JP2007271075A - 水素供給システム - Google Patents

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一志 沼▲崎▼
Hiroaki Suzuki
浩明 鈴木
Emi Uchida
恵美 内田
Toshiyuki Saito
利幸 齊藤
Takumi Mio
巧美 三尾
Munetoshi Azeyanagi
宗利 畔柳
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Abstract

【課題】摺動面における焼き付きを抑える水素供給システムを提供する。
【解決手段】水素供給システムは、水素消費部に水素ガスを供給する水素供給源と、水素供給源に接続され摺動面を備える機械要素とを具備する。機械要素の摺動面には、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下に設定されている基油を主要成分とする潤滑グリース100が塗布されている。
【選択図】図3

Description

本発明は水素消費部に水素ガスを供給する水素供給システムに関する。
従来、水素ガスを供給する水素供給源としての水素タンクと、水素タンクに接続され水素タンクからの水素ガスが通過可能な流路を形成する機械要素とを備える水素供給システムが知られている(特許文献1)。機械要素は摺動面を備える。摺動面は、水素脆性に対して耐久性を有する金属で形成されている。このような金属としては、JIS−SUS316L等のステンレス鋼、A6061−T6等のアルミニウム合金が挙げられる。これにより機械要素を構成する摺動面における水素脆性に対する耐久性が向上している。
特開2005−23975号公報
上記した水素供給システムによれば、水素脆性に対する耐久性が向上しているものの、このような金属は摺動性が充分ではない。使用条件によっては、摺動面の母材において焼き付きが発生する可能性がある。また、水素ガスが高圧である場合には、通過する高圧の水素ガスの経路に潤滑グリースが存在するとき、高圧の水素ガスにより潤滑グリースの基油が蒸発したり、物理的に飛ばされたりすることも考えられる。この場合、摺動面の母材の焼き付きが一層発生し易いおそれがある。上記した事情により本発明は開発されたものであり、摺動面における焼き付きを抑えることができる水素供給システムを提供する。
様相1の水素供給システムは、水素消費部に水素ガスを供給する水素供給源と、水素供給源に接続され水素ガスを吐出するアウトポートを備えると共に摺動面を備える機械要素とを具備する水素供給システムにおいて、機械要素の摺動面には、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下に設定されている基油を主要成分とする潤滑グリースが塗布されていることを特徴とする。潤滑グリースは基油に増ちょう剤(一般的には微粒子)を添加したものである。基油としては、炭化フッ素系、フッ素系、炭化水素系、非炭化水素系が用いられるが、化学的安定性が高い炭化フッ素系、フッ素系が好ましい。潤滑グリースの基油の蒸気圧が上記したように低いため、基油の蒸発が抑制される。このため機械要素の摺動面に基油が残留し易くなり、摺動面における焼き付きが抑制される。
様相2の水素供給システムは、水素ガスを供給する水素供給源と、水素供給源に接続され水素ガスを吐出するアウトポートを備えると共に摺動面を備える機械要素とを具備する水素供給システムにおいて、機械要素の摺動面には潤滑グリースが塗布されており、潤滑グリースは、基油と、基油に分散されたフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子とを主要成分として包含することを特徴とする。フッ素系高分子樹脂ポリマーは、摩擦係数が低くて固体潤滑性を有する。潤滑グリースの基油が蒸発したり、あるいは、水素ガスの通過により潤滑グリースの基油が物理的に飛ばされたとしても、固体潤滑性を有するフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子が、摺動面になじんで残留する頻度が確保される。当該微粒子は固相であるため、液相の基油に比較して、摺動面の微小凹凸に機械的に係合し易いからである。このため、使用期間が長期にわたったとしても、あるいは、基油の蒸発または飛散が進行したとしても、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子による固体潤滑性が確保され、機械要素の摺動面における焼き付きが抑制される。
水素供給システムは、水素ガスを供給する水素供給源と、水素供給源に接続され水素ガスを吐出するアウトポートを備えると共に摺動面を備える機械要素とを備えている。水素供給源は、高圧水素ガス等の水素ガスを貯蔵する水素タンクが挙げられる。水素タンクは、水素ガスを貯蔵する水素タンク方式、液化水素を貯蔵する方式、水素吸蔵合金を貯蔵する方式でも良い。水素タンク方式のタンク圧は最高圧で例えば50MPa、90MPaにできる。機械要素としては弁装置、ポンプ装置が挙げられるが、何でも良い。機械要素は摺動面を備える。摺動面としては可動側でも固定側でも良い。アウトポートは水素ガスを吐出するポートである。
様相1によれば、機械要素の摺動面には、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下に設定されている基油を主要成分とする潤滑グリースが塗布されている。基油の蒸気圧が低いため、使用期間が長期化しても基油の蒸発が抑制され、機械要素の摺動面における焼き付きが抑制される。蒸気圧を200℃で規定したのは、摺動部における局所的な温度上昇を考慮したものである。この場合、200℃における蒸気圧が1×10−3Pa以下(または1×10−4Pa以下)に設定されている基油を主要成分とする潤滑グリースが塗布されていても良い。なお、使用される環境温度が低い方が蒸気圧が低いため、マイナス50℃からプラス20℃までの温度領域では、基油の蒸気圧は1×10−5Pa以下であることが好ましい。
