しかしながら、特開平11−347342号公報(特許文献1)のプラズマ発生装置においては、対向する誘電体被覆メッシュ電極の間隔が広いと、安定なプラズマの発生に困難が生じる。また、電極間に介挿された触媒担持無機イオン交換体とその周囲の空間との間においては、誘電率に大きな差がある。このため、電極と触媒担持無機イオン交換体との間の空隙部分に印加電圧が集中して、空隙部分で放電エネルギーが高くなり、触媒担持無機イオン交換体の内部においては放電エネルギーが乏しくなる。すなわち、誘電率の高い触媒担持無機イオン交換体の内部では放電が生じにくい。したがって、触媒担持無機イオン交換体の内部で分解による浄化作用を高めることが難しい。
触媒担持無機イオン交換体の内部で放電させ、浄化作用を高めるためには、触媒担持無機イオン交換体を介挿しない場合よりも、電極間により高い電圧を印加する必要がある。しかし、電極間の電圧が高ければ高いほど、触媒担持無機イオン交換体の内部での放電だけでなく、触媒担持無機イオン交換体の周囲の空間での放電も増加し、触媒担持無機イオン交換体の表面の劣化につながる。また、電極間に高電圧を印加するために電源容量の大型化が必要となる。
さらに、三次元多孔性を有する触媒担持無機イオン交換体とその周囲の空間とでは、被処理対象成分を含む気体の流れやすさにも大きな差がある。被処理対象成分を含む気体は三次元多孔性を有する触媒担持無機イオン交換体の内部よりも通風抵抗の低い周囲の空間を流れやすい。このため、触媒担持無機イオン交換体の内部には被処理対象成分が入りにくく、触媒担持無機イオン交換体の内部での浄化作用が低くなる。
一方、吸着材を用いた吸着除去の方法では、被処理対象成分の吸着量を高めるためには吸着量を大きくする必要があることや、吸着した成分の脱落による再汚染、浄化作用を保つための吸着材の交換、吸着材による圧力損失などの問題がある。また、酸化触媒、オゾン、プラズマによる分解除去の方法では、浄化作用を高めるためには被処理対象成分を含む気体が浄化作用を受ける領域に留まる時間を長くする必要がある。このため、高流速での分解処理は困難である。オゾン、プラズマによる分解除去の方法では、オゾンが生成されるため、オゾンの排出量や生成したオゾンの処理がさらに問題となる。
そこで、この発明の目的は、小型で、高流速で被処理対象成分を含む気体を浄化することが可能であり、浄化処理に伴うオゾンの排出量を抑えることが可能な気体浄化装置を提供することである。
この発明に従った気体浄化装置は、第一の導電体電極と、第一の導電体電極に対向する第二の導電体電極と、第一と第二の導電体電極の間に配置され、気体中に含まれる被処理対象成分を吸着する多孔質の吸着材とを備え、吸着材は、第一と第二の導電体電極の間を満たしている。
第一の導電体電極と第二の導電体電極との間に高電圧を印加すると、第一と第二の導電体電極間で放電が生じる。被処理対象成分を含む気体が放電領域内にあると、被処理対象成分を含む気体は、放電によって、電子、ラジカル、イオンなどの活性種に分解される。分解によって生じたこれらの粒子は互いに衝突し合い、再結合して無害化する。
このとき、第一と第二の導電体電極間において気体が自由に流通可能であると、被処理対象成分は放電の作用を受けにくく、分解されないままで下流へと流れてしまう。そこで、被処理対象成分を吸着する多孔質の吸着材を第一と第二の導電体電極間を満たすように配置する。
このようにすることにより、被処理対象成分は吸着材に捕えられ、第一と第二の導電体電極間に滞在する時間が長くなる。放電領域内にある吸着材に捕えられた被処理対象成分は、放電領域内に存在する電子、ラジカル、イオンなどの活性種と接触する機会が多くなり、分解作用、浄化作用を受けやすくなる。また、多孔質の吸着材の内部では流路が不規則に形成されているので、吸着材の内部を通過する気流が乱れるため、活性種と被処理対象成分とを含む気体が激しく撹拌され、被処理対象成分と活性種との接触がさらに増え、被処理対象成分がさらに分解されやすくなる。さらにまた、被処理対象成分が吸着材によって放電領域内に捕えられることで、活性種は吸着材に吸着されずに流れ過ぎる酸素よりも被処理対象成分と反応しやすくなる。このため、活性種と酸素が反応して生成するオゾンの量が減少する。
吸着材を第一と第二の導電体電極間に配置するとき、従来のように吸着材と電極の間に空間が設けられていると、電極間に配置された吸着材とその周囲の空間との間で誘電率に大きな差があることから、誘電率の高い吸着材の内部では放電が生じにくく、周囲の空間と吸着材の表面で放電が生じやすい。したがって吸着材の内部で放電による浄化作用を高めることが難しい。さらに、吸着材とその周囲の空間とでは、被処理対象成分を含む気体の流れやすさにも大きな差がある。被処理対象成分を含む気体は吸着材の内部よりも通風抵抗の低い周囲の空間を多く流れ、吸着材の内部を流れる被処理対象成分の量が少なくなり、浄化作用を高めることが難しい。そこで、電極と吸着材との間に空間が生じないように、吸着材を電極間に満たす。
