JP2007321492A - 地盤拡幅工法 - Google Patents

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Abstract

【課題】杭や地中連壁等の各種地中固結体を造成するに際して、原位置土の地上側への移動を不要とし、スラリーも発生せずに、地中に空間を形成する技術の提供。
【解決手段】剛性を有する部材(2)と膨張収縮可能な袋状部材(圧力容器3)とから成る地盤拡幅装置(1)を施工地盤(G)の所定位置に挿入する挿入工程と、袋状部材(3)に膨張用の流体(F)を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置(1)周辺の地盤(G)を押圧する膨張工程と、袋状部材(3)から膨張用の流体(F)を排出して収縮する収縮工程とを有している。
【選択図】図1

Description

本発明は、地中固結体の造成等において、地中に空間(地表まで連通する空間を含む)を形成するための技術に関する。
基礎工事で地中連壁や杭等を造成するに当たって、原位置土を地上側へ移動して(原位置土を除去して)地中に空間を形成し、形成された空間内にモルタル等を充填して地中構造物を造成する工法(特許文献1参照)や、原位置土をセメントミルク等の固結材と混合して地中構造物を造成する工法(特許文献2参照)等が存在する。
しかし、原位置土を地上側へ移動して地中に空間を形成し、形成された空間内にモルタル等を充填して地中構造物を造成する工法(特許文献1参照)では、原位置土を地上側に移動するための労力が非常に大きくなってしまうという問題を有しており、特に、地中深い位置に空間を形成した場合には、原位置土を地上側へ移動するための労力が莫大なものとなってしまう。
さらに、地上側へ移動された原位置土は、建築発生土或いは産業廃棄物として処理しなければならず、当該処理のための費用が嵩んでしまう。
原位置土をセメントミルク等の固結材と混合して地中構造物を造成する工法(特許文献2参照)では、原位置土を地上側へ移動するための労力は必要ではないが、原位置土を切削して固結材と混合する際に、いわゆる「スラリー」が地上側に溢れ出てしまう。このスラリーは産業廃棄物であり、施工現場に放置することはできず、処理をする必要がある。すなわち、係る従来技術(特許文献2参照)では、スラリーを処理しなければならず、その分だけ労力或いはコストが嵩んでしまう。
特開2006−70608号公報 特許第3255254号公報
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、杭や地中連壁等の各種地中固結体を造成において、原位置土を地上側に移動する必要が無く、スラリーも発生することなく、地中に空間を形成する技術の提供を目的としている。
発明者は種々研究の結果、杭や地中連壁等の地中固結体を造成するに際して、地中に形成するべき空間の鉛直方向寸法(深さ方向寸法或いは深度)は非常に大きい(例えば、100m程度)が、杭の半径或いは地中連壁の幅は比較的小さく、例えば、杭の半径であれば1m程度で、地中連壁の幅であれば2m程度であることに着目した。
本発明の地盤拡幅工法は、剛性を有する部材(例えば鋼板、シートパイル、鋼材その他の構造部材:2)と膨張収縮可能な袋状部材(圧力容器3)とから成る地盤拡幅装置(1)を施工地盤(G)の所定位置に挿入する挿入工程と、袋状部材(3)に膨張用の流体(圧力容器膨張用流体:例えば高圧水:W)を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置(1)周辺の地盤(G)を押圧する膨張工程と、袋状部材(3)から膨張用の流体(W)を排出して収縮する収縮工程、とを有していることを特徴としている(請求項1)。
本明細書において、「挿入」なる文言は、押圧力を付加しつつ挿入する圧入、振動を付加しながら行われる挿入、ジェットで切削しつつ行われる挿入等を包含する文言として用いられている。
本発明において、前記収縮工程に際して、圧力容器(3)が膨張した状態から収縮した状態に移行することにより地中に形成された空間(E)を維持するため、当該空間(E)に安定用流体(例えばベントナイト等の安定液)を充填する工程を実行する場合が存在する(請求項2)。
ここで、安定用流体の充填は、袋状部材(3)から膨張用の流体(W)が排出してから行っても良いし、袋状部材(3)から膨張用の流体(W)を排出するのと同時に行っても良い。
