JP2007304376A - 偏光板保護フィルム、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置 - Google Patents

偏光板保護フィルム、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、湿度変動によるリターデーション値変動を抑制し、コントラストムラの発生のないセルロースエステルフィルムを使用した偏光板保護フィルム及びその製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた表示品位が安定した偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルムを用いた偏光板保護フィルム、偏光板保護フィルムの製造方法、偏光板及び液晶表示装置に関する。
近年、ノートパソコンの薄型軽量化、大型画面化、高精細化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶偏光板用の保護フィルムもますます薄膜化、広幅化、高品質化の要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムには、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されている。
これらのセルロースエステルフィルムは、これまで、専ら溶液流延法によって製造されてきた。溶液流延法とは、セルロースエステルを溶媒に溶解した溶液を流延してフィルム形状を得た後、溶媒を蒸発・乾燥させてフィルムを得るといった製膜方法である。溶液流延法で製膜したフィルムは平面性が高いため、これを用いてムラのない高画質な液晶ディスプレイを得ることが出来る。
しかし、溶液流延法は多量の有機溶媒を必要とし、環境負荷が大きいことも課題となっていた。セルロースエステルフィルムは、その溶解特性から、環境負荷の大きいハロゲン系溶媒を用いて製膜されているため、特に溶剤使用量の削減が求められており、溶液流延製膜によってセルロースエステルフィルムを増産することは困難となってきている。
また、フィルム内部に残存する溶媒を除去しなければならないため、乾燥ライン、乾燥エネルギー、及び蒸発した溶媒の回収及び再生装置等、製造ラインへの設備投資及び製造コストが膨大になっており、これらを削減することも重要な課題となっている。
近年、銀塩写真用あるいは偏光板保護フィルム用として、セルロースエステルを溶融製膜する試みが行われているが、セルロースエステルは溶融時の粘度が非常に高い高分子であり、かつ、ガラス転移温度も高いため、セルロースエステルを溶融してダイスから押し出し、冷却ドラムまたは冷却ベルト上にキャスティングしてもレべリングがし難い、光学特性、機械特性が溶液流延フィルムよりも低いといった課題を有していることが判明している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
また、従来のTACフィルムの代わりに、セルロース誘導体フィルムを延伸することにより位相差を発現させ、これをアルカリけん化処理してポリビニルアルコール系偏光子をラミネートすることにより位相差フィルムの機能を併せ持つ偏光板保護フィルムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながらこのタイプの偏光板保護フィルムに、上記溶融製膜されたセルロースエステルフィルムを適用すると、湿度変動によるリターデーション値変動や、コントラストムラの発生等により実用上障害があることが分かった。
特表平6−501040号公報 特開2000−352620号公報 特開2003−270442号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、湿度変動によるリターデーション値変動を抑制し、コントラストムラの発生のないセルロースエステルフィルムを使用した偏光板保護フィルム及びその製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた表示品位が安定した偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
2.前記1に記載の偏光板保護フィルムが、下記一般式(R)で表される化合物、またはフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
Figure 2007304376
(式中、R2〜R5はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R6は水素原子または置換基を表し、nは1または2を表す。nが1であるとき、R1は置換基を表し、nが2であるとき、R1は2価の連結基を表す。)
3.スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを含有する溶融物を用いて溶融流延法によって製造することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
4.前記一般式(R)で表される化合物、またはフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を含有することを特徴とする前記3に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
5.偏光子の少なくとも一方の面に前記1または2に記載の偏光板保護フィルムを設けたことを特徴とする偏光板。
6.前記5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。
本発明により、湿度変動によるリターデーション値変動を抑制し、コントラストムラの発生のないセルロースエステルフィルムを使用した偏光板保護フィルム及びその製造方法、該偏光板保護フィルムを用いた表示品位が安定した偏光板、液晶表示装置を提供することにある。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。尚、本発明に係る偏光板保護フィルムを単にセルロースエステルフィルムという場合もある。
《スチレン/無水マレイン酸コポリマー》
本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマーは、スチレンと無水マレイン酸の共重合物であり、用いられるスチレン/無水マレイン酸の比率
に特に制限がなく、9/1〜1/9の範囲で常法により合成出来る。
下記にスチレン/無水マレイン酸コポリマーの合成フローを示す。
Figure 2007304376
(式中、xは1〜8、nは8〜12を表す。)
スチレン/無水マレイン酸コポリマーは更に、下記合成フローによりエステル化することも可能であり、本発明では下記エステル化物も好ましく使用出来る。
Figure 2007304376
(式中、xは1〜8、nは8〜12を表す。)
本発明では、スチレン/無水マレイン酸コポリマーの重量平均分子量は、3000〜30000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5000〜15000である。この範囲であると、スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを含有する溶融物を用いて溶融流延法によってセルロースエステルフィルムを製造した場合に、本発明の優れた効果を有する偏光板保護フィルムを得ることが可能である。重量平均分子量は、一例としてスチレン/無水マレイン酸比を変えることで調整可能である。
〈重量平均分子量の測定〉
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマー、またはそのエステル化物は、セルロースエステルフィルム中に任意の量を含有させることが出来るが、1〜30質量%の範囲含有させることが好ましく、2〜25質量%の範囲がより好ましく、特に3〜20質量%の範囲が好ましい。
本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマー、またはそのエステル化物は市販されている製品を使うことも好ましく、具体例としてSartomer社製SMAベースレジン(スチレン/無水マレイン酸コポリマー) SMA1000(5500)、SMA2000(7500)、SMA3000(9500)、EF30(9500)、EF40(11000)、EF60(11500)、EF80(14400)、SMAエステルレジン(スチレン/無水マレイン酸コポリマーのエステル化物) SMA1440(7000)、SMA17352(7000)、SMA2625(9000)、SMA3840(10500)等が好ましく用いられる。尚、上記()内の数値は重量平均分子量を表す。
《一般式(R)で表される化合物》
次いで、本発明のセルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルムにおいて、該セルロースエステルフィルムが前記一般式(R)で表される化合物を含有することが好ましい。
一般式(R)において、R2〜R5はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R6は水素原子または置換基を表し、nは1または2を表す。nが1であるとき、R1は置換基を表し、nが2であるとき、R1は2価の連結基を表す。
更に、詳細に本発明に好ましく用いられる一般式(R)の化合物について説明する。
一般式(R)において、nは1または2を表し;nが1であるとき、R1はおのおの未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)−アミノ基で置換された、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサンチニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタルアジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シノリル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナンチリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、フルオレニル基またはフェノキサジニル基を表すか、あるいはR1は下記式(II)で表される基
Figure 2007304376
を表し、ならびに;nが2であるとき、R1は未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル基もしくはヒドロキシ基により置換されたフェニレン基、またはナフチレン基を表すか;または−R12−X−R13−(基中、Xは直接結合;酸素原子、硫黄原子もしくは−NR31−を表す。)を表し;R2、R3、R4及びR5はおのおの互いに独立して水素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし25のアルキル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基;炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)アミノ基、炭素原子数1ないし25のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1ないし25のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし25のアルケノイルオキシ基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイルオキシ基;炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基または炭素原子数1ないし12のアルキル−置換ベンゾイルオキシ基を表し(ただし、R2が水素原子またはメチル基の場合、式(II)中の、後述するR7またはR9はヒドロキシ基または炭素原子数1ないし25のアルカノイルオキシ基を表さない。);あるいは置換基R2及びR3または、R3及びR4またはR4及びR5のおのおのの対は結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環を形成し;R4は更に−(CH2p−COR15または−(CH2qOH(式中、pは0、1または2を表し;qは1、2、3、4、5及び6を表す。)を表し;あるいはR3、R5及びR6が水素原子を表す場合、R4は更に下記式(III)
Figure 2007304376
(式中、R1はn=1に対して上記で定義されたと同じ意味を表す。)で表される基を表し;R6は水素原子または下記式(IV)
Figure 2007304376
(式中、R4は式(III)の基でなく及びR1はn=1に対して上記で定義されたと同じ意味を表す。)で表される基を表し;R7、R8、R9及びR10はおのおの互いに独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし25のアルキル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし25のアルキル基;炭素原子数1ないし25のアルコキシ基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし25のアルコキシ基;炭素原子数1ないし25のアルキルチオ基、炭素原子数3ないし25のアルケニル基、炭素原子数3ないし25のアルケニルオキシ基、炭素原子数3ないし25のアルキニル基、炭素原子数3ないし25のアルキニルオキシ基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルコキシ基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェノキシ基;未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基;未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換炭素原子数5ないし8のシクロアルコキシ基;炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1ないし4アルキル)アミノ基、炭素原子数1ないし25のアルカノイル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイル基;炭素原子数1ないし25のアルカノイルオキシ基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイルオキシ基;炭素原子数1ないし25のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし25のアルケノイル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルケノイル基;炭素原子数3ないし25のアルケノイルオキシ基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルケノイルオキシ基;炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニル基、炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニルオキシ基、ベンゾイル基または炭素原子数1ないし12のアルキル置換ベンゾイル基;ベンゾイルオキシ基または炭素原子数1ないし12のアルキル置換ベンゾイルオキシ基;
Figure 2007304376
を表すか、また、式(II)中、置換基R7及びR8またはR8及びR11のおのおのの対は、結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環を形成し、R11は水素原子、炭素原子数1ないし25のアルキル基、炭素原子数1ないし25のアルキルチオ基、炭素原子数3ないし25のアルケニル基、炭素原子数3ないし25のアルキニル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル置換−フェニル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル置換−炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基;炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)アミノ基、炭素原子数1ないし25のアルカノイル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイル基;炭素原子数1ないし25のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし25のアルケノイル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルケノイル基;炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニル基、ベンゾイル基または炭素原子数1ないし12のアルキル−置換ベンゾイル基を表し;ただし、R7、R8、R9、R10またはR11の少なくとも1つは水素原子でなく;R12及びR13はおのおの互いに独立して未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニレン基またはナフチレン基を表し;R14は水素原子または炭素原子数1ないし8のアルキル基を表し;R15はヒドロキシ基、下記基
Figure 2007304376
(基中、Mはr価の金属カチオンを表し、及びrは1、2もしくは3を表す。)、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基または
Figure 2007304376
を表し;R16及びR17はおのおの互いに独立して水素原子、CF3、炭素原子数1ないし12のアルキル基またはフェニル基を表すか、あるいはR16及びR17は結合している炭素原子と一緒になって、未置換のもしくは1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換された炭素原子数5ないし8のシクロアルキリデン環を形成し;R18及びR19はおのおの互いに独立して、水素原子、炭素原子数1ないし4のアルキル基、フェニル基を表し;R20は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R21は水素原子、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニル基、炭素原子数1ないし25のアルキル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし25のアルキル基;未置換のもしくはフェニル部分において1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断され、かつ、未置換のもしくはフェニル部分において1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数7ないし25のフェニルアルキル基を表し;あるいはR20及びR21は結合している炭素原子と一緒になって、未置換のもしくは1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換された炭素原子数5ないし12のシクロアルキレン環を形成し;R22は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R23は水素原子、炭素原子数1ないし25のアルカノイル基、炭素原子数3ないし25のアルケノイル基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイル基;ジ(炭素原子数1ないし6のアルキル)−ホスホネート基により置換された炭素原子数2ないし25のアルカノイル基;炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニル基、テノイル基、フロイル基、ベンゾイル基または炭素原子数1ないし12のアルキル置換ベンゾイル基;
Figure 2007304376
(基中、sは1または2を表す。)を表し;R24及びR25はおのおの互いに独立して水素原子または炭素原子数1ないし18のアルキル基を表し;R26は水素原子または炭素原子数1ないし8のアルキル基を表し;R27は直接結合、炭素原子数1ないし18のアルキレン基;酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし18のアルキレン基;炭素原子数2ないし18のアルケニレン基、炭素原子数2ないし20のアルキリデン基、炭素原子数7ないし20のフェニルアルキリデン基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキレン基、炭素原子数7ないし8のビシクロアルキレン基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニレン基、
Figure 2007304376
を表し;R28はヒドロキシ基、
Figure 2007304376
、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基または
Figure 2007304376
を表し;R29は酸素原子、−NH−または
Figure 2007304376
を表し;R30は炭素原子数1ないし18のアルキル基またはフェニル基を表し;R31は水素原子または炭素原子数1ないし18のアルキル基を表す、で表される化合物に関する。
