JP4937618B2 - 動圧軸受装置 - Google Patents

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Description

本発明は、軸受隙間に充填された潤滑流体の動圧作用で、軸部材を回転自在に支持する動圧軸受装置に関するものである。
動圧軸受装置は、その優れた回転精度、高速回転性、静粛性等を活かして、例えば、HDD等の磁気ディスク駆動装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク駆動装置、MD、MO等の光磁気ディスク駆動装置等のスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、プロジェクタのカラーホイールモータ、あるいは電子機器等の冷却ファンに用いられるファンモータなどの小型モータ用として使用されている。
このような動圧軸受装置として、特許文献1には、軸受の内周面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で、軸部材をラジアル方向に非接触支持する動圧軸受装置が示されている。軸受の内周面には、ラジアル軸受面となる上下2つの領域が軸方向に離隔して設けられ、該2つの領域には、例えばヘリングボーン形状の動圧溝がそれぞれ形成される。
また、特許文献2の動圧軸受装置は、軸受を樹脂で形成することにより、軸部材との摺動性や軸受の成形性の向上を図っている。この軸受では、動圧溝が軸受の射出成形と同時に形成されるため、動圧溝を容易に形成することができる。
特開2005−321089号公報 特開2000−81028号公報
軸受の射出成形と同時に動圧溝を形成するには、例えば成形金型に動圧溝形状に対応する成形部を形成し、軸受の型成形時に前記成形部の形状を軸受の内周面に転写することで行われる。しかし、この成形方法では、金型の凹凸状の成形部に樹脂が入り込んで固化するため、金型を軸受の内周から離型する際、金型の成形部と軸受の動圧溝とが干渉し、動圧溝が損傷するおそれがある。
本発明の課題は、動圧軸受装置の動圧発生部を高精度かつ低コストに形成可能とすることである。
前記課題を解決するため、本発明は、回転側部材と、固定側部材と、回転側部材と固定側部材の何れか一方に設けられ、回転側部材と固定側部材との間に形成された軸受隙間に潤滑流体の動圧作用を発生させるための凹凸を有する動圧発生部とを備えた動圧軸受装置において、動圧発生部が、インサート部品を樹脂でモールドすることにより形成され、かつ動圧発生部に、インサート部品に設けられ、上記の樹脂とは異なる材料からなる第一領域と、樹脂からなる第二領域とを設け、第一領域と第二領域とで凹凸を形成した。
一般に、樹脂は、射出成形後、固化する際に成形収縮を生じる。従って、インサート部品を樹脂でモールド(インサート成形)すれば、該樹脂以外の材料からなる第一領域と該樹脂からなる第二領域との間には、樹脂の成形収縮により段差が形成され、この段差を動圧発生部の凹凸として利用することができる。この方法であれば、金型のうち、動圧発生部の成形部は、動圧発生部の形状に対応した凹凸状に形成する必要がなく、凹凸のない断面真円状のものであれば足りるので、固化後の脱型時に動圧発生部と成形部との干渉は生じず、従って、精度の良い動圧発生部を得ることができる。
なお、樹脂の成形収縮方向は、樹脂の種類によっても異なり、相手側部材に接近する方向に成形収縮するものと、相手側部材から離隔する方向に成形収縮するものがあるが、何れの方向であってもインサート部品との間に段差を形成することができるので、凹凸を有する動圧発生部の形成が可能となる。第一領域は、金属やセラミック等のように、樹脂とは異なる材料で形成する他、樹脂組成物であって、ベース樹脂をモールド用樹脂のベース樹脂と異ならせたものも含まれる。
