JP2007335166A - セパレータおよび二次電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.20Vを越える二次電池を高温保存した場合にも、酸化を抑えることができるようにする。
【解決手段】二次電池は、正極13と負極14と電解質16とセパレータ15とを備える。セパレータ15は、イミド基単量体の繰り返し構造を持つ長鎖状合成高分子であり、熱安定性、機械安定性および化学安定性に優れているポリイミド樹脂を含み、1μm以上10μm以下の範囲内の厚さを有する。
【選択図】図2

Description

この発明は、セパレータおよびそれを備えた二次電池に関する。詳しくは、酸化を抑制できるセパレータに関する。
近年、ノートブックコンピュータや携帯電話などのポータブル機器の多機能・高性能化に伴い、ポータブル機器の消費電力は高まり、その電源となる二次電池に対して、より一層の高容量化が要求されている。また、ポータブル機器の小型軽量化も一層進んでいるため、二次電池には、更なる高エネルギー密度化も要求されている。このような要求に応える二次電池として、リチウムイオン二次電池は非常に注目されている。
通常、リチウムイオン二次電池では、正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素材料が使用されており、作動電圧が2.5V〜4.2Vの範囲で用いられている。単電池において、端子電圧を4.2Vまで上げられるのは、非水電解質材料やセパレータなどの優れた電気化学的安定性によるところが大きい。
ところで、従来の最大4.2Vで作動するリチウムイオン二次電池では、正極に用いられるコバルト酸リチウムなどの正極活物質は、その理論容量に対して6割程度の容量を活用しているに過ぎない。このため、更に充電電圧を上げることにより、残存容量を活用することが原理的に可能である。実際に、充電時の電圧を4.25V以上にすることにより、高エネルギー密度化可能であることが知られている(例えば特許文献1参照)。
国際公開第03/019713号パンフレット
しかしながら、リチウムイオン二次電池の高充電電圧化を図ると正極は高い電位となるため、セパレータは強い酸化環境にさらされ、酸化分解を受けやすくなる。酸化分解によって分子量が低下すると、機械的物性が著しく低下し、破膜などが起こりやすくなる。特に、ポリエチレンからなるセパレータは強い酸化環境にさらされると酸化分解を受けやすいため、破膜などが起こりやすい。また、高温環境下ではセパレータの酸化がさらに進行しやすいため、高温保存した場合には破膜などが一層起こりやすくなる。
したがって、この発明の目的は、満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.20Vを越える二次電池を高温保存した場合にも、酸化を抑えることができるセパレータおよびそれを備えた二次電池を提供することにある。
上述の課題を解決するために、この発明の第1の発明は、厚さ1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、ポリイミドを含むことを特徴とするセパレータである。
この発明の第2の発明は、正極と負極と電解質とセパレータとを備え、
セパレータは、ポリイミド樹脂を含み、
セパレータの厚さは、1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であることを特徴とする二次電池である。
この発明の第1および第2の発明において、セパレータの空孔率は、20%以上80%以下の範囲内であることが好ましい。
この発明の第2の発明において、満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内であることが好ましい。また、電解質は、ゲル状電解質であることが好ましい。
この発明では、セパレータがポリイミドを含み、その厚さが1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であるので、満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.20Vを越える二次電池を高温保存した場合にも、セパレータの酸化を抑えることができる。
以上説明したように、この発明によれば、満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.20Vを越える二次電池を高温環境下に保存した場合にも、セパレータの酸化を抑えることができるので、内部ショートの発生を抑えることができる。したがって、高い残存容量を実現できる。
(1)非水電解質二次電池の構成
以下、この発明の一実施形態による非水電解質二次電池の構成の一例について説明する。
図1は、この発明の一実施形態による非水電解質二次電池の構成の一例を示す断面図である。この非水電解質二次電池は、正極リード11および負極リード12が取り付けられた電池素子10をフィルム状の外装部材21の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。
正極リード11および負極リード12はそれぞれ、外装部材21の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
外装部材21は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材21は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子10とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材21と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム22が挿入されている。密着フィルム22は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
なお、外装部材21は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
図2は、図1に示した電池素子10のII−II線に沿った断面図である。電池素子10は、正極13と負極14とをセパレータ15および電解質層16を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ17により保護されている。以下、電池素子10を構成する正極13、負極14、セパレータ15および電解質層16について順次説明する。