或いは、地盤拡幅装置(1)の袋状部材(圧力容器3)の表面部には複数の保持部材(4)が設けられており、当該保持部材(4)は袋状部材(3)が膨張するのに従って変形するが、袋状部材(3)が収縮しても膨張時の状態を保持し続ける様に構成する場合が存在する(図14:請求項3)。
本発明において、前記膨張工程に先立って、地盤拡幅装置(1)が挿入された領域周辺の地盤(G)を切削する工程を実行する場合が存在する(図10の[10−4]:請求項4)。
また本発明の地盤拡幅工法は、地中に空間を形成するべき領域の一部を切削(して、溝或いは孔(5)を形成)する切削工程と、当該切削された領域(溝或いは孔:5)に膨張収縮可能な袋状部材(圧力容器3)を挿入する挿入工程と、袋状部材(3)に膨張用の流体(圧力容器膨張用流体:例えば高圧水:W)を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置(1)周辺の地盤(G)を押圧する膨張工程と、袋状部材(3)から膨張用の流体(W)を排出して収縮する収縮工程、とを有していることを特徴としている(請求項5)。
ここで、切削工程が行われている際に挿入工程を行っても良いし(図8)、或いは、切削工程が完了してから挿入工程を行っても良い(図10)。
なお、前記挿入工程に先立って、地盤拡幅装置(1)が挿入された領域周辺の地盤(G)を切削する工程を実行しても良い(図10の[10−4]:請求項6)。
上述する構成を具備する本発明の地盤拡幅工法によれば、袋状部材(3)に膨張用の流体(圧力容器膨張用流体:例えば高圧水:W)を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置(1)周辺の地盤(G)を押圧する膨張工程を有しているので、膨張された袋状部材(圧力容器3)により地盤拡幅装置(1)周辺の地盤(G)が押圧される。そして、本発明の収縮工程(袋状部材3から膨張用の流体Wを排出して収縮する収縮工程)で袋状部材(3)が収縮すれば、袋状部材(3)の膨張時に押圧された周辺地盤(G)の分だけ空間(E)が形成される。
例えば止水壁の造成に際しては、形成された空間に遮水機能を持ったシート(遮水シート6)を設置して、止水性の充填材(例えばセメントミルク:7)を充填すれば良い。例えば構造杭の造成に際しては、形成された断面円形の空間(E)中に構造部材(2)を立てこみ、充填材(7)を充填すれば良い。この様に、本発明により形成された地中の空間(E:地上側に連通している空間を含む)に対して、造成するべき構造物に対応して、必要な工程を実施することが出来るのである。
なお、「充填材」なる文言は、固化材や粘土鉱物等を包含する意味で用いられている。
ここで、本発明であれば地盤(G)を掘削して空間(E)を形成している訳ではないので、地盤(G)を地上側に移動させる必要が無い。また、固結材や切削流体を噴射してもいないので、産業廃棄物として処理しなければならないスラリーは発生しない。
また本発明によれば、剛性を有する部材(例えば鋼板2、シートパイル2C、鋼材その他の構造部材)と膨張収縮可能な袋状部材(圧力容器3)とから成る地盤拡幅装置(1)を施工地盤(G)の所定位置に挿入する様に構成されているので、膨張収縮可能な袋状部材(圧力容器3)が可撓性材料で製造されていても、剛性を有する部材(2)と共に、施工現場の地盤(G)に挿入可能である。
ここで、上述した通り、杭は半径が1m程度であり、地中連壁は幅寸法が最大でも2m程度である場合が多いので、圧力容器(3)の膨張は、周辺地盤(G)を1m程度押圧出来る程度で足りる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1及び図2を参照して第1実施形態を説明する。
図1、図2の第1実施形態は、本発明を止水壁の施工に適用した実施形態である。
ここで、図示の実施形態に係る地盤拡幅工法において使用される地盤拡幅装置1は、剛性を持つ金属部材2と袋状の可撓性材料から成る圧力容器3とが一体となっている。
地盤拡幅装置1は剛性が無いと、地中に建て込むことが出来ない。剛性を持つ金属部材として、板状部材(例えば鋼板)2、シートパイル(鋼矢板)2C、H鋼2H等の鋼材等が適用可能である。
また、圧力容器3には、地盤拡幅装置1を地中に挿入する際に破損しない程度の耐磨耗性その他の耐性が必要である。
先ず、図1、図2の第1実施形態で用いられる地盤拡幅装置1の構成を説明する。
図1において、例えば鋼板の様な板状の鋼材(板状部材)2は、剛性を持つ金属部材(構造部材)である。板状部材2の表裏2面には圧力容器(膨脹収縮可能な袋状部材)3が取り付けられている。
