上の条件を含む。
−通常固体の多配位金属錯体と1つ以上の酸との間の効率的な接触;たとえば、前記酸が支配的温度条件下で気体の場合、不均質反応の進行が可能になる充分な接触時間を与える速さで、金属錯体の固体バルク中を1回以上流す(すなわち、再循環可能であること);あるいは、前記酸が液体または多配位金属錯体と同じまたは類似の溶剤系に溶解する(すなわち、1つ以上の好ましくは相溶性のある溶剤)場合、効率的な接触は、前記多配位金属錯体を前記溶剤系に溶解し、これに前記溶剤系中の酸の溶液(または、溶剤がイオン性液体の場合、前記溶剤の存在下、酸をイン・サイチューで生成することのできる化学種)を添加し、均質反応が進むのに充分な時間が与えられる好適な撹拌手段で混合物を撹拌することによって、達成されてもよい。
−多配位金属錯体と1つ以上の酸(両方とも任意で前記に定義した溶剤系中に溶解している)との間の接触時間は、好ましくは約5秒〜約100時間;多配位金属錯体と1つ以上の酸を含む反応媒体の物理的形態に依り、また、多座配位性シッフ塩基配位子および選択された酸の反応性、および温度などの他の反応条件にも依るが、接触時間は、さらに好ましくは、約30秒〜約24時間の範囲、最も好ましくは1分〜4時間の範囲内で変化してもよい;
−約−50℃〜約+80℃の範囲の接触温度;反応温度は、全接触時間を通して一定である必要はないが、当業者によく知られた方法で、反応の調整を保つために、上記の範囲の中を徐々に昇温してもよいと、理解されるべきである。たとえば、任意で溶剤系(たとえば前記の)の存在下、好適な冷却手段で比較的低温(すなわち、室温未満であるが、前記溶剤系の凝固温度を超える)に保たれた容器内で、1つ以上の酸を多配位金属錯体に添加し、次いで室温でもよい高温まで、局所的な過加熱をモニタリングしながら、温度を注意深く上昇させる。
酸と多配位金属錯体との間のモル比もまた、本発明の実施において、重要なパラメーターである。従来技術(米国特許第6,284,852号)の教示とは反対に、この比は、配位子プロトン化を行うように(本発明の他の特徴は、そのようなプロトン化しうる配位子の存在を避けることにあるため)または触媒分解を避けるように選択せず、錯体の金属中心と少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子との間の結合を、少なくとも部分的に開裂するように選択する。したがって、約1.2を超える、酸と多配位金属錯体との間のモル比の選択が望ましいことがわかった。好ましくは、前記比は2.0を超え、より好ましくは3.0を超え、さらに最も好ましくは4.0を超える値である。前記比は、任意で先に記載した溶剤系の存在下、先に定義した接触時間で、酸を多配位金属錯体に徐々に添加することにより段階的に達成してもよい。酸の添加速度は、慣用の実験方法に従い、酸、多座配位性シッフ塩基配位子および選択された温度に依って変化してもよい。
酸の消費レベルおよび多配位金属錯体との反応の進行速度は、たとえば、赤外スペクトル分析、炭素核磁気共鳴(NMR)およびプロトンNMR(これらに限定されない)などの標準の分析技術の1つ以上を使って追跡してもよい。これらの技術は、また、本発明の反応生成物の精密な性質の定量においても役に立つ。この性質は、また、反応生成物を反応媒体から分離し、好適な技術(たとえば再結晶が挙げられるがこれに限定されない)で精製した後に、反応生成物結晶粉末のX線ディフラクトグラムを得ることによって、確認してもよい。注意深い検査によって、本発明の反応生成物が、金属中心と多座配位性シッフ塩基配位子との間の結合が少なくとも部分的に開裂した生成物を含むことが示される。
反応の結果部分的に開裂される結合は、共有結合または配位結合でよく、それは、金属中心とシッフ塩基イミノ基の窒素原子との間の結合でもよく、金属中心とシッフ塩基配位子のヘテロ原子(酸素、イオウまたはセレニウム)との間の結合でもよく、あるいはそのような結合の両方が同時に少なくとも部分的に開裂してもよい。本発明は、前記開裂が完全であることを必要とせず、したがって、出発多配位金属錯体の混合物および1つ以上の反応生成物の混合物をもたらす部分的な結合の開裂もまた、本発明の範囲内である。今から開示するように、本発明の反応は、有機分子または得られた反応生成物の触媒活性により進行するモノマーの存在下に、イン・サイチューで実施されてもよいので、前記反応生成物が、1個の単一の純化学物の形で単離されることが必須ではない。
他の態様において、本発明は、
(a)主触媒種として、
−多配位金属錯体であって、この多配位金属錯体が(i)イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子と、(ii)1個以上の他の配位子とを含む多配位金属錯体、またはその塩、溶媒和物または鏡像体と、
−前記多配位金属錯体に関し、約1.2を超えるモル比で反応させた酸、ただし前記他の配位子(ii)は、前記反応条件下で前記酸によるプロトン化ができないように選択されている、との反応生成物と、
(b)ルイス酸助触媒(b)、触媒活性化剤(b)およびラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤(b)からなる群から選択される第二触媒成分1つ以上とを含む触媒系を提供する。
本発明のこの他の態様の触媒系において、第二成分(b)は、触媒されるべき反応の種類に従って選択される。たとえば、助触媒(b)は、環状オレフィンの開環メタセシス重合の反応速度を速めるために有用であり、ボロントリハライド;トリアルキルボロン;トリアリールボロン;有機アルミニウム化合物;マグネシウムハライド;アルミニウムハライド;スズテトラクロライド;チタニウムまたはバナジウムトリハライドまたはテトラハライドまたはテトラアルコキシド、好ましくは、チタニウムテトラクロライドまたはテトライソプロポキシチタニウム;アンチモンおよびビスマスペンタハライドからなる群から選択されてもよいが、これらは限定ではない。たとえば、助触媒(b)は、トリ−n−アルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウム水素化物、トリアルケニルアルミニウム類、アルキルアルミニウムアルコキシド、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、ジアルキルアルミニウムアリールオキシドおよびジアルキル−アルミニウムハライドからなる群から選択される有機アルミニウム化合物であってもよい。また、触媒活性化剤(b2)は、環状オレフィンの開環メタセシス重合の反応速度を速めるために(したがって、先に定義した助触媒(b)と組み合わせてもよい)有用であり、ジアゾ酢酸エチルおよびトリメチルシリルジアゾメタン、またはアゾビス(イソブチルニトリル)のようなラジカル開始剤(これらに限定されない)などのジアゾ化合物でもよい。
一方、ラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤(b)は、ATRP触媒系は、金属成分と開始剤との間のレドックス反応において成長ラジカルの可逆的生成に基づくので、通常、主触媒種とともに、モノマーのラジカル重合が行なうためには必要とされる。好適な開始剤として、式:R353637CXで表される化合物が挙げられる。式中、
−Xは、ハロゲン、OR38(式中、R38は、C1−20アルキル、ポリハロC1−20アルキル、C2−20アルキニル(好ましくはアセチレニル)、C2−20アルケニル(好ましくはビニル)、任意で1〜5個のハロゲン原子またはC1−7アルキル基で置換されているフェニル、およびフェニル−置換C1−7アルキルから選択される)、SR
39、OC(=O)R39、OP(=O)R39、OP(=O)(OR39、OP(=O)OR39、O−−N(R39およびS−−C(=S)N(R39(式中、R39は、アリールまたはC1−20アルキル、またはN(R39基が存在する場合は、2個のR39基は結合して5、6、または7員環複素環(前記ヘテロアリールの定義に従う)を形成してもよい)からなる群から選択され、
−R35、R36およびR37は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1−20アルキル(好ましくはC1−6アルキル)、C3−8シクロアルキル、C(=O)R40(式中、R40は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシからなる群から選択される)、C(=O)NR4142(式中、R41およびR42は、独立して、水素およびC1−20アルキルからなる群から選択され、あるいはR41とR42とが結合して、炭素数2〜5個のアルキレン基を形成してもよい)、COCl、OH、CN、C2−20アルケニル(好ましくはビニル)、C2−20アルキニル、オキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびアリール−置換C2−20アルケニルからなる群から選択される。
これらの開始剤において、Xは、臭素が好ましく、これは、より速い反応速度とより低いポリマーの多分散性をもたらす。
アルキル、シクロアルキルまたはアルキル−置換アリール基が、R35、R36およびR37の1つとして選択される場合は、このアルキル基はさらに、先に定義したX基で置換されてもよい。したがって、開始剤が、分岐状または星型(コ)ポリマーの出発分子としての役目を果たす可能性もある。このような開始剤の一例として、2,2−ビス(ハロメチル)−1,3−ジハロプロパン(たとえば、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−ジクロロプロパンまたは2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−ジブロモプロパン)があり、好ましい例として、R35、R36およびR37の1つが、1〜5個のC1−6アルキル置換基で置換されたフェニルの場合、それらの各々は、独立して、さらにX基(たとえばα,α’−ジブロモキシレン、ヘキサキス(α−クロロ−またはα−ブロモメチル)ベンゼン)で置換されてもよい。好ましい開始剤として、1−フェニルエチルクロライドおよび1−フェニル−エチルブロミド、クロロホルム、四塩化炭素、2−クロロプロピオニトリルおよび2−ハロ−C1−7カルボン酸(たとえば、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸など)のC1−7アルキルエステル類が挙げられる。好適な開始剤の他の例として、ジメチル−2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタレートが挙げられる。
本発明のこの他の態様の触媒系において、多配位金属錯体は、たとえば、それぞれ先に詳述した錯体の第一、第二、第三、第四および第五実施形態の任意のものであってもよい。またさらに他の態様において、本発明は、担持触媒、好ましくは不均質触媒反応における用途における担持触媒を提供する。これは、
(a)触媒系であって、
−多配位金属錯体であって、この多配位金属錯体が(i)イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する少なくとも1つの多座配位性シッフ塩基配位子と、(ii)1個以上の他の配位子とを含む多配位金属錯体、またはその塩、溶媒和物または鏡像体と、
−前記多配位金属錯体に関し、約1.2を超えるモル比で反応させた酸、ただし前記他の配位子(ii)は、前記反応条件下で前記酸によるプロトン化ができないように選択されている、との触媒的に活性な反応生成物を含む触媒系と、
(b)前記触媒系(a)を担持するのに適した担体を担持量含む。
本発明のこの態様の担持触媒に含まれる触媒系(a)は、多配位金属錯体と酸との反応
生成物に加え、本発明の先の態様ですでに検討した、ルイス酸助触媒(b)、触媒活性化剤(b)およびラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤(b)のような第二触媒成分を1つ以上を含む。
そのような担持触媒において、前記担体(b)は、無定形または準結晶性物質のような多孔性無機固体(シリカ、ジルコニアおよびアルミノ−シリカを含む)、結晶性モレキュラーシーブおよび1つ以上の無機オキシドおよびポリスチレン樹脂およびその誘導体などの有機ポリマー樹脂を含む修飾層状物質からなる群から選択されてもよい。
本発明の担持触媒とともに使用してもよい多孔性無機固体は、分子が、その触媒活性および担持活性を増強する、これらの物質の比較的大きな表面領域に接近するのを可能にする開放された微細構造を持つ。これらの多孔性物質は、分類の基準としてそれらの微細構造の詳細を使用して、3つの広いカテゴリーに分類することができる。これらのカテゴリーとは、無定形および準結晶性担持体、結晶性モレキュラーシーブ、および修飾層状物質である。これらの物質の微細構造における詳細な相違は、物質の触媒および担持挙動、およびそれらを特徴付けるために使用する種々の観測可能な特性における相違において、重要な相違としてそれ自身を明白に示し、たとえば、それらの表面積、孔径およびこの孔径のばらつき、X線回折パターンの存在または非存在およびそのようなパターンの詳細、それらの微細構造が透過型電子顕徽鏡法および電子回折法で研究された時の物質の外観がある。無定形および準結晶性物質は、工業的用途において長年使用されてきた多孔性無機固体の重要なクラスを代表する。これらの物質の典型的な例として、触媒形成および固体産生触媒および石油改質触媒担体として使用される準結晶性遷移アルミナにおいて普通使用される無定形シリカが挙げられる。本明細書で使用される用語「無定形」は、長距離規則度を持たない物質を示し、殆ど全ての物質は、ある程度、少なくとも局部的なスケールでは規則性があるので、若干の誤解を生む可能性がある。これらの物質を記載するために使用されてきた代わりの用語として、「X線に作用しない」と言う用語がある。シリカの微細構造は、粒子間の隙間に起因する空孔性を有する、高密度無定形シリカの100−250オングストローム粒子(カークオスマー工学化学百科事典、第3版、20巻766−781(1982)からなる。
遷移アルミナのような準結晶性物質もまた、広い孔径分布を持つが、より明確なX線回折パターンは通常、いくつかの広範なピークからなる。これらの物質の微細構造は、濃縮アルミナ相の極小結晶性領域とこれらの領域の間にある隙間に起因する物質の間隙とからなる(K.ウェファーおよびチャンキャー・ミスラー、「アルミニウムの酸化物および水酸化物」技術論文No.19改訂、アルコリサーチラボラトリーズ54−59(1987))。どちらの物質の場合も、物質内に孔径を調整する長距離規則度がないので、孔径のばらつきは通常非常に高い。これらの物質における孔径は、たとえば、約15〜約200オングストロームの範囲内の孔を含む、「メソ多孔質範囲」と呼ばれる領域に入る。
これらの構造的に不正確な固体とはかなり違う、物質の微細構造の結晶性特性を正確に繰り返すことによって調整されているので、孔径分布が非常に狭い物質がある。これらの物質は、「モレキュラーシーブ」と呼ばれ、最も重要な例として、ゼオライトが挙げられる。天然のゼオライトも合成ゼオライトも炭化水素変換の種々のタイプの触媒特性を持つことを過去に示してきた。あるゼオライト物質は規則性を有し、X線回折によって定量されるように、明確な結晶構造を持つ多孔性結晶性アルミノシリケートであり、その中に、数多くのなお小さな溝あるいは孔によって相互接続しているかもしれない、多数のより小さな空洞がある。これらの空洞および孔は、特定のゼオライト物質中で径が均一である。これらの孔の寸法は、ある寸法の吸着分子は受け入れ、一方それより大きな寸法は拒絶するので、これらの物質は、「モレキュラーシーブ」として知られ、これらの特性の利点を生かした種々の方法において利用される。このような天然および合成モレキュラーシーブ
の両方とも、種々の陽イオン含有結晶性シリケートを含む。これらのシリケートは、Si0と周期表第IIIB族元素のオキシド、たとえばAl0、との剛直な三次元フレームと記載することができ、それは、四面体が酸素原子を共有することによって架橋し、それによって、第IIIB族元素たとえばアルミニウムと第IVB元素たとえばケイ素原子との合計の酸素原子に対する比を1:2としている。第IIIB族元素、たとえばアルミニウム、を含む四面体のイオン原子価は、カチオン、たとえばアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオン、を結晶中に含むことによってバランスされる。これは、第IIIB族元素、たとえばアルミニウム、のCa、Sr、Na、KまたはLiのような種々のカチオンの数に対する比が1に等しいことで表現できる。カチオンの1タイプは、従来法のイオン交換技術を用いて、他のタイプのカチオンと全体的または部分的に交換してもよい。そのようなカチオン交換によって、カチオンの好適な選択によって、所定のシリケートの特性を様々に変えることができるようになった。これらのゼオライトの多くは、ゼオライト A(米国特許第2,882,243号);X(米国特許第2,882,244号);Y(米国特許第3,130,007号);ZK−5(米国特許第3,247,195号);ZK−4(米国特許第3,314,752号);ZSM−5(米国特許第3,702,886号);ZSM−11(米国特許第3,709,979号);ZSM−12(米国特許第3,832,449号);ZSM−20(米国特許第3,972,983号);ZSM−35(米国特許第4,016,245号);ZSM−23(米国特許第4,076,842号);MCM−22(米国特許第4,954,325号);MCM−35(米国特許第4,981,663号);MCM−49(米国特許第5,236,575号);およびPSH−3(米国特許第4,439,409号)に記載されるように、以上のまたは他の簡便な記号で示されるようになってきている。後者は、PSH−3と名付けられたものの結晶性モレキュラーシーブ組成物およびヘキサメチレンイミン、層状MCM−56の合成用の誘導剤として作用する有機化合物を含む反応混合物からのその合成を言う。類似の、しかし付加的な構造成分を持つ組成物が、欧州特許出願第293,032号で教示されている。また、ヘキサメチレンイミンも、結晶性モレキュラーシーブMCM−22の合成の用途として、米国特許第4,954,325号で;MCM−35として米国特許第4,981,663号で;MCM−49として米国特許5,236,575号で;およびZSM−12として米国特許第5,021,141号で考えられている。モレキュラーシーブ組成物SSZ−25は、米国特許第4,826,667号および欧州特許出願第231,860号で教示されており、このゼオライトは、アダマンタン四級アンモニウムイオンを含む反応混合物から合成される。ゼオライトREY、USY、REUSY、脱アルミニウム化Y、超疎水性Y、シリコンが多い脱アルミニウム化Y、ZSM−20、ベータ、L、シリコアルミノフォスフェートSAPO−5、SAPO−37、SAPO−40、MCM−9、メタロアルミノ−フォスフェートMAPO−36、アルミノフォスフェートVPI−5およびメソ多孔性結晶性MCM−41からなる群から選択されるモレキュラーシーブ物質が、本発明の担持触媒に含ませるのに適している。
膨潤剤を用いて分離して配置されうる層を含む、特定の層状物質は、支柱があり、大きな間隙度を持つ物質を提供する。そのような層状物質の例としてクレーが挙げられる。そのようなクレーは水で膨潤し、それによってクレーの層が水分子によって分離して配置される。他の層状物質は、水膨潤性ではないが、アミン類および四級アンモニウム化合物のようなある有機膨潤剤で膨潤する。そのような非水膨潤性層状物質の例が米国特許第4,859,648号に記載され、層状シリケート、マガディアイト、ケニヤイト、トリチタネートおよびペロブスカイトが含まれる。ある有機膨潤剤で膨潤することができる、非水膨潤性層状物質の他の例は、米国特許第4,831,006号に記載されている空格子含有チタノメタレート物質である。一度、層状物質が膨潤すると、この物質は、シリカのような熱的に安定な物質を、分離して配置されている層の間に挿入することによって柱状化する。前記米国特許第4,831,006号および第4,859,648号には、そこに記載された非水膨潤性層状物質を柱状化する方法が記載され、柱状化および柱状化物質の
