JP2007285828A - 検体溶液の撹拌方法 - Google Patents

検体溶液の撹拌方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、選択結合性物質を密接してスポットした担体を用いた場合にも、被験物質を選択結合性物質に効率よく接触させることができ、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うための手段を提供することを目的とする。
【解決手段】担体上に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、前記凹凸部を構成する複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化されている担体に接触させた被検物質を含む溶液を撹拌するにあたり、前記被検物質を含む溶液に撹拌子を添加し、かつ、前記担体を略水平方向に公転させ前記撹拌子を移動させて溶液を撹拌することを特徴とする、溶液の撹拌方法。
【選択図】図8

Description

本発明は、選択結合性物質固定化担体と被検物質が含まれる溶液とを反応させる際に該溶液を撹拌する方法に関し、詳しくは、検体と選択的に結合する物質(本明細書において「選択結合性物質」という。)が固定化され、検体と選択結合性物質の反応による分析を行う際の検体溶液の撹拌方法に関する。
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められている。ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能は、各種の方法で調べることができる。主なものとして、核酸は、ノーザンブロッティング、あるいはサザンブロッティングのように、各種の核酸/核酸間の相補性を利用した方法により、各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。一方、蛋白質は、ウエスタンブロッティングに代表される蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能および発現について調べることができる。
近年、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法として、DNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる新しい分析法が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも、核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じである。これらの方法は、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間の特異的な反応に基づく蛋白質や糖鎖検出・定量に応用が可能である。これらの技術は、マイクロアレイ又はDNAチップと呼ばれるガラスの平面基板片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。DNAチップの具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基板片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度検出装置(スキャナー)で高速に読み取る方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。このようして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。また、DNAチップの応用分野は、発現遺伝子の量を推定する遺伝子発現解析のみならず、遺伝子の一塩基置換(SNP)を検出する手段としても大きく期待されている。
DNAチップによる検出の際は、調製したDNAを含む溶液(DNA溶液)を、DNAチップ上の選択結合性物質と反応させることが必要であるが、このような反応をビーズを用いて促進させる方法も開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2など)。しかしながら、いずれの方法もビーズが沈殿や偏りを起こしやすく、また、ビーズがDNAを破損する危険がある、などといった問題点があり、反応を十分に促進させるものではなかった。
特許第3557419号公報 特開2003−248008号公報
本発明は、前記課題を解決するもので、選択結合性物質を密接してスポットした担体を用いた場合にも、被験物質を選択結合性物質に効率よく接触させることができ、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うための手段を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その過程で、特開2004−264289号公報に記載されている、選択結合性物質が凹凸部の複数の凸部に固定化される基板において、凹部に微粒子を移動可能に格納させ、これを揺動、鉛直面内で回転等させ、選択結合性物質が固定化された面に微粒子が接触することなく、重力により微粒子などを移動させることにより被検物質を含む溶液を撹拌させ、固定化された選択結合性物質との選択的な反応を促進できることに着目した(国際公開第2005/090997号パンフレット)。
しかし、上記特開2004−264289号公報の基板において、凸部を等間隔に形成すると、凸部を密接して多数形成させる場合には、凹部のスペースを十分に取ることができず、その結果、非常に小さな微粒子しか用いることができず、撹拌を十分に行うことができなかった。
そこで、本発明者らは、反応を促進することのできる撹拌方法を検討した結果、担体を公転運動させると、凸部を多数形成した担体に、小さなビーズを組み合わせて用いた場合でも、問題なく撹拌効率の向上を図り安定した反応が実現できることを見出し、本発明に到達した。
本発明によれば、下記のものが提供される:
〔1〕 担体上に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、前記凹凸部を構成する複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化されている担体に接触させた被検物質を含む溶液を撹拌するにあたり、前記被検物質を含む溶液に撹拌子を添加し、かつ、前記担体を略水平方向に公転させ前記撹拌子を移動させて溶液を撹拌することを特徴とする、溶液の撹拌方法。
〔2〕 前記撹拌子が、微粒子またはマイクロロッドであることを特徴とする上記〔1〕記載の溶液の撹拌方法。
〔3〕 前記公転の回転数が、100rpmから500rpmである上記〔1〕または〔2〕に記載の溶液の撹拌方法。
〔4〕 担体上の凹凸部が、凸部がマトリクス状に形成された複数のサブブロック領域からなることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔5〕 前記凹凸部において、隣接するサブブロック領域間の凹部の幅が、サブブロック領域内の凹部の幅よりも広いことを特徴とする上記〔4〕に記載の溶液の撹拌方法。
〔6〕 サブブロック領域間の凹部の幅が、200μm以上であることを特徴とする上記〔4〕または〔5〕に記載の溶液の撹拌方法。
〔7〕 前記凹凸部において、複数の凹部の深さを有することを特徴とする上記〔4〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔8〕 前記凹凸部において、隣接するサブブロック領域間の凹部の深さが、サブブロック領域内の凹部の深さよりもよりも深いことを特徴とする上記〔4〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔9〕 サブブロック領域間の凹部の深さが、凸部上面から凹部底面までの深さで100μm以上であることを特徴とする上記〔4〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔10〕 前記選択結合性物質固定化担体の凹凸部を有する表面に、平坦部が設けられてなることを特徴とする上記〔4〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔11〕 前記担体を略水平方向に公転させる前に、カバー部材を前記担体の凹凸部を含む表面を覆いかつ前記担体と前記カバー部材との間に空隙を有するように接着することを特徴とする上記〔1〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
