JP2004035963A - 結合部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】嵌合部の表面を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層によって、より高い密着力でもってより安定に被覆できる上、ポリフェニレンサルファイド樹脂の高い耐熱性を生かして、とくに高温での用途において、摺動抵抗の低減と消音の効果を発揮し得る、新規な結合部材を提供する。
【解決手段】他部材への嵌合部を備えた 金属製の、動力伝達用の結合部材1の、他部材への嵌合部11の表面をリン酸塩処理してリン酸塩皮膜2を形成した後、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層3で被覆した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばスプライン軸やギヤ等の、動力伝達用の結合部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
スプライン軸やギヤなどの結合部材においては、摺動抵抗の低減と消音とを目的として、他部材への嵌合部(スプライン軸の場合は軸身に直接多数のキーを削成したスプライン部、ギヤの場合は少なくともギヤの歯面)を、樹脂の層で被覆する場合がある(例えば特公平2−19325号公報、特許第3098105号公報等)。
【0003】
また被覆する樹脂の例としては、上記摺動抵抗の低減や消音の効果に優れたナイロン11、12等のポリアミド樹脂を挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこれらの樹脂は耐熱性が十分でないため、高温での用途に適さないという問題があった。
そこで、ポリアミド樹脂よりも耐熱性に優れたポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)を用いて樹脂層を形成することが検討された。
しかしポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層を、例えば特開2001−336543号公報に記載のように、嵌合部の表面に直接に被覆、形成した場合には、素地金属の種類、樹脂層の形成方法や形成条件などによって、嵌合部に対する樹脂層の密着力が大きく変動するという問題があった。
【0005】
とくにアルミニウム、マグネシウム等の軽金属は酸化皮膜を生じやすいため、その上にポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層を形成しても十分な密着力を確保することは難しかった。
そこで嵌合部の表面に、とくに素地金属に対する密着力にすぐれた、例えばエポキシ樹脂等の他の樹脂からなる接着剤層(アンダーコート層)を形成した後、その上にポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層を被覆することで、当該樹脂層の密着力を向上し、かつ高いレベルで安定させることが考えられた。
【0006】
しかしエポキシ樹脂等の、素地金属に対する密着力の高い樹脂の多くは耐熱温度が低く、ポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱、溶融温度より低い温度で熱劣化、すなわち熱分解や熱溶融してしまうため、接着剤層の上に、粉体塗料を用いた粉体塗装法などの、ポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱、溶融を伴う工程を含む方法によって樹脂層を被覆することはできなかった。
また、例えば溶液塗布法などの、ポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱、溶融を伴わない形成方法であれば、接着剤層の上に樹脂層を被覆することはできるが、接着剤層は上記のように耐熱温度が低いため、とくに結合部材を高温での用途に使用した際に熱劣化しやすく、素地金属や樹脂層との密着力が著しく低下したり、熱によって接着剤層やその上の樹脂層が破損したりするおそれがあった。
【0007】
このため従来は、ポリフェニレンサルファイド樹脂の高い耐熱性を十分に生かしきれていないのが現状であった。
