JP2007315579A - 流体軸受装置 - Google Patents

流体軸受装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2007315579A
JP2007315579A JP2006148749A JP2006148749A JP2007315579A JP 2007315579 A JP2007315579 A JP 2007315579A JP 2006148749 A JP2006148749 A JP 2006148749A JP 2006148749 A JP2006148749 A JP 2006148749A JP 2007315579 A JP2007315579 A JP 2007315579A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
shaft member
bearing
radial bearing
hardness
radial
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2006148749A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4937644B2 (ja
Inventor
Kenji Hibi
建治 日比
Tetsuya Yamamoto
哲也 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NTN Corp
Original Assignee
NTN Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NTN Corp, NTN Toyo Bearing Co Ltd filed Critical NTN Corp
Priority to JP2006148749A priority Critical patent/JP4937644B2/ja
Priority to PCT/JP2007/052834 priority patent/WO2007099790A1/ja
Priority to US12/281,431 priority patent/US8876386B2/en
Publication of JP2007315579A publication Critical patent/JP2007315579A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4937644B2 publication Critical patent/JP4937644B2/ja
Priority to US13/481,282 priority patent/US8876388B2/en
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Sliding-Contact Bearings (AREA)

Abstract

【課題】軸部材と軸受部材の硬度差に起因した摩耗量の増大を抑制し、回転精度に優れる流体軸受装置を提供する。
【解決手段】流体軸受装置1は、ラジアル軸受面Aを有する軸部材2と、電鋳部4をインサートして射出成形された軸受部材3とを備える。軸部材2のラジアル軸受面Aは、電鋳部4よりも100Hv以上高硬度に形成され、かつ350Hv以上の硬度に形成された表層部9に設けられている。
【選択図】図1

