JP2007308322A - 廃棄物を用いた肥料の製造方法及び肥料 - Google Patents

廃棄物を用いた肥料の製造方法及び肥料 Download PDF

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Abstract

【課題】
廃棄物を用い、肥料成分が多く、土壌への溶出性に優れ、しかも安全性にも優れた肥料の製造方法及びその肥料の提供。
【解決手段】
廃棄物に石灰源材料を添加して、SiO2の含有量を30〜80重量%、Al23の含有量を10〜40重量%、CaOの含有量を10〜50重量%となるように調整する。次に、苦土源材料、加里源材料、リン酸源材料及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加材料を適宜添加・混合し、続いて水熱処理を行うことにより、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体を生成させて肥料とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、廃棄物を用いた肥料の製造方法及び肥料に関し、より詳細には、SiO2及びAl23を含有する廃棄物を原料として、可溶性成分及びく溶性成分を多く含む安全性の高い肥料が得られる肥料の製造方法及びその製造方法によって製造される肥料に関する。
従来より、廃棄物等は、必要に応じて添加材料を加えた後、混合、造粒、水熱、焼成、溶融などの処理を行うことにより、肥料として利用されている。廃棄物等を原料として肥料を製造する技術として、ケイ酸質原料、石灰質原料及び金属Al粉末よりなるスラリを固化させた後、水熱処理によりケイ酸肥料とする技術(特許文献1)、鉄鋼スラグ粉末にバインダーを加えて造粒し、ケイ酸肥料とする技術(特許文献2)、石炭灰を原料とし、加里源材料、バインダー等を加え、造粒、焼成によりケイ酸カリ肥料とする技術(特許文献3)、下水汚泥焼却灰にマグネシウム、カルシウム、ケイ酸等を添加して溶融することによりケイ酸リン肥料とする技術(特許文献4)等が知られている。
しかしながら、上記の廃棄物等を原料とする肥料では、肥料として提供される成分は、アルカリ分、ケイ酸、加里及びリン酸に限られ、更に多くの成分を提供することが求められている。また、肥料成分として提供されていている成分であっても、必ずしも土壌に溶出しやすい形態で供給されていない成分が多い。更に、廃棄物等を原料とする肥料からは有害物が溶出する可能性があり、安全性にも問題がある。
特開昭61−44712号公報 特開昭55−20247号公報 特開昭55−20218号公報 特開2005−255485号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、肥料成分が多く、しかも土壌への溶出性に優れ、更に安全性にも優れた肥料及びその製造方法を提供することである。
本発明の肥料の製造方法は、廃棄物を用いた肥料であって、廃棄物に石灰源材料を添加して、SiO2の含有量を30〜80重量%、Al23の含有量を10〜40重量%、CaOの含有量を10〜50重量%となるように成分調整した後、水熱処理を行うことによりアルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体を生成させることを特徴とする。
ここで、本明細書においては、CaOはCa(OH)2として添加してもよく、その場合、Ca(OH)2はCaOの重量に換算して使用する必要がある。
本発明においては、適正量のSiO2とAl23とを有した廃棄物を用い、これに石灰源材料を添加し、水熱処理により、アルミニウムトバモライト(5CaO・Al23・5SiO2・5H2O)及びそのカチオン置換体を主成分とした反応物を生成させることにより、SiO2成分の溶出量及び溶出速度を大きくすることができ、肥料性能を大きく向上させることが可能となる。更に、アルミニウムトバモライトのCaやAlが有害金属イオンと置換してカチオン置換体を生成するので、有害金属が溶出し難い安全な肥料となる。
また、上記発明において、前記成分調整の後、苦土源材料、加里源材料、リン酸源材料及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加材料を添加・混合し、続いて前記水熱処理を行うことも可能である。
このように、肥料としての必要な成分を配合することにより、廃棄物が本来的に含有しているケイ酸に加えて、アルカリ分、苦土、加里、リン酸を肥料成分として配合することができる。
本発明の廃棄物を用いた肥料の製造方法により製造される肥料は、アルカリ含有量が10〜50重量%、可溶性ケイ酸の含有量が10〜40重量%、く溶性苦土の含有量が0.1〜5重量%、く溶性加里の含有量が0.05〜5重量%、く溶性リン酸の含有量が0.05〜15重量%である。
ここで、本明細書におけるアルカリ含有量とはCaO及びMgOの合計の含有量をいい、また、可溶性ケイ酸の含有量とは0.5Nの塩酸溶液への溶解量を測定したものをいう。また、く溶性苦土の含有量、く溶性加里の含有量、及びく溶性リン酸の含有量は、何れも1%クエン酸溶液への溶解量を測定したものをいう。
