JP2007270895A - 摺動部材およびその被覆層形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体潤滑剤からなる被覆層を設けた摺動部材において、固体潤滑剤本来の潤滑特性を十分に発揮させることができると共に、前記樹脂がなくとも、基材から固体潤滑剤が早期に剥がれる恐れのないようにする。
【解決手段】基材6上に、摺動表面を有する被覆層8を付着させた構成の摺動部材4を前提に、基材6と被覆層8との間に、中間層7を設け、被覆層8を、固体潤滑剤板状結晶粒子3の積層構造とし、それらの潤滑剤板状結晶粒子3は、(00l)面(但し、lは1以上の整数)が平行に積み重なった結晶構造をもち、少なくとも、摺動表面において、(00l)面の配向指数が90%以上とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、摺動表面を有する被覆層を固体潤滑剤板状結晶粒子から構成した摺動部材およびその被覆層形成方法に関する。
自動車用エンジンのすべり軸受(摺動部材)において、摺動層としては、一般に、アルミニウム系軸受合金や銅系軸受合金が用いられている。近年、自動車用エンジンは、高出力化、高回転化が進む半面、燃費向上の要求も高く、そのため、すべり軸受には低摩擦が求められている。特に、ハイブリット車のように、エンジンの起動、停止を頻繁に繰り返す車両では、境界潤滑下での低摩擦が求められる。
低摩擦の要求に対処するには、固体潤滑剤からなる被覆層を設けてすべり軸受表面を改質することが効果的である。例えば、特許文献1には、固体潤滑剤を樹脂で結合したすべり軸受が開示されている。
特開平7−238936号公報
上記特許文献1の摺動部材では、固体潤滑剤を結合する樹脂は、金属に比べて変形し難いため異物埋収性が低く、しかも、固体潤滑剤が樹脂によって固められているため、固体潤滑剤本来の潤滑特性が発揮され難く、高摩擦となる。かといって固体潤滑剤を結合する樹脂がないと、固体潤滑剤が早期に剥がれてしまい、焼付き易くなる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、固体潤滑剤の相互を結合する樹脂をなくして固体潤滑剤本来の潤滑特性を十分に発揮させることができると共に、前記樹脂がなくとも、基材から固体潤滑剤が早期に剥がれる恐れのない摺動部材およびその被覆層形成方法を提供することにある。
二硫化モリブデン、グラファイト(黒鉛)、二硫化タングステン、窒化硼素、三酸化モリブデンなどは、固体潤滑剤として良く用いられている。これらは、板状結晶粒子の形態を有し、その板状結晶粒子は、主としてミラー指数での(00l)面を最大面とする層が平行に積み重なった、層状結晶構造を有している。例えば、二硫化モリブデンの板状結晶粒子は、図7に示すように、MoSの分子がxy平面に平行な方向に繋がった層がz軸方向に積み重なった構造となっており、隣接する層1と層2の間には、弱いファンデルワールス力しか作用していない。このような固体潤滑剤板状結晶粒子3は、図6に示すように比較的厚さの薄い板状の外観形状を有している。
層状結晶構造の板状結晶粒子が固体潤滑剤として摺動部材の被覆層に存在し、相手材の移動に伴って板状結晶粒子内の層間に剪断力が作用すると、ファンデルワールス力に容易に打ち勝って層と層との間ですべりが生ずる。この層間すべりは、層状結晶構造を持つ物質特有のもので、その摩擦係数はきわめて低い。これが板状結晶粒子を固体潤滑剤として使用した場合に、摺動部材が低摩擦となるメカニズムである。
本発明者は、層状結晶構造を有する固体潤滑剤板状結晶粒子の低摩擦のメカニズムが上記のようなものであるから、被覆層を構成する固体潤滑剤板状結晶粒子において層と層との間の面が相手材の移動方向、つまり被覆層の表面に平行となっていれば、更に低摩擦になし得るのではないか、という予測を立てた。また、基材表面に中間層を設け、この中間層を溶融または半溶融させることによって中間層上の固体潤滑剤板状結晶粒子を接着すれば、固体潤滑剤板状結晶粒子の早期剥離を防止できることに思い至った。