nが1であるとき、R1は、おのおの未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基またはジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)−アミノ基で置換された、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサンチニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタルアジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シノリル基、プテリジニル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナンチリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、フルオレニル基またはフェノキサジニル基は、代表的には1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フェニルアミノ−4−ナフチル基、1−メチルナフチル基、2−メチルナフチル基、1−メトキシ−2−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、1−ジメチルアミノ−2−ナフチル基、1,2−ジメチル−4−ナフチル基、1,2−ジメチル−6−ナフチル基、1,2−ジメチル−7−ナフチル基、1,3−ジメチル−6−ナフチル基、1,4−ジメチル−6−ナフチル基、1,5−ジメチル−2−ナフチル基、1,6−ジメチル−2−ナフチル基、1−ヒドロキシ−2−ナフチル基、2−ヒドロキシ−1−ナフチル基、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル基、7−フェナントリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、3−ベンゾ[b]チエニル基、5−ベンゾ[b]チエニル基、2−ベンゾ[b]チエニル基、4−ジベンゾフリル基、4,7−ジベンゾフリル基、4−メチル−7−ジベンゾフリル基、2−キサンテニル基、8−メチル−2−キサンテニル基、3−キサンテニル基、2−フェノキサンチニル基、2,7−フェノキサンチニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、5−メチル−3−ピロリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、5−イミダゾリル基、2−メチル−4−イミダゾリル基、2−エチル−4−イミダゾリル基、2−エチル−5−イミダゾリル基、3−ピラゾリル基、1−メチル−3−ピラゾリル基、1−プロピル−4−ピラゾリル基、2−ピラジニル基、5,6−ジメチル−2−ピラジニル基、2−インドリジニル基、2−メチル−3−イソインドリル基、2−メチル−1−イソインドリル基、1−メチル−2−インドリル基、1−メチル−3−インドリル基、1,5−ジメチル−2−インドリル基、1−メチル−3−インダゾリル基、2,7−ジメチル−8−プリニル基、2−メトキシ−7−メチル−8−プリニル基、2−キノリジニル基、3−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、イソキノリル基、3−メトキシ−6−イソキノリル基、2−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、2−メトキシ−3−キノリル基、2−メトキシ−6−キノリル基、6−フタラジニル基、7−フタラジニル基、1−メトキシ−6−フタラジニル基、1,4−ジメトキシ−6−フタラジニル基、1,8−ナフチリジニ−2−イル基、2−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、2,3−ジメチル−6−キノキサリニル基、2,3−ジメトキシ−6−キノキサリニル基、2−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、2−ジメチルアミノ−6−キナゾリニル基、3−シノリニル基、6−シノリニル基、7−シノリニル基、3−メトキシ−7−シノリニル基、2−プテリジニル基、6−プテリジニル基、7−プテリジニル基、6,7−ジメトキシ−2−プテリジニル基、2−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、9−メチル−2−カルバゾリル基、9−メチル−3−カルバゾリル基、β−カルボリニ−3−イル基、1−メチル−β−カルボリニ−3−イル基、1−メチル−β−カルボリニ−6−イル基、3−フェニアントリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、2−ペリミジニル基、1−メチル−5−ペリミジニル基、5−フェナントロリニル基、6−フェナントロリニル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、10−メチル−3−フェノチアジニル基、3−イソキサゾリル基、4−イソキサゾリル基、5−イソキサゾリル基、4−メチル−3−フラザニル基、2−フェノキサジニル基または10−メチル−2−フェノキサジニル基である。
特別に好ましい上記置換基は、おのおの未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、フェニルアミノ基またはジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)−アミノ基で置換された、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、ジベンゾフリル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサンチニル基、ピロリル基、イソインドリル基、インドリル基、フェノチアジニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、フルオレニル基またはフェノキサジニル基であり、代表的には1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フェニルアミノ−4−ナフチル基、1−メチルナフチル基、2−メチルナフチル基、1−メトキシ−2−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、1−ジメチルアミノ−2−ナフチル基、1,2−ジメチル−4−ナフチル基、1,2−ジメチル−6−ナフチル基、1,2−ジメチル−7−ナフチル基、1,3−ジメチル−6−ナフチル基、1,4−ジメチル−6−ナフチル基、1,5−ジメチル−2−ナフチル基、1,6−ジメチル−2−ナフチル基、1−ヒドロキシ−2−ナフチル基、2−ヒドロキシ−1−ナフチル基、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフチル基、7−フェナントリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、3−ベンゾ[b]チエニル基、5−ベンゾ[b]チエニル基、2−ベンゾ[b]チエニル基、4−ジベンゾフリル基、4,7−ジベンゾフリル基、4−メチル−7−ジベンゾフリル基、2−キサンテニル基、8−メチル−2−キサンテニル基、3−キサンテニル基、2−フェノキサンチニル基、2,7−フェノキサンチニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、10−メチル−3−フェノチアジニル基である。
ハロゲン置換基は、都合よくは、塩素置換基、臭素置換基またはヨウ素置換基である。塩素置換基が好ましい。
25個までの炭素原子をもつアルカノイル基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル基、エイコサノイル基またはドコサノイル基である。2ないし18個の、より好ましくは2ないし12個の、特に2ないし6個の炭素原子のアルカノイル基が好ましい。アセチル基が特別に好ましい。
ジ(炭素原子数1ないし6のアルキル)ホスホネート基により置換されている炭素原子数2ないし25のアルカノイル基は代表的には、(CH3CH2O)2POCH2CO−、(CH3O)2POCH2CO−、(CH3CH2CH2CH2O)2POCH2CO−、(CH3CH2O)2POCH2CH2CO−、(CH3O)2POCH2CH2CO−、(CH3CH2CH2CH2O)2POCH2CH2CO−、(CH3CH2O)2PO(CH24CO−、(CH3CH2O)2PO(CH28CO−または(CH3CH2O)2PO(CH217CO−である。
25個までの炭素原子を持つアルカノイルオキシ基は、枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ウンデカノイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基、トリデカノイルオキシ基、テトラデカノイルオキシ基、ペンタデカノイルオキシ基、ヘキサデカノイルオキシ基、ヘプタデカノイルオキシ基、オクタデカノイルオキシ基、エキコサノイルオキシ基またはドコサノイルオキシ基である。2ないし18個の、より好ましくは2ないし12個の、例えば2ないし6個の炭素原子のアルカノイルオキシ基が好ましい。アセトキシ基が特別に好ましい。
3個ないし25個の炭素原子を持つアルケノイル基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロペノイル基、2−ブテノイル基、3−ブテノイル基、イソブテノイル基、n−2,4−ペンタジエノイル基、3−メチル−2−ブテノイル基、n−2−オクテノイル基、n−2−ドデセノイル基、イソ−ドデセノイル基、オレオイル基、n−2−オクダデカノイル基またはn−4−オクタデカノイル基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、例えば3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルケノイル基が好ましい。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルケノイル基は代表的にはCH3OCH2CH2CH=CHCO−またはCH3OCH2CH2OCH=CHCO−である。
3ないし25個の炭素原子をもつアルケノイルオキシ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロペノイルオキシ基、2−ブテノイルオキシ基、3−ブテノイルオキシ基、イソブテノイルオキシ基、n−2,4−ペンタジエノイルオキシ基、3−メチル−2−ブテノイルオキシ基、n−2−オクテノイルオキシ基、n−2−ドデセノイルオキシ基、イソ−ドデセノイルオキシ基、オレオイルオキシ基、n−2−オクタデセノイルオキシ基またはn−4−オクタデセノイルオキシ基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、代表的には3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルケノイルオキシ基が好ましい。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルケノイルオキシ基は代表的にはCH3OCH2CH2CH=CHCOO−またはCH3OCH2CH2OCH=CHCOO−である。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイル基は代表的にはCH3−O−CH2CO−,CH3−S−CH2CO−、CH3−NH−CH2CO−、CH3−N(CH3)−CH2CO−、CH3−O−CH2CH2−OCH2CO、CH3−(O−CH2CH22O−CH2CO−、CH3−(O−CH2CH2−)3O−CH2CO−またはCH3−(O−CH2CH2−)4O−CH2CO−である。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数3ないし25のアルカノイルオキシ基は代表的にはCH3−O−CH2COO−、CH3−S−CH2COO−、CH3−NH−CH2COO−、CH3−N(CH3)−CH2COO−、CH3−O−CH2CH2−OCH2COO−、CH3−(O−CH2CH22O−CH2COO−、CH3−(O−CH2CH2−)3O−CH2COO−またはCH3−(O−CH2CH2−)4O−CH2COO−である。
炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニル基の例は、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、シクロヘプチルカルボニル基及びシクロオクチルカルボニル基である。シクロヘキシルカルボニル基が好ましい。
炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニルオキシ基の例は、シクロペンチルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘプチルカルボニルオキシ基及びシクロオクチルカルボニルオキシ基である。シクロヘキシルカルボニルオキシ基が好ましい。
好ましくは1ないし3個の、最も好ましくは1ないし2個のアルキル基をもつ、炭素原子数1ないし12のアルキル−置換ベンゾイル基はo−、m−もしくはp−メチルベンゾイル基、2,3−ジメチルベンゾイル基、2,4−ジメチルベンゾイル基、2,5−ジメチルベンゾイル基、2,6−ジメチルベンゾイル基、3,4−ジメチルベンゾイル基、3,5−ジメチルベンゾイル基、2−メチル−6−エチルベンゾイル基、4−第三ブチル−ベンゾイル基、2−エチルベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、2,6−ジメチル−4−第三ブチルベンゾイル基または3,5−ジ第三ブチル−ブチルベンゾイル基である。好ましい置換基は炭素原子数1ないし8のアルキル基、最も好ましくは炭素原子数1ないし4のアルキル基である。
好ましくは1ないし3個の、最も好ましくは1ないし2個のアルキル基をもつ、炭素原子数1ないし12のアルキル−置換ベンゾイルオキシ基はo−、m−もしくはp−メチルベンゾイルオキシ基、2,3−ジメチルベンゾイルオキ基、2,4−ジメチルベンゾイルオキシ基、2,5−ジメチルベンゾイルオキシ基、2,6−ジメチルベンゾイルオキシ基、3,4−ジメチルベンゾイルオキシ基、3,5−ジメチルベンゾイルオキシ基、2−メチル−6−エチルベンゾイルオキシ基、4−第三ブチルベンゾイルオキシ基、2−エチルベンンゾイルオキシ基、2,4,6−トリメチルベンゾイルオキシ基、2,6−ジメチル−4−第三ブチルベンゾイルオキシ基及び3,5−ジ第三ブチルベンゾイルオキシ基である。好ましい置換基は炭素原子数1ないし8のアルキル基、最も好ましくは炭素原子数1ないし4のアルキル基である。
25個までの炭素原子をもつアルキル基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二ブチル基、イソブチル基、第三ブチル基、2−エチルブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、1−メチルペンチル基、1,3−ジメチルブチル基、n−ヘキシル基、1−メチルヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、1,1,3,3,−テトラメチルブチル基、1−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、1,1,3−トリメチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、1−メチルウンデシル基、ドデシル基、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルヘキシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基またはドコシル基である。好ましいR2及びR4の意味は代表的には、炭素原子数1ないし18のアルキル基である。特に好ましいR4の意味は炭素原子数1ないし4のアルキル基である。
3個ないし25個の炭素原子を持つアルケニル基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、イソブテニル基、n−2,4−ペンタジエニル基、3−メチル−2−ブテニル基、n−2−オクテニル基、n−2−ドデセニル基、イソドデセニル基、オレイル基、n−2−オクダデカニル基またはn−4−オクタデカニル基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、代表的には3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルケニル基が好ましい。
3個ないし25個の炭素原子を持つアルケニルオキシ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、n−2,4−ペンタジエニルオキシ基、3−メチル−2−ブテニルオキシ基、n−2−オクテニルオキシ基、n−2−ドデセニルオキシ基、イソドデセニルオキシ基、オレイルオキシ基、n−2−オクダデカニルオキシ基またはn−4−オクタデカニルオキシ基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、代表的には3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルケニルオキシ基が好ましい。
3個ないし25個の炭素原子を持つアルキニル基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロピニル基(−CH2−C≡CH)、2−ブチニル基、3−ブチニル基、n−2−オクチニル基、n−2−ドデシニル基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、代表的には3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルキニル基が好ましい。
3個ないし25個の炭素原子を持つアルキニルオキシ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、プロピニルオキシ基(−OCH2−C≡CH)、2−ブチニルオキシ基、3−ブチニルオキシ基、n−2−オクチニルオキシ基、n−2−ドデシニルオキシ基である。3ないし18個の、より好ましくは3ないし12個の、代表的には3ないし6個の、最も好ましくは3ないし4個の炭素原子のアルキニルオキシ基が好ましい。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし25のアルキル基は、代表的にはCH3−O−CH2−,CH3−S−CH2−、CH3−NH−CH2−、CH3−N(CH3)−CH2−、CH3−O−CH2CH2−O−CH2−、CH3(O−CH2CH22O−CH2−、CH3−(O−CH2CH2−)3O−CH2−またはCH3−(O−CH2CH2−)4O−CH2−である。
炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基は代表的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基及び2−フェニルエチル基である。ベンジル基及びα,α−ジメチルベンジル基が好ましい。
未置換のまたはフェニル部分で1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換されている炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基は代表的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、2−フェニルエチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2,4−ジメチルベンジル基、2,6−ジメチルベンジル基または4−第三ブチルベンジル基である。ベンジル基が好ましい。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断され、かつ、未置換のまたはフェニル部分で1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換されている炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基は、例えばフェノキシメチル基、2−メチルフェノキシメチル基、3−メチルフェノキシメチル基、4−メチルフェノキシメチル基、2,4−メチルフェノキシメチル基、2,3−メチルフェノキシメチル基、フェニルチオメチル基、N−メチル−N−フェニル−メチル基、N−エチル−N−フェニルメチル基、4−第三ブチルフェノキシメチル基、4−第三ブチルフェニキシエトキシメチル基、2,4−ジ−第三ブチルフェノキシメチル、2,4−ジ−第三ブチルフェノキシエトキシメチル基、フェノキシエトキシエトキシエトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエトキシメチル基、N−ベンジル−N−エチルメチル基またはN−ベンジル−N−イソプロピルメチル基のような、枝分かれしたまたは枝分かれしていない基である。
炭素原子数7ないし9のフェニルアルコキシ基は代表的には、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基及び2−フェニルエトキシ基である。ベンジルオキシ基が好ましい。
好ましくは1ないし3個、特に1または2個のアルキル基を含む、炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換されたフェニル基の例は、o−、m−もしくはp−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル基、4−第三ブチルフェニル基、2−エチルフェニル基及び2,6−ジエチルフェニル基である。
好ましくは1ないし3個、特に1または2個のアルキル基を含む、炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換されたフェノキシ基の例は、o−、m−もしくはp−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2−メチル−6−エチルフェノキシ基、4−第三ブチルフェノキシ基、2−エチルフェノキシ基及び2,6−ジエチルフェノキシ基である。
未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基の例は、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、第三ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基である。シクロヘキシル基及び第三ブチルシクロヘキシル基が好ましい。
未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数5ないし8のシクロアルコキシ基の例は、シクロペントキシ基、メチルシクロペントキシ基、ジメチルシクロペントキシ基、シクロヘクソキシ基、メチルシクロヘクソキシ基、ジメチルシクロヘクソキシ基、トリメチルシクロヘクソキシ基、第三ブチルシクロヘクソキシ基、シクロヘプトキシ基及びシクロオクトキシ基である。シクロヘクソキシ基及び第三ブチルシクロヘキシキシ基が好ましい。
25個までの炭素原子をもつアルコキシ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ、デシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基またはオクタデシルオキシ基である。1ないし12個の、好ましくは1ないし8個の、例えば1ないし6個の炭素原子のアルコキシ基が好ましい。
