JP2007308757A - マグネシウム又はマグネシウム合金部材 - Google Patents

マグネシウム又はマグネシウム合金部材 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、耐食性と液状ガスケットなどのシール材の密着性に優れたマグネシウム又はマグネシウム合金部材を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金部材(以後、単にマグネシウム合金部材という)は、基材の表層部分にプラズマ電解酸化被膜(以後、プラズマ酸化膜という)を形成したマグネシウム合金部材であって、このプラズマ酸化膜には、少なくとも基材に連続して孔径が0.01〜1μmの空孔を含む緻密層を有することを特徴とする。また、緻密層におけるこのような空孔の分布密度は、10〜1000個/mm2であることが望ましい。
【選択図】図3

Description

本発明はマグネシウム又はマグネシウム合金部材に関する。より詳しくは、表層の所定の部位又は全体にプラズマ電解酸化被膜を形成したマグネシウム又はマグネシウム合金部材に関する。
従来、ヘッドカバー、オイルパン、タイミングチェーンカバーなど自動車の内燃機関におけるカバー類や、トランスミッションのケース類などには、アルミダイカスト部材や鋼板部材が使用されている。近年、燃費向上の観点からこれらの部材についても軽量化が望まれるようになり、アルミニウムよりもさらに軽量なマグネシウムやマグネシウム合金部材を使用する要求が高まって来た。
しかし、マグネシウムは、軽量である反面、活性な金属であるために耐食性が悪い、あるいは、大気中では容易に酸化されて表面に酸化被膜が形成されるため、例えば、オイルパンなどのシール部では液状ガスケットなどのシール材を塗布しても界面剥離を生じて良好なシール性を保持できないなどという問題があった。
このような問題を解決するために多くの提案がなされており、例えば、マグネシウム材を陽極酸化することにより、表面を安定な酸化被膜で覆うことで、耐食性とともに塗装の密着力も向上できるマグネシウム合金の表面処理方法が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、陽極酸化被膜は、基材表面に対して柱状に結晶が成長するために、部材の角部などではいわゆる付き回り性が悪くなるために、エンジンカバー類などに適用した場合には十分な耐食性を確保することができない。
また、電解液中で高電圧(プラズマ)をかけてマグネシウム又はマグネシウム合金上に酸化物セラミック被膜を作り、さらにその上からカチオン電着塗装膜を形成する表面処理方法が開示されている(特許文献2参照)。そしてカチオン電着塗装した酸化物セラミック被膜により、耐食性や密着性が著しく改善されるとしている。しかし、プラズマ電解酸化処理とカチオン電着塗装という2種類の表面処理を施すことは、生産性やコスト面を考慮すると必ずしも適当ではない。
特開2003−328188号公報 特開2000−345370号公報
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、耐食性と液状ガスケットなどのシール材の密着性に優れたマグネシウム又はマグネシウム合金部材を提供することを課題とする。
本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金部材(以後、単にマグネシウム合金部材という)は、基材の表層部分にプラズマ電解酸化被膜(以後、プラズマ酸化膜という)を形成したマグネシウム合金部材であって、このプラズマ酸化膜には、少なくとも基材に連続して孔径が0.01〜1μmの空孔を含む緻密層を有することを特徴とする。また、緻密層におけるこのような空孔の分布密度は、10〜1000個/mm2であることが望ましい。
本発明のマグネシウム合金部材において、プラズマ酸化膜の厚さは1〜200μmであることが好ましい。
また、本発明のマグネシウム合金部材において、プラズマ酸化膜は前記緻密層と、この緻密層に連続する孔径が1〜30μmの空孔を含む多孔質層とからなり、形成されたプラズマ酸化膜の厚さを100%として前記緻密層の厚さは5〜95%であることが望ましい。
マグネシウム合金部材における上記のようなプラズマ酸化膜は、マグネシウム合金部材の締結合わせ面に形成されていることが望ましい。また、マグネシウム合金部材としては、エンジンカバー、あるいはトランスミッションケースなどを例示することができる。
