JP2007307730A - ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 - Google Patents

ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】撥水膜形成前の液滴吐出面への酸化膜形成を、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができるノズル基板の製造方法等を提供する。
【解決手段】2段形状で連通されたノズル孔11をエッチング加工によってシリコン基材100に形成する工程と、シリコン基材100の大径孔11b側の面100aに支持基板120を貼り合せる工程と、シリコン基材100の小径孔11a側の面1bを薄板化して小径孔11aの先端部を開口し薄板化加工面1bを形成する工程と、薄板化加工面1bに湿式酸化洗浄で酸化膜104aを形成する工程と、薄板化加工面1bの酸化膜104a上に撥水膜106を形成する工程と、支持基板120をシリコン基材100より剥離する工程とを含むものである。この場合、湿式酸化洗浄がオゾン水洗浄よりなるものである。
【選択図】図7

Description

本発明は、ノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法に関する。
液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドとして、例えばインクジェット記録装置に搭載されるインクジェットヘッドが知られている。インクジェットヘッドは、一般に、インク滴を吐出するための複数のノズル孔が形成されたノズル基板と、このノズル基板に接合されノズル基板との間で上記のノズル孔に連通する吐出室、リザーバ等のインク流路が形成されたキャビティ基板とを備え、駆動部により吐出室に圧力を加えることにより、インク滴を、選択されたノズル孔より吐出するように構成されている。駆動手段としては、静電気力を利用する方式や、圧電素子による圧電方式、発熱素子を利用するバブルジェット(登録商標)方式等がある。
近年、インクジェットヘッドに対して、印字、画質等の高品位化の要求が一段と強まり、そのため高密度化並びに吐出性能の向上が強く要求されている。このような背景から、インクジェットヘッドのノズル部に関して、従来より様々な工夫、提案がなされている。
インクジェットヘッドに対して、インク吐出特性を改善するためには、ノズル部の流路抵抗を調整し、最適なノズル長さになるように基板の厚さを調整することが望ましい。
このようなノズル基板を作製する場合、シリコン基材の一方の面からICP(Inductively Coupled Plasma)放電を用いた異方性ドライエッチングを施し、内径の異なる第1の凹部(噴射口部分となる小径凹部)と第2の凹部(導入口部分となる大径凹部)を2段に形成した後、反対の面から一部分を異方性ウェットエッチングにより掘り下げ、ノズル孔の長さを調整する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
一方、あらかじめシリコン基材を所望の厚さに研磨した後、シリコン基材の両面にそれぞれドライエッチングを施して、ノズル孔の噴射口部分と導入口部分を形成する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
特開平11−28820号公報(第4−5頁、図3、図4) 特開平9−57981号公報(第2−3頁、図1、図2)
特許文献1に記載の技術では、ノズル孔が開口する吐出面がノズル基板の表面から一段下がった凹部の底面に位置するため、インク滴の飛行曲がりが生じたりする。あるいは、紙粉、インク等が吐出面である凹部底面に付着したときに、これらはノズル孔の目詰まりの原因となるため、ゴム片あるいはフェルト片等で凹部底面を払拭して排除するが、ワイピング作業は容易ではなかった。
特許文献2に記載の技術では、インクジェットヘッドの高密度化が進むとシリコン基板を更に薄くしなければならないが、このようなシリコン基板は製造工程中に割れ易く、高価となる。さらに、ドライエッチング加工の際に、加工形状が安定するように、基材の裏面からHeガス等で冷却を行うが、ノズル孔の貫通時にHeガスがリークしてエッチングが不可能になる場合があった。