このように動圧発生部をインサート成形で形成することにより、モールド用樹脂とそれ以外の材料からなる複合構造の動圧発生部が得られる。これにより軸受特性の多様化を図ることができる。例えばモールド用樹脂からなる第二領域を金属等の樹脂以外の材料(以下、「金属等」と称する)からなる第一領域よりも相手部材側に接近させた場合、動圧発生部と相手側部材との摺動が樹脂で行われるようになるので、低摩擦化を図ることができ、特に低速回転時の耐摩耗性が重要視される用途に適合するものとなる。その一方、この構造では、相手側部材が金属材料であると、樹脂との間の線膨張係数の差が大きくなり、温度変化により軸受隙間幅が変動するおそれがある。従って、これを嫌う用途では、反対に金属等からなる第一領域を第二領域よりも相手部材側に接近させることもできる。この構造であれば、相手側部材との摺動接触による第二領域の摩耗を防止できるので、軸受寿命を高めると共に、摩耗粉によるコンタミの発生を嫌う用途にも適合するものとなる。
インサート部品として、電鋳金属を使用することもできる。電鋳金属は、マスターの表面に電解メッキまたは無電解メッキに類する方法で析出させた金属であり、マスターから容易に分離できるようにした点が通常のメッキによる析出金属とは異なる。この電鋳金属をインサート部品として樹脂モールドを行えば、動圧発生部の第二領域を電鋳金属とし、第一領域を樹脂で形成した軸受が低コストに得られる。
一般に電鋳金属は、マスターに接する面がマスターの表面形状が正確に転写された緻密面となり、その反対側が粗面となる。第一領域として緻密面を使用すれば、マスター表面を予め精度良く仕上げておくことにより、第一領域の表面精度が極めて良好なものとなるので、相手側部材との間の軸受隙間を高精度化することができる。この場合、電鋳金属の粗面はモールドした樹脂に埋め込まれるが、樹脂が粗面の凹凸に入り込んでアンカー効果を発揮するため、樹脂と電鋳金属の分離を確実に防止することができる。
以上のように、本発明によると、動圧軸受装置の動圧発生部が高精度かつ低コストに得られる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る動圧軸受装置1の断面図である。動圧軸受装置1は、固定側部材となる軸受3と、軸受3の内周に挿入され、回転側部材となる軸部材2とで構成される。軸受3の内周面3aには、ラジアル軸受面A1およびA2が軸方向に離隔して形成され、そのラジアル軸受面A1、A2と軸部材2の外周面2aとの間にラジアル軸受隙間が形成される。
軸受3は、金属部4と、金属部4を内周に保持する樹脂部5とからなり、金属部4をインサート部品とした樹脂の射出成形により形成される。ラジアル軸受面A1、A2に形成される動圧発生部G1、G2は、へリングボーン動圧溝等の凹凸面である。拡大図で示すように、動圧発生部G1(G2)のうち、金属部4の内周面4aで第一領域G11(G21)が形成され、樹脂部5の内周面5aで第二領域G12(G22)が形成されている。本実施形態において、第一領域G11(G21)は凸状の面、第二領域G12(G22)は凹状の面であり、第一領域G11(G21)は第二領域G12(G22)よりも軸部材2の外周面2aに接近している。
以下、軸受3の製造工程を説明する。軸受3は、マスター軸7の外周面に金属部4を析出形成する工程(電鋳加工工程)、金属部4およびマスター軸7をインサート部品として樹脂部5を型成形する工程(インサート成形工程)、および軸受3とマスター軸7とを分離する工程(分離工程)を経て製作される。
マスター軸7は、例えば焼入れ処理をしたステンレス鋼で円筒状に形成される。マスター軸7の材料は上記に限らず、マスキング性、導電性、耐薬品性を有するものであれば任意に選択可能であり、例えばクロム系合金やニッケル系合金などの金属材料のほか、セラミック等の非導電性材料も導電性の樹脂等をコーティングすることにより使用可能となる。また、マスター軸7を軸部材2として使用する場合には、上記特性の他、機械的強度、剛性、摺動性、耐熱性を満たす材料であることが望ましい。この場合、軸受3との摺動性を向上させるために、例えばフッ素系の樹脂コーティングを施すのが望ましい。
マスター軸7は、中実軸の他、中空軸あるいは中空部に他材料(樹脂など)を充填した中実軸であってもよい。また、マスター軸7の外周面精度は、軸受3の動圧発生部G1、G2を構成する第一領域G11、G21および第二領域G12、G22の面精度を直接左右するので、なるべく高精度に仕上げておくことが望ましい。
