JP2007332407A5 - - Google Patents
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Description
本発明は蒸着用あるいはイオンプレーティング用の導電性薄膜用蒸着材料に関するものである。
液晶ディスプレー、カラーフィルター、薄膜トランジスタ、太陽電池等に優れた透明導電膜として、インジウム・スズ酸化物(ITO)膜やインジウム・亜鉛酸化物(IZO)膜が使用されている。ITO膜は酸化インジウム(In2O3)と酸化スズ(SnO2)からなるITO焼結体を蒸発源あるいはターゲットとし、IZO膜は酸化インジウム(In2O3))と酸化亜鉛(ZnO)からなるIZO焼結体を蒸発源あるいはターゲットとする。これらの焼結体材料を使用して真空蒸着法やイオンプレーティング法によって成膜される。
これらの焼結体材料はいずれの成膜方法においても高密度であることが要求されるため、高温雰囲気における焼結が不可欠となる。高密度焼結体においては、低密度焼結体に比べ製造工程時や成膜時において材料の割れが発生しやすくなるという問題がみられる。さらにこれらの焼結体材料は成膜が進むにつれて浸食部にノジュールと呼ばれる針立ちが起こり、局所的な成膜効率の低下や異常放電の発生の原因となり膜特性の劣化を起こすことも問題となっている。
このような問題を解決するために、様々な技術が開発されている。例えばITO焼結体では、第3物質として酸化マグネシウム(MgO)を添加することにより製造工程中のクラックの発生を防止している(特許文献1参照)。また、例えばIZO焼結体では、第3物質として酸化マグネシウム(MgO)を添加することによりノジュールの発生を防止している(特許文献2参照)。
特開2003−55759号公報
特開2005−307269号公報
近年、特に太陽電池用に適した透明導電膜として、より広い波長領域において透明性を有するインジウム・タングステン酸化物膜が注目されている。
インジウム・タングステン酸化物膜は酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)からなる焼結体を蒸発源あるいはターゲットとし、真空蒸着法やイオンプレーティング法によって成膜される。
この焼結体材料はいずれの成膜方法においても高密度であることが要求されるため、高温雰囲気における焼結が不可欠となる。酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)からなる焼結体の場合、酸化タングステンの蒸発温度が低いため(単体の場合850℃程度で昇華が開始)高温焼成を行うと焼結前よりも酸化タングステン濃度が小さくなって目的の組成の焼結体が得られないという問題がある。
しかしながら特許文献1、2には酸化タングステンのような低温蒸発物質の蒸発を抑制し、高温焼成を可能にする技術は開示されていない。
また、酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)からなる高密度焼結体においても、製造工程時や成膜時における材料の割れの発生や、成膜中のノジュールの発生が問題となっているが、ITO焼結体やIZO焼結体と異なり、これまで第3物質の添加は検討されていない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)からなる焼結体において高温焼成によっても組成が変化せず安定した膜特性が得られる、蒸着用あるいはイオンプレーティング用の導電性薄膜用蒸着材料を提供することである。また、本発明の他の目的は、高密度焼結体であっても材料の割れが発生せず、成膜中にノジュールが発生しない、蒸着用あるいはイオンプレーティング用の導電性薄膜用蒸着材料を提供することである。
そこで本発明では酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)からなる焼結体において、第3物質の添加による材料の改良を検討し、酸化マグネシウム(MgO)の添加によりこの材料特有の問題である酸化タングステンの低温蒸発が抑えられ、高温焼結による高密度材料を得ることが可能となることを見出した。またこの方法により得られた高密度材料は材料の割れが起こらないこと、ノジュールの発生が抑えられることも見出した。
すなわち、本発明は、酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)と酸化マグネシウム(MgO)を主たる成分とする化合物又は混合物からなる導電性薄膜用蒸着材料において、該化合物又は該混合物のMgの含有量が0.05wt%から1.00wt%である(但し、MgがInに対する原子数比で0.007〜0.056を除く)ことを特徴とする導電性薄膜用蒸着材料である。
また、本発明は、酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)と酸化マグネシウム(MgO)の化合物又は混合物であって、1400℃以上の大気雰囲気中において焼結させた焼結体である導電性薄膜用蒸着材料である。
本発明の導電性薄膜用蒸着材料は高温雰囲気においても組成の変化が起こらず、高温焼成による高密度化が可能であり、蒸着時の電子線照射時の熱衝撃による割れが発生せず、成膜時にノジュールをほとんど発生しないため膜中に欠陥が生じない。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の導電性薄膜用蒸着材料は、具体的には酸化インジウム(In2O3)粉末及び酸化タングステン(WO3)粉末と酸化マグネシウム(MgO)粉末とを混合し、この混合物を成形した後、焼結して得られる焼結体、あるいはこの焼結体を粉砕して粉末状にし、これをさらに成形し焼成することで得られる、酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)と酸化マグネシウム(MgO)からなるものである。
本発明において使用する酸化インジウム(In2O3)粉末と酸化タングステン(WO3)粉末と酸化マグネシウム(MgO)粉末、およびこれらを成形し焼成した化合物又は混合物の粉砕粉には特に制限はなく、いずれのものでも使用できるが、混合及び焼結しやすいように適度の粒度の粉末状のものが望ましい。これらの平均粒径としては1mm以下であることが好ましい。
これにより粒子間の空孔が最適値となるため、成形密度が高められ、さらに焼成による焼結が促されるため高密度の焼結体を得ることが可能となる。
焼成は高温大気雰囲気中で行い、1400℃以上が好ましく、さらに1500℃以上が好ましい。これにより粉末原料の焼結が促され高密度の焼結体を得ることが可能となる。