本発明のマグネシウム合金部材は、その表層部分にプラズマ酸化膜を有し、そのプラズマ酸化膜の基材に連続する緻密層に含有される空孔は、孔径が0.01〜1μmであるので、従来のプラズマ酸化膜中に形成される空孔に比べて極めて微細である。また、その微細空孔の分布密度は、10〜1000個/mm2と、極めて少なく、かつ、基材に到達する貫通孔はほとんど存在しない。従って、本発明のプラズマ酸化膜を有するマグネシウム合金部材は優れた耐食性を発揮することができる。
また、本発明のマグネシウム合金部材において、プラズマ酸化膜は基材に連続する緻密層と、この緻密層に連続し孔径が1〜30μmの空孔を含む多孔質層とからなっている。すなわち、酸化膜中の下層部に緻密な層を構成し、表層部のみ多孔質であるプラズマ酸化膜を形成することで、耐食性を確保するとともに、エンジンオイルパンなどの部材同士の締結合わせ面では欠くことのできない液状ガスケットの密着力を確保して優れたシール性を維持することができる。このようなプラズマ酸化膜を有するマグネシウム合金部材は、エンジンカバー、あるいはトランスミッションケースなどとして好適である。
本発明のマグネシウム部材の好適な実施の形態について図を参照しながら説明する。
(第1の実施の形態)
図1に第1の実施形態のマグネシウム合金部材における表層部分の断面の一例を示す。図1は、顕微鏡観察した断面をスケッチして模式的に示したものである。図1において、基材1の表層部分はマグネシウムが酸化マグネシウム(MgO)に転化したプラズマ酸化膜2で構成されており、プラズマ酸化膜2は、全体が微細な空孔3を含む緻密層となっている。このような空孔3は、被膜生成時に、基材と電解液との反応によって生じる気体(ガス)が被膜を通して電解液中へ進出することにより形成される貫通孔であり、従来は、図2に示すように、孔径が1〜30μm程度の粗大な空孔13であった。このため、プラズマ酸化膜12を有するマグネシウム合金部材では満足できる耐食性を得ることができなかった。しかし、後述するプラズマ電解酸化処理方法により本発明では、プラズマ酸化膜2中に含まれる空孔3の孔径を0.01〜1μmとすることができる。孔径が0.01μm未満では、プラズマ酸化膜2の成膜速度が遅すぎて生産性が低くコスト上昇招くおそれがある。また、1μmを越えて孔径が大きいと形成されたプラズマ酸化膜2の耐食性が低下するので好ましくない。より好ましくは0.1〜0.5μmである。なお、空孔は、三次元的に被膜を貫通するように形成されているが、図1〜3に示す任意の断面では不定形の液滴形状として観察され、本明細書における空孔の大きさは、このプラズマ酸化膜の断面観察像における空孔径である。
また、プラズマ酸化膜2における空孔3の分布密度は、10〜1000個/mm2であることが望ましい。空孔3の分布密度が10個/mm2未満では、プラズマ酸化被膜2の成膜速度が遅すぎて生産性が低くコストを上昇させる。また、1000個/mm2を越えて空孔3が多いと電解酸化被膜の耐食性が低下するので好ましくない。より好ましくは50〜200個/mm2である。ここで空孔の分布密度は、プラズマ酸化膜の断面観察像における分布密度である。
上記のような空孔3を含むプラズマ酸化膜2の厚さは、1〜200μmであることが好ましい。厚さが、1μm未満では十分な強度と耐食性とを有する被膜とすることができず、200μmを越えて厚い場合には、上記に規定した空孔の大きさと分布密度とを維持することができない。より好ましくは、10〜20μmである。
このようなマグネシウム合金としては、組織的には、Mg金属単体、Mg−Al系合金、Mg−Zn系合金、Mg−Zr系合金、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Al−Mn系合金、Mg−Zn−Zr系合金、Mg−希土類元素系合金、Mg−Zn−希土類元素系合金、Mg−Li系合金、Mg−Li−Y系合金、Mg−Ca−希土類元素系合金などのマグネシウム合金を例示することができる。また用途的には、AZ63、AZ91、AZ92、AM100、ZK51、EZ33,ZE41などからなる金型鋳造部材、砂型鋳造部材、ダイカスト部材や、AZ31、AZ61、AZ80、ZK60などからなる展伸部材などを挙げることができる。また、上記のようなプラズマ酸化膜2は、如何なる表面状態のマグネシウム合金部材表面にも形成することができ、例えば、ダイカストのままの表面でも、塑性加工したままの表面でも、研磨により鏡面仕上げした表面でもよい。
以上のようなプラズマ酸化膜2を有するマグネシウム合金部材は、次のようにして得ることができる。
本発明におけるプラズマ電解酸化処理は、脱脂工程、荒洗浄工程、仕上げ洗浄工程、プラズマ酸化工程、洗浄工程、乾燥工程の順に行われる。