そのため、予めシリコン基材にノズル孔となる凹部を形成し、例えば、接着層の片面に紫外線または熱などの刺激で接着力が低下する剥離層を持った両面接着のシートを用いて貼り合わせてから、シリコン基材を研削やエッチング加工等により薄板化加工してノズル孔(凹部)を開口する、ノズル基板の製造方法がある。
また、同様に、石英ガラスなどの支持基板に樹脂を用いて貼り合わせてノズル孔(凹部)を開口するノズル基板の製造方法もある。
従来のこれらのノズル基板の製造方法では、液滴吐出面に撥インク膜を形成する前に、撥インク膜の密着性を上げ、耐インク性を持たせるため、液滴吐出面に酸化膜(SiO2 )を形成している。このSiO2 膜は、接着シートあるいは接着樹脂が劣化しない温度である200℃程度以下の温度で形成する必要があり、ECRスパッタ装置等の装置のように、常温で緻密な膜を成膜することができる装置によって成膜している。
しかしながら、これらの装置は高価であり、ランニングコストが高く、成膜処理が枚葉となるため、生産性に問題があった。
また、従来の接着シートあるいは接着樹脂による貼り合わせでは、ノズル孔となる上記凹部内に樹脂が入り込むため、ノズル基材の加工後に支持基板を剥離する際、樹脂残渣が残りやすいという問題があった。
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、撥水膜形成前の液滴吐出面への酸化膜形成を、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができるノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
また、製造工程において樹脂残渣も除去することができるノズル基板の製造方法、液滴吐出ヘッドの製造方法及び液滴吐出装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るノズル基板の製造方法は、小径孔先端が基材により閉じられ大径孔基端が基材表面に開口されて2段形状で連通されたノズル孔をエッチング加工によってシリコン基材に形成する工程と、前記シリコン基材の前記大径孔側の面に支持基板を貼り合せる工程と、前記シリコン基材の前記小径孔側の面を薄板化して該小径孔の先端部を開口し薄板化加工面を形成する工程と、前記薄板化加工面に湿式酸化洗浄で酸化膜を形成する工程と、前記薄板化加工面の前記酸化膜上に撥水膜を形成する工程と、前記支持基板を前記シリコン基材より剥離する工程とを含むものである。
このように、撥インク膜形成前の液滴吐出面への酸化膜の形成を、シリコン基材自体を湿式酸化洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、湿式酸化洗浄の洗浄効果により樹脂残渣も除去することができる。
また、本発明に係るノズル基板の製造方法は、前記湿式酸化洗浄がオゾン水洗浄よりなるものである。
このように、撥インク膜形成前の液滴吐出面への酸化膜の形成を、シリコン基材自体をオゾン水洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、オゾン水洗浄の洗浄効果により樹脂残渣も除去することができる。
本発明に係るノズル基板の製造方法は、小径孔先端が基材により閉じられ大径孔基端が基材表面に開口されて2段形状で連通されたノズル孔をエッチング加工によってシリコン基材に形成する工程と、前記シリコン基材の前記大径孔側の面に支持基板を貼り合せる工程と、前記シリコン基材の前記小径孔側の面を薄板化して該小径孔の先端部を開口し薄板化加工面を形成する工程と、前記支持基板を前記シリコン基材より剥離する工程と、前記薄板化加工面に湿式酸化洗浄で酸化膜を形成する工程と、前記薄板化加工面の前記酸化膜上に撥水膜を形成する工程とを含むものである。
このように、撥インク膜形成前の液滴吐出面への酸化膜の形成を、シリコン基材自体を湿式酸化洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、湿式酸化洗浄の洗浄効果により樹脂残渣も除去することができる。
また、本発明に係るノズル基板の製造方法は、前記湿式酸化洗浄がオゾン水洗浄、硫酸過水洗浄または硝酸過水洗浄よりなるものである。
このように、撥インク膜形成前の液滴吐出面への酸化膜の形成を、シリコン基材自体をオゾン水洗浄、硫酸過水洗浄または硝酸過水洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、オゾン水洗浄、硫酸過水洗浄または硝酸過水洗浄の洗浄効果により樹脂残渣も除去することができる。
