JP2007297656A - 鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(iv)酸アンモニウムの精製方法 - Google Patents

鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(iv)酸アンモニウムの精製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムから、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収する方法を提供する。
【解決手段】下記の(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする。
(1)鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを、塩酸中に添加し、懸濁させた後、得られた懸濁液を加熱しながら、酸化還元電位を調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを溶解する。
(2)得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、アルカリを添加してpHを調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する。
(3)鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度、塩化アンモニウム濃度、かつ酸化還元電位を調整した後、加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。
【選択図】なし

Description

本発明は、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法に関し、さらに詳しくは、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムから、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収する方法に関する。
イリジウムは、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びオスミウム等の白金族元素とともに触媒、電子部品等の工業材料として利用されている。これらの分野では、特定の不純物元素が特に少ない高純度の製品が求められている。ところで、白金族元素は、資源的に希少な元素で、白金族元素を高品位で含有する白金鉱石のような天然鉱物での産出は少なく、工業的に生産される白金族元素の原料としては、銅、ニッケル、コバルトなどの非鉄金属製錬からの副産物、自動車排ガス処理触媒など各種の使用済み廃触媒などからのものが大部分を占めている。例えば、この非鉄金属製錬からの副産物は、製錬原料の中にごく微量含有されている白金族元素が、その化学的性質から主金属である銅、ニッケルなどの硫化濃縮物及び粗金属の中に濃縮され、さらに電解精製など主金属回収工程で残滓等として白金族元素を含む貴金属濃縮物で分離されるものである。
この濃縮物には、主金属である銅、ニッケル等と共に、他の構成元素である金、銀等の貴金属、鉛、ビスマス、セレン、テルル、ヒ素、アンチモン等が、白金族元素に比べて高含有量で共存するのが通常である。その後、金、銀の回収を経て、白金族元素の回収が行われるが、通常は一旦液中に浸出してから溶媒抽出、イオン交換法等で精製分離して回収される。
このような白金族元素の回収プロセスにおいて、通常イリジウムは精製工程の最後に結晶性が良好なヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩として分離回収され、そのまま製品の出発物質、或いは金属状イリジウム及び酸化イリジウムの原料とすることができる。このヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩として分離する方法(例えば、特許文献1参照。)では、共存する不純物元素の大部分を析出結晶から分離することができるとしている。しかしながら、他の白金族元素の塩と、鉛、スズ等の白金族元素と[MX2−(ここで、式中Mは金属、及びXはハロゲンを表す。)型の錯塩を形成する元素はイリジウム中に混入し、分離することができないという問題があった。
また、イリジウムを含む水溶液を還元し、不純物元素を金属状態で分離する方法(例えば、特許文献2参照。)、再結晶精製により母液に不純物元素を分離する方法(例えば、特許文献3参照。)では、通常、分離困難なヘキサクロロイリジウム(IV)酸イオン:[IrCl2−と同じ[MX2−型の錯体を形成する不純物元素が共存しても、これらを分離することできるとしている。しかしながら、これらの提案では、[MX2−型の錯塩として存在する不純物元素の全てに対応することができるが、鉛については、[MX2−型の錯塩以外にも溶解度が低い化合物を形成しやすいので、これがイリジウムと全く挙動を共にする場合があり、この場合には、鉛をヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩から分離することが非常に困難であった。
一方、白金族元素を含有する水溶液から鉛等の陽イオン不純物元素をその形態にかかわらず分離する方法として、水に難溶性なカルボン酸で抽出する方法(例えば、特許文献4参照。)が知られている。しかしながら、この方法に従い、イリジウムを含有する水溶液中の鉛を抽出分離する際には、pH上昇の過程において、ヘキサクロロイリジウム(III)酸イオンが加水分解する。その結果、たとえ再度、液を酸化してもヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩の結晶化が困難になり、結晶が析出しても収率が非常に低くなるという問題があった。
以上の状況から、不純物元素を含む白金族元素の原料からイリジウムを分離回収する際に、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収することが求められている。