このようにすることにより、吸着材の内部で放電が生じやすくなり、吸着材の内部に捕えられた被処理対象成分を効率よく分解し浄化することができる。また、吸着材の内部で放電させるために従来のように電圧を高くする必要がないので、気体浄化装置を小型化することができる。
吸着材を第一と第二の導電体電極間に配置するとき、吸着材と各導電体電極との間に空間が無い場合、被処理対象成分を含む気体の圧力損失が大きくなる恐れがある。そこで、通気性を有する多孔質の吸着材を第一と第二の導電体電極間に満たす。
このようにすることにより、高流速の気体に対しても、効率よく浄化処理を行うことができる。
このように、放電による浄化作用と吸着材による浄化作用とを合わせもつ気体浄化装置としたことで、小型で、高流速で被処理対象成分を含む気体を浄化することが可能であり、また、浄化処理に伴うオゾンの排出量を抑えることが可能となる。
この発明に従った気体浄化装置においては、第一と第二の導電体電極の間隔は10mm以下であることが好ましい。
第一と第二の導電体電極の間隔が広いとき、安定な放電が生じにくい。電極間の距離が大きい場合には電極間の電位傾斜が緩やかになるために、吸着材の内部で安定した放電を生じさせるためには、電圧をより高くする必要がある。しかし、電極間に印加する電圧が高くなると、電極と吸着材との間で発生する放電によって吸着材の表面が劣化しやすくなる。また、高電圧を印加するために、電源を大型にする必要がある。
以上を考慮して、第一と第二の導電体電極の間隔を10mm以下とすることで、吸着材の内部に安定な放電を発生させることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、第一と第二の導電体電極は、それぞれ内径の異なる円筒状に形成され、同心円状に配置されていることが好ましい。
このようにすることにより、気体の流量に対する電極の面積を大きくすることができるので、浄化処理の効率が上がり、気体浄化装置をコンパクトにすることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、複数組の第一と第二の導電体電極は、被処理対象成分を含む気体の流れる方向と垂直な方向に互いに向かい合って、吸着材を介して積み重ねられていることが好ましい。
このようにすることにより、浄化処理量を増やすことができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、複数組の第一と第二の導電体電極は、被処理対象成分を含む気体が流れる方向と平行な方向に、互いに間隔をあけて並べて配置されていることが好ましい。
このようにすることにより、各組の導電体電極間に電圧を印加するタイミングを変えることにより、連続運転可能な気体浄化装置となる。また、浄化処理量を増やすことができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、第一と第二の導電体電極の対向する少なくとも一方の面には誘電体層が形成されていることが好ましい。
このようにすることにより、第一と第二の導電体電極間に均一な電界を形成し、安定な放電を発生させることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、第一と第二の導電体電極の対向する一方の面に誘電体層が形成され、他方の面は無機材料で被覆されていることが好ましい。
このようにすることにより、放電によって生じた電子などの活性種が導電体電極に衝突して電極を消耗することを防ぐことができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、無機材料は、アルミナまたはガラスを含むことが好ましい。
このようにすることにより、製造の費用を抑えることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、誘電体層は、アルミナを含むことが好ましい。
このようにすることにより、製造の費用を抑えることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、誘電体層は、厚みが0.1〜1.0mmであることが好ましい。