〔12〕 上記〔1〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の撹拌方法を利用して、前記担体に被検物質を選択的に結合させ、前記担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする被検物質の分析方法。
本発明によれば、核酸等のハイブリダイゼーションに代表される、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応において、選択結合性物質を密接してスポットした場合にも、被験物質を選択結合性物質固定化担体上の選択結合性物質と効率よく接触させることができ、被検物質と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うことができる。
本発明の撹拌方法は、担体上に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、前記凹凸部を構成する複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化された担体と被検物質が含まれる溶液(検体溶液)を撹拌するにあたり、前記被検物質を含む溶液に撹拌子を添加し、かつ、前記担体を略水平方向に公転させ、添加した撹拌子を溶液中を移動させる。すなわち、担体と検体溶液とを接触させ、その溶液に微粒子(ビーズ)、マイクロロッドに代表される撹拌子を添加し、担体を略水平方向に公転させ、添加した撹拌子を公転の加速度、遠心力等により撹拌子を移動することが必要である。このように担体を特定の方向に回転させることにより、これ以外の方法、例えば、担体を往復運動させたり、8の字運動をさせ撹拌子を移動する、重力により撹拌子を落下させる、振動により撹拌子を動かす等の方法にて溶液を撹拌する場合に比べ、非常に効率よく溶液の撹拌が達成でき、より精密な分析を行うことができる。この理由は、1)往復運動・8の字運動・振動を担体に与えた場合は、撹拌子がほぼ一定の場所で往復運動するのみであり、溶液の撹拌が不十分である。2)重力により撹拌子を移動させても、担体に対する相対的な加速度の向きを素早く切り替えることができない上、十分な速度で撹拌子が移動させることができず、溶液の撹拌が不十分であるためである。これに対し、本発明のように担体を公転させると、撹拌子がそれ同士や担体の凸部と衝突し、複雑な運動を行なうので、十分な溶液の撹拌が達成される。
また、振動や往復運動、8の字運動、振動を担体に与えた場合は、担体を設置した水平面のわずかな傾きにより、時間と共に撹拌子が担体の反応領域の片側に寄ってしまい反応ムラの原因となる。しかし、本発明のように担体を公転させその加速度や遠心力により撹拌子を移動させた場合、多少の傾きでも撹拌子が一方に寄ってしまうことがなく、反応ムラを低減できる。また本発明のように担体を公転させた場合に撹拌子が片方に偏らない理由も、撹拌子がそれ同士や担体の凸部と衝突し、複雑な運動を行うためである。
本発明の撹拌方法では、凹凸部を有する担体に接触させた被検物質を含む溶液を、略水平方向に公転させる。略水平方向とは、担体の凹凸部の存在する表面に向かって水平か或いは水平に近い方向を意味する。水平に近い方向とは、担体を回転させた場合に撹拌子が担体の片側に寄らない程度の傾きを持たせた方向を意味し、例えば、水平面を基準として0度から3度の間が好ましい。
公転とは、担体が任意の回転軸を基準としてその周囲を回転することを意味する。本発明においては、任意の回転軸の周囲を担体上の凹凸部が円軌道を描くように回転することが好ましい。担体自体は回転してもしなくてもよいが、回転しない方が、装置が簡便であり、撹拌子に大きな加速度や遠心力がかかることから撹拌効率が向上するので好ましい。公転の回転方向は特に限定されず、連続して一方向に連続して公転するのであっても良いし、1回又は2回以上の等周期或いはランダムな周期で正方向と逆方向に切り替えるようなパターンで公転とすることも可能である。
担体を公転させる際の回転数としては、100rpmから500rpmが好ましい。100rpm未満であると十分な攪拌が行われない場合があるし、500rpmを超えると、後述する担体に貼り付けてあるカバーが遠心力によって剥がれてしまうなどの問題がある。特に好ましくは、200rpmから300rpmである。また、公転の回転数は撹拌処理時間を通じて一定であっても良いし、周期的またはランダムに変化させても良い。公転の際担体の凹凸部が描く円軌道の半径としては、担体の凹凸部の中心部が描く円軌道として、半径2cmから5cmであることが好ましい。半径が2cm未満であると、十分な撹拌が行われない場合があるし、5cmを超えると、担体に必要に応じて貼り付けてあることのできるカバーが遠心力によって剥がれてしまう場合がある。尚、この円軌道は正円に限定されず、多少ゆがみが含まれていてもよく、例えば楕円であっても良い。
公転時間は、選択結合性物質に被検物質が相互作用するために十分な範囲で適宜決定することができる。ハイブリダイゼーションの間を通じて連続して公転させていても良いし、その一部の時間のみ回転させたり、断続的に回転させたりしても良い。公転させる時間の好ましい範囲は、特には限定されないが、延べ4時間以上回転させることが好ましく、ハイブリダイゼーションの間を通じて連続して公転させておくことが最も好ましい。なお、公転による遠心力の好ましい範囲としては、0.3〜50m/s2であり、特に好ましくは、10〜30m/s2である。
本発明における被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、検体となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、本発明の撹拌方法を行った後の測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を検体とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、検体が抗原又は抗体の場合には、検体である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、検体である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、担体を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、担体に結合した標識を測定することもできる。
本発明の撹拌方法においては、上述のような標識、増幅等を施した検体を水溶液や適当な緩衝液等に溶解させて被検物質を含む溶液(検体溶液)とする。
上記被検物質を含む溶液の担体への接触(アプライ)は、ピペット等の通常の器具で注入することにより行うことができる。
本発明においては、上述の被検物質を含む溶液に撹拌子を添加する。撹拌子としては、微粒子(ビーズ)、マイクロロッド等が挙げられ、特に微粒子が好ましい。微粒子やマイクロロッドの形状は、特に限定されず、微粒子の場合、球状の形状以外に、多角形でも良く、マイクロロッドの場合、円筒形、角柱形など任意の形状とすることができるが、球状のものが最も好ましい。また、微粒子のサイズも特に限定されないが、例えば球状の微粒子の場合、0.1〜300μmの範囲とすることができ、撹拌効率を鑑みると、より好ましくは、50μmから200μmの範囲が特に好ましい。更に、マイクロロッドの場合、長さ50〜5000μm、底面直径10〜300μmの範囲とすることができる。微粒子やマイクロロッドは、撹拌効率などの面から、1種類を選択して用いることもできる他、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