定義に関し、本明細書の一部を構成するものとして引用する。層状物質の柱状化および柱状化生成物の他の特許の教示は、米国特許第4,216,188号;第4,248,739号;4,176,090号;および第4,367,163号;および欧州特許出願第205,711号にある。柱状化層状物質のX線回折パターンは、膨潤化および柱状化が他の、通常、よく整列した層状微細構造を崩壊する程度に応じて、大きく変化することができる。ある柱状化層状物質における微細構造の規則性は、柱状化物質における層間繰返しに対応する格子面間隔(d−spacing)で、X線回折での低角度領域においてただ1つのピークを観察するくらいひどく崩壊される。より少なく崩壊された物質は、この領域で、一般的にこの基本的な繰返しの順番である、いくつかのピークを示すかもしれない。また、層の結晶性構造からのX線反射が時々観察される。これらの柱状化物質における孔径分布は、無定形および準結晶性物質よりも狭いが、結晶性骨格の物質よりも広い。
本発明のさらに他の態様は、オレフィンメタセシス(本発明の背景技術に説明され、またはhttp://www.ilpi.com/organomet/acmetathesis.htmlに記載される)において、特に、環状オレフィン類の開環メタセシス重合あるいはアセチレンメタセシス(後者はhttp://www.ilpi.com/organomet/acmetathesis.htmlに記載され、アルキン類の混合物中の全炭素−炭素三重結合が切断され、次いで統計的方法で再配列され、メタラシクロブタジエン中間体を含む反応)、あるいは原子またはグループのエチレン性またはアセチレン性不飽和化合物、または他の反応性基質、たとえば、飽和炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、アルコール類、ハロゲン化アルキルなど(これらに限定されない)への移動に関与する反応において、
−多配位金属錯体であって、この多配位金属錯体が(i)イミノ基を含み、該イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する少なくとも1つの多座配位性シッフ塩基配位子と、(ii)1個以上の他の配位子とを含む多配位金属錯体、またはその塩、溶媒和物または鏡像体と、
−前記多配位金属錯体に関し、約1.2を超えるモル比で反応させた酸、ただし前記他の配位子(ii)は、前記反応条件下で前記酸によるプロトン化ができないように選択されている、との反応生成物の、触媒種としての用途を提供する。すなわち、本発明のこの態様は、前記反応生成物を含む触媒成分の存在下に、前記列挙した反応を行う方法に関する。
原子またはグループ移動反応は、通常、前記エチレン性またはアセチレン性不飽和化合物、または他の反応性基質を、第二反応性基質と、好適な触媒成分の存在下に、好適な反応条件で反応させる工程を含み、第二反応性基質は、転移する原子またはグループに好適な供与体である。
さらに詳しくは、前記原子またはグループ移動反応(以下詳細に説明する)は、以下のものからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
−1つ以上のラジカル(共)重合性モノマー、特にモノおよびジエチレン性不飽和モノマーの原子またはグループ移動ラジカル重合;
−原子移動ラジカル付加(これは、本発明の背景技術に説明されている)、たとえば、式:CX4−n(式中、Xはハロゲンであり、nは2〜4の整数である)で表されるポリハロメタンの、エチレン性不飽和化合物への付加反応で、対応する飽和ポリハロゲン化付加物を得る。たとえば、四塩化炭素またはクロロホルムのα−オレフィンへの付加反応も含む;
−ビニル化反応、すなわち、モノまたはジアルキン(たとえば、フェニルアセチレンまたは1,7−オクタジイン)とモノカルボン酸(たとえばギ酸または酢酸)またはジカルボン酸との反応により、アルク−1−エニルエステル類またはエノールエステル類、またはマルコフニコフ付加物、または反マルコフニコフ型付加物、またはこれらの混合物を生成
する;
−1つ以上のシクロプロパン構造単位を持つ有機化合物を生成する、α−エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化;
− 2−アミノベンジルアルコールとケトン類との酸化環化によるキノリン合成;
−エポキシド類を生成するα−エチレン性不飽和化合物のエポキシ化;
−アルコール類を生成する飽和炭化水素(たとえばメタンが挙げられるがこれに限定されない)の、スルホキシド類およびスルホン類を生成するスルフィド類の、ホスホネート類を生成するホスフィン類の、またはカルボン酸を生成するアルコール類およびアルデヒド類の酸化を含む、有機化合物の酸化;
−1つ以上のシクロプロペン構造単位を持つ有機化合物を生成するアルキンのシクロプロペン化;
−飽和ニトリル類を生成するα−エチレン性不飽和化合物の、不飽和ニトリル類を生成するアルキンの、またはβ−シアノカルボニル化合物を生成するα,β−不飽和アルデヒド類またはケトン類のハイドロシアン化;
−飽和シランを生成するオレフィン類の、不飽和シランを生成するアルキン類の、またはシリルエーテル類を生成するケトン類のヒドロシリル化、またはシアノヒドリントリメチルシリルエーテル類を生成するアルデヒド類のトリメチルシリルシアン化;
−1つ以上のアジリジン構造単位を持つ有機化合物を生成するイミン類またはアルケン類のアジリジン化;
−飽和アミド類を生成するオレフィン類のヒドロアミド化;
−アルカン類を生成するオレフィン類の、またはアルコール類を生成するケトン類の水素化;
−飽和第一級または第二級アミン類を生成するオレフィン類のアミノ分解;
−アルデヒド類を生成するアルコール類、好ましくはアリル性アルコール類の異性化;
−アルカン類またはアリールアルカン類を生成するアルキルまたはアリールハライド類のグリニャールクロスカップリング;
−アルキルボラン類およびトリアルキルボラン類を生成するオレフィン類のヒドロホウ素化;
−アルコール類を生成するアルデヒド類およびケトン類のヒドリド還元;
−α,β−不飽和カルボキシル化合物またはβ−ヒドロキシカルボニル化合物を生成する飽和カルボキシル化合物(アルデヒド類またはケトン類)のアルドール縮合、および環状α,β−不飽和カルボキシル化合物(アルデヒド類またはケトン類)を生成するジアルデヒド類またはジオン類の分子内アルドール縮合;
−飽和ポリカルボキシル化合物を生成する、ケトンまたはβ−ジカルボニル化合物のα,β−不飽和カルボキシル化合物へのマイケル付加;
−ロビンソン環化反応、すなわち、ステロイド類および他の6員環を含む天然物である好適な中間体である、飽和多環式カルボキシル化合物を生成するマイケル付加、次いでケトンのα,β−不飽和カルボキシル化合物への分子内アルドール縮合;
−ヘック反応、すなわち、アリールアルケン類またはヘテロアリールアルケン類を生成するアリールハライドまたは1−ヘテロ−2,4−シクロペンタジエン(またはそのベンゾ−縮合誘導体)とα−エチレン性不飽和化合物との反応;
−高級飽和炭化水素を生成するアルケン類の、または高級アルケン類を生成するアルキン類の共二量化;
−アルコール類を生成するオレフィン類のヒドロキシル化;
−オレフィン類およびアルキン類のヒドロアミノ化、
−アルキル化ケトン類、好ましくはアリル性ケトン類を生成するケトン類のアルキル化、好ましくはアリルアルキル化;および
−置換していてもよいシクロヘキセン類を生成する共役ジエンのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応、または置換していてもよい7−オキサノルボルネンを生成するフランのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応(これらに限定されない)のよ
うなディールス−アルダー反応。
以下にさらに詳しく説明する前記各有機合成反応については、自体既知のものである。反応の各タイプに関するさらなる詳細については、たとえば、K.バーハートおよびN.ショアー、有機化学、構造および機能(1999)、W.H.フリーマンによる(第3版)、およびB.コーネルズおよびA.ハーマン、有機金属化合物を使用する応用均一系触媒作用(2000)、ワィリーによるを参照されたい。
本発明のこの第六態様の各有機合成反応は、連続、反連続、またはバッチ方式で行ってもよいし、所望であれば液体および/または気体循環操作を含んでもよい。反応原料、触媒および溶剤の添加方法または順序は、通常、臨界的意義のあるものではない。各有機合成反応は、活性触媒用の溶剤、好ましくは触媒を含む反応原料が実質的に反応温度で溶解するものを含む液体反応媒体中で行ってもよい。
本発明のこの第六態様の第一実施形態において、前記反応は、第一オレフィンを少なくとも1つの第二オレフィンへ、または直鎖オレフィンオリゴマーあるいはポリマー、またはシクロオレフィンへ変換するオレフィンメタセシス反応である。したがって、本発明は、オレフィンメタセシス反応を行う方法であって、少なくとも1の第一オレフィンを触媒成分、任意で本発明の第五態様において記載したような好適な担体に担持されている触媒成分に接触させることを含む方法に関する。本発明の金属錯体の高い活性は、これらの化合物に多くのタイプのオレフィン類と配位させ、それらの間のメタセシス反応を触媒する。本発明の金属錯体により可能な例示的なオレフィンメタセシス反応として、非環状ジエン類のRCM、交差メタセシス反応、オレフィン性ポリマーの解重合、さらに好ましくは歪み環状オレフィン類のROMPが挙げられるがこれらに限定されない。特に、本発明の触媒成分は、少なくとも3個の原子、好ましくは3〜5の原子の環サイズを有する、非置換、モノ置換およびジ置換歪み単環、二環および多環式オレフィン類のROMPを触媒してもよい。その例として、ノルボルネン、シクロブテン、ノルボルナジエン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロヘプテン、シクロオクテン、7−オキサノルボルネン、7−オキサノルボルナジエン、シクロオクタジエン、シクロドデセン、これらのモノおよびジ置換誘導体、特に、該置換基が、米国特許第6,235,856号(これは本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する)に開示されるような、C1−7アルキル、シアノ、ジフェニルホスフィン、トリメチルシリル、メチルアミノメチル、カルボン酸またはエステル、トリフルオロメチル、マレイン酸エステル、マレイミドなどでもよい誘導体が挙げられる。また、本発明は、そのようなモノマーの2個以上を任意の比率で含む混合物のROMPにも採用する。さらなる例として、エクソ−N−(N’,N’,N’−トリメチルアンモニオ)エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドクロライドまたはエクソ−N−(N’,N’,N’−トリメチルアンモニオ)エチル−ビシクロ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドクロライドなどの水溶性環状オレフィン類も含む。当業者にはよく知られているように、殆どあるいは全く環歪みのないシクロヘキセン類のようなオレフィン類は、ポリマー対モノマーの熱力学的優先性がないため、重合することができない。本発明のROMPは、たとえば、触媒量の触媒成分を好適な溶剤に溶解し、次いで、任意で同じまたは別の溶剤に溶解した1つ以上の前記歪み環状オレフィン類を、触媒溶液に、好ましくは撹拌下に添加することによって、不活性雰囲気下で行ってもよい。ROMP系は典型的なリビング重合プロセスであるので、ジブロックおよびトリブロック共重合体を生成するために、後続の工程で、2以上の異なる歪み環状オレフィン類を重合し、得られた物質の特性を調整することを可能にしてもよい。ただし、連鎖開始および連鎖成長は好適に選択される。ROMPを行うのに使用してもよい溶剤としては、プロトン性溶剤、極性非プロトン性溶剤、および非極性溶剤等の有機溶剤の全ての種類、さらに炭素ジオキシド(超臨界条件下でROMPを行いながら)のような超臨界溶剤、および水性溶剤
が挙げられ、これらは使用される重合条件下で、歪み環状オレフィンおよび触媒成分に関して不活性である。好適な有機溶剤のさらに詳しい例示として、エーテル類(たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルまたはジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルまたはジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルまたはトリエチレングリコールジメチルエーテル)、ハロゲン化炭化水素(たとえば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンまたは1,1,2,2−テトラクロロエタン)、カルボン酸エステル類およびラクトン類(たとえば、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、安息香酸エチル、2−メトキシ酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンまたはピバロラクトン)、カルボン酸アミド類およびラクタム類(たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチルウレア、ヘキサメチル−リン酸トリアミド、γ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、N−アセチルピロリドンまたはN−メチルカプロラクタム)、スルホキシド類(たとえば、ジメチルスルホキシド)、スルホン類(たとえば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、トリメチレンスルホンまたはテトラメチレンスルホン)、脂肪族および芳香族炭化水素(たとえば、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、またはキシレン)、およびニトリル類(たとえば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルまたはフェニルアセトニトリル)が挙げられる。
水または水性混合物が溶剤として選択される場合、カチオン性金属錯体種を触媒成分として使用するのが好ましく、このカチオン性種は前記アニオンAと結合している。
ROMPによって形成されるポリマーの溶解性は、歪み環状オレフィンの選択、溶剤の選択、得られたポリマーの分子量および濃度に依存する。歪み環状オレフィンがポリ不飽和(たとえば、ジシクロペンタジエンまたはノルボルナジエン)の場合、得られたポリマーは、しばしば、使用された溶剤がどのようなものであれ、不溶性である。重合温度は、約0℃〜約120℃、好ましくは20℃〜85℃の範囲であり、また、歪み環状オレフィンおよび溶剤に依存する。重合の継続時間は、少なくとも約1分、好ましくは少なくとも5分、さらに好ましくは少なくとも30分であり;重合継続時間は、最大で約24時間(費用が経済的であればそれより長い時間行ってもよい)好ましくは最大で約600分、60分未満でもよい。歪み環状オレフィンの本発明の触媒成分に対するモル比は、臨界的ではなく、重合すべきオレフィンにより、少なくとも約100、好ましくは少なくとも250、さらに好ましくは少なくとも約500である。前記モル比は、通常、最大で約1,000,000、好ましくは最大で300,000、さらに好ましくは最大で50,000である。形成されたポリマーが反応器または型の中で固化する前に、任意に、ポリマーの所望の分子量が達成した時(反応器温度および/または反応混合物粘度をモニタリングすることによって調整してもよい)、必要であれば、酸化阻害剤および/または停止剤または連鎖移動剤を反応混合物に添加してもよい。使用する停止剤または連鎖移動剤の選択は、前記停止剤が触媒成分と反応し、支配的な条件(たとえば温度)下で不活性、すなわち重合反応をさらに進めることができない他の化学種を生成するという条件で、本発明では臨界的意義はない。たとえば、過剰なモル数(触媒成分に関して)のカルボニル化合物を反応混合物に対して添加すると、最初のカルボニル官能基でキャップされた金属オキソおよびオレフィン(またはポリマー)を生成することができ、開裂ポリマーを、メタノールを使用した析出によって触媒から分離することができる。触媒からポリマーを開裂する他の方法は、ビニルアルキルエーテルの添加によってもよい。あるいは、数当量のジエンのような連鎖移動剤との反応がポリマー鎖を開裂する方法としてあり、この方法は、触媒成分を不活性化せず、さらなるモノマーの重合を可能にするが、分子量分布を広げる危険性がある。本発明の金属錯体は種々の官能基の存在下で安定なので、多種多様なプロセス条
件の下で多種多様なオレフィン類を触媒するために使用されてもよい。特に、メタセシス反応によって変換されるオレフィン性化合物は、1つ以上の、好ましくは最大で2個の、たとえば、ヒドロキシル、チオール(メルカプト)、ケトン、アルデヒド、エステル(カルボキシレート)、チオエステル、シアノ、シアネート、エポキシ、シリル、シリルオキシ、シラニル、シロキサザニル、ボロネート、ボリル、スタニル、ジスルフィド、カルボネート、イミン、カルボキシル、アミン、アミド、カルボキシル、イソシアネート、チオイソシアネート、カルボジイミド、エーテル(好ましくはC1−20アルコキシまたはアリールオキシ)、チオエーテル(好ましくはC1−20チオアルコキシまたはチオアリールオキシ)、ニトロ、ニトロソ、ハロゲン(好ましくはクロロ)、アンモニウム、ホスホネート、ホスホリル、ホスフィノ、ホスファニル、C1−20アルキルスルファニル、アリールスルファニル、C1−20アルキルスルホニル、アリールスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、スルホンアミドおよびスルホネート(好ましくは、トルエンスルホネート、メタンスルホネートまたはトリフルオロメタンスルホネート)からなる群から選択される官能性原子または官能基を含んでもよい。前記オレフィン官能性原子または官能基は、オレフィンの置換基の一部であっても、オレフィンの炭素鎖の一部であってもよい。
また、本発明の金属錯体は、比較的低温(約20℃〜80℃)で、溶剤の存在下または非存在下での、たとえば、ジアリル性化合物(ジアリルエーテル、ジアリルチオエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルアミン、ジアリルアミノホスホネート類、ジアリグリシンエステル類のようなジアリルアミノ化合物)、1,7−オクタジエン、置換1,6−ヘプタジエン類などの非環状ジエン類の閉環メタセシスの有用な触媒成分でもある。
また、本発明の金属錯体は、テレケリックポリマーすなわち、1つ以上の反応性末端基を持つ、鎖延長プロセス、ブロック共重合体合成、反応射出成形、およびポリマーネットワーク形成に有用な物質であるマクロ分子の生成用の触媒成分として使用してもよい。その例として、1,5−シクロオクタジエン、1,4−ジアセトキシシス−2−ブテンおよび酢酸ビニルから得てもよい、ヒドロキシル−テレケリックポリブタジエンがある。殆どの用途で、高官能化ポリマー、すなわち、1つの鎖について少なくとも2個の官能基を持つポリマーを必要とする。開環メタセシス重合を介するテレケリックポリマー合成の反応スキームは、当業者によく知られ、そのようなスキームでは、生成されたテレケリックポリマーの分子量を調整するため、非環状オレフィン類が連鎖移動剤として作用する。α,ω−二官能性オレフィン類が連鎖移動剤として使用されると、事実、二官能性テレケリックポリマーを合成することができる。
本発明の第六態様によれば、オレフィンカップリングは、第一オレフィン性化合物を、第二オレフィンまたは官能化オレフィンの存在下、そのような金属錯体と接触させる工程を含む交差メタセシスによって行われてもよい。前記第一オレフィン性化合物は、ジオレフィンまたは少なくとも3個の原子の環サイズを持つ環状モノオレフィンでもよく、前記メタセシスクロスカップリングは、好ましくは、前記環状モノオレフィンを直鎖オレフィンオリゴマーまたはポリマーへ変換するのに適した条件、または前記ジオレフィンを環状モノ−オレフィンと脂肪族α−オレフィンとの混合物へ変換するのに適した条件下で行われる。
オレフィンメタセシス反応用出発基質の選択および生成される所望の有機分子に依存して、オレフィンメタセシス反応で、生物学的に活性な化合物を含む非常に広い範囲の最終生成物を得ることができる。たとえば、この反応は、そのうちの1種はα−オレフィンである、2種の非類似のオレフィン類であって、(i)5〜12個の炭素原子を含むシクロジエン類と(ii)式:
XHC=CH−(CH2)r−(CH=CH)a−(CHX')c−(CH2)t−X” (IV)
で表されるオレフィン類とから選択されるオレフィン類の混合物を、式:
H(CH2)z−(CH=CH)a−(CH2)m−(CH=CH)b−(CH2)pX” (V)で表される、生物学的に活性な不飽和化合物に変換するのものでもよい。