酸素原子、硫黄原子もしくは
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし25のアルコキシ基は代表的には、CH3−O−CH2CH2O−、CH3−S−CH2CH2O−、CH3−NH−CH2CH2O−、CH3−N(CH3)−CH2CH2O−、CH3−O−CH2CH2−O−CH2CH2O−、CH3(O−CH2CH22O−CH2CH2O−、CH3−(O−CH2CH2−)3O−CH2CH2O−またはCH3−(O−CH2CH2−)4O−CH2CH2O−である。
25個までの炭素原子をもつアルキルチオ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、イソブチルチオ基、ペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、テトラデシルチオ基、ヘキサデシルチオ基またはオクタデシルチオ基である。1ないし12個の、好ましくは1ないし8個の、例えば1ないし6個の炭素原子のアルキルチオ基が好ましい。
4個までの炭素原子をもつアルキルアミノ基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基または第三ブチルアミノ基である。
ジ(炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ)基もまた、おのおの他方と独立した2つの部分は枝分かれしたまたは枝分かれしていないことを意味し、代表的には、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチル−n−プロピルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基、エチル−n−ブチルアミノ基、エチルイソブチルアミノ基、エチル−第三ブチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、イソプロピル−n−ブチルアミノ基、イソプロピルイソブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基またはジイソブチルアミノ基である。
25個までの炭素原子を持つアルカノイルアミノ基は、枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブタノイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ヘプタノイルアミノ基、オクタノイルアミノ基、ノナノイルアミノ基、デカノイルアミノ基、ウンデカノイルアミノ基、ドデカノイルアミノ基、トリデカノイルアミノ基、テトラデカノイルアミノ基、ペンタデカノイルアミノ基、ヘキサデカノイルアミノ基、ヘプタデカノイルアミノ基、オクタデカノイルアミノ基、エキコサノイルアミノ基またはドコサノイルアミノ基である。2ないし18個の、好ましくは2ないし12個の、例えば2ないし6個の炭素原子のアルカノイルアミノ基が好ましい。
炭素原子数1ないし18の炭素原子をもつアルキレン基は枝分かれしたまたは枝分かれしていない基であり、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基またはオクタデカメチレン基である。炭素原子数1ないし12のアルキレン基が好ましく、及び炭素原子数1ないし8のアルキレン基が特に好ましい。
1ないし3個の、好ましくは1ないし2個の枝分かれしたまたは枝分かれしていない基を含む、炭素原子数1ないし4のアルキル−置換炭素原子数5ないし12のシクロアルキレン環の例は、シクロペンチレン、メチルシクロペンチレン、ジメチルシクロペンチレン、シクロヘキシレン、メチルシクロヘキシレン、ジメチルシクロヘキシレン、トリメチルシクロヘキシレン、第三ブチルシクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンまたはシクロデシレン環である。シクロヘキシレン及び第三ブチルシクロヘキシレン環が好ましい。
酸素原子、硫黄原子または
Figure 2007304376
で中断された炭素原子数2ないし18のアルキレン基の例は−CH2−O−CH2−、−CH2−S−CH2−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−N(CH3)−CH2−、−CH2−O−CH2CH2−O−CH2−、−CH2−(O−CH2CH2−)2O−CH2−、−CH2−(O−CH2CH23O−CH2−、−CH2−(O−CH2CH24O−CH2−及び−CH2CH2−S−CH2CH2−である。
炭素原子数1ないし18のアルケニレン基は代表的にはビニレン基、メチルビニレン基、オクテニルエチレン基またはドデセニルエチレン基である。炭素原子数2ないし8のアルケニレン基が好ましい。
2ないし20個の炭素原子を持つアルキリデン基は代表的には、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、ペンチリデン基、4−メチルペンチリデン基、ヘプチリデン基、ノニリデン基、トリデシリデン基、ノナデシリデン基、1−メチルエチリデン基、1−エチルプロピリデン基及び1−エチルペンチリデン基である。炭素原子数2ないし8のアルキリデン基が好ましい。
7ないし20個の炭素原子を持つフェニルアルキリデン基の例はベンジリデン基、2−フェニルエチリデン基及び1−フェニル基−2−ヘキシリデン基である。炭素原子数7ないし9のフェニルアルキリデン基が好ましい。
炭素原子数5ないし8のシクロアルキレン基は2つの自由電子価及び少なくとも1つの環単位をもつ飽和炭化水素基であり、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基またはシクロオクチレン基である。シクロヘキシレン基が好ましい。
炭素原子数7ないし8のビシクロアルキレン基はビシクロヘプチレン基及びビシクロオクチレン基である。
未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニレン基またはナフチレン基の例は1,2−,1,3−及び1,4−フェニレン基;1,2−,1,3−,1,4−,1,6−,1,7−,2,6−または2,7−ナフチレン基である。1,4−フェニレン基が好ましい。
好ましくは1ないし3個の、最も好ましくは1または2個の、枝分かれしたまたは枝分かれしていないアルキル基を含む、炭素原子数1ないし4のアルキル−置換炭素原子数5ないし8のシクロアルキリデン環の例は、シクロペンチリデン、メチルシクロペンチリデン、ジメチルシクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、ジメチルシクロヘキシリデン、トリメチルシクロヘキシリデン、第三ブチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン及びシクロオクチリデンである。シクロヘキシリデン及び第三ブチルシクロヘキシリデンが好ましい。
1価、2価または3価の金属カチオンは好ましくはアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたはアルミニウムカチオンであり、例えばNa+、K+、Mg++、Ca++またはAl+++である。
一般式(R)で表される化合物は、nが1であるとき、R1が、おのおの未置換の、またはパラ位において、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基もしくはジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)−アミノ基により置換されたフェニル基;1ないし5個のアルキル置換基中で同時に最大数18個の炭素原子数を含む一ないし五置換されたアルキルフェニル基;おのおの未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基またはアミノ基で置換された、ナフチル基、ビフェニル基、テルフェニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、チエニル基、ピロリル基、フェノチアジニル基または5,6,7,8−テトラヒドロナフチル基を表す、化合物である。
好ましい一般式(R)で表される化合物は、nが2であるとき、R1が−R12−X−R13−を表し;R12及びR13がフェニレン基を表し;Xが酸素原子または−NR31−を表し;及びR31が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表す、化合物である。
更に好ましい一般式(R)で表される化合物は、nが1であるとき、R1が、おのおの未置換の、または炭素原子数1ないし4のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルコキシ基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基またはジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)−アミノ基で置換された、ナフチル基、フェナントリル基、チエニル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基、フルオレニル基を表すか、あるいは式(II)
Figure 2007304376
で表される基を表し;R7、R8、R9及びR10はおのおの互いに独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキル基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基;炭素原子数1ないし18のアルコキシ基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数2ないし18のアルコキシ基;炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数3ないし12のアルケニルオキシ基、炭素原子数3ないし12のアルキニルオキシ基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルコキシ基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換フェニル基、フェノキシ基、シクロヘキシル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルコキシ基;炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1ないし4アルキル)アミノ基、炭素原子数1ないし12のアルカノイル基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数3ないし12のアルカノイル基;炭素原子数3ないし12のアルカノイルオキシ基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数3ないし12のアルカノイルオキシ基;炭素原子数1ないし12のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし12のアルケノイル基、炭素原子数3ないし12のアルケノイルオキシ基、シクロヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、ベンゾイル基または炭素原子数1ないし4のアルキル−置換ベンゾイル基;ベンゾイルオキシ基または炭素原子数1ないし4のアルキル置換ベンゾイルオキシ基;
Figure 2007304376
を表すか、また、式(II)中、置換基R7及びR8またはR8及びR11のおのおのの対は、結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環を形成し、R11は水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基、未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル置換−フェニル基、シクロヘキシル基、炭素原子数1ないし4のアルキルアミノ基、ジ(炭素原子数1ないし4のアルキル)アミノ基、炭素原子数1ないし12のアルカノイル基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数3ないし12のアルカノイル基;炭素原子数1ないし12のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし12のアルケノイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基または炭素原子数1ないし4のアルキル−置換ベンゾイル基を表し;ただし、R7、R8、R9、R10またはR11の少なくとも1つは水素原子でなく;R15はヒドロキシ基、炭素原子数1ないし12のアルコキシ基または
Figure 2007304376
を表し;R18及びR19はおのおの互いに独立して、水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R20は水素原子を表し;R21は水素原子、フェニル基、炭素原子数1ないし18のアルキル基、酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数2ないし18のアルキル基、炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断され、かつ、未置換のもしくはフェニル部分において1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基で置換された炭素原子数7ないし18のフェニルアルキル基を表し;あるいはR20及びR21は結合している炭素原子と一緒になって、未置換のもしくは1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換されたシクロヘキシレン環を形成し;R22は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R23は水素原子、炭素原子数1ないし18のアルカノイル基、炭素原子数3ないし12のアルケノイル基;酸素原子もしくは硫黄原子で中断された炭素原子数3ないし12のアルカノイル基;ジ(炭素原子数1ないし6のアルキル)−ホスホネート基により置換された炭素原子数2ないし12のアルカノイル基;炭素原子数6ないし9のシクロアルキルカルボニル基、ベンゾイル基;
Figure 2007304376
(基中、sは1または2を表す。)を表し;R24及びR25はおのおの互いに独立して水素原子または炭素原子数1ないし12のアルキル基を表し;R26は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R27は炭素原子数1ないし12のアルキレン基、炭素原子数2ないし8のアルケニレン基、炭素原子数2ないし8のアルキリデン基、炭素原子数7ないし12のフェニルアルキリデン基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキレン基、フェニレン基を表し;R28はヒドロキシ基、炭素原子数1ないし12のアルコキシ基または
Figure 2007304376
を表し;R29は酸素原子または−NH−を表しR30は炭素原子数1ないし18のアルキル基またはフェニル基を表す、化合物である。
また、好ましいものは、nが1であるとき、R1が、フェナントリル基、チエニル基、ジベンゾフリル基;未置換のもしくは炭素原子数1ないし4のアルキル−置換カルバゾリル基;またはフルオレニル基を表すか、あるいは式(II)
Figure 2007304376
で表される基を表し;R7、R8、R9及びR10はおのおの互いに独立して水素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数3ないし4のアルケニルオキシ基、炭素原子数3ないし4のアルキニルオキシ基、フェニル基、ベンゾイル基、ベンゾイルオキシ基または
Figure 2007304376
を表し、R11は水素原子、炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、フェニル基またはシクロヘキシル基を表し;ただし、R7、R8、R9、R10またはR11の少なくとも1つは水素原子でなく;R20は水素原子を表し;R21は水素原子、フェニル基、炭素原子数1ないし18のアルキル基を表し;あるいはR20及びR21は結合している一緒になって、未置換のもしくは1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換されたシクロヘキシレン環を形成し;R22は水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R23は水素原子、炭素原子数1ないし12のアルカノイル基またはベンゾイル基を表す、一般式(R)で表される化合物である。
7、R8、R9及びR10はおのおの互いに独立して水素原子または炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、及びR11は水素原子、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルキルチオ基またはフェニル基を表し;ただし、R7、R8、R9、R10またはR11の少なくとも1つは水素原子でない、一般式(R)で表される化合物は特別に好ましい。
より好ましい一般式(R)で表される化合物は、R2、R3、R4及びR5はおのおの互いに独立して水素原子、塩素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキル基、ベンジル基、フェニル基、炭素原子数5ないし8のシクロアルキル基、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数1ないし18のアルキルチオ基、炭素原子数1ないし18のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1ないし18のアルカノイルアミノ基、炭素原子数3ないし18のアルケノイルオキシ基またはベンゾイルオキシ基を表し(ただし、R2が水素原子またはメチル基の場合、R7またはR9はヒドロキシ基または炭素原子数1ないし25のアルカノイルオキシ基を表さない。);あるいは置換基R2及びR3または、R3及びR4またはR4及びR5は結合している炭素原子と一緒になって、ベンゼン環を形成し;R4は更に−(CH2p−COR15または−(CH2qOH(式中、pは1または2を表し;qは2、3、4、5または6を表す。)を表し;あるいはR3、R5及びR6が水素原子を表す場合、R4は更に式(III)で表される基を表し;R15はヒドロキシ基、炭素原子数1ないし12のアルコキシ基または
Figure 2007304376
を表し;R16及びR17はメチル基を表すか、または結合している炭素原子と一緒になって、未置換のもしくは1ないし3個の炭素原子数1ないし4のアルキル基により置換された炭素原子数5ないし8のシクロアルキリデン環を形成し;R24及びR25はおのおの互いに独立して水素原子または炭素原子数1ないし12のアルキル基を表す、化合物である。
特に好ましい一般式(R)で表される化合物はまた、R2、R3、R4及びR5の少なくとも2つが水素原子である、化合物である。
特に好ましい一般式(R)で表される化合物は、R3及びR5が水素原子である化合物である。
非常に特別に好ましい一般式(R)で表される化合物は、R2が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し;R3が水素原子を表し;R4が炭素原子数1ないし4のアルキル基を表すかまたは、R6が水素原子を表す場合、R4は更に式(III)で表される基を表し;R5は水素原子を表し、ならびにR16及びR17は結合している炭素原子と一緒になってシクロヘキシリデン環を形成する、化合物である。
一般式(R)で表される化合物はそれ自体公知の方法によって製造出来る。
一般式(R)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
《フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物》
本発明に好ましく用いられるフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物について説明する。
好ましい「フラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物」の例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースなどが挙げられるが、特にフラノース構造とピラノース構造を両方有するものが好ましい。例としてはスクロースが挙げられる。
本発明の「フラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物」に用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環に1〜5個のアルキル基もしくはアルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来るが、特に安息香酸が好ましい。
これらの化合物の製造方法の詳細は、特開昭62−42996号公報及び特開平10−237084号公報に記載されている。
以下に、具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
本発明の偏光板保護フィルムは、これらフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し、該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を1〜35質量%、特に5〜30質量%含むことが好ましい。この範囲内であれば、本発明の優れた効果を呈することが出来る。
《セルロースエステル》
次に、本発明に用いられるセルロースエステルについて、詳述する。
本発明に用いられるセルロースエステルフィルムは、溶液流延法、または溶融流延法により製造される。溶液流延法は、セルロースエステルを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。溶融流延法では、セルロースエステルを加熱により溶融したもの(メルト)を支持体上に流延してフィルムを形成する。溶融流延法はフィルム製造時の有機溶媒使用量を、大幅に少なくすることが出来るため、従来の有機溶媒を多量に使用する溶液流延法に比較して、環境適性が大幅に向上したフィルムが得られることから、溶融流延法によりセルロースエステルフィルムを製造することが好ましい。
