JP3823307B2 - 高純度コバルト溶液の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種不純物を含むコバルト溶液から該不純物を除去し高純度なコバルト溶液を工業的に有利に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来コバルトの工業的用途としては、永久磁石、磁性合金、高速度鋼、超合金などが挙げられ、通常酸化物、硫化物などの形で産出するが、銅製錬やニッケル製錬の副産物として産出するされるものが大半を占めるので、コバルトを製造するにはニッケルや銅を始めとする不純物を分離除去することが不可欠である。
【0003】
一般には、まずコバルトを含む原料を塩酸、硫酸などの鉱酸で溶解してコバルト溶液を得る。コバルトの原料には種々の元素が含まれているため、ここで得られるコバルト溶液にも各種不純物が含有されている。そして該コバルト溶液中の各種の不純物を除去し、その後電解工程によりメタルとしてコバルトを回収することが一般的である。この電解工程で得られるコバルトメタルは、使用する電解液の組成によりその純度が定まるため、高純度コバルト溶液を得るためには該コバルト溶液中の不純物を効率的に除去しておく必要がある。
【0004】
さてコバルトと電気化学的に同程度あるいはより貴な金属は、コバルトとともに電析されるが、カルシウムなどの卑な金属は多量にコバルト溶液中に存在すると石膏などの固形物が生成し、これが電着コバルトメタルを汚染するため、これら元素がコバルト溶液に残存すると高純度のコバルトメタルを製造することは難しくなり、電解工程前に低濃度まで確実に除去することが必要である。
また不純物を除去するために加えられる薬剤自体にも各種不純物が含まれ、したがって原料中に含まれていない微量の不純物の混入も避けられない。そのため多くの場合、従来の洗浄処理後もコバルト溶液にはニッケル、亜鉛、鉄、銅、カルシウム、マンガンなどが残存してしまう。
【0005】
ニッケルとコバルトは化学的性質が類似しているため相互の分離が困難であるが、近年種々の分離除去技術が提案され、現在では溶媒抽出法によりニッケルとコバルトの分離は良好に行われている。
例えばコバルトは塩化浴中で陰イオン錯体CoCl4 2−を形成するのに対し、ニッケルは安定なクロロ錯体を形成しないため、陰イオン交換体であるアミン系抽出剤を使用して塩化物からの相互分離が行われており、この場合コバルトは有機相に抽出され、有機相に抽出されたコバルトは水などの塩素イオン濃度の低い水溶液を使用してコバルトを回収することができる。またアルキルホスホン酸やアルキルホスフィン酸などのリン酸系抽出剤を用いて水溶液中でコバルトとニッケルを分離する方法も実施されている。このように従来分離が困難であったニッケルを含まないコバルト溶液の製造は、前記した抽出剤を用いることにより可能となっている。
【0006】
しかしながら、コバルト溶液に含まれる亜鉛、鉄、銅、マンガン、カルシウムなどの不純物はニッケル分離工程においてもコバルトと同様の抽出挙動を示すことが多く、ニッケルが分離された後にもコバルト溶液にはこれらイオンが残留にしてしまう。
例えばアミン系抽出剤を使用する分離方法では、亜鉛、鉄、銅イオンはコバルトと同様に塩素イオンと錯イオンを形成するためコバルトとともにアミン系抽出剤に抽出され、さらに逆抽出されて再びコバルト溶液に含まれることになる。
【0007】
一方ニッケルとの分離性の優れたリン酸系抽出剤[例えばCyanex272(Cytec(社)製:商品名)やPC−88A(大八化学(社)製:商品名)など]を用いると、亜鉛や鉄はコバルトに対して優先的に抽出されるため、コバルト溶液からの除去は可能である。しかしながら銅、マンガン、カルシウムはコバルトと同程度の抽出性を示すので、このようなリン酸系抽出剤で処理した後にもコバルト溶液には銅、マンガン、カルシウムが含まれることになる。
したがってニッケルを分離した後には、このようにコバルトと挙動をともにする亜鉛、鉄、銅、マンガンおよびカルシウムを除去することが必要となる。
かかる元素はこれまでは以下のような方法により分離されていた。すなわち銅は硫化水素や硫化ナトリウムをコバルト溶液に添加することにより硫化物として除去することができる。これはコバルトに比べ銅硫化物の安定性が高いことに基づくものであり、条件によっては亜鉛も除去できる。しかし硫化水素や硫化ナトリウムのような有毒ガスを使用すること、あるいは反応終了後も硫化水素ガスが溶液に微量溶解しており、硫化コバルトが徐々に生成するため脱気を行ってコバルト溶液から硫化水素ガスを除去する必要があること、また多量の硫化水素を使用しなければ亜鉛が除去できないことなど操業上に問題があった。