本発明は、このような本発明者の着想に基づいてなされたものである。
(1)本発明による摺動部材
<本発明の前提構成>
本発明は、基材上に、摺動表面を有する被覆層を付着させた構成の摺動部材を対象とする。摺動表面とは、相手材が摺動する表面を言う。
図2には、一例としてラジアル軸受用として用いられる摺動部材(すべり軸受)4の部分断面が示されているが、このラジアル軸受用摺動部材4にあっては、図4に示すように、半円筒状、或いは図には示さないが、円筒状に形成される。このラジアル軸受用摺動部材4の被覆層形成前の構造としては、図5に例示するように、裏金層5上に軸受合金層6を形成した二層構造のもの、図5の軸受合金層6の表面に更にオーバレイ層を形成した多層構造のものが多く用いられるが、軸受合金層のみの一層構造のものもある。スラスト軸受用として用いられる摺動部材は、平板状というだけで、その構造は、ラジアル軸受用と同様に一層構造、二層構造、多層構造のものがある。そして、一層構造および二層構造のものでは、軸受合金層が基材に相当し、多層構造のものでは、オーバレイ層が基材に相当する。
また、本発明は、軸受合金層を持たない摺動部材、つまり図5において、裏金層5に相当する部材のみによって構成される摺動部材に適用することも可能であり、この場合、裏金層相当部材が基材となる。この裏金相当部材は、金属製に限られず、樹脂製であっても良い。
本発明が対象とする摺動部材は、基材上に被覆層が付着されている。従って、相手材は、被覆層の表面上を摺動する。この相手材が摺動する被覆層の表面を摺動表面という。
<本発明の摺動部材の特徴的構成>
本発明の摺動部材は、上に述べた構成(基材上に、摺動表面を有する被覆層を付着させた構成)の摺動部材に更に、基材と被覆層との間に、被覆層の接着のための中間層が設けられ、前記被覆層は、固体潤滑剤板状結晶粒子が積層されており、前記固体潤滑剤板状結晶粒子は、(00l)面(但し、lは1以上の整数)が平行に積み重なった結晶構造をもち、少なくとも前記摺動表面において、(00l)面の配向指数が90%以上であることを特徴とする。
本発明では、基材表面に中間層を形成し、この中間層の上に固体潤滑剤板状結晶粒子を積層することによって被覆層を形成する。本発明の摺動部材は、固体潤滑剤本来の潤滑特性を十分に発揮させることができると共に、基材から固体潤滑剤が早期に剥がれる恐れがない。
この被覆層の好ましい厚さは、0.5〜10μmである(請求項2)。被覆層が有する低摩擦な摩擦特性を長期に亘って維持するには、0.5μm以上が好ましい。また、10μm以下とすると、被覆層がより剥がれ難く(被覆層が高強度)なる。0.5〜10μmの厚さが、被覆層の潤滑機能を最も長期に亘って発揮できる。また、固体潤滑剤板状結晶粒子としては、二硫化モリブデン、黒鉛、二硫化タングステン、窒化硼素、三酸化モリブデンのうちのいずれか一種以上を用いることができる(請求項3)。これらの固体潤滑剤板状結晶粒子は、六方晶である。
図2の例では、軸受合金層(基材)6の表面に中間層7が被着され、中間層7の上に被覆層8が被着されている。被覆層8は、図1に示すように、固体潤滑剤板状結晶粒子3が積層された構造となっている。
中間層の機能は、積層された固体潤滑剤板状結晶粒子を基材に接着するところにある。中間層の厚さは、0.1〜2μmとすることが好ましい(請求項4)。固体潤滑剤板状結晶粒子をより確実に接着させておくには、0.1μm以上が好ましい。中間層を2μm以下とすると、中間層が非金属であっても、熱伝導性が良好であり、相手材との摩擦によって生じた熱を基材側へより逃がし易くなる。この中間層は、樹脂および/または金属から構成することができる(請求項5)。樹脂は、PAI(ポリアミドイミド樹脂)、PI(ポリイミド樹脂)、EP(エポキシ樹脂)等の熱硬化性樹脂、PFA(四弗化エチレンパーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、ETFE(四弗化エチレンエチレン樹脂)、PCTFE(クロロトリフルオロエチレン樹脂)等の熱可塑性樹脂が好ましい。金属は、PbやBiなどの低融点金属、或いはその合金が好ましい。樹脂や低融点の金属であれば、加熱することで、容易に溶融し、或いは半溶融状態となって固体潤滑剤板状結晶粒子を接着する。