正極13は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体13Aの両面に正極活物質層13Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、正極集電体13Aの片面のみに正極活物質層13Bを設けるようにしてもよい。正極集電体13Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層13Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料の1種または2種以上を含んでおり、必要に応じてグラファイトなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物などのリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、化1に示した層状系の構造を有するリチウム複合酸化物、または化2に示したリン酸塩系の構造を有するリチウム複合リン酸塩などが挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c2O2(c1≒1、0<c2<1)、LidMn24(d≒1)あるいはLieFePO4(e≒1)などが挙げられる。
[化1]
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z
(式中、M1はNi、Mnを除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を、Xは酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、r、y、zは0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
[化2]
LiaM2bPO4
(式中、M2は2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
負極14は、例えば、対向する一対の面を有する負極集電体14Aの両面に負極活物質層14Bが設けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負極集電体14Aの片面のみに負極活物質層14Bを設けるようにしてもよい。負極集電体14Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層14Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の1種または2種以上を含んで構成されており、必要に応じて正極活物質層13Bと同様の結着剤を含んで構成されている。
なお、この非水電解質二次電池では、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料の電気化学当量が、正極13の電気化学当量よりも大きくなっており、充電の途中において負極14にリチウム金属が析出しないようになっている。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維あるいは活性炭などの炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスあるいは石油コークスなどがある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどがある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるので好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができる。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。ここで、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素(Si)およびスズ(Sn)の少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素(Si)およびスズ(Sn)は、リチウム(Li)を吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズ(Sn)の合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素(Si)の合金としては、例えば、ケイ素(Si)以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズ(Sn)の化合物あるいはケイ素(Si)の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、MnO2、V25、V613などの酸化物、NiS、MoSなどの硫化物、あるいはLiN3などのリチウム窒化物が挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレン、ポリアニリンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
セパレータ15は、例えば、ポリイミドを含んでいる単層セパレータである。ポリイミドは、イミド基単量体の繰り返し構造を持つ長鎖状合成高分子であり、イミド結合部の反応性が乏しいため、熱安定性、機械安定性および化学安定性に優れている。セパレータ15の厚さは、1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であることが好ましい。厚さ1.0μm未満であると耐酸化性が低下してしまい、厚さ10.0μmを越えるとサイクル特性が低下してまうからである。また、セパレータ15の空孔率は、20%以上80%以下の範囲内であることが好ましい。空孔率が20%未満であると放電容量維持率が低下してしまい、空孔率が80%を越えると高温保存時の容量維持率が低下してしまうからである。
また、セパレータ15が、1種または2種以上のポリオレフィンなどの他の高分子材料をさらに含んでいてもよい。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。また、セパレータ15は、ポリイミドを含んでいる第1層と、ポリオレフィンを含んでいる第2層とが複数積層された積層構造のものであってもよい。このようなセパレータ15としては、例えば、ポリオレフィンを含んでいる第2層と、この第2層の一方の面または両方の面に設けられた、ポリイミドを含んでいる第1層とを有する積層構造のものが挙げられる。なお、ポリオレフィンを含んでいる第2層の一方の面に、ポリイミドを含んでいる第1層を設ける構成とする場合には、ポリイミドを含んでいる第1層が正極側となる構成とすることが好ましい。ポリイミドからなる第1層は耐酸化性に優れているからである。