【0008】
また、鉄やコバルトメタルを添加してセメンテーションさせ銅メタルとして除去するセメンテーション法も提案されている。しかしこの方法では銅イオンは比較的簡単に還元されてメタルになるのでコバルト溶液から容易に除去できるものの、鉄メタルを使用した場合には反応により鉄イオンがコバルト溶液中に入り込んで溶液を汚染することになり、またコバルトメタルを使用した場合には、微細に粉砕したコバルトメタルが必要であり、また生成する銅メタル中にコバルトが残留するなどの不都合があった。
さらにカルシウムの除去は硫酸ナトリウムや硫酸などを添加しカルシウムイオンを硫酸イオンと反応させ石膏を生成させてこれを除去する方法が知られているが、この場合、石膏が水に対して比較的大きな溶解度を有するために完全な除去は困難であった。
【0009】
また鉄あるいはマンガンは上記のいずれの方法でも十分に除去できず、銅、亜鉛、カルシウムの分離除去方法とは別に酸化中和法などにより除去しなければならなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このようにコバルトを含む溶液からの各種不純物の分離除去にはそれぞれのプロセスが開発されているものの、各種不純物の分離除去が不十分であることに加え、各元素に対しそれぞれ別個の除去工程が必要であり工程数が非常に多くなるなど問題があった。
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決し、コバルト溶液から鉄、マンガン、カルシウム、銅を不純物として効率的に除去して高純度コバルト溶液を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この上記目的を達成するために種々検討した結果、本発明の第1の実施態様は、不純物として鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅を含有する塩化コバルト溶液を、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHが4.0〜5.0になるように制御して酸化し中和して生成した鉄、マンガン、銅の沈殿物を除去する第1の工程と、前記塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび前記第1の工程で残留した微量の不純物をビス ( 2‐エチルへキシル ) リン酸により溶媒抽出する第2の工程と、該第2の工程で得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄し、不純物とともに前記有機相に共抽出されたコバルトを回収する第3の工程と、該第3の工程で得られた有機相を鉱酸で処理し、該有機相に残存している不純物を逆抽出して有機相を再生する第4の工程とからなることを特徴とするものである。
【0013】
また第2の実施態様は、不純物として鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅を含有する塩化コバルト溶液を、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHが3.0〜4.0になるように制御して酸化しながら保持して鉄、マンガンおよび銅の一部を沈殿させ、つぎに酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900 mVで、かつpHを4.0〜5.0として保持して銅の大部分を沈殿させた後、中和して生成した沈殿物を除去する第1の工程と、前記塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび前記第1の工程で残留した微量の不純物をビス ( 2‐エチルへキシル ) リン酸により溶媒抽出する第2の工程と、該第2の工程で得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄し、不純物とともに前記有機相に共抽出されたコバルトを回収する第3の工程と、該第3の工程で得られた有機相を鉱酸で処理し、該有機相に残存している不純物を逆抽出して有機相を再生する第4の工程とからなることを特徴とするものである。
【0014】