本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、上記いずれかに記載のノズル基板の製造方法を適用して液滴吐出ヘッドを製造するものである。
このようにして、安価な設備で、製造コストを下げて、精度のよい液滴吐出ヘッドを製造することができる。
本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造するものである。
このようにして、安価な設備で、製造コストを下げて、精度のよい液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置を製造することができる。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)の分解斜視図、図2は図1の要部の縦断面図である。図において、インクジェットヘッド10は、複数のノズル孔11が所定の間隔で設けられたノズル基板1と、各ノズル孔11に対して独立にインク供給路が設けられたキャビティ基板2と、キャビティ基板2の振動板22に対峙して個別電極31が設けられた電極基板3とを貼り合わせて構成したものである。
ノズル基板1はシリコン基材から作製されている。インク滴を吐出するためのノズル孔11は、径の異なる2段の円筒状に形成されたノズル孔部分、すなわち液滴吐出面1b側に位置して先端がこの液滴吐出面1bに開口する径の小さい第1のノズル孔(噴射口部分の小径孔)11aと、キャビティ基板2と接合する接合面1a側に位置して導入口部分が接合面1aに開口する径の大きい第2のノズル孔(導入口部分の大径孔)11bとから構成され、基板面に対して垂直にかつ同軸上に設けられている。こうして、インク滴の吐出方向をノズル孔11の中心軸方向に揃え、安定したインク吐出特性を発揮させることによって、インク滴の飛翔方向のばらつきをなくし、インク滴の飛び散りをなくすことにより、インク滴の吐出量のばらつきを抑制することができる。
キャビティ基板2はシリコン基材から作製されており、吐出凹部210、オリフィス凹部230およびリザーバ凹部240が形成されている。そして、オリフィス凹部230(オリフィス23)を介して吐出凹部210(吐出室21)とリザーバ凹部240(リザーバ24)とが連通している。リザーバ24は各吐出室21に共通の共通インク室を構成し、それぞれオリフィス23を介してそれぞれの吐出室21に連通している。リザーバ24の底部には後述する電極基板3を貫通するインク供給孔25が形成され、このインク供給孔25を通じて、図示しないインクカートリッジからインクが供給される。また、吐出室21の底壁は振動板22となっている。
なお、キャビティ基板2の全面には、熱酸化によるSiO2 膜26が絶縁膜としてほどこされており、これは、インクジェット駆動時の絶縁破壊やショートを防止する。
電極基板3はガラス基材から作製されている。電極基板3には、キャビティ基板2の各振動板22に対向する位置にそれぞれ凹部310が設けられている。そして、各凹部310内には、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)からなる個別電極31がスパッタにより形成されている。
個別電極31は、リード部31aと、フレキシブル配線基板(図示せず)に接続される端子部31bとを備えている。端子部31bは、配線のためにキャビティ基板2の末端部が開口された電極取り出し部311内に露出している。そして、ICドライバ等の駆動制御回路40を介して、各個別電極31の端子部31bとキャビティ基板2上の共通電極27とが接続されている。
次に、上記のように構成したインクジェットヘッド10の動作を説明する。駆動制御回路40が駆動され、個別電極31に電荷を供給してこれを正に帯電させると、振動板22は負に帯電し、個別電極31と振動板22の間に静電気力が発生する。この静電気力によって、振動板22は個別電極31に引き寄せられて撓む。これによって、吐出室21の容積が増大する。個別電極31への電荷の供給を止めると、振動板22はその弾性力により元に戻り、その際、吐出室21の容積が急激に減少して、そのときの圧力により吐出室21内のインクの一部がインク滴としてノズル孔11より吐出する。振動板22が次に同様に変位すると、インクがリザーバ24からオリフィス23を通って吐出室21内に補給される。