この発明の目的は、嵌合部の表面を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層によって、より高い密着力でもってより安定に被覆できる上、ポリフェニレンサルファイド樹脂の高い耐熱性を生かして、とくに高温での用途において、摺動抵抗の低減と消音の効果を発揮し得る、新規な結合部材を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、他部材への嵌合部を備えた金属製の、動力伝達用の結合部材であって、上記嵌合部の表面をリン酸塩処理してリン酸塩皮膜を形成した後、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層で被覆したことを特徴とする結合部材である。
この発明によれば、リン酸塩処理は嵌合部の表面を形成する素地金属との化学反応を伴う化成処理であって、リン酸塩皮膜は素地金属と連続相を形成するため、後述するように、素地金属の種類に合わせた最適なリン酸塩処理剤を選択することで、種々の素地金属に対して高い密着力を有するリン酸塩皮膜を形成することができる。
【0009】
またリン酸塩皮膜の表面はポーラスな状態であって、その上に被覆するポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層との密着力にもすぐれている。
このためリン酸塩皮膜を介挿することによって、樹脂層を嵌合部の表面に直接に被覆した場合よりも、当該樹脂層の密着力を高め、かつ高いレベルで安定させることができる。
しかもリン酸塩皮膜は無機の皮膜であって、ポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱、溶融温度や耐熱温度程度では熱劣化し難い。このため、例えば粉体塗装法などの、ポリフェニレンサルファイド樹脂の加熱、溶融を伴う工程を含む方法によって、リン酸塩皮膜の上に樹脂層を被覆することができる。また、樹脂層を被覆した後の結合部材を、密着力の低下や樹脂層の破損などを生じることなしに、より高温での用途に使用することもできる。
【0010】
したがって嵌合部の表面を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層によって、より高い密着力でもってより安定に被覆できる上、ポリフェニレンサルファイド樹脂の高い耐熱性を生かして、とくに高温での用途において、摺動抵抗の低減と消音の効果を発揮し得る、新規な結合部材を得ることが可能となる。
請求項2記載の発明は、リン酸塩皮膜の膜厚が1〜8μmであることを特徴とする請求項1記載の結合部材である。
【0011】
この発明によれば、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層の密着力をさらに高めて、前述した請求項1の作用効果をより一層、向上することが可能となる。
請求項3記載の発明は、樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成したことを特徴とする請求項1記載の結合部材である。
【0012】
この発明によれば、樹脂層を形成する際に溶剤を用いなため、樹脂の種類が制限されない、環境保護の点ですぐれているなどの利点がある。
請求項4記載の発明は、樹脂層の表面に、微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項1記載の結合部材である。
この発明によれば、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層の表面に多数、形成した微細な凹穴に、潤滑状態において潤滑剤を保持させることによって、当該樹脂層の摺動特性を、ナイロン11、12などからなるものと同等のレベルまで向上することが可能となる。
【0013】
請求項5記載の発明は、樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成するにあたり、嵌合部の表面に形成した焼き付け前の粉体塗料層の表面に、粉体塗料の焼き付け温度で熱分解する熱分解性粉体を付着させた状態で、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成するとともに、熱分解性粉体を熱分解させて除去することによって、樹脂層の表面に微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項4記載の結合部材である。
【0014】
この発明によれば、樹脂層の表面に形成する凹穴のサイズ(開口径、深さ)や形状、分布などを、熱分解性粉体の形状や、粉体塗料層への付着状態などに応じてランダムにすることができる。そして、これらのパラメータが一定である規則的な凹穴よりも、樹脂層の潤滑性を向上することが可能となる。