本発明における溶融流延とは、実質的に溶媒を用いずにセルロースエステルを流動性を示す温度まで加熱溶融しこれを用いて製膜する方法であり、例えば流動性のセルロースエステルをダイスから押し出して製膜する方法である。なお溶融セルロースエステルを調製する過程の一部で溶媒を使用してもよいが、フィルム状に成形を行う溶融製膜プロセスにおいては実質的に溶媒を用いずに成形加工する。
光学フィルムを構成するセルロースエステルとしては、溶融製膜可能なセルロースエステルであれば特に限定はされず、例えば芳香族カルボン酸エステル等も用いられるが、光学特性等得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用することが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましい例として挙げられる。炭素原子数が6以上の脂肪酸で置換されたセルロースエステルでは、溶融製膜性は良好であるものの、得られるセルロースエステルフィルムの力学特性が低く、実質的に光学フィルムとして用いることが難しいためである。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。なお溶液流延製膜で一般に用いられているセルロースエステルであるトリアセチルセルロースについては、溶融温度よりも分解温度の方が高いセルロースエステルであるため、溶融製膜には用いることは出来ない。
本発明において、セルロースエステルフィルムを構成するセルロースエステルは、炭素数2以上の脂肪族アシル基を有するセルロースエステルであり、かつ、セルロースエステルのアシル基総炭素数が6.2〜7.5であるセルロースエステルであることが好ましい。セルロースエステルのアシル基総炭素数は、好ましくは、6.5〜7.2であり、更に好ましくは6.7〜7.1である。ただし、アシル基総炭素数は、セルロースエステル中の各アシル基の置換度と炭素数の積の総和である。更に、脂肪族アシル基の炭素数は、セルロース合成の生産性、コストの観点から、2〜6が好ましい。なお、アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタネート基、ヘキサネート基等が挙げられ、セルロースエステルとしては、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースペンタネート等が挙げられる。また、上述の側鎖炭素数を満たせば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートペンタネート等のように混合脂肪酸エステルでもよい。この中でも、特にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましい。
一般に、セルロースエステルのアシル基の総置換度に対し、セルロースエステルフィルムの機械物性及びケン化性と、セルロースエステルの溶融製膜性は、トレードオフの関係にある。例えば、セルロースアセテートプロピオネートにおいて、アシル基の総置換度を上げると機械物性が低下し、溶融製膜性が向上するため、両立は困難である。本発明では、セルロースエステルのアシル基総炭素数を好ましくは6.5〜7.2の範囲であると、フィルム機械物性、ケン化性、溶融製膜性を両立出来ることが出来る。この機構の詳細は不明であるが、アシル基の炭素数により、フィルム機械物性、ケン化性、溶融製膜性への影響が異なるためと推測される。すなわち、同置換度の場合、アセチル基よりもプロピオニル基、ブチリル基といった長鎖のアシル基の方が、より疎水性となり、溶融製膜性を向上させる。従って、同じ溶融製膜性を達成する場合、プロピオニル基、ブチリル基の置換度はアセチル基よりも低置換度でよく、そのため機械物性、ケン化性の低下が抑えられると推測される。
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.0〜5.5のものが用いられ、特に好ましくは1.4〜5.0であり、更に好ましくは2.0〜3.0である。また、Mwは5万〜50万、中でも10万〜30万のものが好ましく用いられる。
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出する。測定は前述の重量平均分子量の測定条件に準じる。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することが出来る。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることが出来る。
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号あるいは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することが出来る。
アセチル基、プロピオニル基、ブチル基等のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
また、工業的にはセルロースエステルは硫酸を触媒として合成されているが、この硫酸は完全には除去されておらず、残留する硫酸が溶融製膜時に各種の分解反応を引き起こし、得られるセルロースエステルフィルムの品質に影響を与えるため、本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜40ppmの範囲であることが好ましい。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が40ppm以下であると熱溶融時のダイリップ部の付着物が増加しにくく好ましい。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しにくくなるため好ましい。残留硫酸含有量は少ない方が好ましいが、0.1ppm未満とするにはセルロースエステルの洗浄工程の負担が大きくなり過ぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがある。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。更に0.1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、同様にASTM−D817−96により測定することが出来る。
また、その他の残留酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)を含めたトータル残留酸量は1000ppm以下が好ましく、500ppm以下が更に好ましく、100ppm以下がより好ましい。
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べて、更に十分に行うことによって、残留酸含有量を上記の範囲とすることが出来、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するRth値、Ro値が良好なフィルムを得ることが出来る。また、セルロースエステルの洗浄は、水に加えて、メタノール、エタノールのような貧溶媒、あるいは結果として貧溶媒であれば貧溶媒と良溶媒の混合溶媒を用いることが出来、残留酸以外の無機物、低分子の有機不純物を除去することが出来る。更に、セルロースエステルの洗浄は、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン、亜リン酸エステルといった酸化防止剤の存在下で行うことが好ましく、セルロースエステルの耐熱性、製膜安定性が向上する。
また、セルロースエステルの耐熱性、機械物性、光学物性等を向上させるため、セルロースエステルの良溶媒に溶解後、貧溶媒中に再沈殿させ、セルロースエステルの低分子量成分、その他不純物を除去することが出来る。この時、前述のセルロースエステルの洗浄同様に、酸化防止剤の存在下で行うことが好ましい。
更に、セルロースエステルの再沈殿処理の後、別のポリマーあるいは低分子化合物を添加してもよい。
また、本発明で用いられるセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いる(置換度の分散の小さいセルロースエステルを用いる)ことと、溶融したセルロースエステルを濾過すること、あるいはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することも出来る。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法の方が効率がよい。
フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることが更に好ましく、30個/cm2以下であることがさらにより好ましく、10個/cm2以下であることが更に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、100個/cm2以下であることがより好ましく、50個/cm2以下であることがさらにより好ましく、30個/cm2以下であることが更に好ましく、10個/cm2以下であることが更に好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合したセルロースエステル組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することが出来る。濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000P以下で濾過されることが好ましく、5000P以下がより好ましく、1000P以下が更に好ましく、500P以下であることがさらにより好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂等の弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものがより好ましく、10μm以下のものがさらにより好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組み合わせて使用することも出来る。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることが出来るが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
別の実施態様では、原料のセルロースエステルは少なくとも一度溶媒に溶解させた後、溶媒を乾燥させたセルロースエステルを用いてもよい。その際には可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、酸化防止剤及びマット剤の少なくとも1つ以上と共に溶媒に溶解させた後、乾燥させたセルロースエステルを用いる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることが出来、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしてもよい。このようなセルロースエステルを用いると、溶融状態にした時の各添加物を均一にしやすく、光学特性を均一に出来ることがある。
本発明の偏光板保護フィルムはセルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにした時の透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。
《酸化防止剤》
セルロースエステルは、熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明の偏光板保護フィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。
特に、溶融製膜が行われるような高温環境下では、セルロースエステルフィルム成形材料の熱、及び酸素による分解が促進されるため、酸化防止剤を含有することが好ましい。
また、本発明において、セルロースエステルの貧溶媒による懸濁洗浄時に酸化防止剤存在下で洗浄することも好ましい。使用される酸化防止剤は、セルロースエステルに発生したラジカルを不活性化する、あるいはセルロースエステルに発生したラジカルに酸素が付加したことが起因のセルロースエステルの劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることが出来る。
セルロースエステルの懸濁洗浄に使用する酸化防止剤は、洗浄後セルロースエステル中に残存していてもよい。残存量は0.01〜2000ppmがよく、より好ましくは0.05〜1000ppmである。更に好ましくは0.1〜100ppmである。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素によるセルロースエステルフィルム成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることが出来るが、中でも有用な酸化防止剤としては、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でも、特にフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物が好ましい。これらの化合物を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止出来る。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。
(フェノール系化合物)
フェノール系化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、下記一般式(A)で表される化合物が好ましい。
Figure 2007304376
式中、R11〜R15は置換基を表す。置換基としては、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンゾチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、カルボキシル基、スルホ基、ヘテロ環基(例えば、ピロール基、ピロリジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)等が挙げらる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
また、R11は水素原子、R12、R16はt−ブチル基であるフェノール系化合物が好ましい。フェノール系化合物の具体例としては、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Irganox1076”及び”Irganox1010”という商品名で市販されている。
(ヒンダードアミン系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、下記一般式(B)で表されるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
Figure 2007304376
式中、R21〜R27は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。R24は水素原子、メチル基、R27は水素原子、R22、R23、R25、R26はメチル基が好ましい。
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1−アクロイル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)2,2−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−1−[2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
また、高分子タイプの化合物でもよく、具体例としては、N,N′,N″,N″′−テトラキス−[4,6−ビス−〔ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ〕−トリアジン−2−イル]−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ[(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕]等の、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物等の、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物等で、数平均分子量(Mn)が2,000〜5,000のものが好ましい。
上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Tinuvin144”及び”Tinuvin770”、旭電化工業株式会社から”ADK STAB LA−52”という商品名で市販されている。
(リン系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、下記一般式(C−1)、(C−2)、(C−3)、(C−4)、(C−5)で表される部分構造を分子内に有する化合物が好ましい。
Figure 2007304376
式中、Ph1及びPh′1は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph1及びPh′1はフェニレン基を表し、該フェニレン基の水素原子はフェニル基、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph1及びPh′1は互いに同一でもよく、異なってもよい。Xは単結合、硫黄原子または−CHR6−基を表す。R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
Figure 2007304376
式中、Ph2及びPh′2は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph2及びPh′2はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。Ph2及びPh′2は互いに同一でもよく、異なってもよい。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
Figure 2007304376
式中、Ph3は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph3はフェニル基またはビフェニル基を表し、該フェニル基またはビフェニル基の水素原子は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基または炭素数7〜12のアラルキル基で置換されていてもよい。また、これらは前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
Figure 2007304376
式中、Ph4は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph4は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
Figure 2007304376
式中、Ph5、Ph′5及びPh″5は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。より好ましくは、Ph5、Ph′5及びPh″5は炭素数1〜20のアルキル基またはフェニル基を表し、該アルキル基またはフェニル基は前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義の置換基により置換されてもよい。
リン系化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン、トリデシルホスファイト等のモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)等のジホスファイト系化合物;トリフェニルホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4′−ジイルビスホスホナイト等のホスホナイト系化合物;トリフェニルホスフィナイト、2,6−ジメチルフェニルジフェニルホスフィナイト等のホスフィナイト系化合物;トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン系化合物;等が挙げられる。
上記タイプのリン系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社から、”SumilizerGP”、旭電化工業株式会社からADK STAB PEP−24G”、”ADK STAB PEP−36”及び”ADK STAB 3010”、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社から”IRGAFOS P−EPQ”、吉富ファインケミカル株式会社から“GSY−P101”という商品名で市販されている。
また、下記化合物が挙げられる。
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
(イオウ系化合物)
本発明において有用な酸化防止剤の一つとして、下記一般式(D)で表されるイオウ系化合物が好ましい。
Figure 2007304376
式中、R31及びR32は置換基を表す。置換基としては前記一般式(A)のR11〜R15で表される置換基と同義である。
イオウ系化合物の具体例としては、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
上記タイプのイオウ系化合物は、例えば、住友化学工業株式会社から、”Sumilezer TPL−R”及び”Sumilezer TP−D”という商品名で市販されている。
酸化防止剤は、前述のセルロースエステル同様に、製造時から持ち越される、あるいは保存中に発生する残留酸、無機塩、有機低分子等の不純物を除去することが好ましく、より好ましくは純度99%以上である。残留酸及び水としては、0.01〜100ppmであることが好ましく、セルロースエステルを溶融製膜する上で、熱劣化を抑制出来、製膜安定性、フィルムの光学物性、機械物性が向上する。
酸化防止剤は0.1〜10質量%添加することが好ましく、更に0.2〜5質量%添加することが好ましく、更に0.3〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の添加量が少な過ぎると溶融時に安定化作用が低いために、効果が得られず、また添加量が少な過ぎるとセルロースエステルへの相溶性の観点からフィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなることがあるため好ましくない。
《酸捕捉剤》