まず本発明の第1の実施態様では、鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅などのような不純物を含有する塩化コバルト溶液を、塩素、次亜塩素酸またはオゾンなどの酸化剤を使用して酸化し、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつ、pHが4.0〜5.0になるように制御し、主に鉄、マンガン、銅の水酸化物あるいは酸化物を除去し、ついで中和生成させる。これらの水酸化物あるいは酸化物を濾過除去した後、塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび残留した微量の銅をビス(2‐エチルヘキシル)リン酸により溶媒抽出して除去する。つぎに得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄して不純物とともに該有機相に共抽出されたコバルトを回収し、さらにこの工程で得られた有機相を塩酸や硫酸のような鉱酸で処理し、有機相に抽出されている不純物を逆抽出し、有機相を再生する方法であり、高純度コバルト溶液が効率的に製造できる。
【0015】
また第2の実施態様では、不純物を含有する前記塩化コバルト溶液を、まず塩素、次亜塩素酸またはオゾンなどの酸化剤を使用して酸化し、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHが、3.0〜4.0になるように制御し、まず鉄、マンガン、銅の一部の水酸化物あるいは酸化物を除去し、つぎにpHを4.0〜5.0に上昇させて、引続き銅の水酸化物あるいは酸化物の大部分を除去した後、ついで中和生成させる。これらの水酸化物あるいは酸化物を濾過除去した後、前記と同様に塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび残留した微量の銅をビス(2−エチルヘキシル)リン酸により溶媒抽出して除去し、その後得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄してコバルトを回収し、さらにこの工程で得られた有機相を塩酸や硫酸のような鉱酸で処理し、有機相に抽出されている不純物を逆抽出し、有機相を再生させる方法であり、この第2の実施態様は、第1の実施態様に比較して、第1の工程である酸化中和工程におけるコバルトの沈殿量を低下させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明は酸化中和工程とリン酸溶媒抽出工程の2つの主要工程を含む工程を経ることにより塩化コバルト溶液から効率的に各種不純物を除去することを特徴とするものである。
第1の工程である酸化中和工程は、塩化コバルト溶液中の鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅などのイオンを高酸化状態にすることで塩化コバルト溶液中での安定度を低下させ、水酸化物あるいは酸化物として塩化コバルト溶液から除去する工程であり、特に鉄、マンガンは高酸化状態にすることでイオンとしての安定性が低下し、塩化コバルト溶液から容易に除去できる。
例えば塩化コバルト溶液がpH3.0以上のとき、酸化状態を示す溶液の酸化還元(レドックス)電位は、Ag/AgCl電極基準で850mV以上とし、pH4.0以上のとき600mV以上とすることが必要である。
【0017】
また塩化コバルト溶液では、銅はpHを上昇するとオキシクロライドが生成するので、4.0までpHを上昇させれば銅は一部除去できる。その結果、後工程の溶媒抽出で安定して銅を除去することができる。したがって通常銅の除去のために行われるセメンテーション法や硫化を行わなくてもよく、結果として塩化コバルト溶液を、pHが4.0〜5.0で、かつ酸化還元電位が、Ag/AgCl電極基準で600mV〜900mVとなるよう制御すれば、鉄、マンガン、銅の大部分が一括で除去できるのである。
ただし、pHを4程度で制御した場合、pH3の付近で制御した場合に比較して、塩化コバルト溶液中の鉄、マンガン、銅の残留量が低下する傾向がある。したがって、コバルトの沈殿物を極力低下させ、鉄、銅、マンガンをほぼ完全に除去するためには、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHを3.0〜4.0に保持する第1段処理と、続いて酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHを4.0〜5.0に保持する第2段処理からなる2段のpH調整を実施する方法が効果的である。このような2段のpH調整による処理法においては、第1段処理で鉄、マンガンを沈殿させた後には濾過分離を別途行う必要がなく、第2段処理において銅を沈殿させた後に、まとめて一括濾過分離を行えばよい。