電極間に配置される誘電体層が厚ければ厚いほど、放電に必要な電圧が高くなる。また、誘電体層が薄ければ、安定な電界を形成することができない。このことを考慮して、誘電体は、厚みが0.1〜1.0mmにすることにより、比較的低い電圧で安定な放電を得ることができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、吸着材は疎水性であることが好ましい。
このようにすることにより、被処理対象成分を含む気体中に存在する水分による電極間の短絡や火花の発生を防ぐことができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、吸着材はハニカム構造を有することが好ましい。
このようにすることにより、通気性も良く、機械的強度にも優れた吸着材を形成することができる。
この発明に従った気体浄化装置においては、吸着材は、被処理対象成分を含む気体が流れる開口部を有し、開口部の面積は、被処理対象成分を含む気体が流れる方向に交差する吸着材の面積に対して20〜80%であることが好ましい。
このようにすることにより、吸着材の強度を保ったままで、気体の流量を確保することができる。
以上のように、この発明によれば、小型で、高流速で被処理対象成分を含む気体を浄化することが可能であり、浄化処理に伴うオゾンの排出量を抑えることが可能な気体浄化装置を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一つの実施の形態として、気体浄化装置を概略的に示す図である。
図1に示すように、気体浄化装置100は、第一の導電体電極1と、第二の導電体電極2と、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間を満たす多孔質の吸着材3と、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間に高電圧を印加するための電源4を備える。吸着材3には、被処理対象成分を含む気体5が吸着材3の内部に流れ込むための多数の開口部31が形成されている。ここで、多孔質の吸着材3とは、ハニカム構造を有するように形成された吸着材を含む。
気体浄化装置100においては、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間に、電源4によって交流、パルスなどの高電圧を印加し、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間で放電させる。気体5は第一の導電体電極1と第二の導電体電極2の間を満たす吸着材3の開口部31から吸着材3の内部へと進入する。吸着材3は被処理対象成分を吸着するので、被処理対象成分を含む気体5中の被処理対象成分は吸着材3中に比較的長い時間滞留するが、一方、酸素や窒素などの被処理対象成分以外の気体は吸着材3中に留まりにくく、無害な気体6として外部へ流れ出る。吸着材3中に留まった被処理対象成分は、放電によって分解されて無害化され、無害な気体6となって気体浄化装置100から外部へ出て行く。
吸着材3が単に電極間に各電極から距離を置いて配置されている場合、吸着材3は周りの空間に比べて誘電率や通風抵抗が大きいため、吸着材3の内部には気体が流入しにくく、また吸着材2の内部では放電がおこりにくい。これを避けるために、吸着材3は、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間を満たすようにする。熱や振動によって時間とともに吸着材3と電極間に空隙が生じないよう、絶縁体のシール材(図示しない)で電極と吸着材3との界面部に対してシール処理を行う。
このようにすることにより、被処理対象成分は吸着材3に捕えられ、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間に滞在する時間が長くなる。放電領域内にある吸着材3に捕えられた被処理対象成分は、放電領域内に存在する電子、ラジカル、イオンなどの活性種と接触する機会が多くなり、分解作用、浄化作用を受けやすくなる。また、多孔質の吸着材3の内部では、流路が不規則に形成されているので、吸着材内部を通過する気流が乱れるため、活性種と被処理対象成分とを含む気体が激しく撹拌され、被処理対象成分と活性種との接触がさらに増え、被処理対象成分がさらに分解されやすくなる。
