JP6022226B2 - けい酸りん酸肥料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、下水汚泥および/または下水汚泥焼却灰を含む下水汚泥由来物、カルシウム源、並びに、シリカ源を含む原料を焼成してなるけい酸りん酸肥料の製造方法に関するものである。
従来、我が国では、天然のリンは産出されないためほぼ全量を輸入してきたが、近年、天然のリンは枯渇してリンの価格が高騰していることから、リンの確保は困難になっている。そこで、けい酸りん酸肥料の製造分野では天然のリンの代替物として、リンを多く含む下水汚泥焼却灰が考えられている。
しかし、下水汚泥焼却灰はCaOが少ないため、けい酸りん酸肥料の原料とするにはカルシウム源を添加してCaOを補う必要がある。例えば、特許文献1には、下水汚泥焼却灰にカルシウム等の添加物を混合し、該混合原料を溶融炉内で加熱し、溶融炉内に貯留した溶融スラグを水冷処理してけい酸りん肥料を製造する方法が記載されている。
特開2005−255485号公報
しかし、下水汚泥焼却灰にカルシウム源を添加しただけでは、肥料中のSiO量が相対的に低下して可溶性けい酸が減少し、けい酸の可溶率が低下する。下水汚泥焼却灰はりん酸成分をP換算で15〜30質量%程度含むため、前記のように、りん酸肥料の原料として有望視されており、該肥料にけい酸加給特性を付与できれば、く溶性りん酸とともに可溶性けい酸も高くなり肥料価値がより一層向上する。さらに、下水汚泥焼却灰に対しCaOとともにSiOを同時に補うことができれば、肥料原料の調合作業を簡素化でき、また、天然のカルシウム源やシリカ源の使用量を削減できるため、天然資源の節約にもなる。
また、前記製造方法は溶融法を用いるため、溶融によるエネルギー消費が大きいほか、バッチ式の溶融炉では連続生産ができず生産効率が低いという課題もある。
ところで、生コン工場やコンクリート製品工場等では、ミキサー設備内やミキサー車内の残コンや戻りコン等の洗浄により、生コンスラッジが日々発生している。この生コンスラッジは強アルカリ性であるため取扱いが困難で、通常は、産業廃棄物(汚泥)として管理型処分場に埋め立てられている。しかし、全国における生コンスラッジの年間排出量は約100万トンと大量であり、管理型処分場の残余年数を縮める原因の一つにもなっている。したがって、我が国における循環型社会の形成の観点から、生コンスラッジを大量にリサイクルできる手段が求められている。
これらの状況のもと、本発明者らは、りん酸のく溶率とともにけい酸の可溶率が高いけい酸りん酸肥料の製造方法を検討した。その結果、下水汚泥および/または下水汚泥由来物をけい酸りん酸肥料の主要な原料として用いた場合、カルシウム源とともにシリカ源も加えて焼成すれば品質の高い肥料が製造できること、また、これらの中でも生コンスラッジはCaOとSiOの含有率が高いため、該原料に対しCaOとSiOを同時に補うことができる成分調整用原料として大量に使用できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成を有するけい酸りん酸肥料の製造方法を提供する。
[1]原料として、少なくとも、下水汚泥および/または下水汚泥由来物、カルシウム源、並びに、シリカ源を混合し、けい酸りん酸肥料中のCaOの含有率が35〜60質量%、SiOの含有率が15〜30質量%、Pの含有率が5〜30質量%、並びに、CaO、SiO、およびPとを除く成分の含有率が30質量%以下となる混合原料を得る混合工程と、前記混合原料を焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成し、焼成物であるけい酸りん酸肥料を得る焼成工程を含む、けい酸りん酸肥料の製造方法。
[2]前記カルシウム源およびシリカ源が生コンスラッジである、前記[1]に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
[3]前記生コンスラッジは、生コンスラッジ中のCaO/SiOのモル比が0.7以上3.0以下である、前記[1]または[2]に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
[4]前記けい酸りん酸肥料中の、(A)CaOとPとを除く成分、(B)CaO、および(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=55/36/9〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/60/5〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=25/60/15〕、および
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=44/36/20〕
