JP2007114191A - 分析チップ、分析方法及び分析キット - Google Patents

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Abstract

【課題】被検物質を含む溶液を、選択結合性物質固定化担体上に、簡便にアプライすることができ且つ安定して保持することができ、検体と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うことができる分析チップ、分析方法及び分析キットを提供する。
【解決手段】担体と、前記担体の表面を覆い前記担体と接着されたカバー部材とを備え、前記担体と前記カバー部材との間に空隙を有する分析チップであって、前記カバー部材は前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有し、前記貫通孔のうち少なくとも1つが、その経路の一部に液面駐止用チャンバーを有することを特徴とする分析チップ、並びにこれを用いる分析方法及びこれを含む分析キット。
【選択図】 図17

Description

本発明は、被検物質と選択的に結合する物質(本明細書において「選択結合性物質」という。)を固定化した担体を備え、被検物質が含まれる溶液と選択結合性物質との反応による分析を行う際に用いうる分析チップ、並びに当該分析チップを用いた分析方法及び分析キットに関する。
各種生物の遺伝情報解析の研究が始められている。ヒト遺伝子をはじめとして、多数の遺伝子とその塩基配列、また遺伝子配列にコードされる蛋白質およびこれら蛋白質から二次的に作られる糖鎖に関する情報が急速に明らかにされつつある。配列の明らかにされた遺伝子、蛋白質、糖鎖などの高分子体の機能は、各種の方法で調べることができる。主なものとして、核酸は、ノーザンブロッティング、あるいはサザンブロッティングのような、各種の核酸/核酸間の相補性を利用して、各種遺伝子とその生体機能発現との関係を調べることができる。蛋白質は、ウエスタンブロッティングに代表される蛋白質/蛋白質間の反応を利用し蛋白質の機能および発現について調べることができる。
近年、多数の遺伝子発現を一度に解析する手法として、DNAマイクロアレイ法(DNAチップ法)と呼ばれる新しい分析法が開発され、注目を集めている。これらの方法は、いずれも、核酸/核酸間ハイブリダイゼーション反応に基づく核酸検出・定量法である点で原理的には従来の方法と同じである。これらの方法は、蛋白質/蛋白質間あるいは糖鎖/糖鎖間や糖鎖/蛋白質間の特異的な反応に基づく蛋白質や糖鎖検出・定量に応用が可能である。これらの技術は、マイクロアレイ又はDNAチップと呼ばれるガラスの平面基板片上に、多数のDNA断片や蛋白質、糖鎖が高密度に整列固定化されたものが用いられている点に大きな特徴がある。DNAチップの具体的使用法としては、例えば、研究対象細胞の発現遺伝子等を蛍光色素等で標識したサンプルを平面基板片上でハイブリダイゼーションさせ、互いに相補的な核酸(DNAあるいはRNA)同士を結合させ、その箇所を高解像度検出装置(スキャナー)で高速に読み取る方法や、電気化学反応にもとづく電流値等の応答を検出する方法が挙げられる。このようして、サンプル中のそれぞれの遺伝子量を迅速に推定できる。また、DNAチップの応用分野は、発現遺伝子の量を推定する遺伝子発現解析のみならず、遺伝子の一塩基置換(SNP)を検出する手段としても大きく期待されている。
核酸等の選択結合性物質を基板上に固定化する技術として、スライドガラス等の平坦な基板の上に、ポリ−L−リシン、アミノシラン等をコーティングして、スポッターと呼ばれる点着装置を用い、各核酸を固定化する方法などが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
また、最近は、DNAチップに用いられる選択結合性物質としての核酸プローブ(基板上に固定化された核酸)として、従来の数百〜数千塩基の長さのcDNAおよびその断片に代わり、検体とのハイブリダイゼーション時のエラーを下げうるという点、及び合成機で容易に合成できるという点から、オリゴDNA(オリゴDNAとは塩基数が10〜100塩基までのものをいう)が用いられるようになっている。この際、オリゴDNAとガラス基板とは共有結合にて結合しうる(例えば、特許文献2参照)。
現在、DNAチップは、チップ上に数万から数千種類の多数の遺伝子を載せ、一度に大量の遺伝子の発現を調べる研究用として用いられていることが多い。一方、今後は、診断用途においても、DNAチップが使用されることが期待されている。そのため、従来のものより、簡便に被検物質の溶液(以下、単に「検体溶液」ということがある。)のアプライを行うことができ、且つ感度の高いDNAチップが求められている。
DNAチップの使用時は、調製した検体溶液を、DNAチップ上の選択結合性物質が設けられた領域全体に広がるようにアプライすることが必要である。微量な検体溶液をDNAチップの当該領域全体に広げるためには、あらかじめDNAチップ表面に平坦なカバーガラスをかけておき横から毛細管現象により検体溶液を注入する方法がある。しかし、この方法では、カバーガラス表面の汚れ、ゴミ等が検体溶液の注入を妨げ、気泡が入ってしまうという問題があった。そこで、これらの課題を解決するためにDNAチップとカバーガラスの間に空隙形成用部材を保持し、検体溶液を安定してアプライする工夫が、特許文献3に開示されている。
ハイブリダイゼーションを行う際は、微量な検体DNA溶液を、蒸発を抑えながら安定してDNAチップ上に保持することが必要である。しかしながら、特許文献3に開示される方法では、ハイブリダイゼーション中に溶液が密閉されておらず、常に大気中への蒸発が起こってしまう。そのため、この方法で1分間〜一晩といった長期間ハイブリダイゼーションを行う必要がある場合、検体溶液は、長期間大気と触れたままであるので結果として蒸発してしまい、安定した結果が得られないという問題があった。
このような検体溶液の蒸発の問題を解決する手段として、DNAチップを湿潤状態に保てる密閉容器が市販されており、これを使用することで蒸発は抑えられる。しかしながら、このような手段を用いる場合、新たに密閉容器を購入することで実験コストが上昇するという問題や、密閉容器内にDNAチップを安定して設置するといった操作が加わり、実験作業が煩雑になるという問題がある。
また、特許文献4では、検体DNA溶液に微粒子を添加し、その微粒子の運動を利用して撹拌を行いながらハイブリダイゼーションを行う技術が開示されている。この技術では、DNAチップを回転することにより微粒子を動かし検体溶液を撹拌するので、その際に検体溶液及び微粒子を保持できるように閉じた空隙を形成することになる。そのように閉じた空隙に検体溶液等を密閉する手段として、特許文献4では、あらかじめ微粒子を検体DNA溶液に添加しておいた微粒子分散溶液をDNAチップにアプライして、カバーガラスを被せて、シール剤により密閉し、カバーガラス、DNAチップ及びシール剤により規定される密閉された空隙を形成することが開示されている。
しかしながら、微粒子分散溶液のピペットでの操作は、微粒子が沈殿しやすいことなどから煩雑な作業となる。また、検体溶液を密閉する操作においては、検体溶液がシール剤に接触して、検体溶液へのシール剤のコンタミネーションによるバックグラウンドノイズの上昇や、溶液漏れによる検体溶液のロスが起こるといった不都合が多い。従って、特許文献4に開示される技術に従って良好な分析を行うには、熟練した技術が必要であるという問題がある。
特表平10−503841号公報 特開2001−108683号公報 国際公開第WO2001/044814号パンフレット 特許第3557419号公報
本発明は、前記課題を解決するもので、被検物質を含む溶液を、選択結合性物質固定化担体上に、簡便にアプライすることができ且つ安定して保持することができ、検体と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うことができる分析チップ、分析方法及び分析キットを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明によれば、下記のものが提供される:
[1] 担体と、前記担体の表面を覆い前記担体と接着されたカバー部材とを備え、前記担体と前記カバー部材との間に空隙を有する分析チップであって、
前記カバー部材は前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有し、前記貫通孔のうち少なくとも1つが、その経路の一部に液面駐止用チャンバーを有することを特徴とする分析チップ。
[2] 前記担体が、その表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有することを特徴とする、[1]記載の分析チップ。