電解質層16は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層16は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。
電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレンなどの環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
また、溶媒としては、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピルなどの鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
更にまた、溶媒としては、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチルなどが挙げられる。
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBrなどが挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性を考慮すると、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイドなどが好ましい。
また、上述の構成を有する非水電解質二次電池では、満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内であることが好ましい。4.25以上にすると、正極活物質の単位質量あたりのリチウム放出量が増大するため、高容量化・高エネルギー密度化が可能となる。すなわち、従来の最大4.20Vで作動する非水電解質二次電池では活用されなかった正極活物質の容量を活用することができる。4.50V以下にするとセパレータ15の酸化を抑えることができる。
(2)非水電解質二次電池の製造方法
以下、この発明の一実施形態による非水電解質二次電池の製造方法の一例について説明する。
まず、正極13および負極14のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させてゲル状の電解質層16を形成する。そののち、正極集電体13Aの端部に正極リード11を溶接により取り付けると共に、負極集電体14Aの端部に負極リード12を溶接により取り付ける。次いで、ゲル状の電解質層16が形成された正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ17を接着して電池素子10を形成する。最後に、例えば、外装部材21の間に電池素子10を挟み込み、外装部材21の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード11および負極リード12と外装部材21との間には密着フィルム22を挿入する。これにより、図1および図2に示した非水電解質二次電池が得られる。
また、この非水電解質二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極13および負極14を作製し、正極13および負極14に正極リード11および負極リード12を取り付けたのち、正極13と負極14とをセパレータ15を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ17を接着して、電池素子10の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材21に挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材21の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を用意し、外装部材21の内部に注入する。
電解質用組成物を注入したのち、外装部材21の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層16を形成する。以上により、図1に示した非水電解質二次電池が得られる。
この発明の一実施形態による非水電解質二次電池では、充電を行うと、正極活物質層13Bからリチウムイオンが放出され、電解質層16を介して、負極活物質層14Bに吸蔵される。次いで、放電を行うと、負極活物質層14Bに吸蔵されたリチウムイオンが放出され、電解質層16を介して正極活物質層13Bに吸蔵される。
また、この発明の一実施形態による非水電解質二次電池では、ポリイミドを含んでいるセパレータ15を用いるので、セパレータ15の耐酸化性を向上することができる。したがって、高充電圧系の非水電解質二次電池を高温保存した場合にも、セパレータ15の酸化を抑えることができる。すなわち、高温保存後であっても電池の内部ショート発生を抑制できる。
以下、実施例によりこの発明を具体的に説明するが、この発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<サンプル1〜5>
コバルト酸リチウム(LiCoO2)95重量%と、鱗片状黒鉛2重量%と、粉状ポリフッ化ビニリデン3重量%とを均一に混合して正極合剤を調製し、これをN−メチルピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。この正極合剤スラリーを、正極集電体となるAl箔の両面に均一に塗布し、100℃で24時間減圧乾燥することにより正極活物質層を形成した。
次いで、これをロールプレス機で加圧成形することにより正極シートとし、当該正極シートを帯状に切り出して正極とし、活物質の不塗布部分に幅3mmのAlリボンのリードを溶接した。
人造黒鉛95重量%と、粉状ポリフッ化ビニリデン5重量%とを均一に混合して負極合剤を調製し、N−メチルピロリドンに分散させて負極合剤スラリーとした。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体となる銅箔の両面に均一に塗布し、120℃で24時間減圧乾燥することにより負極活物質層を形成した。