マスター軸7の外表面のうち、金属部4の形成予定領域を除く箇所には、予めマスキングが施される。本実施形態では、図2に示すように、ヘリングボーン形状にマスキング部8が形成される場合を例示している。マスキング部8形成用の被覆剤としては、非導電性および電解質溶液に対する耐食性を有する材料が選択使用される。
電鋳加工工程は、上記処理を施したマスター軸7を電解質溶液に浸漬し、電解質溶液に通電して目的の金属をマスター軸7の表面に析出させることにより行われる。電解質溶液には、金属部4の析出材料となる金属(例えばNiやCu等)を含んだものが用いられる。上記析出金属の種類は、軸受面A1、A2に求められる硬度、あるいは潤滑油に対する耐性(耐油性)など、要求される特性に応じて適宜選択される。また、電解質溶液には、カーボンなどの摺動材、あるいはサッカリン等の応力緩和材を必要に応じて含有させることもできる。こうして、図3のように、マスター軸7の外周面にヘリングボーン形状の電鋳金属(金属部)4が析出形成される。なお、この工程は、上記のように溶液に通電する、いわゆる電解メッキによるものに限らず、溶液に通電せずに目的金属を析出させる、いわゆる無電解メッキで行うこともできる。このとき、マスキング部8の被覆剤には、表面に目的金属が析出しない材料が使用される。
上記工程を経て製作された金属部4およびマスター軸7(以下、電鋳軸9と称す)は、樹脂部5を成形する成形型内にインサート部品として供給される。
図4は、樹脂部5のインサート成形工程を概念的に示すもので、固定型10および可動型11からなる金型には、ランナ12およびゲート13と、キャビティ14とが設けられる。本実施形態において、ゲート13は点状ゲートであり、成形金型(固定型10)の成形面に、円周方向等間隔の複数箇所(例えば3箇所)に形成される。各ゲート13のゲート面積は、充填する溶融樹脂の粘度や、成形品の形状に合わせて適切な値に設定される。
上記構成の金型において、電鋳軸9を所定位置に位置決めした状態で可動型11を固定型10に接近させて型締めする。その状態で、スプルー(図示省略)、ランナ12、及びゲート13を介して、キャビティ14内に例えば液晶ポリマー(LCP)の溶融樹脂Pを射出、充填し、樹脂部5を電鋳軸9と一体に成形する。
溶融樹脂Pには、各種充填材を配合してもよい。例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカー状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボンファイバー、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、金属粉末等の繊維状又は粉末状の導電性充填材を用いることができる。これらの充填材は、単独で用い、あるいは、二種以上を混合して使用しても良い。
キャビティ14内に溶融樹脂Pが充填された直後は、樹脂部5の内周面はマスター軸7の外周面に到達し、金属部4の内周面4aと径方向同位置まで達している(図5に点線で示す)が、樹脂の固化に伴う成形収縮により、樹脂部5の内周面5aは拡径方向に移動する。樹脂部5の内周面5aが拡径することにより、ラジアル軸受面A1、A2に射出される樹脂(本実施形態ではLCP)からなる第二領域G12、22と、射出される樹脂以外の材料(本実施形態では電鋳金属)からなる第一領域G11、G21との間に段差が形成され、これら第二領域G12、22および第一領域G11、21で、ラジアル軸受隙間に充填される潤滑油に動圧作用を発生させる動圧発生部G1、G2が形成される。なお、この成形収縮は、樹脂材料が成形金型10、11から脱型できる程度に固化した状態でもある程度生じているが、脱型後も樹脂が完全固化するまで徐々に進行する。
