JP2007321854A - ピニオンシャフト及びプラネタリギヤ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラネタリギヤ装置のピニオンギヤ3を回転自在に支持するピニオンシャフト5を、かしめによってキャリヤ4に固定した。このピニオンシャフト5は、高炭素クロム軸受鋼で構成されている。そして、浸炭窒化処理,焼鈍し処理に続いて、ピニオンシャフト5の外周面のうち転走面となる部分のみに高周波焼入れ処理が施されている。ピニオンシャフト5の表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上30体積%以下であり、且つ、表層部の残留圧縮応力は500MPa以上1200MPa以下である。また、芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。さらに、表層部の旧オーステナイト結晶粒度は、粒度番号で10以上である。
【選択図】 図1
Description
その結果、前述のような従来のピニオンシャフトでは、潤滑不良等による剥離寿命が問題となる場合があった。このような場合には、ピニオンシャフトをJIS鋼種SUJ2で構成し、浸炭窒化処理等を施して寿命を確保していたが、そうすると、ピニオンシャフトをかしめによってキャリアに固定することができないので、キャリヤにねじ穴を加工してピニオンシャフトをねじで固定する必要があることから、プラネタリギヤ装置のコストが高くなるという問題点があった。
特許文献1,2には、浸炭窒化処理後に放冷するか、あるいは、焼入れ処理後に高温での焼戻し処理を施すことにより、芯部の残留オーステナイトを分解させ、さらに、外周面のうち軸受用ころの転走面となる部分に高周波焼入れ処理を施して、ピニオンシャフトを製造する方法が開示されている。
そこで、本発明は、上記のような従来技術が有する問題点を解決し、高温下において高速回転で使用しても長寿命なピニオンシャフト、及び、高温下において高速回転で使用しても長寿命で安価なプラネタリギヤ装置を提供することを課題とする。
このピニオンシャフト5は、高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)で構成されている。そして、浸炭窒化処理,焼鈍し処理に続いて、ピニオンシャフト5の外周面のうち前記針状ころが転走する部分(転走面)のみに高周波焼入れ処理が施されている。
このような熱処理が施された結果、ピニオンシャフト5には表層部と芯部とが形成される。そして、芯部の残留オーステナイト量は0体積%である。また、表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上30体積%以下であり、且つ、表層部の残留圧縮応力は500MPa以上1200MPa以下である。さらに、表層部の旧オーステナイト結晶粒度(日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定されたもの)は、粒度番号で10以上であることが好ましい。
ピニオンシャフト5の長手方向端部には高周波焼入れ処理が施されておらず、焼鈍し処理の後の物性のままであり、硬化されていないので(硬さはHv300以下である)、前述したようにピニオンシャフト5はその端部をかしめることによってキャリヤ4に固定することができる。よって、このプラネタリギヤ装置は、安価に製造することができる。
〔表層部の残留オーステナイト量について〕
残留オーステナイトは生地のマルテンサイトよりも軟質なため、ピニオンシャフトの表層部に残留オーステナイトが多く存在すると、表面損傷を与える負荷条件下においては効果的に変形エネルギーを吸収し、転走面へのダメージを抑えて高い耐久性を付与する効果がある。十分な耐久性を得るためには、表層部の残留オーステナイト量は15体積%以上とする必要がある。ただし、表層部の残留オーステナイト量が30体積%を超えると、前記効果が飽和してしまうばかりか、高温での寸法安定性が低下するおそれがある。よって、表層部の残留オーステナイト量は30体積%以下とする必要がある。
残留オーステナイトが存在すると、マルテンサイトへの変態によって塑性変形が生じる。表層部の残留オーステナイト量の影響も多少はあるが、芯部はピニオンシャフトの体積の大部分を占めることから、芯部に残留オーステナイトが存在すると、ピニオンシャフトに塑性変形が生じやすく、ピニオンシャフトの曲がりが大きくなる。よって、芯部の残留オーステナイト量を0体積%とすれば、表層部に残留オーステナイトが存在しても、ピニオンシャフトの塑性変形はほとんど生じない。
表層部の残留圧縮応力が500MPa未満であると、転動時に負荷された応力に対して有効な残留オーステナイト分解抑制効果が得られないおそれがある。一方、1200MPaを超えると表層部において応力が弾性限度を超えるため、オーステナイトの塑性変形が発生して加工誘起変態が生じ、かえって残留オーステナイトの分解が加速する。さらに、1200MPaを超えるような高周波焼入れ処理では、必然的に硬化深さが得にくい。
〔表層部の旧オーステナイト結晶粒度について〕