Description

本発明は、流体軸受装置に関するものである。
流体軸受装置は、軸部材と軸受部材の間のラジアル軸受隙間に形成される流体の潤滑膜で軸部材をラジアル方向に支持する軸受装置である。この流体軸受装置は、回転精度、回転速度、および静粛性等に優れた特性を示すものであり、近年ではその特徴を活かして、パーソナルコンピュータ(PC)等のファンモータの他、広く情報機器用の小型モータ、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ等、種々のモータに用いられている。
流体軸受装置には、軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部が設けられ、このラジアル軸受部は、ラジアル軸受隙間内の流体に動圧を発生させるための動圧発生手段(動圧発生部)を備えた動圧軸受で構成される場合と、動圧発生部を有さず、軸受断面が真円形状である、いわゆる真円軸受で構成される場合とに大別される。
流体軸受装置の回転精度は、ラジアル軸受隙間の幅精度に大きく左右される。そのため、ラジアル軸受隙間の幅精度を高精度に管理すべく様々な提案がなされている。例えば、軸受部材の内径側を電鋳加工で形成した電鋳部とし、この内周面とこれに対向する軸部材の外周面との間にラジアル軸受隙間を形成するものが知られている。電鋳加工の特性上、電鋳部の内周面精度は当該電鋳部を形成する際に用いるマスターの表面精度に倣う。従って、マスターの表面精度を高めておきさえすれば、ラジアル軸受隙間の幅精度は容易かつ高精度に管理可能となる(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−56552号公報
上記特許文献に記載の軸受装置も含め、軸受部材の内周に挿入される軸部材は高剛性の金属材料で形成される場合が多い。この場合、ラジアル軸受隙間を介して対向する二面は何れも金属となるから、一般的には摺動接触等に対する耐摩耗性は向上すると考えられる。しかしながら、両者の硬度差によっては却って摩耗し易くなり、回転精度の悪化を招く恐れがある。近年、HDD等の情報機器の大容量化、高速回転化等が急速に進展している。そのため、流体軸受装置に対する更なる高回転精度化の要請が高まっており、摩耗量の抑制は重要な課題の一つである。
本発明の課題は、軸部材の外周面と軸受部材の内周面の硬度差に起因した摩耗量の増大を抑制し、回転精度に優れる流体軸受装置を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明では、ラジアル軸受面を有する軸部材と、電鋳部をインサートして射出成形された軸受部材とを備え、ラジアル軸受面と電鋳部の間のラジアル軸受隙間に形成される流体の潤滑膜で軸部材をラジアル方向に支持する流体軸受装置において、ラジアル軸受面が、電鋳部よりも100Hv以上高硬度に形成され、かつ350Hv以上の高硬度層に設けられていることを特徴とする流体軸受装置を提供する。なお、ここでいうラジアル軸受面は、ラジアル軸受隙間を介して電鋳部の内周面と対向する面を意味し、この面に動圧溝等の動圧発生部が形成されているか否かは問わない。
例えば、軸部材のラジアル軸受面と電鋳部の間の硬度差が100Hv未満の場合、両者の間で一種の凝着現象が生じ、これに起因した摩耗、いわゆる凝着摩耗により摩耗量が増大することが本願発明者らの鋭意研究によって見出された。従って、上記のように、ラジアル軸受面を、電鋳部よりも100Hv以上高硬度に形成された高硬度層に設けることにより、軸部材のラジアル軸受面と電鋳部の間の硬度差に起因した摩耗を抑制することができる。また、両者の硬度差が100Hv未満だと、外乱要因などで衝撃荷重を受けた場合の破損モードが焼付きとなり、軸受停止(ロック)を招く恐れがある。これに対し両部間に上記の硬度差を与えておけば、多少の摩耗は生じたとしても、少なくとも軸受停止といった最悪の事態は回避することができる。一般に、電鋳部を形成可能な金属は限定的で、かつその硬度調整は困難であるが、軸部材の硬度調整は比較的容易かつ高精度に行い得る。従って上記構成の流体軸受装置は容易に形成可能である。
また、ラジアル軸受面の硬度自体が350Hv未満であると、組み込み時等にラジアル軸受面にキズや打痕が生じて軸受面精度を悪化させる恐れがあるため、その取り扱いに格別の配慮が必要となる。従って、ラジアル軸受面の硬度は350Hv以上とするのが望ましい。かかる構成とすることにより軸部材の取り扱いを容易化することが可能となり、製造コストの低廉化が図られる。
軸部材のラジアル軸受面には、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる凹部を設けることができる。かかる構成とすることにより、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させ、軸部材を電鋳部に対して高精度に非接触支持することができ、この種の凹部を設けない場合に比べ、摩耗量を抑制することが可能となる。この凹部は、転造、エッチング、切削等により形成することができるが、加工精度や加工コストを考慮すると転造で形成するのが望ましい。