上記のように構成したインクジェットヘッド10の製造方法について、図3〜図12を用いて説明する。図3は本発明の実施の形態1に係るノズル基板1を示す上面図、図4〜図9はノズル基板1の製造工程を示す断面図(図3をA−A線で切断した断面図)、図10〜図11はキャビティ基板2と電極基板3との接合工程を示す断面図、図12はキャビティ基板2と電極基板3との接合基板にノズル基板1を接合してインクジェットヘッド10を製造する製造工程を示す断面図である。
まず、ノズル基板1の製造工程を、図4〜図9を用いて以下に説明する。
(a) 図4(a)に示すように、厚み280μmのシリコン基材100を用意し、熱酸化装置(図示せず)にセットして、酸化温度1075℃、酸化時間4時間、酸素と水蒸気の混合雰囲気中の条件で熱酸化処理し、シリコン基材100の表面に膜厚1μmのSiO2 膜101を均一に成膜する。
(b) 次に、図4(b)に示すように、シリコン基材100の接合面(キャビティ基板2と接合されることとなる面であって、大径孔側の面ともいう)100aにレジスト102をコーティングし、第2のノズル孔となる部分に対応させたパターニング110bを行う。
(c) 次に、図4(c)に示すように、SiO2 膜101を、緩衝フッ酸水溶液(フッ酸水溶液:フッ化アンモニウム水溶液=1:6)でハーフエッチングし、第2のノズル孔となる部分に対応するSiO2 膜101を薄くする。このとき、裏面に位置するインク吐出側の面(小径孔側の面ともいう)100bのSiO2 膜101もエッチングされ、SiO2 膜101の厚みが減少する。
(d) 次に、図4(d)に示すように、シリコン基材100のレジスト102を硫酸洗浄などにより剥離する。
(e) 次に、図5(e)に示すように、シリコン基材100の接合面100a側にレジスト103をコーティングし、第1のノズル孔となる部分に対応させたパターニング110aを行う。
(f) 次に、図5(f)に示すように、緩衝フッ酸水溶液(フッ酸水溶液:フッ化アンモニウム水溶液=1:6)でエッチングし、SiO2 膜101を開口する。このとき、裏面のSiO2 膜101はエッチングされ、完全に除去される。
(g) 次に、図5(g)に示すように、シリコン基材100の接合面100a側に設けたレジスト103を、硫酸洗浄などにより剥離する。
(h) 次に、図5(h)に示すように、ICPドライエッチング装置(図示せず)により、SiO2 膜101の開口部を、例えば深さ25μmで垂直に異方性ドライエッチングし、第1のノズル孔11aを形成する。この場合のエッチングガスとしては、C48、SF6 を使用し、これらのエッチングガスを交互に使用すればよい。ここで、C48は形成される溝の側面にエッチングが進行しないように溝側面を保護するために使用し、SF6 はシリコン基材100の垂直方向のエッチングを促進させるために使用する。
(i) 次に、図6(i)に示すように、第2のノズル孔となる部分のSiO2 膜101のみがなくなるように、緩衝フッ酸水溶液でハーフエッチングする。
(j) 次に、図6(j)に示すように、再度、ICPドライエッチング装置によりSiO2 膜101の開口部を、深さ40μmで垂直に異方性ドライエッチングし、第2のノズル孔11bを形成する。
(k) 次に、シリコン基材100の表面に残るSiO2 膜101をフッ酸水溶液で除去し、その後、シリコン基材100を熱酸化装置(図示せず)にセットし、酸化温度1000℃、酸化時間2時間、酸素雰囲気中の条件で熱酸化処理を行い、図6(k)に示すように、シリコン基材100の接合面100a及びインク吐出側の面100bに、さらに第1のノズル孔11a及び第2のノズル孔11bの側面及び底面に、膜厚0.1μmの酸化シリコン(SiO2 )膜104を均一に成膜する。
(l) 次に、図6(l)(以後、図7(o)に到るまで、図6(k)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態で示す)に示すように、ガラス等の透明材料よりなる支持基板120に、紫外線または熱などの刺激によって容易に接着力が低下する自己剥離層61を持った両面テープ60の面60aを貼り合わせる。支持基板120に貼り合せた両面テープ60の自己剥離層61を備えた側の面60bと、シリコン基材100の接合面100aとを向かい合わせ、これらの面を真空中で貼り合わせる。こうすることによって、接着界面に気泡が残らず、きれいな接着が可能になる。接着界面に気泡が残ると、研磨加工で薄板化されるシリコン基材100の板厚がばらつく原因となる。