前記微粒子やマイクロロッドの材質も、特に限定されないが、ガラス、セラミック(例えばイットリウム部分安定化ジルコニア)、金属(例えば金、白金、ステンレス)、プラスチック(例えばナイロンやポリスチレン)等を用いることができる。特に微粒子の材質としては、撹拌効率の点から比重が重いことが好ましく、具体的には3g/cm3以上が好ましい。この比重よりも大きく、容易に入手可能であると言うことから、ジルコニア系の微粒子を好ましく用いることができる。マイクロロッドの材料としては、特に限定されるものではないが、加工の容易さの点から、金属(例えば、ステンレス、白金、金)が好ましく用いられる。微粒子やマイクロロッドは、撹拌効率などの面から、1種類を選択して用いることもできる他、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
上述の微粒子等を被検物質を含む溶液に添加する時期は、担体を公転させる前であればよい。例えば、担体に予め格納した態様とすることができる他、被検物質が含まれる溶液に微粒子を混入させて該溶液のアプライと同時に微粒子を格納してもよく、または被検物質が含まれる溶液のアプライの前又は後に、微粒子を別途格納してもよい。
撹拌子の溶液への添加量は、溶液を撹拌することにより、溶液中の被検物質が選択結合性物質と十分に相互作用する程度の量とすれば良い。具体的には、1mgから300mgの範囲が好ましく、特に好ましくは、20mgから300mgの範囲である。
本発明の撹拌方法で用いられる選択結合性物質固定化担体は、その上に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、前記凹凸部を構成する複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化される担体である。
本発明が対象とする選択結合性物質固定化担体は、その表面に、凹部及び凸部からなる凹凸部を有することが必要である。このような構造をとる担体を被検物質の分析に用いることにより、検出の際、非特異的に吸着した被検物質を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な結果を得ることができる。ノイズが小さくなる具体的な理由は、以下の通りである。すなわち、凸部上端面に選択結合性物質を固定化した担体をスキャナーと呼ばれる装置を用いてスキャンすると、凹凸部の凸部上端面にレーザー光の焦点が合っていることから、凹部では、レーザー光がぼやけ、凹部に非特異的に吸着した検体の望まざる蛍光(ノイズ)を検出しがたいという効果があるためである。
凹凸部を有する担体の具体例を図1及び図2に例示する。図1は、凹凸部を有する担体の一例を模式的に示す斜視図であり、図2は、図1の担体の矢印A1に沿った面で切断した横断面図である。図1及び図2に示す例においては担体表面に複数の凸部11及び凹部10を含む凹凸部12が形成され、その周りに平坦部13が設けられている。凸部11の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。この平坦部を使って、容易にスキャナーの励起光等の測定用の光線の焦点を凸部の上面に合わせることが可能となる。
上記凹凸部において、凸部は、マトリクス状に、すなわち、行方向及び列方向に配置されることが好ましい。凸部がマトリクス状に配置されることにより、凸部の間隙を構成する凹部がXY方向に通路状に形成されることとなる。このような構成により、凹部に微粒子やマイクロロッドを格納した場合に、微粒子やマイクロロッドを移動可能な状態でかつ選択的結合性物質に接触させずに保持することができる。例えば、図3に示す具体例で説明すると、凸部11の列に挟まれた部分、或いは凹凸部12と後述の平坦部13との境界部分に凹部の列が形成され、凹部の列に格納された微粒子やマイクロロッドが前後左右方向に移動可能となる。なお、凸部の形状は、担体表面に凹凸部が形成される程度であれば良いが、特に円柱、角柱等の柱状であることが好ましく、特に円柱状であることが好ましい。
本発明において、このような凹凸部は、上述のようにマトリクス状に形成された凸部が、複数のサブブロック領域からなることが好ましい。すなわち、凹凸部においては、マトリックス状に形成されてなる凸部がエリア別に分割され、それぞれがサブブロック領域を構成していることが好ましい。
例えば、図3の例では、複数の凸部11と、凹部10間の凹部からなる凹凸部12が複数のサブブロック領域S1、S2、S3・・・ ・・・S32に分割されており、各サブブロック領域内において凸部11はマトリックス状にXY方向に形成されている。サブブロック領域のサイズは、凹凸部に設ける凸部の数、微粒子、マイクロロッドのサイズ等に応じて定めることができる。サブブロックの領域のサイズとしては、そのピッチが384マイクロタイタープレートのウェルの間隔に相当する4.5mmを好ましく用いることができるが、これに制限されるものではない。
凹凸部における凹部の幅は、担体上に設ける凸部の数、および、凸部の大きさによってほぼ決まるが、通常10〜800μm、好ましくは、50〜200μmとすることができる。また、凸部を円柱状とする場合には、隣接する凸部の中心軸間の距離で50〜1000μm、好ましくは、100〜500μmの範囲で適宜定めることができる。特に、サブブロック領域内外で凹部の幅を変更することが好ましく、中でも、隣接するサブブロック領域間の凹部の幅が、サブブロック領域内の凹部の幅よりも広くなるようにすると、微粒子の大きさやマイクロロッドの直径が制限されず、効率の良い撹拌が可能となるので好ましい。例えば、微粒子やマイクロロッドを移動させて溶液を撹拌する場合については、撹拌効率は、微粒子・マイクロロッドの直径が100μm以上の場合が好ましい。よって、サブブロック領域間の凹部の幅は、100μmの微粒子・マイクロロッドが詰まらない程度の幅を持つことが好ましく、具体的にはその幅を、200μm以上、好ましくは200〜800μm、特に250μm〜600μmとすることが好ましい。一方、サブブロック領域内の凹部の幅は、基板上に設ける凸部の数によって決まるが、50〜400μm、好ましくは50〜180μmとすることができる。
一方、凹凸部における凹部の深さ、すなわち、凸部の上面から凹部の底面までの距離(高さの差)は、微粒子、マイクロロッドが円滑に移動可能な状態となるサイズを適宜設定することができるが、通常は、10μm以上、500μm以下が好ましく、50μm以上、300μm以下が特に好ましい。凸部の高さが10μmより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがあるため好ましくない。また、凸部の高さが500μmより高いと、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合があり好ましくない。
本発明においては、凹部の幅を特に、サブブロック領域内外で変更することが好ましい。特に、凹凸部内で複数の深さの凹部を設けること、すなわち、凹部の深さを一定とせずに、凹部ごとに異なる深さとすることもでき、この場合、隣接するサブブロック領域間の凹部の深さを、サブブロック領域内の凹部の深さよりも深くすることにより、微粒子の大きさ、マイクロロッドの直径が制限されず、効率の良い撹拌が可能となるので好ましい。またこの場合は、凸部上面に選択結合性物質を固定化した効果を失わない範囲で、サブブロック領域内の凹部の深さを浅くすることが可能となるので、必要な被検物資が含まれる溶液(以下、検体溶液という。)の量を減らすことが可能となることからも好ましい。検体溶液の量を減らすことが可能となると、後述する検体自体の量を減らすこと、または、検体溶液中の検体の濃度を濃くすることが可能となる。特に、検体溶液中の検体濃度を濃くすれば、担体に固定化された選択性結合物質と検体との反応効率を上げることができ、結果的にシグナル強度が強くなる。具体的には例えば、サブブロック領域間の凹部の深さを、凸部上面から凹部底面までの深さで100μm以上、好ましくは100〜500μm、特に100〜300μmとすることができ、一方、サブブロック領域内の凹部の深さを20〜200μm、好ましくは30〜150μm、特に30〜100μmとすることができる。