図1の[1−1]は、圧力容器が収縮した状態を示し、図1の[1−2]は圧力容器が膨張した状態を示している。
図1では明示されていないが、板状部材2の両面に設けられた圧力容器3は、図1では図示されない圧力容器膨張用流体供給配管により、膨張用流体(例えば高圧水)Wが供給可能に構成されている。
圧力容器3に充填する膨張用流体Wは、圧力容器3内への充填及び圧力容器3からの排出が可能な流体であれば、特に限定はしない。
なお、図1で示す地盤拡幅装置1に代えて、図11を参照して後述する地盤拡幅装置1Dを用いても良い。
図2は、第1実施形態における施工手順を、工程毎に説明している。
図2の[2−1]で示す工程では、板状部材2と圧力容器3とで構成された地盤拡幅装置1を地盤Gに挿入している。地盤拡幅装置1の地盤Gへの挿入に際しては、2箇所に削孔(図2の[2−2]〜[2−6]参照)したガイド孔5の一方のガイド孔5と連通する位置にて、地盤拡幅装置1を挿入する。
図2の[2−2]では、一方のガイド孔5から他方のガイド孔5に至る領域の地盤G全域に、連続して、複数(図示では3個)の地盤拡幅装置1を挿入していく。
図2の[2−3]では、圧力容器3に膨張用流体(例えば高圧水)Wを供給して、複数の圧力容器3を膨張させる。
図2の[2−4]で示す工程では、圧力容器3から膨張用流体(例えば高圧水)Wを排出して、圧力容器3を収縮する。そして、圧力容器3が収縮した状態の地盤拡幅装置1を、地盤Gから引き抜く。図2の[2−4]では、地盤拡幅装置1が引き抜かれた跡に空間Eが形成されている状態が示されている。
図2の[2−5]では、維持した空間Eに、遮水機能を持ったシート(遮水シート)6を設置する。詳細には、遮水シート6を、一方(図2の左側)のガイド孔5から、他方(図2の右側)のガイド孔5まで設置し、当該遮水シート6を地盤Gに対する上方(図2の紙面に垂直な方向で手前側)から建て込む。
図2の[2−6]で示す工程では、空間Eに不透水性のグラウト7を充填する。以って、遮水壁の造成が完了する。
図1、図2で示す第1実施形態によれば、図2の[2−4]で示す工程において、空間Eを形成するにあたって、当該空間Eの原位置土を、掘削その他の手法によって地上側に移動する必要は無い。そして、高圧水ジェット等により掘削を行う場合とは異なり、スラリーは発生しない。
従って、上述した様な問題が解消されるのである。
次に、図3、図4を参照して第2実施形態を説明する。
図3は第2実施形態で用いられる地盤拡幅装置1Aの構成を示している。第2実施形態では、構成である剛性を持つ金属部材として、シートパイル2Cを使用している。そしてシートパイル2Cにおいて、水平部2Caの湾曲した側と、傾斜部2Cb(2箇所)の外側の合計3箇所に、圧力容器3が取り付けられている。
図3の[3−1]は、圧力容器3が収縮した状態を示し、[3−2]は圧力容器3が膨張した状態を示している。
図3では明示されていないが、シートパイル2Cに設けられた圧力容器3は、図3では図示されていない圧力容器膨張用流体供給配管により、膨張用流体(例えば高圧水)が供給可能に構成されている。
図4は第2実施形態の手順を工程毎に示しており、第1実施形態における図2と対応している。すなわち、図4の[4−1]〜[4−6]は、図2の[2−1]〜[2−6]に、それぞれ対応している。
先ず、図4の[4−1]では、シートパイル2Cと3つの圧力容器3(図4の[4−1]、[4−2]では図示を省略)とで構成された地盤拡幅装置1Aを、施工領域の地盤Gに挿入している。地盤拡幅装置1Aの地盤Gへの挿入に際しては、2箇所に削孔したガイド孔5の一方(左方)のガイド孔5と連通する様に、地盤拡幅装置1Aを挿入している。
図4の[4−2]では、一方のガイド孔5から他方のガイド孔5に至る領域の地盤G全域に、連続して、複数(図示では3個)の地盤拡幅装置1Aを挿入していく。
図4の[4−3]では、圧力容器3に膨張用流体(例えば高圧水)Wを供給して、圧力容器3を膨張させる。
図4の[4−4]では、圧力容器3から膨張用流体(例えば高圧水)Wを排出して、圧力容器3を収縮する。そして、圧力容器3が収縮した状態の地盤拡幅装置1Aを、地盤Gから引き抜く。地盤拡幅装置1Aが引き抜かれた跡には空間Eが形成される。
図4の[4−5]では、維持した空間Eに、遮水シート6を設置する。詳細には、遮水シート6を一方(図4の左側)のガイド孔5から他方(図4の右側)のガイド孔5まで設置して、地盤Gに対する上方(図4の紙面に垂直な方向で手前側)から、当該遮水シート6を地中に設置する。
図4の[4−6]では、前記空間Eに不透水性の充填材7を充填する。