[3] 前記カバー部材が、前記担体に、脱離可能に接着されていることを特徴とする[1]又は[2]記載の分析チップ。
[4] 前記カバー部材が、前記貫通孔を複数有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項記載の分析チップ。
[5] 前記カバー部材が、前記貫通孔を3つ以上有することを特徴とする[4]記載の分析チップ。
[6] 前記カバー部材が、前記貫通孔を複数有し、それぞれの貫通孔の、前記液面駐止チャンバー部分以外の孔径が異なることを特徴とする[4]又は[5]記載の分析チップ。
[7] 前記カバー部材の外周部分にオーバーハング構造が設けられていることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項記載の分析チップ。
[8] 前記担体と前記カバー部材との間に介在しこれらを接着させる接着部材をさらに有し、前記接着部材が、両面の接着力が異なる両面テープであることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項記載の分析チップ。
[9] 前記担体と前記カバー部材との間に介在しこれらを接着させる接着部材をさらに有し、前記接着部材が、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマー及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む樹脂組成物であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項記載の分析チップ。
[10] 前記空隙内に封入された微粒子をさらに含むことを特徴とする[1]〜[9]のいずれか1項記載の分析チップ。
[11] 前記空隙が複数の空間に仕切られ、それぞれの仕切られた空間が1つ以上の貫通孔を有することを特徴とする[1]〜[10]のいずれか1項記載の分析チップ。
[12] 複数の前記カバー部材を有することを特徴とする、[1]〜[11]のいずれか1項記載の分析チップ。
[13] 前記複数のカバー部材のそれぞれが、前記担体との間に空隙を有し、且つ各空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有することを特徴とする、[12]記載の分析チップ。
[14] (A)[1]〜[13]のいずれか1項記載の分析チップに、前記貫通孔から被検物質をアプライする工程;
(B)前記カバー部材に封止部材を貼付し、前記貫通孔を封止する工程;
(C)前記被検物質を前記担体に選択的に結合させる工程;及び
(D)前記担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定する工程
を含むことを特徴とする、被検物質の分析方法。
[15] 前記分析チップが、前記担体の表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有し、前記工程(C)が、前記被検物質と前記選択結合性物質とを相互作用させ、前記被検物質を前記選択結合性物質を介して前記担体に結合させることを含む、[14]記載の分析方法。
[16] [1]〜[13]のいずれか1項記載の分析チップと、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
本発明の分析チップ、分析方法及び分析キットによれば、核酸等のハイブリダイゼーションに代表される、検体と固定化された選択結合性物質との選択的な反応を簡便に且つ安定して行うことができる。特に微量検体溶液による反応においても適用可能であり、より高精度な結果を得ることができるものである。
本発明の分析チップは、担体と、担体の表面を覆い担体と接着されたカバー部材とを備える。
本発明の分析チップとは、被検物質を含む溶液を当該チップにアプライし、被検物質の存在の有無や、被検物質の量や、被検物質の性状等を測定するために用いるチップをいう。具体的には、担体表面に固定化された選択結合性物質と検体との反応により、検体の量や、検体の有無を測定するバイオチップが挙げられる。より具体的には、核酸を担体表面に固定化したDNAチップ、抗体に代表されるタンパク質を担体表面に固定化したタンパク質チップ、糖鎖を担体表面に固定化した糖鎖チップ、及び担体表面に細胞を固定化した細胞チップ等が挙げられる。選択結合性物質及びその固定化の態様については後述する。
前記担体の形状については、特に限定されるものではなく、一般的な平板状のものを用いることが可能である。前記カバー部材は、前記担体の表面の少なくとも一面の一部を覆い、担体と、カバー部材との間に空隙を有するよう接着されることができる。そして、担体は、好ましくはその表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有する。即ち、好ましくは、前記選択結合性物質が固定化された領域が、当該空隙内に存在するように、前記カバー部材は前記担体に接着される。前記カバー部材は、前記空隙が形成される限りにおいて、どのような態様で接着されてもよいが、好ましくは、両面テープ、樹脂組成物等の接着部材を介して接着される。担体の形状、前記選択結合性物質、その固定化の態様、空隙の形状、接着の態様等の具体例については後に詳述する。
前記カバー部材は、前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有し、前記貫通孔のうち少なくとも1つが、その経路の一部に液面駐止用チャンバーを有する。
図1は、前記担体、カバー部材、接着部材、貫通孔及び液面駐止用チャンバーを有する本発明の分析チップの概略的な態様の例を示す斜視図であり、図2は図1の分析チップを矢印A1に沿った面で切断した断面図である。図1及び2に示す例においては、担体2が、接着部材3を介してカバー部材1で覆われ、選択結合性物質が固定化された領域R1を含む空隙8を形成している。空隙8は、複数の貫通孔5を介して外部と連通する他は、外部と連通しない閉じた空間である。そして、貫通孔5は、その上端に、貫通孔より径の広い液面駐止用チャンバー4を有している。
図1及び図2に示す分析チップの使用においては、検体溶液を貫通孔5の任意の1箇所以上よりアプライし、空隙8に充填する。その後、貫通孔5を封止部材で塞ぐことで、検体溶液を簡便に密閉保持することができる。その結果、検体と、担体の領域R1に固定化された選択結合性物質との反応を、安定して行うことができる。
ここで、液面駐止用チャンバーの構造及びその作用についてより具体的に説明する。液面駐止用チャンバーとは、貫通孔の孔径が一定でなく孔径のサイズが変化している部分をいい、好ましくは貫通孔の孔径より広い孔径を有する部分である。図3及び図4は、図2に示した分析チップにおける貫通孔5及び液面駐止用チャンバー4を拡大して示す断面図である。この例においては、液面駐止用チャンバー4は、下に続く貫通孔5より広い孔径を有している。このような構造を設けることで貫通孔5からアプライされ空隙8に充填された検体溶液7が、毛管現象により貫通孔5を通り上昇しても、図4に示す通り、当該上昇を液面駐止用チャンバー4の底面付近で止めることができ、貫通孔を封止部材6で封止する際、封止部材6を検体溶液7で濡らす等の不都合を起こすことなく、容易に封止を行うことが可能となる。
一方、図5に示す通り、液面駐止用チャンバーが設けられていない場合は、検体溶液7がカバー部材1の表面まで上昇しうる。このようにカバー部材1の表面まで検体溶液7が上昇すると、貫通孔5を封止部材6で封止しようとする際に、検体溶液7の液面と封止部材6とが接触すると同時に検体溶液7がカバー部材1の表面と封止部材6との間の空隙に広がり、封止部材6の粘着力が落ちて、貫通孔5を防ぐことができなかったり、中の検体溶液7が毛管現象により外部に吸い出され、検体溶液7の中に多数の気泡が入ったり、最悪の場合、検体溶液7が漏れ出して空隙8内に分析に必要な量の検体溶液7が残らなくなってしまうことが起こりうる。
液面駐止用チャンバーの形状は特に限定されるものではなく、図3などに示す縦断面矩形の形状のみならず、図6に示すようなすり鉢状、又は図7に示すような椀状等の形状であっても良い。また、液面駐止用チャンバーに続く貫通孔の形状も特に限定されず、一定サイズの孔径である必要もない。例えば、図8に示すような錘状の形状を有する貫通孔や、図9に示す貫通孔5A及び5Bのように、孔径サイズの異なる貫通孔の繋ぎ合わせでできる貫通孔でも良い。さらには、図10に示すように、貫通孔5の中間部に液面駐止用チャンバー4を有するような構造をもとりうる。図8及び図9に示すような、下に向かって広がる形状の貫通孔とすると、後述する微粒子を貫通孔を介して注入する態様の場合において、微粒子の注入が容易となり好ましい。一方、図3、6及び7に示すような一定サイズの孔径の細い貫通孔とすると、アプライ後封止前の検体溶液7の蒸発などをより効果的に抑制することができるという観点から好ましい。