本明細書では、固体潤滑剤板状結晶粒子の結晶形態をミラー指数(hkl)で表し、結晶面(00l)面の配向指数を下式のように定義する。なお、lは1以上の整数である。
(00l)面の配向指数(%)=[ΣR(00l)/ΣR(hkl)]×100
ただし、R(00l)は(00l)面のX線強度を意味し、ΣR(00l)は検出された(00l)面のX線強度の和であり、ΣR(hkl)は(hkl)面、即ち検出された総ての面のX線強度の総和である。
配向指数が100%に近いほど、(00l)面に配向した結晶面が多いことになる。そして、上述の固体潤滑剤板状結晶粒子は、粒子内の層が(00l)面を互いに平行にして積み重なった層状結晶構造を持ち、前述のように、全体として比較的厚さの薄い板状の外観形状を有している。以下の説明では、この板状結晶粒子の層と層の間の境界面を層間面と称することとする。層間面は、(00l)面に平行である。
本発明では、少なくとも摺動表面において、固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面の配向指数が90%以上である。そして、(00l)面の配向指数が高い被覆層は、(00l)面が摺動方向に対して平行に積み重なった粒子が多い傾向にある。
このため、境界潤滑下で相手材が摺動表面を摺動すると、相手材は、摺動層の摺動表面の固体潤滑剤板状結晶粒子に接触しながら摺動するため、その相手材の移動に伴って、固体潤滑剤板状結晶粒子に剪断力が生ずるようになる。すると、固体潤滑剤板状結晶粒子内の相手材の移動方向と平行となっている層間面ですべり(層間すべり)を起す。このとき、板状結晶の層と層との間には、きわめて弱いファンデルワールス力しか作用していないので、ごく小さな剪断力で容易に層間すべりが発生する。この結果、相手材は、境界潤滑下であっても、ごく弱い摩擦抵抗しか受けることなく、円滑に摺動する。
また、摺動表面と相手材との間に侵入した異物は、固体潤滑剤板状結晶粒子の相互間に埋め込まれるようにして捕捉され、異物がいつまでも相手材と摺動表面との間で転動することを防止し、非焼付性を高める。
そして、固体潤滑剤板状結晶粒子は、中間層によって接着されているので、剥離し難く、長期にわたり良好なる潤滑特性、異物埋収性を呈する。
(2)本発明による摺動部材の被覆層製造方法
本発明の摺動部材の被覆層は、次のような方法によって形成される。
即ち、基材表面に中間層を形成した後、付着媒体に、(00l)面が平行に積み重なった結晶構造をもつ固体潤滑剤板状結晶粒子を自由付着させ、前記固体潤滑剤板状結晶粒子を自由付着させた前記付着媒体を、前記中間層表面に圧力を加えながら当該中間層表面を滑らせることによって、前記固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面が前記中間層表面と平行になるように、その中間層表面に前記固体潤滑剤板状結晶粒子を摩擦させながら付着させ、更に、前記付着媒体を前記中間層表面に付着された前記固体潤滑剤板状結晶粒子の表面に圧力を加えながら滑らせることによって、その固体潤滑剤板状結晶粒子の表面上に前記固体潤滑剤板状結晶粒子を付着させて積層させると共に、前記固体潤滑剤板状結晶粒子の付着時において、前記基材を加熱し、および/または前記付着媒体の滑り速度を調整して摩擦熱を発生させることにより、前記中間層の少なくとも表面を溶融または半溶融状態にして前記固体潤滑剤板状結晶粒子を接着する。