以って、遮水壁の造成が完了する。
なお、図4の[4−5]で示す遮水シート6の設置を省略しても良い。
この第2実施形態においても、原位置土を地上に移動する必要が無く、スラリーも発生しない。従って、原位置土を地上に移動するためのコストと、産業廃棄物であるスラリー処理のためのコストが、発生しない。
次に、図5を参照して第3実施形態を説明する。
図5の第3実施形態は、図1で示す地盤拡幅装置1を用いて、土留壁を造成する実施形態である。
図5の[5−1]〜[5−6]で示す各工程は、図2の[2−1]〜[2−6]で示す止水壁造成に係る実施形態の各工程と、概略対応している。
但し、図2で示す止水壁造成では、圧力容器3を収縮して撤去した後(図2の[2−4]で示す工程の後)、地中に形成された空間E中で遮水シート6を設置してから(図2の[2−5]参照)、充填材7を充填している(図2の[2−6]参照)。
これに対して、図5で示す土留壁造成の実施形態では、圧力容器3を収縮して撤去した後(図5の[5−4]で示す工程の後)、地中に形成された空間中に充填材(ソイルモルタル)7を充填(図5の[5−5]で示す工程)した後、例えばH鋼材のような芯材8或いは構造部材を、充填材(ソイルモルタル)7が充填された空間中に建て込んでいる(図5の[5−6]で示す工程)。
この第3実施形態においても、地盤を地上に移動する必要が無く、スラリーも発生しない。
図5で示す第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1、図2の第2実施形態と同様である。
次に、図6を参照して第4実施形態を説明する。
図6の第4実施形態は、図3で示す地盤拡幅装置1Aを用いて、土留壁を造成する実施形態である。
図6の[6−1]〜[6−6]で示す各工程は、図4の[4−1]〜[4−6]の各工程に概略対応している。
但し、図4で示す止水壁造成では、圧力容器3を収縮して撤去した後(図4の[4−4]で示す工程の後)、地中に形成された空間E中で遮水シート6を設置(図5の[5−5]の工程参照)してから、充填材7を充填している(図5の[5−6]参照)。
これに対して、図6で示す土留壁造成では、圧力容器3を収縮して撤去した後(図6の[6−4]で示す工程の後)、地中に形成された空間中に充填材7を充填し(図6の[6−5]で示す工程)、充填材7が充填された空間E中に、例えばH鋼材のような芯材8或いは構造部材を建て込んでいる(図6の[6−6]で示す工程)
この第4実施形態においても、地盤を地上に移動する必要が無く、スラリーも発生しない。
図6で示す第4実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図3、図4の第3実施形態と同様である。
次に、図7を参照して、本発明の第5実施形態を説明する。
第1実施形態〜第4実施形態では、図2、図4、図5、図6の各々において、符号[2−2]、[4−2]、[5−2]、[6−2]で示す各工程を参照すれば明らかな様に、地中連壁(止水壁或いは土留壁)を造成するべき全領域に亘って地盤拡幅装置1、或いは地盤拡幅装置1Aを配置し、地中連壁を造成するべき全領域に亘って一度に圧力容器3を膨張させて、地中に空間Eを形成している。
これに対して、図7の第5実施形態では、全領域に亘って地中に空間を形成せずに、一定の領域毎に、地盤拡幅装置1Bの挿入及び膨張により、空間を形成することを繰り返している。
以下、図7を参照して、第5実施形態の施工手順を説明する。
図7は、深度方向の長さ(深さ:例えば地表から深度15m)の全域について、空間を維持しつつ、パイル等の造成を行う場合について示している。
図7の[7−1]で示す工程では、「地盤拡幅装置(図7では板状の地盤拡幅装置1B)を地盤G中へ挿入する(例えば深度5mまで挿入)。そして、図7の[7−2]で示す工程で、地盤拡幅装置1Bの先端部の圧力容器3を膨張させて、空間E1を形成する。
図7の[7−3]で示す工程では、地盤拡幅装置1Bの先端部の圧力容器3を収縮させる。
そして図7の[7−4]で示す工程では、形成された空間E1の底部から更に下方に向かって地盤拡幅装置1Bを挿入する。
図7の[7−5]で示す工程において、地盤拡幅装置1Bの先端部の圧力容器3を膨張させて、空間E2を形成する。
図7の[7−6]で示す工程では、地盤拡幅装置1Bの先端部の圧力容器3を収縮させる。
図7の[7−7]で示す工程においては、形成された空間E2の底部から更に下方に向かって地盤拡幅装置1Bを挿入する。
以下、同様にして、空間の形成と維持とを繰り返す。