(式中、aは、0〜2の整数であり;bは、1および2から選択され;cは0および1から選択され;mおよびpは、式(V)中の炭化水素鎖が10〜18個の炭素原子を含むようなものであり;rおよびtは、式(IV)の2つの非類似のオレフィン類の炭化水素中の炭素原子の合計が12〜40になるようなものであり;zは1〜10の整数であり、X、X’およびX”は、水素、ハロゲン、メチル、アセチル、−CHOおよびOR12(式中、R12は、水素およびテトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル、tert−ブチル、トリチル、エトキシエチルおよびSiR131415(式中、R13、R14、R15は、それぞれ独立して、C1−7アルキル基およびアリール基から選択される)からなる群から選択されるアルコール保護基から選択される)からそれぞれ独立して、選択される原子または基である。)
前記式(V)で表される、生物学的に活性な不飽和化合物は、フェロモンまたはフェロモン前駆体、殺虫剤または殺虫剤前駆体、医薬的に活性な化合物または医薬中間体、香料または香料前駆体でもよい。前記生物学的に活性な不飽和化合物のいくつかの例として、1−クロロ−5−デセン、8,10−ドデカジエノール、3,8,10−ドデカトリエノール、酢酸5−デセニル、酢酸11−テトラデセニル、1,5,9−テトラデカ−トリエンおよび酢酸7,11−ヘキサデカジエニルが挙げられる。後者は、商品名ゴシップルアのもとに市販されているフェロモンであって、特に標的とした害虫の交配と生殖周期を効果的に崩壊することによって害虫駆除に有用であり、本発明により、シクロオクタジエンおよび1−ヘキセンから得られうる、1,5,9−テトラデカトリエンから製造できる。
本発明のオレフィンメタセシス反応を行う時、殆どの場合、前記反応は非常に速く進むが、数種の特定のオレフィン類に関しては、反応速度および/または収率を上げるために、オレフィンとルイス酸助触媒(b)および/または触媒活性化剤(b)とさらに接触させることが有利かもしれない。ルイス酸助触媒(b)は、ボロントリハライド類;トリアルキルボロン;トリアリールボロン;有機アルミニウム化合物;マグネシウムハライド類;アルミニウムハライド類;チタニウムまたはバナジウムハライド類、好ましくは、チタニウムテトラクロライド;アンチモンおよびビスマスペンタハライド類からなる群から選択されてもよい。たとえば、ルイス酸助触媒(b)は、トリ−n−アルキルアルミニウム;ジアルキル−アルミニウム水素化物、トリアルケニルアルミニウム、アルキルアルミニウムアルコキシド類、ジアルキルアルミニウムアルコキシド類、ジアルキルアルミニウムアリールオキシドおよびジアルキルアルミニウムハライド類からなる群から選択される有機アルミニウム化合物でもよい。触媒活性化剤(b)は、たとえば、エチルジアゾアセテートおよびトリメチルシリルジアゾメタン(これらに限定されない)のようなジアゾ化合物でもよい。
反対に、本発明の触媒成分を使用する開環メタセシス重合(ROMP)反応は、ジシクロペンタジエンまたはそのオリゴマー(すなわち、約1〜20個のシクロペンタジエン単位で形成されるディールス・アルダー付加物)のようなオレフィン性モノマー、または歪み単環式または多環式縮合オレフィン類(たとえば、米国特許第6,235,856号に記載される、その内容は本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)との混合物に関しては、速く進むため、妥当な測定の不存在下では重合制御が問題となる可能性がある。この種の問題は、液体オレフィンモノマーと触媒とを混合し、鋳型に流し込み、鋳造されあるいは注入される、および重合(すなわち、製品の「硬化」)が完了した時、たとえば、反応射出成形(“RIM”)技術において要求されるかもしれない、いかなる後硬化プロセスの前に成型された部分を型からとりはずす、熱硬化ポリマーの成型中に起こりやすい。反応速度を調整する能力、すなわち、反応混合物のポットライフは、この技術を使用する成型のより多くの部分でより重要になることはよく知られている。本発明の触
媒成分を使用することにより、オレフィンメタセシス重合反応のポットライフを延ばしおよび/または速度を制御することが、たとえば、触媒/オレフィン比の増加および/または重合抑制剤の反応混合物への添加のような様々な方法で達成できるかもしれない。さらに、これは、改良された実施形態によって達成することができる。この実施形態は、
(a)本発明のオレフィンメタセシス触媒成分(任意で担持されている)を、オレフィンに、反応器内で、前記オレフィンメタセシス触媒成分が実質的に非反応性(不活性な)である第一温度で接触させる第一工程と、
(b)重合が完了するまで、反応器温度(たとえば、前記反応器の中身の加熱)を、前記触媒成分が活性な、前記第一温度より高い第二温度まで上げる第二工程を含む。
この改良された実施形態のさらに特定された変形においては、熱活性化は、たとえば、工程(a)および(b)の順番を繰り返すことによって、連続的というより爆発的に起こる。
前記制御された重合方法においては、第一工程での触媒成分に非反応性は、第一温度ばかりでなく、前記RIM技術で使用されるオレフィン(類)の性質およびオレフィン/触媒成分比にも依存すると理解すべきである。第一温度は約20℃が好ましいが、特定のオレフィン類またはオレフィン/触媒成分比に関しては、反応混合物を室温未満、たとえば約0℃以下に冷却することが好適であることもある。第二温度は、40℃より上が好ましく、90℃より上であってもよい。
本発明の触媒成分を使用するROMPは、よく制御された特徴、すなわち平均分子量および分子量分布(多分散性)を持ったポリノルボルネン類およびポリジシクロペンタジエン類のような、前記歪み環状オレフィン類の直鎖または架橋ポリマーを簡単に達成する。特に、約200,000〜2,000,000の範囲の平均分子量、および約1.1〜2.2の分子量分布(多分散性)を持つノルボルネンポリマーが生成する。特に、RIM技術におけるように、型内で重合する場合、この重合は、1種以上の成形助剤、たとえば、静電防止剤、酸化防止剤、セラミック、光安定剤、可塑剤、染料、顔料、充填剤、強化繊維、潤滑剤、接着促進剤、粘度強化剤、および取り出し剤(この助剤は全て業界でよく知られている)の存在下で起こってもよい。
また、本発明の第六態様に関連する特定の反応に依存し、特に、前記反応が歪み環状オレフィン類のROMPである場合、反応は、たとえば、反応系に十分なエネルギーを供給することができる可視光または紫外線源を使用して、可視光または紫外線照射下で有利に行われる。
本発明の第六態様の他の実施形態では、触媒成分は、ポリハロゲン化アルカン:CXCl(式中、Xは、水素、C1−7アルキル、フェニルまたはハロゲンである)のオレフィンまたはジオレフィンへの原子移動ラジカル付加(ATRA)反応に使用される。この反応は、好ましくは、有機溶剤の存在下、ポリハロゲン化アルカンの過剰モルで、約30°〜100℃の間の温度領域で行われる。ポリハロゲン化アルケン類の好適な例として、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロフェニルメタンおよび四臭化炭素が挙げられる。このラジカル付加反応用の好適なオレフィン類として、内部および環状オレフィン類、および式:RR’C=CH(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、水素、C1−7アルキル、フェニルおよびカルボン酸またはエステル、たとえば、スチレンまたはビニルトルエンのようなビニル芳香族モノマー、C1−7アルキルアクリレートおよびメタクリレート、アクリロニトリルのようなα,β−エチレン性不飽和酸エステルなど、から選択される)で表される末端オレフィン類が挙げられる。
本発明の第六態様の他の実施形態では、触媒成分が、1種以上のラジカル(共)重合性
モノマーの原子またはグループ移動ラジカル重合(ATRP)に使用される。この実施形態において意図されるリビング/制御されたラジカル重合の成功には、低定常濃度(約10−8mole/l〜10−6mole/lの範囲内)で存在する成長ラジカルと、より高い濃度(典型的には約10−4mole/l〜1mole/lの範囲内)で存在する休止状態の鎖との間の素早い交換を達成することが重要である。したがって、本発明の触媒成分およびラジカル(共)重合性モノマーのそれぞれの量がこれらの濃度範囲になるように合わせることが望ましいかもしれない。成長ラジカルの濃度が約10−6mole/lを超えると、反応中に存在する活性な化学種が多すぎ、副反応(たとえば、ラジカル−ラジカル消滅、触媒系以外の化学種からのラジカル引き抜きなど)の速度が増え、望ましくない。成長ラジカルの濃度が約10−8mole未満の場合、重合速度は遅く、望ましくない。同じように、休止状態の鎖の濃度が約10−4mole/l未満の場合は、生成するポリマーの分子量が劇的に増加し、多分散性の制御ができなくなる可能性がある。一方、休止状態の鎖の濃度が1mole/lを超えると、反応生成物の分子量が、小さくなりすぎやすく、約10個以下のモノマー単位しか持たないオリゴマーの特性となる。バルクで、濃度が約10−2mole/lの休止状態の鎖は、分子量が約100,000g/moleのポリマーを提供する。
本発明の種々の触媒成分は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、イミド類(たとえば、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミド)、スチレン、ジエン類またはこれらの混合物を始めとする任意のラジカル重合性エチレン性またはアセチレン性不飽和化合物のラジカル重合に適している。前記化合物を、単一の工程または複数工程に置くことによって、種々のモノマー組成物の、ブロック、ランダム、グラディエント、星型、グラフト、櫛形、多分岐および樹枝状(共)ポリマーを含む種々の構造を持ち、従って、耐熱性、耐スクラッチ性、耐溶剤等の特性が調整された、制御された共重合体を提供することができる。
さらに詳しくは、ATRPに適したモノマーは、式:R3132C=CR3334で表されるものを含む。
(式中、
−R31およびR32は、独立して、
水素、ハロゲン、CN、CF、C1−20アルキル(好ましくはC1−6アルキル)、α,β−不飽和C2−20アルキニル(好ましくはアセチレニル)、任意で、ハロゲン、C3−8シクロアルキル、1〜5個の置換基を任意で有するフェニルで置換(好ましくはα―位)されるα,β−不飽和C2−20アルケニル(好ましくはビニル)からなる群から選択され、
−R33およびR34は独立して、水素、ハロゲン(好ましくはフッ素または塩素)、C1−6アルキルよびCOOR35(式中R35は、水素、アルカリ金属、またはC1−6アルキルから選択される)からなる群から選択され;
−R31、R32、R33およびR34のうち少なくとも2個は、水素またはハロゲンである。
したがって、本発明の第六態様のこの実施形態におけるATRPに適した本発明のビニル複素環モノマーとして、2−ビニルピリジン、6−ビニルピリジン、2−ビニルピロール、5−ビニルピロール、2−ビニルオキサゾール、5−ビニルオキサゾ−ル、2−ビニルチアゾール、5−ビニルチアゾール、2−ビニルイミダゾール、5−ビニルイミダゾール、3−ビニルピラゾール、5−ビニルピラゾール、3−ビニルピリダジン、6−ビニルピリダジン、3−ビニルイソキサゾ−ル、3−ビニルイソチアゾール、2−ビニルピリミジン、4−ビニルピリミジン、6−ビニルピリミジンおよび任意のビニルピラジンが挙げられるがこれらに限定されない。最も好ましいものは、2−ビニルピリジンである。他の
好ましいモノマーとして以下のものがある。
−Cl−20アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、
−アクリロニトリル、
−C1−20アルコールのシアノアクリルエステル、
−C1−7アルコールのジデヒドロマロン酸ジエステル、
−ビニルケトン類、および
−任意で、ビニル部分(α−炭素原子)にC1−7アルキル基を有しおよび/またはフェニル環に1〜5個の置換基を有するスチレン、前記置換基は、C1−7アルキル、C1−7アルケニル(好ましくはビニルまたはアリル)、C1−7アルキニル(好ましくはアセチレニル)、C1−7アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ、C1−7アルコキシカルボニル、C1−7アシル基、シアノおよびフェニルで保護されたヒドロキシからなる群から選択される。
ATRP用の最も好ましいモノマーは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、マレイミドおよびスチレンである。この実施形態で、ATRP触媒系は、金属成分と開始剤との間のレドックス反応における成長ラジカルの可逆的生成に基づくので、本発明の触媒成分は、ラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤1種以上と組み合わせて使用するのがさらに好ましい。好適な開始剤として、一般式:R353637CXで表される化合物からなる群から選択されてもよい。
(式中、
−Xは、ハロゲン、OR38(式中、R38は、C1−20アルキル、ポリハロC1−20アルキル、C2−20アルキニル(好ましくはアセチレニル)、C2−20アルケニル(好ましくはビニルまたはアリル)、任意で、ハロゲンおよびC1−7アルキルからなる群から選択される置換基1〜5個で置換されているフェニル、およびフェニル−置換C1−7アルキルからなる群から選択される)、SR39、OC(=O)R39、OP(=O)R39、OP(=O)(OR39、OP(=O)OR39、O−−N(R39およびS−−C(=S)N(R39(式中、R39は、アリールまたはC1−20アルキルであって、N(R39)基が前記Xに存在する場合、2個のR39基が一緒に結合して5、6または7員環複素環(前記定義に従う)を形成してもよい)からなる群から選択され、
−R35、R36およびR37は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1−20アルキル(好ましくはC1−7アルキル)、C3−10シクロアルキル、C(=O)R40(式中、R40は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシからなる群から選択される)、C(=O)NR4142(式中、R41およびR42は、独立して、水素およびC1−20アルキルからなる群から選択され、またはR41とR42とが一緒に結合して5、6、または7員環複素環(前記定義に従う)を形成してもよい)、COCl、OH、CN、C2−20アルケニル(好ましくはビニル)、C2−20アルキニル、オキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびアリール−置換C2−20アルケニルからなる群から選択される。
後者の開始剤においてXは、より速い反応速度とより低いポリマー多分散性をもたらす臭素が好ましい。
アルキル、シクロアルキルまたはアルキル−置換アリール基がR35、R36およびR37の1つとして選択される場合、アルキル基はさらに前記基X、特にハロゲン原子で置換されてもよい。したがって、この開始剤は、事実上任意のタイプまたは形状の分岐状、櫛形、または星型(コ)ポリマーの出発モノマーとして働くことが可能である。このような開始剤の一例として、2,2−ビス(ハロメチル)−1,3−ジハロプロパン(たと
えば、2,2−ビス(クロロメチル)−1,3−ジクロロプロパンまたは2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−ジブロモプロパン)が挙げられ、好ましい例として、R35、R36およびR37の1つが、1〜5個のC1−7アルキル置換基(各置換基は独立してさらにたとえば、α,α’−ジブロモキシレン、ヘキサキス(α−クロロ−またはα−ブロモメチル)ベンゼンなどの基Xで置換されてもよい)で置換されているフェニルである。
好ましい開始剤として、1−フェニルエチルクロライドおよび1−フェニルエチルブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、2−クロロプロピオニトリルおよび2−ハロ−C1−7飽和モノカルボン酸(2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロイソ酪酸、2−ブロモイソ酪酸など)のCl−7アルキルエステルが挙げられる。好適な開始剤の他の例として、ジメチル2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタレートがある。
開始剤および休止状態のポリマー鎖とともにレドックスサイクルに参加できるが、ポリマー鎖と炭素−金属直接結合を形成しない、任意の遷移金属錯体、たとえば、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルまたはコバルトの錯体が、本発明のこの実施形態における使用に好適である。開始剤および本発明の遷移金属錯体の量および相対モル比は、ATRPを行うのに通常有効な量および比である。開始剤に関する遷移金属錯体のモル比は、0.0001:1〜10:1であり、好ましくは0.1:1〜5:1、さらに好ましくは0.3:1〜2:1、最も好ましくは0.9:1〜1.1:1である。
本発明によるATRPは、溶剤の非存在下、すなわち、バルク状で行ってもよい。しかし、溶剤を使用する場合、好適な溶剤として、エーテル類、環状エーテル類、アルカン類、シクロアルカン類、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドおよびこれらの混合物、および超臨界溶剤(たとえばCO)が挙げられる。また、ATRPは公知の懸濁、乳化、または沈殿法に従って行ってもよい。好適なエーテル類として、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、グライム(ジメトキシエタン)ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)などが挙げられる。好適な環状エーテル類として、テトラヒドロフランおよびジオキサンが挙げられる。好適なアルカン類として、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、およびドデカンが挙げられる。好適な芳香族炭化水素として、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンおよびクメンが挙げられる。好適なハロゲン化炭化水素として、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンおよび1〜6個のフッ素および/または塩素原子で置換されているベンゼンが挙げられるが、選択されたハロゲン化炭化水素が反応条件下で開始剤として作用しないことを確かめるべきである。
また、ATRPは、密閉容器またはオートクレーブ中、気相(たとえば、ガス状モノマーを触媒系床に通すことによって)で行ってもよい。(共)重合は、約0℃〜160℃、好ましくは約60℃〜120℃の温度で行ってもよい。通常、平均反応時間は、約30分〜48時間であり、さらに好ましくは1〜24時間である。(共)重合は、約0.1〜100気圧、好ましくは1〜10気圧の圧力で行ってもよい。
他の実施形態によれば、ATRPは、本発明の金属錯体を、界面活性剤と組み合わせて使用して、(コ)ポリマー乳化物または懸濁物を形成して、モノマーを懸濁媒体中に懸濁させた乳化または懸濁状態で行ってもよい。懸濁媒体として、通常、無機液体、好ましくは水である。水または水性混合物が懸濁媒体として、選択される場合、カチオン性金属錯
体化学種が触媒成分として使用されるのが好ましく、前記カチオン性化学種は、先に記載したように、アニオンAと結合する。本発明のこの実施形態において、有機相の懸濁媒体に対する重量比は、通常、1:100と100:1の間、好ましくは1:10と10:1の間である。所望であれば、懸濁媒体は緩衝処理されてもよい。界面活性剤は、乳化物の安定性を調整するために、すなわち安定な乳化物を形成するように選択されるのが好ましい。
不均質媒体(モノマー/ポリマーが懸濁媒体すなわち、水またはCO中で不溶性または僅かしか溶解しない)中で重合を行うためには、金属触媒成分は、モノマー/ポリマー中に少なくとも部分的に溶解すべきである。従って、触媒がこの要求に合うように配位子が正しく選択された時にのみ(たとえば、重合の標的である疎水性モノマーの触媒溶解性を上げるための、アルキル長鎖を含む配位子)、この実施形態の水系で成功的でかつ制御されたATRP重合が達成される。本発明の触媒活性金属錯体における金属に配位する配位子の上記記載から、当業者であれば好適な選択をすることができる。