請求項6記載の発明は、樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成するにあたり、嵌合部の表面に形成した焼き付け前の粉体塗料層の表面に水溶性粉体を付着させた状態で、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成した後、水溶性粉体を水によって溶出させて除去することによって、樹脂層の表面に微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項4記載の結合部材である。
【0015】
この発明によれば、樹脂層の表面に形成する凹穴のサイズ(開口径、深さ)や形状、分布などを、水溶性粉体の形状や、粉体塗料層への付着状態などに応じてランダムにすることができる。このため、これらのパラメータが一定である規則的な凹穴よりも、樹脂層の潤滑性を向上することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、この発明の結合部材の、実施の形態の一例としての、EPS(電動パワーステアリング)用リダクションギヤの一部を示す拡大断面図、図1(b)は、上記リダクションギヤの要部である歯部(嵌合部)の表面付近をさらに拡大した拡大断面図である。
これらの図に見るように、この例のリダクションギヤ1は、全体が金属からなり、その外周面に、図示しないウォームギヤとの嵌合部として、所定数の歯11を形成したものである。そしてこの歯11の表面(歯面)を、図1(b)に拡大して示したようにリン酸塩処理してリン酸塩皮膜2を形成した後、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層3で被覆したものである。
【0017】
かかるリダクションギヤ1は、従来同様に鉄、非鉄金属もしくはこれらの合金などの、種々の金属によって製造することができる。
歯11の表面は、リン酸塩皮膜2や樹脂層3の密着性をさらに向上すべく、リン酸塩処理に先立ってブラスト処理、脱脂などの前処理を行っておくのが好ましい。
リン酸塩処理に用いるリン酸塩処理剤としては、前述したように素地金属の種類に合わせた最適なものを選択して使用すればよい。
【0018】
例えばリダクションギヤ1を形成する素地金属が鉄また鉄系合金である場合、リン酸塩処理剤としてはリン酸亜鉛系、リン酸マンガン系のものが好ましい。また、軽金属のうちアルミニウムまたはアルミニウム系合金の場合はリン酸クロム系のものが好ましく、マグネシウム系合金の場合はリン酸マンガン系、リン酸カルシウム系のものが好ましい。
また、これらのリン酸塩処理剤は、処理条件や形成されるリン酸塩皮膜の性状などに応じて種々のグレードのものが市販されているので、その中から、結合部材の嵌合部の形状、構造に適した処理方法を実施できるとともに、樹脂層3の下地として好適な性状を有するリン酸塩皮膜2を形成できるものを適宜、選択して使用すればよい。
【0019】
例えば結合部材が前記図1(a)(b)に示すリダクションギヤ1であり、当該リダクションギヤ1を形成する素地金属が鉄または鉄系合金である場合、リン酸亜鉛系のリン酸塩処理剤としては、比較的低温での浸漬処理によって処理が可能で、なおかつ薄肉のリン酸塩皮膜を形成できる、日本パーカライジング(株)製のパルボンド(登録商標)L3020などが好適に用いられる。
またリン酸マンガン系のリン酸塩処理剤としては、同様の理由で、日本パーカライジング(株)製のパルホス(登録商標)M1Aなどが好適に用いられる。
【0020】
リン酸塩処理を実施するには、上記のように結合部材の嵌合部の形状、構造に適した処理方法を採用すればよい。
例えばリダクションギヤ1をリン酸塩処理する場合には、上記のように浸漬法が好適に採用される。
すなわち、前述したようにまずブラスト処理、脱脂などの前処理を施したリダクションギヤ1を、所定の温度(通常は、使用するリン酸塩処理剤における推奨温度)に保持したリン酸塩処理剤中に浸漬する。そして一定時間が経過した時点で液から引き上げて洗浄し、乾燥させると、リダクションギヤ1の、歯11の表面などにリン酸塩皮膜2を形成することができる。
【0021】
かかる浸漬法では、浸漬時間とリン酸塩皮膜の膜厚とが比例関係にある。また、その比例係数は、結合部材の形状や構造、結合部材を形成する素地金属の種類、使用するリン酸塩処理剤の種類、処理温度などに応じて一定である。
このため、浸漬時間とリン酸塩皮膜の膜厚との関係を予め求めておき、それをもとに浸漬時間を設定してやると、リン酸塩皮膜の膜厚を任意に、また常にほぼ一定に制御することができる。
【0022】
上記リン酸塩皮膜2の膜厚は、1〜8μmであるのが好ましい。
膜厚が1μm未満では、嵌合部の表面にリン酸塩皮膜を形成したことによる、上述した樹脂層の密着力を高め、かつ安定させる効果が十分に得られないおそれがある。また、膜厚が8μmを超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、リン酸塩皮膜の膜強度が低下して、却って樹脂層の密着力が低下するおそれがある。