廃棄物と添加材料との混合は、通常は造粒機を兼用して行なわれるが、廃棄物又は添加材料の平均粒径が、例えば30μmよりも大きい場合や、より確実に混合することが必要な場合には、ロッド又はビーズなどの媒体による粉砕機能を有する混合機(粉砕機)を使用して平均粒径を30μm以下、好ましくは20μm以下とすることにより、以後の造粒を容易に行うことができ、また、水熱処理によるアルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成反応を促進することができる。
上記の肥料の製造方法は、水熱処理に先だち、水の存在下に造粒を行い、その後に前記水熱処理を行うことにより、容易に水中崩壊しない肥料を得ることができる。また、造粒を行うことにより、取り扱い性が向上するとともに、水和反応が促進される。造粒は、少ない水分量で行う加圧方式は適切ではなく、また、短時間で行うことができるという観点から、撹拌方式、転動方式及び押出方式の何れかにより行うことが好ましい。
また、造粒を行う場合、造粒物は、表面に水分があり、そのままで水熱処理を行うと造粒物同志が強固に付着する場合があるので、常温で0.5〜24時間、好ましくは5〜15時間放置して乾燥させ、必要に応じて解砕処理を行った後、次の水熱処理を行うことが好ましい。
水熱処理は、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成反応を促進するために必須の工程であり、取り扱い性が良好な強固な粒状物が得られるという観点からも必要である。
水熱処理は、適正量のアルミニウムトバモライトを生成させるために、廃棄物特性などの成分等に応じて適正な温度と時間を設定して、水の存在下、密閉状態で加熱することにより行われるが、通常、60〜250℃で1〜24時間加熱するのが好ましく、特に80〜180℃で3〜10時間行うのがより好ましい。上記範囲より温度が低い又は時間が短いと、アルミニウムトバモライトの反応量は少なくなり、上記範囲より温度が高い又は時間が長いと、アルミニウムトバモライトが分解してハイドロガーネット(3CaO・Al23・SiO2・2H2O)となり、肥料性能、安全性が低下する傾向となる。
肥料の粒径は、取り扱い性、肥効性などを考慮して、適正な粒度とする必要がある。具体的には、0.2mmの篩通過割合が10重量%以下で、5mmの篩通過割合が90重量%以上であることが好ましい。0.2mm以下の肥料が多いと粉塵が多く発生し、5mm以上の肥料が多いと肥料成分の溶出速度が遅くなり、肥料性能が低下する。
また、適正範囲を外れた0.2mmより小さい肥料及び5mmより大きい肥料は、0.1mm以下に粉砕した後、造粒前の混合工程に戻すことにより、肥料性能の低下なく、無駄なく全量を肥料化することができる。
本発明によれば、廃棄物のSiO2とAl23とCaOの含有量を調整し、これを水熱処理することにより、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体を生成させて、肥料成分の溶出量及び溶出速度を高めるとともに、より安全性に優れた肥料を得ることができる。加えて、製造に際して廃水が出ないため、環境衛生上からも非常に優れた製造方法である。
また、肥料成分に乏しい廃棄物に対しては添加剤を加えることにより、廃棄物が本来的に含有するSiO2に加えて、石灰源材料、苦土源材料、加里源材料、リン酸源材料を補強することができる。
水熱処理により、肥料成分の可溶性及びく溶性を促進し、陽イオン交換容量に優れたアルミニウムトバモライトを主成分とした反応物を生成させるためには、SiO2の含有量が30〜80重量%、Al23の含有量が10〜40重量%、CaOの含有量が10〜50重量%となるように、石灰源材料を添加する等により廃棄物の成分を調整を行うことが重要である。SiO2の含有量、Al23の含有量及びCaOの含有量が上記より少ないと、十分な量のアルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体が得られず、肥料成分の含有量及び溶解速度、安全性に問題を生じ、上記より多いと未反応物が多く残存し、溶出液のpH及び導電率(EC)が高くなったり、有害重金属が溶出したり、肥料成分の含有量及び溶出速度などに問題を生じる。アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成は、X線回折により確認することができる。
廃棄物中のSiO2は、アルミニウムトバモライト又はそのカチオン置換体とすることにより、可溶性が向上し、苦土及び加里はアルミニウムトバモライトのCaOの一部と置換することにより、く溶性が向上する。また、リン酸はアパタイトとすることにより、く溶性が向上する。
ここで、従来では、アルミニウムの少ない材料を使用して水熱処理が行われていたために、SiO2等はトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2O)に含まれ、これを焼成及び溶融処理によりガラス化したカルシウムシリケート(2CaO・SiO2など)として利用されていた。しかし、この生成物は溶出速度が遅く、肥料性能も低く、更に陽イオン交換容量が小さいことなどにより、有害重金属の固定能力に欠け、安全性にも問題があった。