で囲まれる範囲内にある、前記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
[5]さらに、前記混合工程と前記焼成工程の間に、前記混合原料を造粒して、公称目開きが5.6mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる割合が75質量%以上である造粒物を得る造粒工程を含む、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
[6]さらに、前記焼成工程の後に、前記焼成物から、公称目開きが4mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる部分を篩分けして得る整粒工程を含む、前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法
本発明のけい酸りん酸肥料の製造方法によれば、(i)りん酸のく溶率およびけい酸の可溶率が高いけい酸りん酸肥料が得られ、(ii)溶融法と比べエネルギー消費が少なく、(iii)焼成炉にロータリーキルンを用いる場合は連続生産が可能となり生産効率が向上し、(iv)カルシウム源およびシリカ源として生コンスラッジを用いた場合には、生コンスラッジを大量に使用できるから廃棄物の有効利用と天然資源の節約になる。
(A)CaOとPとを除く成分、(B)CaO、および(C)Pの質量比を示す三角線図である。
本発明は、前記のとおり、混合工程と焼成工程を必須の工程として含み、さらに造粒工程と整粒工程を任意の工程として含む、けい酸りん酸肥料の製造方法である。
以下、混合工程、焼成工程、造粒工程、整粒工程、原料、およびけい酸りん酸肥料の特性とに分けて本発明を説明する。なお、%は特に示さない限り質量%である。
1.混合工程
該工程は、原料として、少なくとも、下水汚泥および/または下水汚泥由来物(以下「下水汚泥等」という。)、カルシウム源、並びに、シリカ源を混合し、けい酸りん酸肥料中のCaOの含有率が35〜60%、SiOの含有率が15〜30%、Pの含有率が5〜30%、並びに、CaO、SiO、およびPとを除く成分の含有率が30%以下となる混合原料を得る工程で、本発明における必須の工程である。
一般に、下水汚泥等はカルシウムの含有率が低いため、カルシウム源を混合してけい酸りん酸肥料中のカルシウムを補う必要がある。そして、けい酸りん酸肥料中の前記各成分の含有率が前記範囲内であれば、りん酸のく溶率やけい酸の可溶率は高い。
ここで、りん酸のく溶率は、けい酸りん酸肥料中の全りん酸に対するく溶性りん酸の質量比(%)であり、けい酸の可溶率は、該肥料中の全けい酸に対する可溶性けい酸の質量比(%)である。そして、く溶性りん酸および可溶性けい酸は、それぞれ肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されているバナドモリブデン酸アンモニウム法および過塩素酸法により測定することができる。
前記原料を混合する方法は、前記各原料を、通常の混合装置または粉砕を兼ねてミル等を用いて混合するほか、焼成炉としてロータリーキルンを用いる場合は、ロータリーキルンの前段の位置(例えば、窯尻または仮焼炉等)に前記各原料を投入し、ロータリーキルンの転動を利用して混合してもよい。また、前記原料は、粉体またはスラリー状態で混合することができる。
また、各原料を調合する方法として、例えば、各原料の一部を電気炉等で焼成した後、該焼成灰中の酸化物を定量し、該定量値と所定の配合に基づき、各原料を混合する方法が挙げられる。該酸化物の定量は、蛍光X線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。焼成前の混合原料の化学組成は、焼成後のけい酸りん酸肥料の化学組成と同一となる場合が多く、CaO、SiOおよびPの含有率、並びに、これらを除く成分の含有率が前記範囲のけい酸りん酸肥料を得るには、通常、CaO等の含有率が前記範囲を満たす混合原料を用いれば足りる。ただし、正確を期すために、該原料の一部を電気炉等で焼成して、該原料中と該焼成物中のCaO等の含有率の相関を事前に把握しておき、該相関に基づき、原料の混合割合を、目的とするけい酸りん酸肥料中のCaO等の含有率になるように修正することが好ましい。
なお、肥料の用途に応じ加里等のその他の肥料成分を前記混合原料に添加すると、本発明のけい酸りん酸肥料をベースとして多種類の肥料を製造することができる。
2.焼成工程
該工程は、前記混合原料(後記の造粒物を含む。)を、焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成し、焼成物であるけい酸りん酸肥料を得る工程であり、本発明における必須の工程である。前記温度範囲内で焼成したけい酸りん酸肥料は、りん酸のく溶率やけい酸の可溶率等が高い。該焼成温度は、好ましくは1200〜1300℃である。