特開2004−99975号公報(第1頁、第2頁) 特開2004−190058号公報(第1頁、第2頁) 特開2005−97695号公報(第1頁、第2頁) 特開平8−225862号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムから、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法について、鋭意研究を重ねた結果、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを、特定の条件で溶解する工程、得られた溶解液から特定の抽出剤により鉛を選択的に抽出し分離する工程、及び鉛を分離した溶解液から特定の条件でヘキサクロロイリジウムIV)酸アンモニウムを結晶化して回収する工程からなる一連の方法により、鉛を溶解度が低い化合物として含有するイリジウム塩から、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法が提供される。
(1)鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム粗原料を、濃度0.5〜2mol/Lの塩酸中に添加し、スラリー濃度が50〜150g/Lとなる懸濁液を調製した後、得られた懸濁液を40〜80℃の温度に加熱しながら、水和ヒドラジンを添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して300〜700mVに調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを鉛とともに溶解させる。
(2)得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、混合しながら、アルカリを添加してpHを5〜7に調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する。
(3)鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度を1〜5mol/L、塩化アンモニウム濃度を50〜150g/L、かつ酸化剤の存在下に酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して700〜1100mVに調整した後、60〜100℃の温度に加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、上記(2)の工程で、ネオデカン酸の添加割合は、溶解液中に含有する鉛1gに対し0.01〜10Lであることを特徴とする鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、上記(2)の工程で、アルカリは、水酸化ナトリウムであることを特徴とする鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、上記(3)の工程で、酸化剤は、亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法が提供される。
本発明の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法は、鉛を含有するイリジウム塩から、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収することができるので、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法を詳細に説明する。
本発明の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法は、下記の(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする。
(1)鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム粗原料を、濃度0.5〜2mol/Lの塩酸中に添加し、スラリー濃度が50〜150g/Lとなる懸濁液を調製した後、得られた懸濁液を40〜80℃の温度に加熱しながら、水和ヒドラジンを添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して300〜700mVに調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを鉛とともに溶解させる。
(2)得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、混合しながら、アルカリを添加してpHを5〜7に調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する。
(3)鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度を1〜5mol/L、塩化アンモニウム濃度を50〜150g/L、かつ酸化剤の存在下に酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して700〜1100mVに調整した後、60〜100℃の温度に加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。
本発明において、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを、上記条件で溶解する工程、得られた溶解液から抽出剤としてネオデカン酸により鉛を選択的に抽出し分離する工程、及び鉛を分離した溶解液から上記条件でヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する工程からなる一連の工程を行なうことが重要である。これにより、鉛を含有するイリジウム塩から、鉛の含有形態にかかわらず鉛を確実に分離するとともに、高収率でイリジウムを回収することができる。
1.(1)の工程
上記工程は、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム粗原料を、濃度0.5〜2mol/Lの塩酸中に添加し、スラリー濃度が50〜150g/Lとなる懸濁液を調製した後、得られた懸濁液を40〜80℃の温度に加熱しながら、水和ヒドラジンを添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して300〜700mVに調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを鉛とともに溶解させる工程である。