これに対して、本発明の製造方法では、廃棄物は、SiO2の含有量が30〜80重量%、Al23の含有量が10〜40重量%、CaOの含有量が10〜50重量%となるように成分調整され、SiO2は、アルミニウムトバモライト又はそのカチオン置換体に含まれることとなる。このアルミニウムトバモライト又はそのカチオン置換体は、上記のトバモライト等とは異なり、SiO2を水に溶出し易くする。なお、本発明におけるSiO2及びAl23の形態としては、水和反応性に優れるガラス質が好ましい。
本発明に使用し得る廃棄物は、焼却灰、炭化物、スラグ、汚泥、廃コンクリート及びこれらの任意の組み合わせから選択されたものである。
上記焼却灰としては、紙・プラスチック焼却灰、石炭灰、製紙スラッジ灰、下水汚泥焼却灰、ごみ焼却灰、バイオマス燃焼灰、家畜糞尿燃焼灰等を挙げることができる。
上記炭化物としては、紙・プラスチック炭化物、製紙スラッジ炭化物、下水汚泥炭化物、ごみ炭化物、バイオマス炭化物、家畜糞尿炭化物等を挙げることができる。
上記スラグとしては、鉄鋼スラグ、ごみ溶融スラグ、上水汚泥溶融スラグ、下水汚泥溶融スラグ、シリカヒューム、石綿等の溶融スラグ等を挙げることができる。
上記汚泥としては、建設汚泥、上水汚泥、下水汚泥、砕石スラッジ等を挙げることができる。上記のうち、ガラス質のSiO2、Al23が多く含まれる石炭灰、鉄鋼スラグが廃棄物として好ましい。
本発明において使用し得る石灰源材料としては、生石灰、消石灰、セメント、鉄鋼スラグ粉末、ライムケーキ、貝殻及びこれらの焼成品、並びにこれらの任意の組み合わせを例示することができる。上記のうち、CaO含量の多い生石灰及び消石灰が石灰源材料として好ましい。
本発明において使用し得る苦土源材料としては、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ドロマイト、苦土石灰及びこれらの任意の組み合わせを例示することができる。上記のうち、MgO含量が多い酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムが苦土源材料として好ましい。
本発明において使用し得る加里源材料としては、カリガラス、酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム及びこれらの任意の組み合わせを例示することができる。上記のうち、K2O顔料が多い酸化カリウム及び水酸化カリウムが加里源材料として好ましい。
本発明において使用し得るリン酸源材料としては、リン酸、リン酸塩、アパタイト、下水汚泥焼却灰、骨粉、油粕、家畜糞尿及びこれらの任意の組み合わせを例示することができる。上記のうち、リン含有量が多いリン酸及びアパタイトがリン酸源材料として好ましい。
本発明の廃棄物を用いた肥料の製造方法により得られる肥料は、アルカリ含有量が10〜50重量%、可溶性ケイ酸の含有量が10〜40重量%、く溶性苦土の含有量が0.1〜5重量%、く溶性加里の含有量が0.05〜5重量%、く溶性リン酸の含有量が0.05〜15重量%であることが好ましい。これらの成分を上記の範囲に調整するためには、使用する廃棄物及び添加材料中のそれらの成分の含有量及び形態に応じて調整することが必要である。また、栽培する植物等により好ましい成分の範囲は異なるので、栽培植物等ごとに個別の配合調整を行うことが必要である。上記の肥料成分の量が少ないと、十分な生育効果が出ず、多いと種々の生育障害が起こる点に注意を要する。
本発明の廃棄物を用いた肥料の製造方法の実施形態について、図面に基づいて具体的に説明する。図1は、苦土、加里、リン酸などを含有する廃棄物1に対し、石灰原材料のみを加えて肥料を製造する場合の一例を示した概念図である。本実施形態では、60.2重量%のSiO2及び15.2重量%のAl23を含有する廃棄物1(石炭灰)100重量部に、50重量%の生石灰を石灰原材料として添加し、羽根を有する造粒機による混合工程2を経た後、造粒工程3において水を添加し撹拌して0.2〜6mmに造粒する。これを常温で放置した後(工程4)、次の水熱処理工程5で180℃、5時間の条件で水熱処理を行う。次に、分級工程6で選別することにより、粒径が0.2〜5mmで、アルカリ含有量33重量%、可溶性ケイ酸含有量29重量%、く溶性苦土含有量0.4重量%、く溶性加里含有量0.7重量%、く溶性リン酸含有量0.1重量%の肥料を得る。粒径が0.2mmより小さい肥料と5mmより大きい肥料は、粉砕工程7で粉砕した後、造粒工程3に戻される。なお、造粒工程3で得られる造粒物の粒径を1〜5mmとすれば、分級工程6及び粉砕工程7は省略することができる。
図2は、リン酸含有量が少なく、アルカリ含有量の多い廃棄物1aに対し、リン酸含有量が多く、アルカリ含有量が少ない廃棄物1bを添加して成分調整を行い、更に消石灰を添加して肥料を製造する場合の一例を示した概念図である。90重量%の廃棄物1aと、10重量%の廃棄物1bとの混合物(SiO2含有量は37重量%、Al23含有量は24.4重量%)100重量部に、消石灰15重量部を添加し、ビーズミルを用いた混合工程2で粉砕・混合を行う。次に、造粒工程3において水を添加し、混練しながら3mm径に押出造粒し、常温放置することなく水熱処理工程5に移行し、直ちに185℃で4時間水熱処理を行う。これにより、本実施形態では分級工程を経ることなく、粒径が3mmで、アルカリ含有量29重量%、可溶性ケイ酸含有量24重量%、く溶性苦土含有量1.4重量%、く溶性加里含有量0.9重量%、く溶性リン酸含有量0.8重量%の肥料を得る。