セルロースエステルは溶融製膜が行われるような高温環境下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の偏光板保護フィルムにおいては安定化剤として酸捕捉剤を含有することが好ましい。本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることが出来るが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22個の炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、及び下記一般式(5)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることが出来る。
Figure 2007304376
式中、nは0〜12の整数である。用いることが出来るその他の酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
酸捕捉剤は0.1〜10質量%添加することが好ましく、更に0.2〜5質量%添加することが好ましく、更に0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
なお酸捕捉剤は、酸掃去剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることが出来る。
《紫外線吸収剤》
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることが出来るが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)234、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバスペシャルティーケミカルズ社製)、LA31(旭電化社製)が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜5質量%添加することが好ましく、更に0.2〜3質量%添加することが好ましく、更に0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
またこれらのベンゾトリアゾール構造やベンゾフェノン構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
《可塑剤》
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造においては、フィルム形成材料中に少なくとも1種の可塑剤を1〜30質量%含有することが好ましい。
可塑剤とは、一般的には高分子中に添加することによって脆弱性を改良したり、柔軟性を付与したりする効果のある添加剤であるが、本発明においては、セルロースエステル単独での溶融温度よりも溶融温度を低下させるため、また同じ加熱温度においてセルロース樹脂単独よりも可塑剤を含むフィルム構成材料の溶融粘度を低下させるために、可塑剤を添加する。また、セルロースエステルの親水性を改善し、セルロースエステルフィルムの透湿度改善するためにも添加されるため透湿防止剤としての機能を有する。
ここで、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態の温度を意味する。セルロースエステルを溶融流動させるためには、少なくともガラス転移温度よりも高い温度に加熱する必要がある。ガラス転移温度以上においては、熱量の吸収により弾性率あるいは粘度が低下し、流動性が発現される。しかしセルロースエステルでは高温下では溶融と同時に熱分解によってセルロースエステルの分子量の低下が発生し、得られるフィルムの力学特性等に悪影響を及ぼすことがあるため、なるべく低い温度でセルロースエステルを溶融させる必要がある。フィルム構成材料の溶融温度を低下させるためには、セルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつ可塑剤を添加することで達成することが出来る。
本発明の偏光板保護フィルムには、下記一般式(1)で表される有機酸と3価以上のアルコールが縮合した構造を有するエステル化合物を、1〜25質量%含有することが好ましい。1質量%以上の添加により、平面性改善の効果が認められ、25質量%より少ないとブリードアウトしにくくなり、フィルムの経時安定性に優れるため好ましい。より好ましくは該可塑剤を3〜20質量%含有するセルロースエステルフィルムであり、更に好ましくは5〜15質量%含有するセルロースエステルフィルムである。
Figure 2007304376
式中、R1〜R5は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していてよい。Lは連結基を表し、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表す。
1〜R5で表されるシクロアルキル基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の基である。これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、フェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8のアシル基、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のカルボニルオキシ基等が挙げられる。
1〜R5で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、γ−フェニルプロピル基等の基を表し、また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
1〜R5で表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、もしくはt−ブトキシ等の各アルコキシ基である。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、ハロゲン原子、例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アラルキル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等を置換していてもよい)、アルケニル基、フェニル基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基(このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等によって更に置換されていてもよい))、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基が、またアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられる。
1〜R5で表されるシクロアルコキシ基としては、無置換のシクロアルコキシ基としては炭素数1〜8のシクロアルコキシ基基が挙げられ、具体的には、シクロプロピルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の基が挙げられる。また、これらの基は置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
1〜R5で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基が挙げられるが、このフェニル基にはアルキル基またはハロゲン原子等前記シクロアルキル基に置換してもよい基として挙げられた置換基で置換されていてもよい。
1〜R5で表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられ、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
1〜R5で表されるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数2〜8の無置換のアシル基が挙げられ(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
1〜R5で表されるカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等の炭素数2〜8の無置換のアシルオキシ基(アシル基の炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、アルキニル基を含む。)、またベンゾイルオキシ基等のアリールカルボニルオキシ基が挙げられるが、これらの基は更に前記シクロアルキル基に置換してもよい基と同様の基により置換されていてもよい。
1〜R5で表されるオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、またフェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基を表す。これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
また、R1〜R5で表されるオキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシカルボニルオキシ基を表し、これらの置換基は更に置換されていてもよく、好ましい置換基としては、前記のシクロアルキル基に置換してもよい基を同様に挙げることが出来る。
1〜R5のうちのいずれか同士で互いに連結し、環構造を形成していてもよい。
また、Lで表される連結基としては、置換または無置換のアルキレン基、酸素原子、または直接結合を表すが、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の基であり、これらの基は、更に前記のR1〜R5で表される基に置換してもよい基としてあげられた基で置換されていてもよい。
中でも、Lで表される連結基として特に好ましいのは直接結合であり芳香族カルボン酸である。
また、これら本発明において可塑剤となるエステル化合物を構成する、前記一般式(1)で表される有機酸としては、少なくともR1またはR2に前記アルコキシ基、アシル基、オキシカルボニル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニルオキシ基を有するものが好ましい。また複数の置換基を有する化合物も好ましい。
なお本発明においては3価以上のアルコールの水酸基を置換する有機酸は単一種であっても複数種であってもよい。
本発明において、前記一般式(1)で表される有機酸と反応して多価アルコールエステル化合物を形成する3価以上のアルコール化合物としては、好ましくは3〜20価の脂肪族多価アルコールであり、本発明おいて3価以上のアルコールは下記一般式(3)で表されるものが好ましい。
一般式(3) R′−(OH)m
式中、R′はm価の有機基、mは3以上の正の整数、OH基はアルコール性水酸基を表す。特に好ましいのは、mとしては3または4の多価アルコールである。
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、ジグリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ガラクチトール、イノシトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルは、公知の方法により合成出来る。実施例に代表的合成例を示したが、前記一般式(1)で表される有機酸と、多価アルコールを例えば、酸の存在下縮合させエステル化する方法、また、有機酸を予め酸クロライドあるいは酸無水物としておき、多価アルコールと反応させる方法、有機酸のフェニルエステルと多価アルコールを反応させる方法等があり、目的とするエステル化合物により、適宜、収率のよい方法を選択することが好ましい。
一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールのエステルからなる可塑剤としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
Figure 2007304376
式中、R6〜R20は水素原子またはシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基を表し、これらは更に置換基を有していてよい。R21は水素原子またはアルキル基を表す。
6〜R20のシクロアルキル基、アラルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、オキシカルボニルオキシ基については、前記一般式(1)のR1〜R5と同様の基が挙げられる。
このようにして得られる多価アルコールエステルの分子量には特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、400〜1000であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
以下に、本発明に係わる多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
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Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
Figure 2007304376
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造において、少なくとも前記一般式(1)で表される有機酸及び3価以上の多価アルコールから製造されるエステル化合物を可塑剤として1〜25質量%含有することが好ましいが、それ以外の可塑剤と併用してもよい。
前記一般式(1)で表される有機酸と3価以上の多価アルコールからなるエステル化合物は、セルロースエステルに対する相溶性が高く、高添加率で添加することが出来る特徴があるため、他の可塑剤や添加剤を併用してもブリードアウトを発生することがなく、必要に応じて他種の可塑剤や添加剤を容易に併用することが出来る。
なお、他の可塑剤を併用する際には、上記可塑剤が、可塑剤全体の少なくとも50質量%以上含有されることが好ましい。より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上含有されることが好ましい。このような範囲で用いれば、他の可塑剤との併用によっても、溶融流延時のセルロールエステルフィルムの平面性を向上させることが出来るという、一定の効果を得ることが出来る。
併用するその他の可塑剤としては、脂肪族カルボン酸−多価アルコール系可塑剤、特開2003−12823公報段落30〜33に記載されているような、無置換の芳香族カルボン酸またはシクロアルキルカルボン酸−多価アルコールエステル系可塑剤、あるいはジオクチルアジペート、ジシクロヘキシルアジペート、ジフェニルサクシネート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、トリシクロヘキシルトリカルバレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、フタル酸系可塑剤(例えばジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等)、クエン酸系可塑剤(クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等)等の多価カルボン酸エステル系可塑剤、トリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)(旭電化製アデカスタブPFR)、フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)(旭電化製アデカスタブFP500)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(旭電化製アデカスタブFP600)等のリン酸エステル系可塑剤、例えば特開2002−22956の段落番号49〜56に記載のポリマーポリエステル等、ポリエーテル系可塑剤等が挙げられる。
しかし、リン酸系可塑剤は加水分解によって強酸を発生し、可塑剤自身及びセルロースエステルの加水分解を促進する。このため、保存安定性が悪い、セルロースエステルの溶融製膜に使用するとフィルムの着色が発生しやすい等の問題により、フタル酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、ポリエーテル系可塑剤を使用することが好ましい。
なお、本発明に係るセルロースエステルフィルムは、着色すると光学用途として影響を与えるため、好ましくは黄色度(イエローインデックス、YI)が3.0以下、より好ましくは1.0以下である。黄色度はJIS−K7103に基づいて測定することが出来る。
《マット剤》
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を添加することが出来る。マット剤としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。マット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることが出来る。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低く出来るので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。
表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の一次粒子の平均粒径は10nm〜0.3μmの範囲であることが好ましい。もしくはマット剤を入れずにバックコート層を塗布によって設けることが出来る。
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。
これらのマット剤の添加方法は混練する等によって行うことが好ましい。また、別の形態として予め溶媒に分散したマット剤とセルロースエステル及び/または可塑剤及び/または紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿させた固形物を得て、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることが、マット剤がセルロース樹脂中で均一に分散出来る観点から好ましい。
上記マット剤は、フィルムの機械的、電気的、光学的特性改善のために添加することも出来る。
なお、これらの微粒子を添加するほど、得られるセルロースエステルフィルムの滑り性は向上するが、添加するほどヘイズが上昇するため、含有量は好ましくは0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
なお、本発明に係るセルロースエステルフィルムとしては、ヘイズ値が1.0%を超えると光学用材料として影響を与えるため、好ましくはヘイズ値は1.0%未満、より好ましくは0.5%未満である。ヘイズ値はJIS−K7136に基づいて測定することが出来る。
フィルム構成材料は溶融及び製膜工程において、揮発成分が少ないまたは発生しないことが求められる。これは加熱溶融時に発泡して、フィルム内部の欠陥やフィルム表面の平面性劣化を削減または回避するためである。
フィルム構成材料が溶融されるときの揮発成分の含有量は、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以下であることが望まれる。本発明においては、示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)を用いて、30℃から250℃までの加熱減量を求め、その量を揮発成分の含有量としている。
用いるフィルム構成材料は、前記水分や前記溶媒等に代表される揮発成分を、製膜する前に、または加熱時に除去することが好ましい。除去する方法は、公知の乾燥方法が適用出来、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことが出来、空気中または不活性ガスとして窒素を選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、フィルム構成材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。
製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することが出来、樹脂単独、または樹脂とフィルム構成材料の内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することも出来る。乾燥温度は70℃以上が好ましい。乾燥する材料にガラス転移温度を有する物が存在するときには、そのガラス転移温度よりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがあるので、乾燥温度は、ガラス転移温度以下であることが好ましい。複数の物質がガラス転移温度を有する場合は、ガラス転移温度が低い方のガラス転移温度を基準とする。より好ましくは70℃以上、(ガラス転移温度−5)℃以下、更に好ましくは110℃以上、(ガラス転移温度−20)℃以下である。乾燥時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、更に好ましくは1.5〜12時間である。乾燥温度が低くなり過ぎると揮発成分の除去率が低くなり、また乾燥するのに時間にかかり過ぎることになる。また、乾燥工程は2段階以上にわけてもよく、例えば、乾燥工程が、材料の保管のための予備乾燥工程と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥工程を含むものであってもよい。
《溶融流延法》
本発明に係るセルロースエステルフィルムは溶融流延によって形成することが好ましい。溶液流延法において用いられる溶媒(例えば塩化メチレン等)を用いずに、加熱溶融する溶融流延による成形法は、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類出来る。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押し出法が優れている。
以下、溶融押し出法を例にとり、本発明のフィルムの製造方法について説明する。
図1は、本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法を実施する装置の全体構成を示す概略フローシートであり、図2は、流延ダイから冷却ロール部分の拡大図である。