凹部を転造で設ける場合、軸部材を構成する素材は、加工性や凹部の精度を考慮するとなるべく軟質であるのが好ましく、また転造用の金型寿命も延びるため好ましい。また、電鋳部を形成する金属の種類にもよるが、ラジアル軸受面と電鋳部の硬度差を100Hv以上とするには、ラジアル軸受面の硬度を400Hv以上としなければならない場合もある。しかしながら、一般に400Hv以上の硬度層に高精度な凹部を転造で形成するのは困難である。
そこで、本発明では、凹部の転造後、硬化処理を施すことにより、上記条件を満たす高硬度層を得ることとした。硬化処理の手法としては、窒化、浸炭、焼き入れ、DLC等、種々の手法を用いることができるが、この中でも窒化処理による窒化層でかかる高硬度層を構成するのが望ましい。一般に、動圧発生部としての凹部は数μm〜十数μm程度の微小な深さに形成されるから、特にラジアル軸受面にこの種の凹部を設けた場合に浸炭や焼き入れ等、高温な熱処理が必要な手法を採用すると、軸素材の変形、およびこれに起因した凹部の形状精度の悪化を招く恐れがあり、また、DLCは多大なコストを要すからである。
ところで、上記の高硬度層を硬化処理で形成する場合、その表層部ほど高硬度になる傾向がある。このとき、凹部を区画する領域、つまり電鋳部との接触領域における高硬度層の厚みが凹部の深さの2倍以上となるように硬化処理を施すのが望ましいことが本願発明者らによって見出された。かかる態様とすることにより、仮に凹部の区画領域が摩耗した場合でも、電鋳部との接触領域では350Hv以上の硬度を安定的に得ることができ、摩耗の進行を確実に抑制することができるからである。
以上のように本発明によれば、軸部材の外周面と軸受部材の内周面の硬度差に起因した摩耗量の増大を抑制し、長期に亘って高い回転精度を安定的に維持可能な流体軸受装置を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る流体軸受装置1を概念的に示している。この流体軸受装置1は、軸部材2と、内周に軸部材2を挿入した軸受部材3とを主要な構成部材として備えている。
軸受部材3は、電鋳加工により、マスター表面にニッケルや銅等の金属イオンを析出させて形成した電鋳部4と、これをインサートして樹脂で射出成形された成形部5とで有底筒状に形成されている。本実施形態で電鋳部4はニッケルイオンを析出させて形成されており、その硬度は200Hv程度である。電鋳部4の内周面4aは凹凸のない平滑な円筒面に形成され、また内底面4bは凹凸のない平坦面に形成されている。
軸部材2は、金属材料で径一定に形成され、その下端面2bは凸球状に形成されている。軸部材2の外周面2aには、電鋳部4の内周面4aとの間にラジアル軸受隙間6を形成するラジアル軸受面Aとなる領域が上下2箇所に離隔して設けられ、このラジアル軸受面Aにはそれぞれ、ラジアル軸受隙間6に流体動圧を発生させる凹部7が形成されている。本実施形態において凹部7は、傾斜方向を互いに異ならせた傾斜溝7a、7bからなり、これを円周方向に複数配列してヘリングボーン形状の動圧発生部が形成されている。
この軸部材2は、図1(b)に示すように、その径方向断面で、芯部8と、上記ラジアル軸受面Aを有する表層部9とに大別される。表層部9は芯部8よりも高硬度に形成され、この表層部9のうち、凹部7を区画する領域の厚みd1は、ラジアル軸受面Aに形成された凹部7の深さd2の少なくとも2倍以上の厚みをなす。また、表層部9は、電鋳部4の硬度よりも100Hv以上、より望ましくは150Hv以上高硬度に形成され、かつその硬度は350Hv以上に形成されている。つまり、この表層部9が、本発明でいう高硬度層を構成する。例えば、上記のように電鋳部4がニッケルイオンを析出形成したものであり、その硬度が200Hv程度に形成されている場合、表層部9の硬度は350Hv以上に形成される。なお、図1(b)は理解の容易化のため、凹部7の深さd2や表層部9の厚みd1を誇張して描いており、実際の凹部7の深さd2は数μm〜十数μm程度である。
以下、上記軸部材2の製造工程を図面に基づいて説明する。
本実施形態において、軸部材2は、ラジアル軸受面Aに凹部7を転造で形成する転造工程(a)と、表面硬化処理を施して上記の表層部9を形成する表面硬化処理工程(b)と、凹部7を区画する領域にバレル加工を施すバレル加工工程(c)とを経て形成される。
(a)転造工程
図2は、上記の軸部材2を構成する軸素材11の外周面11aに、凹部7を転造で形成する工程を概念的に示すものである。一対の転造ダイス12、13(図示例は、平ダイス)の何れか一方又は双方の転動面には、軸素材11に転写すべき凹部7に対応した形状の凸部型が設けられている(図示省略)。ここで、軸素材11としては、200〜300Hv程度の低硬度金属材料が使用される。一般に、硬度が400Hv以上となると、転造加工では高精度な加工が難しくなる。そのため、かかる軸素材11を用いることにより、転造容易性を高めて凹部7を高精度に形成することができ、また転造ダイス12、13の長寿命化を図ることができる。
