JP2007299534A - 透明導電性フィルム及びこれを用いたタッチパネル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明フィルム104の一方の面に、酸素欠損金属酸化物層111、第1の高屈折率層112、第1の低屈折率層113、第2の高屈折率層114、第2の低屈折率層115、透明導電層116がこの順に積層された6層の積層膜が形成される。高透明で、ニュートラルな色調を有するタッチパネル用透明導電性フィルムが得られる。
【選択図】図1
Description
一般に、タッチパネルの透明導電性フィルムに用いられる透明導電層は、屈折率が1.9から2.1程度であり、透明フィルムの屈折率1.45〜1.65に比べて高いことから、空気との界面において反射が発生し透過率が低下する。さらに透明導電層の反射率は波長依存性があることから、特定の波長の光の反射によって透明導電性フィルムが着色したように見え、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイなどの表示装置の明るさや色調を損なうという問題がある。
また、透明フィルムの上に透過率の高い導電層を形成する技術も提案されている(例えば特許文献3参照。)。
また、上記特許文献3に開示の方法では、可視領域の特定の波長に透過率のピークをもつ構造であるため、ある程度透過率の向上には寄与するものの、表示装置の表示波長領域全域にわたり高透過率を確保し、同時に、ニュートラルな反射・透過色調、すなわち特定の色が反射されないいわゆる無色透明の色調を両立させる技術は実現できていない。
すなわち、従来の透明導電性フィルムにおいては、透明導電層の屈折率が高いために、透過率の低下、反射の増大、色調の変化が発生することから、これを用いたタッチパネルにおいて、表示品質を著しく損なうという問題がある。
図1は、本発明の一実施形態例に係る透明導電性フィルム100の概略断面構成図である。図1に示すように、本発明の透明導電性フィルム100は、透明フィルム104の一方の面に、酸素欠損金属酸化物層111、第1の高屈折率層112、第1の低屈折率層113、第2の高屈折率層114、第2の低屈折率層115、透明導電層116がこの順に積層された6層の積層膜110が形成されて構成される。図示の例においては、透明フィルム基材101の両面にハードコート102及び103が形成されて透明フィルム104が構成された例を示す。
またこの透明フィルム基材101は、その表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性等を改善するために、表面処理として下塗り層を設ける場合がある。下塗り層はオルガノアルコキシメタル化合物やポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、コロナ放電、UV照射処理を行うことにより同様の効果を得る方法もある。
ハードコート102及び103の材料としては、例えば特公昭50−28092号公報、特公昭50−28446号公報、特公昭51−24368号公報、特開昭52−112698号公報、特公昭57−2735号公報、特開2001−301095号公報に開示されているような、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のオルガノシラン系熱硬化型樹脂、エーテル化メチロールメラミン等のメラミン系熱硬化樹脂、ポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の多官能アクリレート系紫外線硬化樹脂等より成る材料を用いることができる。また、必要に応じて特許3361857号公報、特開平11−140207号公報に開示されているように、微粒子を混合させた樹脂を用いることにより、有機ELパネル、液晶パネル等の表示装置の表示性能を損なわない程度の光散乱効果を持つものであってもよい。このハードコート102及び103の厚さとしては、通常1μm以上20μm以下程度とされ、本発明の透明導電性フィルムに用いる場合においても同様である。またハードコート102の表面をプラズマで処理することにより酸素欠損金属酸化物層111との密着性を向上させることが可能である。
n(H)/n(L)≧1.4 ・・・(1)
であることが望ましい。これは、上述の光干渉効果を十分に得るためである。
この第1及び第2の高屈折率層112及び114の材料及び製造方法は上記式(1)を満たす材料及び製造方法であれば特に制限されるものではないが、Arガス及び必要に応じて酸素ガス、二酸化炭素ガス、オゾンガス等を導入した減圧環境下においてNb、Ti、Ta等を主成分とする金属あるいはセラミック陰極にDC又はAC電圧を印加することによりプラズマを発生させて成膜するマグネトロンスパッタ法により成膜することが最も好ましい。第1の高屈折率層112の光学膜厚nd1としては、上述の光干渉効果を良好に得て、かつ透過率の低下を回避するためには、20nm<nd1<70nmであればよく、35nm<nd1<55nmの範囲とすることがより好ましい。
このような装置200を用いて、プラズマ処理部201において透明フィルム104の表面をプラズマ処理した後、例えばガス導入口212及び213から矢印a1及びa2で示すようにArガス及び酸素ガス、また必要に応じてその他のガスを導入しながら、第1〜第6の電極にDC又はAC電圧を印加することによりプラズマを発生させて成膜するマグネトロンスパッタ法により図1に示す積層膜110の各層を連続的に成膜することができる。