脱脂工程では、例えば、アルカリ溶液を用いて成形されたマグネシウム合金部材の表面に付着した加工油などの洗浄除去を行う。荒洗浄工程では、例えば、洗剤による超音波洗浄を行う。仕上げ洗浄工程では、例えば、脱イオン水(又は超純水)を用いて超音波洗浄を行う。仕上げ洗浄工程の後、例えば、部材同士の締結合わせ面などのプラズマ酸化膜を形成する領域以外の表面にマスクを形成する。なお、マグネシウム合金部材の全表面にプラズマ酸化膜を形成する場合はマスクをしなくてもよい。
プラズマ電解酸化工程では、上記のように前処理されたマグネシウム合金部材を処理液に浸漬し、5〜40℃でプラズマ電解酸化処理を行って、所定の表面にプラズマ酸化膜を形成する。ここで、処理液は、弱アルカリ性の電解液であり、水を主成分に(1)リン酸ナトリウム(Na3PO4)を1〜10g/l、(2)ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)を1〜20g/l、(3)水酸化ナトリウム(NaOH)を0.1〜10g/l、(4)フッ化ナトリウム(NaF)を1〜30g/lを添加したものである。プラズマ電解酸化処理では、このような処理液内で、パルスバイポーラー電流と特殊波形発信電源による交流パルス電流を流し、電流密度やパルス波形などを最適化することで、上記のように微細な空孔3を含む緻密なプラズマ酸化膜2を形成することができる。
そして、プラズマ酸化処理後の洗浄工程では、例えば、脱イオン水(又は超純水)を用いて超音波洗浄を行う。乾燥工程では、洗浄液(脱イオン水又は超純水)を蒸発させる。
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、図3に示すように、上記の第1の実施形態のプラズマ酸化膜2である緻密層22aと、その上に形成される粗大な空孔23bを含む多孔質層22bとからなるプラズマ酸化膜22を形成したマグネシウム合金部材である。緻密層22aは、前記と同様に微細な空孔23aを含む緻密な酸化膜(MgO)であり、多孔質層22bは、孔径が1〜30μmの空孔23bを含む多孔質の酸化膜(MgO)である。ここで、緻密層22aの厚さtは、形成されるプラズマ酸化膜22の厚さt0の5〜95%であることが望ましい。厚さtが厚さt0の5%未満では、十分な耐食性と強度とを得ることができない。また、95%を越えて厚いと多孔質層22bの厚さが薄くなり、多孔質層の表面に液体ガスケットなどを塗布した場合に塗料のアンカー効果が不十分なために密着力が低下することがあるので適当ではない。より好ましくは、50〜80%である。
このような緻密層22aの上に多孔質22b層を有するプラズマ酸化被膜22は、前記のプラズマ電解酸化処理において、電流密度や電源波形などを適宜調整することで得ることができる。例えば、従来よりも低い電流密度で緻密層を形成し、しかる後に電流密度を高めることで多孔質層を形成することができる。
以下、試験例によって本発明をさらに詳しく説明する。
(試料の調整)
マグネシウム金属板(25mm×100mm×2.5mm)にプラズマ電解酸化処理を施して試料1、試料2を作製した。試料1は、本発明のマグネシウム合金部材に相当するものであり、表層部には図3に示すプラズマ酸化膜22が形成されている。プラズマ酸化膜22の厚さt0は20μmであり、緻密層22aの厚さtは16μmである。緻密層22a中には孔径が約0.2μmの空孔23aが100個/mm2の分布密度で含まれており、多孔質層22bには孔径が約10μmの空孔23bが約5000個/mm2の分布密度で含まれている。試料2は、従来のプラズマ酸化被膜を有するマグネシウム合金部材に相当するものであり、表層部には図2に示すプラズマ酸化膜12が形成されている。プラズマ酸化膜12の厚さは20μmであり、酸化膜中には孔径が約10μmの空孔13が約7000個/mm2の分布密度で含まれている。
(試験1)
試験1では各試料の耐食性を確認した。各試料について各々2個の試験片を準備し、JIS Z 2371に準拠して1200時間の塩水噴霧試験を実施し、プラズマ酸化膜表面に変色が発生するまでの時間を耐食時間として評価した。なお、比較のために、従来の陽極酸化膜(厚さ20μm)を形成した試料3と、表面処理を施さない未処理のマグネシウム金属板(試料4)を同時に塩水噴霧試験に供した。結果を図4に示す。図4は、各試料の耐食時間を棒グラフで示したものである。
図から分かるように、未処理の試料4は試験開始後20時間で変色し、耐食性に劣っていることが分かる。また、試料3は陽極酸化膜中に基材に到達する多数の貫通孔を有しているので耐食時間が約400時間と短い。従来のプラズマ酸化膜を形成した試料2は、試料3よりは優れているものの、酸化膜中に粗大な空孔(貫通孔)を多数含んでいるために耐食時間は約650時間であった。