この製造方法によれば、固体潤滑剤板状結晶粒子を自由付着させた付着媒体を、中間層表面に圧力を加えながら滑らせると、固体潤滑剤板状結晶粒子が中間層表面を摩擦しながら転動してゆく。このとき、固体潤滑剤板状結晶粒子は、前述したように板状であるが故に整列しながら移動し、最も強い摩擦力が作用する基材表面に対して(00l)面が中間層表面と平行に配向するように整列する。そして、固体潤滑剤板状結晶粒子は、中間層表面と摩擦することにより、化学反応場が形成されるので、トライボケミカル反応が起き、これによって固体潤滑剤板状結晶粒子の層間を結合するファンデルワールス力よりも強い力で中間層表面に結合される。更に、付着媒体の固体潤滑剤板状結晶粒子は、中間層表面に付着された固体潤滑剤板状結晶粒子上に順次積層されてゆく。図1には、中間層7上に付着させた第1層目の固体潤滑剤板状結晶粒子3Aの表面上に複数層の固体潤滑剤板状結晶粒子3Bを積層させた状態を示す。
以上のような固体潤滑剤板状結晶粒子の付着過程で、基材を加熱し、および/または付着媒体の滑り速度を調整して摩擦熱を発生させることにより、中間層の少なくとも表面部分を溶融または半溶融状態にして固体潤滑剤板状結晶粒子を中間層に接着する。このとき、場合によっては、溶融した中間層構成材料が、積層された固体潤滑剤板状結晶粒子のうち、中間層側の部分に入り込んで、固体潤滑剤板状結晶粒子からなる被覆層を中間層を介して基材により強く結合するようにもなる。
このように、本発明の製造方法によれば、被覆層の形成過程(固体潤滑剤板状結晶粒子の積層過程)で、その固体潤滑剤板状結晶粒子を接着できるので、別途接着工程を設けなくとも済む。
なお、本発明の製造方法によって製造した被覆層の摺動表面においては、(002)面、(004)面などの(00l)面の結晶面のピークしかほとんど見られず(図8)、90%以上の配向指数を確保できる。一方、本発明とは異なる方法で形成した被覆層の摺動表面においては、(00l)面以外、例えば(101)面、(102)面、(103)面などの結晶面のピークも検出される(図9)。このことについては、後述する。
以下、本発明をラジアル軸受用摺動部材(以下、単にすべり軸受)に適用した一実施形態につき図面を参照しながら説明する。図4のように、すべり軸受4は半円筒状に形成されている。このすべり軸受4は、図2に示すように、裏金層5、軸受合金層6、中間層7、被覆層8からなる複層構造をなしている。
このすべり軸受4の製造方法は、次の通りである。まず、図5に示すように、裏金層5上に例えばアルミニウム基軸受合金や銅基軸受合金からなる軸受合金層6をライニングしてバイメタル9を形成する。その後、バイメタル9から短冊状小片を切り出し、この短冊状小片を半円筒状に曲げて半円筒状成形体を得る。そして、半円筒状成形体の内周面である軸受合金層6表面をボーリング加工によって仕上げ、次に、洗浄脱脂して軸受合金層6の表面に中間層7を被着し、最後に中間層7の表面上に被覆層8を形成し、すべり軸受4を得る。
この実施例の中間層7は、例えばPFAなどの熱可塑性樹脂からなる。
被覆層8は、固体潤滑剤板状結晶粒子3の積層構造からなり、積層された固体潤滑剤板状結晶粒子3のうち、中間層7に接する第1層目の固体潤滑剤板状結晶粒子3Aが中間層7に接着されている。
中間層7の表面に、固体潤滑剤板状結晶粒子3を積層させるための付着装置10は、図3に示すように、回転軸11に着脱可能に取り付けられる芯体としての回転体12に、複数の付着媒体13の一端側を固定して構成されている。付着媒体13は、布、不織布、紙、皮革、プラスチック、繊維状金属などの可撓性部材からなり、ここでは、すべり軸受4の幅よりもやや広い幅を持った円弧板状に形成されている。この付着媒体13は、表面に凹凸などがあって表面積の大きい部材が好ましい。一度に多量の固体潤滑剤板状結晶粒子3を付着媒体13に自由付着させ得るからである。