次いで、これをロールプレス機で加圧成形することにより負極シートとし、当該負極シートを帯状に切り出して負極とし、物質の不塗布部分に幅3mmのNiリボンのリードを溶接した。
ヘキサフルオロプロピレンが6.9%の割合で共重合されたポリフッ化ビニリデンと、非水電解液と、希釈溶剤のジメチルカーボネート(DMC)とを混合し、撹拌、溶解させてゾル状の電解質溶液を得た。電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートを50:50の重量比で混合し、0.7kmol/kgのLiPF6を溶解して作製した。混合比は、ポリフッ化ビニリデン:電解液:DMC=1:6:12の重量比とした。次いで、得られたゾル状の電解質溶液を正極および負極の両面に均一に塗布した。次いで、50℃で3分間乾燥させた後、溶剤を除去して正極および負極の両面にゲル電解質層を形成した。
続いて、両面にゲル電解質層が形成された帯状の正極と、両面にゲル電解質層が形成された帯状の負極とを、セパレータを介して積層し、長手方向に巻回することにより電池素子を作製し、ラミネートフィルムで外装して非水電解質二次電池とした。セパレータとしては、空孔率30%、膜厚0.8μm、1.0μm、5.0μm、10.0μm、12.0μmを有し、ポリイミドからなるものを用いた。
なお、この実施例におけるセパレータの厚さは、以下のようにして求めた。すなわち、セパレータを2枚重ねてデジタルインジケータ(ソニー株式会社製、商品名:DIGITAL GAUGE STAND DZ-501)で3点計測し、その計測値に基づき平均値を算出した後、算出した平均値を2で割って求めた。
また、この実施例におけるセパレータの空孔率は、以下のようにして重量法を用いて求めた。すなわち、セパレータをその幅方向に向けて直径2cmの円形で10箇所打ち抜き、打ち抜いたセパレータの中心部の厚さhとその重量Wとをそれぞれ求め、これらの値を用いて以下の式より求めた。なお、厚さhは、円形に打ち抜いたセパレータを2枚重ねて、デジタルインジケータ(ソニー株式会社製、商品名:DIGITAL GAUGE STAND DZ-501)でその中心近傍を3点計測し、その計測値に基づき平均値を算出した後、算出した平均値を2で割って求めた。また、セパレータの重量Wは、円形に打ち抜いたセパレータ10枚をまとめて電子天秤(メトラー・トレド社製、商品名:AB204-S)で求めた。
空孔率[%]={(ρV−W)/(ρv)}×100
V=10×πr2×h
(但し、式中、V:打ち抜いたセパレータ10枚分の体積、W:打ち抜いたセパレータ10枚分の重量、ρ:セパレータ材料の密度、r:打ち抜いたセパレータの半径、h:打ち抜いたセパレータの中心部の厚さ)
<サンプル6〜10>
膜厚0.7μm、1.0μm、5.0μm、10.0μm、12.0μmを有し、ポリエチレンからなるセパレータを用いる以外はサンプル1〜5とすべて同様にして非水電解質二次電池を得た。
上述のようにして得られたサンプル1〜10について、以下のようにして保存試験後の容量維持率を求めた。
まず、23℃の環境下で1Cでの定電流充電を行い、充電電圧が所定の電圧に達した時点で定電圧充電に切り替え、総充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了した。なお、充電電圧は4.20V、4.25V、4.35V、4.50V、4.55Vと変化させた。次いで、0.5Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、初期容量(0.5C放電容量)を求めた。
次いで、同様の条件にて定電流定電圧充電を行った後、温度80℃、相対湿度50%の環境下で30日間保存した。その後、0.5Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、保存試験後の放電容量を求めた。続いて、以下の式から保存試験後の容量維持率を求めた。
保存試験後の容量維持率[%]=(保存試験後の放電容量/初期容量)×100
表1は、サンプル1〜5の保存試験後の容量維持率を示す。
Figure 2007335166
表2は、サンプル6〜10の保存試験後の容量維持率を示す。
Figure 2007335166
表1および表2から以下の傾向があることが分かる。ポリエチレンからなるセパレータでは、充電電圧が4.20Vを越えると、保存試験後の容量維持率がセパレータの膜厚に依らず著しく低下してしまう。これに対して、ポリイミドからなるセパレータでは、膜厚1.0μm未満であると、膜厚が薄すぎるために耐酸化性が低下し、保存試験後の容量維持率が低下してしまう。また、充電電圧4.50Vを越えると、膜厚に依らずセパレータが酸化し、保存試験後の容量維持率が低下してしまう。
また、上述のようにして得られたサンプル1〜5について、以下のようにして500サイクル後の容量維持率を求めた。
まず、23℃の環境下で1Cでの定電流充電を行い、充電電圧が4.35Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、総充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了した。次いで、1Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、1サイクル目の放電容量を求めた。次いで、この1サイクル目の放電容量を測定した場合と同様の条件で充放電を繰り返し、500サイクル目の放電容量を求めた。次いで、1サイクル目の放電容量および500サイクル目の放電容量を用いて、以下の式から500サイクル後の容量維持率を求めた。
500サイクル後の容量維持率[%]
=(500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
図3は、サンプル1〜5の500サイクル後の容量維持率を示すグラフである。図3から以下の傾向があることが分かる。膜厚0.8μm〜10.0μmの範囲内では、500サイクル後の容量維持率は高い値を示したのに対して、膜厚10.0μmを越えると、500サイクル後の容量維持率は著しく低下してしまう。
以上により、セパレータの膜厚は、1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であることが好ましいことが分かる。また、充電電圧は、4.50V以下にすることが好ましいことが分かる。
<サンプル11〜35>