軸素材11を上記の転造ダイス12、13で挟持した状態で転造ダイス12、13を相対的に移動させると、軸素材11の外周面11aのうち、ラジアル軸受面Aとなる領域に図1(a)に示す凹部7(動圧発生部)が転造形成される。この際、軸素材11に設けられた凹部7の形成領域には、図3(b)に示すように、転造による第1の加工硬化層14aが形成される。同時に、凹部7を区画する領域の一部にも、転造による第1の加工硬化層14bが形成される。
また、転造に伴い、もともと凹部7にあった肉が周囲に押し出され、その結果図3(b)に示すように、凹部7を区画する領域の端部に肉の盛り上がり(隆起部15)が形成される。
(b)表面硬化処理工程
軸素材11に転造で凹部7を形成した後、かかる軸素材11に表面硬化処理を施す。表面硬化処理としては、窒化、浸炭、焼き入れ、DLC等、公知の表面硬化処理方法を採用することができるが、本実施形態では、浸炭や焼き入れ等、高温な熱処理が必要な硬化処理方法に比べて比較的低温(500〜600℃程度)下で処理することができ、またDLCよりも低コストな窒化処理を採用した。かかる表面硬化処理手法を選択することにより、熱処理時における軸素材11の変形を抑制して、高精度な凹部7を低コストに設けることが可能となる。
窒化処理を行うと、図3(c)に示すように、軸素材11の表面に窒素が拡散浸透し、素材金属と窒素との窒化物からなる窒化層14が形成される。窒化層14は、転造加工による第1の加工硬化層14a、14bを含んで形成される。この窒化層14は、その最表面で最も高硬度(本実施形態では概ね600Hv以上)となり、内部(芯部8)に向けて硬度は低下する。本願発明者らの検証によれば、凹部7の区画領域における窒化層14の厚みd1が凹部7の深さd2の2倍以上となるように窒化処理を進行させると、凹部7の区画領域の内部で350Hv以上の硬度を安定的に得られることが判明した。従って、かかる態様で窒化層14を形成することにより、仮に凹部7の区画領域が摩耗したとしても、軸受部材3の電鋳部4との間で少なくとも100Hv以上、厳密には150Hv以上の硬度差を確保できる。
窒化処理(軟窒化処理も含む)の具体的手法としては、例えばガス窒化やプラズマ窒化が、また、軟窒化処理の具体的手法としては、例えばガス軟窒化や塩浴軟窒化等が選択可能である。
なお、窒化処理の手法によっては、窒化層14、すなわち軸部材2のラジアル軸受面Aが著しく高硬度になる場合がある。本願発明者らの検証によれば、ラジアル軸受面Aと電鋳部4との硬度差が1300Hv以上となると、軟質の電鋳部4に対する攻撃性が増し、いわゆるアグレッシブ摩耗が生じて摩耗量が増大することが判明した。そのため、窒化処理は、軸部材2のラジアル軸受面Aの硬度が1500Hv以下程度となるように行うのが望ましい。
(c)バレル加工工程
本実施形態では、軸素材11に窒化処理を施した後、かかる軸素材11にバレル加工を施す。バレル加工としては、例えば、遠心バレルや流動バレル、あるいはこれらを組み合わせた手法が選択可能である。バレル加工を施すことにより、図4に示すように、凹部7の周囲に形成された隆起部15が除去されると共に、軸素材11の外周面11a(凹部7を除く領域)が平滑な面に均される。また、この際、凹部7を区画する領域の表面のうち、少なくとも隆起部15の形成領域には、バレル加工による加工面が形成される。
バレル加工に用いるメディアとしては、軸素材11のサイズ、具体的には凹部7の内底面や内壁面にバレル加工が施されないサイズのものが使用される。これにより、メディアの衝突による加工硬化が凹部7を区画する領域にのみ生じ、かかる領域における表層部9は、先の窒化処理で形成された第1の硬化層と、その表面にバレル加工で形成された第2の硬化層14cとで構成される。この第2の硬化層14cは、先に形成された窒化層14の最表層部分に重複して形成されている。
また、バレル加工に用いるメディアとしては、金属をはじめ、セラミックスや樹脂等種々のものを使用することができるが、バレル加工による第2の硬化層14cを形成する観点から、比較的高硬度の金属製、あるいはセラミックス製のメディアを用いるのが望ましい。メディアの形状としては、球状、多角形状、および円筒状(棒状)等、種々のものが使用可能である。
なお、本実施形態のように、凹部7を転造で形成する場合、凹部7の周縁部16(図4参照)にバリが発生することもあるが、上記のように適当な大きさのメディアを用いてバレル加工を施すことにより、バリを除去して、あるいは凹部7の周縁部16を適度に面取りすることが可能となる。これにより、軸受運転時における電鋳部4の摩耗(損傷)を極力回避することができる。
以上のようにして、断面で、芯部8と、芯部8よりも高硬度な表層部9とに大別された軸部材2が形成される。