(m) 次に、シリコン基材100のインク吐出側の面100bをバックグラインダーにより研削加工し、図7(m)に示すように、第1のノズル孔11aの先端が開口するまで薄板化加工し、液滴吐出面(薄板化加工面)1bを形成する。さらには、ポリッシャー、CMP装置によってノズル面を研磨したり、第1のノズル孔11aの先端部の開口を行ってもよい。このとき、第1のノズル孔11a及び第2のノズル孔11bの内壁は、ノズル内の研磨材の水洗除去工程などで洗浄される。あるいは、第1のノズル孔11aの先端部の開口をドライエッチングで行っても良い。例えば、SF6 をエッチングガスとするドライエッチングで、第1のノズル孔11aの先端部までシリコン基材100を薄くし、表面に露出した第1のノズル孔11aの先端部のSiO2 膜104を、CF4 又はCHF3 等をエッチングガスとするドライエッチングで除去してもよい。
(n) 次に、オゾンを溶存させた洗浄水にシリコン基材100を浸し、図7(n)に示すように、液滴吐出面1bに酸化膜104aを形成する。
例えば、オゾンを80〜90ppm溶存させた洗浄水に、シリコン基材100を10分間洗浄し、液滴吐出面1bに膜厚2nmの酸化膜104aを形成する。このとき、ノズル孔部に露出している自己剥離層61a(図7(m)参照)の一部も除去され、ノズル孔部に入り込んだ自己剥離層も除去される。また、これによって、シリコン基材100の表面が洗浄され、異物、汚れの付着が無くなり、この後の工程である撥インク膜(後述)のコーティングを均一に行うことができる。
こうして、湿式酸化洗浄(オゾン水洗浄)によってシリコン基材100の液滴吐出面(薄板化加工面)1bに酸化膜104aを形成するが、この際、シリコン基材100を支持基板120に貼り合せた状態で処理することができる。
(o) 次に、図7(o)に示すように、シリコン基材100の吐出面1bの表面に撥インク処理を施す。F原子を含む撥インク性を持った材料を蒸着やディッピングで成膜し、撥インク膜106を形成する。このとき、第1のノズル孔11a及び第2のノズル孔11bの内壁も撥インク処理される。
(p) 次に、図7(p)(以後、図8(s)に到るまで、図7(o)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態で示す)に示すように、撥インク処理された液滴吐出面1bに、ダイシングテープ70をサポートテープとして貼り付ける。
(q) 次に、図8(q)に示すように、支持基板120側からUV光を照射する。
(r) こうして、図8(r)に示すように、両面テープ60の自己剥離層61をシリコン基材100の接合面100a面から剥離させ、支持基板120をシリコン基材100から取り外す。
(s) 次に、図8(s)に示すように、ArスパッタもしくはO2 プラズマ処理によって、シリコン基材100の接合面100a側の表面、および第1のノズル孔11a、第2のノズル孔11bの内壁に余分に形成された撥インク層106を除去する。
(t) 次に、図8(t)(以後、図9(u)に到るまで、図8(s)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態で示す)に示すように、シリコン基材100の接合面100a(ダイシングテープ70が貼り付けられている液滴吐出面1bと反対側に位置する面)を真空ポンプに接続された吸着治具90に吸着固定し、液滴吐出面1bにサポートテープとして貼り付けられているダイシングテープ70を剥離する。
(u) 最後に、吸着治具90の吸着固定を解除して、図9(u)に示すように、シリコン基材100からノズル基板1を回収する。
シリコン基材100にはノズル基板外輪溝が彫られているため、吸着治具90からピックアップする段階でノズル基板1は個片に分割されている。
以上の工程を経ることにより、シリコン基材100よりノズル基板1を形成する。
次に、キャビティ基板2及び電極基板3の接合工程を、図10、図11を用いて以下に説明する。なお、キャビティ基板2及び電極基板3の接合工程は、図10、図11に示されるものに限定されるものではない。
(a) まず、図10(a)に示すように、ホウ珪酸ガラス等からなるガラス基材300を、例えば金・クロムのエッチングマスクを使用して、フッ酸によってエッチングすることにより、凹部310を形成する。なお、この凹部310は電極31の形状より少し大きい溝状のものであって、複数形成する。