液面駐止用チャンバー4をカバー上面から見たときの形状についても特には限定されない。カバー上面から見たときの形状としては円形、四角形、六角形などの多角形、楕円などを用いることができる。即ち、液面駐止用チャンバーは、円柱形、角柱形、円錐形、角錐形、半球形、又はこれに近似した形状とすることができる。これらのうち、製造の容易さ及び検体溶液7の上昇を抑制する効果の高さ等の観点から、円柱形が特に好ましい。
貫通孔径サイズについては特に限定されるわけではないが、図3に示す縦断面形状の円筒形の貫通孔5及び液面駐止チャンバー4との組み合わせの場合を例に挙げると、貫通孔5の孔径サイズ(直径)は、0.01から2.0mmが好ましく、0.3から1.0mmがより好ましい。孔径を0.01mm以上とすることにより、検体溶液をアプライするときに貫通孔5の位置確認を目視で行うことができる。従って、例えばアプライ作業にピペット、スポイト等を用いた場合、その先端を貫通孔へ的確にアプローチすることが容易となる。一方、貫通孔5の直径を1.5mm以下とすることにより、アプライ後封止前の検体溶液7の蒸発などをより効果的に抑制することができる。液面駐止チャンバー4の孔径サイズ(直径)については、1.0mm以上が好ましい。1.0mm以上とすることにより、貫通孔5とのサイズの差を十分に得ることができ、十分な液面駐止効果が得られ好ましい。液面駐止チャンバー4の直径の上限は、特に限定されないが、10mm以下とすることができる。また、液面駐止チャンバー4の深さは、特に限定されないが、0.1〜5mmの範囲内とすることができる。
本発明の分析チップにおいて、カバー部材は、複数の貫通孔を有することが好ましい。より具体的には、貫通孔は、一つの空隙に対して複数あることが好ましい。貫通孔が1つの場合、検体溶液のアプライ口と、その際の空隙に入っていた空気の抜け口が兼用となるので検体溶液のアプライ作業に高度な技術を必要とすることになるため好ましくない。貫通孔が2個の場合、ほぼ空隙全体に検体溶液を充填することが可能であるが、空隙の隅の一部に抜けきれない気体が残ることがある。貫通孔が3から6個の場合、空気の抜け穴が多いので簡単に検体溶液を充填することが可能である。7個以上になると貫通孔を封止部材で塞ぐ作業が増え、作業効率が悪くなる。従って、貫通孔の数は、3から6個がより好ましい。さらに好ましくは4個であり、この場合、矩形の空隙の四隅に貫通孔が配置されることが特に好ましい。なお、後述するように、空隙が、互いに連通しない複数の空間に分かれている場合は、各空間あたりに複数個、より好ましくは3〜6個の貫通孔を有することが好ましい。さらに好ましくは4個であり、この場合も矩形の各空間の四隅に貫通孔が配置されることが特に好ましい。
本発明の分析チップが複数の貫通孔を有する場合、それらの孔径は、同一でも異なっていてもよいが、複数の貫通孔のうちの一つをアプライ口とし、他の貫通孔を空気の抜け口として機能させる場合、アプライ口のみをアプライに必要な広い孔径とし、その他の貫通孔を、より狭い孔径とすることが好ましい。当該構成とすることにより、検体溶液のアプライを一般的なピペットでも容易に実施可能とすることができ、且つアプライ口以外の貫通孔において、検体溶液と空気の接触を減らすことが出来るので、検体溶液の密閉保持性を高く安定させうるため好ましい。具体的には、アプライ口の貫通孔サイズは上記の通り直径0.01から2.0mmの範囲内とし、その他の貫通孔の直径を0.01〜1.0mmとすることが好ましい。
本発明の分析チップにおいて、カバー部材は、担体に、脱離可能に接着されていることが好ましい。担体がDNAチップの場合、通常、DNAチップを専用スキャナーで読み取ることが必要である。その時、カバー部材が接着された状態では、専用スキャナーにセットすることが難しく、セットされたとしてもスキャン操作を実施するとカバー部材とスキャナーの光学系部品が接触し、故障の原因となることがある。また、カバー部材を介しての読み取りが可能であっても、読み取り値が不正確となりうる。そのため、読み取りの工程においてカバー部材を取り外せるよう、カバー部材が脱離可能であることが好ましい。
カバー部材を担体に脱離可能に接着する態様は、特に限定されないが、カバー部材と担体が損傷されることなく脱離することが可能である態様が好ましい。例えば、両面テープ、樹脂組成物等の接着部材を介して接着することができる。
接着部材として両面テープを使用した場合、両面で接着力の異なる両面テープを用いることが好ましい。より具体的には、両面で接着力の異なる両面テープの、接着力の弱い面を担体側に接着し、接着力の強い面をカバー部材側に接着することが好ましい。このような態様とすることにより、カバー部材を剥離する際に、両面テープがカバー部材に接着した状態で同時に担体より脱離し易く、それにより、担体上への接着部材の残存による読み取りの工程における不都合を回避することができる。このような両面テープとしては、日東電工株式会社製の製品番号No.535A、住友スリーエム株式会社製の製品番号9415PC及び4591HL、並びに株式会社寺岡製作所製の製品番号No.7691等が挙げられる。
接着部材として樹脂組成物を用いる場合、当該樹脂組成物としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む樹脂組成物等を用いることができる。これらを接着層に用いることで両面テープより密閉性を高めることが可能となるので、これらも好ましく用いることができる。特に、このような樹脂組成物を接着部材とした場合、両面テープに比べて、長期間のインキュベーションに対しても安定であるため、そのような長期間のインキュベーションが必要な分析系においては特に好ましい。
特に、接着部材としてシリコーン系のエラストマーを用いると、密閉性が良好であり、しかも、容易に脱離が可能な状態でカバーを接着することができる。このようなエラストマーとしては、具体的には、シルガード(シルガードはダウコーニング社の登録商標)、信越化学工業社製の二液型RTVゴム(型取り用)、及び東レ・ダウコーニング(株)製の型取り用シリコーンゴムを挙げることができる。
本発明の分析チップでは担体、カバー部材及び任意に接着部材を含む構造により規定される空隙内に封入された微粒子をさらに含むことが好ましい。当該微粒子を含むことにより、検体溶液をアプライした後に分析チップを揺動、回転等させることで、空隙内で微粒子を運動させ、検体溶液の十分な撹拌を達成し、より精密な分析を行うことができる。
特許文献4に開示される、微粒子を含む検体溶液をアプライしてカバーガラスを被せてシール剤により密閉する方法では、上述の通り操作が煩雑となり、且つ、バックグラウンドノイズの上昇を起こすことがある。しかし、本発明の分析チップの場合、カバー部材及び担体等が接着され一体となっているため、予め微粒子を封入しておくことができ、検体溶液のアプライする作業を容易に行うことが可能である。そして、検体溶液をアプライした後の貫通孔を塞ぐ作業においてもテープやシール剤が検体溶液と接触することがないので、バックグラウンドノイズが上昇しないという利点もある。
前記微粒子の形状は、特に限定されず、球状の形状以外に、多角形、円筒形などの任意の形状とすることができる。また、微粒子のサイズも特に限定されないが、例えば球状の微粒子の場合、0.1〜300μmの範囲とすることができ、また、円筒形の微粒子の場合、長さ50〜30000μm、底面直径10〜300μmの範囲とすることができる。前記微粒子の材質も、特に限定されないが、ガラス、セラミック(例えばイットリウム部分安定化ジルコニア)、金属(例えば金、白金、ステンレス)、プラスチック(例えばナイロンやポリスチレン)等を用いることができる。
本発明の分析チップは、微粒子を、予め封入した態様であることが好ましいが、これには限定されず、微粒子を封入されていない態様であってもよい。この場合、微粒子を使用せず分析を行ってもよく、検体溶液に微粒子を混入させて検体溶液のアプライと同時に空隙内に微粒子を充填してもよく、または検体溶液のアプライの前又は後に、貫通孔を介して微粒子を別途充填してもよい。