また、吸着材3と各電極との間に空間が設けられていると、電極間に配置された吸着材3とその周囲の空間との間で誘電率に大きな差があることから、誘電率の高い吸着材3の内部では放電が生じにくく、周囲の空間と吸着材3の表面で放電が生じやすい。したがって、吸着材3の内部で放電による浄化作用を高めることが難しい。さらに、吸着材3とその周囲の空間とでは、気体の流れやすさにも大きな差がある。被処理対象成分を含む気体は吸着材の内部よりも通風抵抗の低い周囲の空間を多く流れ、吸着材3の内部を流れる被処理対象成分の量が少なくなり、浄化作用を高めることが難しい。そこで、電極と吸着材3との間に空間が生じないように、吸着材3を電極間に満たす。
このようにすることにより、吸着材3と電極との界面よりも吸着材3の内部で放電が生じやすくなり、また被処理対象成分が吸着材3の内部に滞留しやすくなるため、吸着材3中に捕えられた被処理対象成分を効率よく分解し浄化することができる。また、吸着材3が電極間を満たしているので、吸着材3の内部で放電させるために従来のように電圧を高める必要がなく、気体浄化装置100を小型化することができる。さらに、被処理対象成分が吸着材によって放電領域内に捕えられることで、放電によって生じた電子、ラジカル、イオンなどの活性種は吸着材に吸着されずに流れ過ぎる酸素よりも被処理対象成分と反応しやすくなる。このため、活性種と酸素が反応して生成するオゾンの量が減少する。
吸着材3を第一の導電体電極1と第二の導電体電極2の間に配置するとき、吸着材3と各導電体電極との間に空間が無い場合、被処理対象成分を含む気体5の圧力損失が大きくなる恐れがある。そこで、通気性を有する多孔質の吸着材3を第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間に満たす。
このようにすることにより、高流速の気体に対しても、効率よく浄化処理を行うことができる。
第一の導電体電極1と第二の導電体電極2は板状であり、ほぼ平行に配置されている。第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間隔は10mm以下とする。
第一の導電体電極1と第二の導電体電極2の間隔を広くすると、電極の枚数を減らすことができ製造性が向上する。しかし、電極の間隔が広いと、電極間の電位傾斜が緩やかになるため、安定な放電が生じにくい。また、電極と吸着材3の界面付近に電界が集中し、電極と吸着材3の界面での放電エネルギーが高くなるため、部分的な放電が起こりやすくなる。その結果、吸着材3の内部では放電が生じにくくなる。このように、吸着材3が厚くなると、吸着材内部においては放電による浄化作用が低下する。厚い吸着材を使用する場合に浄化作用を低下させないためには、より高い電圧を印加することが必要となる。しかし、印加する電圧を高くすると、電極と吸着材3との界面付近での放電エネルギーが高くなり、電極と吸着材3の表面で放電するため、吸着材3の表面が劣化しやすい。また、高電圧を印加するために、電源4を大型にする必要がある。
このことを考慮して、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2との間隔は10mm以下とすることにより、吸着材3の内部に放電を安定に発生させることができる。
第一の導電体電極1と第二の導電体電極2の間を満たす吸着材3は、例えばアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸、窒素化合物などのような被処理対象成分を吸着する。吸着材3は、シリカゲル、シリカライト、ゼオライトなどを単独または複合的に用いた非導電性材料から構成されている。吸着材3としてゼオライトを用いる場合には、ゼオライト中に含まれる水素原子あるいはナトリウム原子の一部を他の金属に置換したM交換ゼオライトを用いてもよい。ここで、M=Cu,Ag,Fe,Co,Pt,Ni,Pd,Au,Sbなどとする。すなわち、水素原子あるいはナトリウム原子を置換する金属としては、銅、銀、鉄、コバルト、白金、ニッケル、パラジウム、金、アンチモンなどがある。
また、吸着材3は疎水性を有する。このようにすることにより、被処理対象成分を含む気体5中に存在する水分による第一の導電体電極1と第二の導電体電極2の間の短絡や火花の発生を防ぐことができる。
吸着材3は、ハニカム構造を有し、また被処理対象成分を含む気体5が吸着材3の内部に流れ込む開口部31を有し、開口部31の面積は、被処理対象成分を含む気体5の流れる方向に交差する吸着材3の面積に対して20〜80%とする。開口部31の形状は、矩形やその他の形状でも構わない。通気性を有する多孔質の吸着材3は、オープンセル構造の発泡体として作成することが可能であるが、その他の製造方法でも構わない。