【0018】
ここで塩化コバルト溶液を、pHが4.0〜5.0でかつ酸化還元電位が、Ag/AgCl電極基準で600mV〜900mVとなるように酸化しながら制御するために使用する酸化剤は、鉄、マンガンイオンをそれぞれ価数+3、+4までに酸化するに十分な酸化力を有する塩素、次亜塩素酸、オゾンなどのような一般的に使用されるものが好ましい。また中和剤は水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸コバルトが使用できる。しかし塩化コバルト溶液中のナトリウムなどの蓄積が問題となる場合には、炭酸コバルトや水酸化カルシウムが好都合である。
【0019】
そして第1の工程である酸化中和工程の後に、後述する溶媒抽出によりカルシウムが除去できるので、塩化コバルト溶液への蓄積を考慮することなく水酸化カルシウムや炭酸カルシウムを使用することができる。
引続き行われる第2の工程では、抽出剤としてのビス ( 2−エチルへキシル ) リン酸により残留した不純物を溶媒抽出により除去する。この抽出剤を用いれば亜鉛およびカルシウムならびに前記第1の工程で残留した微量の銅をコバルトに対して選択的に抽出除去できる。
【0020】
この抽出剤は酸性抽出剤でありpHが高いほど不純物を効率的に抽出することができる。しかし塩化コバルト溶液中に残したいコバルトも高pHでは抽出されてしまい、中和剤が過剰に消費されることになる。したがって水相のpHは2.0から4.0に調整することが望ましい。pH調整するために使用される中和剤は特に制限されものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物や炭酸ナトリウム、炭酸コバルトなどの炭酸塩あるいはアンモニアの使用が好ましい。
水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムを使用すると、塩化コバルト溶液中にナトリウムが混入するため、これを回避しなければならない場合には水酸化カルシウムや炭酸コバルトを使用することが好都合である。亜鉛、カルシウムを抽出するための最適pHは2.0から4.0であり、この範囲のpHでは炭酸コバルトを使用しても未溶解、未反応の炭酸塩が水相中に残ることはない。
【0021】
さらに第3の工程において塩化コバルト溶液中の不純物を抽出した後に当該抽出有機相は、pH調整された水溶液で洗浄し、不純物とともに有機相に共抽出されたコバルトを回収する。
【0022】
続いて第4の工程としての逆抽出工程では有機相中に抽出されている亜鉛、カルシウムなどを逆抽出して除去し、有機相を再生する。再生された有機相は再び抽出工程に戻されることになる。
さて不純物とともに共抽出されたコバルトを含む有機相を、第3の工程において水溶液で洗浄することによりコバルトが回収されるが、この際にコバルトはpH1.5〜3.0の範囲で洗浄する。このpH範囲では、除去目的元素である亜鉛やカルシウムはその大部分が有機相に抽出されたままであり、洗浄後の水溶液には亜鉛やカルシウムはほとんど含まれていない。前記したpH調整には、塩酸、硫酸、硝酸などが使用できるが、硝酸は有機相の劣化のおそれがあるので、塩酸あるいは硫酸が好ましい。その後0.5N以上の濃度の塩酸あるいは硫酸を用いて有機相に残存する全ての不純物を逆抽出して有機相を再生し、これを抽出工程へ繰り返す。
そして不純物の抽出は少なくとも連続向流2段の溶媒抽出槽で行われ、通常の場合ミキサーセトラーを使用することができる。抽出が2段で行われる場合に、抽出剤の供給される抽出段を第1段とすれば、不純物を含んだコバルト原液は、第2段目の抽出槽に供給される。
【0023】
洗浄工程は前記した方法で得られた有機相をpHの制御された水溶液で洗浄することにより実施される。
不純物とともに共抽出されたコバルトを、少なくとも1段のミキサーセトラーで回収する。有機相の洗浄後に得られるコバルトを含有する水溶液は、抽出工程にそのまま戻すことができ、あるいは場合によっては中和などの処理を施し、処理始液と混合して酸化中和工程に繰り返すこともできる。
【0024】
さらに第4の工程において、前記第3の工程で得られた有機相を塩酸や硫酸のような鉱酸で処理して該有機相中の亜鉛およびカルシウムを除去し、有機相を再生する。水溶液に鉄イオンが存在しても本抽出剤で完全に抽出することは可能であるが、一旦抽出された鉄は強酸を使用しても完全に逆抽出することが難しい。