本発明の分析チップにおいては、カバー部材の外周部分にオーバーハング構造が設けられていることが好ましい。ここでオーバーハング構造とは、カバー部材の外周部分において、担体に近い部分より担体に遠い部分において突出した部分を有する構造をいう。オーバーハング構造の具体例を図11に示す。図11に示す分析チップは、カバー部材1の外周においてオーバーハング構造19を有する点において、図2に示す分析チップと相違している。当該オーバーハング構造を有することにより、容易に、しかも担体を損傷することなくカバー部材を脱離することができる。より具体的には、図2に示す分析チップの例においては、カバー部材1を担体2より脱離する際には、ピンセット等の器具をカバー部材と担体との隙間21に挿入しカバー部材1を持ち上げて脱離することが可能であるが、この方法では、ピンセット等で担体を損傷させ、担体の変形や削り屑等の発生をもたらし、分析に悪影響を与える可能性がある。一方、図11に示す分析チップの例においては、カバー部材1を担体2より脱離する際には、ピンセットやペンチ等の器具を、担体2とオーバーハング構造19との隙間20に挿入しカバー部材1を把持するなどして持ち上げて脱離することができ、これにより、容易に、しかも、担体を損傷することなくカバー部材を脱離することができる。
本発明の分析チップは、担体、カバー部材及び任意に接着部材を含む構造により規定される空隙を有するが、当該空隙は、1つの空間でもよく、複数の仕切られた空間であってもよい。複数の仕切られた空間は、例えば図12に示すような仕切り構造により設けることができる。図12に示す例においては、カバー部材の凸部1A及び担体2が接着部材3Aを介して接着することにより、複数の仕切られた空間8を設けている。複数の仕切られた空間を設ける別の例として、例えば図13に示すような仕切り構造を設けることもできる。図13に示す例においては、担体の凸部2B及びカバー部材1が接着部材3Bを介して接着することにより、複数の仕切られた空間8を設けている。また、さらに別の例として、図19に示すように、担体及びカバー部材に特に仕切り構造を設けるための凸部を設けず、接着部材3Aのみで空隙を仕切り、複数の仕切られた空間を設けることもできる。これらの例においては、空間8は、互いに連通せず、それぞれが別々に、1つ以上の貫通孔5及び液面駐止用チャンバー4を有することになる。このように、複数の仕切られた空間を設けることによって、1枚の分析チップに複数種の検体溶液をアプライすることが可能となり、従って複数種の検体を同時に1枚の分析チップで測定することができる。
また、本発明の分析チップは、一枚の担体あたり一枚のカバー部材を有していてもよく、二枚以上のカバー部材を有していてもよい。具体的には、図20及び図21に示す通り、一枚の担体2上に、複数のカバー部材1Bを有することができる。複数のカバー部材1Bのそれぞれは、それぞれ別の接着部材3Cを介して担体2上に設けることができる。好ましくは、複数のカバー部材1Bのそれぞれが、担体2との間に空隙8を有し、且つ各空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有することができ、そして、各カバー部材1Bがそれぞれ別の、選択結合性物質が固定化された領域R1を有することができる。このような態様をとることによって、上記複数の仕切られた空間を有する態様と同様に、複数種の検体を同時に1枚の分析チップで測定する等の効果を得ることができる。さらに、このような態様をとることにより、それぞれの領域R1についてカバー部材を独立して脱離させることができるので、例えば一つの領域R1について分析を行った後に他の領域R1を用いて分析を行うといった、独立した使用を行いうる。
本発明の分析チップを構成するカバーの材料としては、特に限定されるものではないが、検体溶液をアプライした際に、溶液の様子を観察可能とするために、透明な材料が好ましい。そのような材質としては、ガラス又はプラスチックが挙げられる。特に、貫通孔や液面駐止チャンバー等の構造を容易に作製可能という点から、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の透明樹脂を好ましく用いることができる。カバーの作製方法も特に限定されるものではなく、切削加工や射出成型法による加工が可能である。大量生産が可能という観点から、射出成型法を好ましく用いることができる。
本発明の分析チップを構成する担体は、前述の通り、好ましくは、その少なくとも一面の一部に、選択結合性物質が固定化された領域を有する。当該選択結合性物質が固定化された領域は、凹凸部を有し、その凸部上面に選択性適合物質が固定化されていることが好ましい。このような構造を取ることにより、検出の際、非特異的に吸着した検体を検出することがないので、ノイズが小さく、結果的によりS/Nが良好な結果を得ることができる。ノイズが小さくなる具体的な理由は、以下の通りである。すなわち、凸部上面に選択結合性物質を固定化した担体をスキャナーと呼ばれる装置を用いてスキャンすると、凹凸部の凸部上面にレーザー光の焦点が合っているため、凹部では、レーザー光がぼやけ、凹部に非特異的に吸着した検体の望まざる蛍光(ノイズ)を検出しがたいという効果があるためである。
凹凸部の凸部の高さに関しては、それぞれの凸部の上面の高さが略同一であるであることが好ましい。ここで、高さが略同一とは、多少高さの違う凸部の表面に選択結合性物質を固定化し、これと蛍光標識した検体とを反応させ、そして、スキャナーでスキャンした際、その信号レベルの強度差が問題とならない高さをいう。具体的に高さが略同一とは、高さの差が50μm以下であることをいう。高さの差は30μm以下であることがより好ましく、高さが同一であればなお好ましい。なお、本願でいう同一の高さとは、生産等で発生するばらつきによる誤差も含むものとする。最も高い凸部上面の高さと、最も低い凸部上面の高さの差が50μmより大きいと、高さのずれた凸部上面でのレーザー光がぼやけてしまい、この凸部上面に固定化された選択結合性物質と反応した検体からのシグナル強度が弱くなる場合があるため好ましくない。
また、凸部分の上面は、実質的に平坦であることが好ましい。ここで凸部上面が実質的に平坦とは、20μm以上の凹凸がないことを意味する。
本発明の分析チップは、さらに好ましくは、その担体における選択結合性物質が固定化された領域を有する面に、さらに平坦部が設けられていることが好ましい。凹凸部の凸部の上面の高さと平坦部分の高さは、略同一であることが好ましい。すなわち、平坦部の高さと凸部上面の高さの差は、50μm以下であることが好ましい。凸部上面の高さと平坦部の高さの差が50μmを超えると、検出できる蛍光強度が弱くなる場合があるため好ましくない。平坦部の高さと凸部上面の高さの差は、より好ましくは30μm以下であり、最も好ましくは、平坦部の高さと凸部の高さは同一である。
本発明の分析チップの構成要素として好ましく用いうる担体の具体例を図14及び15に例示する。図14及び15に示す例において、選択結合性物質が固定化された領域R1は、複数の凸部10を含む凹凸部により構成されており、その周りに平坦部9が設けられている。凸部10の上面には、選択結合性物質(例えば核酸)が固定化されている。この平坦部を使って、容易にスキャナーの励起光等の測定用の光線の焦点を凸部の上面に合わせることが可能となる。より具体的に説明すると、スキャナーが担体の表面に励起光の焦点を合わせる際には図16に示すように、バネ13で付勢して治具22に担体2を突き当て、この治具の突き当て面23の高さにレーザー光12が合焦するようレンズ11等により予め焦点を調整しておくことが多い。本発明の分析チップの担体の平坦部を治具の面23に突き当てることにより、容易に担体の凸部上面にスキャナーのレーザー光の焦点を合わせることが可能となる。なお、図16の例においては、担体2は、選択結合性物質が固定化された面が下側になるよう固定されている。
本発明の分析チップの担体において、選択結合性物質が固定化された凸部とは、データとして必要な選択結合性物質(例えば核酸)が固定化された部分をいうが、担体はその他に、何も固定化していない凸部や、ただ単にダミーの選択結合性物質を固定化した部分を有していてもよい。
本発明の分析チップの担体が、選択結合性物質が固定化された凸部を有する場合、当該凸部の上面の面積は略同一であることが好ましい。凸部の上面の面積が略同一であることにより、多種の選択結合性物質が固定化される部分の面積を同一にできるので、後の解析に有利である。ここで、凸部の上部の面積が略同一とは、凸部の中で最も大きい上面面積を、最も小さい上面面積で割った値が1.2以下であることを言う。
選択結合性物質が固定化された凸部の上面の面積は、特に限定される物ではないが、選択結合性物質の量を少なくすることができる点とハンドリングの容易さの点から、1mm2以下、10μm2以上が好ましい。
本発明で好ましく用いられる担体の凹凸部における凸部の高さ、即ち凸部上面と凹部底面との高さの差は、10μm以上、500μm以下が好ましく、50μm以上、300μm以下が特に好ましい。凸部の高さが10μmより低いと、スポット以外の部分の非特異的に吸着した検体試料を検出してしまうことがあり、結果的にS/Nが悪くなることがあるため好ましくない。また、凸部の高さが500μmより高いと、凸部が折れて破損しやすいなどの問題が生じる場合があり好ましくない。