流体軸受装置1は以上のようにして形成され、軸部材2が挿入された軸受部材3の内部空間には、流体(潤滑流体)として、例えば潤滑油が充満される。
上記構成の流体軸受装置1において、軸部材2が回転すると、軸部材2の外周面2aのラジアル軸受面Aは軸受部材3(電鋳部4)の内周面4aとラジアル軸受隙間6を介して対向する。軸部材2の回転に伴って、ラジアル軸受面Aに形成された凹部7(動圧発生部)によってラジアル軸受隙間6に潤滑油の動圧が発生し、その圧力によって軸部材2がラジアル方向に回転自在に非接触支持される。これにより、軸部材2をラジアル方向に回転自在に非接触支持する第1ラジアル軸受部R1と第2ラジアル軸受部R2とが形成される。
また、軸部材2が回転すると、軸部材2の下端面2bが軸受部材3の内底面4bで接触支持される。これにより、軸部材2をスラスト方向に回転自在に支持するピボット軸受からなるスラスト軸受部T1が形成される。
上述したように、本実施形態では、軸部材2のラジアル軸受面Aが350Hv以上の硬度に形成された表層部9に設けられ、ラジアル軸受面Aとニッケルイオンを析出形成してなる200Hv程度の電鋳部4との硬度差が100Hv以上(厳密には、150Hv以上)となっている。従って、軸受運転時等には、微小な硬度差に起因した摩耗(特に、凝着摩耗)を極力回避することが可能となる。また、ラジアル軸受面Aが350Hv以上の硬度に形成された表層部9に設けられていることから、組み込み時等における軸部材2のラジアル軸受面Aの損傷を回避することができる。さらに、ラジアル軸受面Aと電鋳部4との硬度差が100Hv未満だと、外乱要因などで衝撃荷重を受けた場合の破損モードが焼付きとなり、軸受停止(ロック)を招く恐れがある。これに対し両部間に上記の硬度差を与えておけば、多少の摩耗は生じたとしても、少なくとも軸受停止といった最悪の事態は回避することができる。
また本実施形態では、ラジアル軸受面Aに、ラジアル軸受隙間6に流体動圧を発生させる凹部7(動圧発生部)が設けられているので、軸部材2をラジアル方向に高精度に非接触支持することができ、摩耗量の増大を一層抑制することが可能となる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の構成はこの実施形態に限定されることなく、他の構成を採ることも可能である。
図5は、本発明にかかる流体軸受装置1の第2の実施形態を示している。同図に示す流体軸受装置1は、軸受部材3を構成する電鋳部4が、内径側に位置し、その内周面41aと軸部材2のラジアル軸受面Aとの間にラジアル軸受隙間6を形成する第1電鋳部41と、第1電鋳部41を被覆する第2電鋳部42とで構成されている点で図1(a)に示す流体軸受装置と構成を異にする。図示例の形態において、第1電鋳部41は第2電鋳部42に比べ高硬度に形成されている。この構成は、例えば、第1電鋳部41をSiC(炭化ケイ素)等の強化材を添加した電解質溶液を用いて電鋳加工し、その後強化材を含有しない電解質溶液を用いて電鋳加工することにより得られる。
この場合、第1電鋳部41の硬度は400Hv程度と、上述した第1実施形態に比べ高硬度に形成されるので、軸部材2に、その硬度が少なくとも500Hv以上、より望ましくは550Hv以上となる表層部9を形成すれば、上述した第1実施形態と同様の構成が得られる。なお、これ以外の構成は、図1(a)に示す構成と同一であるので、共通の参照番号を付与し、重複説明を省略する。
以上の説明では、凹部7を傾斜方向の異なる傾斜溝7a、7bで構成し、この凹部7をへリングボーン形状に配列して動圧発生部を構成したが、動圧発生部の形状はラジアル軸受隙間6に流体動圧を発生させることができる限り他の形状であってもよい。例えば、凹部7を軸方向溝で形成し、これを円周方向に複数配列したもの(この場合、ラジアル軸受部は、ステップ軸受となる)や、ラジアル軸受隙間6がくさび状隙間となるように凹部7を形成したもの(多円弧軸受)とすることもできる。さらに、凹部7は溝以外にもディンプル(穴状)に形成することもできる。
また、以上の説明では、軸部材2の外周面2aに凹部7(動圧発生部)を設け、当該動圧発生部でラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させてラジアル軸受部R1、R2を動圧軸受で構成する場合について説明を行ったが、軸部材2のラジアル軸受面Aに凹部7を設けず平滑面に形成することで、ラジアル軸受部R1、R2を真円軸受で構成することもできる(図示省略)。この場合でも、軸部材2に、電鋳部4との硬度差が100Hv以上で、かつ少なくとも350Hv以上の硬度を有する表層部9を設ければ、電鋳部4との摺動接触時において、軸部材2のラジアル軸受面Aと電鋳部4の硬度差に起因した摩耗量を抑制し、回転精度の悪化を回避することが可能となる。もちろん、この場合には、凹部7の成形性を考慮して軸部材2を硬度の異なる芯部8と表層部9とで構成する必要はなく、全体として上記条件を満たす軸部材2を用いれば足りる。