このようにすることにより、吸着材3の強度を保ったままで、気体の流量を確保することができる。このように開口部31の面積比率を限定するのは、試作評価試験の結果、開口部31の面積が被処理対象成分を含む気体5の流れる方向に交差する吸着材3の面積に対して20%以下であれば圧力損失が問題となり、開口部31の面積が被処理対象成分を含む気体5の流れる方向に交差する吸着材3の面積に対して80%以上であれば吸着材3の強度と吸着能力が低下したからである。
図1においては、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2とはどちらも板状で、ほぼ平行に配置されているが、波板状など平板以外の形状でもよく、第一の導電体電極1と第二の導電体電極2とがほぼ一定の間隔であれば、平行に配置されていなくてもよい。
以上のように、放電による浄化作用と吸着材による浄化作用とを合わせもつ気体浄化装置としたことで、小型で、高流速で被処理対象成分を含む気体を浄化することが可能であり、また、浄化処理に伴うオゾンの排出量を抑えることが可能となる。
図2は、この発明のもう一つの実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。
図2に示すように、気体浄化装置200は、被処理対象成分を含む気体5の流れる方向と垂直な方向に図1に示す気体浄化装置100を積層したものである。図1に示す気体浄化装置100と異なる点として、気体浄化装置200は、第一の導電体電極として一層目の導電体電極11と三層目の導電体電極13、第二の導電体電極として二層目の導電体電極12と四層目の導電体電極14とを備え、各電極は、電極間に満たされた吸着材3を介して積層している。一層目の導電体電極11と二層目の導電体電極12との間、二層目の導電体電極12と三層目の導電体電極13、三層目の導電体電極13と四層目の導電体電極14との間にはそれぞれ同じ高電圧が電源4によって印加されている。吸着材3はハニカム構造を有し、また被処理対象成分を含む気体5が吸着材3の内部に流れ込む開口部31を有する。被処理対象成分を含む気体5は、開口部31を通って吸着材3の内部へと進入し、浄化され、無害な気体6として外部へ出される。
このように、吸着材を介して電極を積層することにより、浄化処理量を増加させることが可能となる。また、積層させる電極の数を変えることによって、必要に応じた浄化処理量を得ることができる。
図3は、この発明のさらにもう一つの実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。図3(A)は一枚の電極の構成を示し、図3(B)は図3(A)の電極を備えた気体浄化装置全体の形態を示す。
図3に示すように、気体浄化装置300は、図2に示した気体浄化装置200と異なる点として、一層目の導電体電極11と三層目の導電体電極13の両面が誘電体層7で覆われている。
導電体電極上に誘電体層を形成するには、いくつかの方法がある。例えば、焼結前の誘電体、いわゆるグリーンシートの片面に導電体成分を含有した導体ペーストを塗布し、その上に別のグリーンシートを重ね合わせて、所定の温度で焼結させる方法がある。また、先に焼結させた誘電体を二枚用意し、一枚に導電体ペーストを塗ってもう一枚を重ね、導電体が固定される温度で焼成する方法がある。その他、誘電体の表面に導電体を溶射、メッキ、蒸着して導電体層を形成することもできる。緻密かつ高強度の誘電体層と均一な導電体が接合される方法であれば、他のどのような方法でもよい。
導電体ペーストは、銀、タングステン、銅、鉄、パラジウム、アルミニウム、炭素などの導電性材料を単独で、または、これらの元素のうちのいずれかを含む混合材料を用い、熱可塑性樹脂やガラスをバインダー成分としたものである。
誘電体層7は、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、バリウム、鉛、ケイ素などの酸化物を単独で用いることができる。また、これらの元素のうちのいずれかを含む複合酸化物を用いてもよい。比較的安価なアルミナ、ガラス、マイカを用いることで製造費用を抑えることができる。
誘電体層7が薄い場合には、比較的低い電圧で誘電体層7に絶縁破壊が生じる。このため、電極間に印加する電圧を低くする必要がある。しかし、電極間に印加する電圧が低いと、吸着材3の内部で生じる放電が不十分になり、浄化作用が低くなる。一方、誘電体層7が厚い場合、放電を発生させ、放電を維持するためにより高い電圧を印加するか、吸着材3の厚みを薄くする必要がある。吸着材3の厚みが薄くなると、被処理対象成分を含む気体5の流れる方向に交差する吸着材3の面積に対する開口部31の面積が小さくなり、圧力損失が大きくなる。このことを考慮して、誘電体層の厚みは0.1〜1.0mmとする。