本発明の分析チップが前記凹凸及び前記微粒子を含む場合における、凹凸部、カバー部材及び微粒子の関係の好ましい例を、図17を参照して説明する。図17に示した例では、DNA等の選択結合性物質14は、担体2の凸部上面10上に固定化されている。そして、微粒子(この場合は球状のビーズ)15は、担体2の凹部の空隙内に載置されている。選択結合性物質14及び微粒子15は、検体DNA(被検物質)が含まれる検体溶液(図示せず)に触れることになる。検体溶液は、担体2、接着部材3及びカバー部材1により規定される空隙内で保持されることになる。図17の例においては、担体の凸部上面10とカバー部材1との間隔の最短距離が、微粒子15の直径未満となっている。それにより、微粒子が凸部上面10に接触できなくなり、凸部上面10上の選択結合性物質14を傷つけることを防ぐことができる。微粒子が、例えば楕円形等の非球状の形状である場合は、凸部上面と容器との最短距離が微粒子の最小径未満であれば、同様に凸部上面10と微粒子との接触を防ぎ、選択結合性物質14の損傷を防ぐことが可能となる。
本発明の分析チップの担体の材質は、特に限定されないが、ガラス、セラミック、シリコンなどの無機材料、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーンゴム等のポリマーなどを挙げることができる。この中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマー、ガラス及びシリコンを特に好ましく用いることができる。また、上記材料に加え、担体を黒色にし光学的測定のS/N比を高めるため、カーボンブラック等の添加剤を配合することができる。
担体は、材質がポリマー等の場合、射出成形法、ホットエンボス法、鋳型内で重合させる方法等により成型することができる。また材質がガラスやセラミック等の無機物の場合、サンドブラスト法、シリコンの場合は公知の半導体プロセスなどで成型することができる。
成型した担体は、選択結合性物質をその表面に固定化するのに先立ち、必要に応じて各種の表面処理を施すことができる。かかる表面処理としては、具体的には例えば特開2004−264289号公報に記載されるものなどを挙げることができる。
担体の表面に固定化する選択結合性物質としては、被検物質と直接的又は間接的に、選択的に結合し得る各種の物質を用いることができ、代表的な例として、核酸、タンパク質、糖類及び他の抗原性化合物を挙げることができる。核酸は、DNAやRNAでもPNAでもよい。特定の塩基配列を有する一本鎖核酸は、該塩基配列又はその一部と相補的な塩基配列を有する一本鎖核酸と選択的にハイブリダイズして結合するので、本発明でいう「選択結合性物質」に該当する。また、タンパク質としては、抗体及びFabフラグメントやF(ab')2フラグメントのような、抗体の抗原結合性断片、並びに種々の抗原を挙げることができる。抗体やその抗原結合性断片は、対応する抗原と選択的に結合し、抗原は対応する抗体と選択的に結合するので、「選択結合性物質」に該当する。糖類としては、多糖類が好ましく、種々の抗原を挙げることができる。また、タンパク質や糖類以外の抗原性を有する物質を固定化することもできる。「選択結合性物質」として、特に好ましいものは、核酸、抗体及び抗原である。本発明に用いる選択結合性物質は、市販のものでもよく、また、生細胞などから得られたものでもよい。また、選択結合性物質として、担体の表面に細胞を固定化してもよい。
生細胞からのDNA又はRNAの調製は、公知の方法、例えばDNAの抽出については、Blinらの方法(Blin et al., Nucleic Acids Res. 3: 2303 (1976))等により、また、RNAの抽出については、Favaloroらの方法(Favaloro et al., Methods Enzymol.65: 718 (1980))等により行うことができる。固定化する核酸としては、更に、鎖状若しくは環状のプラスミドDNAや染色体DNA、これらを制限酵素により若しくは化学的に切断したDNA断片、試験管内で酵素等により合成されたDNA、又は化学合成したオリゴヌクレオチド等を用いることもできる。
本発明の分析チップを用いた測定方法に供せられる被検物質としては、測定すべき核酸、例えば、病原菌やウイルス等の遺伝子や、遺伝病の原因遺伝子等並びにその一部分、抗原性を有する各種生体成分、病原菌やウイルス等に対する抗体等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの被検物質を含む検体としては、血液、血清、血漿、尿、便、髄液、唾液、各種組織液等の体液や、各種飲食物並びにそれらの希釈物等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、被検物質となる核酸は、血液や細胞から常法により抽出した核酸を標識してもよいし、該核酸を鋳型として、PCR等の核酸増幅法によって増幅したものであってもよい。後者の場合には、測定感度を大幅に向上させることが可能である。核酸増幅産物を被検物質とする場合には、蛍光物質等で標識したヌクレオシド三リン酸の存在下で増幅を行うことにより、増幅核酸を標識することが可能である。また、被検物質が抗原又は抗体の場合には、被検物質である抗原や抗体を常法により直接標識してもよいし、被検物質である抗原又は抗体を選択結合性物質と結合させた後、担体を洗浄し、該抗原又は抗体と抗原抗体反応する標識した抗体又は抗原を反応させ、担体に結合した標識を測定することもできる。
本発明の被検物質の分析方法は、(A)前記本発明の分析チップに、前記貫通孔から被検物質をアプライする工程;(B)前記カバー部材に封止部材を貼付し、前記貫通孔を封止する工程;(C)前記被検物質を前記担体に選択的に結合させる工程;及び(D)前記担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定する工程を含む。
前記工程(A)は、必要に応じ上述のような標識、増幅等を施した被検物質を水溶液や適当な緩衝液等の溶液とし、ピペット等の通常の器具で貫通孔より注入することにより行うことができる。
前記工程(B)は、カバー部材上に、貫通孔の一部又は全て、好ましくは全てを封止する態様で封止部材を貼付することにより行うことができる。前記封止部材としては、例えばカプトン(商標、ポリイミドフィルム、東レ・デュポン社製)、シリコンテープ(アズワン株式会社製、型番NT−1001−36−0100)ポリエステル、セロハン、又は塩化ビニル製の粘着テープ等の可とう性のテープを好ましく挙げることができるが、これに限らず、非可とう性の板状の接着可能な任意の部材を用いることもでき、非定型のシーリング剤を用いることもできるが、液面駐止用チャンバーによる本発明の効果をより良好に得るという観点からは、可とう性のテープ及び板状の部材が好ましく、操作の簡便性などの観点から、可とう性のテープがさらに好ましい。
前記工程(B)において封止部材としてテープ又は板状の部材を用いる場合、その使用枚数は任意である。具体的には、カバー部材上の全ての貫通孔を一枚の封止部材で封止してもよく、複数の封止部材を用いてそれぞれで複数の貫通孔の一部を封止してもよい。また、前記の通り一枚の担体上に複数のカバー部材が設けられている場合、カバー部材のそれぞれに別々の封止部材を用いてもよく、複数のカバー部材上の貫通孔をまとめて一枚の封止部材で封止してもよい。通常は、一枚のカバー部材あたり一枚の封止部材を用いることが、簡便且つ確実な封止を達成しうることから好ましい。
前記工程(B)による封止の具体例を、再び図17を参照して説明する。図17の例では、検体溶液(図示せず)を貫通孔5よりアプライした後、可とう性の粘着テープ6を、液面駐止用チャンバー4の全面を覆うように貼付し、貫通孔を封止している。このような態様により、簡便で且つ検体溶液の漏出や測定誤差を招かない封止を達成できる。
前記工程(C)は、従来の分析チップにおける操作と全く同様に行うことができる。前記工程(C)は、好ましくは前記分析チップとして前記担体の表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有するものを用い、前記被検物質と前記選択結合性物質とを相互作用させ、前記被検物質を前記選択結合性物質を介して前記担体に結合させることにより行うことができる。反応温度及び時間は、ハイブリダイズさせる核酸の鎖長や、免疫反応に関与する抗原及び/又は抗体の種類等に応じて適宜選択されるが、核酸のハイブリダイゼーションの場合、通常、40℃〜70℃程度で1分間〜十数時間、免疫反応の場合には、通常、室温〜40℃程度で1分間〜数時間程度である。また、前記工程(C)においては、必要に応じて、分析チップを揺動、回転等させ、選択的結合を促進することができる。選択的結合が終了した後、通常はカバー部材を脱離させた後、次の工程(D)に供することができる。