本発明を以下の実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す組成の石炭灰を用いて肥料を製造した。まず、石炭灰(平均径22μm)100重量部に、生石灰45重量部を添加し、撹拌造粒機を用いて混合した後、この混合物100重量部に、水を31重量部添加して1.5mmに造粒した。次に、22℃、相対湿度56%の雰囲気に10時間放置した後、容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で5時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、0.5〜5mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は30重量%、可溶性ケイ酸含有量は26重量%、く溶性苦土含有量は0.3重量%、く溶性加里含有量は0.6重量%、く溶性リン酸含有量は0.09重量%であった。また、この肥料についてX線回折による解析を行い、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成を確認した。この肥料の圧壊強度は5kg(2mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.4であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で3900mg/Lであった。
(実施例2)
表1に示す組成の石炭灰を用いて肥料を製造した。まず、石炭灰(平均径22μm)100重量部に、生石灰50重量部を添加し、撹拌造粒機を用いて混合した後、この混合物100重量部に、水を33重量部添加して0.2〜6mmに造粒し、22℃、相対湿度56%の雰囲気に10時間放置した後、容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で5時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、0.2mmと5mmの篩で分級を行い、回収率95重量%で0.2〜5mmの肥料を得た。0.2mmより小さい肥料と5mmより大きい肥料は粉砕して0.1mm以下として、造粒機に投入した。得られた肥料のアルカリ含有量は33重量%、可溶性ケイ酸含有量は29重量%、く溶性苦土含有量は0.4重量%、く溶性加里含有量は0.7重量%、く溶性リン酸含有量は0.1重量%であった。この肥料についてX線回折による解析を行い、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成を確認した。この肥料の圧壊強度は6kg(2mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.6であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で4200mg/Lであった。
(実施例3)
表1に示す組成の製紙スラッジ灰及び下水汚泥焼却灰を用いて肥料を製造した。まず、製紙スラッジ灰(平均径87μm)100重量部に、下水汚泥焼却灰(平均径45μm)10重量部、消石灰15重量部を添加し、ビーズミルで粉砕しながら混合した後、この混合物100重量部に、水を39重量部添加して混練しながら3mm径に押出造粒した。この造粒物を直ちに容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で4時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、3mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は29重量%、可溶性ケイ酸含有量は24重量%、く溶性苦土含有量は1.4重量%、く溶性加里含有量は0.9重量%、く溶性リン酸含有量は0.8重量%であった。この肥料についてX線回折による解析を行い、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成を確認した。また、圧壊強度は7kg(3mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.4であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で3450mg/Lであった。
(実施例4)
表1に示す組成の製紙スラッジ灰を用いて肥料を製造した。まず、製紙スラッジ灰(平均径87μm)100重量部に、生石灰10重量部、リン酸カルシウム2重量部を添加し、撹拌造粒機を用いて混合した後、この混合物100重量部に、水を42重量部添加して1〜5mmに造粒し、21℃、相対湿度52%の雰囲気に5時間放置した後、容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で5時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、0.5〜5mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は35重量%、可溶性ケイ酸含有量は23重量%、く溶性苦土含有量は2.2重量%、く溶性加里含有量は0.6重量%、く溶性リン酸含有量は0.5重量%のであった。この肥料についてX線回折による解析を行い、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成を確認した。また、圧壊強度は4kg(2mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.5であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で3120mg/Lであった。