本実施形態の安定な乳化物の生成における重要な要素は、初期モノマー懸濁物/乳化物および成長するポリマー粒子を安定化するおよび望ましくない粒子の凝固/凝集を防ぐための界面活性剤の使用である。しかし、乳化物中でATRPを行うために、触媒成分または休止状態の鎖末端を干渉しない界面活性剤を選択するよう注意すべきである。この目的に好適な界面活性剤として、非イオン性、アニオン性およびカチオン性界面活性剤が挙げられ、緩衝化されていない溶液中ではカチオン性および非イオン性界面活性剤が好ましい。特に好ましい非イオン性界面活性剤として、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルおよびポリオキシレンソルビタンモノアルキルが挙げられる。好ましいカチオン性界面活性剤は、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイドである。使用する界面活性剤に関係なく、効率的な撹拌が良好な分散物またはラテックスを得るのに好ましい。
界面活性剤は、通常、重合反応器に導入した全成分、すなわち、懸濁媒体、モノマー、界面活性剤および触媒系の総重量に対して、約0.01重量%〜50重量%の濃度で存在する。
開始剤に関して、懸濁物媒体における高い溶解性は、貧水溶性エチル2−ブロモイソブチレートを使用して乳化物重合が開始されることによって示されるように、前提条件ではない。開始剤および他の反応成分の添加はいかなる順序であってもよいが、開始剤を前もって乳化された反応混合物に添加する場合は、通常、安定なラテックスが得られる。好適な開始剤は、前記ATRPプロセスの溶剤の実施形態に記載されている。また、開始剤は、ラジカル移動可能な原子またはグループを含む高分子を使用できる。そのような高分子開始剤の特別のタイプとして、水溶性または両親媒性でもよく、反応が開始した後、ポリマー粒子に導入してもよく、高分子開始剤の親水性部分により成長する粒子を安定化してもよい。
本発明のATRPプロセスの(共)重合工程が完了した後、形成したポリマーを公知の手順、たとえば、好適な溶剤中での沈殿、沈殿ポリマーのろ過(これらに限定されない)などの公知の手順で単離し、次いでろ過したポリマーを洗浄し、乾燥する。沈殿は通常、好適なアルカンまたはシクロアルカン溶剤、たとえば、ペンタンヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンまたはミネラルスピリットを使用して、あるいはアルコール類、たとえばメタノール、エタノールまたはイソプロパノール、または好適な溶剤の任意の混合物を使用して行われる。沈殿した(コ)ポリマーは、たとえば、ブッフナー漏斗および吸引器を使用して、重力によってろ過したり、吸引ろ過したりできる。次いで、もし望まれるなら、ポリマーを沈殿させるのに使用した溶剤で洗浄することもできる。沈殿、ろ過、洗浄工程
は、望むなら、繰り返してもよい。一度単離されれば、(コ)ポリマーは、真空で(コ)ポリマー中に空気を通すことによって乾燥できる。乾燥された(コ)ポリマーは次いで、サイズ排除クロマトグラフまたはNMRスペクトル観測によって、分析および/または同定される。
本発明の触媒ATRPプロセスによって生成した(コ)ポリマーは、一般的に、成形物質(たとえば、ポリスチレン)として、およびバリアまたは表面材(たとえば、ポリメチルメタクリレート)として有用である。しかし、それらは普通、従来のラジカル重合により生成するポリマーより均一な特性(特に分子量分布)を持つため、特定化された用途に最も適する。たとえば、ポリスチレン(PSt)およびポリアクリレート(PA)のブロック共重合体、たとえばPSt−PA−PStトリブロック共重合体は、有用な熱可塑性エラストマーである。ポリメチルメタクリレート/アクリレートトリブロック共重合体(たとえばPMMA−PA−PMMA)は、有用な完全アクリル系熱可塑性エラストマーである。スチレン、(メタ)アクリレートおよび/またはアクリロニトリルのホモおよび共重合体は、有用なプラスチック、エラストマーおよび接着剤である。スチレンおよび(メタ)アクリレートまたはアクリロニトリルのブロックまたはランダム共重合体は、高い耐溶剤性を持つ有用な熱可塑性エラストマーである。さらに、本発明によって生成する、ブロックが極性モノマーと非極性モノマーとの間で交互に並ぶブロック共重合体は、高度に均一なポリマーブレンドを製造するために有用な両親媒性界面活性剤または分散剤である。星型(コ)ポリマー、たとえば、スチレン−ブタジエン星型ブロック共重合体は、高い耐衝撃性を持つので有用である。
本発明の触媒ATRPプロセスによって生成される(コ)ポリマーの数平均分子量は、普通、約5,000〜1,000,000、好ましくは約10,000〜250,000、さらに好ましくは約25,000〜150,000である。
ATRPはリビング重合プロセスであるので、実際には任意に開始し、停止することができる。さらに、ポリマー生成物は、更なる重合を開始するのに必要な官能基Xを保持している。したがって、特定の実施形態においては、一度、第一モノマーを初期重合工程で消費しても、次いで、第二重合工程で、成長しているポリマー鎖上に第二モノマーを添加して、第二ブロックを形成することができる。さらに、同じまたは異なるモノマーとの付加的な重合を行い、マルチブロック共重合体を生成することもできる。さらに、ATRPは、ラジカル重合でもあるので、これらのブロックは、基本的にどのような順序でも生成することができる。
本発明の触媒ATRPプロセスにより生成した(コ)ポリマーは、非常に低い多分散指数、すなわち、M/M比、数平均分子量に対する重量平均分子量の比を持ち、普通、約1.1〜2.4、好ましくは1.15〜2.0、さらに好ましくは1.2〜1.6である。リビング(コ)ポリマー鎖は、Xを含む開始剤片を末端基として、あるいは1実施形態ではポリマー鎖のモノマー単位中の置換基として、保持しているので、末端官能性または鎖中官能性(コ)ポリマーと考えられる。したがって、そのような(コ)ポリマーは、架橋、反応性モノマーとの鎖延長(たとえば、長鎖ポリアミド、ポリウレタンおよび/またはポリエステルを形成するための)、反応性射出成形などを含む更なる反応のため、他の官能基を持つ(コ)ポリマーに変換してもよい(たとえば、ハロゲンは、公知の方法によりヒドロキシまたはアミノに変換でき、ニトリルまたはカルボ酸エステルは、公知の方法により加水分解され、カルボン酸に変換できる)。
前記不均質触媒反応において、本発明の金属錯体の使用を容易にするために、さらに本発明は、担体への共有結合に好適な、そのような錯体のシリル誘導体、特にそれらの錯体のうち、多座配位性配位子が、2座配位性または3座配位性シッフ塩基、たとえば、図1
に示す一般式(IA)または(IB)で表されるものであり、または、たとえば、図2で示される一般式(IIA)または(IIB)または(IIC)、または図3に示される一般式(IIIA)または(IIIB)で表される2個のシッフ塩基を含む4座配位性配位子である錯体を提供する。そのようなシリル誘導体において、前記一般式のR’および/またはR”は、式:
−R20−(CH−D−Si−R212223 (VIII)
で表される基で、置き換えまたは置換されている。
(式中、
−R20は、C1−7アルキレン、アリーレン、ヘテロアリーレンおよびC3−10シクロアルキレンからなる群から選択されるラジカルであって、このラジカルは、任意で、それぞれ独立して、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、C2−20アルコキシカルボニル、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキニルスルフィニル、C1−20アルキルチオ、アリールオキシおよびアリールからなる群から選択されるR24置換基の1つ以上で置換されている;
−Dは、酸素、イオウ、ケイ素、アリーレン、メチレン、CHR24、C(R24、NH、NR24およびPR24からなる群から選択される二価の原子またはラジカルであり;
−R21、R22およびR23は、それぞれ独立して、水素、ハロゲンおよびR24からなる群から選択され;
−nは、1〜20であり;
ただし、R21、R22およびR23の少なくとも1つは、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、C2−20アルコキシカルボニル、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキニルスルフィニル、C1−20アルキルチオおよびアリールオキシからなる群から選択される。)
さらに前記基の範囲内でさらに好ましいものは、シリル誘導体であって、R’が、3−(トリエトキシシリル)プロピルまたは2−(トリエトキシシリル)エチル基で置き換わるまたは置換しているものである。代わりの好適は誘導体として、たとえば前記EP−A−484,755に開示される、形をもつ(shaped)オルガノシロキサン共重縮合生成物である。
他の実施形態において、本発明は、(a)先に定義したような金属錯体のシリル誘導体と、(b)1つ以上の無機オキシドまたは有機ポリマー物質を含む担体との共有結合の生成物を含む、特に前記触媒反応における用途のための、担持触媒を提供する。好ましくは、前記無機担体は、シリカ、アルミノ−シリカ、ジルコニア、天然および合成ゼオライトおよびこれらの混合物から選択され、前記有機ポリマー担体は、ポリスチレン樹脂またはその誘導体であって、芳香族環が、C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールから選択される1つ以上の基で置換されているものである。この目的のためのそのような担体(b)のさらに詳しい例は、すでに本発明の第五態様に関連して開示している。
また、本発明の第六態様の触媒成分は、エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化、または炭化水素鎖中に1つ以上のシクロプロパン構造単位を持つ化合物を生成するための、α−ジアゾケトン類またはα−ジアゾ−β−ケトエステルの分子内シクロプロパン化において、有用である。したがって、本発明のこの実施形態は、以下の天然および合成シクロプロピル含有化合物の1つ以上の製造工程において有用である。シクロプロピル含有化合物は、天然のテルペン、ステロイド、アミノ酸、脂肪酸、アルカロイド、および核酸中に見出される。たとえば、植物内で生成するクリサンテム酸誘導体(たとえばピレトリン)は、殺虫性能のある前駆体である。本発明は、また、デルタメトリンのような合成ピレトロイド殺虫剤、およびサイレニン、アリストロン、セスキカレンおよびステロイドヒル
ステンまたは抗生物質サルコマイシンの合成における中間体であるシクロプロピル誘導体の製造に適応できる。シクロプロピル含有非天然化合物もまた生物学的活性を持ち、たとえば、シプロ、強力な抗炭素菌薬、またはシクロプロパンアミノ酸(たとえば、2,3−メタノフェニルアラニン、抗パーキンソン薬、2,3−メタノ−m−チロシン、コロナチンおよびコロナム酸)がある。カビから単離したポリシクロプロパン脂肪酸誘導体、U−106305(コレステリル転移プロテイン阻害剤)およびFR−900848(ヌクレオシド類縁体)もまたそのような合成生成のための候補である。本発明によってシクロパン化され対応するシクロプロピル含有化合物になってもよい、エチレン性不飽和化合物は特に限定されないが、スチレンのような末端エチレン性不飽和を持つ化合物(エチルジアゾアセテートの存在下でエチル−2−フェニルシクロプロパンカルボキシレートに変換され得る)およびその置換誘導体(たとえば、4−クロロスチレン、α−メチルスチレンおよびビニルスチレン)、2−ビニルナフタレン、1,1−ジフェニルエチレン、1−デセン、官能基が好ましくはエチレン性不飽和結合と隣り合い、好ましくは、非環状アリル性シリルエーテル類(変換されてシクロプロピルカルビニルシリルエーテル類になり得る)のような保護されたアリル性アルコール類におけるように保護されたアルコールである、またはアクリル酸およびメタクリル酸(およびそのエステル、チオエステルおよびアミド類または無水物)におけるようなカルボキシル基である、官能性α−オレフィン類、シンナメートエステル類、アルケニルホウ素酸エステル類(たとえば、2−メチルエチニル−4,5−ビス[メトキシジフェニルメチル]−1,3,2−ジオキサボロランまたはその誘導体であって、メチル基がter−ブチルジメチルシロキシ、ter−ブチルジフェニルシロキシ、ベンジルオキシ、メトキシメトキシまたはベンゾイルオキシ(これらに限定されない)のような保護基で保護され、対応するシクロプロピルホウ素酸エステルに変換され得る)もの、2−フェニルスルホニル−1,3−ジエン類およびシクロオクテンのようなシクロオレフィン類が挙げられる(これらに限定されない)。このような反応は、好ましくは、エチルジアゾアセテート、シンナミルジアゾアセテート、ジシクロヘキシルメチルジアゾアセテート、ビニルジアゾアセテート、メンチルジアゾアセテートまたは1−ジアゾ−6−メチル−5−ヘプテン−2−オン(これらに限定されない)のようなジアゾ化合物の存在下、穏やかな温度、通常、約0℃〜80℃、好ましくは20〜60℃の範囲で、反応時間は約1〜12時間で、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、L−メントールまたは水、あるいはこれらの混合物のような比較的低い沸点を持つ溶剤中で行われる。ジアゾ化合物を、その爆発性に関連する取り扱い危険性を除くためにそのように添加するか、あるいはエチレン性不飽和化合物の存在下でアセトアンモニウム塩を硝酸ナトリウムと反応させることによってイン・サイチュで発生させてもよい。水または水性混合物を反応溶剤として選択する場合、カチオン性金属錯体種を触媒成分として使用することが好ましく、このカチオン性種は、先に記載したように、アニオンAと結合する。エチレン性不飽和化合物の触媒成分に対するモル比は、200〜2,000の範囲が好ましく、250〜1,500がさらに好ましい。エチレン性不飽和化合物のジアゾ化合物に関するモル比は、この種の反応に関して通常の範囲、すなわち、前者の化合物を過剰モル使用する。エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化は、任意で、助触媒として、トリエチルアミンまたはトリ−n−ブチルアミンのような第三脂肪族アミン、またはピリジンまたはルチジンのような複素環アミン類の存在下に行われてもよい。また、α−ジアゾケトン類またはα−ジアゾ−β−ケトエステル類のようなα−ジアゾカルボニル化合物の分子内シクロプロパン化も、同様の反応条件(温度、反応時間、基質/触媒比)に従って行われてもよく、シクロプロピル基が縮合して、たとえば、ヒルステンまたはサルコマイシンの中間体の合成におけるようなシクロペンタノン、またはアセチレンα−ジアゾケトン類から出発する時のシクロペンチル基のような、他のシクロ脂肪族基を形成した二環式分子となってもよい。しかし、パドワのMolecules(2001)6:1−12の教示によれば、本発明の触媒成分の存在下でのアセチレン性α−ジアゾケトンの環化は、シクロペンタノンが縮合してフラン、アルケニル−置換インデノン、シクロプロピル−置換インデノン、シクロペンタズレノン、またはシ
クロペンタジエンが縮合してインデノン(これらに限定されない)のような他の多環式環構造の形成をもたらし得ることに注意すべきである。
また、本発明の第六態様の触媒成分は、炭化水素鎖中に1つ以上のシクロプロペン構造単位を持つ化合物の製造のためのアルキン類のシクロプロペン化において有用である。これは特に、1−ヘキシン、3,3−ジメチル−1−ブチン、フェニルアセチレン、シクロヘキシルアセチレン、メトキシメチルアセチレンおよびアセトキシメチル−アセチレン(これらに限定されない)のようなC2−7アルキニル基を持つアルキン類に適用され、エチルジアゾアセテート、シンナミルジアゾアセテート、ジシクロヘキシルメチルジアゾアセテート、ビニルジアゾアセテート、1−ジアゾ−6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、またはメンチルジアゾアセテート(これらに限定されない)のようなアゾ化合物の存在下、高収率でエチルシクロプロペン−3−カルボキシレート類に転換される。また、アセチレン性α−ジアゾケトン類の分子内シクロプロペン化においても有用であり、たとえば、シクロプロペニル置換インデノンのようなシクロプロペニル含有化合物を生成する。
また、本発明の第六態様の触媒成分は、2−アミノベンジルアルコールとケトン類との酸化環化によるキノリン合成(すなわち、所謂Friedlaender反応)においても有用である。この反応は、塩基性条件下(たとえば、アルカリ水酸化物の存在下)、前記ケトンの過剰モルで、穏やかな温度、通常、約20〜約100℃の範囲で、任意で、溶剤の存在下で行われるのが好ましい。好ましくは、2−アミノベンジルアルコールの触媒成分に対する比は、100〜2,000の範囲であり、好ましくは200〜約1,000である。数多くのアルキルアリールケトン類、アルキルヘテロアリールケトン類、ジアルキルケトン類およびベンゾ−縮合環状ケトン類が、本発明のこのプロセスにおいて使用され、オキソ基に結合する第二炭化水素がメチル、ペンチル、イソプロピル、フェネチル、フェニル、トルイル、アニシル、ニトロフェニル、ヒドロキシフェニル、フルオロフェニル、トリフルオロメチルフェニル、シアノフェニル、ナフチル、フラニル、チオフェニル、ピリジルなどでもよい、C1−7アルキルケトン類が含まれる。本発明のこの実施形態に従って環化してキノリンを生成してもよい、例示的なケトン類として、アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、シクロヘキサノン、4−フェニルシクロヘキサノン、およびプロピオフェノンが挙げられるがこれらに限定されない。この目的のために、他の好適なケトン類は、チョーらによるChem.Commun.(2001)2576−2577に記載がある。驚くべきことに、シクロヘキサノンのようなあるケトン類は、同じ反応条件でも、先の刊行物において使用されたルテニウム触媒により達成されたものより非常に高い収率で、対応するキノリンに変換される。
また、本発明の第六態様の触媒成分は、エチレン性不飽和化合物、すなわち、対応するエポキシド類(すなわちオキサシクロプロピル含有化合物)を製造するためのアルケン類、の分子内エポキシ化(不斉エポキシ化を含む)において有用である。このようなアルケン類として、たとえば、スチレンおよびその類縁体(たとえば、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−トリフルオロメチルスチレンなど)、またはコレステロールアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の不斉エポキシ化において有用な例示的なオレフィン性反応原料には、末端または内部不飽和でありえ、直鎖、分岐状鎖、または環状構造のものが含まれる。このようなオレフィン性反応原料は、3〜約40個の炭素原子を含み、1個以上のエチレン性不飽和基を含んでもよい。さらに、そのようなオレフィン性反応原料は、実質的に、不斉エポキシ化プロセスに悪影響を与えない基または置換基、たとえば、カルボニル、カルボニルオキシ、オキシ、ヒドロキシ、オキシカルボニル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、ハロアルキルなどを含んでもよい。例示的なオレフィン性不飽和化合物としては、置換および非置換α−オレフィン類、内部オレフィン類、アルキルアルケノエート、アルケニルアルカノエート、アルケニルアルキルエーテル類、アルケノール類など、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘ
キセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−オクタデセン、2−ブテン、イソアミレン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、シクロヘキセン、2−エチルヘキセン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,5,9−ドデカトリエン、3−シクロヘキシル−1−ブテン、アリルアルコール、ヘキス−1−エン−4−オール、オクト−1−エン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、安息香酸ビニルなどのようなアリーロエート、酢酸3−ブテニル、プロピオン酸ビニル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、メチルメタクリレート、酢酸3−ブテニル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、n−プロピル−7−オクテノエート、置換および非置換クロメン、2,2−ジメチルシクロクロメン、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド、インデン、1,2−ジヒドロナフタレン、2−ビニルナフタレン、ノルボルネン、cis−スチルベン、trans−スチルベン、p−イソブチルスチレン、2−ビニル−6−メトキシナフチレン、3−エテニルフェニルフェニルケトン、4−エチルフェニル−2−チエニルケトン、4−エテニル−2−フルオロ−ビフェニル、4−(1m,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−イソインドール−2−イル)スチレン、2−エチル−5−ベンゾイルチオフェン、3−エテニル−フェニルフェニルエーテル、イソブチル−4−プロペニルベンゼン、フェニルビニルエーテル、2−シクロヘネニル−1,1−ジオキソラン、ビニルクロライド、ベンゾピランおよびベンゾフラン型化合物、および米国特許第4,329,507号(本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する)に記載されるような置換アリールエチレンが挙げられる。本発明のエポキシ化は、cis−スチルベンオキシド(ミクロソームおよび細胞性エポキシド加水分解酵素用の基質)およびイソプロスタンのような生物学的に活性な分子の合成にも適用されてもよい。
このようなエポキシ化反応は、好ましくは、少なくとも化学量論的量(エチレン性不飽和化合物に関して)の酸素原子源、または触媒系の非存在下でオレフィン類に対して比較的非反応性の酸素−移動試薬の存在下、一般的な(たとえば、温度および圧力)条件で行われる。前記酸素原子源または酸素−移動試薬は、H(過酸化水素)、NaOCl、ヨウドシルメシチレン、Nal0、NBul0、カリウムパーオキシモノサルフェート、マグネシウムモノパーオキシフタレート、2,6−ジクロロピリジンN−オキシドおよびヘキサシアノ鉄酸イオン(これらに限定されない)からなる群から選択されてもよい。この酸素原子源または酸素−移動試薬の混合物もまた使用してもよい。このようなエポキシ化反応は、好ましくは、オレフィン性不飽和化合物をエポキシ化するのに必要な条件および時間行われる。そのような条件として、以下が挙げられるがこれらに限定されない。
−反応温度は、通常、約−20℃〜約120℃、好ましくは0℃〜90℃、さらに好ましくは20〜約40℃の範囲であり、および/または
−反応圧力は、約0.1〜約70バールの範囲であり、および/または
−触媒系用の溶剤、好ましくは飽和アルコール類、アミン類、アルカン類、エーテル類、エステル類、芳香族などからなる群から選択される、比較的低い沸点の有機溶剤の存在下で反応を行い、および/または
−エチレン性不飽和化合物の触媒成分に対するモル比は、約200〜約20,000、好ましくは500〜10,000の範囲であり、および/または
−オレフィン性不飽和化合物に関して過剰モルの酸素−移動試薬。
また、本発明の第六態様の触媒成分は、炭化水素のアルコール類への酸化、たとえば(これに限定されない)、メタンのメタノールへの酸化(他のアルカン類より酸化が困難であると知られている)において、有用である。多種多様の炭化水素に関して効果的であるが、1〜15個の炭素原子を持つ直鎖および分岐鎖アルカン類、およびシクロアルカン類、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンのようなアリールアルカン類の酸化に特に効果的である。好ましい脂肪族炭化水素は、1〜10個の炭素原子を持ち、エタン、プロパ
ン、ブタン、イソブタン、ヘキサンおよびヘプタンが挙げられ;および好ましい環状炭化水素は5〜10個の炭素原子を持ち、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンおよびアダマンタンが挙げられる。この発明は、また、酸化速度を速めるための種々の置換基を含む広い範囲の炭化水素にも適用される。本発明による酸化は、反応および分子酸素による酸化条件に不活性である、水/アセトン、水/アセトニトリルおよび/または酢酸のような液相の混合溶剤系中で行われてもよい。温度は、20℃と60℃の間の範囲をとりうる。圧力は、5〜20気圧の範囲をとりうる。炭化水素が固体、液体または気体かどうかに依り、本発明の触媒成分を添加する前に、混合溶剤系に溶解させるか、あるいは空気または酸素とともに溶剤をバブリングする。所望の酸化を達成するために、溶液中の触媒成分の濃度は、通常、10−3〜10−6モルの範囲で充分である。反応時間は、好ましくは30分〜30時間の範囲、さらに好ましくは1〜5時間である。また他の実施形態に依れば、本発明の第六の態様の触媒成分は、アリル性およびベンジル性アルコール類のカルボニル化合物への酸化においても有用である。
本発明の第六態様はまた、プロキラルまたはキラル化合物が光学活性な金属−配位子錯体触媒の存在下、鏡像体的活性形態で反応して、光学活性化合物を生成する不斉合成のような、他の原子またはグループ移動反応にも関する。たとえば、スルホキシド類、アジリジン類、エノールエステル類、ニトリル類、シラン類、シリルエーテル類、アルカン類、ホスホネート、アルキルボラン類、ヒドロキシカルボニル化合物、β−シアノカルボニル化合物、カルボキシル化合物、アリールアルカン類、ヘテロアリールアルカン類、シクロヘキセン類、7−オキサノルボルネン、アルデヒド類、アルコール類、第一級または第二級アミン類、アミド類などの多数のクラスの生成物の生成に有用な、これらの反応は、上で述べられ、以下詳細が説明される。
たとえば、硫化物(スルホキシドおよびスルホンへの)の、ホスフィン(ホスホネートへの)、およびアルコール類またはアルデヒド類のカルボン酸への触媒酸化は、業界で知られている従来の酸化手順に従って行うことができる。たとえば、ラセミアルデヒドと酸素原子源とを、本明細書で記載した光学的に活性な金属錯体触媒系の存在下に反応させ、光学的に活性なカルボン酸を生成することができるが、これに限定されない。製薬産業で適用が見出されている数多くのスルホキシド、たとえば、Matsugiらによってテトラヒドロン(2001)57:2739(血小板接着阻害剤)に記載されているキノロンスルホキシド、またはNaitoらによって薬学雑誌(2001)121:989(高尿酸血症および虚血性再灌流障害の治療薬)に記載されているピラゾロトリアジンスルホキシド、またはメチルフェニルスルホキシド(メチルフェニルチオエーテルから)は、このプロセス工程を使用することによって、製造してもよい。
飽和ニトリル類を生成するα−エチレン性不飽和化合物の、または不飽和ニトリルを生成するアルキン類の、またはβ−シアノカルボニル化合物を生成するα,β−不飽和アルデヒド類またはケトン類の触媒ハイドロシアン化(またはシアノ水和反応)は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、1−フェニルプロペノンは、4−オキソ−4−フェニル−ブタンニトリルに変換してもよく、本明細書に記載する光学活性金属錯体触媒系の存在下、プロキラルオレフィンとシアン化水素とを反応させることによって、光学活性ニトリル化合物を生成することができる。
飽和シラン類を生成するオレフィン類の、または不飽和シラン類を生成するアルキン類の、またはシリルエーテル類を生成するケトン類の触媒ヒドロシリル化、またはシアノヒドリントリアルキルシリルエーテル類(これは後に加水分解し、シアノヒドリン類にしてもよい)を生成するアルデヒド類のトリアルキルシリル−シアン化(たとえばベンズアルデヒド)は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なシランまたはシリルエーテル類を、本明細書で記載した光学活性金属錯体触媒系の存在下
、従来のヒドロシリル化条件下で、プロキラルオレフィン、ケトンまたはアルデヒドを好適なシリル化合物とともに反応させることによって、生成することができる。
1つ以上のアジリジン構造単位を持つ有機化合物を生成するイミン類またはアルカン類の触媒アジリジン化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、プロキラルオレフィン類は、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のアジリジン化条件で、光学活性なアジリジン類に変換することができる。
飽和アミド類を生成するオレフィン類の触媒ヒドロアミド化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なアミド類は、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のヒドロアミド化条件で、プロキラルオレフィン、一酸化炭素、および第一級または第二級アミンまたはアンモニアを反応させることによって、生成することができる。
オレフィン類からアルカン類への、またはケトン類からアルコール類への触媒水素化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来の水素化条件で、ケトンを光学活性なアルコールへ変換することができる。本発明のこの実施形態に従って、水素化することのできる基質として、α−(アシルアミノ)アクリル酸(従って鏡像選択的にキラルアミノ酸を提供する)、α−アセトアミドケイ皮酸、α−ベンザミドケイ皮酸、デヒドロアミノ酸誘導体およびそのメチルエステル、イミン類、βケトエステル(たとえばメチルアセチルアセテート)およびケトン類が挙げられるが、これらに限定されない。
飽和第一級または第二級アミン類を製造するオレフィン類の触媒アミノ分解は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なアミン類を、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のアミノ分解条件で、プロキラルオレフィンを第一級または第二級アミンと反応させることによって、生成することができる。
アルデヒド類を製造する、アルコール類、好ましくはアリル性アルコール類の触媒異性化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、アリル性アルコール類は、本明細書に記載した光学活性な金属錯体触媒系の存在下、光学活性なアルデヒド類を生成する従来の異性化条件で異性化することができる。
アルカン類またはアリールアルカン類を製造するアルキルまたはアリールハライド類の触媒グリニャールクロスカップリングは、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なアルカン類またはアリールアルカン類は、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のグリニャールクロスカップリング条件で、キラルグリニャール試薬をアルキルまたはアリールハライドと反応させることによって生成することができる。
アルキルボラン類およびトリアルキルボラン類(これらは次に酸化または加水分解されアルコール類になる)を生成する、オレフィン類(たとえば4−メチル−1−ペンテンが挙げられるがこれに限定されない)の触媒ヒドロホウ素化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なアルキルボラン類またはアルコール類は、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のヒドロホウ素化条件で、プロキラルオレフィンとボランを反応させることによって生成することができる。
アルコール類を製造するアルデヒド類およびケトン類の触媒ヒドリド還元は、業界で公知の従来の手順に従って、すなわち、前記アルデヒドまたはケトンを、ナトリウムボロ水
素化物またはリチウムアルミニウム水素化物のような水素化物試薬で処理することによって行うことができる。たとえば、ペンタナールは、還元されて1−ペンタノールに、シクロブタノンはシクロブタノールに、およびシクロヘキサン−1,4−ジオンは1,4−シクロヘキサンジオールになる。
α,β−不飽和カルボキシル化合物またはβ−ヒドロキシカルボニル化合物を製造する飽和カルボキシル化合物(アルデヒド類またはケトン類)の触媒アルドール縮合、および環状α,β−不飽和カルボキシル化合物(アルデヒド類またはケトン類)を製造するジアルデヒド類またはジオン類の分子内アルドール縮合は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性なアルドールは、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、従来のアルドール縮合条件で、プロキラルケトンまたはアルデヒドと、シリルエノールエーテルのような保護されたエノールとを反応させることによって生成することができる。
より高級な飽和炭化水素を生成するアルケン類の、またはより高級なアルケン類を生成するアルキン類の触媒共二量化は、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。たとえば、光学活性な炭化水素を、本明細書に記載の光学活性な金属錯体触媒系の存在下、共二量化条件で、プロキラルアルケンおよび他のアルケンと反応させるとによって生成することができる。
アルキル化ケトン、好ましくはアリル性ケトン類を生成するケトンの触媒アルキル化、好ましくはアリルアルキル化は、本明細書に記載の金属錯体触媒系の存在下、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。同様に、1,3−ジフェニル2−プロペニルアセテートを、本発明の触媒成分の存在下、CH(COCHのような求核試薬でアルキル化してもよい。
任意で置換されたシクロヘキセン類を生成する、共役ジエンのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応、または任意で置換された7−オキサノルボルネンを製造するフランのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応(これらに限定されない)などの触媒ディールス・アルダー反応は、本明細書に記載の金属錯体触媒系の存在下、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。
飽和ポリカルボキシル化合物を生成する、ケトンまたはβ−ジカルボニル化合物のα,β−不飽和カルボキシル化合物への触媒マイケル付加は、本明細書に記載の金属錯体触媒系の存在下、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。すなわち、たとえば、エノラートイオンを、共役付加に供し、α,β−不飽和アルデヒドまたはケトンとする、たとえば、アクロレインの2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトン)または2−メチルシクロヘキサノンへの付加である。3−ブテン−2−オンのようないくつかのマイケル受容体に関して、初期の付加生成物は、続いて、分子内アルドール縮合、所謂ロビンソン環化反応、たとえば、3−ブテン−2−オンの2−メチルシクロヘキサノンへの付加が可能である。
触媒ヘック反応は、本発明の金属錯体触媒系の存在下、業界で公知の従来の手順に従って行うことができる。標準的なヘック反応、特に触媒成分の金属がパラジウムの場合の反応は、アリールまたは3−ブロモキノリンのようなヘテロアリールハライドの、アルケン(普通アクリレート)との反応を含む。ヘック反応の酸化的な変形は、N−アセチル−3−メチルインドール(これに限定されない)のようなインドール、フランおよびチオフェンなどのある複素環化合物から進む。ヘック反応の還元的な変形は、3−アシルピリジン、4−アシルピリジンおよびアシルインドールから進み、たとえば、3−アセチルピリジンとトリエトキシシリルエチレンとの反応がある。
アミン類を生成する、オレフィン類およびアルキン類の触媒ヒドロアミノ化は、本明細書に記載された金属錯体触媒系の存在下、業界で公知の従来の手順に従って行うことできる。このタイプの反応は、エチルアミンを生成するための、エチレンおよびアンモニアのような、普通の原材料の所謂直接アミン化にも、芳香族および脂肪族アミン類のジエン類へのおよび芳香族アミン類のビニルアレンへの付加にも有用である。
本発明のプロセスに含まれる許容されるプロキラルおよびキラル出発物質反応原料は、当然、特定の合成および所望の生成物に依って選択される。そのような出発物質は、業界でよく知られており、従来の方法に従って、従来の量使用することができる。例示的な出発物質原料として、たとえば、アルデヒド類(たとえば、分子内ヒドロアシル化、アルドール縮合および酸への酸化用)、プロキラルオレフィン類(たとえば、エポキシ化、ヒドロシアン化、ヒドロシリル化、アジリジン化、ヒドロアミド化、アミノ分解、シクロプロパン化、ヒドロホウ素化、ディールス・アルダー反応、ヒドロアミノ化および共二量化用)、ケトン類(たとえば、水素化、ヒドロシリル化、アルドール縮合、ロビンソン環化反応、移動水素化およびアリルアルキル化用)、アルキン類(たとえば、シクロプロペン化およびヒドロアミノ化用)、エポキシド(たとえば、ハイドロシアン化または求核開環反応用)、アルコール類(たとえば、カルボニル化用)、アリールハライド類(たとえば、脱カルボニル化およびヘック反応用)およびキラルグリニャール試薬(たとえば、グリニャールクロスカップリング用)が挙げられる。
これより、以下の実施例を参考に、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の種々の実施形態は単なる例示であって本発明の範囲を限定するものではないことは理解されるべきである。
実施例1−A〜1−E−シッフ塩基配位子の調製
シッフ塩基配位子を、以下のようにして、調製し、精製した。サリチルアルデヒド(10mmole)と好適な置換されたアニリンとの縮合を、40mlのメタノール中、還流温度で4時間、撹拌しながら行った。−18℃で24時間冷却した後、形成した結晶をろ過し、冷エタノールで洗浄し、次いで、真空下、40℃で4時間乾燥し、以下の収率で、所望のアリチルアルジミン配位子を得た。各配位子(式は以下に記載)は、プロトン核磁気共鳴(以下NMRと言う。300MHzでCを用い、25℃で行った)、炭素NMR(75MHzでCで行った)および赤外分光光度法(IR、CClを用いて行った)を使用し、以下のように同定された。
1.71mlの3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒドおよび1.88mlの2,6−ジイソプロピルアニリンから得た、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−1−フェニルメタンイミン(シッフ塩基1−A)(黄−橙油、2.9g、収率87%)
Figure 2007523914
1.71mlの3−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドおよび2gの4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンから得た、N−(4−ブロモ−2,6−ジメチル)−2−ヒドロキシ−3−tertブチル−1−フェニルメタンイミン(シッフ塩基1−B)(黄色の油、2.8g、収率79%)
Figure 2007523914
1.065mlのサリチルアルデヒドおよび2gの4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンから得た、N−(4−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−1−フェニルメタンイミン(シッフ塩基1−C)(黄色の粉末、2.83g、収率93%)
Figure 2007523914
1.67gの4−ヒドロキシ−3−ニトロベンズアルデヒドおよび2gの4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンから暗黄色の粉末として得た、N−(4−ブロモ−2,6−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシ−4−ニトロ−1−フェニルメタンイミン(シッフ塩
基1−D)
Figure 2007523914
1.065mlのサリチルアルデヒドおよび1.88mlの2,6−ジイソプロピルアニリンから、黄色の粉末として得た、N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−4−ニトロ−1−フェニルメタンイミン(シッフ塩基1−E)