図3に示すように、誘電体層7で被覆された導電体電極と、誘電体層7で被覆されていない導電体電極とを交互に積層してもよく、また、すべての導電体電極を誘電体層7で被覆してもよい。
このようにして得られた誘電体層によって被覆された電極(図3(A))を、図2に示す気体浄化装置200と同様に積層させて、図3(B)に示す気体浄化装置300を得る。図3では一例として、一層目の導電体電極11と三層目の導電体電極13が誘電体層7で被覆され、二層目の導電体電極12と四層目の導電体電極14は誘電体層7で被覆されていない。
このように、厚み0.1〜1.0mmの誘電体層7を向かい合う一方の電極面上に形成することにより、浄化処理量を損なわずに、均一な電界を形成させ安定した放電を得ることができる。
図4は、この発明のさらに別の実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。図4(A)は一枚の電極の構成を示し、図4(B)は図4(A)に示す電極を備えた気体浄化装置全体の形態を示す。
図4に示すように、気体浄化装置400は、図2に示す気体浄化装置200および図3に示す気体浄化装置300と異なる点として、一層目の導電体電極11、二層目の導電体電極12、三層目の導電体電極13の片面に誘電体層を形成し、もう一方の面を無機材料で被覆している。
図4(A)に示すように、一層目の導電体電極11は、一方の面が誘電体層7で被覆され、他方の面は無機材料8で被覆されている。無機材料8としてはガラスやセラミックを用い、厚みは数μ〜数十μとする。
気体浄化装置に誘電体層7と無機材料8とで片面ずつ被覆した導電体電極を用いる場合、全ての導電体電極を誘電体層7と無機材料8とで片面ずつ被覆する。または、図4(B)に示すように、最端の導電体電極(図4(B)においては四層目の導電体電極14)は被覆しなくてもよい。
このように、導電体電極を無機材料8で被覆することにより、放電によって発生した電子などの衝突による導電体電極の消耗を抑制することができる。
図5は、この発明のさらにまた別の実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。
図5に示すように、気体浄化装置500においては、図1に示す気体浄化装置100と同様の構成である気体浄化装置101,102,103が、被処理成分を含む気体5の流れる方向にほぼ平行に互いに間隔をあけて並べて配置されている。
このようにすることにより、浄化処理量が増大する。また、各気体浄化装置101,102,103に電圧を印加するタイミングを変えてそれぞれの気体浄化装置の運転と運転停止とを切り替え、メンテナンスが必要な気体浄化装置をその気体浄化装置が運転を停止している時間に取り外しても、被処理対象成分を含む気体5の流通路において浄化処理を継続することができるので、連続運転が可能となる。
気体浄化装置500のそれぞれの電極対は、図5においては図1に示す気体浄化装置100と同様の構成としているが、図2〜4に示す電極のように、積層した電極や、誘電体や無機材料で被覆した電極であってもよい。
図6は、この発明のさらにまた別の実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。図6(A)は、円筒状の導電体電極を用いた気体浄化装置600の全体的な概略図を示し、図6(B)には、気体浄化装置600の断面図を示す。
図6に示すように、気体浄化装置600は、内側の円筒を形成する第一の円筒状導電体電極15と、外側の円筒を形成する第二の円筒状導電体電極16と、第一の円筒状導電体電極15と第二の円筒状導電体電極16との間を満たす吸着材3を備える。第一の円筒状導電体電極15の内側には吸着材3が存在していない。第一の円筒状導電体電極15と第二の円筒状導電体電極16とはほぼ同心円状に配置されている。第一の円筒状導電体電極15と第二の円筒状導電体電極16との間に高電圧を印加し、吸着材3の内部で放電を発生させる。外側の円筒を形成している第二の円筒状導電体電極16の一端にはドーム状壁9が接着されている。外部から気体浄化装置600に流れ込んだ気体は、ドーム状壁9があるために、気体浄化装置600の内部を直進して通り抜けることができない。