(実施例5)
表1に示す組成の下水汚泥焼却灰を用いて肥料を製造した。まず、下水汚泥焼却灰(平均径45μm)100重量部に、消石灰30重量部、硫酸カリウム1重量部を添加し、ビーズミルで粉砕しながら混合した後、この混合物100重量部に、水を34重量部添加して混練しながら3mm径に押出造粒し、ただちに容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で6時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、3mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は25重量%、可溶性ケイ酸含有量は19重量%、く溶性苦土含有量は1.6重量%、く溶性加里含有量は0.7重量%、く溶性リン酸含有量は9.2重量%であった。この肥料についてX線回折による解析を行い、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体の生成を確認した。また、圧壊強度は5kg(3mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.4であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で2430mg/Lであった。
(比較例1…原料のAl23が10重量%以下)
平均径26μmの珪石粉末(SiO2含有量95重量%、Al23含有量2重量%)100重量部に、生石灰30重量部を添加し、撹拌造粒機を用いて混合した後、この混合物100重量部に、水を28重量部添加して1〜5mmに造粒し、21℃、相対湿度52%の雰囲気に5時間放置した後、容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で8時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、0.5〜5mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は20重量%、可溶性ケイ酸含有量は24重量%、く溶性苦土含有量は0.05重量%未満、く溶性加里含有量は0.05重量%未満、く溶性リン酸含有量は0.05重量%未満であった。この肥料についてX線回折による解析を行ったが、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体は殆ど確認できなかった。また、圧壊強度は6kg(2mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.6であり、有害物溶出量は土壌環境基準を満足した。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で200mg/Lであった。
(比較例2…CaOが10重量%以下)
表1に示す組成の石炭灰を用いて肥料を製造した。まず、石炭灰(平均径22μm)100重量部に、生石灰10重量部を添加し、撹拌造粒機を用いて混合した後、この混合物100重量部に、水を28重量部添加して1〜5mmに造粒し、22℃、相対湿度56%の雰囲気に10時開放置した後、容器に入れ、容器に入れたまま水熱処理装置に入れて180℃で5時間水熱処理を行った。その後、水熱処理装置より取り出し、0.5〜5mmの肥料を得た。得られた肥料のアルカリ含有量は9.6重量%、可溶性ケイ酸含有量は7.1重量%、く溶性苦土含有量は0.2重量%、く溶性加里含有量は0.4重量%、く溶性リン酸含有量は0.04重量%の肥料を得た。この肥料についてX線回折による解析を行ったが、アルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体は殆ど確認できなかった。また、圧壊強度は3kg(2mm粒子)、溶出液(10重量%スラリ、6時間振とう後のろ液)のpHは10.3であり、有害物溶出量において、Seが土壌環境基準を満足しなかった。また、リン酸塩緩衝液による10重量%スラリの6時間振とう後のSi溶出量は、pH6で800mg/Lであった。
Figure 2007308322
本発明の肥料は、肥効性、安全性に優れているので、園芸用、畑作用、緑化用の肥料としての利用が可能である。
苦土、加里、リン酸などを含有する廃棄物に対し、石灰原材料のみを加えて肥料を製造する場合の概念図である。 廃棄物の成分調整を行い、消石灰を添加して肥料を製造する場合の概念図である。
符号の説明
1,1a,1b 廃棄物
2 混合工程
3 造粒工程
4 常温放置工程