Figure 2007523914
実施例2〜8−シッフ塩基置換ルテニウム錯体の調製
実施例1−A〜1−Eで得た、シッフ塩基を有するルテニウム錯体を3つの工程で調製し、以下のように精製した。第一工程で、好適なシッフ塩基(3mmole)のTHF(15ml)溶液に、タリウムメトキシドのTHF(5ml)溶液を室温で滴下した。添加の後直ちに、淡黄色の固体が形成され、この反応混合物を20℃で2時間撹拌した。
前記サリチルアルジミンタリウム塩のTHF(5ml)溶液に、[RuCl(p−シメン)]のTHF(5ml)溶液を添加し、次いで、反応混合物を室温(20℃)で6時間撹拌した。副生物であるタリウムクロライドをろ過によって取り除いた。溶剤を蒸発させた後、残渣を0℃でジクロロメタン/ペンタン混合物から再結晶させた。次いで、このようにして得た生成物を乾燥エーテル(15ml)に溶解し、0℃に冷却した。
第三および最終工程において、前記エーテル溶液に、メチルリチウム(2.3ml、エーテル中1.4M)、フェニルマグネシウムクロライド(1.75ml、THF中2M)、またはペンタフルオロフェニルマグネシウムクロライド(7ml、0.5Mエーテル中)の溶液をそれぞれゆっくりと添加した。次いで、反応混合物をゆっくりと室温まで暖め、4時間撹拌した。形成した塩をろ過し、溶剤を取り除いた。エーテル/ペンタンからの
再結晶の後、以下の式で表される錯体を60〜70%の範囲の収率で得た。これらは、プロトン核磁気共鳴(以下NMRと言う。300MHzでCを用い、25℃で行った)、炭素NMR(75MHzでCで行った)および赤外分光光度法(IR、CClを用いて行った)を使用し、以下のように同定された。
−実施例2(シッフ塩基1−Cおよびメチルリチウムから得た):
Figure 2007523914
−実施例3(シッフ塩基1−Eおよびメチルリチウムから得た):
Figure 2007523914
−実施例4(シッフ塩基1−Bおよびメチルリチウムから得た):
Figure 2007523914
−実施例5(シッフ塩基1−Aおよびフェニルマグネシウムクロライドから得た):
Figure 2007523914
−実施例6(第二工程においてシッフ塩基1−Aから得た)
Figure 2007523914
−実施例7(シッフ塩基1−Aおよびメチルリチウムから得た)
Figure 2007523914
−実施例8(シッフ塩基1−Aおよびペンタフルオロフェニルマグネシウムクロライドから得た)
Figure 2007523914
実施例9および10−二金属シッフ塩基置換ルテニウム錯体の調製
ルテニウム前駆体[RuCl(式中、Lは、ノルボルナジエン(実施例9)またはシクロオクタジエン(実施例10)である)を塩化メチレン(15ml)に溶解し、これに3mlのシッフ塩基1−A(10ml、0.3m)のタリウム塩を添加し、反応混合物を10時間撹拌した。タリウムクロライドをろ過し、溶剤を取り除いた後、残渣を塩化メチレンで洗浄した。これらは、プロトン核磁気共鳴(以下NMRと言う。300MHzでCを用い、25℃で行った)、炭素NMR(75MHzでCで行った)および赤外分光光度法(IR、CClを用いて行った)を使用し、以下のように同定された。
−実施例9:
Figure 2007523914
−実施例10:
Figure 2007523914
実施例11−多配位シッフ塩基ルテニウム錯体の製造
この実施例では、国際公開第03/062253号の実施例6および図1中の式(Vll.a)〜(Vll.f)で表されるシッフ塩基置換ルテニウム錯体(すなわち、国際公開第03/062253号の図3で示される式(VI)で表される縮合芳香族環構造を持つカルベン配位子を持つ)の製造の代替の経路を示す。この代替の方法は、図5に図式的に示し、この図中では以下の略称を用いる。
−Phはフェニルの略であり、
−Cyはシクロヘキシルの略であり、
−Meはメチルの略であり、
−iPrはイソプロピルの略であり、
−tBuはter−ブチルの略である。
このスキームは、それ自体で理解可能であり、5工程で進み、所望のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を、国際公開第03/062253号パンフレットの実施例1−6および図1に開示された方法より高い収率で得られることを示す。
実施例12(比較例)−酸活性化なしでのシクロオクタジエンの開環重合において使用されるシッフ塩基−置換ルテニウム錯体の調製
図5に示す化合物70に類似するシッフ塩基置換ルテニウム錯体(すなわち、R=NO、R=メチル、およびR=ブロモ)を、縮合芳香族 環構造を持つカルベン配位子を=CHCカルベン配位子に置き換えた以外は、実施例11の手順に従って製造した。
シクロオクタジエンの開環メタセシス重合は、このシッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、シクロオクタジエン/触媒のモル比を500/1として、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)中で、60℃、17時間行った。数平均分子量が59,000で、多分散性が1.4のポリマーを、96%の収率で得た。
実施例13−シッフ塩基ルテニウム錯体の酸活性化を伴うシクロオクタジエンの開環重合
実施例12で得たシッフ塩基置換ルテニウム錯体を、THFに溶解した。次いで、触媒溶液をアセトン浴および液体窒素を使用して−78℃まで冷却した。次いで、6当量の塩化水素酸のTHF溶液を冷却した触媒溶液に添加し、混合物を室温になるまで約1時間撹拌し、撹拌をさらに1時間続けた。
シクロオクタジエンの開環メタセシス重合を、この酸修飾シッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、シクロオクタジエン/触媒モル比を500/1として、溶剤としてのTHF中、室温で、2時間行った。数平均分子量57,500および多分散性の1.4ポリマーを100%の収率で得た。ルテニウム錯体触媒の酸活性化のため、反応温度を60℃から室温に下げ、同時に反応時間を1/51倍にしつつ、ポリマー実施例12のポリマーと非常によく似た特徴を持つポリマーが得られることは注目される。
実施例14(比較例)−シッフ塩基ルテニウム錯体の酸活性化なしでの1,9−デカジエンのメタセシス
1,9−デカジエンの非環状ジエンメタセシス(ADMET)を、実施例12のこのシッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、1,9−デカジエン/触媒モル比を500/1として、バルク状で、部分真空下、60℃で17時間行った。反応時間後、ポリマーは得られなかった。すなわち、前記ルテニウム錯体は、そのような条件下ではADMETを触媒していない。
実施例15−シッフ塩基ルテニウム錯体の酸活性化を伴う1,9−デカジエンのメタセシス
実施例12で得られたシッフ塩基置換ルテニウム錯体をTHFに溶解した。次いで、触媒溶液を、アセトン浴および液体窒素を使用して、−78℃に冷却した。次いで、6当量の塩化水素酸のTHF溶液を冷却された触媒に添加し、混合物を室温になるまで約1時間撹拌し、撹拌をさらに1時間続けた。
1,9−デカジエンの非環状ジエンメタセシス(ADMET)を、この酸修飾シッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、1,9−デカジエン/触媒モル比を500/lとして、バルク状で、部分真空下、60℃で2時間行った。数平均分子量、5,700、多分散性1.2のポリマーを得た。金属錯体の酸活性化を行わず、ポリマーが得られなかった場合と他の反応条件は全て同じであったが、ルテニウム錯体触媒の活性化のため、反応時間を17時間から2時間に減らしつつ、ポリマーが得られたことは、注目される。
実施例16−シッフ塩基ルテニウム錯体の酸活性化を伴うジシクロペンタジエンの開環重合
実施例12で得られたシッフ塩基置換ルテニウム錯体をTHFに溶解した。次いで、触媒溶液をアセトン浴および液体窒素を使用して、−78℃に冷却した。次いで、6当量の塩化水素酸のTHF溶液を冷却した触媒溶液に添加し、混合物を室温になるまで約1時間撹拌し、撹拌をさらに1時間続けた。
ジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合を、この酸修飾シッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、ジシクロペンタジエン/触媒モル比を50,000/1として、バルク状で、標準反応射出成形(RIM)条件を用いて、室温で、5分行った。透明な(「ガラス級」)ポリマーを得た。
実施例17−シッフ塩基ルテニウム錯体の酸活性化を伴う他のモノマーの開環重合
実施例12で得たシッフ塩基置換ルテニウム錯体をTHFに溶解した。次いで、触媒溶
液をアセトン浴および液体窒素を使用して、−78℃に冷却した。次いで、6当量の塩化水素酸のTHF溶液を冷却した触媒溶液に添加し、混合物を室温になるまで約1時間撹拌し、撹拌をさらに1時間続けた。種々のモノマーの開環メタセシス重合を、この酸修飾シッフ塩基置換ルテニウム錯体を触媒として使用し、モノマー/触媒モル比を以下のようにして、溶剤としてのTHF中、室温で5分間行った。
エチリデン−ノルボルネン:50,000/1
シクロオクテン:150,000/1
エチルテトラシクロドデセン:50,000/1
全ケースにおいて、モノマーが対応ポリマーに全て変更されるのに要した時間は、5分、未満であった。
実施例18−多配位ルテニウム錯体の酸活性化
実施例2〜8の単一金属シッフ塩基置換ルテニウム錯体と、実施例9〜10の二金属シッフ塩基置換ルテニウム錯体を、実施例13の実験条件、すなわち、前記酸の前記ルテニウム錯体に対するモル比を6/1として、塩化水素で活性化させた。次いで、そのように修飾したルテニウム錯体に関し、実施例13、16および17と類似した実験条件で、種々の歪み環状オレフィン類の開環重合において試験した。出発ルテニウム錯体が酸で活性化されていない場合と比べて、より短い反応時間内でおよび/またはより低い反応温度で、向上したポリマー収率が得られた。
実施例19−シッフ塩基置換ルテニウム錯体との酸の反応の検討
空気中で安定な、シッフ塩基配位子に配位するルテニウム錯体は、ジシクロペンタジエンのような歪み環状オレフィン類のROMPに効率的な触媒である。先の実施例で示したように、前記シッフ塩基置換ルテニウム錯体に対して非常にモル過剰の強酸が付加した後、より効率的な触媒がその場で生成することができる。前記酸とシッフ塩基置換ルテニウム錯体との間の反応をより正確に理解し、この反応に関与する中間体および最終ルテニウム化学種を同定するために、実施例12で生成したシッフ塩基置換ルテニウム錯体の酸活性化をH NMRスペクトル観測によってモニタリングした。H NMRスペクトラムは、シッフ塩基置換ルテニウム錯体の溶液で、重水素化クロロホルム中、異なる時間間隔で酸活性化の前および後で行った。また、同じ条件下での遊離シッフ塩基配位子の酸活性化を、比較用に同じ技術によって調べた。
図7は、いかなる酸活性化の前の、ケミカルシフト0〜9ppmの範囲での、実施例12で得たシッフ塩基置換ルテニウム錯体の重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。このスペクトラムは、配位する配位子からのプロトンによるシグナルのいくつかのグループを示す。シッフ塩基配位子のメチル基に基づく2つのシングレットをδ1.03および1.48ppmに、次いで、δ2.0および2.8ppmの間にジヒドロイミダゾリリジン配位子のメチル基に特徴的な6つのシングレットがあるのが観察される。δ3.9〜4.3ppmの間の次のシグナルは、ジヒドロイミダゾリリデン配位子のメチレンプロトンに帰属される。δ6.2〜8.2ppmの間に、全配位子のフェニルプロトンおよびイミン基に含まれる炭素原子に結合するプロトンに基づくマルチプレットがある。最後に、δ18.51ppmに(図7では示さず)に、ベンジリデン配位子のプロトンを特徴づけるシングレットが観察される。
連続H NMRモニタリングによって、酸−ルテニウム錯体反応の結果が観察された。たとえば、図8は、10モル当量のDCl(重水素クロライド)を使用し、20℃での同じシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例12で生成)の5分間酸活性化で得られた生成物の、8〜19ppmのケミカルシフトの範囲内における、重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。このスペクトラムでは、ルテニウムにまだ結合するプロトン化シッフ塩基配位子の特徴的な広いプロトンシグナルがδ8.72ppmで検出さ
れ、同様に、δ10.01および8.56ppmにニトロサリチルアルデヒドに典型的なシグナルが検出されている。したがって、スペクトラムは、これらの条件下(酸/錯体モル比が10:1)での5分間の酸活性化の後、(i)シッフ塩基配位子のプロトン化とともにシッフ塩基の窒素原子の部分的脱配位および、(ii)イミン結合の開裂に続く、金属中心からのシッフ塩基配位子の酸素原子の部分的脱配位の両方がもたらされることを明らかに示している。しかし、そのような重水素クロライドとシッフ塩基配位子の窒素原子との相互作用は、外観が先行する反応の最初の数分の間だけしかはっきりと観察することはできず、ニトロサリチルアルデヒドの形成に基づくδ10.01および8.56ppmでのシグナルの強度において増す。シッフ塩基配位子のプロトン化は、以下の式:
Figure 2007523914
で表される中間体化学種の存在に帰する。
図9は、10モル当量のDCl(重水素クロライド)を使用し、20℃での同じシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例12で生成)の50分間酸活性化で得られた生成物の、10〜19ppmのケミカルシフトの範囲内における、重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。このスペクトラムでの、金属中心に配位されたベンジリデン配位子に由来する、それぞれδ16.91および17.62ppmで、弱く広いシグナルによって特徴付けられる、少なくとも1個の新しいルテニウムカルベン錯体の形成が検出される。この少なくとも1つの新しいルテニウムカルベン錯体は、シッフ塩基脱配位の前の工程で形成されたものであろう。すなわち、これは早い段階(5分〜50分反応の間)で存在したのであろうが、濃度が低すぎてNMRによる検出ができなかったのであろう。理論に縛られるつもりはないが、この少なくとも1つの新しいルテニウムカルベン錯体は、オレフィンメタセシス反応の促進に貢献する活性な触媒種を構成するものと考えられ、以下の式:
Figure 2007523914
(式中Phはフェニルである)で表すことができる。
したがって、この化学種を、[ジクロロ][フェニルメチリデン][1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン]ルテニウムと名づける。今示したように、この化学種は非常に不安定で、反応性があり、素早く分解されることに注目すべきである。
図10は、10モル当量のDCl(重水素クロライド)を使用し、20℃での同じシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例12で生成)の90分間酸活性化で得られた生成物の、−5〜+19ppmのケミカルシフトの範囲内における、重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。このスペクトラムにおいて、新しいケミカルシフトの存在が−0.2および−4.0ppmでそれぞれ検出された。理論に縛られるつもりはないが、これらのシグナルは、以下の式:
Figure 2007523914
(式中、Lは水(HO)を示す)で表すことのできる、少なくとも1個の新しいルテニウム一水和物錯体を示すものであろうと考えられる。
図10から、90分後の酸活性化反応の転化率は約60%であったと算定することができる。
図11および12は、10モル当量のDCl(重水素クロライド)を使用し、20℃での同じシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例12で生成)のそれぞれ24時間および91時間酸活性化で得られた生成物の、−5〜+19ppmのケミカルシフトの範囲内における、重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。24時間の反応時間後、出発シッフ塩基置換ルテニウム錯体のプロトンに基づくシグナルが、5−ニトロサリシルアルデヒドからのシグナル(δ10.01ppm、δ11.61ppm、δ8.6−8.4ppmおよびδ7.13ppmに)、プロトン化された4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンからのシグナル(δ2.56ppmおよび7.27ppmに)、および新しいルテニウム一水和物錯体に帰属されるシグナル(δ−4ppm、δ−0.2ppm、δ1.2ppm、δ2.1ppmおよびδ3.2ppmに、および6.5ppm〜8ppmの間のマルチプレット)とともに、まだ存在した。図11から、24時間後の酸活性化反応の転化率は約90%であったと算定することができる。
91時間の反応時間後、出発シッフ塩基置換ルテニウム錯体のプロトンに基づく全シグナルが消滅した。新しいルテニウム一水和物錯体のプロトン、5−ニトロサリシルアルデヒド、およびプロトン化された4−ブロモ−2,6−ジメチルアニリンからのシグナルだけがまだ観察できた。
実施例20−酸活性化シッフ塩基置換ルテニウム錯体の存在下でのシクロオクテン重合
実施例19の条件下(すなわち、酸/錯体モル比を10として、実施例12に従って生成した出発シッフ塩基置換ルテニウム錯体の20℃での酸活性化)、酸の活性化を90分行った後、100モル当量のシクロオクテン(シッフ塩基置換ルテニウム錯体に関して)をNMRチューブに添加した。これによりモノマーが非常に速く重合し、チューブの頂部
にポリマーがすぐに現われた。図13は、2時間後にチューブに存在した混合物(すなわち、90分の酸活性化および30分の重合)の、−5〜+19ppmのケミカルシフトの範囲内における、重水素化クロロホルム中のH NMRスペクトラムを示す。図13では、5.4ppmでのポリシクロオクテンのオレフィン性プロトンからのシグナルが、容易に見ることができる。またこの実験で、δ18.0ppmでのシグナルを与える伝播性化学種の形成がわかった。
実施例21〜27−酸活性化シッフ塩基置換ルテニウム錯体の存在下でのジシクロペンタジエン重合(第一設定手順)
ある酸活性化シッフ塩基置換ルテニウム錯体の存在下でのジシクロペンタジエン重合の結果に基づく種々のパラメーターの効果を検討するために、実施例12で得られた錯体に基づいて、以下の手順を設定した。ジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合は、特に記載しない限り、この錯体を触媒として使用し、ジシクロペンタジエン/触媒モル比を30,000/1として、16mlのポリプロピレン容器中で行った。先ず、触媒(0.1mlの塩化メチレンに溶解)および塩化水素酸(以下の表で特定する酸/触媒モル比rで)を、任意で添加剤とともに(以下の表で特定する添加剤/触媒モル比rで)、室温で反応器に導入し、次いで、一定の活性化時間t(以下の表に分で示す)の後、今度は、ジシクロペンタジエンを前記特定のモル比で、反応原料全体の容積が10mlになるまで、室温で反応器に導入し、反応を一定の時間t(以下の表に分で示す)行うと、温度が急速に下がった。重合反応は非常に発熱性であり、最高温度Tmax(以下の表に℃で示す)を熱電対により正確に記録した。この実験設定手順のいくつかの実施形態(実施例24および25)では、そのガラス転移温度Tgを検査するため、得られたポリジシクロペンタジエンに関して動的機械分析(以下、DMAと言う)を行った。DMAの結果は以下の通りである。
実施例24:149.9℃
実施例25:151.6℃
これらのDMAデータは、TmaxがTgによく従っていることを示す。
以下の表1は、種々の反応パラメーターを変えた場合の得られた最高温度Tmaxを示す。
Figure 2007523914
前記実施例の全てにおいて、使用されたジシクロペンタジエンモノマーは、連鎖移動剤として作用するビニルノルボルネン(以下、VNBと言う)を0.2重量%含むことを示
す。実施例23において使用した添加剤は、以下の式:
Figure 2007523914