凹凸部の凸部の上面の高さに関しては、それぞれの凸部の上端面の高さが略同一であるであることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の上端面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した検体とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が50μm以下であることをいう。高さの差は30μm以下であることがより好ましく、高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。最も高い凸部上端面の高さと、最も低い凸部上端面の高さの差が50μmより大きいと、高さのずれた凸部上端面でのレーザー光がぼやけてしまい、この凸部上端面に固定化された選択結合性物質と反応した検体からのシグナル強度が弱くなる場合があるため好ましくない。
また、凸部分の上端面は、実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上端面が実質的に平坦とは、20μm以上の凹凸がないことを意味する。
本発明においては、上述した凹凸部のうち凸部の上面(上端面)に選択結合性物質(プローブ)が固定化される。選択結合性物質の固定化は、予めなされるものであっても良く、また、選択結合性物質を固定化しないで担体のみを用意しておき、検体の分析の際に所望の検体に応じた選択結合性物質を適宜選択し固定することもできる。
凸部の上面に固定化できる選択結合性物質(例えば核酸)は、データとして必要なものを適宜選択することができるが、単なるダミーの選択結合性物質であっても良い。また、すべての凸部表面に選択結合性物質を結合する必要は無く、何も固定化していない凸部を有していても良い。
本発明において、選択結合性物質とは、検体と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る各種の物質を意味する。担体の表面に結合しうる選択結合性物質の代表的な例としては、核酸、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質を挙げることができる。
核酸としては、DNAやRNAでも良く、またPNAでも良い。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。
核酸は、生細胞等天然物由来のものであっても良いし、核酸合成装置により合成されたものであっても良い。生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法(Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro et al., Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。固定化する核酸としては、更に、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
また、蛋白質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab´)2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。
糖類としては、各種単糖のほか、オリゴ糖や多糖などの糖鎖を挙げることができる。
脂質としては、単純脂質の他、複合脂質であっても良い。
更に、上記核酸、蛋白質、糖類、脂質以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。また、選択結合性物質として、担体の表面に細胞を固定化してもよい。
これらの選択結合性物質のうち特に好ましいものとして、DNA、RNA、蛋白質、ペプチド、糖、糖鎖または脂質を挙げることができる。
本発明で用いられる担体の凸部の上面の面積は、略同一であることが好ましい。凸部の上面の面積が略同一であることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上端面積を、最も小さい上端面積で割った値が1.2以下であることを言う。
選択結合性物質が固定化された凸部の上面の面積は、特に限定されるものではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、1mm2以下、10μm2以上が好ましい。また、凸部の数は、凸部の形状やサイズ、凹凸部の面積、凹部の幅、サブブロック領域、微粒子やマイクロロッドのサイズ等により適宜定めることができる。凸部の数の好ましい範囲は、本発明の効果を発揮できる点から鑑みると、1000個から50000個である。より好ましい範囲は、3000個から50000個であり、特に好ましくは、5000個から50000個である。凸部の密度としては、5個/mm2から50個/mm2の間が好ましい範囲である。
本発明で用いられる担体において、さらに好ましくは、凹凸部を有する面に、さらに平坦部が設けられていることが好ましい。このような構造とすることにより、凹凸部に検体溶液をアプライすることが容易となる。
凹凸部の凸部の上端面の高さと平坦部の高さは、略同一であることが好ましい。すなわち、平坦部の高さと凸部上端面の高さの差は、50μm以下であることが好ましい。凸部上端面の高さと平坦部の高さの差が50μmを超えると、検出できる蛍光強度が弱くなる場合があるため好ましくない。平坦部の高さと凸部上端面の高さの差は、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは、10μm以下である。最も好ましくは、平坦部の高さと凸部の高さは同一である。
本発明で用いる選択結合性物質固定化担体の具体例を図3、図4及び図5を基に説明する。図3は、選択結合性物質固定化担体の表面上方からみた模式図であり、図4及び図5は、いずれも図3に示す選択結合性物質固定化担体をC1面で切断した部分断面図である。
図3に示す例において、選択結合性物質固定化担体1の表面には、複数の凸部11を含む凹凸部12により構成されており、その周りに平坦部13が設けられている。凸部11の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化される。
図4の例では、サブブロック領域Skと隣接するサブブロック領域Sk+1間の凹部10Aの幅WAが、サブブロック領域内の凹部10Bの幅WBよりも広くなっている。よって、サブブロック領域内の凹部のみにビーズを入れる場合に比較し、サブブロック領域と隣接するサブブロック領域の間の凹部により大きなビーズを入れることが可能となる。よって、これを移動させることにより効率的に溶液の撹拌が可能となる。
また、図5の例では、図4と同様サブブロック領域Skと隣接するサブブロック領域Sk+1間の凹部10Aの幅WAが、サブブロック領域内の凹部10Bの幅WBよりも広くなっていると共に、サブブロック領域Skと隣接するサブブロック領域Sk+1間の凹部10Aの深さDAが、サブブロック領域内の凹部10Bの深さDBよりも深くなっている。尚、図5の例では、平坦部13とサブブロックSkとの間にサブブロック領域内の凹部10Bと同じ深さであるが凸部を有しない凹部10Cが設けられている。この場合は、図4の場合と比較し、さらに大きなビーズをサブブロック領域と隣接するサブブロック領域との間の凹部に入れることが可能となるのでより好ましい。
また、図3、図4及び図5の例では、平坦部13を使って、容易にスキャナーの励起光等の測定用の光線の焦点を凸部11の上端面に合わせることが可能となる。より具体的に説明すると、担体の表面に測定用のレーザー等の照射光(実線の矢印)を照射するにあたり焦点を合わせる際には、図6に示すように、バネ40で付勢して治具41に選択結合性物質固定化担体1を突き当て、この治具の突き当て面42の高さにレーザー光44が合焦するようレンズ43等により予め焦点を調整しておくことが多い。担体の平坦部を治具の面42に突き当てることにより、容易に担体の凸部上端面にスキャナーのレーザー光の焦点を合わせることが可能となる。なお、図6の例においては、選択結合性物質固定化担体1は、選択結合性物質が固定化された面が下側になるよう固定されている。