この第5実施形態においても、地盤を地上に移動する必要が無く、スラリーも発生しない。従って、形成された空間の原位置土を地上に移動させるためのコストや、スラリー処理のためのコストも発生しない。
図7の[7−2]、[7−3]、[7−5]、[7−6]で示す工程等において、圧力容器3を膨張した後に収縮する際に、膨脹した空間Eが崩壊することを防止するため、泥水(例えばベントナイト溶液)を充填することが好ましい。但し、空間Eの崩壊防止のために充填される泥水は、ベントナイト溶液に限定する必要はなく、その他の安定液を使用しても良いし、水を使用しても良い。
尚、安定液を充填するに際しては、圧力容器3を減圧しながら、適宜、安定液を注入するのが好ましい。即ち、図7の[7−3]及び[7−6]で示す工程では、圧力容器3を収縮しながら、安定液を空間E1、及びE2内に充填させるのが好ましい。
図8は、本発明の第6実施形態を示す。
図1〜図7の各実施形態では、圧力容器3は剛性を有する材料である板状部材2と一体に構成されているが、図8の第6実施形態では、圧力容器3は剛性を有する部材と一体には構成されていない。それに代えて、図8の第6実施形態では、圧力容器3は、高圧水ジェットWJを噴射して地盤を切削する地盤切削装置23と一体になっている。
図8において、圧力容器3の地中側先端(図8における下方端)には、地盤切削装置23が設けられている。地盤切削装置23には複数のノズル3nが設けられており、ノズル3nからは高圧水ジェットWJが噴射される。
明確には図示されていないが、地盤切削装置23には、高圧水供給ライン(切削流体供給ライン)が接続されており、高圧水供給ラインは地上に設けられており且つ図示しない高圧水ポンプに接続されている。
ここで、圧力容器3の幅寸法Wは、地中に形成するべき空間の幅と同一であっても良い。或いは、圧力容器3の幅寸法Wは形成するべき空間の幅の1/n(nは2以上の整数)であっても良い。
圧力容器3の幅寸法Wが形成するべき地中空間の幅の1/n(nは2以上の整数)である場合には、図1〜図6で示す様に、複数の圧力容器3を幅寸法方向に並べて配置しても良いし、或いは、図7の実施形態の様に、図8の圧力容器3による地中空間の形成を繰り返して行っても良い。
図8において、矢印Dは圧力容器3の挿入方向を示しており、矢印Sは高圧水ジェットWJの噴射及び地盤切削により生じたスラリーの流れを示している。
図8の第6実施形態では、ノズル3Nから高圧水ジェットWJを噴射して地盤Gを溝状に切削し、切削された領域に圧力容器3を挿入する。明確には図示されていないが、高圧水ジェットWJにより切削される溝において、図8の紙面に垂直な方向の寸法(厚み)は、収縮状態の圧力容器3が挿入可能な程度ではありが、形成が予定される空間の当該寸法(厚み)に比較すれば極めて小さい。
所定深度まで圧力容器3を挿入したならば、図示しない圧力容器膨張用流体供給配管により、膨張用流体(例えば高圧水)を圧力容器3へ供給して、圧力容器3を膨張する。そして、圧力容器3を収縮すれば、地盤Gに空間が形成されるのである。
図8の第6実施形態において、高圧水ジェットWJを噴射して地盤Gを切削するため、スラリーSが発生する。しかし、高圧水ジェットWJにより切削される溝の図8の紙面に垂直な方向の寸法(厚み)は、形成が予定される空間の当該寸法(図8の紙面に垂直な方向の寸法或いは厚み)に比較すれば極めて小さいため、切削する領域の面積は極めて小さい。そのため、従来の工法に比較して、高圧水ジェットWJによる切削の労力が極めて少なくて済む。
図8の第6実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、図1〜図7の各実施形態と同様である。
次に、図9を参照して、本発明の第7実施形態を説明する。
図1〜図8の各実施形態は、地中連壁の造成に係る実施形態である。これに対して図9の第7実施形態は、杭の造成に係る実施形態である。
図9の第7実施形態で使用される地盤拡幅装置1Cは、H鋼に圧力容器を設けている。
図9の[9−1]において、地盤拡幅装置1Cは、剛性を有する部材であるH鋼2Hと、H鋼2Hの上下のフランジ2Hf、2Hfの上下面と、ウェブ2Hwの左右両側面には、それぞれ圧力容器3(合計4個の圧力容器3)が設けられている。
図9の[9−1]では、そのように構成された地盤拡幅装置1Cを膨張させないで、施工領域の地盤に挿入する状態が示されている。
図9の[9−2]では、地盤拡幅装置1Cの圧力容器3を膨脹させ、地中Gに空間Eを形成した状態が示されている。そして、図9の[9−2]で示すように形成した空間Eに、モルタル等を充填すれば、杭が造成される。