様相2によれば、機械要素の摺動面には潤滑グリースが塗布されており、潤滑グリースは、基油と、基油に分散されたフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子とを主要成分として包含する。潤滑グリースを100質量%とするとき、固体潤滑剤粒子の総和は1質量%以下と少なく設定されており、具体的には、二硫化モリブデンの粒子および/またはカーボン粒子の総和が1質量%以下に設定されていることが好ましい。二硫化モリブデンの粒子は固体潤滑剤として良く使用されるものであるが、水素消費部が燃料電池システムであるときには、二硫化モリブデンは燃料電池の発電性能に悪影響を与えるおそれがある。黒鉛粉末粒子等のカーボン粒子については、固体潤滑グリースとして良く使用されるものであるが、カーボン粒子は、SUS316L等といった水素脆性に対して耐久性を有する金属の内部に炭素成分が浸透して金属を脆くするおそれがある。このため二硫化モリブデンおよび/またはカーボン粒子の総和は、0.5質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以下、0.01質量%以下が好ましい。実質的に0質量%設定されていることがより好ましい。
機械要素の摺動面において、潤滑グリースが塗布されている領域は、Raで3.2μm以下に設定されていることが好ましい。好ましくは、Raで1.6μm以下に設定されていることが好ましい(0.1〜1.6μm)。上記した表面粗さであると、フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子が1次粒子としてまたは凝集して2次粒子として、摺動面から微視的に露出することを期待できる。潤滑グリースが塗布される塗布量が多いと、潤滑グリースの飛散する量が増加する。潤滑グリースが塗布される塗布量が少ないと、焼き付きが発生するおそれがある。これらの事情を考慮し、潤滑グリースが塗布される塗布量は、1平方ミリメートルあたり2ミリグラムに設定されていることが好ましい。1平方センチメートルあたり200ミリグラムに設定されていることが好ましい。
フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリフルオライド(PVF)が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上である形態が例示される。これらは耐熱性、耐寒性、耐候性、耐化学薬品性に優れており、また変形可能である。
フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子は変形できるため、変形により機械要素の摺動面の表面粗さに馴染んで、摺動面に付着して残留することができる。フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子が機械要素の摺動面の表面粗さに馴染んで残留させることを考慮すると、当該微粒子の1次粒子径が5μm以下または2μm以下であることが好ましい。当該微粒子の1次粒子径としては1.5μm以下、1μm以下、0.5μm以下にできる。なお、微粒子が凝集して2次粒子となることがある。2次粒子径としては5〜10μmが考えられるが、これらに限定されるものではない。
好ましくは、機械要素の摺動面は機械加工されており、機械加工で形成された表面粗さを有する領域に潤滑グリースが塗布されている。この場合、切削痕が形成されるため、切削痕の微小凹凸に微粒子が係合して残留し易くなる。切削痕としては、摺動面の軸芯を中心として周方向に沿って形成されていても良いし、摺動面の軸芯に沿って形成されていても良い。この場合、切削痕の微小凹凸に残留するフッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子は、閉弁力等の外力が作用すると、弾性的および/または塑性的に変形することが期待される。このように微小凹部に存在する微粒子が変形すると、隣り同士の微粒子は互いに接近または接触し易くなる。故に、微粒子の弾性変形を利用したシール性が更に向上する。
好ましくは、機械要素の摺動面の少なくとも一方は、金属で形成されており、摺動面の相手側は、微粒子を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーよりも硬い樹脂で形成されている。機械要素が弁装置であれば、弁体を金属、弁体の相手側である弁座を前記樹脂(微粒子を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーよりも硬い樹脂)とすることができる。金属としては、機械要素の摺動面は、耐水素ぜい性を有する金属で形成されていることが好ましい。このような金属としては、オーステナイト系の鋼(JIS−SUS316L等のステンレス鋼)、A6061−T6等のアルミニウム合金が挙げられる。フッ素系高分子樹脂ポリマーよりも硬い樹脂としては、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、ポリカーボネイト、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。