上記工程で用いる鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムとしては、特に限定されるものではなく、鉛等の不純物元素を含有する原料から種々の方法で分離精製法により得られたものであり、その中で特に鉛が共沈された難分離性の化合物を含むものである。このような鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム中の鉛の含有量としては、その原料、分離精製法等により異なるが、通常、0.1〜5重量%である。
なお、本発明の精製方法は、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムのみならず他のヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩等のイリジウム化合物に対しても適用することができる。しかしながら、イリジウムの金属、及びその他化合物、さらに触媒等の応用製品の前駆体としては、もっぱらヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムが使用されている。
上記工程において、下記の反応式(1)に表す反応により、水和ヒドラジンの添加により、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムが溶解される。すなわち、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムはそのままでは水に対する溶解度が低いため、化学的に不純物元素の分離を行なうことが困難である。そこで、還元剤によりヘキサクロロイリジウム(III)酸に還元して、溶解度を上昇させる。
反応式(1):4[IrCl2−+N=4[IrCl3−+N+4H
上記還元剤としては、イリジウムを金属まで還元する恐れがない緩和な還元剤であり、、かつイリジウムに対して不純物とならない化合物であることが必須である。このような還元剤としては、水和ヒドラジン、ヒドラジン一塩酸塩、ヒドラジン二塩酸塩、ヒドラジン硫酸塩、二酸化硫黄、亜硫酸塩等が挙げられるが、経済性等からヒドラジン水和物が最も適している。すなわち、二酸化硫黄、亜硫酸塩、及びヒドラジン硫酸塩は、反応終了後に硫酸イオンが生成し、これが鉛(II)イオンと反応して硫酸鉛(II)の難溶性塩を形成すること、及び、金属、触媒等多くの用途においては、イオウの含有は望まれないことから好ましくない。また、ヒドラジン化合物では、水和ヒドラジン以外は生産量が少なく高価である。
上記工程において、まず、鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを、濃度0.5〜2mol/Lの塩酸中に添加し、スラリー濃度が50〜150g/Lになるように懸濁して、懸濁液を得る。ここで、還元反応に先立ち、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを塩酸中に懸濁することが肝要である。これによって、アルカリ性であるヒドラジン水和物の添加に伴なう中和反応により、イリジウムの水酸化物沈殿が形成されることを防止する。
すなわち、上記塩酸濃度が、0.5mol/L未満では、ヒドラジンによるアルカリで局部的に水酸化物を形成する恐れがある。一方、塩酸濃度が2mol/Lを超えると、ヒドラジンの還元力が低下してしまう。これは、塩酸濃度が高いほどヒドラジンの還元力が低下するからである。
また、上記スラリー濃度が50g/L未満では、結晶化時の収率が低下する。これは、スラリー濃度が低くなるほど、析出する結晶に対して溶解による損失量の比率が大きくなるためである。一方、スラリー濃度が150g/Lを超えると、ヒドラジンのヘキサクロロイリジウム(III)酸塩の結晶又はその他塩類が析出する可能性が上昇する。
上記工程において、次に、得られた懸濁液を40〜80℃の温度に加熱しながら、水和ヒドラジンを添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して300〜700mVに調整する。
すなわち、上記還元反応の温度としては、高温ほど還元速度が上昇するが、80℃を超えると、ヒドラジニウム塩の煙霧の発生が顕著となるので好ましくない。一方、40℃未満では、反応が遅い。
また、上記還元電位については、[IrCl2−+e=[IrCl3−の反応の標準酸化還元電位は、水素電極に対し0.87Vであるので、銀/塩化銀電極に対しては0.67V付近で還元反応が最も進行することになる。したがって、酸化還元電位が銀/塩化銀電極に対して700mV以下であることが必要不可欠な条件である。一方、酸化還元電位が銀/塩化銀電極に対して300mV未満では、未反応のヒドラジンが水溶液中に残留し、ヒドラジンのヘキサクロロイリジウム(III)酸塩の結晶が析出する。
上記工程において、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの結晶は、最終的には全て溶解する。このとき、鉛が同形の結晶を形成していた場合には、下記の反応式(2)に従って還元溶解する。
反応式(2):2[PbCl2−+N=2[PbCl2−+N+4H+4Cl
ただし、他の難溶性鉛化合物が存在する場合にも、上記工程において、塩酸が添加され、かつ加熱されることにより同様に溶解する。この難溶性鉛化合物は、単に酸濃度と温度差により溶解しているだけであるので、後続の工程でイリジウム化合物が結晶化されると同時に、再び析出して結晶中に混入してしまう。したがって、次の(2)の工程で全ての形態の鉛化合物を分離することが重要である。
2.(2)の工程
上記工程は、得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、混合しながら、アルカリを添加してpHを5〜7に調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する工程である。
上記工程において、イリジウムと鉛を含む溶解液は、ネオデカン酸と混合され、抽出剤中に鉛が抽出される。すなわち、鉛とイリジウムを含む水溶液から、アルカリでpH調整して酸性抽出剤により、鉛を抽出することができる。ここで、酸性抽出剤としては、特に高級カルボン酸が鉛の抽出率が高いので好ましい。この高級カルボン酸として、実用的にはネオデカン酸、例えば商品名バーサテイック アシッド−10(VA−10、シェル化学(株)製)が、最も適している。すなわち、VA−10を用いれば、鉛がクロロ錯塩を形成していたり、或いは難溶性塩を形成する陰イオンが共存していても、定量的に鉛(II)イオンを抽出することができる。