本発明で用いる担体の材質は、特に限定されないが、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。この中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー、ガラス及びシリコンを特に好ましく用いることができる。
本発明で用いる担体は、少なくとも一部が黒色であることが好ましい。このようにすることにより、担体からの自家蛍光を低減することができる。担体の黒色にする部分としては、凹凸部が設けられた担体の本体でも良いし、凸部の側面、凹部に設けられた疎水的な材料や絶縁層でも良いし、これらの全部でも良い。
ここで、担体が黒色であるとは、可視光(波長400nm〜800nm)において、担体の黒色部分の分光反射率が特定のスペクトルパターン(特定のピークなど)を持たず、一様に低い値であり、かつ、担体の黒色部分の分光透過率も、特定のスペクトルパターンを持たず、一様に低い値であることを意味する。
この分光反射率、分光透過率の値としては、可視光(波長400nm〜800nm)の範囲の分光反射率が7%以下であり、同波長範囲での分光透過率が2%以下であることが好ましい。尚、ここで言う分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した、照明・受光光学系で、担体からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を言う。
黒色にする手段としては、担体に黒色物質を含有させることにより達成しうる。この黒色物質は、光を反射したり透過し難いものであれば、特に制限はないが、好ましいものを挙げると、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラック、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、およびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物などの黒色物質が使用できる。
これらの黒色物質は単独で含有させる他、2種類以上を混合して含有させることもできる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂などのポリマーの場合は、この中の黒色物質の中でも、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、アニリンブラックを好ましく含有させることができ、特にカーボンブラックを好ましく用いることができる。ガラス、セラミックの無機材料の場合は、Ru、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、およびCuの酸化物、Si、Ti、Ta、ZrおよびCrの炭化物を好ましく含有させることができる。
また、本発明で用いる担体は、担体の形状については、担体表面に、上述したような凹部および凸部からなる凹凸部を有するものであればよく、各種製法にて製造することができる。例えば、材質がポリマー等の場合、射出成形法、ホットエンボス法、鋳型内で重合させる方法等により成型することができる。また、材質がガラスやセラミック等の無機物の場合、サンドブラスト法、シリコンの場合は公知の半導体プロセスなどで成型することができる。
成型した担体は、選択結合性物質をその表面に固定化するのに先立ち、必要に応じて各種の表面処理を施すことができる。かかる表面処理としては、具体的には例えば特開2004−264289号公報に記載されるものなどを挙げることができる。
本発明の撹拌方法は、このような凹部および凸部からなる凹凸部を有する担体にカバー部材を組み合わせた分析用チップに適用することもできる。
本発明において、分析用チップとは、被検物質が含まれる溶液(検体溶液)を当該チップにアプライし、検体の存在の有無や、検体の量や、検体の性状等を測定するために用いるチップをいう。具体的には、担体表面に固定化された選択結合性物質と検体との反応により、検体の量や、検体の有無を測定するバイオチップが挙げられる。より具体的には、核酸を担体表面に固定化したDNAチップ、抗体に代表されるタンパク質を担体表面に固定化したタンパク質チップ、糖鎖を担体表面に固定化した糖鎖チップ、及び細胞を担体表面に固定化した細胞チップ等が挙げられる。
本発明の撹拌方法を該選択結合性物質固定化担体の表面を覆い前記選択結合性物質固定化担体と接着されたカバー部材を更に備える分析用チップに適用する場合、検体溶液を簡便に密閉保持することができ、その結果、検体と、担体の領域(例えば図1〜図5中の12)に固定化された選択結合性物質との反応を、安定して行うことができる。また、特に分析用担体とカバー部材とが接着され一体となっていることにより、微粒子やマイクロロッドを予め封入しておくことができ、検体溶液をアプライする作業を容易に行うことが可能である。そして、検体溶液をアプライした後の貫通孔を塞ぐ作業においてもテープやシール剤が検体溶液と接触することがないので、バックグラウンドノイズが上昇しないという利点もある。
図7は、前記選択結合性物質固定化担体に加え、更にカバー部材、接着層、貫通孔及び液面駐止用チャンバーを有する分析用チップの概略的な態様の例を示す斜視図であり、図8は図7の分析用チップを矢印A1に沿った面で切断した断面図である。図7及び図8に示す例においては、選択結合性物質固定化担体1が、接着層30を介してカバー部材3で覆われ、選択結合性物質が固定化された領域12を含む空隙31を形成している。空隙31は、複数の貫通孔32を介して外部と連通する他は、外部と連通しない閉じた空間である。
前記カバー部材は、前記選択結合性物質固定化担体の表面の少なくとも一面の一部を覆い、担体と、カバー部材との間に空隙を有するよう接着されることができる。そして、担体は、好ましくはその表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有する。即ち、好ましくは、前記選択結合性物質が固定化された領域が、当該空隙内に存在するように、前記カバー部材は前記選択結合性物質固定化担体に接着される。前記カバー部材は、前記空隙が形成される限りにおいて、どのような態様で接着されてもよいが、好ましくは、両面テープ、樹脂組成物等の接着層を介して接着される。
前記カバー部材は、前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有するものとすることができ、複数の貫通孔を有することが好ましい。より具体的には、貫通孔は、一つの空隙に対して複数あることが好ましく、中でも3個から6個とすることにより、検体溶液の充填が容易となるので特に好ましい。なお、後述するように、空隙が、互いに連通しない複数の空間に分かれている場合は、各空間あたりに複数個、より好ましくは3〜6個の貫通孔を有することが好ましい。カバー部材が複数の貫通孔を有する場合、それらの孔径は、同一でも異なっていてもよいが、複数の貫通孔のうちの一つをアプライ口とし、他の貫通孔を空気の抜け口として機能させる場合、検体溶液のアプライの容易さ及び検体溶液の密閉保持性の点から、アプライ口のみをアプライに必要な広い孔径としその他の貫通孔をより狭い孔径とすることが、好ましい。具体的には、アプライ口の貫通孔サイズは直径0.01から2.0mmの範囲内とし、その他の貫通孔の直径を0.01〜1.0mmとすることが好ましい。
貫通孔32は、その少なくとも1つが、その径を変化させて、上端に径の広い部分、いわゆる液面駐止用チャンバー33を備えるものとしても良い。液面駐止用チャンバーを備えることにより、貫通孔32からアプライされ空隙31に充填された検体溶液の液面の上昇を抑え、貫通孔を封止部材34で封止する際の封止を容易かつ確実に行うことが可能となるとともに、検体溶液の中に多数の気泡が入ったり、検体溶液の流出を防ぐことができるので好ましい。液面駐止用チャンバーの形状は特に限定されるものではなく、円柱形、角柱形、円錐形、角錐形、半球形、又はこれに近似した形状とすることができる。これらのうち、製造の容易さ及び検体溶液の上昇を抑制する効果の高さ等の観点から、円柱形が特に好ましい。