しかしながら本発明では前工程の酸化中和処理により鉄が水溶液から完全に除去されているため、このような鉄の逆抽出の問題は生じない。
【0025】
通常溶媒抽出剤は粘度が高く希釈して使用されることが多い。本発明で使用するビス(2−エチルヘキシル)リン酸は、少ない有機溶媒量で多量の塩化コバルト溶液中の不純物を抽出できるので好都合であるが、粘性が高く抽出操作がし難い。そこで本発明でもビス(2−エチルヘキシル)リン酸を希釈して使用するが、その希釈率は特に制限されるものではなく、不純物濃度に応じて決定される。しかしケロシンなどにより溶媒抽出剤濃度を1〜50%v/v(体積パーセント)の範囲とすることが好ましい。
抽出時の温度も特に制限されるものではないが、高温ほど水溶液および抽出剤の粘度が下がり、抽出反応後の水相/有機相の2相分離に要する時間が短縮できるので、抽出反応は高温で行うことが好ましい。ただし抽出剤や抽出剤の粘度を低下させるために加えられる希釈剤が温度とともに揮発したり、引火の可能性があるため30〜60℃の操作が望ましい。
【0026】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
この実施例においては第1の工程である酸化中和工程によってコバルト溶液から除去された各種不純物について検証する。
コバルト:81.7g/リットル、鉄:0.021g/リットル、マンガン:0.099g/リットル、亜鉛:0.001g/リットル、カルシウム:2.9g/リットルおよび銅を0.008g/リットル含む塩化コバルト溶液に対して、炭酸コバルトおよび塩素ガスを用いてpHが4.0で、酸化還元電位が687mV(Ag/AgCl電極基準)となるように制御して45℃で、1時間後、4時間後の各種不純物の除去状態を分析して、その結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表1から分かる通り、4時間後には鉄、マンガンおよび銅はいずれも0.001g/リットル未満の濃度になりほぼ完全に除去することができた。
【0029】
[実施例2]
この実施例においては、本発明の第1の工程におけるpHと酸化還元電位の関係を各種不純物の除去率に基づいて検証した。
コバルト:86.9g/リットル、鉄:0.020g/リットル、マンガン:0.091g/リットルおよび銅:0.070g/リットルを含有する塩化コバルト溶液を、炭酸コバルトおよび塩素ガスを用いて種々のpHおよび酸化還元電位で45℃で4時間調整し続け、生成した沈殿物を濾過した後、該濾液を分析して、その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2より分かる通り、濾液のpHが高いほど銅の除去率が高くなり、pH4.0以上となると銅の大部分が除去された。
【0032】
[実施例3]
この実施例では第2の工程である溶媒抽出工程から第4の工程に至るまでの各種不純物の除去効果について検証した。
実施例1と同様な手順で酸化中和された塩化コバルト溶液を、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸をクリーンソルG(日本石油社製:商品名)で20%v/vに希釈した抽出剤を使用して、それぞれ連続向流多段のミキサーセトラーを用いて実施した。溶媒抽出工程は向流3段で、洗浄工程は1段で、逆抽出工程は2段で実施した。
なおこれらのミキサーセトラーは全て温水槽の中に保持し、その温度は40℃で一定とし、また抽出反応のための中和剤は、CoCO3スラリーを使用した。この際の抽出条件を表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
ついで得られた逆抽出されたコバルト溶液について分析を行って、その結果を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
表4から分かる通り、亜鉛および銅は0.001g/リットル未満の濃度となり、またカルシウムも97%以上が抽出され高純度のコバルト溶液が製造できた。
一方亜鉛、銅およびカルシウムを抽出した有機溶媒は、希塩酸を用いてpHを1.5に調整した水溶液で洗浄した。洗浄後の洗浄液は系外へ抜き出すこととし、コバルト原液と混合し繰り返し処理はしなかった。また洗浄後の有機溶媒は1.5Nの濃度の塩酸溶液で亜鉛、銅およびカルシウムを逆抽出し、有機溶媒を再生した。