で表されるルテニウム二量体である。
実施例24および25で使用した添加剤は、式:
Figure 2007523914
で表されるアゾビス(イソブチルニトリル)(以下、AIBNと略記する)である。
実施例26で使用した添加剤は、三臭化リンPBrである。
表1にあるデータは、重合すべきモノマーの添加の前に、触媒および塩化水素酸を反応させるための短い活性化時間があれば、140℃を超えるガラス転移温度Tgを持つポリジシクロペンタジエンを、本発明によって、再現性を持って得ることができることを示す。
実施例28〜31−酸活性化シッフ塩基置換ルテニウム錯体の存在下におけるジシクロペンタジエン重合(第二設定手順)
この第二設定手順では、100mlのプロピレン容器を使用し、触媒(実施例12で得た)を1mlの塩化メチレンに溶解し、ジシクロペンタジエンを、反応原料全体の容積が80mlになるまで、室温で反応器に導入し、活性化時間を1分に固定し、ジシクロペンタジエン/触媒モル比Rを反応パラメーターとして使用した以外は、実施例21〜27の実験手順を繰り返した。
以下の表2は、種々の反応パラメーターを変えた場合の得られた最高温度Tmaxを示す。実施例30および31で使用した添加剤は、AlBNである。表1に示すデータは、たとえ、ジシクロペンタジエン/触媒モル比が第一設定手順より高くても、140℃を超え166℃までの最高発熱温度(ガラス転移温度Tgと一致することを予めチェックした)を持つポリジシクロペンタジエンを、本発明によって、再現性も持って得ることができることを示す。
Figure 2007523914
実施例32〜42−酸活性化シッフ塩基置換ルテニウム錯体の存在下、かつ溶剤中でのジシクロペンタジエン重合(第三設定手順)
ジシクロペンタジエンの開環メタセシス重合を、実施例12で得られた錯体(1mlの溶剤S、テトラヒドロフランまたは塩化メチレン(以下の表3では、それぞれTHFまたはMCと表示)に溶解して)を触媒として用い、Rで示されるジシクロペンタジエン/触媒モル比で行った。先ず、塩化水素酸(以下の表で特定する酸/触媒モル比rで)およびVNB(ジシクロペンタジエンに関して0.2重量%)を、室温で、80mlのジシクロペンタジエンに添加した。次いで、この混合物を、任意で添加剤としてAIBNとともに(以下の表に特定する添加剤/触媒モル比rで)とともに、触媒溶液に添加した。反応を一定の時間t(以下の表に分として表す)行い、その後、反応器を冷却した。ガラス転移温度Tgを検査するため、得られたポリジシクロペンタジエンに関して動的機械分析(以下、DMAと言う)を行った。
以下の表3に、種々の反応パラメーターを変更して、DMA(℃で表す)で測定した温度を示す。
Figure 2007523914
表3にあるデータは、150℃〜170℃の間にあるガラス転移温度Tgを持つポリジシクロペンタジエンは、本発明のこの設定手順における種々の条件に従って、再現性を持
って得ることができることを示す。
実施例43−シッフ塩基置換ルテニウム錯体と酸との反応の検討
式:
Figure 2007523914
で表される異なるシッフ塩基置換ルテニウム錯体、すなわちシッフ塩基の窒素原子上の置換フェニル基がより立体障害であるマダマンチル基に置き換わっている以外は実施例12の錯体と類似のルテニウム錯体に関して、実施例19の検討を繰り返した。対応するシッフ塩基配位子は、簡単にアダマンチルアミンからアクセスできる。重水素化クロロホルム中のこの錯体のプロトンNMRスペクトラムを図14に示す。ジヒドロイミダゾリリデン配位子のメチル基および窒素に配位するアダマンチル基のプロトンに特徴的な、δ1.5および2.8ppmの間のシグナルの群が観察された。δ3.9〜4.3ppmの間のシグナルは、ジヒドロイミダゾリリデン配位子のメチレンプロトンに帰属される。δ6.2〜8.2ppmの間には、全配位子のフェニルプロトンおよびイミン結合に関与する炭素原子に結合するプロトンに基づくマルチプレットが存在する。最後に、δ17.7ppmに、ベンジリデン配位子のプロトンを特徴づけるシングレットが観察される。
酸活性化を10分だけにしたこと以外は、実施例19と同じ条件で酸活性化を行った。得られた生成物のプロトンNMRスペクトラムを図15に示す。この実験で、10分後(δ17.7ppmでのシグナルが消滅)、出発錯体の非常に速く完全な(100%)転化率が観察された。この間の時間、新しい錯体の形成が観察された(δ16.91ppmのシグナル)。実施例19の時間と同様に、なおルテニウムに配位するプロトン化シッフ塩基配位子に特徴的な広いプロトンシグナルも、δ8.62ppmで検出された。
本発明の一実施形態による、酸を用いた修飾に好適な多配位金属錯体に含まれてもよい、一般式(IA)および(IB)で表される2座配位性シッフ塩基配位子を示す。 本発明の別の実施形態による、酸を用いた修飾に好適な多配位金属錯体に含まれてもよい、一般式(IIA)および(IIB)で表される4座配位性シッフ塩基配位子を示す。 本発明による、酸を用いた修飾に好適な多配位金属錯体に含まれてもよい、一般化学式(IIIA)および(IIIB)で表される4座配位性シッフ塩基配位子を示す。 本発明による、酸を用いた修飾に好適な多配位金属錯体に含まれてもよい、一般化学式(IVD)で表される3座配位性シッフ塩基配位子と、本発明による、酸を用いた修飾に好適な、一般式(IVA)および(IVB)で表される二金属錯体、ならびにそのような金属錯体のカルベン配位子中に存在してもよい、式(IVC)で表される縮合芳香族環系を示す。 本発明による、酸によって修飾される多配位金属錯体の生成スキームを示す。 本発明による、4座配位性シッフ塩基配位子(IIIA)に由来する、一般式(VA)で表される単一金属錯体、および酸を用いた修飾に好適な一般式(VB)で表される単一金属錯体を示す。 重水素化クロロホルムにおける、酸活性化前の第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例12)のHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を5分間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を50分間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を90分間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を24時間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を91時間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 同じ第一のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を90分間酸活性化した後、シクロオクテンを加え30分間重合して得た生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 酸活性化前の第二のシッフ塩基置換ルテニウム錯体(実施例43)の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。 第二のシッフ塩基置換ルテニウム錯体を10分間酸活性化して得られた生成物の重水素化クロロホルムにおけるHNMRスペクトラムを示す。

Claims (61)

  1. 多配位金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体を修飾する方法であって、前記多配位金属錯体は、(i)イミノ基を含み、前記イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する、少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子と(ii)1つ以上の他の配位子とを含み、前記方法は、前記酸が、少なくとも部分的に、金属と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)との間の結合を開裂することができる条件で、前記多配位金属錯体を酸に接触させることを含み、前記他の配位子(ii)は、前記条件下で、前記酸によってプロトン化されないように選択される方法。
  2. 前記条件は、前記酸と前記多配位金属錯体との間のモル比が1.2を超え、40未満であることを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記条件は、接触時間が5秒〜100時間であることを含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記条件は、接触温度が約−50℃〜約+80℃であることを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記他の配位子(ii)が、ホスフィン類、アミン類、アルシン類およびスチビン類からなる群から選択されないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記酸のpKaが、前記多座配位性シッフ塩基配位子(ii)のpKaより低い請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)における、前記イミノ基の窒素原子と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)の前記配位しているヘテロ原子との間の炭素原子の数が、2〜4であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、N−複素環カルベン、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択されるカルベン配位子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、アニオン性配位子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、非アニオン性配位子であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記酸は、塩化水素酸または臭化水素酸である請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記条件は、多座配位性シッフ塩基配位子をプロトン化し、金属から前記多座配位性シッフ塩基配位子のイミノ基の窒素原子を脱配位化することができることを特徴とする請求
    項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記条件は、金属から前記多座配位性シッフ塩基配位子のさらなるヘテロ原子を脱配位化することができることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. (a)(i)イミノ基を含み、前記イミノ基の窒素原子に加えて、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択される更なるヘテロ原子の少なくとも1個を介して金属に配位する多座配位性シッフ塩基配位子を少なくとも1個と、(ii)1個以上の他の配位子とを含む多配位金属錯体、その塩、溶媒和物または鏡像体と、
    (b)前記多配位金属錯体(a)に関し、約1.2を超えるモル比で反応させる酸との反応生成物であって、ただし前記他の配位子(ii)は、前記酸によってプロトン化ができないものである、反応生成物。
  16. 前記他の配位子(ii)が、アミン類、ホスフィン類、アルシン類およびスチビン類からなる群から選択されないことを特徴とする請求項15記載の生成物。
  17. 前記酸(b)のpKaが、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)のpKaより低いことを特徴とする請求項15または16記載の生成物。
  18. 前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)における、前記イミノ基の窒素原子と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)の前記ヘテロ原子との間の炭素原子の数が、2〜4であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1項に記載の生成物。
  19. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、少なくとも15のpKaを有する制限立体障害配位子であることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項に記載の生成物。
  20. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、N−複素環カルベン、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子およびアレニリデン配位子からなる群から選択されるカルベン配位子であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の生成物。
  21. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、アニオン性配位子であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の生成物。
  22. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、非アニオン性配位子であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項に記載の生成物。
  23. 前記酸は、塩化水素酸または臭化水素酸であることを特徴とする請求項15〜22のいずれか1項に記載の生成物。
  24. 一般式:
    [M(L)(L)(X)(SB)]X
    (式中、
    −Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくは、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −SBは、プロトン化シッフ塩基配位子、好ましくはプロトン化2座配位性シッフ塩基
    配位子であり;
    −Lは、カルベン配位子、好ましくは、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子、およびアレニリデン配位子からなる群から選択され;
    −Lは、非アニオン性配位子、好ましくは、ホスフィン配位子以外であり;
    −Xはアニオン性配位子であり;
    −Xはアニオンである)で表される単一金属種、その塩、溶媒和物および鏡像体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  25. 一般式:
    [M(L)(SB)(X)(X)(M’)(X)(L)]X
    (式中、
    −MおよびM’はそれぞれ、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から独立して選択される金属、好ましくは、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −SBは、プロトン化シッフ塩基配位子、好ましくはプロトン化2座配位性シッフ塩基配位子であり;
    −Lcは、カルベン配位子であり、好ましくは、アルキリデン配位子、ビニリデン配位子、インデニリデン配位子、およびアレニリデン配位子からなる群から選択され;
    −Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外であり;
    −X、XおよびXは、それぞれ独立して、アニオン性配位子から選択され;
    −Xはアニオンである)で表される二金属種、その塩、溶媒和物および鏡像体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  26. 一般式(VI):
    Figure 2007523914
    で表されるカチオン性単一金属種、または
    一般式(VII):
    Figure 2007523914
    で表されるカチオン性単一金属種
    (式中、
    −Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −Wは、酸素、イオウ、セレニウム、NR””、PR””、AsR””およびSbR””からなる群から選択され;
    −R”、R’’’およびR””はそれぞれ、水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とが一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、各前記ラジカル(水素とは異なる場合)は、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1個以上の、好ましくは1〜3個の置換基Rで任意で置換され;
    −R’は、一般式(IA)で表される化合物に含まれる場合は、R”、R’’’およびR””について定義されたものと同じであり、または一般式(IB)で表される化合物に含まれる場合は、C1−6アルキレンおよびC3−8シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1つ以上の置換基Rで任意で置換され;
    −Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外であり;
    −Xは、アニオン性配位子であり;
    −RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
    −R’とRおよびRのうちの1つとが互いに結合して、2座配位性配位子を形成してもよく;
    −R’’’およびR””は互いに結合して、窒素、リン、ヒ素およびアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂肪族環系を形成してもよく;
    −RおよびRは一緒になって縮合芳香族環系を形成してもよく;
    −yは、Mと、RおよびRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数である)、その塩、溶媒和物および鏡像体であり、前記カチオン性化学種は、アニオンと結合している請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  27. 一般式(X):
    Figure 2007523914
    で表されるカチオン性二金属種、または
    一般式(XI):
    Figure 2007523914
    で表されるカチオン性二金属種
    (式中、
    −MおよびM’は、それぞれ、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から独立して選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −Wは、酸素、イオウ、セレニウム、NR””、PR””、AsR””およびSbR””からなる群から選択され;
    −R”、R’’’およびR””はそれぞれ、水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とが一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、各ラジカル(水素とは異なる場合)は、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1個以上の、好ましくは1〜3個の置換基Rで任意で置換されてあり;
    −R’は、一般式(IA)で表される化合物に含まれる場合は、R”、R’’’およびR
    ””について定義されたものと同じであり、一般式(IB)で表される化合物に含まれる場合は、C1−6アルキレンおよびC3−8シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1つ以上の置換基Rで任意で置換され;
    −RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
    −R’とRおよびRの1つとが互いに結合して、2座配位性配位子を形成してもよく;