本発明では、機械要素の摺動面が鉄系である場合には、機械要素の摺動面が窒化処理された窒化処理層を備えており、窒化処理により形成された表面粗さを有する領域に、潤滑グリースが塗布されて存在している形態が例示される。窒化処理層の平均硬さは、機械要素の母材の平均硬さよりも硬く、例えばHv800〜1500、特にHv1100〜1400が好ましい。これにより摺動面の耐摩耗性が向上し、また、初期なじみ性が向上し、焼き付きが抑えられる。窒化処理としては、ガス窒化法、塩浴窒化法、イオン窒化法を採用できる。殊にガス窒化が好ましい。なかでもフッ化窒化法が好ましい。フッ化窒化法は、フッ化処理とその後の窒化処理とを含む。フッ化処理により摺動面の酸化膜の除去性を高める。フッ化処理は、機械要素の摺動面を所定の温度領域に加熱しつつ、フッ素化合物(NF,BF,CF等)やフッ素(F)を含むガスを摺動面に所定時間(一般的には数分〜数十分)接触させて行う。この場合、次のような反応が生成していると推定される。摺動面に形成されていたFeO,Fe、Cr等の酸化物が、FeF,FeF,CrF,CrFとなり、これらの化合物を含む薄いフッ化膜が生成される。その後、アンモニア(NH)の分解で生成された窒素を摺動面に浸透させて窒化処理を行うと、上記したフッ化膜は還元または破壊され、活性化された金属の母材が形成されると同時に、活性期の窒素が金属の母材の内部に浸透、拡散していくものと推察される。フッ化処理は330〜370℃の温度領域で行うことができる。窒化処理は400〜600℃の温度領域で行うことができる。上記したフッ化窒化法であれば、窒化処理の温度を幅広い温度範囲で設定可能となる。従って、窒化処理温度をアンモニアの分解反応が起こる最下限温度域まで低下させることが可能となり、機械要素の歪みを抑制することができる。更に上記した窒化処理により機械要素の摺動面の表面粗さが適度に荒れるため、潤滑グリースの構成成分(基油、微粒子)の保持性を向上させることができる。この場合、初期なじみ性を一層高めることができ、更に潤滑グリースの膜切れを抑制することができる。殊に、水素ガスが高圧高速で流れる雰囲気において機械要素の摺動面が使用されるときであっても、摺動面における潤滑グリースの構成成分(基油、微粒子)保持性を確保することができる。水素供給システムにおいて、機械要素のうち、水素雰囲気に晒される摺動面の全部または重要な一部に、上記した窒化処理を施して窒化処理層を形成することができる。
様相1によれば、蒸気圧が低い基油を主要成分とする潤滑グリースが機械要素の摺動面に塗布されているため、使用期間が長期化しても、機械要素の摺動面における焼き付きが抑制される。様相2によれば、潤滑グリースは、基油と、固体潤滑性をもつフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子とを主要成分として包含するため、機械要素の摺動面における焼き付きが抑制される。
(実施形態1)
本発明の実施形態1について図面を参照して具体的に説明する。本実施形態は燃料電池車に搭載される水素供給システムに適用する。水素供給システムは、図1に示すように、水素ガス(圧力:最高圧100MPa)を貯蔵するタンク室1aを備える水素供給源である水素タンク1と、水素タンク1に組み付けられた基部2とを有する。なお水素ガスは次の特性をもつ。水素ガスは粘性が非常に小さく、空気の約半分であり、比重が軽い。更に水素ガスは比熱が大きく、熱伝導度が高い。また、ガス充填時には、ガス温度が上昇し、ガス放出時にはガス温度が低下するため、広い温度域で使用可能なグリースが必要となる。
図1に示すように、基部2は、電磁弁3と、出口マニュアル弁4と、ガス充填孔5と、ガス充填孔5に連通しタンク室1aに対面する供給孔6とを備える。電磁弁3は基部2の作動孔2hに嵌め込まれている。電磁弁3は、フィルタ3aと、プランジャ3bと、スプリング3cと、主弁体3dと、主弁座3eとを備える。出口マニュアル弁4は、ニードル4aと、アジャストスクリュー4bと、ニードル4aを付勢するスプリング4cと、弁座シート4eと、通路孔4fを備えるスリーブ4hとを有する。図2に示すように、基部2は、水素ガスを水素タンク1に充填するためのインポート2iと、水素ガスを燃料電池に向けて吐出するアウトポート2oと、水素ガスの圧力を減圧してアウトポート2oに供給する減圧弁7と、入口マニュアル弁8と、逆止弁9と、水素ガスの圧力を検知する圧力センサ10と、非常時に水素ガスを抜き取る圧抜き弁11と、溶栓弁14とを備える。水素タンク1に水素ガスを充填する場合には、水素ガスは、図2に矢印A1、矢印A2、矢印A3として示すように、インポート2i、入口マニュアル弁8、逆止弁9、通過孔12、通過孔13を順に経てガス充填孔5に至り、更に、図1に矢印B1、矢印B2として示すように、ガス充填孔5および供給孔6を経て、水素タンク1のタンク室1aに供給されて水素タンク1に高圧状態で貯蔵される。これに対して、水素タンク1に貯蔵されている水素ガスを燃料電池に供給する場合には、電磁弁3が開弁する。この場合、水素タンク1のタンク室1aに貯蔵されている高圧(使用範囲は0.5〜100MPa)の水素ガスは、電磁弁3のフィルタ3a、主弁体3dと主弁座3eとの流路、スリーブ4hの通過孔4f、出口マニュアル弁4を経て通過孔4mに至り、更に図2に示すように通過孔2r、減圧弁7の弁口7d、通過孔2t、2u、アウトポート2oを順に経て、更に他の減圧弁900(図12参照)を経て燃料電池の水素極に供給される。
減圧弁7の要部を図3に示す。図3の右半分の(A)は減圧弁7が閉弁している状態を示す。図3の左半分の(B)は減圧弁7が開弁している状態を示す。図3に示すように、減圧弁7は、基部2に搭載された固定筒体であるプラグ7aと、プラグ7aの中央孔7bに嵌合された可動子である可動弁体7cと、ポリアミド樹脂で形成されている弁口7dを備える弁座シート7eと、可動弁体7cを閉弁方向(矢印Y1方向)に付勢するバネ7ko、バネ座7mとを備える。図8は可動弁体7cの先端部を示す。図8に示すように、可動弁体7cの先端部には、先方に向かうにつれて外径が小さくなる円錐形状となる閉鎖面7xを備える。バネ7ko(図3参照)による閉弁力により、可動弁体7cが閉弁方向(矢印Y1方向)に移動すると、可動弁体7cの閉鎖面7xが弁座シート7eの弁口7dを区画するシール面7kに当たり、減圧弁7の弁口7dは閉弁される(図3の(A)、図8参照)。可動弁体7cが開弁方向(矢印Y2方向)に移動すると、可動弁体7cの閉鎖面7xが弁座シート7eから離脱し、減圧弁7の弁口7dは開弁される(図3の(B)参照)。
本形態によれば、水素供給システムの所定の摺動面に潤滑グリース100が存在している。換言すると、図3に示すように、プラグ7aの中央孔7bを形成する内周壁面7i(摺動面に相当)と可動弁体7cの外周壁面7o(摺動面に相当)との間には、潤滑グリース100が介在している。またバネ支持部材7fの外周壁面7fi(摺動面に相当)と第2基部2Sの中央孔2kの内周壁面2ki(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在している。さらに図3に示すように、可動弁体7c、バネ支持部材7fとの間に挟まれるように、これらの可動弁体7c、バネ支持部材7fと同軸上に設けられた弁軸70の外周壁面70p(摺動面に相当)と弁軸ガイド部材72の中央孔73の内周壁面73i(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在している。なお、図4は図3のIV−IV線に沿った断面を示す。図4において、プラグ7aの内周壁面7iは円形である。可動弁体7cは、ほぼ正方形を基礎とし、その隅部7coを、前記内周壁面7iと嵌合可能な大きさの円形に面取りし、外周壁面7oを形成した形状を呈している。弁軸ガイド部材72(内周壁面)、弁軸70も同様な形状としている。
図1に示すように、プランジャ3bの外周壁面3bo(摺動面に相当)と作動孔2hの内周壁面2hi(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在している。以下、潤滑グリース100が存在している部位を摺動面と称する。この摺動面は、耐水素脆性を高めるべく、Cr、NiおよびFeを主要成分として含有するオーステナイト系の鋼(ステンレス鋼,例えばJIS−316L)で形成されている。この潤滑グリース100の概念形態を図6に模擬的に示す。この潤滑グリース100は、フッ素系の流動液状の基油101と、フッ素系の基油101に分散された増ちょう剤として機能するフッ素系高分子樹脂ポリマー(PTFE)で形成された微粒子103とを主要成分として形成されている。微粒子103は低温状態で機械的・物理的破砕により形成されているが、これに限定されるものではない。なお、微粒子103の形状は、図6において球的な粒子形状と模擬化されているが、角形状の粒子形状でも良いし、あるいは、不定形状の粒子形状でも良く、要するに微粒子状であればよい。
フッ素系の基油101はパーフルオロポリエーテルとされており、化学的に安定している。微粒子103を形成するフッ素系高分子樹脂ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とされており、化学的に安定している。このように化学的に安定の潤滑グリースが使用されているので、摺動面に悪影響を与えることが抑制されている。本形態では、この潤滑グリース100を上記した摺動面に塗布して存在させることで、摺動面のうち金属自体が露出する面積が減少する。従って、摺動面を形成する金属の水素脆性に対する耐久性が向上する。本形態では、フッ素系の基油101については、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下(1×10−5Pa以下)に設定されている。そして20℃から100℃における蒸気圧が1×10−5Pa以下と低く設定されている。基油101の蒸気圧のデータを図5に示す。このように+20℃から+100℃における蒸気圧が1×10−5Pa以下、1×10−6Pa以下の低い蒸気圧に設定されている。ここで、1.0E−05は、1×10−5を意味する。使用環境温度が低いほうが基油101の蒸気圧は低いため、図5から理解できるように、−50℃〜+20℃における蒸気圧は上記値よりも更に低いものである。この結果、本形態によれば、使用期間が長くなっても潤滑グリース100の基油101の蒸発が抑制されており、長期にわたり摺動面における焼き付きが抑制される。
潤滑グリース100を100質量%とするとき、フッ素系の基油101(比重:1.8グラム/cm)の割合は60〜70質量%とされており、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103(真比重:2.2グラム/cm)の割合は30〜40質量%とされている。潤滑グリース100によれば、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103はかなりの体積割合で含有されている。なお、フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子103の1次粒子径は、一般的には、0.3μm以下程度とされている。微粒子103の2次粒子径は4μm以下または2μm以下程度とされている。但しこれに限定されるものではない。潤滑グリース100が塗布されている摺動面は、機械加工されており、その表面粗さは、一般的には、Raで3.2μm以下(具体的にはRaで0.2〜1.6μm)に設定されている。この場合、切削痕の微小凹凸が摺動面に形成されている。このように機械加工された表面粗さをもつ摺動面に潤滑グリース100が塗布されて存在している。従って、潤滑グリース100の構成成分(基油、微粒子)が摺動面の切削痕の微小凹凸に存在し易くなる利点が得られ、潤滑グリース100の基油101の蒸発が抑制され、摺動面における焼き付きが抑えられる。潤滑グリース100のフッ素系の基油101の蒸気圧は低く設定されているというものの、使用期間が長期化すれば、基油101の蒸散が進行する。潤滑グリース100の基油101の大部分または全部が仮に蒸発したとしても、潤滑グリース100の増ちょう剤としてのフッ素系高分子樹脂ポリマー微粒子103は軟質であるため、外力により変形して、摺動面の微小凹凸に馴染んで付着状態に残留するようになっている。図7は潤滑グリース100の基油101の蒸散が進行したときにおいて、微粒子103が1次粒子としてまたは凝集して2次粒子の形態で、摺動面の切削痕の表面粗さの微小凹凸に馴染んでいる状態を示す。微粒子103を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーは固体潤滑性を有するため、摺動面における焼き付きが抑えられる。
しかして本形態では、図3において、プラグ7aの摺動面である内周壁面7iは、これの軸芯300回りの周方向に沿って機械加工(切削加工および仕上加工)されている。可動弁体7cの摺動面である外周壁面7oは、これの軸芯300回りの周方向に沿って機械加工(切削加工および仕上加工)されている。潤滑グリース100が塗布されている他の摺動面についても同様に、これの軸芯回りの周方向に沿って機械加工されている。このように機械加工(切削加工および仕上加工)された摺動面は、表面粗さを有している。この場合、切削痕の微小凹凸が摺動面に形成されている。このように機械加工された表面粗さをもつ領域に潤滑グリース100が塗布されて存在している。従って、潤滑グリース100が摺動面の切削痕の微小凹凸に存在し易くなる利点が得られ、潤滑グリース100の基油101の蒸発が一層抑制され、摺動面における焼き付きが抑えられる。
本形態では、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103が上記したようなサイズであれば、切削痕で形成される上記した表面粗さの微小凹凸に、微粒子103が1次粒子として、または、凝集して2次粒子として、係合して残留し易いといえる。従って、潤滑グリース100を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103が切削痕に存在しつつ、微粒子103が部分的に摺動面の表面粗さの微小凸部から露出し易くなる。このため、潤滑グリース100の基油101の蒸発がかなり進行したときであっても、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103に基づく固体潤滑性が確保され、摺動面の焼き付きが有効に抑えられる。換言すると、図7に模擬的に示すように、プラグ7aの中央孔7bを形成する内周壁面7i、可動弁体7cの外周壁面7oは、機械加工で形成された微細レベルの切削痕を有する。フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103は、切削痕の凹凸に馴染む。図7に模擬的に示すように、基油101の大部分または全部が蒸発したとしても、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103は、摺動面の表面粗さの微小凹凸に、あたかもガム状に付着して残留していることが本発明者によりX線マイクロアナライザ(EPMA,日本電子製、JXA−8800RL)で確認されている。この場合、固体潤滑性を有するフッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103により、摺動面における焼き付きが抑制される。なお本形態では、潤滑グリース100を100質量%とするとき、二硫化モリブデンおよびカーボン粒子の総和は、実質的に0質量%に設定されており、二硫化モリブデンおよびカーボン粒子による影響が避けられている。また図8に示すように、潤滑グリース100が可動弁体7cの閉鎖面7xと弁座シート7eの弁口7dとの間に介在することがある。この場合、当該部位に潤滑グリース100を直接的に塗布しても良いし、あるいは、他の部位から飛散した潤滑グリース100が当該部位に堆積しても良い。
図8は減圧弁7の閉弁時を示す。図8に示すように、可動弁体7cの閉鎖面7xが弁座シート7eに当接すると、可動弁体7cの閉鎖面7xと弁座シート7eとの間に存在する潤滑グリース100にも閉弁力が作用して潤滑グリース100が変形する。図9は、可動弁体7cの開弁時において、潤滑グリース100の微粒子103が1次粒子または2次粒子として切削痕の微小凹凸にあたかもガム状に付着して残留している概念形態を模擬的に示す。図10は、閉弁力F等の外力が潤滑グリース100に作用していないとき、摺動面の切削痕の微小凹凸に存在する微粒子103が1次粒子または2次粒子として存在する概念形態を模擬的に示す。図11は、閉弁力F等の外力が潤滑グリース100に作用したとき、摺動面の切削痕の微小凹凸に存在する微粒子103が1次粒子または2次粒子として偏平化するように変形している概念形態を模擬的に示す。偏平化しているので、1次粒子または2次粒子の径DCが増加する。矢印X方向は軸芯300の回りの周方向を意味し、矢印Y方向は軸芯300に沿った方向を意味する。図10および図11では微粒子103の形状を球形状に単純化させて模擬化しているが、これはあくまでも概念図である。摺動面上の微粒子103が閉弁力F等の外力により変形すると、図11に示すように、軟質の微粒子103の偏平化が進行する。図11に模擬的に示すように、周方向(矢印X方向)に並設されている微粒子103が変形して偏平化が進行すると、隣り同士の微粒子103の間隔ΔLが小さくなり、互いに接近または接触する確率が増加する。このため、互いに隣接する1次粒子または2次粒子の間隔が狭くなり、微粒子103の弾性変形性を利用した当該軸芯300回りの周方向(矢印X方向)におけるシール性が向上する。なお、当該軸芯300に沿った方向(矢印Y方向)におけるシール性も向上する。
しかして本形態では、材料同士の引張強度を比較すると、可動弁体7cを構成する材料の引張強度をσ1とし、相手側の弁座シート7eを構成する樹脂材料(ポリアミド)の引張強度をσ2とし、微粒子103を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーの引張強度をσ3とするとき、σ1>σ2>σ3とされている。例えばσ1は480MPa、σ2は70〜100MPa、σ3は10〜30MPaにできる。材料同士の硬度を比較すると、可動弁体7cを構成する材料の硬度をH1とし、弁座シート7eを構成する材料の硬度をH2とし、微粒子103を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーの硬度をH3とするとき、H1>H2>H3とされている。このようにH3はH1およびH2よりも低いため、微粒子103を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーの変形を利用したシール性向上効果が確保される。ここで、例えば、H1はHv127〜156、H2はHRC32〜58(JISK7202)、H3はショアD50〜55(ASTM D2240)にできる。
水素消費部は燃料電池である。燃料電池は多数の単セルを組み付けて形成されている。単セルを図12に模擬的に示す。単セルは、固体電解質膜500を水素極600と酸化剤極700とで挟んで形成されている膜電極接合構造体800と、膜電極接合構造体800の水素極600側に配置された水素極用配流要素としてのセパレータ820と、膜電極接合構造体800の酸化剤極700側に配置された酸化剤極用配流要素としてのセパレータ840とを有する。固体電解質膜500は、プロトン伝導性を有するフッ素系樹脂ポリマー(ナフィオン、パーフルオロスルホン酸樹脂)で形成されている。水素極600は水素極用触媒層601と水素極用ガス透過層602とで形成されている。酸化剤極700は酸化剤極用触媒層701と酸化剤料用ガス透過層702とで形成されている。水素極用触媒層601は、フッ素系樹脂ポリマー(例えばパーフルオロスルホン酸樹脂)で形成されたプロトン伝導体と、導電微小体であるカーボンブラックと、カーボンブラックに担持された微小サイズの触媒金属粒子とを備える。カーボンブラックの1次粒子径は一般的には20〜100ナノメートル程度であり、凝集して2次粒子径となっても微細レベルである。酸化剤極用触媒層701は、フッ素系樹脂ポリマー(例えばパーフルオロスルホン酸樹脂)で形成されたプロトン伝導体と、カーボンブラックと、カーボンブラックに担持された微小サイズの触媒金属粒子とを備える。水素極用ガス透過層602および酸化剤極用ガス透過層702は、ガス通過性を有するカーボン系の導電多孔質体である。
発電反応では水が発生する。水は分散浸透するため、酸化剤極700および水素極600に存在することになる。水素極用ガス透過層602は、水素ガスの流路が水で閉鎖されないように、水素ガスの流路を確保する撥水剤であるフッ素系高分子樹脂ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))とカーボンブラックとを包含する。酸化剤極用ガス透過層702は、酸化剤ガスの流路が水で閉鎖されないように、酸化剤ガスの流路を確保する撥水剤であるフッ素系高分子樹脂ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))とカーボンブラックとを包含する。
前述したように潤滑グリース100は、フッ素系の基油101とフッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103とを主要成分としており、二硫化モリブデン等、カーボン粒子を含有しておらず、または、実質的に含有していない。このため、二硫化モリブデン等を含有する潤滑グリースを用いる場合と異なり、潤滑グリース100を構成する基油101および微粒子103が水素供給システムの基部2のアウトポート2oから吐出されて燃料電池の水素極600の内部に仮に進入したとしても、燃料電池の発電反応に影響を与えることが抑制される。しかも微粒子103の1次粒子径は0.2μm以下程度と小さく、微粒子103が凝集して2次粒子となったとしてもμmオーダと未だ小さいため、燃料電池の水素極600の水素ガスの流路断面積に与える影響は回避される。
水素極用ガス透過層602には、水素ガスの流路断面積を形成するための撥水剤であるフッ素系高分子樹脂ポリマー(一般的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE))が前述したように既に配合されている。仮に、潤滑グリース100を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103が燃料電池の水素極600に進入したとしても、潤滑グリース100の微粒子103が水素極600の水素極用ガス透過層602における異物質として作用することが抑制されるばかりか、フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成されている微粒子103による撥水効果が水素極600の水素入口605付近において期待される。水素ガスの流路確保に貢献できる。なお、微粒子103のサイズは2次粒子となっても微小レベルであるため、サイズ的にも支障がない。
図12に示すように、燃料電池の燃料極600の水素入口605と水素供給システムのアウトポート20oとの間には、水素ガスを更に減圧する減圧弁900が設けられている。図13に示すように、弁装置としての減圧弁900は、弁口901をもつ固体弁部902と、弁口901を開閉する可動弁体903とを備えている。固定弁部902は、摺動面となる金属製のシール面905をもつ。可動弁体903は、摺動面となる金属製のシール面906をもつ。閉弁時にシール面905およびシール面906は摺動面(材質:オーステナイト系のステンレス鋼)として機能し、互いに接触摺動して弁口901をシールする。シール面905およびシール面906は、金属素材を機械加工(切削加工および仕上加工)して形成されており、切削痕で形成された表面粗さをもつ。切削痕で形成された表面粗さに潤滑グリース100が残留する。この場合、当該部位に飛散してきた潤滑グリース100が当該部位に付着したりするからである。
仮に、シール面905およびシール面906に付着した潤滑グリース100の基油101の大部分または全部が蒸散したとしても、図13に示すように、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103が、1次粒子として、または、集団化した2次粒子として、切削痕で形成された表面粗さに付着する。可動弁体903が閉弁するときの閉弁力FAにより、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103が加圧により変形し、切削痕の微小凹凸にあたかもガム状に付着して残留し、シール面905およびシール面906(摺動面)から離脱しにくくなる。これによりシール面905およびシール面906との間のシール性が向上する。更に、フッ素系高分子樹脂ポリマーの微粒子103がシール面905およびシール面906を被覆すれば、シール面905およびシール面906を構成する金属の露出がそれだけ低減されるので、シール面905およびシール面906における水素脆化が抑えられ、重要部位であるシール面905およびシール面906の耐久性が向上する。
(実施形態2)
本発明の実施形態2について図14を参照して具体的に説明する。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成、作用効果を有しており、燃料電池車等に搭載される水素供給システムに適用する。機械要素200の摺動面201は、耐水素脆性および耐食性等を向上させるために、Cr、NiおよびFeを主要成分として含有するオーステナイト系の鋼(一般的にはステンレス鋼,例えばJIS−316L)で形成されている。図14に示すように、機械要素200の摺動面201は窒化処理層202(2〜12質量%以上の浸透深さ:約5〜50μm)を備えている。窒化処理層202の平均硬さは機械要素200の母材の平均硬さよりも硬く、Hv800〜1500、特にHv1100〜1400である。これにより摺動面201の耐摩耗性が向上し、また、初期なじみ性が向上し、摺動面201の母材の焼き付きが抑えられる。
窒化処理はフッ化窒化法である。フッ化窒化法では、フッ化処理と、その直後に引き続いて行われる窒素浸透処理とを実施する。ステンレス鋼は、窒素バリヤ層となり得る安定的な酸化膜を表面に有するため、本来的には窒素の浸透拡散が制約される。そこで、フッ化により、摺動面201の安定的な酸化膜の除去性を高める。その後、アンモニアの分解で生成された窒素を、摺動面201に浸透させる。フッ化処理は一般的には330〜370℃の低温領域で行う。窒素浸透処理の段階では酸化膜が除去されているため、窒素浸透処理の温度について低めに設定することもでき、故に、300〜600℃あるいは400〜600℃の温度領域において、幅広い温度設定が可能となる。窒化浸透の処理温度をアンモニアの分解反応が起こる最下限温度域まで低下させることが可能となり、機械要素200の歪みを抑制することができる。この方法では、所謂白層とも呼ばれる脆い化合物層の生成を抑制し、摺動面201の表面層における窒素濃度の過剰化を抑えつつ、窒素を摺動面201の内部まで浸透させることができる。
更に上記したフッ化窒化処理により、機械要素200の摺動面201の表面粗さが適度に荒れ、良好な凹凸が形成される。窒素の浸透固溶による母材の体積膨脹が起因しているものと推察される。この結果、摺動面201における潤滑グリースの構成成分の保持性を高めることができる。本発明者らが行った試験例によれば、Ra(JIS)では、フッ化窒化処理する前の摺動面201の表面粗さは0.301μmであったが、フッ化窒化処理した後の摺動面201の表面粗さは0.432μmとなり、0.130μm増加していた。ここで、表面粗さの増加量の最小値は0.047μmであり、表面粗さの増加量の最大値は0.414μmであった。
上記した潤滑グリースは、前述したように、基油101と、基油101に分散されたフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子103とを主要成分としている。本実施形態では、燃料電池の燃料極に供給される高圧の水素ガスが高速で流れる雰囲気において、機械要素200の摺動面201は使用されている。このようなときであっても、摺動面201において、潤滑グリースの構成成分の保持性を高めることができる。
殊に、高速で流れる水素ガス(燃料ガス)により潤滑グリースの基油の蒸発が進行したとしても、潤滑グリースに含まれている微粒子103は、前述したように、一次粒子として、または集団化した二次粒子として、表面凹凸に係合してあたかもガム状に付着し、離脱しにくくなり、摺動面201の母材における焼き付き防止を図り得る。殊に摺動面201の山部201mが窒化処理により強化され、山部201mの形状が維持され易い。このため、固体潤滑性をもつ微粒子103が一次粒子としてまたは集団化した二次粒子として、摺動面201に付着したまま残留する付着残留性を向上させることを期待でき、摺動面201の保護性を一層高めることができる。
なお、窒化処理により機械要素200の摺動面201には窒素が既に浸透しているため、窒素が浸透していない場合に比較して、水素が摺動面201の母材に浸透しにくくなるものと推察される。
本形態によれば、上記した水素供給システムにおいて、上記した潤滑グリース100が存在する摺動面の全部、大部分または一部に、上記した窒化処理が施されている。
換言すると、図3に示すように、プラグ7aの中央孔7bを形成する内周壁面7i(摺動面に相当)と可動弁体7cの外周壁面7o(摺動面に相当)との間には、潤滑グリース100が介在しており、これらの摺動面には上記窒化処理が施されている。またバネ支持部材7fの外周壁面7fi(摺動面に相当)と第2基部2Sの中央孔2kの内周壁面2ki(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在しており、これらの摺動面には上記窒化処理が施されている。
さらに、弁軸70の外周壁面70p(摺動面に相当)と弁軸ガイド部材72の中央孔73の内周壁面73i(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在しており、これらの摺動面には上記窒化処理が施されている。
更に図1に示すように、プランジャ3bの外周壁面3bo(摺動面に相当)と作動孔2hの内周壁面2hi(摺動面に相当)との間にも、潤滑グリース100が介在しており、これらの摺動面には上記窒化処理が施されている。上記した摺動面は、オーステナイト系の鋼(ステンレス鋼)で形成されている。
上記したように摺動面の両方(例えばプラグ7aの内周壁面7iと可動弁体7cの外周壁面7oの両方)に窒化処理を施すと、摺動面の両方が表面硬化されることにより、各摺動面自身の耐摩耗性が向上するとともに、摺動面間での移着が一層発生しにくくなり、更に、摺動面が適度に荒れて潤滑グリースの保持性が向上するため、摺動面における焼き付きが抑えられる。また摺動面の一方にのみ窒化処理を施すようにすると、表面硬化された一方の摺動面(例えば可動弁体7cの外周壁面7o)と表面硬化されない他方の摺動面(例えばプラグ7aの内周壁面7i)との硬度差により、摺動面間のなじみが早期に達成され易くなるので、より効果的な摺動面における焼き付きが抑えられる。このように上記した窒化層は、互いに摺動する二つの摺動面のうち両方に形成してもよいし、いずれか一方に形成しても良い。
なお水素供給システムは図面に示す構造に限定されるものではなく、適宜変更可能である。水素供給システムは燃料電池に水素を供給するシステムに限定されるものではなく、他の水素システムに利用しても良い。
水素供給システムの断面図である。 水素供給システムの異なる方向の断面図である。 水素供給システムの要部の拡大断面図である。 図3のIV−IV線に沿った断面図である。 潤滑グリースの基油の蒸気圧と温度との関係を示すグラフである。 潤滑グリースの概念構造を模擬的に示す概念図である。 減圧弁の摺動面に潤滑グリースの微粒子が介在している状態を模擬的に示す断面図である。 減圧弁の可動弁体が閉弁している状態を示す断面図である。 潤滑グリースの微粒子が摺動面に付着している概念を模擬的に示す図である。 潤滑グリースの微粒子が外力により変形する前の概念を模擬的に示す図である。 潤滑グリースの微粒子が外力により変形した後の概念を模擬的に示す図である。 燃料電池の概念を示す図である。 燃料電池と水素供給システムとの間に配置された減圧弁の摺動面に潤滑グリースの微粒子が付着している概念を模擬的に示す図である。 機械要素の摺動面が窒化処理層を有する状態を模擬的に示す図である。
符号の説明
1…水素タンク、2…基部、3…電磁弁、7…減圧弁、100…潤滑グリース、101…基油、103…微粒子

Claims (15)

  1. 水素消費部に水素ガスを供給する水素供給源と、前記水素供給源に接続され水素ガスを吐出するアウトポートを備えると共に摺動面を備える機械要素とを具備する水素供給システムにおいて、
    前記機械要素の摺動面には、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下に設定されている基油を主要成分とする潤滑グリースが塗布されている水素供給システム。
  2. 請求項1において、前記潤滑グリースは、前記基油と、前記基油に分散されたフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子とを主要成分として包含する水素供給システム。
  3. 水素ガスを供給する水素供給源と、前記水素供給源に接続され水素ガスを吐出するアウトポートを備えると共に摺動面を備える機械要素とを具備する水素供給システムにおいて、
    前記機械要素の前記摺動面には前記潤滑グリースが塗布されており、前記潤滑グリースは、基油と、前記基油に分散されたフッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子とを主要成分として包含する水素供給システム。
  4. 請求項3において、前記潤滑グリースの前記基油は、200℃における蒸気圧が1×10−2Pa以下に設定されている水素供給システム。
  5. 請求項1〜4のうちの一項において、前記機械要素の前記摺動面において、前記潤滑グリースが塗布されている領域の表面粗さは、Raで3.2μm以下に設定されている水素供給システム。
  6. 請求項1〜5のうちの一項において、前記潤滑グリースが塗布される塗布量は、単位面積(1平方ミリメートル)あたり、2ミリグラム以下に設定されている水素供給システム。
  7. 請求項2〜6のうちの一項において、前記フッ素系高分子樹脂ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリフルオライド(PVF)から選ばれる1種または2種以上である水素供給システム。
  8. 請求項2〜6のうちの一項において、前記フッ素系高分子樹脂ポリマーで形成された微粒子は、1次粒子径が2μm以下である水素供給システム。
  9. 請求項1〜8のうちの一項において、前記機械要素の前記摺動面は機械加工されており、機械加工で形成された表面粗さを有する領域に前記潤滑グリースが塗布されている水素供給システム。
  10. 請求項1〜9のうちの一項において、前記機械要素の前記摺動面の少なくとも一方は、金属で形成されており、前記摺動面の相手側は、前記微粒子を構成するフッ素系高分子樹脂ポリマーよりも硬い樹脂で形成されていることを特徴とする水素供給システム。
  11. 請求項1〜10のうちの一項において、前記機械要素の前記摺動面は、耐水素脆性を有する金属で形成されていることを特徴とする水素供給システム。
  12. 請求項1〜11のうちの一項において、前記潤滑グリースを100質量%とするとき、固体潤滑剤粒子の総和は1質量%以下に設定されている水素供給システム。
  13. 請求項12において、前記固体潤滑剤粒子は、二硫化モリブデンおよび/またはカーボン粒子である水素供給システム。
  14. 請求項1〜13のうちの一項において、前記アウトポートの下流は減圧弁を介して燃料電池の燃料極に繋がる水素供給システム。
  15. 請求項1〜14のうちの一項において、前記機械要素の前記摺動面は、窒化処理された窒化処理層を備えており、窒化処理により形成された表面粗さを有する領域に、前記潤滑グリースが塗布されている水素供給システム。
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