このように、本発明によれば、内型となるマスター軸7の外周面が凹凸のない真円状断面であっても、樹脂の成形収縮で形成される段差により、凹凸状の動圧発生部G1、G2を形成することができる。従って、脱型時にマスター軸7の外周面と動圧発生部G1、G2の凹凸とが軸方向で干渉することはなく、干渉による動圧発生部G1、G2の損傷を回避して、動圧発生部の高精度化を図ることができる。また、動圧発生部の形状に対応した凹凸成形型や機械加工等による形成方法と比べ、軸受3の製造が容易化され、製造コストの低減および生産性の向上を図ることができる。
型開き後、マスター軸7、金属部4、および樹脂部5が一体となった成形品を、金型10、11から脱型する。この成形品は、その後の分離工程において、金属部4および樹脂部5からなる軸受3(図1を参照)と、マスター軸7とに分離される。
この分離工程では、金属部4に蓄積された内部応力を解放することにより、金属部4の内周面を拡径させ、マスター軸7の外周面から剥離させる。内部応力の解放は、マスター軸7又は軸受3に衝撃を与えることにより、あるいは金属部4の内周面とマスター軸7の外周面との間に軸方向の加圧力を付与することにより行われる。内部応力の解放により、金属部4の内周面を半径方向に拡径させて、金属部4の内周面とマスター軸7の外周面との間に適当な大きさの隙間を形成することにより、金属部4の内周面からマスター軸7を軸方向にスムーズに引き抜くことができる。このとき、マスター軸7の外周面が凹凸のない円筒面であることにより、マスター軸7と動圧発生部G1、G2とが軸方向で干渉しないため、干渉による動圧発生部G1、G2の損傷を回避して、動圧発生部の高精度化を図ることができる。
なお、金属部4の拡径量は、例えば金属部4の肉厚や電解質溶液の組成、電鋳条件を変えることによって制御できる。また、衝撃の付与だけでは金属部4の内周を十分に拡径さえることができない場合、金属部4とマスター軸7とを加熱又は冷却し、両者間に熱膨張量差を生じさせることによって、軸受3とマスター軸7とを分離することもできる。
これにより、内周面3aに動圧発生部G1、G2が形成された軸受3が得られる。こうして得られた軸受3に、別途製作した軸部材2を挿入し、動圧軸受装置1の内部に、潤滑流体として、例えば潤滑油を充満することにより、軸部材2を回転自在に支持する動圧軸受装置1が完成する。軸部材2を回転させると、動圧発生部G1、G2によってラジアル軸受隙間の潤滑油に動圧作用が発生し、軸部材2がラジアル方向で回転自在に支持される。潤滑油以外の潤滑流体として、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
軸受3に挿入する軸部材2として、マスター軸7を使用することもできる。このとき、金属部4とマスター軸7との剥離工程でできた、動圧発生部G1、G2を構成する凸状の第一領域G11、G21(金属部4の内周面4a)とマスター軸7の外周面との間の微小隙間は、電鋳加工の特性から、クリアランスが極めて小さく、かつ高精度であるという特徴を有する。これにより、優れた動圧効果が得られ、高い回転精度または摺動性を有する軸受の提供が可能となる。なお、上記のように、軸部材2を別途製作して動圧軸受装置1を構成すると、一度マスター軸7を製作すれば、これを繰返し転用することができるので、マスター軸7の製作コストを抑え、動圧軸受装置1のさらなる低コスト化を図ることが可能となる。
本発明は、上記実施形態に限らない。例えば、射出成形工程で射出される樹脂材料として、成形収縮により内周面5aが縮径するような樹脂材料を使用することもできる。この場合、図6に示すように、樹脂部5の内周面5aが成形収縮により縮径方向に移動し、軸受30の内周面30aに電鋳金属からなる凹状の第一領域G11、G21と、樹脂からなる凸状の第二領域G12、G22とが形成される。
このように、樹脂からなる第二領域G12、G22で動圧発生部G1、G2の凸面が形成されることにより、装置の起動、停止時等の低速回転時における第二領域G12、G22と軸部材2の外周面2aとの接触に対して、優れた耐摩耗性を有する動圧発生部G1、G2が得られる。このとき、樹脂材料にフッ素樹脂、あるいはフッ素樹脂を分散させた樹脂等の摺動製に優れたものを使用すると、耐摩耗性をさらに向上させることができる。