前記工程(D)も、従来の分析チップにおける操作と全く同様に行うことができる。例えば、適宜蛍光標識され、選択結合性物質と結合した被検物質の量について、公知のスキャナ等により、その蛍光量を読み取ることにより測定することができる。
本発明の分析方法において、選択結合性物質として核酸を固定化した場合には、この核酸又はその一部と相補的な配列を有する核酸を測定することができる。また、選択結合性物質として抗体又は抗原を固定化した場合には、この抗体又は抗原と免疫反応する抗原又は抗体を測定することができる。なお、本明細書でいう「測定」には検出と定量の両者を示すものである。
本発明の分析キットは、前記本発明の分析チップと、前記カバー部剤に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含む。当該封止部材としては、前記本発明の分析方法の工程(B)において説明したものと同様のものを含むことができる。本発明の分析キットは、前記本発明の分析方法に従って使用することができる。
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
(DNA固定化担体の作製)
平均分子量5万のPMMA(ポリメチルメタクリレート)99質量部及びカーボンブラック(三菱化学製 商品名 #3050B)1質量部を混合し樹脂組成物を調製した。
公知の方法であるLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセスを用いて、射出成形用の型を作製した。この型を用い、上記樹脂組成物を射出成型し、後述する通りの形状を有する黒色の担体を得た。
担体の形状は、概ね図14及び図15に示す通りの形状であり、大きさが縦76mm、横26mm、厚み1mmであり、担体の中央部分R1を除き表面は平坦であった。担体の中央部分R1には、縦横10mm、深さ0.2mmの矩形の凹んだ部分が設けてあり、この凹みの中に、直径0.2mm、高さ0.2mmの凸部10を64箇所(8×8)設けた(図14及び図15は概略図であるため、図中に示される凸部の数は、実際のものより少ない。)。凹凸部分の凸部上面の高さ(64箇所の凸部の高さの平均値)と平坦部分9との高さの差を測定したところ、3μm以下であった。また、64個の凸部上面の高さのばらつき(最も高い凸部上面の高さと最も低い凸部上面との高さの差)を測定したところ、3μm以下であった。さらに、凸部のピッチL1(凸部中央部から隣接した凸部中央部までの距離)は0.6mmであった。
この黒色担体の分光反射率と、分光透過率を測定したところ、分光反射率は、可視光領域(波長が400nmから800nm)のいずれの波長でも5%以下であり、また、同範囲の波長で、厚み方向の透過率は0.5%以下であった。分光反射率、分光透過率とも、可視光領域において特定のスペクトルパターン(ピークなど)はなく、スペクトルは一様にフラットであった。なお、分光反射率は、JIS Z 8722の条件Cに適合した照明・受光光学系を搭載した装置(ミノルタカメラ製、CM−2002)を用いて、担体からの正反射光を取り込んだ場合の分光反射率を測定した。
(プローブDNAの固定化)
配列番号1に示される配列を有し、5’末端がアミノ化されたDNAを合成した。このDNAを、図18に示すスキームにしたがって固定化した。
上記の担体2を10Nの水酸化ナトリウム水溶液に70℃で12時間浸漬した。これを、純水、0.1NのHCl水溶液、純水の順で洗浄し、担体表面にカルボキシル基を生成した。
DNAを純水に0.3nmol/μlの濃度で溶かして、ストックソリューションとした。担体に点着する際は、PBS(NaClを8g、Na2HPO4・12H2Oを2.9g、KClを0.2g、KH2PO4を0.2g純水に溶かし1lにメスアップしたものにpH調整用の塩酸を加えたもの、pH5.5)でプローブDNAの終濃度を0.03nmol/μlとし、かつ、担体表面のカルボン酸とプローブDNAの末端のアミノ基とを縮合させるため、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を加え、この終濃度を50mg/mlとした。そして、この混合溶液をガラスキャピラリーで担体凸部上面に点着した。次いで、担体を密閉したプラスチック容器に入れて、37℃、湿度100%の条件で20時間程度インキュベートして、純水で洗浄し、担体凸部上面上に固定化プローブDNAを得た。
(検体DNAの調製)
検体DNAとして、上記DNA固定化担体に固定化されたプローブDNAとハイブリダイズ可能な、配列番号4の塩基配列を持つDNA(968塩基)を用いた。このDNAの調製方法を以下に示す。
配列番号2と配列番号3の塩基配列を持つDNAを合成した。これらをそれぞれ純水に溶解して濃度100μMの水溶液とした。次いで、pKF3 プラスミドDNA(タカラバイオ(株)製品番号;3100)(配列番号5:2264塩基)を用意して、これをテンプレートとし、配列番号2および配列番号3のDNAをプライマーとして、PCR反応(Polymerase Chain Reaction)により増幅を行った。
PCRの条件は以下の通りである。すなわち、ExTaq 2μl、 10×ExBuffer 40μl、 dNTP Mix 32μl(以上はタカラバイオ(株)製 製品番号RR001Aに付属)、 配列番号2のDNA溶液を2μl、配列番号3のDNA溶液を2μl、 テンプレート(配列番号5)を0.2μl加え、純水によりトータル400μlにメスアップした。これらの混合液を、4つのマイクロチューブに分け、サーマルサイクラーを用いてPCR反応を行った。これを、エタノール沈殿により精製し、40μlの純水に溶解した。PCR反応後の溶液の一部をとり電気泳動で確認したところ、増幅したDNAの塩基長は、およそ960塩基であり配列番号4(968塩基)に示す配列を有するDNAが増幅されていることを確認した。
次いで、9塩基のランダムプライマー(タカラバイオ(株)製;製品番号3802)を6mg/mlの濃度に溶かし、上記のPCR反応後精製したDNA溶液に2μl加えた。この溶液を100℃に加熱した後、氷上で急冷した。これらにKlenow Fragment(タカラバイオ(株)製;製品番号2140AK)付属のバッファーを5μl、dNTP混合物(dATP、dTTP、dGTPの濃度はそれぞれ2.5mM、dCTPの濃度は400μM)を2.5μl加えた。さらに、Cy3−dCTP(アマシャムファルマシアバイオテク製;製品番号PA53021)を2μl加えた。この溶液に10UのKlenow Fragmentを加え、37℃で20時間インキュベートし、Cy3で標識された検体DNAを得た。なお、標識の際ランダムプライマーを用いたので検体DNAの長さには、ばらつきがある。最も長い検体DNAは配列番号4(968塩基)となる。なお、検体DNAの溶液を取り出して、電気泳動で確認したところ、960塩基に相当する付近にもっとも強いバンドが現れ、それより短い塩基長に対応する領域に薄くスメアがかかった状態であった。そして、これをエタノール沈殿により精製し、乾燥した。
この標識化された検体DNAを、1重量%BSA(ウシ血清アルブミン)、5×SSC(5×SSCとは、20×SSC(シグマ製)を純水にて4倍に希釈したもの。)、0.1重量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.01重量%サケ精子DNAの溶液(各濃度はいずれも終濃度)、400μlに溶解し、ハイブリダイゼーション用のストック溶液とした。
以下の実施例、比較例において、ハイブリダイゼーションの際の検体溶液は、特に断りのない限り、上記で調製したストック溶液を、1重量%BSA、5×SSC、0.01重量%サケ精子DNA、0.1重量%SDSの溶液(各濃度はいずれも終濃度)で200倍に希釈したものを用いた。なお、この溶液の検体DNAの濃度を測定したところ、1.5ng/μLであった。
(カバー部材の接着−分析チップの調製)
厚さ1mmのPMMA板から切削加工により図17に示す液面駐止用チャンバー4が設けられた貫通孔5を4つ有するカバー部材(外周部にオーバーハング構造有り)を作製し、これを両面テープ3(厚さ100μm)を用いてプローブDNA固定化領域に被さるように担体2と接着し、図17に示す分析チップ(但し、微粒子15は含まない)を得た。
(ハイブリダイゼーション)
上記で得られた分析チップに上記検体DNAをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、マイクロピペットを用いてハイブリダイゼーション用の溶液50μlを貫通孔5より注入した。その後、カプトンテープ(アズワン株式会社製、型番 5−5018−01)で貫通孔を塞いだ。但し、カプトンテープとしては3mm角にカットしたもの4枚を用い、それぞれで1つずつの貫通孔を塞ぐこととした。その後、分析チップを42℃の条件で16時間インキュベートした。インキュベート後、担体からカバー部材と両面テープを脱離後に担体を洗浄、乾燥した。