Mgの含有量は0.05wt%から1.00wt%の組成である(但し、MgがInに対する原子数比で0.007〜0.056を除く)。
これよりも少ない添加量では充分な添加効果が得られず、高温焼成時に酸化タングステン(WO3)の蒸発が起こり組成が変化してしまう。またこれ以上添加した場合では、焼結体の密度が低下してしまうからである。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
重量比で95.417wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で0.083wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末(Mg含有量で0.05wt%)を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って密度3.89g/cm3の蒸着材の錠剤を得た。
この錠剤について蛍光X線分析を行ったところ、酸化タングステン(WO3)の濃度に変化は見られなかった。
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この錠剤について蛍光X線分析を行ったところ、酸化タングステン(WO3)の濃度に変化は見られなかった。
(実施例2)
重量比で93.84wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で1.66wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末(Mg含有量で1.00wt%)を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って密度3.81g/cm3の蒸着材の錠剤を得た。
重量比で93.84wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で1.66wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末(Mg含有量で1.00wt%)を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って密度3.81g/cm3の蒸着材の錠剤を得た。
この錠剤について蛍光X線分析を行ったところ、酸化タングステン(WO3)の濃度に変化は見られなかった。
(実施例3)
重量比で95.38wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で0.12wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って錠剤を得た。
重量比で95.38wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で0.12wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って錠剤を得た。
この焼結体を直径1.00mm以下の細粒状に粉砕して調整粉を作成した。さらにこの調整粉を70wt%と酸化インジウム(In2O3)粉末が30wt%となるように混合し(材料全体としてのMg含有量は0.05wt%)、この混合粉を直径25mmの成形用型を用い49MPa(500kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1400℃で5時間焼結を行って蒸着材の錠剤を得た。
この錠剤の密度は4.05g/cm3であった。
この錠剤について蛍光X線分析を行ったところ、酸化タングステン(WO3)の濃度に変化は見られなかった。
次いでこの錠剤を蒸着装置に配置された電子銃に装填し、真空度1×10−3Paになるまで排気後、基板温度300℃でO2ガスを2×l0−2Paの圧力になるように保ちながら導入し、石英基板に成膜速度0.7Å/secで膜厚が200nmになるまで蒸着した。この錠剤はノジュールおよび割れの発生もなく容易に蒸着を行うことが可能であった。
(実施例4)
重量比で93.13wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で2.37wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って蒸着材の錠剤を得た。
重量比で93.13wt%の酸化インジウム(In2O3)粉末と重量比で4.5wt%の酸化タングステン(WO3)粉末と重量比で2.37wt%の酸化マグネシウム(MgO)粉末を混合し、直径40mmの成形用型を用い78.4MPa(800kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1500℃で5時間焼結を行って蒸着材の錠剤を得た。
この焼結体を直径1.00mm以下の細粒状に粉砕して調整粉を作成した。さらにこの調整粉を70wt%と酸化インジウム(In2O3)粉末が30wt%となるように混合し(材料全体としてのMg含有量は1.00wt%)、この混合粉を直径25mmの成形用型を用い49MPa(500kgf/cm2)のプレス圧で粉末成形した後、大気雰囲気中にて1400℃で5時間焼結を行って蒸着材の錠剤を得た。
この錠剤の密度は4.42g/cm3であった。
この錠剤について蛍光X線分析を行ったところ、酸化タングステン(WO3)の濃度に変化は見られなかった。
次いでこの錠剤を蒸着装置に配置された電子銃に装填し、真空度1×10−3Paになるまで排気後、基板温度300℃でO2ガスを2×l0−2Paの圧力になるように保ちながら導入し、石英基板に成膜速度0.7Å/secで膜厚が200nmになるまで蒸着した。この錠剤はノジュールおよび割れの発生もなく容易に蒸着を行うことが可能であった。
Claims (2)
- 酸化インジウム(In2O3)と酸化タングステン(WO3)と酸化マグネシウム(MgO)を主たる成分とする化合物又は混合物からなる導電性薄膜用蒸着材料において、該化合物又は該混合物のMgの含有量が0.05wt%から1.00wt%である(但し、MgがInに対する原子数比で0.007〜0.056を除く)ことを特徴とする導電性薄膜用蒸着材料。
- 前記化合物又は前記混合物が、1400℃以上の大気雰囲気中において焼結させた焼結体である請求項1に記載の導電性薄膜用蒸着材料。
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