そして、凹部310の内部に、スパッタによってITO(Indium Tin Oxide)からなる電極31を形成する。その後、サンドブラスト加工等によってインク供給孔25となる孔部25aを貫通形成する。
(b) 次に、シリコン基材200の両面を鏡面研磨した後に、図10(b)に示すように、シリコン基材200の片面にプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition )によってTEOS(TetraEthylOrthosilicate )からなるシリコン酸化膜201を形成する。なお、シリコン酸化膜201を形成する前に、エッチングストップのためのボロンドープ層を形成するようにしてもよい。振動板をボロンドープ層から形成することにより、厚み精度の高い振動板を形成することができる。
(c) 次に、図10(c)に示すように、図10(b)に示すシリコン基材200と、図10(a)に示すガラス基材300を、例えば360℃に加熱し、シリコン基材200に陽極、ガラス基材300に陰極を接続して、800V程度の電圧を印加して陽極接合を行う。
(d) シリコン基材200とガラス基材300を陽極接合した後に、水酸化カリウム水溶液等で図10(c)の工程で得られた接合基板をエッチングすることにより、図10(d)に示すように、シリコン基材200の全体を薄板化する。
(e) 次に、シリコン基材200の上面(ガラス基材300が接合されている面と反対側に位置する面)の全面に、プラズマCVDによってTEOS膜を形成する。
そしてこのTEOS膜に、吐出室21となる凹部210、リザーバ24となる凹部240及びオリフィス23となる凹部230となる部分を形成するためのレジストをパターニングし、この部分のTEOS膜をエッチングして除去する。
その後、図11(e)に示すように、シリコン基材200を水酸化カリウム水溶液等でエッチングすることにより、吐出室21となる凹部210、リザーバ24となる凹部240及びオリフィス23となる凹部230を形成する。このとき、電極取出し部41となる部分41aもエッチングして薄板化しておく。なお、図11(e)のウェットエッチング工程では、初めに35重量%の水酸化カリウム水溶液を使用し、その後、3重量%の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。これにより、振動板22の面荒れを抑制することができる。
(f) シリコン基材200のエッチングが終了した後に、接合基板をフッ酸水溶液でエッチングして、図11(f)に示すように、シリコン基材200に形成されたTEOS膜を除去する。
(g) 次に、シリコン基材200の吐出室21となる凹部210等が形成された面に、図11(g)に示すように、CVDによってTEOS等からなる液滴保護膜202を形成する。
(h) 次に、図11(h)に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)等によって電極取出し部41を開放する。また、シリコン基材200に機械加工又はレーザー加工を行って、インク供給孔25をリザーバ24となる凹部240において貫通させる。これによって、キャビティ基板2と電極基板3が接合された接合基板が完成する。
なお、電極取出し部41に、振動板22と電極31の間の空間を封止するための封止剤(図示せず)を塗布するようにしてもよい。
次に、ノズル基板1、キャビティ基板2及び電極基板3の接合工程を、図12を用いて以下に説明する。
図12に示すように、ノズル基板1の接合面1aに接着剤層を形成し、電極基板3が接合されたキャビティ基板2と、ノズル基板1とを接合する。
以上の製造工程を経ることにより、ノズル基板1、キャビティ基板2及び電極基板3の接合体が完成される。
最後に、キャビティ基板2、電極基板3、ノズル基板4が接合された接合基板をダイシング(切断)により分離して、インクジェットヘッド10が完成する。
実施の形態1によれば、撥インク膜106形成前の液滴吐出面1bへの酸化膜104aの形成を、シリコン基材100自体を湿式酸化洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、湿式酸化洗浄(オゾン水洗浄)の洗浄効果により、樹脂残渣も除去することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、液滴吐出面1bの酸化膜104aの形成をオゾン水洗浄によって行う場合について説明したが(図7(n)参照)、実施の形態2では、液滴吐出面1bの酸化膜104aの形成を硫酸過水洗浄あるいは硝酸過水洗浄によって行う場合について説明する。