この例においては、図1に示す透明フィルム基材101として、厚さ100μmのシクロオレフィンポリマー例えばゼオノア(日本ゼオン(株)製、登録商標)を用い、その両面に4μmの厚さでポリエステルアクリルレート系の樹脂を塗布した後UV乾燥炉で硬化させてハードコート102及び103を形成し、透明フィルム104を作製する。
次にこの透明フィルム104を図2において説明した真空スパッタ装置200にセットした後、真空ポンプ211で10−4Pa程度まで排気した後、Arガスを10−2Paまで導入する。
第2の電極206(第1の高屈折率層成膜用)には金属Nbを装着し、Arガスと酸素ガスとの流量比(Ar/O2と記す)がAr/O2=2となるようにArガス及び酸素ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加して第1の高屈折率層としてNb2O5膜を成膜した。このとき印加電力はNb2O5膜の光学膜厚が46nmになるよう調整した。
第3の電極207(第1の低屈折率層成膜用)には金属Siを装着し、Ar/O2=3となるように酸素ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加してSiO2膜を成膜した。印加電力はSiO2膜の光学膜厚が29nmになるよう調整した。
第4の電極208(第2の高屈折率層成膜用)には金属Nbを装着し、Ar/O2=2となるように酸素ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加してNb2O5膜を成膜した。印加電力はNb2O5膜の光学膜厚が139nmになるように調整した。
第5の電極209(第2の低屈折率層成膜用)には金属Siを装着し、Ar/O2=3となるように酸素ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加してSiO2膜を成膜した。印加電力はSiO2膜の光学膜厚が80nmになるように調整した。
第6の電極210(透明導電層成膜用)にはITOを装着し、Arの1.0%程度の流量の酸素ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加してITO膜を成膜した。印加電力はITO膜の表面抵抗が500Ω/sqになるよう調整したところ、ITOの物理膜厚は15nmであった。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表1に示す。
上述の実施例1における酸素欠損金属酸化物層としてのSiOx層をなくした他は、上記実施例1と同様の構成とした。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表2に示す。
上述の実施例1における酸素欠損金属酸化物層の成膜時に、Arガスと酸素がストの流量比がAr/O2=2となるように酸素ガスを導入することにより、SiOx(x=1.0)ではなくSiO2膜として構成した。SiO2膜の物理膜厚が5nmになるよう印加電力を調整した。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表3に示す。
上述の実施例1において、6層構成ではなく、下記の表4に示すように、高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ1層とする4層構成とし、透過率のピークが550nmとなるようにその膜厚を調整して構成した。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表4に示す。
上述の比較例3と同様に、下記の表5に示すように、高屈折率層及び低屈折率層をそれぞれ1層とする4層構成とし、透過率のピークが450nmとなるように構成した。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表5に示す。
上述の実施例1における第2及び第4の電極206及び208に金属Siを装着し、O2の代わりにN2ガスを導入し、さらに250kHzのAC電圧を印加してSiN膜を成膜した。この場合、高屈折率層と低屈折率層との屈折率比はn(H)/n(L)=1.34となっている。印加電力は第1の高屈折率層の光学膜厚が39nm、第2の高屈折率層の光学膜厚が137nmとなるように調整した。さらに、第1の低屈折率層の光学膜厚を44nmとすることにより色調を最適化した。この場合の各層の材料、屈折率、物理膜厚、光学膜厚を以下の表6に示す。
したがって、透明フィルムと第1の高屈折率層との間に酸素欠損金属酸化物層を設けない場合、また、酸素欠損金属酸化物層に換えて金属酸化物層を設ける場合においては、機械特性及び電気特性において劣化が見られることがわかる。
また、表8から明らかなように、L*a*b*表色系(1976年国際照明委員会(CIE)で規格化、JIS(JISZ8729))のL*a*b*色空間で定義される(a*,b*)において、透過色調は、(a*)2+(b*)2=0.17であることから、
(a*)2+(b*)2≦1 ・・・(2)
を満たし、反射色調は、(a*)2+(b*)2=89.91であり、
(a*)2+(b*)2≦100・・・(3)
を満たし、ニュートラルな透過・反射色調を維持しているため、表示装置の前面に配置しても表示特性にほとんど影響を与えないことが分かる。
また、液晶ディスプレイにおいては、その色再現性を評価する上で透過色調の色温度は最も重要な数値であり、6450K以上6550以下であることが望ましい。表8より、実施例においては透過色調の色温度は6544Kであることから、この透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイに用いる場合に好適であることが分かる。