被処理対象成分を含む気体5は、矢印で示すように、内側の円筒を形成している第一の円筒状導電体電極15の内側を通って気体浄化装置600内に進入する。第一の円筒状導電体電極15の内側には吸着材3が配置されておらず、被処理対象成分を含む気体5は抵抗なく、気体浄化装置600の奥へと進む。図6(B)に示すように、被処理対象成分を含む気体5は、気体浄化装置600内の奥に設けられているドーム状壁9によって、矢印で示す方向に進行方向を変え、外側の円筒を形成している第二の円筒状導電体電極16と第一の円筒状導電体電極との間に満たされた吸着材3の内部を通りながら浄化され、矢印で示すように、無害な気体6となって外部へ出る。
被処理対象成分を含む気体は、まず、第一の円筒状導電体電極15と第二の円筒状導電体電極16との間から吸着材3の内部へ入り、浄化され、浄化された無害な気体が第一の円筒状導電体電極15によって形成された円筒の内側を通って外部へ出てもよい。
このようにすることにより、気体の流量に対する電極の面積を大きくすることができるので、浄化処理の効率が上がり、気体浄化装置をコンパクトにすることができる。また、被処理対象成分を含む気体5の入り口と無害な気体6の出口を気体浄化装置600の同じ方向に設けることができる。
図7は、この発明のさらにまた別の実施の形態として、気体浄化装置の別の形態を示す図である。
図7に示すように、気体浄化装置700は、図6に示す気体浄化装置600と異なる点として、円筒状の導電体電極を同心円状に積層したものである。最も内側の円筒状導電体電極から外側へ向かって順に、第一の円筒状導電体電極15、第二の円筒状導電体電極16、第三の円筒状導電体電極17が配置され、それぞれの円筒状導電体電極の間には吸着材3が満たされている。最も内側の第一の円筒状導電体電極15の内側は空洞になっており、被処理対象成分を含む気体5はこの空洞を通って気体浄化装置700の内部へ進入する。気体浄化装置700の奥にはドーム状壁9があり、被処理対象成分を含む気体5はこの壁に沿って進路を変え、各円筒状導電体電極の間を満たす吸着材3の内部を通って、浄化され、無害な気体となって外部へ出る。
このようにすることにより、気体の流量に対する電極の面積を大きくすることができるので、浄化処理の効率が上がり、気体浄化装置をコンパクトにすることができる。また、浄化処理量を増やすことができる。気体浄化装置700を複数並べて配置してもさらに浄化処理量を増やすことができる。
本発明の一つの実施の形態の気体浄化装置を用いて得られた気体清浄効果について説明する。
図3に示す気体浄化装置300を用いて、以下のようにアンモニア(NH3)ガスの分解試験を行った。
乾燥空気とNH3ガスを含む混合ガス(NH3濃度20ppm)を流量5L/分で気体浄化装置300に供給した。各電圧間には株式会社三陽電機製作所製ネオントランスを用いてAC60Hz、7kVおよび8kVを印加し、混合ガスの浄化処理を行った。気体浄化装置300を通り抜けた後のNH3濃度およびオゾン(O3)濃度を検知管で測定した。このときのNH3濃度を処理後のNH3濃度とし、電圧を印加しない気体浄化装置300に混合ガスを通過させた後のNH3濃度を処理前のNH3濃度とする。NH3分解率は、次のようにして求めた。
NH3分解率[%]=(1−処理後のNH3濃度[ppm]/処理前のNH3濃度[ppm])×100
気体浄化装置300においては、各電極11〜14の大きさは、20mm×8mmとし、この電極を10枚、各電極の間に吸着材を介して積層させた。各導電体電極の間隔は2mmとした。導電体電極としては厚みが500μmのアルミニウム板を用い、誘電体としては厚みが100μmのアルミナ基盤を用いた。吸着材としては株式会社環境セラミックリサーチ製ゼオライトハニカムを使用し、吸着材3を配置しない気体浄化装置300も用意し同様の分解試験を行った。
以上の分解試験の結果を表1に示す。
表1に示すように、吸着材3が無い場合と有る場合とを比較すると、NH
3の分解率は、吸着材3が有る場合に高くなる。印加電圧が6kVの場合には、吸着材3が無い場合にはNH
3はほとんど分解されないのに対し、吸着材3が有る場合の分解率は23%であった。また、印加電圧が7kVの場合、吸着材3が無い場合には6%の分解率であったが、吸着材3が有れば分解率は50%にまで上昇した。また、O
3の発生濃度についても、吸着材3の有無によって非常に大きな差異が現れた。印加電圧が6kVの場合、吸着材が無ければO
3の濃度は10ppmであったが、吸着材が有れば5ppmと半減した。印加電圧が7kVであれば、吸着材が無い場合のO
3濃度は85ppmであったが、吸着材3があれば、O
3濃度は15ppmに抑えられた。
このように、放電電極間に吸着材3を満たすことで、NH3の分解率が上昇し、O3の発生を抑えることができた。
次に、気体浄化装置300を用いて、混合ガスに代えて、密閉容器内でタバコを燃焼させた際に発生したNH3の分解試験を行った。