このような動圧発生部G1、G2の凸面が、樹脂からなる第二領域G12、G22で形成された軸受30は、上記のように摺動性に優れているという利点を有する一方で、金属材料からなる軸部材2との線膨張係数の差が大きくなるため、軸受隙間、特に第二領域G12、G22と軸部材2の外周面2aとの間の微小隙間が温度変化により変動するおそれがある。このような軸受隙間の変動を嫌う用途で動圧軸受装置を使用する場合は、樹脂部5の第二領域G12、G22よりも金属部4の第一領域G11、G21を、軸部材2の外周面2aに接近させておくのが望ましい。また、この構成あれば、軸部材2の外周面2aとの摺動接触による第二領域G12、G22の摩耗を防止できるので、軸受寿命を高め、かつ摩耗粉によるコンタミの発生を防止できるメリットも得られる。
以上では、軸受3を樹脂と金属の複合構造とした場合を例示したが、第一領域を有する金属部4としては、金属以外の材料(例えばセラミック)で形成され他部材を使用することもできる。また、金属部4に相当する部分を、樹脂部5を形成する樹脂組成物(モールド用樹脂組成物)とベース樹脂の種類の異なる樹脂組成物(異種樹脂組成物)で形成することもできる。この場合、異種樹脂組成物としては、射出成形時の高温に耐えられるように、モールド用樹脂組成物よりも高いガラス転移点を有するものを選定する必要がある。
以上の説明では、軸受3が両端開口している場合を例示しているが、これに限らず、例えば図7に示すように、スラストプレート15により軸受3の一方の開口端を封口してもよい。この実施形態では、軸部材2は端部に凸球面部2bを有し、その凸球面部2bの先端部とスラストプレート15の上側端面15aとでスラスト軸受部T(いわゆるピボット軸受)を形成することにより、軸部材2をスラスト方向に支持している。また、図示は省略するが、軸部材2を下端面とスラストプレート15との間のスラスト軸受隙間に生じる潤滑油の動圧作用で、軸部材2をスラスト方向に支持する動圧軸受により、スラスト軸受部Tを構成することもできる。
また、図8に示すように、軸部材2の下端にフランジ部2cを設けてもよい。このとき、フランジ部2cの上側端面2c1と、この面とスラスト軸受隙間を介して対向する樹脂部5の下側端面5bとで第一スラスト軸受部T1が形成され、フランジ部2cの下側端面2c2と、この面とスラスト軸受隙間を介して対向するスラストプレート15の上側端面15aとで第二スラスト軸受部T2が形成される。
スラスト軸受部T、T1、T2を動圧軸受で構成する場合、スラスト軸受隙間を介して対向する固定側部材および回転側部材の何れかの端面に動圧発生部が形成される。この動圧発生部は、例えばヘリングボーン形状やスパイラル形状の動圧溝、あるいはステップ軸受や波型軸受等で構成される。
また、以上の説明では、ラジアル軸受面A1、A2に形成される動圧発生部として、ヘリングボーン形状の動圧溝を例示しているが、これに限らず、マスター軸7に施すマスキング部8の形状を変更することにより、他の動圧溝形状や、いわゆるステップ軸受、波型軸受、あるいは多円弧軸受で動圧発生部を構成することもできる。
また、以上の説明では、動圧発生部G1、G2が固定側部材(軸受3)に形成される場合を示したが、これと対向する回転側部材(軸部材2)に設けてもよい。この場合、回転側部材が、インサート部品を樹脂でモールドすることにより形成される。
また、以上で示したような軸受の開口部には、軸受内部の潤滑油の漏れ出しを防ぐためのシール空間を形成するシール部を配置することもできる。
以上説明した軸受装置は、各種モータに組み込んで使用可能である。以下、動圧軸受装置1をファンモータ用の回転軸支持装置として使用した例を、図9に基づいて説明する。