貫通孔の孔径サイズについては特に限定されるわけではないが、図8に示す縦断面形状の円筒形の貫通孔32及び液面駐止用チャンバー33との組み合わせの場合を例に挙げると、貫通孔32の孔径サイズ(直径)は、0.01から2.0mmが好ましく、0.3から1.0mmがより好ましい。孔径を0.01mm以上とすることにより、検体溶液のアプライを容易に行うことができる。一方、貫通孔32の直径を1.5mm以下とすることにより、アプライ後封止前の検体溶液の蒸発などをより効果的に抑制することができる。液面駐止用チャンバー33の孔径サイズ(直径)については、1.0mm以上が好ましい。1.0mm以上とすることにより、貫通孔32とのサイズの差を十分に得ることができ、十分な液面駐止効果が得られ好ましい。液面駐止用チャンバー33の直径の上限は、特に限定されないが、10mm以下とすることができる。また、液面駐止用チャンバー33の深さは、特に限定されないが、0.1〜5mmの範囲内とすることができる。
このようなカバー部材は、前述の選択結合性物質固定化担体に、脱離可能に接着されていることが好ましい。分析用チップをDNAチップとして用いる場合、通常、DNAチップを専用スキャナーで読み取ることが必要であるが、カバー部材が接着された状態では、専用スキャナーにセットすることが難しく、セットされたとしてもスキャン操作を実施するとカバー部材とスキャナーの光学系部品が接触し、故障の原因となることがある。また、カバー部材を介しての読み取りが可能であっても、読み取り値が不正確となりうる。そのため、読み取りの工程においてカバー部材を取り外せるよう、カバー部材が脱離可能であることが好ましい。
カバー部材を選択結合性物質固定化担体に脱離可能に接着する態様は、特に限定されないが、カバー部材と担体が損傷されることなく脱離することが可能である態様が好ましい。例えば、両面テープ、樹脂組成物等の接着層を介して接着することができる。
接着層として両面テープを用いる場合、両面で接着力の異なる両面テープを用いることが好ましく、具体的には、該両面テープの接着力の弱い面を担体側に接着し、接着力の強い面をカバー部材側に接着することが好ましい。このような態様とすることにより、カバー部材を剥離する際に、両面テープがカバー部材に接着した状態で同時に担体より脱離し易く、それにより、担体上への接着層の残存による読み取りの工程における不都合を回避することができる。このような両面テープとしては、日東電工株式会社製の製品番号No.535A、住友スリーエム株式会社製の製品番号9415PC及び4591HL、並びに株式会社寺岡製作所製の製品番号No.7691等が挙げられる。
接着層として樹脂組成物を用いる場合、当該樹脂組成物としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む樹脂組成物等を用いることができる。これらの樹脂組成物を利用することにより、両面テープに比べて密閉性を高めることが可能となるとともに、両面テープに比べて、長期間のインキュベーションに対しても安定であるため、そのような長期間のインキュベーションが必要な分析系においては特に好ましい。特に、接着層としてシリコーン系のエラストマーを用いると、密閉性が良好であり、しかも、容易に脱離が可能な状態でカバーを接着することができる。このようなエラストマーとしては、具体的には、シルガード(シルガードはダウコーニング社の登録商標)や、信越化学工業社製の二液型RTVゴム(型取り用)を挙げることができる。
上記カバー部材の形状は、前記選択結合性物質固定化担体の表面の少なくとも一面の一部を覆い、担体と、カバー部材との間に空隙を有するよう接着されうるものであれば特に限定されないが、その外周部分において、担体に近い部分より担体に遠い部分において突出した部分を有する構造、すなわちオーバーハング構造が設けられたものとすることができる。オーバーハング構造を設けることにより、担体を損傷せずにカバー部材を脱離することが容易となるので、好ましい。
また、前記担体にカバー部材を接着するにあたっては、カバー部材が前記担体の凹凸部を含む表面を覆い、かつ、担体とカバー部材と任意に接着層を含む構造により規定される空隙を有するように接着することができる。当該空隙は、1つの空間でもよく、複数の仕切られた空間であってもよい。また、カバー部材の数は、一枚の担体あたり一枚であってもよく、二枚以上であってもよい。
カバー部材の材料としては、特に限定されるものではないが、検体溶液をアプライした際に、溶液の様子を観察可能とするために、透明な材料が好ましい。そのような材質としては、ガラス又はプラスチックが挙げられる。特に、貫通孔や液面駐止チャンバー等の構造を容易に作製可能という点から、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明樹脂を好ましく用いることができる。カバーの作製方法も特に限定されるものではなく、切削加工や射出成型法による加工が可能である。大量生産が可能という観点から、射出成型法を好ましく用いることができる。
本発明で用いることのできる分析用チップにおける、凹凸部、カバー部材及び微粒子もしくはマイクロロッドの関係の好ましい例を、図8を参照して説明する。図8に示した例では、DNA等の選択結合性物質45は、分析用担体1の凸部上面11上に固定化されている。そして、微粒子(マイクロロッド)2は、分析用担体1の凹部10Aおよび10Bの空隙内に載置されている。特に、微粒子(マイクロロッド)は、サブブロック領域間の凹部10Aに格納されるので、微粒子の大きさやマイクロロッドの直径に関わらず効率よく撹拌することが可能となる。選択結合性物質45及び微粒子(マイクロロッド)2は、DNAが含まれる検体溶液(図示せず)に触れることになる。検体溶液は、分析用担体1、接着層30及びカバー部材3により規定される空隙内で保持されることになる。図8の例においては、分析用担体の凸部上面11とカバー部材3との間隔の最短距離が、微粒子(マイクロロッド)2の直径(マイクロロッドの場合底面直径)未満となっている。それにより、微粒子等が凸部上端面11に接触できなくなり、凸部上面11上の選択結合性物質45を傷つけることを防ぐことができる。微粒子の形状やマイクロロッドの底面が、例えば楕円形、多角形等の非球状の形状である場合は、凸部上面とカバー部材3との間隔の最短距離が底面最小径未満であれば、同様に凸部上面11と微粒子(マイクロロッド)との接触を防ぎ、選択結合性物質45の損傷を防ぐことが可能となる。
本発明の撹拌方法を、担体にカバー部材を組み合わせた分析用チップを利用して行う場合の担体への被検物質を含む溶液の接触は、前記カバー部材の貫通孔から検体溶液をアプライし、前記カバー部材に封止部材を貼付して前記貫通孔を封止し、前記被検物質を前記分析用チップを構成する担体に選択的に結合させることができる。
貫通孔からの検体のアプライは、例えば、前記貫通孔からピペット等の通常の器具で注入して行うことができる。
カバー部材への封止部材の貼付は、貫通孔の一部又は全て、好ましくは全てを封止する態様にて行うことができる。前記封止部材としては、例えばカプトン(商標、ポリイミドフィルム、東レ・デュポン社製)、ポリエステル、セロハン、又は塩化ビニル製の粘着テープ等の可とう性のテープを好ましく挙げることができるが、これに限らず、非可とう性の板状の接着可能な任意の部材を用いることもでき、非定型のシーリング剤を用いることもできるが、液面駐止用チャンバーによる本発明の効果をより良好に得るという観点からは、可とう性のテープ及び板状の部材が好ましく、操作の簡便性などの観点から、可とう性のテープがさらに好ましい。封止部材としてテープ又は板状の部材を用いる場合、その使用枚数は任意である。具体的には、カバー部材上の全ての貫通孔を一枚の封止部材で封止してもよく、複数の封止部材を用いてそれぞれで複数の貫通孔の一部を封止してもよい。また、前記の通り一枚の担体上に複数のカバー部材が設けられている場合、カバー部材のそれぞれに別々の封止部材を用いてもよく、複数のカバー部材上の貫通孔をまとめて一枚の封止部材で封止してもよい。通常は、一枚のカバー部材あたり一枚の封止部材を用いることが、簡便且つ確実な封止を達成しうることから好ましい。