この付着装置10によりすべり軸受4の内周面に被覆層8を形成するには、まず、2個のすべり軸受4を、円筒状に突き合わせて、回転軸11と同心となるように治具(図示せず)に固定する。そして、回転体12に固定された複数の付着媒体13に、(00l)面が平行に積み重なった層状結晶構造をもつ固体潤滑剤板状結晶粒子、例えば二硫化モリブデン粒子を多量に自由付着させ、これら付着媒体13を円筒状に突き合わされた2個のすべり軸受4内に収容するようにして回転体12を回転軸11に取り付ける。
そして、回転軸11を図示しないモータにより回転させる。すると、付着媒体13の他端たる先端部分が、回転に伴う遠心力を受けてすべり軸受4の内周面である中間層7の内周面に圧力を加えながら滑るように回転する。このときの付着媒体13の前記内周面での滑り速度は、5m/秒以上であることが好ましい。この付着媒体13の回転により、付着媒体13に自由付着された二硫化モリブデン粒子が、付着媒体13と前記内周面とによって圧力を加えられながら摩擦移動し、これにより、二硫化モリブデン粒子が層間面を中間層7の表面と平行となるように配向し(なぜなら、最大面である(00l)面は、前記移動方向に平行になることが安定だからである。)、且つトライボケミカル反応を起して中間層7の表面に付着する。
そして、更に、付着媒体13が回転することにより、中間層7の表面に付着した二硫化モリブデン粒子の上に、別の二硫化モリブデン粒子が(00l)面(層間面)を下の二硫化モリブデン粒子の(00l)面と略平行となるように配向されて順次積層されてゆく。
以上のようにして中間層7上に二硫化モリブデン粒子が積層された層から構成された被覆層8が形成され、その層厚が1μm以上の所望の厚さとなったところで本付着工程を終了する。なお、本付着工程の稼働時間は、希望する被覆層8の厚さに応じて適宜定める。
この被覆層8の形成時に、図示しない治具を予熱してこの治具に固定されるすべり軸受4を加熱したり、付着媒体13のすべり軸受4の表面での滑り速度を適宜調節して摩擦熱の発生程度を制御したりすることによって中間層7を構成する熱可塑性樹脂を溶融状態、或いは半溶融状態にする。これにより、中間層7に接する固体潤滑剤板状結晶粒子が中間層7に強固に接着される。その後、例えば治具を水冷して中間層7の熱可塑性樹脂を固化させる。
本発明者は、本発明の効果を確認するための試料として、下の表1に示す実施例品1〜5および比較例品1〜2を製作した。
Figure 2007270895
これら試料の製作方法は次の通りである。まず、裏金層に、アルミニウム系軸受合金層をライニングしたバイメタルを製造し、このバイメタルから短冊状小片を得て、これを半円筒状に曲げた後、軸受合金層の表面をボーリング加工により仕上げた。その後、比較例品1については、図3の付着装置10を用いて固体潤滑剤板状結晶粒子(二硫化モリブデン)を積層し、被覆層を形成した。また、比較例品2および3については、表1に示す量の固体潤滑剤板状結晶粒子(二硫化モリブデン)とバインダ樹脂とからなる塗料をコーティングし、焼付け処理をして、被覆層を形成した。。
実施例品1〜5については、軸受合金層上に、表1に示す材料からなる中間層を被着し、その後、図3の付着装置10を用いて固体潤滑剤板状結晶粒子を中間層上に積層し、被覆層を形成した。この場合、実施例品1は、中間層として熱硬化性樹脂であるPAIを用いた。このPAIからなる中間層上に固体潤滑剤板状結晶粒子を積層する際、付着媒体の滑り速度を10〜20m/secの高速度にして摩擦熱を発生させる。すると、PAIが粘性を帯びるよう(半溶融状態或いは溶融状態)になって固体潤滑剤板状結晶粒子が中間層の表面に接着された状態となる。被覆層の形成後、架橋温度(硬化温度)まで加熱し、PAIを硬化させる。また、実施例品2は、中間層として熱可塑性樹脂であるPFAを用いた。このPFAからなる中間層上に固体潤滑剤板状結晶粒子を積層する際、上記と同様にして摩擦熱を発生させる。すると、PFAが粘性を帯びるようになって固体潤滑剤板状結晶粒子が中間層の表面に接着された状態となる。摩擦熱がなくなれば、PFAは冷えて固化する。
なお、実施例品1および2の中間層形成時において、付着装置の固定治具をヒータにより加熱することによって試料、ひいては中間層を固定治具と摩擦熱の両方で加熱するようにしても良い。また、固定治具の加熱だけ又は摩擦熱だけで中間層を加熱するようにしても良い。
実施例品3〜5は、中間層を、電気めっきによって被着した低融点金属としている。この低融点金属からなる中間層上に固体潤滑剤板状結晶粒子を積層する際、付着装置の固定治具をヒータにより加熱し、および/または付着媒体の滑り速度を高くして摩擦熱を発生させる。すると、低融点金属が半溶融状態となり固体潤滑剤板状結晶粒子が中間層の表面に接着された状態となる。
上記実施例品1〜5および比較例品1〜2について、被覆層の厚さ、被覆層表面での固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面の配向指数を測定し、その結果を表1に記載した。 配向指数は、X線回折強度試験の結果から求めた。実施例品および比較例品のX線回折強度試験の測定結果の一例を、それぞれ図8(a),(b)および図9(a),(b)に示す。図8は、実施例品1の測定結果を示し、同図(b)は同図(a)の部分拡大図であり、図9は、比較例品2の測定結果を示し、同図(b)は同図(a)の部分拡大図である。図8(a),(b)および図9(a),(b)中、○(丸)が固体潤滑剤板状結晶粒子である二硫化モリブデンの(00l)面を示し、△(三角)が軸受合金層の結晶面を示し、×(バツ)が二硫化モリブデンの(00l)面以外の結晶面を示す。
図8(a),(b)から明らかなように、実施例品1の測定結果には、固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面以外のピークは、ほとんど見られない。一方、図9(a),(b)から明らかなように、比較例品2の測定結果には、固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面以外のピークが容易に見られる。なお、図9(b)に示すように、比較例品2の測定結果では、(00l)面以外である(101)、(102)、(103)面が同定された。このX線回折強度試験の測定結果および先の式から、実施例品および比較例品の配向指数を求めた。
また、実施例品1〜5および比較例品1〜2について、表2に示す条件にて摩擦係数測定試験を行い、その結果を表3に示した。なお、試験開始から1.5時間後の起動摩擦係数の測定結果である。
Figure 2007270895
Figure 2007270895
また、実施例品1と比較例品1について、下の表4に示す条件にてキャビテーション試験を行い、その結果を表5に示した。
Figure 2007270895
Figure 2007270895
摩擦係数試験の結果を考察する。表3に比較割合として示した数値は、摩擦係数が最も大きかった比較例品2の摩擦係数を100とした場合の各試料の摩擦係数の割合である。この比較割合は、図10にグラフとしても示した。
この摩擦係数試験の結果、起動摩擦係数は、固体潤滑剤板状結晶粒子の配向指数が90%以上である実施例品1〜5および比較例品1では低く、配向指数が90%未満である比較例品2の起動摩擦係数に比べ、18〜29%も減少している。これは、固体潤滑剤板状結晶粒子を配向指数が90%以上で積層することにより、固体潤滑剤板状結晶粒子の層間滑りが十分に行われ、潤滑機能が十分に発揮された結果であると思われる。
キャビテーション試験は、被覆層の接着強度を測定するためのもので、試料を水槽中に固定し、その水槽中の水にホーン状超音波振動子を没入させて振動させる。試料の被覆層は、水槽の水中に晒され、水中に放射された超音波によって被覆層表面にキャビテーション現象が起きるようにしてある。このキャビテーション現象によって、被覆層には中間層から剥離する力が作用する。このキャビテーション試験の結果は、試験終了後に残存している固体潤滑剤板状結晶粒子の面積の割合で示した。なお、前記面積の割合は、X線アナライザー(検出範囲:1mm×1mm)によって前記試験後の被放射領域から残存Moを検出し、画像処理を行って面積率を算出した。
このキャビテーション試験の結果を見ると、中間層を設けた実施例品1は、中間層を設けていない比較例品1に比べ、高い接着強度を示しており、中間層による固体潤滑剤板状結晶粒子の接着効果が高いことが理解される。
なお、摩擦係数試験及びキャビテーション試験において、軸受合金種の差異による結果の差異は見られなかった。
本発明の摺動部材における被覆層の形態を示す断面図 摺動部材の層構造を示す断面図 付着装置の断面図 摺動部材(すべり軸受)の側面図 摺動部材を形成するためのバイメタルの断面図 固体潤滑剤板状結晶粒子の板状結晶の層構造を示す概念図 二硫化モリブデンの結晶構造を示す概念図 実施例品の被覆層のX線回折強度試験の結果を示すグラフ 比較例品の被覆層のX線回折強度試験の結果を示すグラフ 起動摩擦試験の結果を示すグラフ
符号の説明
図面中、3は固体潤滑剤板状結晶粒子、3はすべり軸受(摺動部材)、6は軸受合金層、7は中間層、8は被覆層、10は付着装置、13は付着媒体である。

Claims (6)

  1. 基材上に、摺動表面を有する被覆層を設けてなる摺動部材において、
    前記基材と前記被覆層との間に、前記被覆層の接着のための中間層が設けられ、
    前記被覆層は、固体潤滑剤板状結晶粒子が積層されており、
    前記固体潤滑剤板状結晶粒子は、(00l)面(但し、lは1以上の整数)が平行に積み重なった結晶構造をもち、少なくとも前記摺動表面において、(00l)面の配向指数が90%以上であることを特徴とする摺動部材。
  2. 前記被覆層は、0.5〜10μmの厚さであることを特徴とする請求項1記載の摺動部材。
  3. 前記固体潤滑剤板状結晶粒子は、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タングステン、窒化硼素、三酸化モリブデンのうちの1種以上からなることを特徴とする請求項1または2記載の摺動部材。
  4. 前記中間層は、0.1〜2μmの厚さであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. 前記中間層は、樹脂および/または金属からなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の摺動部材。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の摺動部材の被覆層を形成する方法において、
    基材表面に中間層を形成した後、
    付着媒体に、(00l)面が平行に積み重なった結晶構造をもつ固体潤滑剤板状結晶粒子を自由付着させ、
    前記固体潤滑剤板状結晶粒子を自由付着させた前記付着媒体を、前記中間層表面に圧力を加えながら当該中間層表面を滑らせることによって、前記固体潤滑剤板状結晶粒子の(00l)面が前記中間層表面と平行になるように、その中間層表面に前記固体潤滑剤板状結晶粒子を摩擦させながら付着させ、
    更に、前記付着媒体を前記中間層表面に付着された前記固体潤滑剤板状結晶粒子の表面に圧力を加えながら滑らせることによって、その固体潤滑剤板状結晶粒子の表面上に前記固体潤滑剤板状結晶粒子を付着させて積層させると共に、
    前記固体潤滑剤板状結晶粒子の付着時において、前記基材を加熱し、および/または前記付着媒体の滑り速度を調整して摩擦熱を発生させることにより、前記中間層の少なくとも表面を溶融または半溶融させて前記固体潤滑剤板状結晶粒子を接着することを特徴とする摺動部材の被覆層形成方法。
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