タバコ(マイルドセブン5本)を容積が1m3の密閉容器内で燃焼させた後、密閉容器内の雰囲気に対して気体浄化装置300で浄化処理を行った。気体浄化装置300に流入させる被処理対象成分気体の流量を60L/分、120L/分、240L/分、480L/分と変えて、表1の場合と同様に、NH3分解率とO3濃度を求めた。印加した電圧は7kVであった。
気体浄化装置300においては、各電極の大きさは、40mm×46mmとし、この電極を10枚、各電極の間に吸着材を介して積層させた。各導電体電極の間隔を2mmとした。導電体電極としては厚みが500μmのアルミ板を用い、誘電体としては厚みが100μmのアルミナ基盤を用いた。吸着材としては株式会社環境セラミックリサーチ製ゼオライトハニカムを使用した。
NH3濃度およびO3濃度の測定は、それぞれの流量に対して、以下のように行った。まず初めに大気中で放電を行った後、密閉容器内の雰囲気を気体浄化装置300に流通させ、一定時間毎にNH3濃度およびO3濃度を測定してNH3分解率とO3発生濃度とを求めた。測定は、浄化処理開始0分、5分後と浄化処理開始後10分から10分毎に30分後まで行った。その後、再び大気中で一定時間放電させ、新たに密閉容器内の雰囲気を気体浄化装置300に導入して測定を行った。この測定を20回繰り返し、浄化処理開始からの経過時間に対してNH3分解率とO3濃度の平均値を求めた。大気中での放電時間は30分間とし、流量が60L/分の場合には、大気中で10分間放電した場合についても測定した。この大気中での放電時間を吸着材3の再生時間とする。
図8に得られたNH3分解率の時間変化を、図9にO3濃度の時間変化を示す。
図8と図9に示すように、流量の増加に伴ってNH3分解率は上昇し、O3濃度は減少した。しかし、流量が240L/分の場合と480L/分の場合とを比較すると、NH3分解率において顕著な差が無く、O3濃度も240L/分の場合と同様に十分低く保たれることが分かった。
処理気体の流量を上げると、騒音の発生や消費電力の増大などの問題が生じる。このことと分解試験の結果とを考え合わせると、本試験に用いた気体浄化装置300では流量240L/分が最も好ましいと考えられる。本試験に用いた気体浄化装置300の大きさを二倍にすることにより、家庭用空気清浄機などへの応用が可能となる。
前述のように、本試験においては導電体電極の間隔を2mmとした。電極間隔を広くすれば、電極の枚数を減らすことができ、製造性が向上する。一方で、電極の間隔が広いと安定な放電が得られにくい。例えば、電極の間隔を10mmとすると、電極間の電圧傾度が2mmの場合の5分の1になるため、電極間隔が2mmの場合と同様の安定した放電を継続的に得るためには、高い電圧、たとえば、35kV以上の電圧を電極間に印加する必要があり、電源4の大型化が必要となる。また、吸着材が厚くなるため、吸着材内部での放電が生じにくく、吸着材と電極の界面で放電が発生しやすくなり、吸着材の表面が劣化しやすくなる。印加電力を上げる場合には誘電体層7を厚くする必要があるが、電極間の距離を保つためには、その分、被処理対象成分を含む気体5の流れる方向と交差する吸着材3の面積を減らすことになり、気体の圧力損失が大きくなる。したがって、電極の間隔は10mm以下とし、より好ましくは2mm〜4mmとする。
なお、この分解試験において、大気中での放電と、密閉容器内の雰囲気の浄化処理とを交互に20回行ったが、浄化処理の回数を重ねても、浄化処理の低下は見られなかった。このことから、大気中で放電を行うことにより、吸着材3の再生が可能であることが分かった。したがって、吸着材3の再生を行うための機器構成を追加することなく、気体浄化装置300に流通させる気体を被処理対象成分を含む気体と大気とで切替可能な配管を追加し、定期的に被処理対象成分を含む気体の浄化処理を停止して30分間以上大気を流通させながら放電させて吸着材の再生を行うことで、長期間に渡ってメンテナンスフリーな気体浄化装置を低コストで実現できる。
以上に開示された実施の形態や実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態や実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
1:第一の導電体電極、2:第二の導電体電極、3:吸着材、5:被処理対象成分を含む気体、7:誘電体層、8:無機材料、9:ドーム状壁、11:一層目の導電体電極、12:二層目の導電体電極、13:三層目の導電体電極、14:四層目の導電体電極、15:第一の円筒状導電体電極、16:第二の円筒状導電体電極。