図9は、本発明に係る動圧軸受装置1を組み込んだファンモータを概念的に示す断面図である。このファンモータは、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたロータ23と、ロータ23の外径端に取付けられたファン24と、例えば半径方向(ラジアル方向)のギャップを介して対向させたステータコイル26aおよびロータマグネット26bと、これらを収容し、上端面および側面の一部が開口したケーシング25とを備えるものであり、一般的にはラジアルギャップ型ファンモータと称される。動圧軸受装置1は、有底円筒状のコップ型の樹脂部5を有する軸受3と、その内周に挿入された軸部材2とからなる。軸部材2の凸球面状の下端と、樹脂部5の内底面とでいわゆるピボット軸受を構成する。ステータコイル26aは、動圧軸受装置1の外周に取付けられ、ロータマグネット26bはロータ23に取付けられている。動圧軸受装置1は、保持部5にケーシング25を一体に有する。なお、ファンモータの形態として、ステータコイル26aとロータマグネット26bとを軸方向(アキシャル方向)のギャップを介して対向させる、いわゆるアキシャルギャップ型ファンモータとすることもできる(図示省略)。
ステータコイル26aに通電すると、ステータコイル26aとロータマグネット26bとの間の電磁力でロータマグネット26bが回転し、それによって、ロータ23及びファン24が軸部材2と一体に回転する。ファン24が回転すると、ケーシング25の上端開口部25aから図9中の矢印Y方向に外気が引き込まれると共に、ケーシング内の空気が側面開口部25bから矢印X方向へ排出される。このようなファンモータは、側面開口部25bから排出される気流によって他の装置等を冷却したり、あるいは、下端面を他の装置(図9中に一点鎖線で示す)と面するように設置し、他の装置の熱がファンモータに伝わり、上記の気流によってファンモータに伝わった熱が外部へ放熱されることにより、装置を冷却したりすることができる。なお、図9に示すように、ロータマグネット26bがステータコイル26aと対向する部分よりも上方へ延在することにより、この延在部とステータコイル26aとの吸引力の軸方向成分が、軸部材2の抜け止めとして作用する。
本発明の軸受装置は、以上の例示に限らず、ディスク駆動用のスピンドルモータ等の高速回転下で使用される情報機器用の小型モータや、レーザビームプリンタのポリゴンスキャナモータ等における回転軸支持用、あるいはプロジェクタのカラーホイールモータ用の軸受としても好適に使用することができる。
本発明に係る動圧軸受装置1の断面図である。 マスター軸7にマスキングを施した状態を示す斜視図である。 電鋳軸9の斜視図である。 射出成形工程を概念的に示す断面図である。 軸受3の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る軸受30の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る動圧軸受装置1の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る動圧軸受装置1の断面図である。 動圧軸受装置1を組み込んだファンモータを示す断面図である。
符号の説明
1 動圧軸受装置
2 軸部材
3 軸受
4 金属部
5 樹脂部
7 マスター軸
9 電鋳軸
A1、A2 ラジアル軸受面
G1、G2 動圧発生部
G11、G21 第一領域
G12、G22 第二領域
R1、R2 ラジアル軸受部
T スラスト軸受部

Claims (5)

  1. 回転側部材と、固定側部材と、回転側部材と固定側部材の何れか一方に設けられ、回転側部材と固定側部材との間に形成された軸受隙間に潤滑流体の動圧作用を発生させるための凹凸を有する動圧発生部とを備えた動圧軸受装置において、
    前記動圧発生部が、インサート部品を樹脂でモールドすることにより形成され、かつ、前記動圧発生部に、インサート部品に設けられ、前記樹脂とは異なる材料からなる第一領域と、前記樹脂からなる第二領域とを設け、第一領域と第二領域とで前記凹凸を形成したことを特徴とする動圧軸受装置。
  2. 第一領域と第二領域との間に、前記樹脂の成形収縮で形成された段差を有する請求項1記載の動圧軸受装置。
  3. 第一領域を第二領域よりも相手部材側に接近させた請求項1記載の動圧軸受装置。
  4. 第二領域を第一領域よりも相手部材側に接近させた請求項1記載の動圧軸受装置。
  5. インサート部品が電鋳金属で形成されている請求項1〜4何れか記載の動圧軸受装置。
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