しかし、プラズマ酸化膜の大半が緻密層でその表層部に僅かの多孔質層を有する試料1では、耐食時間は約1000時間であった。すなわち、試料4<試料3<試料2<試料1の順に耐食時間は長く、本発明の試料1が最も優れていることが分かる。
(試験2)
試験2ではプラズマ酸化膜に対する液状ガスケットの密着性を確認した。
本発明のプラズマ酸化膜22を有する試料1と無処理のマグネシウム金属板(試料5)とをそれぞれ2枚づつ(TP1、TP2およびTP1’、TP2’)準備した。
図5に示すように、試料片TP2(TP2’)の一端側Aに液状ガスケット(スリーボンド(株)製 商品名:FIPG)を約0.05g/cm2塗布して、その上に試料片TP1(TP1’)を載置し、0.2MPaで加圧しながら80℃で360分乾燥して、試料片TP1(TP1’)とTP2(TP2’)とを接着した。なお、試料1では、図5(a)に示すように各試料片のプラズマ酸化膜面Pを対向するように配置して接着した。
接着後、試料片TP1(TP1’)とTP2(TP2’)とを互いに逆方向に引張り密着性を評価した。
試料5では、図5(b)右図に示すように、基材であるマグネシウム金属板の表面と液状ガスケットGの界面から剥離した。一方、試料1では、図5(a)右図で示すように、試料片TP1とTP2のそれぞれの表面に液状ガスケットG1、G2が残って、液状ガスケットG自体が剪断破壊していることが分かる。すなわち、液状ガスケットはプラズマ酸化膜Pとの密着力が高く、エンジンオイルパンなどのシール部においては十分なオイルシール性を発揮することが期待できる。また、試料2や試料3でも液状ガスケットは試料片との界面で剥離し、試料1が液状ガスケットとの密着性に優れていることが確認できた。
試験1および試験2から本発明のマグネシウム合金部材に相当する試料1は、プラズマ酸化膜に緻密層を有するすることで優れた耐食性を保持し、また、その表層部に多孔質層を形成していることで、エンジンオイルパンなどでは欠くことのできない液状ガスケットの密着力を確保して優れたシール性を維持できることが分かる。
上記のようなプラズマ酸化膜を有する本発明のマグネシウム又はマグネシウム合金部材は、ヘッドカバー、オイルパン、タイミングチェーンカバーなど自動車の内燃機関におけるカバー類や、トランスミッションのケース類などとして好適である。
第1の実施形態のマグネシウム合金部材における表層部分の一例を示す断面模式図である。 従来のプラズマ酸化膜を有するマグネシウム合金部材における表層部分の一例を示す断面模式図である。 第2の実施形態のマグネシウム合金部材における表層部分の一例を示す断面模式図である。 塩水噴霧試験結果を示す棒グラフである。 密着性試験を説明する説明図である。(a)は本発明の試料1の場合、(b)は未処理の試料5の場合である。
符号の説明
1:基材 2:プラズマ酸化膜 3:空孔

Claims (7)

  1. 基材の表層部分にプラズマ電解酸化被膜を形成したマグネシウム又はマグネシウム合金部材であって、
    前記プラズマ電解酸化被膜は、少なくとも前記基材に連続して孔径が0.01〜1μmの空孔を含む緻密層を有することを特徴とするマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  2. 前記緻密層における前記空孔の分布密度は、10〜1000個/mm2である請求項1に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  3. 前記プラズマ電解酸化被膜の厚さは1〜200μmである請求項1又は2に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  4. 前記プラズマ電解酸化被膜は、前記緻密層と、該緻密層に連続する孔径が1〜30μmの空孔を含む多孔質層とを有する請求項1〜3のいずれかに記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  5. 前記緻密層の厚さは、前記プラズマ電解酸化被膜の厚さを100%として5〜95%である請求項4に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  6. 前記プラズマ電解酸化被膜は、前記マグネシウム又はマグネシウム合金部材の締結合わせ面に形成されている請求項4または5に記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
  7. 前記マグネシウム又はマグネシウム合金部材は、エンジンカバー、あるいはトランスミッションケースである請求項1〜6のいずれかに記載のマグネシウム又はマグネシウム合金部材。
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