この第7実施形態においても、杭の造成に際して、原位置土を地上に移動する必要が無く、スラリーも発生しない。
図9の第7実施形態において、[9−2]で示す状態において、空間Eを形成した後、地盤拡幅装置1C(H鋼2H及び収縮した圧力容器3)を、そのまま地中に配置した状態で、モルタル等を充填しても良い(地盤拡幅装置1Cを埋め殺す)。
或いは、圧力容器3で形成した空間Eから(圧力容器3は収縮した状態で)地盤拡幅装置1Cを地中から抜き出し、その後、空間E内にモルタル等を充填し、地盤拡幅装置1Cを他の箇所における杭の造成で再利用する様に構成すれば、経済的である。
ここで、圧力容器3で空間を形成した後(図9の[9−2]で示す状態)、圧力容器3を収縮して、地盤拡幅装置1Cを地中から抜き取り、別の構造材(例えば、H鋼)を建て込んで、モルタル等を充填しても良い。この場合、モルタル等を充填した後に、別の構造材(例えば、H鋼)を建て込んでも良い。
ここで、図9で示す工程においても、深度方向全領域に亘ってH鋼2Hを埋め込んで、圧力容器3の膨張を一度に行っても良い。或いは、図7で示す地中連壁造成と同じ要領で、所定の深度毎に、H鋼2H(圧力容器3を取り付けた地盤拡幅装置1CとしてのH鋼2H)を所定深度まで挿入し、圧力容器3を膨張し、圧力容器3を収縮し、それを繰り返して、複数段に亘る施工により鉛直方向(深度方向)の空間を形成しても良い。
複数段に亘る施工(所定の深度毎に、挿入、圧力容器の膨張、収縮を繰り返す施工方法)により、鉛直方向(深度方向)の空間を形成するに際して、圧力容器3を収縮させた際に、地山の崩壊を防止して形成された空間を維持するため、図7の第5実施形態で説明したのと同様に、形成された空間E中にベントナイト等の安定液を充填する事が出来る。
或いは、図14を参照して後述する様に、保持部材4を圧力容器3の外周部に取り付けておくことも可能である。
なお、図9の[9−2]において、符号「50」で示す円は、圧力容器3を膨脹させた際に、周囲の土が半径方向外方に押し付けられた境界を示す仮想線である。
図9の第7実施形態では、剛性を有する部材(構造部材)としてH鋼2Hが示されているが、H鋼に限定する趣旨ではない。例えば、丸棒状の鋼材における円周に円環状の圧力容器を取り付けて、地盤拡幅装置を構成することが可能である。
次に図10を参照して第8実施形態を説明する。
図10の第8実施形態は、図9の第7実施形態を用いて地盤中に形成した空間を利用して、連続壁を造成する実施形態である。
先ず、連続壁を施工するべき領域の両端部分に、図9の第7実施形態により、断面円形の空間50を維持する。そして、形成された断面円形の空間(孔)50から地盤拡幅装置(図9の実施形態では、H鋼2Hに圧力容器3を組み合わせた装置)1Cを撤去する。
ここで、円形の空間50が保持できない可能性がある場合には、安定液を充填する。
次に図10の[10−1]で示す様に、地中に維持された断面円形の孔50内に高圧水ジェット噴射ノズル9を配置して、高圧水ジェット噴射ノズル9を下方へ移動させつつ高圧水ジェットを噴射して、地盤中に薄い溝状の空間55を形成する。
前記ノズル9を上下動するに際して、高圧水ジェットの噴射方向を一定に保持するためのガイド部材として、図示しないガイド用H鋼を円形の孔50に挿入しても良い。
図10の[10−2]で示す工程では、形成された薄い溝状の空間55に、圧力容器3を挿入する。ここで、圧力容器3を挿入することに代えて、例えば図1で示す様な地盤拡幅装置1を挿入するか、或いは、図11を参照して後述するような地盤拡幅装置1Dを挿入することも可能である。
また、明確には図示されていないが、図10の[10−1]及び[10−2]で示す工程に代えて、図8で示す様に、高圧水ジェットで地盤を切削するのと同時に、圧力容器3を挿入することが可能である。
図10の[10−3]で示す工程では、図示しない圧力容器膨張用流体供給配管を介して膨張用流体(例えば高圧水)を地盤拡幅装置1へ供給し、圧力容器3を膨張させる。
この第8実施形態においても、原位置土を地上に移動する必要は無い。
図10の[10−1]で示す工程において、薄い溝状の空間55を形成する際に極微量のスラリーが発生するが、その発生量は従来工法に比較すれば、無視出来るほど少ない。
図10の[10−4]で示すように、地盤Gが固く、圧力容器3が膨張し難い場合に、図10の[10−3]における圧力容器3を膨張する工程に先立って、超高圧ジェットJで固い地盤Gを切削して、地盤Gを緩めてやり、以って、圧力容器3が膨張できるようにすることも可能である。