また、焼成時間は10〜90分が好ましく、20〜60分がより好ましい。該時間が10分未満では焼成が不十分であり、90分を超えると生産効率が低下する。
また、焼成炉としてロータリーキルンや電気炉等が挙げられる。これらのうち、ロータリーキルンは連続生産に適するため好ましい。
また、混合原料に重金属が多く含まれる場合は、前記焼成工程において、高温揮発法、塩化揮発法、塩素バイパス法、および還元焼成法から選ばれる少なくとも1種以上の重金属除去方法を併用することが好ましい。
ここで、高温揮発法とは、高温で焼成することにより混合原料に含まれる沸点の低い重金属を揮発させて除去する方法である。
塩化揮発法とは、混合原料に含まれている鉛、亜鉛等の重金属を、沸点の低い塩化物の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、混合原料を調製する際に塩化カルシウム等の塩素源も混合し、該混合原料を焼成炉を用いて焼成し、生成した重金属の塩化物を揮発させて除去する方法である。なお、原料自体に重金属が揮発するのに十分な塩素が含まれている場合は、塩素源を混合しなくてもよい。
塩素バイパス法とは、混合原料中に含まれている塩素源とアルカリ源が、高温の焼成炉内で揮発して濃縮するという性質を利用した方法である。具体的には、該方法は、混合原料中の塩素が揮発した状態で含まれる燃焼ガスの一部を、焼成炉の排ガスの流路から抽気して冷却し、生成する塩素や重金属を含むダストを分離し除去する方法である。前記塩素源またはアルカリ源に過不足がある場合は、外部から塩素源またはアルカリ源を添加して調整してもよい。
還元焼成法とは、混合原料中の重金属を還元して、沸点の低い金属の形で揮発させて除去する方法である。具体的には、該方法は、重金属を含む混合原料を還元雰囲気下で、および/または還元剤を添加し、焼成炉を用いて焼成して重金属を還元し、この還元した重金属を揮発させて除去する方法である。なお、後記の造粒物は外部との通気が絶たれてその内部が還元雰囲気になるため、酸素が存在する状態で焼成しても重金属が揮発する場合がある。また、造粒物の内部は下水汚泥等に含まれる有機物の燃焼により酸素が消費されて、自ずと還元状態になり重金属の揮発が促進される場合がある。
3.造粒工程
該工程は、前記混合工程と前記焼成工程の間にあって、前記混合原料を造粒(成形も含む。)して、公称目開きが5.6mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる割合が75%以上である造粒物を得る工程であり、本発明における任意の工程である。
該造粒物の焼成は、粉体の焼成と比べ肥料の品質が安定するほか焼成工程も安定し、肥料製造におけるエネルギー効率や生産効率を高めることができる。
また、造粒装置として、例えば、パン型ペレタイザー、パン型ミキサー、撹拌造粒機、ブリケットマシン、ロールプレス、および押出成形機等が挙げられるが、特に、利便性や生産効率に優れる点で、パン型ペレタイザーが好適である。
なお、ここでいう造粒物とは球状物に限定されず、不定形の粒状物も含む。また、前記の造粒工程および後記の整粒工程において用いる篩は、JIS Z 8801−1(2006)「ふるい網の目開き及び線径」に規定する篩である。
混合原料中の含水率は内割で10〜50%が好ましく、10〜40%がより好ましく、20〜30%がさらに好ましい。該値が前記範囲にあれば、造粒するのに十分な塑性が得られるとともに、造粒装置への付着や凝集による塊状物の発生が抑制できる。
含水率は、原料を乾燥して調合した後に水を添加して調整するか、または水分を含む原料を調合した後に乾燥して調整してもよい。
造粒物の絶乾密度(絶乾状態にある個々の造粒物の質量を、該造粒物の容積で除した値の平均値)は、好ましくは1.15g/cm以上、より好ましくは1.2g/cm以上、さらに好ましくは1.3g/cm以上である。該値が1.15g/cm以上であれば、りん酸のく溶率およびけい酸の可溶率が高いけい酸りん酸肥料が得られる。
なお、造粒性(成形性)を高めるため、造粒前の混合原料にベントナイト、セメント、固化材、または増粘剤等の賦形剤を添加してもよい。
4.整粒工程
該工程は、前記焼成工程の後に、前記焼成物から、公称目開きが4mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる部分を篩分けして得る工程である。該工程は、農用地へ施肥する際の粉塵の発生を抑制して肥料の取り扱いを容易にするためや、肥料効果を十分に発揮させるために肥料の粒度を調整する必要がある場合に選択される任意の工程である。
また、該工程において、肥料の用途に応じて、適宜、けい酸やりん酸の成分を追加したり、窒素、加里、苦土等のその他の肥料成分を新たに添加してもよい。