図1と図2において、本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法は、セルロース樹脂等のフィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融押し出、第1冷却ロール5に外接させるとともに、更に、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化してフィルム10とする。次いで、剥離ロール9によって剥離したフィルム10を、次いで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して幅方向に延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。タッチロール6についての詳細は後述する。
本発明によるセルロースエステルフィルムの製造方法において、溶融押し出の条件は、他のポリエステル等の熱可塑性樹脂に用いられる条件と同様にして行うことが出来る。材料は予め乾燥させておくことが好ましい。真空または減圧乾燥機や除湿熱風乾燥機等で水分を1000ppm以下、好ましくは200ppm以下に乾燥させることが望ましい。
例えば、熱風や真空または減圧下で乾燥したセルロースエステル系樹脂を押出し機1を用いて、押し出温度200〜300℃程度で溶融し、リーフディスクタイプのフィルター2等で濾過し、異物を除去する。
供給ホッパー(図示略)から押出し機1へ導入する際は、真空下または減圧下や不活性ガス雰囲気下にして、酸素や水分の影響を防止して酸化分解等を防止することが好ましい。
可塑剤等の添加剤を予め混合しない場合は、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサー3等の混合装置を用いることが好ましい。
本発明において、セルロース樹脂と、その他必要により添加される安定化剤等の添加剤は、溶融する前に混合しておくことが好ましい。セルロース樹脂と安定化剤を最初に混合することが更に好ましい。混合は、混合機等により行ってもよく、また、前記したようにセルロース樹脂調製過程において混合してもよい。混合機を使用する場合は、V型混合機、円錐スクリュー型混合機、水平円筒型混合機等、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー一般的な混合機を用いることが出来る。
上記のようにフィルム構成材料を混合した後に、その混合物を押出し機1を用いて直接溶融して製膜するようにしてもよいが、一旦、フィルム構成材料をペレット化した後、該ペレットを押出し機1で溶融して製膜するようにしてもよい。また、フィルム構成材料が、融点の異なる複数の材料を含む場合には、融点の低い材料のみが溶融する温度で一旦、いわゆるおこし状の半溶融物を作製し、半溶融物を押出し機1に投入して製膜することも可能である。フィルム構成材料に熱分解しやすい材料が含まれる場合には、溶融回数を減らす目的で、ペレットを作製せずに直接製膜する方法や、上記のようなおこし状の半溶融物を作ってから製膜する方法が好ましい。
押出し機1は、市場で入手可能な種々の押出し機を使用可能であるが、溶融混練押出し機が好ましく、単軸押出し機でも2軸押出し機でもよい。フィルム構成材料からペレットを作製せずに、直接製膜を行う場合、適当な混練度が必要であるため2軸押出し機を用いることが好ましいが、単軸押出し機でも、スクリューの形状をマドック型、ユニメルト型、ダルメージ等の混練型のスクリューに変更することにより、適度の混練が得られるので、使用可能である。フィルム構成材料として、一旦、ペレットやおこし状の半溶融物を使用する場合は、単軸押出し機でも2軸押出し機でも使用可能である。
押出し機1内及び押し出した後の冷却工程は、窒素ガス等の不活性ガスで置換するか、あるいは減圧することにより、酸素の濃度を下げることが好ましい。
押出し機1内のフィルム構成材料の溶融温度は、フィルム構成材料の粘度や吐出量、製造するシートの厚み等によって好ましい条件が異なるが、一般的には、フィルムのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+100℃以下、好ましくはTg+10℃以上、Tg+90℃以下である。押し出時の溶融粘度は、10〜100000ポイズ、好ましくは100〜10000ポイズである。また、押出し機1内でのフィルム構成材料の滞留時間は短い方が好ましく、5分以内、好ましくは3分以内、より好ましくは2分以内である。滞留時間は、押出し機1の種類、押し出す条件にも左右されるが、材料の供給量やL/D、スクリュー回転数、スクリューの溝の深さ等を調整することにより短縮することが可能である。
押出し機1のスクリューの形状や回転数等は、フィルム構成材料の粘度や吐出量等により適宜選択される。本発明において押出し機1でのせん断速度は、1/秒〜10000/秒、好ましくは5/秒〜1000/秒、より好ましくは10/秒〜100/秒である。
本発明に使用出来る押出し機1としては、一般的にプラスチック成形機として入手可能である。
押出し機1から押し出されたフィルム構成材料は、流延ダイ4に送られ、流延ダイ4のスリットからフィルム状に押し出される。流延ダイ4はシートやフィルムを製造するために用いられるものであれば特に限定はされない。流延ダイ4の材質としては、ハードクロム、炭化クロム、窒化クロム、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化チタン、超鋼、セラミック(タングステンカーバイド、酸化アルミ、酸化クロム)等を溶射もしくはメッキし、表面加工としてバフ、#1000番手以降の砥石を用いるラッピング、#1000番手以上のダイヤモンド砥石を用いる平面切削(切削方向は樹脂の流れ方向に垂直な方向)、電解研磨、電解複合研磨等の加工を施したもの等が挙げられる。流延ダイ4のリップ部の好ましい材質は、流延ダイ4と同様である。またリップ部の表面精度は0.5S以下が好ましく、0.2S以下がより好ましい。
この流延ダイ4のスリットは、そのギャップが調整可能なように構成されている。これを図3に示す。流延ダイ4のスリット32を形成する一対のリップのうち、一方は剛性の低い変形しやすいフレキシブルリップ33であり、他方は固定リップ34である。そして、多数のヒートボルト35が流延ダイ4の幅方向すなわちスリット32の長さ方向に一定ピッチで配列されている。各ヒートボルト5には、埋め込み電気ヒータ37と冷却媒体通路とを具えたブロック36が設けられ、各ヒートボルト35が各ブロック36を縦に貫通している。ヒートボルト35の基部はダイ本体31に固定され、先端はフレキシブルリップ33の外面に当接している。そしてブロック36を常時空冷しながら、埋め込み電気ヒータ37の入力を増減してブロック36の温度を上下させ、これによりヒートボルト35を熱伸縮させて、フレキシブルリップ33を変位させてフィルムの厚さを調整する。ダイ後流の所要箇所に厚さ計を設け、これによって検出されたウェブ厚さ情報を制御装置にフィードバックし、この厚さ情報を制御装置で設定厚み情報と比較し、同装置から来る補正制御量の信号によってヒートボルトの発熱体の電力またはオン率を制御するようにすることも出来る。ヒートボルトは、好ましくは、長さ20〜40cm、直径7〜14mmを有し、複数、例えば数十本のヒートボルトが、好ましくはピッチ20〜40mmで配列されている。ヒートボルトの代わりに、手動で軸方向に前後動させることによりスリットギャップを調節するボルトを主体とするギャップ調節部材を設けてもよい。ギャップ調節部材によって調節されたスリットギャップは、通常200〜1000μm、好ましくは300〜800μm、より好ましくは400〜600μmである。
第1〜第3冷却ロールは、肉厚が20〜30mm程度のシームレスな鋼管製で、表面が鏡面に仕上げられている。その内部には、冷却液を流す配管が配置されており、配管を流れる冷却液によってロール上のフィルムから熱を吸収出来るように構成されている。
一方、第1冷却ロール5に当接するタッチロール6は、表面が弾性を有し、第1冷却ロール5への押圧力によって第1冷却ロール5の表面に沿って変形し、第1ロール5との間にニップを形成する。
図4に、タッチロール6の一実施形態(以下、タッチロールA)の概略断面を示す。図に示すように、タッチロールAは、可撓性の金属スリーブ41の内部に弾性ローラ42を配したものである。
金属スリーブ41は厚さ0.3mmのステンレス製であり、可撓性を有する。金属スリーブ41が薄過ぎると強度が不足し、逆に厚過ぎると弾性が不足する。これらのことから、金属スリーブ41の厚さとしては、0.1〜1.5mmが好ましい。弾性ローラ42は、軸受を介して回転自在な金属製の内筒43の表面にゴム44を設けてロール状としたものである。そして、タッチロールAが第1冷却ロール5に向けて押圧されると、弾性ローラ42が金属スリーブ41を第1冷却ロール5に押しつけ、金属スリープ41及び弾性ローラ42は第1冷却ロール5の形状になじんだ形状に対応しつつ変形し、第1冷却ロールとの間にニップを形成する。金属スリーブ41の内部で弾性ローラ42との間に形成される空間には、冷却水45が流される。
図5、図6は挟圧回転体の別の実施形態であるタッチロールBを示している。タッチロールBは、可撓性を有する、シームレスなステンレス鋼管製(厚さ4mm)の外筒51と、この外筒51の内側に同一軸心状に配置された高剛性の金属内筒52とから概略構成されている。外筒51と内筒52との間の空間53には、冷却液54が流される。詳しくは、タッチロールBは、両端の回転軸55a、55bに外筒支持フランジ56a、56bが取付けられ、これら両外筒支持フランジ56a、56bの外周部間に薄肉金属外筒51が取付けられている。また、一方の回転軸55aの軸心部に形成されて流体戻り通路57を形成する流体排出孔58内に、流体供給管59が同一軸心状に配設され、この流体供給管59が薄肉金属外筒51内の軸心部に配置された流体軸筒60に接続固定されている。この流体軸筒60の両端部に内筒支持フランジ61a、61bがそれぞれ取り付けられ、これら内筒支持フランジ61a、61bの外周部間から他端側外筒支持フランジ56bにわたって約15〜20mm程度の肉厚を有する金属内筒52が取付けられている。そしてこの金属内筒52と薄肉金属外筒51との間に、例えば10mm程度の冷却液の流送空間53が形成され、また金属内筒52に両端部近傍には、流送空間53と内筒支持フランジ61a、61b外側の中間通路62a、62bとを連通する流出口52a及び流入口52bがそれぞれ形成されている。
また、外筒51は、ゴム弾性に近い柔軟性と可撓性、復元性をもたせるために、弾性力学の薄肉円筒理論が適用出来る範囲内で薄肉化が図られている。この薄肉円筒理論で評価される可撓性は、肉厚t/ロール半径rで表されており、t/rが小さいほど可撓性が高まる。このタッチロールBではt/r≦0.03の場合に可撓性が最適の条件となる。通常、一般的に使用されているタッチロールは、ロール径R=200〜500mm(ロール半径r=R/2)、ロール有効幅L=500〜1600mmで、r/L<1で横長の形状である。そして図6に示すように、例えばロール径R=300mm、ロール有効幅L=1200mmの場合、肉厚tの適正範囲は150×0.03=4.5mm以下であるが、溶融シート幅を1300mmに対して平均線圧を98N/cmで挟圧する場合、同一形状のゴムロールと比較して、外筒51の肉厚を3mmとすることで相当ばね定数も等しく、外筒51と冷却ロールとのニップのロール回転方向のニップ幅kも約9mmで、このゴムロールのニップ幅約12mmとほぼ近い値を示し、同じような条件下で挟圧できることが分かる。なお、このニップ幅kにおけるたわみ量は0.05〜0.1mm程度である。
ここで、t/r≦0.03としたが、一般的なロール径R=200〜500mmの場合では、特に2mm≦t≦5mmの範囲とすると、可撓性も十分に得られ、また機械加工による薄肉化も容易に実施出来、極めて実用的な範囲となる。肉厚が2mm以下では加工時の弾性変形で高精度な加工が出来ない。
この2mm≦t≦5mmの換算値は、一般的なロール径に対して0.008≦t/r≦0.05となるが、実用にあたってはt/r≒0.03の条件下でロール径に比例して肉厚も大きくするとよい。例えばロール径:R=200ではt=2〜3mm、ロール径:R=500ではt=4〜5mmの範囲で選択する。
このタッチロールA、Bは不図示の付勢手段により第1冷却ロールに向けて付勢される。その付勢手段の付勢力をF、ニップにおけるフィルムの、第1冷却ロール5の回転軸に沿った方向の幅Wを除した値F/W(線圧)は、9.8〜147N/cmに設定される。本実施の形態によれば、タッチロールA、Bと第1冷却ロール5との間にニップが形成され、当該ニップをフィルムが通過する間に平面性を矯正すればよい。従って、タッチロールが剛体で構成され、第1冷却ロールとの間にニップが形成されない場合と比べて、小さい線圧で長時間かけてフィルムを挟圧するので、平面性をより確実に矯正することが出来る。すなわち、線圧が9.8N/cmよりも小さいと、ダイラインを十分に解消することが出来なくなる。逆に、線圧が147N/cmよりも大きいと、フィルムがニップを通過しにくくなり、フィルムの厚さにかえってムラが出来てしまう。
また、タッチロールA、Bの表面を金属で構成することにより、タッチロールの表面がゴムである場合よりもタッチロールA、Bの表面を平滑にすることが出来るので、平滑性の高いフィルムを得ることが出来る。なお、弾性ローラ42の弾性体44の材質としては、エチレンプロピレンゴム、ネオプレンゴム、シリコンゴム等を用いることが出来る。
さて、タッチロール6によってダイラインを良好に解消するためには、タッチロール6がフィルムを挟圧するときのフィルムの粘度が適切な範囲であることが重要となる。また、セルロースエステルは温度による粘度の変化が比較的大きいことが知られている。従って、タッチロール6がセルロースエステルフィルムを挟圧するときの粘度を適切な範囲に設定するためには、タッチロール6がセルロースエステルフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定することが重要となる。セルロースエステルフィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、フィルムがタッチロール6に挟圧される直前のフィルムの温度Tを、Tg<T<Tg+110℃を満たすことが好ましい。フィルム温度TがTgよりも低いとフィルムの粘度が高過ぎて、ダイラインを矯正出来なくなる。逆に、フィルムの温度TがTg+110℃よりも高いと、フィルム表面とロールが均一に接着せず、やはりダイラインを矯正することが出来ない。好ましくはTg+10℃<T2<Tg+90℃、更に好ましくはTg+20℃<T2<Tg+70℃である。タッチロール6がセルロースエステルフィルムを挟圧するときのフィルムの温度を適切な範囲に設定するには、流延ダイ4から押し出された溶融物が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの、第1冷却ロール5の回転方向に沿った長さLを調整すればよい。
第1ロール5、第2ロール6に好ましい材質は、炭素鋼、ステンレス鋼、樹脂、等が挙げられる。また、表面精度は高くすることが好ましく表面粗さとして0.3S以下、より好ましくは0.01S以下とする。
流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分を70kPa以下に減圧させることにより、上記、ダイラインの矯正効果が大きく好ましい。好ましくは減圧は50〜70kPaである。流延ダイ4の開口部(リップ)から第1ロール5までの部分の圧力を70kPa以下に保つ方法としては、特に制限はないが、流延ダイ4からロール周辺を耐圧部材で覆い、減圧する等の方法がある。このとき、吸引装置は、装置自体が昇華物の付着場所にならないようヒーターで加熱する等の処置を施すことが好ましい。吸引圧は小さ過ぎると昇華物を効果的に吸引出来ないため、適当な吸引圧とする必要がある。
Tダイ4から溶融状態のフィルム状のセルロースエステル系樹脂を、第1ロール(第1冷却ロール)5、第2冷却ロール7、及び第3冷却ロール8に順次密着させて搬送しながら冷却固化させ、未延伸のセルロースエステル系樹脂フィルム10を得る。
図1に示す本発明の実施形態では、第3冷却ロール8から剥離ロール9によって剥離した冷却固化された未延伸のフィルム10は、ダンサーロール(フィルム張力調整ロール)11を経て延伸機12に導き、そこでフィルム10を横方向(幅方向)に延伸する。この延伸により、フィルム中の分子が配向される。
フィルムを幅方向に延伸する方法は、公知のテンター等を好ましく用いることが出来る。特に延伸方向を幅方向とすることで、偏光フィルムとの積層がロール形態で実施出来るので好ましい。幅方向に延伸することで、セルロースエステルフィルムの遅相軸は幅方向になる。
一方、偏光フィルムの透過軸も、通常、幅方向である。偏光フィルムの透過軸と光学フィルムの遅相軸とが平行になるように積層した偏光板を液晶表示装置に組み込むことで、液晶表示装置の表示コントラストを高くすることが出来るとともに、良好な視野角が得られるのである。
フィルム構成材料のガラス転移温度Tgはフィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率を異ならしめることにより制御出来る。本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして作製する場合、Tgは120℃以上、好ましくは135℃以上とすることが好ましい。液晶表示装置においては、画像の表示状態において、装置自身の温度上昇、例えば光源由来の温度上昇によってフィルムの温度環境が変化する。このときフィルムの使用環境温度よりもフィルムのTgが低いと、延伸によってフィルム内部に固定された分子の配向状態に由来するリターデーション値及びフィルムとしての寸法形状に大きな変化を与えることとなる。フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料をフィルム化するとき温度が高くなるために加熱するエネルギー消費が高くなり、またフィルム化するときの材料自身の分解、それによる着色が生じることがあり、従って、Tgは250℃以下が好ましい。
また延伸工程には公知の熱固定条件、冷却、緩和処理を行ってもよく、目的とする光学フィルムに要求される特性を有するように適宜調整すればよい。
位相差フィルムの物性と液晶表示装置の視野角拡大のための位相差フィルムの機能付与するために、上記延伸工程、熱固定処理は適宜選択して行われている。このような延伸工程、熱固定処理を含む場合、加熱加圧工程は、それらの延伸工程、熱固定処理の前に行うようにする。
セルロースエステルフィルムとして位相差フィルムを製造し、更に偏光板保護フィルムの機能を複合させる場合、屈折率制御を行う必要が生じるが、その屈折率制御は延伸操作により行うことが可能であり、また延伸操作が好ましい方法である。以下、その延伸方法について説明する。
位相差フィルムの延伸工程において、セルロース樹脂の1方向に1.0〜2.0倍及びフィルム面内にそれと直交する方向に1.01〜2.5倍延伸することで、必要とされるリターデーションRo及びRthを制御したり、平面性を改善することが出来る。ここで、Roとは面内リターデーションを示し、面内の長手方向MDの屈折率と幅方向TDの屈折率との差に厚みを乗じたもの、Rthとは厚み方向リターデーションを示し、面内の屈折率(長手方向MDと幅方向TDの平均)と厚み方向の屈折率との差に厚みを乗じたものである。
延伸は、例えばフィルムの長手方向及びそれとフィルム面内で直交する方向、即ち幅方向に対して、逐次または同時に行うことが出来る。このとき少なくとも1方向に対しての延伸倍率が小さ過ぎると十分な位相差が得られず、大き過ぎると延伸が困難となりフィルム破断が発生してしまう場合がある。
互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率nx、ny、nzを所定の範囲に入れるために有効な方法である。ここで、nxとは長手MD方向の屈折率、nyとは幅手TD方向の屈折率、nzとは厚み方向の屈折率である。
例えば溶融流延方向に延伸した場合、幅方向の収縮が大き過ぎると、nzの値が大きくなり過ぎてしまう。この場合、フィルムの幅収縮を抑制、あるいは幅方向にも延伸することで改善出来る。幅方向に延伸する場合、幅方向で屈折率に分布が生じることがある。この分布は、テンター法を用いた場合に現れることがあり、フィルムを幅方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制出来、幅方向の位相差の分布を少なく出来る。
互いに直行する2軸方向に延伸することにより、得られるフィルムの膜厚変動が減少出来る。位相差フィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラとなり、液晶ディスプレイに用いたとき着色等のムラが問題となることがある。
セルロースエステルフィルムの膜厚変動は、±3%、更に±1%の範囲とすることが好ましい。以上のような目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に1.0〜2.0倍、幅方向に1.01〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に1.01〜1.5倍、幅方向に1.05〜2.0倍に範囲で行うことが必要とされるリターデーション値を得るためにより好ましい。
長手方向に偏光子の吸収軸が存在する場合、幅方向に偏光子の透過軸が一致することになる。長尺状の偏光板を得るためには、位相差フィルムは、幅方向に遅相軸を得るように延伸することが好ましい。
応力に対して、正の複屈折を得るセルロースエステルを用いる場合、上述の構成から、幅方向に延伸することで、位相差フィルムの遅相軸が幅方向に付与することが出来る。この場合、表示品質の向上のためには、位相差フィルムの遅相軸が、幅方向にあるほうが好ましく、目的とするリターデーション値を得るためには、
(式) (幅方向の延伸倍率)>(流延方向の延伸倍率)
の条件を満たすことが必要である。
延伸後、フィルムの端部をスリッター13により製品となる幅にスリットして裁ち落とした後、エンボスリング14及びバックロール15よりなるナール加工装置によりナール加工(エンボッシング加工)をフィルム両端部に施し、巻取り機16によって巻き取ることにより、セルロースエステルフィルム(元巻き)F中の貼り付きや、すり傷の発生を防止する。ナール加工の方法は、凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することが出来る。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、変形しており、フィルム製品として使用出来ないので、切除されて、原料として再利用される。
次に、フィルムの巻取り工程は、円筒形巻きフィルムの外周面とこれの直前の移動式搬送ロールの外周面との間の最短距離を一定に保持しながらフィルムを巻取りロールに巻き取るものである。かつ巻取りロールの手前には、フィルムの表面電位を除去または低減する除電ブロア等の手段が設けられている。