膜厚0.8μm、1.0μm、5.0μm、10.0μm、12.0μmのセパレータそれぞれについて、空孔率を10%、20%、50%、80%、85%と変えたものを用意し、これらのセパレータを用いる以外はサンプル1〜5とすべて同様にして非水電解質二次電池を得た。
上述のようにして得られたサンプル11〜35について、以下のようにして保存試験後の容量維持率を求めた。
まず、23℃の環境下で1Cでの定電流充電を行い、充電電圧が4.35Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、総充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了した。次いで、0.5Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、初期容量(0.5C放電容量)を求めた。
次いで、同様の条件にて定電流定電圧充電を行った後、温度80℃、相対湿度50%の環境下で30日間保存した。その後、0.5Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、保存試験後の放電容量を求めた。続いて、以下の式から保存試験後の容量維持率を求めた。
保存試験後の容量維持率[%]=(保存試験後の放電容量/初期容量)×100
表3は、サンプル11〜35の保存試験後の容量維持率を示す。
Figure 2007335166
表3から以下の傾向があることが分かる。膜厚1.0μm未満であると、膜厚が薄すぎるために耐酸化性が低下し、保存試験後の容量維持率が低下してしまう。また、空孔率80%を越えると耐酸化性が低下し、膜厚に依らず保存試験後の容量維持率が低下してしまう。
また、上述のようにして得られたサンプル11〜35について、以下のようにして放電容量維持率を求めた。
まず、23℃の環境下で1Cでの定電流充電を行い、充電電圧が4.35Vに達した時点で定電圧充電に切り替え、総充電時間が2.5時間となった時点で充電を終了した。次いで、0.5Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、0.5C放電容量を求めた。次いで、この0.5C放電容量を測定した場合と同様の条件で充電を行った後、3Cでの放電を行い、電圧が3.00Vとなった時点で放電を終了し、3C放電容量を求めた。次いで、以下の式により放電容量維持率を求めた。
放電容量維持率[%]=(3C放電容量/0.5放電容量)×100
表4は、サンプル11〜35の放電容量維持率を示す。
Figure 2007335166
表4から以下の傾向があることが分かる。空孔率20%未満であると、膜厚に依らず放電容量維持率が低下してしまう。すなわち、負荷特性が低下してしまう。また、膜厚10.0μmを越えると、空孔率に依らず放電容量維持率が低下してしまう。すなわち、負荷特性が低下してしまう。
以上により、セパレータの膜厚は、1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であることが好ましく、セパレータの空孔率は、20%以上80%未満の範囲内であることが好ましいことが分かる。
以上、この発明の実施形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態および実施例において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の実施形態および実施例では、扁平型の二次電池に対してこの発明を適用した場合について説明したが、この発明は、円筒型、積層型、角型、ボタン型、コイン型およびシート型などのいずれの形状を有する二次電池にも適用できる。
また、上述の実施形態および実施例では、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状の電解質を有する二次電池に対してこの発明を適用した場合について説明したが、他の電解質を有する二次電池に対しても適用できる。他の電解質としては、液状の電解質である電解液、イオン伝導性高分子を利用した高分子固体電解質、またはイオン伝導性無機材料を利用した無機固体電解質なども挙げられ、これらを単独あるいは他の電解質と組み合わせて用いてもよい。電解液としては、例えば、上述の一実施形態に記載された電解質塩と有機溶媒を用いたものが挙げられる。高分子固体電解質に用いることができる高分子化合物としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリフォスファゼン、あるいはポリシロキサンなどが挙げられる。無機固体電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス、イオン伝導性結晶、あるいはイオン伝導性ガラスなどが挙げられる。
この発明の一実施形態による非水電解質二次電池の構成の一例を示す断面図である。 図1に示した電池素子のII−II線に沿った断面図である。 サンプル1〜5の500サイクル後の容量維持率を示すグラフである。
符号の説明
10・・・電池素子、11・・・正極リード、12・・・負極リード、13・・・正極、13A・・・正極集電体、13B・・・正極活物質層、14・・・負極、14A・・・負極集電体、14B・・・負極活物質層、15・・・セパレータ、16・・・電解質層、17・・・保護テープ、21・・・外装部材、22・・・密着フィルム

Claims (6)

  1. 厚さ1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であり、ポリイミドを含むことを特徴とするセパレータ。
  2. 空孔率20%以上80%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
  3. 正極と負極と電解質とセパレータとを備え、
    上記セパレータは、ポリイミド樹脂を含み、
    上記セパレータの厚さは、1.0μm以上10.0μm以下の範囲内であることを特徴とする二次電池。
  4. 満充電状態における単セル当たりの開回路電圧が4.25V以上4.50V以下の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の二次電池。
  5. 上記電解質は、ゲル状電解質であることを特徴とする請求項3記載の二次電池。
  6. 上記セパレータの空孔率は、20%以上80%以下の範囲内であることを特徴とする請求項3記載の二次電池。
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