また、前記整粒工程において整粒して得た焼成物の平均の硬度(圧壊強度)は1.0kgf以上が好ましく、3.0kgf以上がより好ましい。該値が1.0kgf以上であれば、焼成物の崩壊による粉塵の発生が抑えられるため肥料の収率が向上し、肥料の取り扱いが容易になり、また肥料効果も高い。なお、前記焼成物の平均硬度は、例えば、焼成物の中から5個を無作為に選び、それらの硬度を木屋式硬度計を用いて測定し、その平均値を算出して求めることができる。
5.原料
次に、本発明の製造方法において用いる原料について説明する。
(1)下水汚泥等(下水汚泥および/または下水汚泥由来物)
下水汚泥等として、下水汚泥(し尿汚泥を含む。)、脱水汚泥、乾燥汚泥、炭化汚泥、下水汚泥焼却灰、および下水汚泥溶融スラグ等から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
このうち、前記下水汚泥は、下水処理場やし尿処理場において下水やし尿等の汚水を処理する過程で、汚水から沈殿や濾過等により分離して得た有機物や無機物を含む泥状物である。下水汚泥には、該泥状物を嫌気性条件下で微生物処理(消化)して得られる消化汚泥も含む。また、一般に、下水処理場等において、汚水は最初沈澱池に導かれ、汚水中の土砂や固形物を沈澱させて一次分離した後、曝気設備において曝気され、さらに最終沈澱池に導かれるが、前記下水汚泥の分離は、それぞれの沈殿池にある汚泥を沈澱させて濾過等することにより行われる。
前記脱水汚泥は、下水汚泥を遠心分離等により脱水して得られる、含水率が70〜90%程度の汚泥である。脱水汚泥は、下水汚泥の一種として下水汚泥に含める場合もあるが、本発明では、脱水汚泥を下水汚泥とは別物として扱う。
前記乾燥汚泥は、前記下水汚泥または脱水汚泥を、天日干しまたは乾燥機により乾燥して得られる、含水率が概ね50%以下の汚泥である。
また、前記炭化汚泥は、下水汚泥、脱水汚泥または乾燥汚泥を、低酸素状態において加熱して、これらに含まれる有機物の一部または全部を炭化物としたものである。該加熱温度は、一般に200〜800℃である。炭化汚泥は、原料のほかに、けい酸りん酸肥料の製造(焼成工程)において燃料の一部にもなるため、その分、焼成に要するエネルギーを節約することができる。
下水汚泥焼却灰は、脱水汚泥等を焼却して得られる残渣である。該焼却灰の化学組成(単位は%)は、一例を示せば、SiO;28、P;25、Al;15、CaO;11、Fe;7、Cr;0.02、Ni;0.02、Pb;0.009、As;0.001、Cd;0.001等である。一般に、該焼却灰は、リン鉱石と比べSiOが多いことが特徴である。
また、下水汚泥溶融スラグは、下水汚泥焼却灰を1350℃以上で溶融して得られる残渣である。
下水汚泥等中の有機分および結晶水を除いた無機物を酸化物換算で100%としたときの、下水汚泥等中のPの含有率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上である。Pが10%以上であれば、カルシウム源やシリカ源として廃棄物である畜糞や生コンスラッジ等をより多く有効利用することができる。
(2)カルシウム源
カルシウム源は、けい酸りん酸肥料中のCaOの含有率が、前記範囲内になるように調整するために用いられる。カルシウム源として、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、石灰石、生石灰、消石灰、セメント、鉄鋼スラグ、石膏、生コンスラッジ(その乾燥物も含む。)、廃モルタル、廃コンクリート、および鶏糞等の畜糞や畜糞由来物などから選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムと石灰石は、入手が容易でカルシウムの含有率が高いため好ましい。また、畜糞および畜糞由来物は、カルシウムのほか、リンやカリの含有率が高いため、下水汚泥等と混合しても、混合原料中のリンの含有率を高く維持できるほか、肥料の重要成分である加里をけい酸りん酸肥料に加えることができるため好ましい。ここで、畜糞由来物として、例えば、発酵畜糞、乾燥畜糞、炭化畜糞、畜糞焼却灰、および畜糞溶融スラグから選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
生コンスラッジは、生コン工場のミキサーおよびアジテータ車の洗い排水や、残コン、戻りコンを処理した排水中に含まれる汚泥であり、CaOとSiOを多く含むため、カルシウム源であるとともに、後記のシリカ源でもある。生コンスラッジは、通常、前記排水(スラリー)から粗粒の砕石を除去した後、フィルタープレス等により固液分離して回収されるが、ここでは、廃モルタルおよび廃コンクリートを破砕して粗骨材を除去した細粒分なども、本質的に同一の成分を含有するから生コンスラッジに含める。本発明において生コンスラッジは、スラリー、脱水ケーキ、または乾燥物の形態で用いることができる。