また、以上の説明では、スラスト軸受部T1をピボット軸受で構成する形態を示したが、スラスト軸受部Tはピボット軸受に限定されることなく、ラジアル軸受部同様に動圧軸受で構成することもできる。スラスト軸受部を動圧軸受で構成する場合、例えば、軸部材2のうち、軸受部材3(電鋳部4)の内底面4bとの対向領域を平坦面とし、この平坦面あるいは電鋳部4の内底面4bに、ヘリングボーン形状等に配列された凹部(溝)を設ければよい。
以上の説明では、流体軸受装置1の内部に充満する潤滑流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧を発生させることができる流体、例えば磁性流体の他、空気等の気体等を使用することもできる。
以上で説明を行った流体軸受装置1は、例えば情報機器用のスピンドルモータに組み込んで使用することができる。以下、図1(a)に示す流体軸受装置1をスピンドルモータに組み込んだ構成例を図6に基づいて説明する。
図6は、流体軸受装置1を組み込んだモータの一例を示すものである。同図に示すモータは、例えばHDD等のディスク駆動装置用のスピンドルモータとして使用されるものであって、軸部材2を回転自在に支持する流体軸受装置1と、軸部材2に一体または別体に設けられたロータ(ディスクハブ)31と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル32およびロータマグネット33と、ブラケット34とを備えている。ステータコイル32はブラケット34の外周に取り付けられ、ロータマグネット33はディスクハブ31の内周に取り付けられている。ディスクハブ31には、磁気ディスク等のディスクDが一又は複数枚(図示例では2枚)保持されている。ステータコイル32に通電すると、ステータコイル32とロータマグネット33との間の電磁力でロータマグネット33が回転し、これにより、ディスクハブ31およびディスクハブ31に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
なお、本発明の構成を有する流体軸受装置1は、上記スピンドルモータ以外のモータに組み込んで使用することもできる。図7はその一例を示すものであり、パーソナルコンピュータ等に組み込まれ、発熱源の冷却に用いられるファンモータを概念的に示している。このファンモータでは、流体軸受装置1の軸部材2に取り付けられるロータ36が、羽根を一体に有する点で上記のスピンドルモータと構成を異にしている。なお、これ以外の構成部材および作用については、図6で説明を行った内容と同一であるため、共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
本発明の有用性を実証するため、図8(a)に示す態様で摩耗試験を行った。摩耗試験は、図1(a)に示す軸部材2に対応する試験片100に対し、電鋳部4に対応する回転体101を一定条件(流体軸受装置の使用条件に近似した条件)の下で摺動回転させ、試験片100および回転体101の摩耗量を測定する簡易試験である。試験片100としては、少なくとも回転体101との摺動面が、200Hv、280Hv、350Hv、520Hv、650Hv、920Hv、1180Hv、1530Hv、および1700Hvの硬度に形成された9種類を準備した。試験片100の試料数は、それぞれN=10で、図8(b)に示す摩耗量はその平均値である。また、回転体101としては、ニッケル製の電鋳部4を想定して、200Hvの硬度に形成されたものを用いた。
図8(b)に、摩耗試験の結果を示す。同図からも明らかなように、硬度が350Hv以上の試験片100を用いたとき、すなわち両者の硬度差が150Hv以上となるときを境にして摩耗量が著しく減少することが確認できる。一方、硬度が1530Hv以上の試験片100を用いたとき、すなわち両者の硬度差が1300Hv以上になると摩耗量が増大することが確認できる。
(a)図は、本発明の一実施形態にかかる流体軸受装置の断面図、(b)図は軸部材の断面図である。 軸部材に凹部を転造する工程を概念的に示す図である。 (a)図は転造前の軸部材の表層付近を示す断面図、(b)図は転造後の軸部材の表層付近を示す断面図、(c)図は窒化処理後の軸部材の表層付近を示す断面図である。 バレル加工後の軸部材の表層付近を示す断面図である。 本発明の第2実施形態にかかる流体軸受装置の断面図である。 本発明にかかる流体軸受装置を組み込んだスピンドルモータの一構成例を概念的に示す断面図である。 本発明にかかる流体軸受装置を組み込んだファンモータの一構成例を概念的に示す断面図である。 (a)図は、摩耗試験の概要を簡略的に示す断面図、(b)図は摩耗試験の結果を示す図である。
符号の説明
1 流体軸受装置
2 軸部材
3 軸受部材
4 電鋳部
5 成形部
6 ラジアル軸受隙間
7 凹部
8 芯部
9 表層部
11 軸素材
12、13 転造ダイス
14 窒化層
d1 凹部を区画する領域における表層部の厚み
d2 凹部の深さ
A ラジアル軸受面
R1、R2 ラジアル軸受部
T1 スラスト軸受部