図10で説明した第8実施形態においては、図10の[10−2]の工程において、図1(或いは図11)で示す様な地盤拡幅装置1(或いは、1D)に代えて、圧力容器3のみを図10の[10−1]の工程で形成された溝55内に挿入しても良い。
その場合、剛性に乏しい圧力容器3を容易に挿入出来る様にするため、図10の[10−4]で示す様に、溝55の周囲の地盤を高圧ジェットJで切削して、地盤Gを緩めてやるのが好ましい。
次に、図11を参照して、地盤拡幅装置の変形例(地盤拡幅装置1D)を説明する。
図1の地盤拡幅装置1では、圧力容器3が地盤Gに直接接触して、損傷する可能性が有る。そこで、図11の地盤拡幅装置1Dは、圧力容器3Aが地盤に直接接触して損傷するのを防止するため、圧力容器3Aが地盤Gに直接接触しない様に構成されている。
すなわち、地盤拡幅装置1Dでは、1対の板状部材2、2とその1対の板状部材2、2の各々の対向する側にのみ、圧力容器3、3を配置して構成されている。
換言すれば、図11で示す地盤拡幅装置1Dにおいては、圧力容器3、3は、膨張した際に、板状部材2或いはその他の圧力容器3とのみしか接触しないので、直接地盤Gに接触することによる損傷が防止されるのである。
図11の[11−1]では、上述の地盤拡幅装置1Dを施工領域の地盤Gに挿入する。この時、上述の地盤拡幅装置1Dにおける1対の圧力容器3は収縮した状態であり、板状部材2、2は接近している。
図11の[11−2]では、対向した一対の圧力容器3、3を膨張させる。
2個の圧力容器3、3が膨張すると互いに、対抗する側の圧力容器3を押し退けようとするので、2枚の板状部材2、2は相後に離隔する方向(図11の[11−2]では上下に離隔する方向)に移動し、その際に、地盤Gを押圧して空間Eが形成される。
図11の[11−3]では、圧力容器3を減圧して収縮させる。
その後、例えば充填材を、地盤拡幅装置1Dにより形成された空間Eに充填させて、地中連壁を造成する。
次に図12を参照して、地盤拡幅装置の第2変形例(地盤拡幅装置1E)を説明する。
図12の[12−1](側面図)において、地盤拡幅装置1Eは、1対の板状部材2、2と、その板状部材2、2に挟まれるように配置された複数(図12では4個)の圧力容器3とを有している。ここで、同一地盤であれば、深度が深い方が土圧は高く、圧力容器3が膨張し難い。そのため地盤拡幅装置1Eでは、深度が深い側の圧力容器3から膨らむように構成されている。例えば、図12における4つの圧力容器3の材質を、上下の圧力容器で変更して、上方の圧力容器よりも、下方の圧力容器の方が膨らみ易く構成するのが好ましい。なお、図12の[12−2]は、地盤拡幅装置1Eの板状部材2の正面から見た状態を示している。
次に図13を参照して、地盤拡幅装置の第3変形例を説明する。ここで、図13で示す地盤拡幅装置の第3変形例は、全体を符号「1F」で示されている。
図13の[13−1](側面図)において、地盤拡幅装置1Fは、上下方向に連続して4対の板状部材2、2が設けられ、各々の板状部材2、2の対には、圧力部材3が挟まれるように配置されている。そして、4対の4対の板状部材2、2は、板状部材2、2の正面から見た際には(図13の[13−2]参照)上下方向に延在する中心軸が共通しており、且つ、図13の[13−1]で示すように、左右対称に構成されている。
ここで、図13で示すように、上下方向に亘って圧力容器3が配置されている場合に、深度方向全域に亘って均一に膨張するのでは、圧力容器3を膨脹するのに必要な力が大きくなり過ぎる。
第3変形例(地盤拡幅装置1F)においては、深度毎に複数の対或いはブロックに分割して、ブロック毎に膨脹させるように構成している。そのため、上下方向に限られた範囲に延在する各ブロック毎に、圧力容器3を膨張するのであれば、膨張するのに必要な力を比較的低く抑えられる。
図13の[13−2]は、分割された板状部材2の正面方向から見た状態を示している。
次に、図14及び図15を参照して、地盤拡幅装置の第4変形例(地盤拡幅装置1G)を説明する。
例えば、図10の第8実施形態では、円形の空間50を形成した後に、当該空間50に安定液を充填して、土圧等により当該空間が崩壊してしまうことを防止している。
図14の第4変形例(地盤拡幅装置1G)は、安定液を充填しなくても、形成された空間の崩壊が防止できるように構成された実施形態である。
図14の[14−1]は、地盤拡幅装置1G(の圧力容器3B)が収縮した状態を示したものである。