また、生コンスラッジは、セメント鉱物の水和が進行して硬化するため、硬化後では他の原料と混練する際に均一に混合するために粉砕する必要がある。したがって、硬化前にスラリー状態の生コンスラッジを他の原料と混合した後に固液分離すれば、混合が容易で粉砕が不要になり、また均一な混合原料が得られ好ましい。また、該混合原料は適度に含水して十分な塑性があるため、ロールプレスや押出成形等の方法により粒状に成形することも容易である。前記の混合、固液分離、および成形の操作は、生コン工場外の別の場所で行なうこともできる。
前記生コンスラッジは、生コンスラッジ中のCaO/SiOのモル比が0.7以上3.0以下であるものが好ましく、1.2〜2.5がより好ましい。該値がこの範囲にある生コンスラッジは、CaOとSiOを同時に補うことができる成分調整原料として好ましい。
(3)シリカ源
シリカ源は、珪石、珪砂、砂、珪藻土、シラス、酸性火山灰、酸性火山岩、ケイ酸カルシウム、および生コンスラッジから選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。
ケイ酸カルシウムは工業製品のほかに、ケイ酸カルシウム建材の端材や該建材の廃棄物を用いることができる。また、珪砂、珪藻土等のその他のシリカ源は、市販品を用いることができる。また、使用済みの廃鋳物砂などの砂もシリカ源として用いることができる。
なお、本発明においてけい酸りん酸肥料に苦土成分を補填する場合は、任意の原料として、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、マグネシア、およびドロマイト等から選ばれる少なくとも1種以上のマグネシウム源等を添加することができる。
6.けい酸りん酸肥料の特性
次に、本発明の製造方法により得られるけい酸りん酸肥料の化学組成等の特性について説明する。
前記けい酸りん酸肥料(焼成物)中のCaOの含有率は35〜60%、SiOの含有率は15〜30%、Pの含有率は5〜30%、並びに、CaO、SiO、およびPとを除く成分の含有率は30%以下である。
けい酸りん酸肥料中のCaO等の含有率が前記範囲であれば、該肥料のりん酸のく溶率は60%以上、およびけい酸の可溶率は40%以上である。
また、前記CaOの含有率の下限は40%が好ましく、42%がより好ましく、その上限は55%が好ましく、50%がより好ましい。また、前記SiOの含有率の下限は17が好ましく、20%がより好ましく、その上限は28%が好ましく、25%がより好ましい。また、Pの含有率の下限は9%が好ましく、12%がより好ましく、その上限は27%が好ましく、25%がより好ましい。
ここで、前記のCaO等を除く成分として、例えば、Al、MgO、Fe、Na2O、およびKOなどが挙げられる。また、前記のCaO等を除く成分の含有率は下記式により与えられる。
CaO等を除く成分の含有率(%)=100−CaOの含有率(%)−SiOの含有率(%)−Pの含有率(%)
本発明の製造方法により得られるけい酸りん酸肥料は、三角線図上で示すと、(A)CaOとPとを除く成分、(B)CaO、および(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
点(ア)〔(A)/(B)/(C)=55/36/9〕、
点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/60/5〕、
点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=25/60/15〕、および
点(エ)〔(A)/(B)/(C)=44/36/20〕
で囲まれる範囲内にあるものが好ましい。前記質量比が前記範囲内にあれば、該肥料中のりん酸のく溶率、およびけい酸の可溶率はより高い。
なお、前記(A)、(B)および(C)の合計は100である。また、前記「囲まれる範囲内」には、境界線上も含まれる。
ここで、前記の(A)CaOとPとを除く成分として、例えば、SiO、Al、MgO、Fe、Na2O、およびKOなどが挙げられる。また、(A)の成分の含有率(質量比の値)は下記式により与えられる。
(A)の成分の含有率(%)=100−CaOの含有率(%)−Pの含有率(%)
また、本発明の製造方法により得られるけい酸りん酸肥料は、SiO/Alのモル比が2.5以上が好ましい。該モル比が2.5以上であれば焼成がより容易になる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.けい酸りん酸肥料の製造