(測定)
DNAチップ用のスキャナー(Axon Instruments社のGenePix 4000B)に上記処理後の担体をセットし、レーザー出力33%、フォトマルチプライヤーの電圧設定を500にした状態で測定を行った。その結果を表1に示す。ここで、蛍光強度とはスポット内の蛍光強度の平均値であり、バックグラウンドノイズとは、プローブDNAを固定化していない凸部の蛍光強度である。十分な蛍光シグナルが得られ、バックグラウンドノイズも低く抑えられた。操作も簡便であって、ハイブリダイゼーション後に検体溶液中に混入した泡もほとんど見られなかった。
比較例1
カバー部材として液面駐止用チャンバー4が無く、図5に示すような形式の貫通孔を有するものを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。
実施例1と比べて操作性が非常に悪く、検体溶液を注入した後、カプトンテープで貫通孔を塞ぐことが困難であった。また、ハイブリダイゼーション後に泡の混入が見られ、バックグラウンドノイズも実施例1に比べて高くなった。
実施例2
カバー部材として貫通孔を1つのみ有するものを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。十分に練習をすることで検体溶液を貫通孔より注入することが出来たが、少し空気が抜けきれなかった。具体的には、担体の凹部の隅3箇所に空気が残った。蛍光強度、バックグラウンドノイズは実施例1と同等であった。
実施例3
カバー部材として貫通孔を2つのみ有するものを用いた以外は、実施例1と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。慎重に操作することで検体溶液を貫通孔より注入することが出来たが、少し空気が抜けきれなかった。具体的には、担体の凹部の隅2箇所に空気が残った。蛍光強度、バックグラウンドノイズは実施例1と同等であった。
実施例4
両面テープ3による接着に代えて、シルガード184(ダウコーニング社製)により、接着層が100μmとなるよう設定して接着したこと以外は、実施例1と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。操作性、蛍光強度、バックグラウンドノイズにおいて実施例1と同等の結果が得られた。
実施例5
両面テープ3による接着に代えて、型取り用シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SH9555RTV)により、接着層が100μmとなるよう設定して接着したこと以外は、実施例1と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。操作性、蛍光強度、バックグラウンドノイズにおいて実施例1と同等の結果が得られた。
実施例6
ハイブリダイゼーション用の溶液を注入した後、封止部材としてカプトンテープの代わりにシリコンテープ(アズワン株式会社製、型番NT−1001−36−0100)を用いて封止を行ったこと以外は、実施例5と同様に操作し、分析チップを調製し、ハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。結果を表1に示す。操作性、蛍光強度、バックグラウンドノイズにおいて実施例1と同等の結果が得られた。
Figure 2007114191
表1において、検体溶液の入れ易さの「○」は、容易に空隙内に空気を残さずに注入可能なことを示し、「△」は、慎重に操作をすれば、空隙内に多少空気が残るものの注入可能なことを示す。また、封止部材の貼り易さの「○」は、容易にカプトンテープにて貫通孔を塞ぐことが可能なことを示し、「×」は、それが困難であることを示す。
参考例1
ハイブリダイゼーションの工程においてインキュベート後に担体からカバー部材及び両面テープを脱離しなかった他は、実施例1と同様に操作し、カバー部材が担体に接着された状態で、分析チップを測定器であるGenePix 4000Bにセットすることを試みた。カバー部材、接着層、担体からなる厚みは、測定器のホルダーの制限を越えていたためセッティングが不可能であった。
実施例7
オーバーハング構造のないカバー部材を用いた検討を行った。実施例1で用いたものと同一のオーバーハング構造を有する分析チップ10枚と、オーバーハング構造がない他は実施例1で用いたものと同一の分析チップ10枚とを作製して、実施例1と同様の実験を行った。その結果、ハイブリダイゼーション後にカバー部材を脱離する工程において、オーバーハング構造のあるカバー部材は10枚全て担体を傷つけること無く脱離できた。一方、オーバーハング構造のないカバー部材については、3枚においてプローブ固定化領域を損傷し、データが取れなかったものの、残る7例においてはデータを取ることができた。
実施例8
両面の接着力が異なる両面テープを用いた実験を行った。実施例1で用いたものと同一の、両面の接着力が等しい両面テープで担体及びカバー部材を接着した分析チップ10枚と、強い方の接着力が、弱い方の接着力の約2倍である両面テープを用い、弱い方の面を担体側として担体とカバー部材とを接着した他は実施例1で用いたものと同一の分析チップ10枚とを作製して、実施例1と同様の実験を行った。結果は、両面で接着力の異なるテープで作製した分析チップは10枚全てにおいてカバー部材と一緒に両面テープも担体より脱離することができた。両面の接着力が等しい両面テープを用いた分析チップは5枚のみが、カバー部材と一緒に両面テープを脱離することができた。残りの5枚はカバー部材の脱離後、担体に両面テープが残っておりそれをピンセットで剥がすことが必要であった。
実施例9
カバー部材、接着層、担体で囲まれた空間に微粒子をあらかじめ入れておいたチップを作製し、検体溶液を攪拌しながらハイブリダイゼーションを行うことを検討した。
(ガラスビーズの修飾)
直径が150μmの球状のガラスビーズ10gを10N NaOH溶液に浸漬した後、純水で洗浄した。ついで、APS(3−アミノプロピルトリエトキシシラン;信越化学工業(株)製)を2重量%の割合で純水に溶解した後、上記のガラスビーズを1時間浸漬し、この溶液から取り出した後に110℃で10分間乾燥した。このようにして、ガラスビーズの表面にアミノ基を導入した。
ついで、5.5gの無水コハク酸を1−メチル−2−ピロリドン335mlに溶解させた。1Mの50mlのホウ酸ナトリウム(ホウ酸3.09gとpH調整用の水酸化ナトリウムを加えて、純水で50mlにメスアップしたもの。pH8.0)に上記コハク酸溶液に加えた。この混合液に上記のガラスビーズを20分間浸漬した。浸漬後、純水で洗浄および乾燥した。このようにして、ガラスビーズの表面のアミノ基と無水コハク酸を反応させて、ガラスビーズ表面にカルボキシル基を導入した。
上記の手順で修飾したガラスビーズ2mgを担体の凹部に入れてからカバー部材を接着した他は、実施例1と同様に操作して、図17に示す構成を有する分析チップを得た。この分析チップに、検体DNAをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、マイクロピペットを用いて、実施例1で調製したハイブリダイゼーション用の溶液50μlを貫通孔5より注入した。その後、カプトンテープで貫通孔を塞ぎ、これをマイクロチューブローテーター(アズワン製、商品番号:1−4096−01)の回転面に設けたプラスチック容器内に固定し、42℃、16時間インキュベートした。その際、ローテーターの回転数は3rpmとし、ローテーターの回転面は、水平面と直角となるようにした。さらに担体のプローブDNA固定化面は、ローテーターの回転面に対し直角となるようにした。以上のようにすることでガラスビーズが重力方向に移動し続けることになり、検体溶液を攪拌しながらハイブリダイゼーションを行うことができた。インキュベート後、担体からカバー部材と両面テープを脱離後に担体を洗浄、乾燥し、実施例1と同様の蛍光強度等の測定を行った。結果を表2に示す。カバー部材、接着層、担体で囲まれた空間に微粒子をあらかじめ入れておいても操作性、バックグラウンドノイズは実施例1と同等であった。また、攪拌を行うことで実施例1の4倍の蛍光強度が得られた。
Figure 2007114191
実施例10
一枚のチップ上にカバー部材、接着層、担体で囲まれた空間が2箇所あるDNAチップの検討を行った。凹凸部R1が同一表面に2箇所ある他は実施例1で作製したものと同様の構造の担体を作製し、プローブDNAを、それぞれの凹凸部の中の凸部に、実施例1と同様に固定化した。それぞれの凹凸部に、実施例9で調製したものと同一の修飾ガラスビーズ2mgずつを入れてから、図19に示す通り、2箇所の凹凸部を区切るように厚さ100μmの両面テープ3を用いてカバー部材1と担体2とを接着し、分析チップを得た。なお、カバー部材1には、貫通孔及び液面駐止用チャンバーを、それぞれの空間に4つずつ設けた。