実施の形態2の場合、硫酸過水洗浄あるいは硝酸過水洗浄は、樹脂の分解作用が大きく、この方法で行うと自己剥離層61が溶解され、シリコン基材100が支持基板120から剥がれてしまうため、一旦、チップ化してから撥インク処理を行う。
実施の形態1ではノズル基板1を図4〜図9の工程によって製造したが、実施の形態2では、実施の形態1における図4(a)〜図7(m)までの製造工程は実施の形態1で示した場合と同様なので、説明を省略する。
以下、図13(n)〜図14(u)によって実施の形態2のノズル基板1の製造工程を説明する。なお、図13(n)〜図14(r)まではチップ化までの製造工程を示し、図14(s)〜図14(u)まではチップ化以降の工程を示す。
実施の形態1における場合と同様にして、図4(a)〜図7(m)までの製造工程において、シリコン基材100のインク吐出側の面100bを研削加工し、液滴吐出面1bを形成する。
(n) 第1のノズル孔11aの先端が開口するまでシリコン基材100を薄くした後、図13(n)(以後、図13(p)に到るまで、図7(m)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態で示す)に示すように、液滴吐出面1bに、ダイシングテープ70をサポートテープとして貼り付ける。
(o) 次に、図13(o)に示すように、支持基板120側からUV光を照射する。
(p) こうして、図13(p)に示すように、両面テープ60の自己剥離層61をシリコン基材100の接合面100a面から剥離させ、支持基板120をシリコン基材100から取り外す。
(q) 次に、図13(q)(以後、図14(t)に到るまで、図13(p)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態で示す)に示すように、シリコン基材100の接合面100a(ダイシングテープ70が貼り付けられている液滴吐出面1bと反対側に位置する面)を真空ポンプに接続された吸着治具90に吸着固定し、液滴吐出面1bにサポートテープとして貼り付けられているダイシングテープ70を剥離する。
(r) 次に、図14(r)に示すように、吸着治具90の吸着固定を解除する。こうして、シリコン基材100をチップ化する。
(s) 次に、チップ化したシリコン基材100を、硫酸過水洗浄液あるいは硝酸過水洗浄液で洗浄(湿式酸化洗浄)し、図14(s)に示すように、液滴吐出面1bの表面に酸化膜104aを形成する。
例えば、硫酸過水洗浄の場合、硫酸80vol%、過酸化水素水20vol%、液温100℃の混合液に10分間浸漬し、膜厚2nmの酸化膜104aを形成する。なお、このとき、オゾン水洗浄で酸化膜104aを形成しても良いが、硫酸過水洗浄液あるいは硝酸過水洗浄液の方が有機物に対する洗浄効果が高いため、樹脂残渣を確実に除去することができる。
(t) 続いて、図14(t)に示すように、ノズル基材100の表面に、ディッピングにより撥インク膜106を形成する。
(u) 次に、図14(u)に示すように(図14(t)に示したシリコン基材100の上下を逆転した状態を示す)、液滴吐出面1bに保護フィルム71を貼る。その後、Arスパッタもしくは02 プラズマ処理によって、シリコン基材100の接合面100a、および第1のノズル孔11a、第2のノズル孔11bの内壁に余分に形成された撥インク膜106を除去する。
その後、保護フィルム71からシリコン基材100を引き剥がす。
以上の工程を経ることにより、シリコン基材100よりノズル基板1を形成する。
なお、ノズル基板1、キャビティ基板2及び電極基板3の接合工程は、実施の形態1に示した場合(図10〜図12)と実質的に同様なので、説明を省略する。
こうして、インクジェットヘッド10が完成する。
実施の形態2によれば、撥インク膜106形成前の液滴吐出面1bへの酸化膜104aの形成を、シリコン基材100自体を湿式酸化洗浄で表面酸化して行うことによって、安価な設備で、一度に大量に処理することができ、製造コストを下げることができる。また、湿式酸化洗浄(硫酸過水洗浄あるいは硝酸過水洗浄)の洗浄効果により、樹脂残渣も除去することができる。
実施形態3.