Claims (5)

  1. ラジアル軸受面を有する軸部材と、電鋳部をインサートして射出成形された軸受部材とを備え、ラジアル軸受面と電鋳部の間のラジアル軸受隙間に形成される流体の潤滑膜で軸部材をラジアル方向に支持する流体軸受装置において、
    ラジアル軸受面が、電鋳部よりも100Hv以上高硬度に形成され、かつ350Hv以上の高硬度層に設けられていることを特徴とする流体軸受装置。
  2. ラジアル軸受面に、ラジアル軸受隙間に流体動圧を発生させる凹部が転造で形成されている請求項1記載の流体軸受装置。
  3. 凹部の転造後、硬化処理を施して前記高硬度層を形成した請求項2記載の流体軸受装置。
  4. 前記高硬度層を、窒化処理による窒化層で構成した請求項3記載の流体軸受装置。
  5. 凹部を区画する領域で前記高硬度層の厚みを、凹部の深さの2倍以上に形成した請求項3記載の流体軸受装置。
JP2006148749A 2006-03-02 2006-05-29 流体軸受装置 Expired - Fee Related JP4937644B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006148749A JP4937644B2 (ja) 2006-05-29 2006-05-29 流体軸受装置
PCT/JP2007/052834 WO2007099790A1 (ja) 2006-03-02 2007-02-16 流体軸受装置
US12/281,431 US8876386B2 (en) 2006-03-02 2007-02-16 Fluid dynamic bearing device
US13/481,282 US8876388B2 (en) 2006-03-02 2012-05-25 Fluid dynamic bearing device