表1に示す化学組成(蛍光X線ファンダメンタルパラメーター法により測定)を有する下水汚泥焼却灰a〜e、石灰石微粉末(325メッシュ品)、珪石粉(ブレーン比表面積は3900g/cm)、および生コンスラッジの乾燥粉砕物を原料に用いて、表2に示す配合に従い計量した後、バッチ式混合機(ハイスピーダー SM−150型、太平洋工機社製)を用いて混合原料を調製した。
次に、該混合原料を、内径370mm、長さ3200mmのロータリーキルンを用いて、キルン内の平均滞留時間が40分、キルン回転数が1.15rpm、原料送量が30kg−dry/h、および表2に示す温度で焼成してけい酸りん酸肥料を製造した。
Figure 0006022226
2.く溶性りん酸等の測定
前記けい酸りん酸肥料のく溶性りん酸は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)に規定されているバナドモリブデン酸アンモニウム法により、可溶性けい酸は同法に規定されている過塩素酸法により測定した。また、これらの測定値から、りん酸のく溶率およびけい酸の可溶率を算出した。これらの結果を表2に示す。
なお、表2中のCaO、SiO、およびPの含有率は、混合原料および焼成物中の該各酸化物の含有率である。
Figure 0006022226
3.表2に示す結果について
(1)りん酸のく溶率、けい酸の可溶率
CaOの含有率が35〜60%、SiOの含有率が15〜30%、およびPの含有率が5〜30%である実施例1〜22のけい酸りん酸肥料は、いずれもりん酸のく溶率が70%以上、およびけい酸の可溶率が44%以上と高い。
また、カルシウム源およびシリカ源として、灰石微粉末および生コンスラッジを用いた実施例8〜22のけい酸りん酸肥料は、りん酸のく溶率が70%以上、およびけい酸の可溶率が61%以上とより高い。
さらに、カルシウム源が石灰石微粉末、およびシリカ源が珪石粉である実施例1〜3のけい酸りん酸肥料は、りん酸のく溶率が80〜100%、およびけい酸の可溶率がいずれも100%と著しく高い。
(2)カルシウム源およびシリカ源としての生コンスラッジの単独使用
カルシウム源およびシリカ源として生コンスラッジのみを用いた実施例4〜7のけい酸りん酸肥料は、りん酸のく溶率が70%以上、およびけい酸の可溶率が44%以上と高い。
したがって、本発明の製造方法は、カルシウム源およびシリカ源として生コンスラッジの単独使用も可能なため、原料の調合作業を簡素化でき、また天然のカルシウム源やシリカ源の使用量を削減して天然資源を節約することができる。

Claims (6)

  1. 原料として、少なくとも、下水汚泥および/または下水汚泥由来物、カルシウム源、並びに、シリカ源を混合し、けい酸りん酸肥料中のCaOの含有率が35〜60質量%、SiOの含有率が15〜30質量%、Pの含有率が5〜30質量%、並びに、CaO、SiO、およびPとを除く成分の含有率が30質量%以下となる混合原料を得る混合工程と、前記混合原料を焼成炉を用いて1150〜1350℃で焼成し、焼成物であるけい酸りん酸肥料を得る焼成工程を含む、けい酸りん酸肥料の製造方法。
  2. 前記カルシウム源およびシリカ源が生コンスラッジである、請求項1に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
  3. 前記生コンスラッジは、生コンスラッジ中のCaO/SiOのモル比が0.7以上3.0以下である、請求項1または2に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
  4. 前記けい酸りん酸肥料中の、(A)CaOとPとを除く成分、(B)CaO、および(C)Pの質量比が、図1に示す三角線図の、
    点(ア)〔(A)/(B)/(C)=55/36/9〕、
    点(イ)〔(A)/(B)/(C)=35/60/5〕、
    点(ウ)〔(A)/(B)/(C)=25/60/15〕、および
    点(エ)〔(A)/(B)/(C)=44/36/20〕
    で囲まれる範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
  5. さらに、前記混合工程と前記焼成工程の間に、前記混合原料を造粒して、公称目開きが5.6mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる割合が75質量%以上である造粒物を得る造粒工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法。
  6. さらに、前記焼成工程の後に、前記焼成物から、公称目開きが4mmの篩を全通し、かつ公称目開きが2mmの篩に留まる部分を篩分けして得る整粒工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のけい酸りん酸肥料の製造方法
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