【0037】
以上の工程の各分析値は下記する表5に示す通りであるが、洗浄工程では低pHの水溶液で洗浄することで、亜鉛、銅およびカルシウムのほとんどを有機相に残したまま、共抽出されたコバルトを水相側に移行し回収できた。また逆抽出も完全に行われ、亜鉛、銅およびカルシウムを全く含まない有機溶媒が得られ抽出工程に繰り返すことができた。
【0038】
【表5】
【0039】
[実施例4]
この実施例では第1の工程である酸化中和工程を2段で実施した場合の各種不純物の除去効果を検証した。
コバルト:86.9g/リットル、鉄:0.020g/リットル、マンガン:0.091g/リットルおよび銅を0.070g/リットル含む塩化コバルト溶液に対して、炭酸コバルトおよひ塩素ガスを用いてpH3.0、酸化還元電位を900mV(Ag/AgCl電極基準)になるよう制御して45℃で4時間保持した。
その後Cl2ガスの吹き込みを止め、コバルト溶液を濾過することなく、再びNiCO3のみを添加してpHを5.0まで上昇させ、45℃で1時間保持して反応させた。その後、塩化コバルト溶液を濾過し生成した沈殿物を除去してから分析を行い、その結果を表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
表6から分かる通り、コバルト溶液中の鉄、マンガンおよび銅はともに0.001g/リットル未満となり高純度のコバルト溶液を得ることができた。
【0042】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明によれば、各種不純物を含有する塩化コバルト溶液をまず塩素または次亜塩素酸またはオゾンなどの酸化剤を使用して酸化し、かつ中和し生成した水酸化物を除去した後、続いてビス ( 2‐エチルへキシル ) リン酸により溶媒抽出して残存した不純物を抽出除去することにより高純度コバルト溶液が効率的に製造できるものである。
Claims (3)
- 不純物として鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅を含有する塩化コバルト溶液を、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHが4.0〜5.0になるように制御して酸化し中和して生成した鉄、マンガン、銅の沈殿物を除去する第1の工程と、前記塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび前記第1の工程で残留した微量の不純物をビス ( 2‐エチルへキシル ) リン酸により溶媒抽出する第2の工程と、該第2の工程で得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄し、不純物とともに前記有機相に共抽出されたコバルトを回収する第3の工程と、該第3の工程で得られた有機相を鉱酸で処理し、該有機相に残存している不純物を逆抽出して有機相を再生する第4の工程とからなることを特徴とする高純度コバルト溶液の製造方法。
- 不純物として鉄、マンガン、亜鉛、カルシウム、銅を含有する塩化コバルト溶液を、酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHが3.0〜4.0になるように制御して酸化しながら保持して鉄、マンガンおよび銅の一部を沈殿させ、つぎに酸化還元電位をAg/AgCl電極基準で600mV〜900mVで、かつpHを4.0〜5.0として保持して銅の大部分を沈殿させた後、中和して生成した沈殿物を除去する第1の工程と、前記塩化コバルト溶液中の亜鉛、カルシウムおよび前記第1の工程で残留した微量の不純物をビス ( 2‐エチルへキシル ) リン酸により溶媒抽出する第2の工程と、該第2の工程で得られた不純物およびコバルトの一部を含有する有機相を、pH調整した水溶液で洗浄し、不純物とともに前記有機相に共抽出されたコバルトを回収する第3の工程と、該第3の工程で得られた有機相を鉱酸で処理し、該有機相に残存している不純物を逆抽出して有機相を再生する第4の工程とからなることを特徴とする高純度コバルト溶液の製造方法。
- 前記塩化コバルト溶液を酸化する際に使用する酸化剤として、塩素、次亜塩素酸またはオゾンを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の高純度コバルト溶液の製造方法。
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