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006148749A JP4937644B2 (ja) 2006-05-29 2006-05-29 流体軸受装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007315579A true JP2007315579A (ja) 2007-12-06
JP4937644B2 JP4937644B2 (ja) 2012-05-23

Family

ID=38849616

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006148749A Expired - Fee Related JP4937644B2 (ja) 2006-03-02 2006-05-29 流体軸受装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4937644B2 (ja)

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60179517A (ja) * 1984-02-24 1985-09-13 Canon Inc 動圧気体軸受
JPH1089345A (ja) * 1996-09-10 1998-04-07 Koyo Seiko Co Ltd 動圧軸受
JP2003056552A (ja) * 2001-08-09 2003-02-26 Akutowan:Kk 樹脂製軸受部品及びその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60179517A (ja) * 1984-02-24 1985-09-13 Canon Inc 動圧気体軸受
JPH1089345A (ja) * 1996-09-10 1998-04-07 Koyo Seiko Co Ltd 動圧軸受
JP2003056552A (ja) * 2001-08-09 2003-02-26 Akutowan:Kk 樹脂製軸受部品及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4937644B2 (ja) 2012-05-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8876386B2 (en) Fluid dynamic bearing device
US20120093447A1 (en) Shaft member for fluid dynamic bearing device
JP2007232140A (ja) 流体軸受装置
JP2002213436A (ja) モータ用流体軸受け装置
US20070212248A1 (en) Production method for fluid dynamic pressure sintered bearing
JP2006300245A (ja) 動圧流体軸受装置
JP4979950B2 (ja) 動圧軸受装置用軸部材
JP5058516B2 (ja) 流体軸受装置
US20080037916A1 (en) Dynamic Bearing Device
JP4937644B2 (ja) 流体軸受装置
JP5132887B2 (ja) 動圧軸受装置用軸部材
JP2009103280A (ja) 動圧軸受装置およびその製造方法
JPWO2004081400A1 (ja) 流体軸受装置
US10837486B2 (en) Shaft member for fluid bearing device, manufacturing method therefor, and fluid bearing device
US20070292059A1 (en) Fluid Dynamic Bearing Apparatus
JP5819077B2 (ja) 流体動圧軸受装置の製造方法
JP2007064278A (ja) 流体軸受装置、それを用いたスピンドルモータおよび流体軸受装置の製造方法
JP2007218379A (ja) 動圧軸受装置用軸部材およびその製造方法
US7976221B2 (en) System and method for improving lubrication in a fluid dynamic bearing near the contact region
JP4804894B2 (ja) 軸受装置およびその製造方法
JP2007051718A (ja) 流体軸受装置
JP2003184868A (ja) モータ用動圧軸受及び動圧軸受用スラストフランジの成形方法
JP2008111520A (ja) 動圧軸受装置
JP4846470B2 (ja) 動圧軸受装置およびこれを備えたモータ
JP4937618B2 (ja) 動圧軸受装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090316

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20091105

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111026

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111226

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120206

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120222

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150302

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4937644

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees