JP2005077450A - 光学積層体、光学素子、及び液晶表示装置 - Google Patents

光学積層体、光学素子、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のものよりも製造効率に優れ、さらに視野角依存性に優れる光学積層体並びにこれを用いて得られる光学素子及び光学製品を提供することにある。
【解決手段】固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に透明な樹脂を含有してなる層を積層してなる光学積層体(A)と、透明な樹脂を含有してなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム(B)とを積層してなる光学積層体(C)であって、光学積層体(C)の厚さをd(nm)、波長550nmの光で測定した光学積層体(C)の厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びny(ただし、nx>ny)としたとき、(nx−ny)×dで表される正面リターデーションReのバラツキが10nm以内であり、且つ、0<{(nx−nz)/(nx−ny)}<1を満たすことを特徴とする光学積層体。

Description

本発明は、製造が容易で、視野角特性や表示性能に優れ、さらに輝度ムラや色ムラのない光学積層体、これを用いた光学素子、及び該光学積層体を備えた液晶表示装置に関する。
従来、液晶ディスプレイ表示としてSTN方式が広く利用されてきたが、これは比較的駆動原理が簡単なため、一般に低価格を重視した製品に用いられている。しかし、この方式では、液晶の複屈折の波長依存性に由来する着色化現象が顕在化するので種々の改良がなされてきた。そのうち、位相差フィルムによる光学補償方式(フィルム補償方式)が、簡易的な手法として普及している。
ところが、このフィルム補償方式では、最大の欠点として、視野角が狭いことが挙げられている。これは、斜めからディスプレイを覗き込んだ場合にフィルムの見かけの光路長が増大することが原因である。このため、位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を大きくするような配向処理の手法が種々検討されてきた。
特許文献1には、分子がフィルム面の法線方向に配向してなるフィルムを延伸処理する製法が開示されている。ここでは、法線方向配向フィルムを得る手段として、実際には、溶融樹脂をノズルから押し出すことによって得たロッド棒を作り、これを板状に裁断することを行っている。
また、特許文献2には、厚さ方向の屈折率が平面方向の屈折率のそれよりも大きい透明フィルムと透明な延伸フィルムからなる位相差フィルムとの積層体が開示されている。ここでは、厚さ方向に屈折率を大きくさせる手段として、実際には、フィルムの製膜処理時に直流電界を印加する操作を施している。
さらに、特許文献3には、フィルムの表面に熱収縮性フィルムを接着した後に、加熱延伸処理を施すことにより、延伸方向と直交する方向の収縮力を付与する製法が開示されている。そして、この手法で作製した位相差フィルムを少なくとも1枚用いて、1>(nx−nz)/(nx−ny)>0を満たす位相差フィルムを得ている。
加えて、特許文献4には、法線方向に実質的に光軸を有する少なくとも1枚の負の固有複屈折性を有する透明フィルムと正の固有複屈折性を有する透明延伸フィルムとの積層体を含んでなる液晶表示装置が開示されている。そして、前記負の固有複屈折性を有する透明フィルムとして、二軸延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを積層したものが挙げられている。
特開平2−160204号公報 特開平3−85519号公報 特開平5−157911号公報 特開平2−256023号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、位相差のバラツキや輝度ムラや色ムラが十分に小さくならず、又製造効率に劣る問題があった。また、この方法では、ハイビジョンテレビ等の大型液晶画面などに適用できる大判体を得ることが困難である。
また、特許文献2に記載の方法では、特に広幅のフィルムを製造する場合に、それだけ設備が大掛かりになり、また、電界をかけすぎるとフィルムを損傷させてしまうことが考えられ、生産性が低い問題がある。
さらに、特許文献3に記載の方法では、延伸と収縮との比率を精密にコントロールする必要があり、製造工程が複雑になって、やはり生産性が低い問題がある。
さらに、特許文献4に記載の方法は、特に負の固有複屈折性を有する透明フィルムとして、二軸延伸フィルム又は一軸延伸フィルムを用いた場合、位相差の制御が容易で生産性が高い方法であると考えられる。しかしながら、目的の位相差を発現させるには、実際には、材料の強度が不足しているために延伸時に破断しやすく、さらに、破断しないように高温で延伸を行うと、目的の位相差が発現しにくいことが考えられ、現実的な手法とは言えない。
従って、本発明の目的は、従来のものよりも、製造効率に優れ視野角特性や表示性能に優れ、さらに輝度ムラや色ムラのない光学積層体並びにこれを用いて得られる光学素子及び光学製品を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決すべく、鋭意検討した結果、固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に透明な樹脂を含有してなる層を積層した後に、これを延伸した積層体と、透明な樹脂を含有してなる延伸フィルムとを、それらの配向方向が直交になるように積層させることにより、上記問題点を解決し得ることを見出し、この知見に基づいてさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、
(1)固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に透明な樹脂を含有してなる層を積層してなる光学積層体(A)と、透明な樹脂を含有してなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム(B)とを積層してなる光学積層体(C)であって、光学積層体(C)の厚さをd(nm)、波長550nmの光で測定した光学積層体(C)の厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びny(ただし、nx>ny)としたとき、(nx−ny)×dで表される正面リターデーションReのバラツキが10nm以内であり、且つ、0<{(nx−nz)/(nx−ny)}<1を満たすことを特徴とする光学積層体、
(2)波長550nmの光で測定した光学積層体(A)の厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びnyとしたとき、nx、ny及びnzが、nz>(nx+ny)/2の関係を満たすものである前記(1)に記載の光学積層体、
(3)nx、ny及びnzが、nz>nx及びnz>nyの関係を満たすものである前記(1)又は(2)に記載の光学積層体、
(4)nx、ny及びnzが、nz>nx≒nyの関係を満たすことものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学積層体。
(5)d、nx、ny及びnzが、−30nm<[{(nx+ny)/2}−nz]×d<30nmの関係を満たすものである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学積層体、
(6)光学積層体(C)の面内方向の遅相軸のバラツキが±10°以内である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学積層体、
(7)光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とが、その互いの面内方向遅相軸の交差角が90°±10°になるように積層されたものである前記(1)〜(6)のいずれかに記載の光学積層体、
(8)光学積層体(A)が少なくとも一軸延伸されたものである前記(1)〜(7)のいずれかに記載の光学積層体、
(9)固有複屈折値が負である材料がビニル芳香族系重合体である前記(1)〜(8)のいずれかに記載の光学積層体、
(10)ビニル芳香族系重合体がスチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体である前記(9)に記載の光学積層体、
(11)透明な樹脂が脂環式構造を有する重合体樹脂である前記(1)〜(10)のいずれかに記載の光学積層体、
(12)少なくとも光学積層体(A)の残留揮発成分含有量が0.1重量%以下である前記(1)〜(11)のいずれかに記載の光学積層体、
(13)少なくとも光学積層体(A)が溶融押出法で製膜されたものである前記(1)〜(12)のいずれかに記載の光学積層体、
(14)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の光学積層体(C)と偏光板との積層体からなる光学素子、及び
(15)前記(1)〜(13)のいずれかに記載の光学積層体(C)を液晶セルの少なくとも片側に備えた液晶表示装置、がそれぞれ提供される。
本発明の光学積層体は、製造効率に優れ、位相差のコントロールが容易で、かつ位相差のばらつきが少ないので、複屈折の高度な補償が可能となり、輝度ムラや色ムラがなく、さらに視野角特性に優れる位相差板として、液晶表示装置、有機EL表示装置などの装置に広く応用可能である。
本発明の光学積層体(C)は、固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に透明な樹脂を含有してなる層を積層してなる光学積層体(A)と、透明な樹脂を含有してなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム(B)とを積層してなる。
本発明の光学積層体(A)に用いる固有複屈折値が負である樹脂とは、分子が一軸性の秩序をもって配向した層に光が入射したとき、前記配向方向の光の屈折率が前記配向方向に直交する方向の光の屈折率より小さくなるものをいう。
光学積層体(A)に用いる固有複屈折率が負である樹脂としては、ディスコティック液晶ポリマー、ビニル芳香族系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、ポリメチルメタクリレート系重合体、セルロースエステル系重合体、これらの多元(二元、三元等)共重合体などが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ビニル芳香族系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体およびポリメチルメタクリレート系重合体の中から選択される少なくとも1種が好ましい。中でも複屈折発現性が高いという観点から、ビニル芳香族系重合体がより好ましい。
ビニル芳香族系重合体とは、ビニル芳香族単量体の重合体、又はビニル芳香族単量体と共重合可能な単量体との共重合体をいう。
ビニル芳香族単量体としては、スチレン;4−メチルスチレン、4−クロロスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−tert−ブトキシスチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体;などが挙げられる。これらを単独で使用しても2種以上併用してもよい。
ビニル芳香族単量体と共重合可能な単量体としては、プロピレン、ブテン等のオレフィン;アクリロニトリル等のα,β―エチレン性不飽和ニトリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等のα,β―エチレン性不飽和カルボン酸;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル;マレイミド;酢酸ビニル;塩化ビニル;などが挙げられる。
ビニル芳香族系重合体の中でも、耐熱性が高い観点から、スチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体が好ましい。
本発明において、固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の厚さは、特に限定されないが、通常、5〜400μm、好ましくは15〜250μmである。
本発明において、光学積層体(A)に用いる固有複屈折値が負である樹脂のガラス転移温度は、使用時の耐熱性に優れる点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。
本発明において使用する光学積層体(A)に用いる透明な樹脂としては、1mm厚で全光線透過率が80%以上のものであれば特に制限されず、例えば、脂環式構造を有する重合体樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリエステル系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体、ビニル芳香族系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、酢酸セルロース系重合体、ポリ塩化ビニル系重合体、ポリメタクリレート系重合体などが挙げられる。これらの中でも、脂環式構造を有する重合体樹脂または鎖状オレフィン系重合体が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式構造を有する重合体樹脂が特に好ましい。
脂環式構造を有する重合体樹脂は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、飽和脂環炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式構造を有する重合体樹脂中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、もっとも好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると光学積層体の透明性および耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造を有する重合体樹脂は、具体的には、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。これらの中でも、透明性や成形性の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体としては、具体的にはノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体水素化物が最も好ましい。
上記の脂環式構造を有する重合体は、例えば特開2002−321302号公報などに開示されている公知の重合体から選ばれる。
本発明の光学積層体の透明な樹脂として好適に用いられるノルボルネン系重合体の中でも、繰り返し単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの繰り返し単位の含有量が、ノルボルネン系重合体の繰り返し単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの含有割合とYの含有割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような樹脂を用いることにより、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れる光学積層体を得ることができる。
ポリマーとしてXの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、ノルボルネン環に五員環が結合した構造を有するノルボルネン系単量体が挙げられ、より具体的には、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.10,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、及びその誘導体が挙げられる。
また、ポリマーとしてYの構造を繰り返し単位として有するモノマーとしては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]デカ−3,7−ジエン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)が挙げられる。
このようなノルボルネン系重合体を得る手段としては、具体的にはa)ポリマーとして前記Xの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーと、ポリマーとして前記Yの構造を繰り返し単位として有することができるモノマーとの共重合比でコントロールして重合し、必要に応じてポリマー中の不飽和結合を水素化する方法や、b)前記Xの構造を繰り返し単位として有するポリマーと、前記Yの構造を繰り返し単位として有するポリマーとのブレンド比でコントロールする方法が挙げられる。
本発明において、透明樹脂の分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常5,000〜100,000、好ましくは8,000〜80,000、より好ましくは10,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、光学積層体の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
本発明において、透明樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
本発明に好適に用いる脂環式構造を有する重合体樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の量が多いと樹脂積層体を延伸する際に、表面に微細な凹凸が発生したり、厚さムラを生じたりして面精度が悪くなる。
オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択、重合、水素化などの反応条件、樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件、などを最適化すればよい。オリゴマーの成分量は、シクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定することができる。
本発明において使用する光学積層体(A)に用いる透明な樹脂を含有してなる層の厚さは、通常5〜250μm、好ましくは15〜150μmである。
本発明において使用する光学積層体(A)に用いる固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層及び/又は透明な樹脂を含有してなる層には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。これらの添加剤は、固有複屈折値が負である樹脂又は透明な樹脂100重量部に対して、通常0〜5重量部、好ましくは0〜3重量部の範囲で添加する。
本発明において使用する光学積層体(A)の波長550nmの光で測定した厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びnyとしたとき、nz>(nx+ny)/2の関係を満たすことが好ましい。
本発明において使用する光学積層体(A)においては、前記nx、ny及びnzが、nz>nx及びnz>nyの関係を満たすことがより好ましい。
本発明において使用する光学積層体(A)においては、前記nx、ny及びnzが、nz>nx≒nyの関係を満たすことがさらに好ましい。nx≒nyとは、nxとnyとの差が、通常0.0002以下、好ましくは0.0001以下、さらに好ましくは0.00005以下の範囲にあることをいう。
本発明において、光学積層体(A)に用いる透明な樹脂のガラス転移温度Tgは、固有複屈折値が負である樹脂のガラス転移温度Tgより低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましい。TgがTgと同等以上であると、特に透明な樹脂の固有複屈折値が正である場合、延伸によって固有複屈折値が負である樹脂の屈折率異方性だけでなく、透明な樹脂の屈折率異方性が発現してしまい、目的とする面内の直交軸方向の屈折率と厚さ方向の屈折率との関係が得られなくなってしまう。
本発明において使用する光学積層体(A)は、吸湿や温度変化、または経時変化による反りなどを防止する観点からは、固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の両面に透明な樹脂を含有してなる層が積層されることが好ましく、この場合2層の透明な樹脂を含有してなる層の厚さは実質的に等しいことが好ましい。また、片面のみに透明な樹脂を含有してなる層を積層する場合は、重ねる層数に限りはなく、何層積層してもよいが、通常は1層である。
本発明において使用する光学積層体(A)は、前記固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層と透明な樹脂を含有してなる層との間に接着剤層を設けてもよい。
接着剤層は、光学積層体(A)に用いる固有複屈折値が負の樹脂と透明な樹脂との双方に対して親和性があるものから形成することができる。例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系共重合体が挙げられる。また、これらの共重合体を酸化、ケン化、塩素化、クロルスルホン化などにより変性した変性物を用いることもできる。本発明において、変性したエチレン系共重合体を使用すると、積層構造体成形時のハンドリング性や接着力の耐熱劣化性を向上させることができる。
接着剤層の厚さは、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。
本発明において使用する光学積層体(A)において、前記接着剤層を含む場合は、接着剤のガラス転移温度又は軟化点Tgは、前記Tg及びTgよりも低いことが好ましく、Tg及びTgよりも20℃以上低いことがさらに好ましい。
本発明において使用する光学積層体(A)を製造する方法としては、特に制限されないが、固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に、透明な樹脂を含有してなる層を積層して未延伸積層体(a)とし、次いで、これを少なくとも一軸延伸する方法が好ましい。
未延伸積層体(a)を得る方法としては、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及び基材樹脂フィルムに対して樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出による成形方法が好ましい。
押出し温度は、使用する固有複屈折値が負である樹脂や透明な樹脂及び必要に応じて用いられる接着剤の種類に応じて適宜選択され得る。
未延伸積層体(a)を延伸する方法は特に制限はなく、従来公知の方法を適用し得る。具体的には、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔が開かれて縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後にその両端部がクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;が挙げられる。光学積層体(A)を延伸することにより、厚さ方向の屈折率異方性を発現させることができる。中でも、面内の直交軸方向の屈折率をバランスさせ、面内リターデーションを実質的にゼロにする場合には二軸延伸法が好ましい。
未延伸積層体(a)の延伸温度は、A層に用いる固有複屈折値が負で樹脂のガラス転移温度をTgとしたとき、(Tg−10)℃〜(Tg+20)℃が好ましく、(Tg−5)℃〜(Tg+15)℃の範囲であることがより好ましい。延伸温度を上記範囲とすることにより、延伸時に光学積層体(A)中の透明な樹脂の屈折率異方性が発現されにくくなり、目的とする面内の直交軸方向と厚さ方向の屈折率の関係を容易に得ることができる。
未延伸積層体(a)の延伸倍率は、通常、1.1〜30倍、好ましくは1.3〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が、上記範囲を外れると、配向が不十分で屈折率異方性、ひいてはリターデーションの発現が不十分になったり、積層体が破断したりするおそれがある。
光学積層体(A)の残留揮発性成分量は特に制約されないが、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分量が0.1重量%を超えると、使用時に該揮発性成分が外部に放出して、光学積層体(A)に寸法変化が生じて内部応力が発生することにより、位相差にムラを生じることがある。したがって、光学積層体(A)の揮発性成分含有量が上記範囲にあることにより、長期間使用しても液晶表示装置のディスプレイの表示ムラが発生しないといった光学特性の安定性に優れる。
本発明において使用する延伸フィルム(B)を得るために用いる透明な樹脂としては、光学積層体(A)に用いる透明な樹脂と同じものを挙げることができる。中でも、脂環式構造を有する重合体樹脂または鎖状オレフィン系重合体が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式構造を有する重合体樹脂が特に好ましい。
本発明において使用する延伸フィルム(B)は透明な樹脂を含有してなる未延伸フィルム(b)を延伸することにより得られる。未延伸フィルム(b)を得る方法としては特に制約されず、公知の成形法を採用することができる。例えば、加熱溶融成形法、溶液流延法のいずれも採用することができるが、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、加熱溶融成形法を用いるのが好ましい。加熱溶融成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法等に分類できる。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる延伸フィルムを得るためには、溶融押出成形法を用いるのが好ましい。
押出し温度は、透明な樹脂のガラス転移温度に応じて適宜選択され得る。
未延伸フィルム(b)を延伸する方法は特に制限はなく、従来公知の方法を適用し得る。具体的には、ロール側の周速の差を利用して縦方向に一軸延伸する方法、テンターを用いて横方向に一軸延伸する方法等の一軸延伸法;固定するクリップの間隔が開かれて縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がり角度により横方向に延伸する同時二軸延伸法や、ロール間の周速の差を利用して縦方向に延伸した後にその両端部がクリップ把持してテンターを用いて横方向に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;が挙げられる。
未延伸フィルム(b)を延伸するときの延伸温度は、透明樹脂のガラス転移温度をTgとすると、好ましくは(Tg−30℃)から(Tg+60℃)の間、より好ましくは(Tg−10℃)から(Tg+50℃)の温度範囲である。また、延伸倍率は、通常1.01〜30倍、好ましくは1.01〜10倍、より好ましくは1.01〜5倍である。未延伸フィルム(b)の延伸条件は、光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とを積層することにより得られる光学積層体(C)が所望の位相差を有するように適宜調整すればよい。
本発明の光学積層体(C)において、延伸フィルム(B)の厚さは、4〜400μmである。
本発明の光学積層体(C)において、延伸フィルム(B)の残留揮発性成分量が、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。残留揮発性成分量が0.1重量%を超えると、使用時に該揮発性成分が外部に放出して、光学積層体(A)に寸法変化が生じて内部応力が発生することにより、位相差にムラを生じることがある。したがって、本発明の光学積層体の揮発性成分含有量が上記範囲にあることにより、長期間使用しても液晶表示装置のディスプレイの表示ムラが発生しないといった光学特性の安定性に優れる。
本発明の光学積層体(C)は、波長550nmの光で測定した厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びny(ただし、nx>ny)としたとき、0<{(nx−nz)/(nx−ny)}<1を満たす。
本発明の光学積層体(C)においては、C層の厚さをd(nm)としたとき、前記nx、ny及びnzが、−30nm<[{(nx+ny)/2}−nz]×d<30nmの関係を満たすことが好ましく、−1nm<[{(nx+ny)/2}−nz]×d<1nmの関係を満たすことがさらに好ましい。
本発明の光学積層体(C)においては、(nx−ny)×dで表される正面リターデーションReのバラツキは、10nm以内、好ましくは5nm以内、さらに好ましくは2nm以内である。正面リターデーションReのバラツキを、前記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。ここで、正面リターデーションReのバラツキは、光入射角0°(入射光線と本発明の積層体表面が直交する状態)の時の正面リターデーションを光学積層体の幅方向に測定したときの、その正面リターデーションの最大値と最小値との差である。
本発明の光学積層体(C)の厚さは、通常15〜500μm、好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜200μmである。液晶表示装置等に用いる場合、厚さが薄いほど装置全体の薄型化や軽量化が図れるが、機械的強度や取り扱いの容易性の観点ではある程度の厚さが必要である。
本発明の光学積層体(C)は、面内方向の遅相軸のバラツキは±10°以内であることが好ましく、±5°以内であることがより好ましく、±1°以内であることがさらに好ましい。
遅相軸のバラツキは、遅相軸を数点測定したときの測定値の算術平均値に対する各測定値のばらつきとする。
本発明の光学積層体(C)においては、光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とが、その互いの面内方向遅相軸の交差角が(90±10)度となるように積層することが好ましく、(90±5)度となるように積層することがより好ましく、(90±1)度になるように積層することが特に好ましい。積層する面については、光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とが、その互いの面内方向遅相軸の交差角が上記範囲になるようにすれば、特に制限はない。
光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とを積層する方法としては特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、生産効率の観点から、長尺のフィルム同士を貼り合わせる、いわゆるロール・トゥ・ロール方式を採用するのが好ましい。この方式によれば、ロール状に巻き取った光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とをそれぞれ引き出し、接着剤又は粘着剤を接合面に塗布して両者を積重し、この積重体を加圧ローラのニップに供給して圧着することにより連続的に貼り合わせることができる。
本発明の光学積層体(C)は、容易に製造が可能で、複屈折の高度な補償が可能なので、視野角依存性に優れる位相差板として、またはこの光学積層体に偏光分離層を積層して輝度向上フィルムとして、液晶表示装置、有機EL表示装置などの表示装置に広く応用可能である。
本発明の光学素子は、本発明の光学補償積層体(C)と偏光板との積層体からなる。
本発明の光学素子に用いる偏光板の基本的な構成は、二色性物質含有のポリビニルアルコール系偏光フィルム等からなる偏光子の片側又は両側に、適宜の接着層を介して、保護層となる透明保護フィルムを接着したものからなる。
偏光子としては、例えばポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の従来に準じた適宜なビニルアルコール系ポリマーよりなるフィルムに、ヨウ素や二色性染料等よりなる二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適宜な処理を適宜な順序や方式で施したもので、自然光を入射させると直線偏光を透過する適宜なものを用いることができる。特に、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。偏光子の厚さは、5〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
偏光子の片側又は両側に設ける透明保護層となる保護フィルム素材としては、適宜な透明フィルムを用いることができる。中でも、透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーからなるフィルム等が好ましく用いられる。そのポリマーの例としては、トリアセチルセルロースの如きアセテート系樹脂やポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、アクリル系樹脂等があげられるが、中でも複屈折が小さい点で、アセテート系樹脂又はノルボルネン系樹脂が好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、ノルボルネン系樹脂が特に好ましい。
透明保護フィルムの厚さは、任意であるが一般には偏光板の薄型化などを目的に500μm以下、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは5〜150μmである。
光学積層体(C)と偏光板との積層は、接着剤や粘着剤等の適宜な接着手段を用いて貼り合わせることができる。接着剤又は粘着剤としては、例えば、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性や透明性等の観点から、アクリル系のものが好ましい。
本発明の光学積層体(C)においては、本発明の光学積層体(C)中の透明な樹脂を含有してなる層が積層する偏光板の透明保護フィルムを兼ねることができ、部材の薄型化が可能である。また、光学積層体(C)と偏光板の積層を、ロール・トゥ・ロールで行うことができ、長尺の光学素子を得ることができる。
本発明の光学素子の厚さは、通常100〜700μm、好ましくは200〜600μmである。
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学積層体(C)を液晶セルの少なくとも片側に備える。本発明の光学積層体(C)を液晶セルに備える態様としては、偏光板と液晶セルの間に光学積層体(C)を備える態様;偏光板の液晶セルと反対側に光学積層体(C)を備える態様が挙げられる。
本発明の液晶表示装置は、偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる透過型や反射型、あるいは透過・反射両用型等の従来に準じた適宜な構造を有するものとして形成することができる。液晶セルに使用する液晶モードとしては、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型、VA(Vertical Alignment)、MVA(Multiple Vertical Alignment)型、IPS(In Plane Switching)型、OCB(Optical Compensated Bend)型、などが挙げられる。
また、液晶セルの両側に偏光板を設ける場合、偏光板は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
本発明の液晶表示装置においては、本発明の光学積層体と液晶セルとを接着するために、粘着層を設けることもできる。その粘着層は、アクリル系等の従来公知の粘着剤を用いて適宜形成することができる。中でも、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層であることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等とすることもできる。
偏光板に設けた粘着層が表面に露出する場合には、その粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。セパレータは、上記の透明保護フィルム等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤による剥離コートを設ける方式等により形成することができる。
なお、上述した偏光板を形成する偏光子や透明保護フィルム、光学層や粘着層等の各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の適宜な方式により紫外線吸収能をもたせたものであってもよい。
本発明を、実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本発明における評価は、以下の方法により行う。
(1)分子量
シクロヘキサン(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン)を溶媒にしてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン又はポリイソプレン換算の重量平均分子量(Mw)を求める
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS K7121に基づいて示差走査熱量分析法(DSC)を用いて測定する。
(3)水素化率
重合体の主鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRを測定し算出する。
(4)フィルム又は積層体の厚さ
フィルム又は積層体の断面を光学顕微鏡で観察して測定する。積層体については各層ごとに測定する。
(5)波長550nmの光で測定したフィルム又は積層体の厚さ方向の屈折率nz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率nx、ny、正面リターデーションのバラツキ及び遅相軸のバラツキ
自動複屈折計(王子計測器社製、KOBRA−21)を用いて測定する。なお、正面リターデーションReのバラツキは、フィルム又は積層体の幅方向に10mm間隔で正面リターデーションReを測定して、その測定値の算術平均値と正面リターデーションReの代表値とし、測定値の内、最大値と最小値との差を正面リターデーションReのばらつきとする。遅相軸のバラツキは、フィルム又は積層体の幅方向に10mm間隔で遅相軸を測定して、その測定値の算術平均値を求め、その平均値からの測定値のバラツキとする。
(6)残留揮発性成分量
ガスクロマトグラフィーを用いて、沸点150℃以下の成分の合計量として測定する。
(7)表示性能
光学積層体をSTN型液晶表示装置の液晶セルと上側偏光板との間、及び液晶セルと下側偏光板との間に配置して、表示特性を目視で観察する。また、表示装置の背景を黒表示にし、暗室内で正面方向及び上下左右40度の方向から見て、輝度ムラ(白抜け)がないか確認する。偏光板と光学積層体とを積層する際、偏光板の吸収軸と光学積層体の遅相軸とが45°になるように配置する。
[製造例1] ノルボルネン系ポリマー1の製造
脱水したシクロヘキサン500部に、窒素雰囲気下、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、トリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下、「DCP」と略記する。)170部、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン(エチリデンテトラシクロドデセン、以下、「ETD」と略記する。)30部からなるノルボルネン系単量体混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加して重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し、重合反応を停止させた。
次に、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン35部を加え、さらに水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学(株)製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して攪拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、DCP/ETD開環共重合体水素化物ポリマーを20%含有する反応溶液を得た。
得られたノルボルネン系ポリマー1中の各ノルボルネン系単量体の共重合比率を、重合後の、溶液中の残留ノルボルネン類の組成(ガスクロマトグラフィー法による)から計算したところ、DCP/ETD=85/15でほぼ仕込み組成に等しかった。このノルボルネン系ポリマー1の重量平均分子量(Mw)は35,000であり、分子量分布は2.1、分子量2,000以下の樹脂成分の含有量は0.7重量%であった。また、水素化率は99.9%、Tgは105℃であった。
ろ過により水素化触媒を除去した後、酸化防止剤(商品名:イルガノックス1010、チバスペシャリティ・ケミカルズ社製)を、得られた溶液に添加して溶解させた(酸化防止剤の添加量は、重合体100部あたり0.1部)。
次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所(株)製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサンおよびその他の揮発性成分を除去することにより、開環重合体水素化物(ノルボルネン系重合体1)を得た。
[製造例2] 未延伸の積層体A1の製造
製造例1で得られたノルボルネン系重合体1からなるa層、スチレン−マレイン酸共重合体(ノヴァ・ケミカル社製、商品名「Daylark D332」、ガラス転移温度130℃、オリゴマー成分含有量3重量%)からなるb層、及び変性したエチレン−酢酸ビニル共重合体(三菱化学社製、商品名「モディックAP A543」、ビカット軟化点80℃)からなる接着剤層(c層)を有する、a層(35μm)−c層(7μm)−b層(140μm)−c層(7μm)−a層(35μm)の未延伸積層体A1を共押出し成形により得た。
[製造例3] 未延伸フィルム2の製造
製造例2におけるb層と同じスチレン−マレイン酸共重合体を押出し成形し、単層のスチレン−マレイン酸共重合体からなる厚さ140μmの未延伸フィルム2を得た。
[実施例1] 光学積層体C1の製造
製造例2で得られた未延伸積層体A1を100×100mmのシートに切断し、フィルム延伸試験機(ORIENTEC CORPORATION社製、「TENSILON UTM−10T−PL」)を用いて延伸温度139℃、延伸倍率1.7倍、延伸速度35mm/minで一軸延伸を行った。さらに、前記延伸方向とは直交する方向に、延伸倍率1.5倍で一軸延伸した。延伸した積層体を取り出し、中央部の60mm×60mmの部分を切り出し、光学積層体A2を得た。この積層体A2の厚さ方向の屈折率をnzA2、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnxA2及びnyA2としたとき、nzA2>nxA2≒nyA2の関係を満たしていた。