封止の具体例を、再び図8を参照して説明する。図8の例では、検体溶液(図示せず)を貫通孔32よりアプライした後、可とう性の粘着テープ34を、液面駐止用チャンバー33の全面を覆うように貼付し、貫通孔を封止している。このような態様により、簡便で且つ検体溶液の漏出や測定誤差を招かない封止を達成できる。
このような本発明の撹拌方法は、各種検体の分析に利用することができる。
すなわち、前記本発明の撹拌方法を利用して、担体に被検物質を選択的に結合させ、前記担体上に選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することにより、検体を分析することができる。
本発明の被検物質の分析方法においては、まず、前記本発明の撹拌方法に従い、選択結合性物質固定化担体に被検物質を接触させて撹拌し、選択的に結合させる。すなわち、本発明の選択結合性物質固定化担体に上述のような標識、増幅等を施した検体を水溶液や適当な緩衝液等に溶解させた検体溶液とし、これに撹拌子を添加した上で担体に接触させ所定方向に公転させれば良い。
本発明の分析方法において、選択的な結合とは、選択結合性物質と被検物質とを相互作用させ、前記被検物質を前記選択結合性物質を介して前記選択結合性物質固定化担体に結合させることを意味する。すなわち、本発明の撹拌方法に従い担体を回転させることにより、加速度、遠心力等によって撹拌子が検体溶液中を移動するので、選択的結合が効率よく進められる。
選択的結合の際の反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる検体の核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、40℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。なお、本発明の撹拌方法による撹拌は、この選択的結合における反応時間を通して行っても良いし、その一部だけとしても良い。
選択的結合が終了した後、通常はカバー部材を脱離させた後、次の工程に供することができる。
本発明の分析方法においては、上述の選択的結合の後、前記選択結合性物質固定化担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定する。この測定も、従来の分析用チップにおける操作と全く同様に行うことができる。例えば、適宜蛍光標識され、選択結合性物質と結合した被検物質の質量について、公知のスキャナ等により、その蛍光量を読み取ることにより測定することができる。
本発明の分析方法において、選択結合性物質として核酸を固定化した場合には、この核酸又はその一部と相補的な配列を有する核酸を測定することができる。また、選択結合性物質として抗体又は抗原等の蛋白質を固定化した場合には、この抗体又は抗原と免疫的に反応する抗原又は抗体を測定することができる。なお、本明細書でいう「測定」には、検出と定量の両者の意味が含まれる。
本発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1(基板の作製)
公知の技術であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)法により、カーボンブラックを含有したポリメチルメタクリレート(PMMA)製の成形板を2種類作製した。
基板1
図3、図5に示す基板を作製した。すなわち、基板の外形は75×25×1mmであり、その中心部には凸部の集団からなる32個のサブブロックが存在する。そのサブブロック中には、直径0.1mmの凸部がピッチ0.245mmで、17×17の格子状に配置されている。基板全体には17×17×32=9248個の凸部が設けられている。また、サブブロック間は0.48mmのスペースが設けられている。また、サブブロック内における凸部上面と底面との距離(深さ)は0.1mmであり、一方それ以外の基板の堀込まれている部分(サブブロック間、および、平坦部とサブブロックの間)の深さは0.15mmとなっている。
基板2
基板の堀込まれている部分の深さを0.1mmと一種類とした以外は、基板1と同様なデザインの基板を作製した。
参考例2(プローブDNAの固定化)
上記の基板を10Nの水酸化ナトリウム水溶液に65℃で12時間浸漬した。次いで、純水、0.1N HCl水溶液、純水の順で洗浄した。このようにして、板表面のPMMAの側鎖を加水分解して、カルボキシル基を生成した。
配列番号1(60塩基、5’末端アミノ化)で表される塩基配列を有するDNA(以下、配列番号1のDNAと記載することがある)を合成した。配列番号1のDNAは5’末端がアミノ化されている。
これらのDNAを、純水に0.27nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。基板に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na2HPO4・12H2Oを2.9g、KClを0.2g、KH2PO4を0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブの終濃度を0.027nmol/μlとし、かつ、担体表面のカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、これらの混合溶液をおよそ40μl取り出して、スポッティング用ロボット(日本レーザー電子(株)、GTMAS Stamp−2)を用い、図3で示すS12、S13、S20、S21サブブロック全ての凸部上面にDNAのスポットを行った。次いで、基板を密閉したプラスチック容器入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、純水で洗浄した。
参考例3(検体DNAの調製)
検体DNAとして、上記DNA固定化基板とハイブリダイズ可能な塩基配列を持つ配列番号4のDNA(968塩基)を用いた。調製方法を以下に示す。配列番号2と配列番号3のDNAを合成した。これを純水にとかして濃度を100μMとした。次いで、pKF3 プラスミドDNA(タカラバイオ(株)製品番号;3100)(配列番号5で表される塩基配列を有するDNA:2264塩基)を用意して、これをテンプレートとし、配列番号2および配列番号3のDNAをプライマーとして、PCR反応(Polymerase Chain Reaction)により増幅を行った。
PCRの条件は以下の通りである。すなわち、ExTaq 2μl、10×ExBuffer 40μl、dNTP Mix 32μl(以上はタカラバイオ(株)製 製品番号RR001Aに付属)、配列番号2で表される塩基配列を有するDNAの溶液を2μl、配列番号3で表される塩基配列を有するDNAの溶液を2μl、テンプレート(配列番号5で表される塩基配列を有するDNA)を0.2μlを加え、純水によりトータル400μlにメスアップした。これらの混合液を、4つのマイクロチューブに分け、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。これを、エタノール沈殿により精製し、40μlの純水に溶解した。PCR反応後の溶液の一部をとり電気泳動で確認したところ、増幅したDNAの塩基長は、およそ960塩基であり配列番号4のDNA(968塩基)が増幅されていることを確認した。
次いで、9塩基のランダムプライマー(タカラバイオ(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かし、上記のPCR反応後精製したDNA溶液に2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(タカラバイオ(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy3−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA53021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy3で標識された検体DNAを得た。なお、標識の際ランダムプライマーを用いたので検体DNAの長さには、ばらつきがある。最も長い検体DNAは配列番号4のDNA(968塩基)となる。なお、検体DNAの溶液を取り出して、電気泳動で確認したところ、960塩基に相当する付近にもっとも強いバンドが現れ、それより短い塩基長に対応する領域に薄くスメアがかかった状態であった。そして、これをエタノール沈殿により精製し、乾燥した。