    −R’’’およびR””は互いに結合して、窒素、リン、ヒ素およびアンチモンからなる群から選択されるヘテロ原子を含む脂肪族環系を形成してもよく;
    −RおよびRは一緒になって縮合芳香族環系を形成してもよく;
    −yは、Mと、RおよびRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数であり、
    −X、XおよびXは、それぞれ独立して、アニオン性配位子から選択され;
    −Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外である)および、その塩、溶媒和物および鏡像体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  28. 一般式(VIII):
    Figure 2007523914
    (式中、
    −Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −Xは、アニオン性配位子であり;
    −RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C2−20アルケニル、C2−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり;
    −RおよびRは一緒になって縮合芳香族環系を形成してもよく;
    −yは、Mと、RおよびRを有する炭素原子との間のsp炭素原子の数を示し、0〜3(両端を含む)の整数であり、
    −X’はアニオン性配位子であり;
    −Lは、ホスフィン配位子以外の非アニオン性配位子である)で表される単一金属錯体、その塩、溶媒和物および鏡像体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  29. 一般式(IX):
    Figure 2007523914
    (式中、
    −Mは、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される金属、好ましくはルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、銅、クロム、マンガン、ロジウム、バナジウム、亜鉛、金、銀、ニッケルおよびコバルトから選択される金属であり;
    −Xはアニオン性配位子であり;
    −Sは溶剤であり;
    −Yは溶剤、またはSがアルコールの場合YはCOであり;
    −Lは、非アニオン性配位子、好ましくはホスフィン配位子以外である)で表される単一金属錯体、その塩、溶媒和物および鏡像体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  30. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、溶剤Sであり、前記複合体(a)は、アニオンAに結合するカチオン性化学種である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  31. 前記多配位金属錯体(a)は、二金属錯体であることを特徴とする請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  32. 前記二金属錯体の1個の金属が、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)および前記1つ以上の他の配位子(ii)に5座配位し、他の金属が、1つ以上の中性配位子および1つ以上のアニオン性配位子に4座配位することを特徴とする請求項31記載の生成物。
  33. 前記二金属錯体の各金属が、前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)および前記1つ以上の他の配位子(ii)に6座配位することを特徴とする請求項31記載の生成物。
  34. 二金属錯体の2個の金属が同じであることを特徴とする請求項31記載の生成物。
  35. 二金属錯体の2個の金属が異なることを特徴とする請求項31記載の生成物。
  36. 前記多配位金属錯体(a)は単一金属錯体である請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  37. 前記多配位金属錯体(a)の金属は、周期表4、5、6、7、8、9、10、11および12属からなる群から選択される遷移金属であることを特徴とする請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  38. 前記金属は、ルテニウム、オスミウム、鉄、モリブテン、タングステン、チタニウム、レニウム、テクネチウム、ランタニウム、銅、クロム、マンガン、パラジウム、白金、ロジウム、バナジウム、亜鉛、カドミウム、水銀、金、銀、ニッケルおよびコバルトからな
    る群から選択されることを特徴とする請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  39. 前記多配位金属錯体(a)が、5座配位性金属錯体または4座配位性金属錯体であることを特徴とする請求項15〜23のいずれか1項に記載の生成物。
  40. 前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)は、2座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)は、2個の他の配位子(ii)を含むことを特徴とする請求項39記載の生成物。
  41. 前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)は、3座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)は、1個の他の配位子(iii)を含むことを特徴とする請求項39記載の生成物。
  42. 前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)が、図1に示される一般式(IA)および(IB)(式中、
    −Zは、酸素、イオウおよびセレニウムからなる群から選択され;
    R”およびR’’’は、それぞれ、水素、C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立して選択されるラジカルであり、またはR”とR’’’とは一緒になってアリールまたはヘテロアリールラジカルを形成し、前記ラジカルはそれぞれ、任意で、ハロゲン原子、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アリール、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−6アルキル−C1−6アルコキシシリル、C1−6アルキル−アリールオキシシリル、C1−6アルキル−C3−10シクロアルコキシシリル、アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群からそれぞれ独立して選択される1個以上、好ましくは1〜3個の、置換基Rによって置換され;
    −R’は、一般式(IA)で表される化合物に含まれる場合は、R”およびR’’’について定義したものと同じであり、一般式(IB)で表される化合物に含まれる場合は、C1−7アルキレンおよびC3−10シクロアルキレンからなる群から選択され、前記アルキレンまたはシクロアルキレン基は1個以上の置換基Rで任意で置換される)の1つで表されることを特徴とする請求項39または40記載の生成物。
  43. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個は、1個以上の水素原子が、制限立体障害を提供する、イミダゾール−2−イリデン、ジヒドロイミダゾール−2−イリデン、オキサゾ−ル−2−イリデン、トリアゾール−5−イリデン、チアゾール−2−イリデン、ビス(イミダ−ゾリン−2−イリデン)、ビス(イミダゾリジン−2−イリデン)、ピロリリデン、ピラゾリリデン、ジヒドロ−ピロリリデン、ピロリリジンイリデン、およびそのベンゾ−縮合誘導体、または非イオン性プロフォスファトラン超塩基からなる群から選択されるN−複素環カルベンの基で置換されている誘導体であることを特徴とする請求項39記載の生成物。
  44. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個は、C1−20アルキル、C1−20アルケニル、C1−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C1−20アルケニルオキシ、C1−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、ハロゲン原子およびシアノからなる群から選択されるアニオン性配位子であることを特徴とする請求項39記載の生
    成物。
  45. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)の少なくとも1個が、一般式=[C=]CR
    (式中、
    −yは、0〜3(両端を含む)の整数であり、
    −RおよびRはそれぞれ、水素、またはC1−20アルキル、C1−20アルケニル、C1−20アルキニル、C1−20カルボキシレート、C1−20アルコキシ、C1−20アルケニルオキシ、C1−20アルキニルオキシ、アリール、アリールオキシ、C1−20アルコキシカルボニル、C1−8アルキルチオ、C1−20アルキルスルホニル、C1−20アルキルスルフィニル、C1−20アルキルスルホネート、アリールスルホネート、C1−20アルキルホスホネート、アリールホスホネート、C1−20アルキルアンモニウムおよびアリールアンモニウムからなる群から選択されるラジカルであり、またはRおよびRは互いに結合して、縮合芳香族環系を形成してもよい)で表されるカルベン配位子であることを特徴とする請求項39記載の生成物。
  46. およびRは一緒になって、前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子(ii)がフェニルインデニリデン配位子であるように縮合芳香族環系を形成することを特徴とする請求項45記載の生成物。
  47. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個は、芳香族および不飽和シクロ脂肪族基、好ましくは、アリール、ヘテロアリールおよびC4−20シクロアルケニル基からなる群から選択され、前記芳香族または不飽和シクロ脂肪族基は、任意で、1個以上のCl−7アルキル基またはハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子求引性基で置換されている、非アニオン性不飽和配位子Lであることを特徴とする請求項39記載の生成物。
  48. 前記多配位金属錯体(a)の前記他の配位子の少なくとも1個は、C1−7アルキル、C3−10シクロアルキル、アリールアルキルおよび複素環からなる群から選択され、前記基は、任意で、1つ以上の、好ましくは、ハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子求引性置換基で置換されている非アニオン性配位子Lであることを特徴とする請求項39記載の生成物。
  49. 前記少なくとも1の多座配位性シッフ塩基配位子(i)は、4座配位性配位子であり、前記多配位金属錯体(a)は1または2個の、芳香族および不飽和シクロ脂肪族基、好ましくはアリール、ヘテロアリールおよびC4−20シクロアルケニル基からなる群から選択され、前記芳香族または不飽和シクロ脂肪族基は、任意で、1つ以上のC1−7アルキル基またはハロゲン、ニトロ、シアノ、(チオ)カルボン酸、(チオ)カルボン酸(チオ)エステル、(チオ)カルボン酸(チオ)アミド、(チオ)カルボン酸無水物および(チオ)カルボン酸ハライド(これらに限定されない)のような電子求引性基で置換されている非アニオン性配位子Lである、他の配位子(ii)を含むことを特徴とする請求項39記載の生成物。
  50. 前記酸(b)は、光酸発生剤からイン・サイチューで発生する酸である請求項15記載の生成物。
  51. 金属と前記少なくとも1個の多座配位性シッフ塩基配位子(i)との間の結合が少なくとも部分的に開裂した生成物を含む請求項15記載の生成物。
  52. (a)主触媒種として、請求項15〜51のいずれか1項に記載の反応生成物と、
    (b)ルイス酸助触媒(b)、触媒活性化剤(b)およびラジカル移動可能な原子またはグループを有する開始剤(b)からなる群から選択される1つ以上の第二触媒成分とを含む触媒系。
  53. 第二触媒成分が、ボロントリハライド類;リントリハライド類;トリアルキルボロン化合物;トリアリールボロン化合物;有機アルミニウム化合物;マグネシウムジハライド類;アルミニウムトリハライド類;四塩化スズ;チタニウムまたはバナジウムトリハライド類またはテトラハライド類またはテトラアルコキシド類;アンチモンペンタハライド類およびビスマスペンタハライド類からなる群から選択される助触媒(b1)を含む請求項52記載の触媒系。
  54. 第二触媒成分が、触媒活性化剤(b)として、ジアゾ化合物を含む請求項52記載の触媒系。
  55. 第二触媒成分が、ラジカル移動可能な原子またはグループを持つ開始剤(b)として、式R353637CX(式中、
    −Xは、ハロゲン、OR38(式中、R38は、C1−20アルキル、ポリハロC1−20アルキル、C2−20アルキニル(好ましくはアセチレニル)、C2−20アルケニル(好ましくはビニル)、任意で1〜5個のハロゲン原子またはC1−7アルキル基で置換されているフェニル、およびフェニル−置換C1−7アルキルから選択される)、SR39、OC(=O)R39、OP(=O)R39、OP(=O)(OR39、OP(=O)OR39、O−−N(R39およびS−−C(=S)N(R39(式中、R39はアリールまたはC1−20アルキル、またはN(R39基が存在する場合は、2個のR39基は結合して5、6、または7員環複素環(前記ヘテロアリールの定義に従う)を形成してもよい)からなる群から選択され、
    −R35、R36およびR37は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、C1−20アルキル(好ましくはC1−6アルキル)、C3−8シクロアルキル、C(=O)R40(式中、R40は、C1−20アルキル、C1−20アルコキシ、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシからなる群から選択される)、C(=O)NR4142(式中、R41およびR42は、独立して、水素およびC1−20アルキルからなる群から選択され、あるいはR41とR42とが結合して、炭素数2〜5個のアルキレン基を形成してもよい)、COCl、OH、CN、C2−20アルケニル(好ましくはビニル)、C2−20アルキニル、オキシラニル、グリシジル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびアリール−置換C2−20アルケニルからなる群から選択される)で表される化合物を含む請求項52記載の触媒系。
  56. (a)請求項15〜51のいずれか1項に記載の触媒活性反応生成物または請求項52記載の触媒系と、
    (b)前記触媒活性生成物または触媒系(a)を担持するに適した担持量の担体とを含む担持触媒。
  57. 触媒成分の存在下での、オレフィンまたはアセチレンメタセシス反応、または原子またはグループの、エチレン性またはアセチレン性不飽和化合物、または他の反応性基質への移動を含む反応を行う方法であって、前記触媒成分が、請求項15〜51のいずれか1項に記載の触媒活性反応生成物または請求項52〜55のいずれか1項に記載の触媒系を含む方法。
  58. 前記原子またはグループのオレフィンまたは他の反応性基質への移動を含む反応は、
    −1つ以上のラジカル(共)重合性モノマー、特にモノおよびジエチレン性不飽和モノマーの原子またはグループ移動ラジカル重合;
    −対応する飽和ポリハロゲン化付加物を得るための、式CX4−n(式中、Xはハロゲンであり、nは2〜4の整数である)を有するポリハロメタンのエチレン性不飽和化合物への原子移動ラジカル付加;
    −アルク−1−エニルエステル類、またはエノールエステル類、またはマルコフニコフ付加物、または反マルコフニコフ型付加物、またはこれらの混合物を生成するための、モノまたはジアルキンの、モノまたはジカルボン酸とのビニル化反応;
    −1つ以上のシクロプロパン構造単位を持つ有機化合物を生成する、α−エチレン性不飽和化合物のシクロプロパン化;
    −2−アミノベンジルアルコールとケトン類との酸化環化によるキノリン合成;
    −エポキシド類を生成するα−エチレン性不飽和化合物のエポキシ化;
    −アルコール類を生成する飽和炭化水素、スルホキシド類およびスルホン類を生成するスルフィド類、ホスホネート類を生成するホスフィン類、またはカルボン酸を生成するアルコール類およびアルデヒド類の酸化を含む、有機化合物の酸化;
    −1つ以上のシクロプロペン構造単位を持つ有機化合物を生成するアルキンのシクロプロペン化;
    −飽和ニトリル類を生成するα−エチレン性不飽和化合物、不飽和ニトリル類を生成するアルキン、またはβ−シアノカルボニル化合物を生成するα,β−不飽和アルデヒド類またはケトン類のヒドロシアン化;
    −飽和シランを生成するオレフィン類、不飽和シランを生成するアルキン類、またはシリルエーテル類を生成するケトン類のヒドロシリル化、またはシアノヒドリントリメチルシリルエーテル類を生成するアルデヒド類のトリメチルシリルシアン化;
    −1つ以上のアジリジン構造単位を持つ有機化合物を生成するイミン類またはアルケン類のアジリジン化;
    −飽和アミド類を生成するオレフィン類のヒドロアミド化;
    −アルカン類を生成するオレフィン類の、またはアルコール類を生成するケトン類の水素化;
    −飽和第一級または第二級アミン類を生成するオレフィン類のアミノ分解;
    −アルデヒド類を生成するアルコール類、好ましくはアリル性アルコール類の異性化;
    −アルカン類またはアリールアルカン類を生成するアルキルまたはアリールハライド類のグリニャールクロスカップリング;
    −アルキルボラン類およびトリアルキルボラン類を生成するオレフィン類のヒドロホウ素化;
    −アルコール類を生成するアルデヒド類およびケトン類のヒドリド還元;
    −α,β−不飽和カルボキシル化合物またはβ−ヒドロキシカルボニル化合物を生成する飽和カルボキシル化合物のアルドール縮合、および環状α,β−不飽和カルボキシル化合物を生成するジアルデヒド類またはジオン類の分子内アルドール縮合;
    −飽和ポリカルボキシル化合物を生成する、ケトンまたはβ−ジカルボニル化合物のα,β−不飽和カルボキシル化合物へのマイケル付加;
    −飽和多環式カルボキシル化合物を生成するロビンソン環化反応;
    −アリールアルケン類またはヘテロアリールアルケン類を生成するアリールハライドまたは1−ヘテロ−2,4−シクロペンタジエンまたはそのベンゾ−縮合誘導体とα−エチレン性不飽和化合物とのヘック反応;
    −より高級な飽和炭化水素を生成するアルケン類の、またはより高級なアルケン類を生成するアルキン類の共二量化;
    −アルコール類を生成するオレフィン類のヒドロキシル化;
    −アミン類を生成するオレフィン類およびアルキン類のヒドロアミノ化、
    −アルキル化ケトン類、好ましくはアリル性ケトン類を生成するケトン類のアルキル化、好ましくはアリルアルキル化;および
    −任意で置換されるシクロヘキセン類を生成する共役ジエンのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応、または任意で置換される7−オキサノルボルネンを生成するフランのα−エチレン性不飽和化合物へのシクロ付加反応のようなディールス−アルダー反応からなる群から選択される請求項57記載の方法。
  59. 前記メタセシス反応は、歪み環状オレフィン類の開環メタセシス重合である請求項57記載の方法。
  60. 触媒成分が担体上に担持されている請求項57記載の方法。
  61. 前記担体が、無定形または準結晶性物質のような多孔性無機固体、1つ以上の無機オキシドを含む結晶性モレキュラーシーブおよび変性層状物質、および有機ポリマー樹脂からなる群から選択される請求項60記載の方法。
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