この分析チップの2箇所それぞれを用いて、実施例1と同様のハイブリダイゼーション及び蛍光強度等の測定を行った。但し、検体DNA溶液については、実施例1と同様のストック溶液を200倍希釈したものと、2000倍希釈したものをそれぞれの箇所に別々にアプライした。結果を表3に示す。仕切り構造を設けることで1枚のDNAチップで2種類の濃度の検体溶液を測定することができた。
実施例11
検体溶液としてストック溶液の2000倍希釈したものを用いた他は実施例1と同様の実験を行った。結果を表3に示す。実施例10の2000倍希釈の場合と同等の結果が得られた。
Figure 2007114191
図1は、本発明の分析チップの一例を概略的に示す斜視図である。 図2は、図1に示される本発明の分析チップを矢印A1に沿った面で切断した部分断面図である。 図3は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの一例を示す部分断面図である。 図4は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの封止の一例を示す部分断面図である。 図5は、液面駐止チャンバーを有しない貫通孔の封止の一例を示す部分断面図である。 図6は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの別の一例を示す部分断面図である。 図7は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの別の一例を示す部分断面図である。 図8は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの別の一例を示す部分断面図である。 図9は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの別の一例を示す部分断面図である。 図10は、本発明の分析チップにおける貫通孔及び液面駐止チャンバーの別の一例を示す部分断面図である。 図11は、オーバーハング構造を有する本発明の分析チップの一例を概略的に示す縦断面図である。 図12は、仕切り構造を有する本発明の分析チップの一例を概略的に示す縦断面図である。 図13は、仕切り構造を有する本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。 図14は、本発明の分析チップを構成する担体の一例を概略的に示す斜視図である。 図15は、図14に例示される担体の縦断面図である。 図16は、本発明の分析チップを用いた反応の結果を読み取る治具及びスキャナーの一例を概略的に示す縦断面図である。 図17は、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。 図18は、本願実施例及び比較例における、プローブDNAの固定化を示す概略図である。 図19は、本願実施例8で調製した、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す縦断面図である。 図20は、本発明の分析チップの別の一例を概略的に示す斜視図である。 図21は、図20に示される本発明の分析チップを矢印A2に沿った面で切断した部分断面図である。
符号の説明
1、1B カバー部材
1A カバー部材凸部
2 担体
2B 担体凸部
3、3C 接着部材
3A、3B 仕切り構造の接着部材
4 液面駐止用チャンバー
5、5A、5B 貫通孔
6 封止部材(テープ)
7 検体溶液
8 空隙
9 平坦部
10 凸部
11 対物レンズ
12 レーザー励起光
13 マイクロアレイを治具に突き当てるためのバネ
14 担体に固定化された選択結合性物質(DNA)
15 微粒子(ビーズ)
19 オーバーハング構造
20 担体とオーバーハング構造との隙間
21 担体とカバー部材との隙間
22 治具
23 治具突き当て面
R1 選択結合性物質が固定化された領域(凹凸部)
L1 凸部ピッチ

Claims (16)

  1. 担体と、前記担体の表面を覆い前記担体と接着されたカバー部材とを備え、前記担体と前記カバー部材との間に空隙を有する分析チップであって、
    前記カバー部材は前記空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有し、前記貫通孔のうち少なくとも1つが、その経路の一部に液面駐止用チャンバーを有することを特徴とする分析チップ。
  2. 前記担体が、その表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有することを特徴とする、請求項1記載の分析チップ。
  3. 前記カバー部材が、前記担体に、脱離可能に接着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の分析チップ。
  4. 前記カバー部材が、前記貫通孔を複数有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の分析チップ。
  5. 前記カバー部材が、前記貫通孔を3つ以上有することを特徴とする請求項4記載の分析チップ。
  6. 前記カバー部材が、前記貫通孔を複数有し、それぞれの貫通孔の、前記液面駐止チャンバー部分以外の孔径が異なることを特徴とする請求項4又は5記載の分析チップ。
  7. 前記カバー部材の外周部分にオーバーハング構造が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の分析チップ。
  8. 前記担体と前記カバー部材との間に介在しこれらを接着させる接着部材をさらに有し、前記接着部材が、両面の接着力が異なる両面テープであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の分析チップ。
  9. 前記担体と前記カバー部材との間に介在しこれらを接着させる接着部材をさらに有し、前記接着部材が、シリコーン系ポリマー、アクリル系ポリマー及びこれらの混合物からなる群より選択されるポリマーを含む樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の分析チップ。
  10. 前記空隙内に封入された微粒子をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の分析チップ。
  11. 前記空隙が複数の空間に仕切られ、それぞれの仕切られた空間が1つ以上の貫通孔を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項記載の分析チップ。
  12. 複数の前記カバー部材を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の分析チップ。
  13. 前記複数のカバー部材のそれぞれが、前記担体との間に空隙を有し且つ各空隙に連通する1つ以上の貫通孔を有し、
    前記担体が、それぞれの前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有することを特徴とする、請求項12記載の分析チップ。
  14. (A)請求項1〜13のいずれか1項記載の分析チップに、前記貫通孔から被検物質をアプライする工程;
    (B)前記カバー部材に封止部材を貼付し、前記貫通孔を封止する工程;
    (C)前記被検物質を前記担体に選択的に結合させる工程;及び
    (D)前記担体上に前記選択結合性物質を介して結合した前記被検物質量を測定する工程
    を含むことを特徴とする、被検物質の分析方法。
  15. 前記分析チップが、前記担体の表面であって前記空隙内に位置する領域上に固定化された選択結合性物質を有し、前記工程(C)が、前記被検物質と前記選択結合性物質とを相互作用させ、前記被検物質を前記選択結合性物質を介して前記担体に結合させることを含む、請求項14記載の分析方法。
  16. 請求項1〜13のいずれか1項記載の分析チップと、前記カバー部材に貼付し前記貫通孔を封止する封止部材とを含むことを特徴とする分析キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN113265321A (zh) * 2021-06-08 2021-08-17 杭州霆科生物科技有限公司 一种微流控免疫和核酸检测芯片

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