反応式(3):Pb2++2H−VA+2OH=Pb(VA)+2H
(ここで、式中のH−VAはバーサチック酸を表す。)
すなわち、上記工程でpHが5未満では、鉛の抽出率が急激に低下する。一方、pHが7を超えると、下記の反応式(4)に示すようなヘキサクロロイリジウム(III)酸の加水分解反応が進行しやすく、また、VA−10自体もナトリウム塩となって溶解するので不都合である。
反応式(4):[IrCl3−+HO=[IrCl(HO)]2−+Cl
上記工程で用いるアルカリとしては、特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等がも用いられるが、この中で、連続的にpHを制御するためには、溶解度が高く最も使用しやすい水酸化ナトリウムが好ましい。
上記反応温度については、特に限定されるものではなく、ヘキサクロロイリジウム(III)酸の加水分解を防止するため低いほど好ましい。また、溶媒抽出時の溶媒の揮発性を重視すると、常温付近で実施することが望ましい。
上記工程においては、通常の溶媒抽出方法が用いられる。例えば、ミキサーセトラー方式の溶媒抽出装置を用いて、反応槽内で上記溶解液とネオデカン酸抽出剤とが撹拌混合され、鉛が抽出剤中に移行し、その後水相と有機相に分離される。ここで、必要に応じて、抽出剤には所望の粘度に調整するため石油系の溶剤からなる希釈剤が配合される。また、pH調節剤が添加される。さらに、抽出剤中に抽出された鉛は、既存の方法で回収されることができる。
上記工程で用いるネオデカン酸の添加割合としては、特に限定されるものではなく、溶解液中に含まれる鉛量等により選ばれるが、溶解液中に含有する鉛1gに対し0.01〜10Lが好ましい。すなわち、ネオデカン酸の添加割合が、鉛1gに対して0.01L未満では、鉛の抽出率が低く、一方、10Lを超えると、工業的な抽出操作上、鉛に対して逆抽出に大量の酸を必要とし、希薄な廃液が大量に発生するため好ましくない。
3.(3)の工程
上記工程は、鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度を1〜5mol/L、塩化アンモニウム濃度を50〜150g/L、かつ酸化剤の存在下に酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して700〜1100mVに調整した後、60〜100℃の温度に加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する工程である。
上記工程において、鉛を分離した溶解液中のヘキサクロロイリジウム(III)酸を、下記の反応式(5)にしたがって酸化して、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸を再生させ、その後ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化する。
反応式(5):[IrCl3−=[IrCl2−+e
上記工程において、まず、鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度を1〜5mol/L、塩化アンモニウム濃度を50〜150g/L、かつ酸化剤を添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して700〜1100mVに調整する。
すなわち、(1)及び(2)の工程において、かなりの割合のヘキサクロロイリジウム(III)酸が反応式(4)にしたがって加水分解しており、このまま酸化のみを行なっても、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの結晶の析出量は限られる。したがって、再び、クロロ錯体にするため、塩酸を添加して加熱しつつ、酸化することが重要である。
ここで、上記塩酸濃度、塩化アンモニウム濃度、及び酸化還元電位の調整の順番は特に限定されず、最終的な状態が上記範囲内であれば問題ない。
すなわち、上記塩酸濃度が1mol/L未満では、ヒドロキシ錯体が形成されていた場合、OHを完全に中和除去することが困難である。一方、塩酸濃度が5mol/Lを越えると、塩化アンモニウムの溶解度が低下するので反応に進行にとって不都合であり、また、液中の塩化ナトリウムが結晶しやすくなるので製品を汚染する原因となる。
また、塩化アンモニウムは共通イオン効果によりヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの結晶析出を完結させるために使用される。塩化アンモニウム濃度が50g/L未満では、効果が不十分であり、一方、塩化アンモニウム濃度が150g/Lを超えると、既に塩化ナトリウム及び塩酸が液中に共存しているため、溶解が不完全となり、残存した塩化アンモニウムが不純物として結晶に混入する恐れがある。
また、上記酸化還元電位が銀/塩化銀電極に対して700mV未満では、ヘキサクロロイリジウム(III)酸イオンのヘキサクロロイリジウム(IV)酸イオンへの酸化が不完全になる。一方、酸化還元電位が銀/塩化銀電極に対して1100mVを超えると、塩素ガスが発生しやすくなり、またアンモニウムイオンの分解も始まるため好ましくない。
上記工程に用いる酸化剤としては、特に限定されるものではなく、イリジウムに対して不純物として残存しにくい化合物が用いられ、過酸化水素、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム等が挙げられるが、この中で、特に自己分解が少なく、かつ反応速度が速いため、簡便に使用することができる亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
上記工程において、次に、60〜100℃の温度に加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。すなわち、塩酸濃度、塩化アンモニウム濃度、及び酸化還元電位の調整により、結晶の析出が認められるが、この段階での析出量は不十分であり、加熱して昇温するにしたがって、結晶析出量が徐々に増加する。ここで、温度が60℃未満では、結晶の析出が不十分である。一方、温度が100℃を超えると、加圧容器が必要となり経済的でない。