この標識化された検体DNAを、1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC(5×SSCとはNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1gの純水にとかし、200mlにメスアップしたもの。またNaClを43.8g、クエン酸3ナトリウム水和物を22.1g純水にとかし、1lにメスアップしたものを1×SSCと表記し、これの10倍濃縮液を10×SSC、5倍希釈液を0.2×SSCと表記する。)、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液(各濃度はいずれも終濃度)、800μlに溶解し、ハイブリダイゼーション用の検体溶液とした。
実施例1
基板1に図8で示すPMMAのカバーを両面テープ(日東電工製、No.535A)で貼り付けた。その結果、凸部上面とカバー下面との間のスペースは100μm程度となった。
次いで、直径180μmのジルコニア製ビーズ(東レ製)をカバーの穴から入れたところ特に問題なく入れることが可能であり、このビーズはブロック領域の間に充填することが可能であった。このビーズを80mg充填した。次いで、検体溶液180μLをカバーの穴から、マイクロピペットを用いて注意深く注入した。さらに検体溶液の蒸発などを防ぐため、粘着テープによりカバーの穴を塞いだ。カバーに液面駐止チャンバーがあるために、毛細管現象などによる不具合が起きることなく、検体溶液のシーリングが可能であった。
次いで、この基板をハイブリダイゼーション用のチャンバー((株)カケンジェネティック製)に入れ、このチャンバーを振とう機(アズワン製、SRR−3、公転時の半径3cm)に貼り付け、250rpmで回転振とうをしつつ、42℃で16時間インキュベートした。インキュベート後カバーを取り除き、洗浄を行った後、DNAチップ用のスキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000B)に上記処理後の担体をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を500にした状態で測定を行った。各スポットのシグナル値を平均したものと、それらのCV値とを表1に示す。
実施例2
振とう機をEYELA製、MULTI SHAKER MMS(公転時の半径2.5cm)とし、250rpmで回転振とうをした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表1に示す。
実施例3
基板2を使用した以外は実施例1と同様な操作を行った。ただし、この場合は、カバーと基板との間に直径180μmのビーズが引っかかることがあり、実施例1に比較しビーズの動きが悪かったが、ブロック領域の間にビーズを充填することは可能であった。
実施例1と同様にハイブリダイゼーションを行い、シグナル強度とCV値とを測定した結果を表1に示す。
比較例1
実施例1の振とう機の振とうモードを切り替え、往復振とう、8の字振とうとした以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果を表2に示す。また、作製したチップをローテーターに貼り付け、鉛直面内で回転させるようにし、重力によりビーズを移動させた場合の結果、および、溶液の撹拌を行わなかった場合の結果も表2に示す。
Figure 2007285828
Figure 2007285828
図1は、凹凸部を有する担体の一例を模式的に示す斜視図である。 図2は、図1の担体の矢印A1に沿った面で切断した横断面図である。 図3は、複数のサブブロック領域からなる担体の一例を表面上方より見た概略図である。 図4は、図3に例示される選択結合性物質固定化担体の縦断面図である。 図5は、図3に例示される選択結合性物質固定化担体の縦断面図である。 図6は、本発明の選択結合性物質固定化担体を用いた反応の結果を読み取る治具及びスキャナーの一例を概略的に示す縦断面図である。 図7は、分析用チップの一例を概略的に示す斜視図である。 図8は、図7の分析用チップの縦断面図である。
符号の説明
1 担体
10 凹部
10A サブブロック領域間の凹部
10B サブブロック領域内の凹部
11 凸部
12 選択結合性物質が固定化された領域(凹凸部)
13 平坦部
2 微粒子またはマイクロロッド
3 カバー部材
30 接着層
31 空隙(空間)
32 貫通孔
33 液面駐止用チャンバー
34 封止部材(テープ)
35 担体とカバー部材との隙間
40 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
41 治具
42 治具突き当て面
43 対物レンズ
44 レーザー励起光
45 担体に固定化された選択結合性物質(DNA)
S1〜32、Sk、Sk+1 サブブロック領域

Claims (12)

  1. 担体上に凹部及び凸部からなる凹凸部を有し、前記凹凸部を構成する複数の凸部の上面に選択結合性物質が固定化されている担体に接触させた被検物質を含む溶液を撹拌するにあたり、前記被検物質を含む溶液に撹拌子を添加し、かつ、前記担体を略水平方向に公転させ前記撹拌子を移動させて溶液を撹拌することを特徴とする、溶液の撹拌方法。
  2. 前記撹拌子が、微粒子またはマイクロロッドであることを特徴とする請求項1記載の溶液の撹拌方法。
  3. 前記公転の回転数が、100rpmから500rpmである請求項1または2に記載の溶液の撹拌方法。
  4. 担体上の凹凸部が、凸部がマトリクス状に形成された複数のサブブロック領域からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  5. 前記凹凸部において、隣接するサブブロック領域間の凹部の幅が、サブブロック領域内の凹部の幅よりも広いことを特徴とする請求項4に記載の溶液の撹拌方法。
  6. サブブロック領域間の凹部の幅が、200μm以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の溶液の撹拌方法。
  7. 前記凹凸部において、複数の凹部の深さを有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  8. 前記凹凸部において、隣接するサブブロック領域間の凹部の深さが、サブブロック領域内の凹部の深さよりもよりも深いことを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  9. サブブロック領域間の凹部の深さが、凸部上面から凹部底面までの深さで100μm以上であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  10. 前記選択結合性物質固定化担体の凹凸部を有する表面に、平坦部が設けられてなることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  11. 前記担体を略水平方向に公転させる前に、カバー部材を前記担体の凹凸部を含む表面を覆いかつ前記担体と前記カバー部材との間に空隙を有するように接着することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の溶液の撹拌方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の撹拌方法を利用して、前記担体に被検物質を選択的に結合させ、前記担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定することを特徴とする被検物質の分析方法。
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