図14の[14−1]において、地盤拡幅装置1Gは、内部にH鋼による芯材8を有し、その芯材8に備えられた4個の圧力容器3と、芯材8を取り巻く様に配置された複数の保持部材(外殻部材)4とで構成されている。
尚、図14の[14−1]において、芯材8の長手方向が紙面に垂直方向であるため、複数の保持部材4は1個のみが見える。
図14の[14−1]における白抜きの矢印は、圧力容器3が収縮状態から膨張していく方向を示している。
当該保持部材4の端部は、図15で示すように、両端部にラッチR、Rが形成されている。
そのため、図14の[14−2]に示すように圧力容器3が膨張した際は、当該保持部材4の両端部のラッチR、Rが滑って(図15の矢印A、Aで示す方向の動き)、図14の[14−2]で示す保持部材4の外径Dが大きくなる。
しかし、その後に圧力容器3が収縮しても、両端部のラッチR、Rは相互に係合した状態を維持するので、保持部材4の端部は、図14の[14−2]に示す状態から図14の[14−1]に示す状態に戻るべく、ラッチR、R同士の係合により、図15の矢印B、B方向へ移動することはできない。その結果、保持部材4は外径が大きくなった状態を維持する。
即ち、圧力容器3が収縮してできた空間Eの内壁面に土圧が作用しても、保持部材(外殻部材)4のラッチR、R同士の係合によって、図15の矢印B、B方向へ移動が制限されるので、図14の[14−2]で示す状態を維持する。その結果、空間Eの内壁面は空間Eの内側に崩壊することはない。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、押圧力を付与しつつ挿入することに代えて、振動を付加して挿入し、或いは、ジェットにより地盤を切削しつつ挿入することが可能である。
本発明の第1実施形態で用いる地盤拡幅装置を示す様態図。 本発明の第1実施形態の止水壁施工工程図。 本発明の実施形態で用いる地盤拡幅装置を示す様態図。 本発明の第2実施形態の止水壁施工工程図。 本発明の第3実施形態の止水壁施工工程図。 本発明の第4実施形態の止水壁施工工程図。 本発明の第5実施形態の止水壁施工工程図。 本発明の第6実施形態を示す正面図。 本発明の第7実施形態の杭施工工程図。 本発明の第8実施形態の連続壁施工工程図。 本発明の地盤拡幅装置の変形例による施工工程図。 本発明の地盤拡幅装置の第2変形例による施工工程図。 本発明の地盤拡幅装置の第3変形例による施工工程図。 本発明の地盤拡幅装置の第4変形例による施工工程図。 図14のQ部詳細図。
符号の説明
1・・・地盤拡幅装置
2・・・剛性を有する部材/板状部材
2C・・・シートパイル
2H・・・H鋼
3・・・袋状部材/圧力容器
4・・・保持部材/外殻部材
5・・・溝、或いは孔/ガイド孔
6・・・遮水シート
7・・・充填材
8・・・芯材
9・・・高圧水噴射ジェット
50・・・空間/孔
55・・・薄い溝状の空間
F・・・膨張用流体
G・・・地盤

Claims (6)

  1. 剛性を有する部材と膨張収縮可能な袋状部材とから成る地盤拡幅装置を施工地盤の所定位置に挿入する挿入工程と、袋状部材に膨張用の流体を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置周辺の地盤を押圧する膨張工程と、袋状部材から膨張用の流体を排出して収縮する収縮工程、とを有していることを特徴とする地盤拡幅工法。
  2. 前記収縮工程に際して、圧力容器が膨張した状態から収縮した状態に移行することにより地中に形成された空間に安定用流体を充填する工程を有する請求項1の地盤拡幅工法。
  3. 前記地盤拡幅装置の袋状部材の表面部には複数の保持部材が設けられており、当該保持部材は袋状部材が膨張するのに従って変形するが、袋状部材が収縮しても膨張時の状態を保持し続ける様に構成されている請求項1の地盤拡幅工法。
  4. 前記膨張工程に先立って、地盤拡幅装置が挿入された領域周辺の地盤を切削する工程を実行する請求項1〜3の何れか1項の地盤拡幅工法。
  5. 地中に空間を形成するべき領域の一部を切削する切削工程と、当該切削された領域に膨張収縮可能な袋状部材を挿入する挿入工程と、袋状部材に膨張用の流体を供給して膨張せしめて地盤拡幅装置周辺の地盤を押圧する膨張工程と、袋状部材から膨張用の流体を排出して収縮する収縮工程、とを有していることを特徴とする地盤拡幅工法。
  6. 前記挿入工程に先立って、地盤拡幅装置が挿入された領域周辺の地盤を切削する工程を有する請求項5の地盤拡幅工法。
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