また、この反応の終点判定は、次のように行なわれる。すなわち、昇温前の段階では、液は濃褐色であるが、反応の進行に伴ない透明化し、色の変化がなくなった時点で、液の冷却を行なう。その後、濾過により、鉛含有量が低い、例えば、通常のICP発光分析法での検出限界である0.02重量%以下のヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの結晶が得られる。
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例で用いた金属の分析はICP発光分析法で行った。
(実施例1)
まず、(1)の工程として、鉛を全体に対し0.26重量%含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム1000gを、濃度1mol/Lの塩酸10L中に懸濁した。続いて、懸濁液を60℃に加温した後、水和ヒドラジンを添加して、銀/塩化銀電極に対して513mVに調整し、結晶を全て溶解した。
次に、(2)の工程として、得られた溶解液を25℃まで放冷した。その後、溶解液の全量に、抽出剤として商品名VA−10(シェル化学製)の1Lと希釈剤として商品名テクリーンN−20(新日本石油(株)製)の1Lを添加し、攪拌機で均一混合しながら、濃度18重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH5.9に調整した。さらに引き続いて、このpHで維持し、pHが安定して水酸化ナトリウム水溶液の添加がなくなった後、撹拌を終了させ有機相を分離した。
最後に、(3)の工程として、得られた水相部分の溶液11.4Lに濃度35重量%の塩酸3Lを添加した。このときの塩酸濃度は2.4mol/Lであった。続いて、塩化アンモニウム1.44kgを添加し溶解した。このときの塩化アンモニウム濃度は100g/Lであった。さらに引き続いて、濃度25重量%の亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して880mVに調整した。この時点で、結晶の析出が認められたが、液は濃褐色のままであった。次いで、80℃まで昇温すると、結晶析出量が徐々に増加し、同時に液の色が薄くなった。1時間経過後、液の色に変化がなくなった時点で、40℃まで冷却した。その後、濾過して結晶を分離した。得られた結晶を、濃度100g/Lの塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、その後、50℃で乾燥したところ、962gのヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムが回収された。また、得られた結晶の一部を王水で分解溶解し、鉛の含有量を分析したところ、分析検出限界の0.02重量%以下であった。
以上より、実施例1では、以下の(1)〜(3)の工程において、所定の条件で本発明の方法に従って行なわれたので、鉛含有量が低いヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムが高収率で得られることが分かる。
(1)鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを、塩酸中に添加し、懸濁させた後、得られた懸濁液を加熱しながら、酸化還元電位を調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを溶解する。
(2)得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、アルカリを添加してpHを調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する。
(3)鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度、塩化アンモニウム濃度、かつ酸化還元電位を調整した後、加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。
以上より明らかなように、本発明の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法は、特に鉛含有量に低い高純度のイリジウムを製造する分野で利用される精製方法として好適である。

Claims (4)

  1. 下記の(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法。
    (1)鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウム粗原料を、濃度0.5〜2mol/Lの塩酸中に添加し、スラリー濃度が50〜150g/Lとなる懸濁液を調製した後、得られた懸濁液を40〜80℃の温度に加熱しながら、水和ヒドラジンを添加して酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して300〜700mVに調整することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを鉛とともに溶解させる。
    (2)得られた溶解液に抽出剤としてネオデカン酸を添加し、混合しながら、アルカリを添加してpHを5〜7に調整することにより、該溶解液中に含まれる鉛を選択的に抽出剤中に抽出し分離する。
    (3)鉛を分離した溶解液を用いて、塩酸濃度を1〜5mol/L、塩化アンモニウム濃度を50〜150g/L、かつ酸化剤の存在下に酸化還元電位を銀/塩化銀電極に対して700〜1100mVに調整した後、60〜100℃の温度に加熱することにより、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムを結晶化して回収する。
  2. 上記(2)の工程で、ネオデカン酸の添加割合は、溶解液中に含有する鉛1gに対し0.01〜10Lであることを特徴とする請求項1に記載の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法。
  3. 上記(2)の工程で、アルカリは、水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法。
  4. 上記(3)の工程で、酸化剤は、亜塩素酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1に記載の鉛を含有するヘキサクロロイリジウム(IV)酸アンモニウムの精製方法。
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