5 水熱処理工程
6 分級工程

Claims (20)

  1. 廃棄物を用いた肥料であって、廃棄物に石灰源材料を添加して、SiO2の含有量を30〜80重量%、Al23の含有量を10〜40重量%、CaOの含有量を10〜50重量%となるように成分調整した後、水熱処理を行うことによりアルミニウムトバモライト及びそのカチオン置換体を生成させることを特徴とする肥料の製造方法。
  2. 前記成分調整の後、苦土源材料、加里源材料、リン酸源材料及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される添加材料を添加・混合し、続いて前記水熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の肥料の製造方法。
  3. 前記水熱処理に先だち、水の存在下に造粒を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の肥料の製造方法。
  4. 前記造粒の後に、0.5〜24時間常温で乾燥を行い、その後に前記水熱処理を行うことを特徴とする請求項3記載の肥料の製造方法。
  5. 前記肥料のアルカリ含有量が10〜50重量%、可溶性ケイ酸の含有量が10〜40重量%、く溶性苦土の含有量が0.1〜5重量%、く溶性加里の含有量が0.05〜5重量%、く溶性リン酸の含有量が0.05〜15重量%である請求項1乃至4の何れかに記載の肥料の製造方法。
  6. 前記廃棄物は、焼却灰、炭化物、スラグ、汚泥、廃コンクリート及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項1乃至5の何れかに記載の肥料の製造方法。
  7. 前記焼却灰は、紙・プラスチック焼却灰、石炭灰、製紙スラッジ灰、下水汚泥焼却灰、ごみ焼却灰、バイオマス燃焼灰、家畜糞尿燃焼灰及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項6に記載の肥料の製造方法。
  8. 前記炭化物は、紙・プラスチック炭化物、製紙スラッジ炭化物、下水汚泥炭化物、ごみ炭化物、バイオマス炭化物、家畜糞尿炭化物及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項6に記載の肥料の製造方法。
  9. 前記スラグは、鉄鋼スラグ、ごみ溶融スラグ、上水汚泥溶融スラグ、下水汚泥溶融スラグ、シリカヒューム、石綿等の溶融スラグ及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項6に記載の肥料の製造方法。
  10. 前記汚泥は、建設汚泥、上水汚泥、下水汚泥、砕石スラッジ及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項6に記載の肥料の製造方法。
  11. 前記石灰源材料は、生石灰、消石灰、セメント、鉄鋼スラグ粉末、ライムケーキ、貝殻及びこれらの焼成品、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項1乃至10の何れかに記載の肥料の製造方法。
  12. 前記苦土源材料は、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ドロマイト、苦土石灰及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項2に記載の肥料の製造方法。
  13. 前記加里源材料は、カリガラス、酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項2に記載の肥料の製造方法。
  14. 前記リン酸源材料は、リン酸、リン酸塩、アパタイト、下水汚泥焼却灰、骨粉、油粕、家畜糞尿及びこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されたものである請求項2に記載の肥料の製造方法。
  15. 前記混合は、ロッド又はビーズによる粉砕機能を有する混合機を使用して行うことを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の肥料の製造方法。
  16. 前記造粒は、撹拌方式、転動方式及び押出方式の何れかにより行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の肥料の製造方法。
  17. 前記水熱処理は、60〜250℃で1〜24時間行うことを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の肥料の製造方法。
  18. 前記水熱処理の後、更に肥料粒子の分級を行って、所定の範囲の粒径を有する肥料を選別することを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の肥料の製造方法。
  19. 前記所定範囲以外の粒径を有する肥料を、前記添加材料の混合工程に戻すことを特徴とする請求項18に記載の肥料の製造方法。
  20. 請求項1乃至19の何れかの肥料の製造方法によって製造される肥料。
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