日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定された旧オーステナイト結晶粒度が、粒度番号で10未満(結晶粒が粗大)であると、パケット,ブロック等の内部組織が十分に微細化しないため、残留オーステナイトの分解抑制効果が十分に得られないおそれがある。
鋼中の窒素はMs点を低下させ、残留オーステナイト量を増加させる作用が強い。窒素濃度が0.05質量%未満であると前述の作用が不十分となって、残留オーステナイトを安定的に得ることが困難となり、耐久性の低下を招くおそれがある。ただし、0.6質量%超過としても、前述の作用は飽和する。
ピニオンシャフトの耐久性を十分なものとするためには、転走面となる部分の表面硬さがHv700以上であることが好ましい。
ピニオンシャフトのかしめ性に影響を与える要素として、初析炭化物の他に長手方向端部の表面硬さがある。長手方向端部の表面硬さがHv300を超えると、延性のみならず変形抵抗も増加するので、上限をHv300とすることが好ましい。本発明における熱処理によりピニオンシャフトを製造すれば、長手方向端部の表面硬さは、高周波焼入れ処理が施された転走面となる部分(硬化層)以外の領域(芯部)と同一の硬さとなる。
非金属介在物の量を少なくするためには、軸受鋼中の炭素の含有量を0.5質量%以上1.2質量%以下とすることが好ましい。このような軸受鋼としては、例えば、高炭素クロム軸受鋼や高清浄度の炭素合金鋼があげられる。また、軸受鋼中の酸素の含有量は12ppm以下とすることが好ましく、9ppmとすることがより好ましい。さらに、軸受鋼中の硫黄の含有量は150ppm以下とすることが好ましく、80ppmとすることがより好ましい。
以下に、さらに具体的な実施例を示して、本発明を説明する。高炭素クロム軸受鋼(SUJ2)製の鋼材を所定の寸法に旋削加工した後、後述する熱処理(表1,2も参照)を施し、さらに仕上げ研削加工を施すことにより、各種ピニオンシャフト(外径8mm、長さ35mm)を製造した。そして、これらのピニオンシャフトの耐久試験を行った。
耐久試験の結果を表1,2に示す。なお、表1,2中の寿命の数値は、比較例2の寿命を1とした場合の相対値で示してある。また、表層部及び芯部の残留オーステナイト量(γR 量)並びに表層部の残留圧縮応力は、転走面をX線回折装置で測定した値である。さらに、表層部の旧オーステナイト結晶粒度は、ピクリン酸と塩化第二鉄を含む溶液で腐食することにより結晶粒界を現出させた後、金属顕微鏡観察を行い、日本工業規格JIS G0551の規定により求めた。
これに対して、比較例1は芯部の残留オーステナイ量が多いため、曲がりによるエッジロードが生じて十分な耐久性が得られなかった。また、比較例2は表層部の残留圧縮応力が不十分であり、比較例3は表層部の残留オーステナイ量が多く、比較例4,5は表層部の残留オーステナイ量が不足であるため、十分な耐久性が得られなかった。
2 リングギヤ
3 ピニオンギヤ
4 キャリヤ
5,10 ピニオンシャフト
12 ニードルローラー(ころ)
Claims (2)
- プラネタリギヤ装置において使用され、同心に配されたサンギヤ及びリングギヤに噛み合うピニオンギヤを回転自在に支持する軸受鋼製のピニオンシャフトであって、残留オーステナイト量が15体積%以上30体積%以下で且つ残留圧縮応力が500MPa以上1200MPa以下である表層部と、残留オーステナイト量が0体積%である芯部と、を備えるとともに、日本工業規格JIS G0551に規定の方法で測定された前記表層部の旧オーステナイト結晶粒度が、粒度番号で10以上であることを特徴とするピニオンシャフト。
- サンギヤと、該サンギヤと同心に配されたリングギヤと、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合う1個以上のピニオンギヤと、前記ピニオンギヤを回転自在に支持するピニオンシャフトと、前記サンギヤ及び前記リングギヤと同心に配され前記ピニオンギヤが固定されたキャリヤと、を備えるプラネタリギヤ装置において、
前記ピニオンシャフトを請求項1に記載のピニオンシャフトとし、このピニオンシャフトを前記キャリヤにかしめによって固定したことを特徴とするプラネタリギヤ装置。
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WO2010130936A1 (fr) | 2009-05-15 | 2010-11-18 | Peugeot Citroën Automobiles SA | Procede de renforcement d'une piece mecanique en alliage ferreux |
WO2023080064A1 (ja) * | 2021-11-04 | 2023-05-11 | Ntn株式会社 | 軸部材及び転がり軸受 |
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JP2005351292A (ja) * | 2004-06-08 | 2005-12-22 | Nsk Ltd | プラネタリーギヤ装置 |
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