本発明の偏光板保護フィルムの製造に係わる巻き取り機は一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることが出来る。なお、偏光板保護フィルムの巻取り時の初期巻取り張力が90.2〜300.8N/mであるのが好ましい。
本発明の方法におけるフィルムの巻き取り工程では、温度20〜30℃、湿度20〜60%RHの環境条件にて、フィルムを巻き取ることが好ましい。このように、フィルムの巻き取り工程での温度及び湿度を規定することにより、厚み方向リターデーション(Rth)の湿度変化の耐性が向上する。
巻き取り工程における温度が20℃未満であれば、シワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における温度が30℃を超えると、やはりシワが発生し、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。
また、フィルムの巻き取り工程における湿度が20%RH未満であれば、帯電しやすく、フィルム巻品質劣化のため実用に耐えないので、好ましくない。フィルムの巻き取り工程における湿度が60%RHを超えると、巻品質、貼り付き故障、搬送性が劣化するので、好ましくない。
偏光板保護フィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度にも耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであってもよく、フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。またガラス繊維等の充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。例えば、中空プラスチックコア:FRP製の外径6インチ(以下、インチは2.54cmを表す。)、内径5インチの巻きコアが用いられる。
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、長さでは500〜10000mであり、本発明のフィルムの幅は1〜5mであることが好ましく、特に好ましくは1.5〜4mである。広幅のフィルムを製膜して、巻き取りの前にフィルムにスリット加工して2〜3本のロールフィルムを得ることも好ましく行われる。
本発明の偏光板保護保護フィルムの厚さは、10〜500μmが好ましい。特に20〜150μmが好ましく、特に好ましい範囲は25〜90μmである。偏光板保護保護フィルムが厚いと、偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的に適さない。一方、偏光板保護保護フィルムが薄いと、リターデーションの発現が困難となり、加えてフィルムの透湿性が高くなり、偏光子を湿度から保護する能力が低下してしまうことがある。
偏光板保護保護フィルムの遅相軸または進相軸がフィルム面内に存在し、製膜方向とのなす角度をθ1とすると、θ1は−1〜+1°、好ましくは−0.5〜+0.5°となるようにすることが好ましい。特に位相差機能を付与する場合は、−0.1〜+0.1°であることが好ましい。
このθ1は配向角として定義出来、θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器社製)を用いて行うことが出来る。
θ1が各々上記関係を満たすことは、表示画像において高い輝度を得ること、光漏れを抑制または防止することに寄与し、カラー液晶表示装置においては忠実な色再現に寄与する。
本発明の偏光板保護フィルムは位相差フィルムとしても好ましく用いることが出来る。位相差フィルムがマルチドメイン化されたVAモードに用いられるとき、位相差フィルムの配置は、位相差フィルムの進相軸がθ1として上記領域に配置することで、表示画質の向上に寄与し、偏光板及び液晶表示装置としてMVAモードとしたとき、例えば図7に示される構成をとることが出来る。
図7において、21a、21bは保護フィルム、22a、22bは位相差フィルム、25a、25bは偏光子、23a、23bはフィルムの遅相軸方向、24a、24bは偏光子の透過軸方向、26a、26bは偏光板、27は液晶セル、29は液晶表示装置を示している。
セルロースエステルフィルムの面内方向のリターデーションRo分布は、5%以下に調整することが好ましく、より好ましくは2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。また、フィルムの厚み方向のリターデーションRth分布を10%以下に調整することが好ましいが、更に好ましくは、2%以下であり、特に好ましくは、1.5%以下である。
位相差フィルムにおいて、リターデーション値の分布変動が小さい方が好ましく、液晶表示装置に位相差フィルムを含む偏光板を用いるとき、該リターデーション分布変動が小さいことが色ムラ等を防止する観点で好ましい。
リターデーション値Ro、Rthは以下の測定法で求めることが出来る。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行い、下記式に入力し、面内リターデーション(Ro)及び厚み方向のリターデーション(Rth)の値を得る。
式(I)Ro=(nx−ny)×d
式(II)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
位相差フィルムを、VAモードまたはTNモードの液晶セルの表示品質の向上に適したリターデーション値を有するように調整し、特にVAモードとして上記のマルチドメインに分割してMVAモードに好ましく用いられるようにするには、面内リターデーションRoを30nmよりも大きく、95nm以下に、かつ厚み方向リターデーションRthを70nmよりも大きく、400nm以下の値に調整することが求められる。
上記の面内リターデーションRoは、2枚の偏光板がクロスニコルに配置され、偏光板の間に液晶セルが配置された、例えば図7に示す構成であるときに、表示面の法線方向から観察するときを基準にしてクロスニコル状態にあるとき、表示面の法線から斜めに観察したとき、偏光板のクロスニコル状態からのずれが生じ、これが要因となる光漏れを、主に補償する。厚さ方向のリターデーションは、上記TNモードやVAモード、特にMVAモードにおいて液晶セルが黒表示状態であるときに、同様に斜めから見たときに認められる液晶セルの複屈折を主に補償するために寄与する。
図7に示すように、液晶表示装置において、液晶セルの上下に偏光板が二枚配置された構成である場合、図中の22a及び22bは、厚み方向リターデーションRthの配分を選択することが出来、上記範囲を満たしかつ厚み方向リターデーションRthの両者の合計値が140nmよりも大きくかつ500nm以下にすることが好ましい。このとき22a及び22bの面内リターデーションRo、厚み方向リターデーションRthが両者同じであることが、工業的な偏光板の生産性向上において好ましい。特に好ましくは面内リターデーションRoが35nmよりも大きくかつ65nm以下であり、かつ厚み方向リターデーションRthが90nmよりも大きく180nm以下で、図7の構成でMVAモードの液晶セルに適用することである。
液晶表示装置において、一方の偏光板に例えば市販の偏光板保護フィルムとして面内リターデーションRo=0〜4nm及び厚み方向リターデーションRth=20〜50nmで厚さ35〜85μmのTACフィルムが、例えば図7の22bの位置で使用されている場合、他方の偏光板に配置される偏光フィルム、例えば、図7の22aに配置する位相差フィルムは、面内リターデーションRoが30nmよりも大きく95nm以下であり、かつ厚み方向リターデーションRthが140nmよりも大きく400nm以下であるものを使用する。
《液晶表示装置》
本発明の偏光板保護フィルム(位相差フィルムを兼ねる)を含む偏光板は、通常の偏光板と比較して高い表示品質を発現させることが出来、特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置への使用に適している。
本発明の偏光板は、MVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPSモード等に用いることが出来、特定の液晶モード、偏光板の配置に限定されるものではない。
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置としても応用されつつあり、本発明により表示品質が改良され、コントラストの改善や偏光板の耐久性が向上したことにより、目が疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
位相差フィルムを含む偏光板を少なくとも含む液晶表示装置においては、本発明の偏光板保護フィルムを含む偏光板を、液晶セルに対して、一枚配置するか、あるいは液晶セルの両側に二枚配置する。このとき偏光板に含まれる本発明の偏光板保護フィルム側が液晶表示装置の液晶セルに面するように用いることで表示品質の向上に寄与出来る。図7においては22a及び22bのフィルムが液晶表示装置の液晶セルに面することになる。
このような構成において、本発明の偏光板保護フィルムは、液晶セルを光学的に補償することが出来る。本発明の偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶表示装置の偏光板の内の少なくとも一つの偏光板を、本発明の偏光板とすればよい。本発明の偏光板を用いることで、表示品質が向上し、視野角特性に優れた液晶表示装置が提供出来る。
本発明の偏光板において、偏光子からみて本発明の偏光板保護フィルムとは反対側の面には、本発明の偏光板保護フィルムを用いることも、更に他のセルロース誘導体の偏光板保護フィルム、即ち汎用のTACフィルム等を用いることが出来る。液晶セルから遠い側に位置する偏光板保護フィルムは、表示装置の品質を向上する上で、他の機能性層を配置することも可能である。本発明の偏光板保護フィルムはこのような用途にも好ましく用いることが出来る。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムとして用いることが出来、これらに限定されるものではない。
例えば、反射防止、防眩、耐キズ、ゴミ付着防止、輝度向上のためにディスプレイとしての公知の機能層を構成物として含むフィルムや、または本発明の偏光板表面に貼付してもよいがこれらに限定されるものではない。
一般に位相差フィルムでは、上述のリターデーション値としてRoまたはRthの変動が少ないことが安定した光学特性を得るために求められている。特に複屈折モードの液晶表示装置は、これらの変動が画像のムラを引き起こす原因となることがある。
本発明に従い溶融流延製膜法により製造される長尺状偏光板保護フィルムは、セルロースエステルを主体として構成されるため、セルロースエステル固有のケン化を活用してアルカリ処理工程を活用することが出来る。これは、偏光子を構成する樹脂がポリビニルアルコールであるとき、従来の偏光板保護フィルムと同様に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて偏光板保護フィルムと貼合することが出来る。このために本発明は、従来の偏光板加工方法が適用出来る点で優れており、特に長尺状であるロール偏光板が得られる点で優れている。
本発明により得られる製造的効果は、特に100m以上の長尺の巻物においてより顕著となり、1500m、2500m、5000m、10000mとより長尺化する程、偏光板製造の製造的効果を得る。
例えば、偏光板保護フィルム製造において、ロール長さは、生産性と運搬性を考慮すると、1000〜6000m、好ましくは1000〜4500mであり、このときのフィルムの幅は、偏光子の幅や製造ラインに適した幅を選択することが出来る。1〜4m、好ましくは1.5〜4mの幅でフィルムを製造してロール状に巻き取り、偏光板加工に供してもよく、また、目的の倍幅以上のフィルムを製造してロールに巻き取った後、断裁して目的の幅のロールを得て、このようなロールを偏光板加工に用いるようにしてもよい。
偏光板保護フィルム製造に際し、延伸の前及び/または後で帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、防眩層、バリアー層等の機能性層を塗設してもよい。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことが出来る。
製膜工程において、カットされたフィルム両端のクリップ把持部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。
前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースエステルを含む組成物を共押し出して、積層構造のセルロースエステルフィルムを作製することも出来る。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースエステルフィルムを作ることが出来る。例えば、マット剤は、スキン層に多く、またはスキン層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多く入れることが出来、コア層のみに入れてもよい。また、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することも出来、例えば、スキン層に低揮発性の可塑剤及び/または紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することも出来る。スキン層とコア層のガラス転移温度が異なっていてもよく、スキン層のガラス転移温度よりコア層のガラス転移温度が低いことが好ましい。このとき、スキンとコアの両者のガラス転移温度を測定し、これらの体積分率より算出した平均値を上記ガラス転移温度Tgと定義して同様に扱うことも出来る。また、溶融流延時のセルロースエステルを含む溶融物の粘度もスキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度>コア層の粘度でも、コア層の粘度≧スキン層の粘度でもよい。
本発明に係るセルロースエステルフィルムは、寸度安定性が、23℃、55%RHに24時間放置したフィルムの寸法を基準としたとき、80℃、90%RHにおける寸法の変動値が±2.0%未満であり、好ましくは1.0%未満であり、更に好ましくは0.5%未満である。
本発明に係るセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することが出来る。得られたセルロースエステルフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼り合わせる方法があり、少なくとも片面に本発明の偏光板保護フィルムが偏光子に直接貼合する。もう一方の面にも本発明の偏光板保護フィルムを用いることが出来る。あるいは、溶液流延法で製造された市販のセルロースエステルフィルム(コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC4CR、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、あるいはポリエステルフィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム(ゼオノアフィルム(日本ゼオン社製)、アートンフィルム(JSR社製))などの膜厚10〜150μmのフィルムを用いることも出来る。
上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、同6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよいし、コロナ放電処理やプラズマ処理などを施すことも出来る。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することが出来る。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶セルへ貼合する面側に用いられる。
なお、偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり好ましく用いられる。これはポリビニルアルコールあるいはエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%であるエチレン変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素あるいは二色性染料で染色したものがある。該偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが好ましく用いられる。該偏光子の面上に、本発明の偏光板保護フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。偏光子の膜厚としては、5〜30μmのものが好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例に用いる、セルロースエステル、可塑剤及び添加剤を以下の合成例1〜11に従って合成した。
(合成例1:セルロースエステル)
特表平6−501040号公報の例Bを参考にして、プロピオン酸、酢酸の添加量を調整して、アセチル基置換度、プロピオニル基置換度を下記のように変化させた3種類のセルロースエステルを合成した。
C−1:アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.4、総アシル基置換度2.8
C−2:アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度1.3、総アシル基置換度2.8
C−3:アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.3、総アシル基置換度2.7
得られたセルロースエステルの置換度は、ASTM−D817−96に基づいて算出した。
(合成例2:可塑剤、トリメチロールプロパントリベンゾエート(TMPTB)の合成)
100℃に保持した45質量部のトリメチロールプロパン、101質量部のトリエチルアミンの混合溶液を攪拌しながら、71質量部の塩化ベンゾイルを30分間かけて滴下し、更に30分間攪拌した。反応終了後室温まで冷却して沈殿物を炉別した後、酢酸エチル・純水を加えて洗浄し、有機相を分取して酢酸エチルを減圧留去し、126質量部(収率85%)の白色の結晶を得た。なお、この化合物の分子量は446である。
(合成例3:可塑剤、化合物48)
10℃に保持した36質量部のトリメチロールプロパン、107質量部のピリジン、300質量部の酢酸エチルの混合溶液を攪拌しながら、250質量部の3,4,5−トリメトキシベンゾイルクロライドを酢酸エチル300質量部に溶解した溶液を30分間かけて滴下し、その後、80℃まで加熱して、5時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却して沈殿物を炉別した後、1モル/L HCl水溶液を加えて洗浄し、更に1%Na2CO3水溶液を加えて洗浄した後、有機相を分取して酢酸エチルを減圧留去し、153質量部(収率80%)の白色結晶を得た。なお、この化合物の分子量は717である。
(合成例4:可塑剤、化合物51)
10℃に保持した54質量部の2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3ジオール、190質量部のピリジン及び450質量部の酢酸エチルの混合溶液を攪拌しながら、240質量部のベンゾイルクロライドを30分間かけて滴下し、その後、80℃まで加熱して、更に3時間攪拌した。反応終了後室温まで冷却して沈殿物を炉別した後、酢酸エチル−純水を加えて洗浄し、有機相を分取して酢酸エチルを減圧留去し、目的の化合物を得た。なお、この化合物の分子量は675である。
(合成例5:可塑剤、化合物62)
10℃に保持した45質量部の2−ヒドロキシメチル−プロパン−1,3ジオール、190質量部のピリジン及び450質量部の酢酸エチルの混合溶液を攪拌しながら、390質量部のp−メトキシベンゾイルクロライドを30分間かけて滴下し、その後、80℃まで加熱して、更に3時間攪拌した。反応終了後室温まで冷却して沈殿物を炉別した後、1モル/L HCl水溶液を加えて洗浄し、更に1%Na2CO3水溶液を加えて洗浄した後、有機相を分取して酢酸エチルを減圧留去し、目的の化合物を得た。なお、この化合物の分子量は494である。
(合成例6:一般式(R)で表される化合物、化合物101)
5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン、p−キシレンならびに触媒としてフルキャット(Fulcat)22Bから出発して、5,7−ジ−tert−Bu−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物101)を合成した。
a)5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オンの合成
1,2−ジクロロエタン300ml中の2,4−ジ−tert−Bu−フェノール(97%)212.5g(1.00mol)、50%水性グリオキシル酸163.0g(1.10mol)及びp−トルエンスルホン酸一水塩0.5g(2.6mmol)を水分離器上で3.5時間、窒素気流中で還流した。その後、反応混合物を減圧ロータリーエバポレーターで濃縮した。残渣をヘキサン800mlに溶解し、そして水で3回洗浄した。分液漏斗中、水相を分離し、更にヘキサン300mlで抽出した。有機相を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧エバポレーターで濃縮した。残渣から濃い黄色の樹脂の形態の、分析的に精製された5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン262.3g(〜100%)を得た。
b)5,7−ジ−tert−Bu−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物(101))の合成
p−キシレン500ml(4.05mol)中の5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン262.3g(1.00mol)溶液にフルキャット22B40gを加え、及び混合物を水分離器上で1.5時間還流した。フルキャット22B触媒を次にろ過により除去し、過剰p−キシレンを減圧エバポレーターで留去した。メタノール400mlからの残渣の結晶化により、融点93−97℃の5,7−ジ−第三ブチル−3−(2,5−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物101)280.6g(80%)を得た。
(合成例7:一般式(R)で表される化合物、化合物103、103Aの合成)