図15は、本発明の実施の形態3に係る液滴吐出装置(インクジェットプリンタ)の斜視図である。実施形態1、2で得られたインクジェットヘッド10は、高歩留まりで製造されたノズル基板1を用いて製造することができ、かかるインクジェットヘッド10を用いて、図15に示すようなインクジェットプリンタ400を得ることができる。
なお、実施形態1、2に係るインクジェットヘッド10は液滴吐出ヘッドの一例であって、液滴吐出ヘッドはインクジェットヘッド10に限定されるものではなく、液滴を種々変更することによって、液晶ディスプレイのカラーフィルタの製造、有機EL表示装置の発光部分の形成、生体液体の吐出等にも適用することができる。
また、実施形態1、2に係る液滴吐出ヘッドは、圧電駆動方式の液滴吐出装置や、バブルジェット(登録商標)方式の液滴吐出装置にも使用することができる。
本発明の実施の形態1にかかる液滴吐出ヘッドの分解斜視図。 図1の要部の縦断面図。 図1のノズル基板の上面図。 図1のノズル基板の製造工程を示す断面図。 図4に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 図5に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 図6に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 図7に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 図8に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 キャビティ基板及び電極基板を接合した接合基板の製造工程を示す断面図。 図10に続く接合基板の製造工程を示す断面図。 キャビティ基板及び電極基板の接合基板をノズル基板に接合する製造工程を示す断面図。 本発明の実施の形態2に係るノズル基板の製造工程を示す断面図。 図13に続くノズル基板の製造工程を示す断面図。 本発明の実施の形態3にかかるインクジェットプリンタの斜視図。
符号の説明
1 ノズル基板、1b 液滴吐出面(薄板化加工面)、2 キャビティ基板、3 電極基板、10 インクジェットヘッド、11 ノズル孔、11a 第1のノズル孔(小径孔)、11b 第2のノズル孔(大径孔)、60 両面テープ、61 自己剥離層、100 シリコン基材、100a シリコン基材の接合面(大径孔側の面)、100b インク吐出側の面(小径孔側の面)、104 シリコン酸化膜、104a 酸化膜、106 撥水膜、120 支持基板、400 インクジェットプリンタ。

Claims (6)

  1. 小径孔先端が基材により閉じられ大径孔基端が基材表面に開口されて2段形状で連通されたノズル孔をエッチング加工によってシリコン基材に形成する工程と、前記シリコン基材の前記大径孔側の面に支持基板を貼り合せる工程と、前記シリコン基材の前記小径孔側の面を薄板化して該小径孔の先端部を開口し薄板化加工面を形成する工程と、前記薄板化加工面に湿式酸化洗浄で酸化膜を形成する工程と、前記薄板化加工面の前記酸化膜上に撥水膜を形成する工程と、前記支持基板を前記シリコン基材より剥離する工程とを含むことを特徴とするノズル基板の製造方法。
  2. 前記湿式酸化洗浄がオゾン水洗浄であることを特徴とする請求項1記載のノズル基板の製造方法。
  3. 小径孔先端が基材により閉じられ大径孔基端が基材表面に開口されて2段形状で連通されたノズル孔をエッチング加工によってシリコン基材に形成する工程と、前記シリコン基材の前記大径孔側の面に支持基板を貼り合せる工程と、前記シリコン基材の前記小径孔側の面を薄板化して該小径孔の先端部を開口し薄板化加工面を形成する工程と、前記支持基板を前記シリコン基材より剥離する工程と、前記薄板化加工面に湿式酸化洗浄で酸化膜を形成する工程と、前記薄板化加工面の前記酸化膜上に撥水膜を形成する工程とを含むことを特徴とするノズル基板の製造方法。
  4. 前記湿式酸化洗浄がオゾン水洗浄、硫酸過水洗浄または硝酸過水洗浄であることを特徴とする請求項3記載のノズル基板の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のノズル基板の製造方法を適用して液滴吐出ヘッドを製造することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 請求項5記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2016215468A (ja) * 2015-05-19 2016-12-22 キヤノン株式会社 液体吐出ヘッドの製造方法

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