(a*)2+(b*)2=4.10>1
となり、反射色調においても、
(a*)2+(b*)2=406.93>100
となってしまい、上記式(2)及び(3)を満たさない。このようなフィルムを表示装置の前面に設置した場合色調が変化してしまうため好ましくない。
また、透過色調の色温度も6408Kとなり、液晶ディスプレイに用いる透明導電性フィルムとしては不適切であることが分かる。
(a*)2+(b*)2=1.01>1
となり、反射色調においても、
(a*)2+(b*)2=160.73>100
となってしまい、上記式(2)及び(3)を満たさない。このようなフィルムを表示装置の全面に設置した場合、透過は暗く、反射は黄色くなるので好ましくない。
透過色調の色温度も6607Kであり、比較例3と同様に、液晶ディスプレイに用いる場合には適さないことが分かる。
したがって、本発明の透明導電性フィルムにおいては、上述の構成とすることにより全光線透過率(JIS K7361)が93%以上であり、かつその色調が上記式(2)及び(3)を満たし、良好な光学特性を得ることができることが分かる。また透過色調の色温度が液晶ディスプレイに用いる場合に最適な範囲であることが分かる。
また本発明の透明導電性フィルムを抵抗膜式タッチパネル、静電容量式タッチパネルに適用することで、表示装置の表示性能を損なうことなく、実用的に十分な機械特性と電気特性を有するタッチパネルを得ることができる。
また、本発明の透明導電性フィルムの表面抵抗値として200Ω/sq以上10kΩ/sq以下とすることによって、抵抗膜式タッチパネル及び静電容量式タッチパネルとしては実用上適切な表面抵抗値とし、良好な電気特性とすることができる。
また更に、本発明の透明導電性フィルムにおいて、全光線透過率(JIS K7361)が93%以上であり、かつその色調が、CIE(1976)L*a*b*色空間で定義される(a*,b*)において、透過色調及び反射色調を、上記式(2)及び(3)を満たす範囲とすることによって、確実に可視域、特に表示体の表示波長域において高透過及びニュートラルな透過・反射色調を実現できるため、タッチパネルに用いた場合においても表示装置の色調を損なわない、光学特性に優れた透明導電性フィルムを得ることが可能である。
また、本発明の透明導電性フィルムにおいて、透明フィルムを冷却させながら、6層の積層膜をロール・ツー・ロールのスパッタ法で製造することによって、耐熱性の低いフィルム基材上にも、透明導電性フィルムを容易に量産することが可能である。
Claims (10)
- 透明フィルムの一方の面に、酸素欠損金属酸化物層、第1の高屈折率層、第1の低屈折率層、第2の高屈折率層、第2の低屈折率層、透明導電層がこの順に積層された6層の積層膜が形成されて成る
ことを特徴とする透明導電性フィルム。 - 前記第1及び第2の高屈折率層の屈折率n(H)と、第1及び第2の低屈折率層の屈折率n(L)は、その屈折率比n(H)/n(L)が1.4以上であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 表面抵抗値が200Ω/sq以上10kΩ/sq以下であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 全光線透過率(JIS K7361)が93%以上であり、かつその色調が、CIE1976(JIS Z 8729)のL*a*b*色空間で定義される(a*,b*)において、透過色調は、
(a*)2+(b*)2≦1
を満たし、反射色調は、
(a*)2+(b*)2≦100
を満たすことを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。 - 前記第1及び第2の高屈折率層が、Nb2O5又はTiO2から成ることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 前記第1及び第2の低屈折率層が、SiO2から成ることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 前記透明導電層がインジウム・スズ混合酸化物又はZnを主成分とする合金酸化物から成ることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 前記酸素欠損金属酸化物層が、Si又はTi又はCrを主成分とする酸素欠損金属酸化物から成ることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 前記6層の積層膜は、前記透明フィルムを冷却させながら、ロール・ツー・ロールのスパッタリング法により製造されて成ることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
- 表示装置の表示面上に配置され、上部電極フィルム及び下部電極フィルムが所定の間隔を保持して積層されて成るタッチパネルであって、
前記上部電極フィルム及び/又は下部電極フィルムは、
透明フィルムの一方の面に、酸素欠損金属酸化物層、第1の高屈折率層、第1の低屈折率層、第2の高屈折率層、第2の低屈折率層、透明導電層がこの順に積層された6層の積層膜が形成されて成る
ことを特徴とするタッチパネル。
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