2,4−ジ−tert−Bu−フェノール、グリオキシル酸及びo−キシレンならびに触媒としてフルキャットまたはフルモント(Fulmont)から出発して、3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−Bu−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物103)及び3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−Bu−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物103A異性体の約5.7:1混合物)を合成した。
水分離器を備えた1500mlの二層反応器に2,4−ジ−tert−Bu−フェノール206.3g(1.0mol)、o−キシレン485g(5.5mol)、p−トルエンスルホン酸一水塩0.5g(2.6mmol)及び50%水性グリオキシル酸163g(1.1mol)を入れた。攪拌しながら、混合物を85〜90℃に加熱しそして装置を同時に約450mbarに排気した。反応器中の温度が85〜90℃になると直ちに、o−キシレン/水混合物が蒸留され始め、o−キシレンは還流され及び水は系から除去された。反応器の温度を85〜90℃に保てるように減圧を連続的に高めた。水約90〜100mlの全てが3ないし4時間かけて蒸留された。減圧を窒素により解除し、触媒(フルキャット30もしくは40、フルモントXMP−3もしくはXMP−4)40gを透明な黄色の溶液に加えた。装置を700mbarの圧力に排気しそして懸濁物を165℃の加熱浴温度で攪拌した。約128℃の温度から反応水が共沸物として系から留去され始めた。装置の温度は最後の方で最大140℃に昇温させた。総量約20mlの水が系から1ないし2時間かけて留去された。次に減圧を窒素により解除した。反応混合物を90〜100℃に冷却し及びろ過した。装置及びフィルター残渣をo−キシレン100gですすいだ。ろ液を二層反応器に移しそして減圧下で濃縮し、o−キシレン360gで回収した。やや赤い黄色の残渣を70℃に冷却し、温度を60〜65℃に保ちながら、メタノール636gを滴下漏斗から注意して加えた。溶液に結晶種を入れ、60〜65℃で約30分間攪拌して結晶化させた。次に結晶化スラリーを2時間かけて−5℃に冷却し、そしてこの温度で攪拌を更に1時間続けた。結晶を吸引ろ過で集め、残渣を冷メタノール(−5℃)400mlを使用して5回に分けて洗浄した。十分に乾圧された生成物を50〜60℃の真空乾燥機で乾燥して、白色固体266gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析は、この物質が3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−Bu−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物103)約85%、ならびに3−(2,3−ジメチルフェニル)5,7−ジ−tert−Bu−3−H−ベンゾフラン−2−オン異性体(化合物103A)約15%からなることを示す。
(合成例8:一般式(R)で表される化合物、化合物105の合成)
5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン、エチルベンゼンならびに触媒としてフルキャット22Bから出発して、5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−エチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物105)を合成した。
エチルベンゼン500ml(4.08mol)中の5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン262.3g(1.00mol)溶液にフルキャット22B 40gを加え、そして混合物を水分離器上で1.5時間還流した。フルキャット22B触媒を次にろ過により除去し、過剰エチルベンゼンを減圧エバポレーターで留去した。GC−MS分析はパラ−異性体(化合物105)59.2%、メタ−異性体(化合物105A)10.8%及びオルト−異性体(化合物105B)21.1%の混合物からなる残渣を示した。メタノール400mlからの残渣の結晶化により、5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−エチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物105)(パラ−異性体)163.8g(47%)が得られ、それは更にメタ−異性体5,7−ジ−tert−Bu−3−(3−エチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物105A)5.6%、及びオルト−異性体5,7−ジ−tert−Bu−3−(2−エチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物105B)1.3%を含む。メタノールからの更に結晶化から、融点127−132℃のほとんど純粋なパラ異性体(化合物105)を得た。
(合成例9:一般式(R)で表される化合物、化合物111)
5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン、ペンタメチルベンゼンならびに触媒として四塩化錫から出発して、5,7−ジ−tert−Bu−3−(2,3,4,5,6−ペンタメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物(111))を合成した。
ペンタメチルベンゼン11.5g(77.5mol)及び四塩化錫10ml(85.0mmol)を1,2−ジクロロメタン50ml中の5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン19.7g(75.0mmol)の溶液に加え、そして反応混合物を1時間還流した。反応混合物を水で稀釈しそしてトルエンで3回抽出した。有機相を集め、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして減圧エバポレーターで濃縮した。エタノールからの残渣の結晶化により融点185−190℃の、5,7−ジ−tert−Bu−(2,3,4,5,6−ペンタメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物111)26.3g(89%)が得られた。
(合成例10:一般式(R)で表される化合物、化合物108)
5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン、チオアニソールならびに触媒として三塩化アルミニウムから出発して、5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−メチルチオフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物108)を合成した。
チオアニソール25ml(0.21mol)中の5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン26.2g(0.10mol)の溶液をチオアニソール15ml(0.13mol)中の塩化アルミニウム14.7g(0.11mol)の溶液に35〜40℃で滴下で添加した。反応混合物をその後30℃で30分間及び80℃で2時間攪拌し、そして冷却後、水約50ml、そして次に濃塩酸及び塩化メチレンを均質な2層混合物が形成されるのに十分な量で注意深く加えた。有機相を分離し、水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥しそしてロータリーエバポレーターで濃縮した。エタノールからの残渣の結晶化により、融点125−131℃の5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−メチルチオフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物108)6.7gを得た。
(合成例11:一般式(R)で表される化合物、化合物104)
5,7−ジ−tert−Bu−3−ヒドロキシ−3H−ベンゾフラン−2−オン、グリオキシル酸及びトルエンならびに触媒としてフルキャット22Bから出発して、5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−メチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物104)を合成した。
2,4−ジ−tert−Buフェノール(97%)21.2g(0.10mol)、50%水性グリオキシル酸16.3g(0.11mol)、フルキャット22B 2.0g及びトルエン50mlの混合物を水分離器上、窒素気流中で8時間還流した。フルキャット22B触媒を次にろ過により除去し、過剰トルエンを減圧エバポレーターで留去した。エタノール40mlからの残渣の結晶化により、融点130〜133℃の5,7−ジ−tert−Bu−3−(4−メチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物104)14.2g(42%)を得た。
尚、実施例1で用いるPETBはペンタエリスリトールテトラベンゾエートの略であり、アルドリッチ社より購入した。
実施例1
(偏光板保護フィルム101の作製)
上記合成例で作製した各種化合物、また市販の各種化合物を用いて、溶融流延により偏光板保護フィルム101を作製した。
セルロースエステルC−1(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.4、総アシル基置換度2.8のセルロースエステル) 85.5質量部
添加剤1(本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマー:Sartomer社製SMAベースレジンSMA1000) 3質量部
添加剤2(PETB) 10質量部
IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
高分子紫外線吸収剤(1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン) 1質量部
上記セルロースエステルを70℃、3時間減圧下で乾燥を行い室温まで冷却した後、各添加剤を混合した。
以上の混合物を窒素雰囲気下、240℃にて溶融して流延ダイ4から第1冷却ロール5上に押し出し、第1冷却ロール5とタッチロール6との間にフィルムを挟圧して成形した。また押出し機1中間部のホッパー開口部から、滑り剤としてシリカ粒子(日本アエロジル社製)を、0.1質量部となるよう添加した。
流延ダイ4のギャップの幅がフィルムの幅方向端部から30mm以内では0.5mm、その他の場所では1mmとなるようにヒートボルトを調整した。タッチロールとしては、タッチロールAを使用し、その内部に冷却水として80℃の水を流した。
流延ダイ4から押し出された樹脂が第1冷却ロール5に接触する位置P1から第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップの第1冷却ロール5回転方向上流端の位置P2までの、第1冷却ローラ5の周面に沿った長さLを20mmに設定した。その後、タッチロール6を第1冷却ロール5から離間させ、第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tを測定した。本実施例及び比較例において、第1冷却ロール5とタッチロール6とのニップに挟圧される直前の溶融部の温度Tは、ニップ上流端P2よりも更に1mm上流側の位置で、温度計(安立計器株式会社製HA−200E)により測定した。本実施例では測定の結果、温度Tは141℃であった。タッチロール6の第1冷却ロール5に対する線圧は14.7N/cmとした。更に、テンターに導入し、巾方向に160℃で1.3倍延伸した後、巾方向に3%緩和しながら30℃まで冷却し、その後クリップから開放し、クリップ把持部を裁ち落とし、フィルム両端に幅10mm、高さ5μmのナーリング加工を施し、巻き取り張力220N/m、テーパー40%で巻芯に巻き取った。巻芯の大きさは、内径152mm、外径165〜180mm、長さ1550mmであった。この巻芯母材として、エポキシ樹脂をガラス繊維、カーボン繊維に含浸させたプリプレグ樹脂を用いた。巻芯表面にはエポキシ導電性樹脂をコーティングし、表面を研磨して、表面粗さRaは0.3μmに仕上げた。なお、膜厚は80μm、巻長は3500mとし、偏光板保護フィルム101を作製した。
(偏光板保護フィルム102の作製)
セルロースエステルC−1(アセチル基置換度1.4、プロピオニル基置換度1.4、総アシル基置換度2.8のセルロースエステル) 74.5質量部
添加剤1(本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマー:Sartomer社製SMAベースレジンSMA1000) 3質量部
添加剤2(PETB) 10質量部
添加剤3(合成例7の3−(3,4−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−Bu−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物103)及び3−(2,3−ジメチルフェニル)−5,7−ジ−tert−Bu−3H−ベンゾフラン−2−オン(化合物103A異性体の約5.7:1混合物)) 0.5質量部
添加剤4(フラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物の例示化合物1(化合物1)) 10質量部
添加剤5(GSY−P−101:吉富ファインケミカル(株)製) 0.5質量部
IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製) 0.5質量部
高分子紫外線吸収剤(1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン) 1質量部
偏光板保護フィルム101の作製と同様な方法で製膜し、膜厚は80μm、巻長は3500mの偏光板保護フィルム102を作製した。
更に、表1、表2に記載の添加剤、添加量に変更する以外は、偏光板保護フィルム101、102と同様な方法で、本発明の偏光板保護フィルム103〜123、比較の偏光板保護フィルム201〜207を作製した。
ただし、添加剤の添加量はフィルム中の固形分の総計が100となるようにセルロースエステルの添加量を各々調整した。常温で液体の添加剤については、2軸押出し機に入る直前でフィーダーによって添加した。
Figure 2007304376
Figure 2007304376
得られた偏光板保護フィルムに対して、下記方法で評価を行った。評価の結果を表3に示す。
(リターデーション値Ro、Rthの測定)
アッベ屈折率計(4T)を用いて試料フィルムの平均屈折率を測定した。また、市販のマイクロメーターを用いてフィルムの厚さを測定した。
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下24時間放置したフィルムにおいて、同環境下、波長が590nmにおけるフィルムのリターデーション測定を行った。上述の平均屈折率と膜厚を下記式に入力し、面内リターデーション(Ro)及び厚み方向のリターデーション(Rth)の値を得た。
式(I)Ro=(nx−ny)×d
式(II)Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(式中、nxは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり、nzはフィルム厚み方向の屈折率であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。)
(湿度変化に対するリターデーション値変動)
作製した偏光板保護フィルムのリターデーション値を各々求め、その値よりRth(a)変動を求めた。
Rth(a)変動は、Rth(b)は23℃、20%RHにて5時間調湿した後、同環境で測定したRt値を測定しこれをRth(b)とし、Rth(c)は同じフィルムを続けて23℃、80%RHにて5時間調湿した後、同環境で測定したRt値を求めこれをRth(c)とし、下記の式よりRth(a)を求めた。
Rth(a)=|Rth(b)−Rth(c)|
更に調湿後の試料を再度23℃55%RHの環境にて測定を行い、この変動が可逆変動であることを確認した。
Figure 2007304376
表3より、本発明に係るスチレン/無水マレイン酸コポリマーを含有させた偏光板保護フィルム101〜123は、湿度変動に対するリターデーション値変動が改良されていることが明らかである。更にその効果は、一般式(R)に記載の化合物、及びフラノース構造もしくはピラノース構造を有する化合物を含有させた場合により向上することが分かる。
《偏光板の作製》
上記作製した偏光板保護フィルム101〜123、201〜207を使って、下記に記載するアルカリケン化処理、次いで偏光板の作製を行った。
〈アルカリケン化処理〉
ケン化工程 2M−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
ケン化処理後、水洗、中和、水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
〈偏光子の作製〉
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で5倍に搬送方向に延伸して偏光膜を作った。
上記偏光膜の片面にアルカリケン化処理した前記偏光板保護フィルム101〜123、201〜207を、もう一方の面にコニカミノルタタックKC8UY−HA(コニカミノルタオプト(株)製)を、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として、各々貼り合わせ、乾燥して偏光板P101〜P123、P201〜P207を作製した。
《液晶表示装置の作製》
VA型液晶表示装置である富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた視認側の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板P101〜P123、P201〜P207をそれぞれ液晶セル(VA型)のガラス面に貼合し、液晶表示装置101〜123、201〜207を作製した。その際、上記作製した偏光板保護フィルム101〜123、201〜207が液晶セル面側となるように、また偏光板の貼合の向きは予め貼合されていた偏光板と同一方向に吸収軸が向くように行った。
(正面コントラストムラ)
23℃55%RHの環境で、各々の液晶表示装置のバックライトを1週間連続点灯した後、測定を行った。測定にはELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて、液晶表示装置で白表示と黒表示の表示画面の法線方向からの輝度を測定し、その比を正面コントラストとした。
正面コントラスト=表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度/表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度
液晶表示装置の任意の5点の正面コントラストを測定し、以下の基準にて評価した。
A:正面コントラストが0〜5%未満のばらつきであり、ムラが小さい
B:正面コントラストが5〜10%未満のばらつきであり、ムラがややある
C:正面コントラストが10%以上のばらつきであり、ムラが大きい
(視野角劣化)
23℃55%RHの環境でELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて液晶表示装置の視野角測定を行った。続いて23℃20%RH、更に23℃80%RHの環境下で、作製した液晶表示装置の視野角を測定し下記基準にて評価した。最後に23℃55%RHの環境でもう一度視野角測定を行い、前記測定の際の変化が可逆変動であることを確認した。尚、これらの測定は、液晶表示装置を当該環境に5時間置いてから測定を行った。
◎:視野角変動が認められない
○:視野角変動が実用上問題ない
△:視野角変動がやや認められる
×:視野角変動が認められる
以上の評価結果を表3に示す
本発明の液晶表示装置101〜123は、比較の液晶表示装置201〜207に対して、正面コントラストムラもなく、湿度が変動する条件下でも視野角変動のない極めて安定した表示性能を示すことが確認された。
本発明に係る偏光板保護フィルムの製造方法を実施する装置の1つの実施形態を示す概略フローシートである。 図1の製造装置の要部拡大フローシートである。 図3(a)は流延ダイの要部の外観図、図3(b)は流延ダイの要部の断面図である。 挟圧回転体の第1実施形態の断面図である。 挟圧回転体の第2実施形態の回転軸に垂直な平面での断面図である。 挟圧回転体の第2実施形態の回転軸を含む平面での断面図である。 液晶表示装置の構成図の概略を示す分解斜視図である。 偏光板保護フィルム原反の保管の状態を示す図である。
符号の説明
4 ダイ
5 回転支持体(第1冷却ロール)
6 挟圧回転体(タッチロール)
110 巻芯本体
117 支え板
118 架台
120 偏光板保護フィルム原反

Claims (6)

  1. スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
  2. 請求項1に記載の偏光板保護フィルムが、下記一般式(R)で表される化合物、またはフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を含有することを特徴とする偏光板保護フィルム。
    Figure 2007304376
    (式中、R2〜R5はおのおの互いに独立して水素原子または置換基を表し、R6は水素原子または置換基を表し、nは1または2を表す。nが1であるとき、R1は置換基を表し、nが2であるとき、R1は2価の連結基を表す。)
  3. スチレン/無水マレイン酸コポリマーとセルロースエステルとを含有する溶融物を用いて溶融流延法によって製造することを特徴とする偏光板保護フィルムの製造方法。
  4. 前記一般式(R)で表される化合物、またはフラノース構造もしくはピラノース構造を少なくとも1個有し該フラノース構造もしくはピラノース構造が1〜12個結合した化合物中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化した糖エステル化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  5. 偏光子の少なくとも一方の面に請求項1または2に記載の偏光板保護フィルムを設けたことを特徴とする偏光板。
  6. 請求項5に記載の偏光板を液晶セルの少なくとも一方の面に用いることを特徴とする液晶表示装置。
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