さらに、得られた光学積層体A2とノルボルネン系重合体(製品名「ZEONOR 1420」、日本ゼオン社製;ガラス転移温度は135℃)からなる一軸延伸フィルムB(厚さ100μmの原反フィルムを延伸温度は138℃、延伸倍率縦1.2倍で延伸したもの)とをそれらの面内遅相軸方向が直交するように積層して光学積層体C1を得た。光学積層体C1の測定結果を表1に示す。
また、この光学積層体C1を用いてSTN型液晶表示装置の表示性能を評価したところ、表示画面を正面から見た場合も、45°以内の斜め方向から見た場合も良好な表示を確認でき、さらに、面内の表示特性は均一であった。また、輝度ムラは、正面方向から見ても、上下左右40度の方向から見てもなかった。
[比較例1] 延伸フィルムa1の製造
製造例2で得られた未延伸積層体A1のかわりに製造例3で得られた未延伸フィルム2を用いた他は実施例1と同様に延伸を行ったが、フィルムが破断してしまった。
[比較例2]光学積層体c1の製造
製造例1で得られた未延伸積層体A1のかわりに製造例3で得られた未延伸フィルム2を用い、延伸温度を158℃、延伸速度を70mm/minとした他は実施例1と同様に延伸を行い単層の延伸フィルム2を得た。さらに、この延伸フィルム2とノルボルネン系重合体(製品名「ZEONOR 1420」、日本ゼオン社製;ガラス転移温度は135℃)からなる一軸延伸フィルムB(厚さ100μmの原反フィルムを延伸温度は138℃、延伸倍率縦1.2倍で延伸したもの)とをそれらの面内遅相軸方向が直交するように積層して光学積層体c1を得た。光学積層体c1の測定結果を表1に示す。
また、この光学積層体c1を用いてSTN型液晶表示装置の表示性能を評価したところ、全面で表示ムラがあり色調や階調が均一でなかった。輝度ムラは、正面方向および上下左右40度の方向からから見た場合も、見られた。
Figure 2005077450
表1の結果から以下のことがわかる。
実施例に示すように、本発明の光学積層体は、前記積層体の厚さをd、波長550nmの光で測定した厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びny(ただし、nx>ny)としたとき、(nx−ny)×dで表される正面リターデーションReのバラツキが2nmであり、且つ、1>(nx−nz)/(nx−ny)>0とすることができるので、この光学積層体を液晶表示装置に使用したとき、正面だけでなく斜め方向から見ても良好な表示を確認でき、面内の表示特性も良好で、輝度ムラもない。
一方、比較例1の場合、延伸時に単層フィルムが破断してしまう。また、比較例2のように単層フィルムを用いて、延伸したものでも、正面リターデーションのバラツキが15nmとなるので、この光学積層体を液晶表示装置に使用したとき、全面で表示ムラが見られたり、輝度ムラが見られたりする。

Claims (15)

  1. 固有複屈折値が負である樹脂を含有してなる層の少なくとも片面に透明な樹脂を含有してなる層を積層してなる光学積層体(A)と、透明な樹脂を含有してなるフィルムを延伸してなる延伸フィルム(B)とを積層してなる光学積層体(C)であって、光学積層体(C)の厚さをd(nm)、波長550nmの光で測定した光学積層体(C)の厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びny(ただし、nx>ny)としたとき、(nx−ny)×dで表される正面リターデーションReのバラツキが10nm以内であり、且つ、0<{(nx−nz)/(nx−ny)}<1を満たすことを特徴とする光学積層体。
  2. 波長550nmの光で測定した光学積層体(A)の厚さ方向の屈折率をnz、厚さ方向に垂直な互いに直交する2方向の屈折率をnx及びnyとしたとき、nx、ny及びnzが、nz>(nx+ny)/2の関係を満たすものである請求項1に記載の光学積層体。
  3. nx、ny及びnzが、nz>nx及びnz>nyの関係を満たすものである請求項1又は2に記載の光学積層体。
  4. nx、ny及びnzが、nz>nx≒nyの関係を満たすことものである請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層体。
  5. d、nx、ny及びnzが、−30nm<[{(nx+ny)/2}−nz]×d<30nmの関係を満たすものである請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層体。
  6. 光学積層体(C)の面内方向の遅相軸のバラツキが±10°以内である請求項1〜5のいずれかに記載の光学積層体。
  7. 光学積層体(A)と延伸フィルム(B)とが、その互いの面内方向遅相軸の交差角が90°±10°になるように積層されたものである請求項1〜6のいずれかに記載の光学積層体。
  8. 光学積層体(A)が少なくとも一軸延伸されたものである請求項1〜7のいずれかに記載の光学積層体。
  9. 固有複屈折値が負である材料がビニル芳香族系重合体である請求項1〜8のいずれかに記載の光学積層体。
  10. ビニル芳香族系重合体がスチレン又はスチレン誘導体と無水マレイン酸との共重合体である請求項9に記載の光学積層体。
  11. 透明な樹脂が脂環式構造を有する重合体樹脂である請求項1〜10のいずれかに記載の光学積層体。
  12. 少なくとも光学積層体(A)の残留揮発成分含有量が0.1重量%以下である請求項1〜11のいずれかに記載の光学積層体。
  13. 少なくとも光学積層体(A)が溶融押出法で製膜されたものである請求項1〜12のいずれかに記載の光学積層体。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学積層体(C)と偏光板との積層体からなる光学素子。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学積層体(C)を液晶セルの少なくとも片側に備えた液晶表示装置。
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