【0023】
なお樹脂層3の密着力を高め、かつ高いレベルで安定させる効果をさらに向上することを考慮すると、リン酸塩皮膜の膜厚は、上記の範囲内でもとくに3〜5μmであるのが好ましい。
リン酸塩皮膜2の上に被覆されるポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層3は、溶液塗布法などの、従来公知の種々の方法によって形成することができる。
しかし、前述したように溶剤を用いなため、樹脂の種類が制限されないこと、環境保護の点ですぐれていること、などを考慮すると、粉体塗装法によって樹脂層3を形成するのが好ましい。
【0024】
かかる粉体塗装法では、まずポリフェニレンサルファイド樹脂を主成分とする粉体塗料を作製し、それを流動浸漬法、静電粉体塗着法などによって、リダクションギヤ1の、歯11の表面に形成したリン酸塩皮膜2の上に付着させて粉体塗料層を形成する。そして高周波誘導加熱などによって加熱して粉体塗料層を焼き付けることで、連続した樹脂層3が形成される。
また、例えばスプライン軸の場合には、例えば特許第3098105号公報に記載されているように、樹脂層3の外形に対応したキャビティを有する金型内に、リン酸塩皮膜2を形成したスプライン部を挿入し、両者間の空隙内に溶融したポリフェニレンサルファイド樹脂を注入して樹脂層3を形成する、いわゆるインサート成形法を採用することもできる。
【0025】
樹脂層3の厚みについてもとくに限定されないが、100〜300μmとするのが好ましく、150〜200μmとするのがさらに好ましい。
樹脂層3の厚みがこの範囲未満では、当該樹脂層3を形成したことによる、摺動抵抗の低減と消音の効果が不十分になるおそれがある。逆にこの範囲を超える場合には、摺動時の樹脂の摩耗量が増えるおそれがある。
なお摺動抵抗は、樹脂層3の厚みが大きいほど小さくなる傾向を示すので、樹脂層3の厚みは、上記の範囲内でもできるだけ大きいのがさらに好ましい。
【0026】
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、樹脂層に摺動特性を付与するための自己潤滑性が、素地金属の表面などに比べれば良好ではあるものの、前述のナイロン11、12などに比べると僅かに低く、したがって樹脂層の摺動特性が不足する場合を生じる。
そこでポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層の摺動特性を、ナイロン11、12などからなるものと同程度まで向上すべく、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂を溶融混練したのち粉砕して粉体塗料を製造する際に、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等の固体潤滑剤を加えることが考えられる。
【0027】
しかし固体潤滑剤は、一般にポリフェニレンサルファイド樹脂との親和性が低く分離しやすいため、両者を溶融混練して、固体潤滑剤がポリフェニレンサルファイド樹脂中に均一に分散した粉体塗料を製造することは困難である。そして、製造された粉体塗料を用いて形成した樹脂層は、固体潤滑剤が不均一に分散しているため摺動特性が不均一になるという問題がある。
また固体潤滑剤は下地に対する密着力を有しない(それゆえに潤滑剤として機能しうるとも言えるのであるが)ため、かかる粉体塗料によって形成した樹脂層は、下地であるリン酸塩皮膜との密着力が著しく低下するおそれもある。
【0028】
これに対し、樹脂層3の表面に微細な凹穴を多数形成してやると、前記のように、潤滑状態において潤滑剤を保持させることによって、当該樹脂層の摺動特性を、ナイロン11、12などからなるものと同等のレベルまで向上することができる。
さらに、凹穴を樹脂層の表面にまんべんなく分布させることによって、樹脂層の摺動特性を、その全面にわたって均一化できる上、固体潤滑剤を加えないため、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層の、下地であるリン酸塩皮膜との密着力を、前述した高いレベルに維持することもできる。
【0029】
凹穴のサイズや形状、分布などは特に限定されないが、その開口径の平均値は5〜100μm、とくに20〜30μmであるのが好ましい。
また深さの平均値は3〜80μm、とくに20〜30μmであるのが好ましい。
さらに樹脂層3の表面の、一定面積の領域中に含まれる、凹穴の開口面積の総量の、上記領域の面積に対する割合で表される凹穴の分布割合は3〜50%、とくに10%前後であるのが好ましい。
【0030】
凹穴の開口径や深さが前記の範囲未満であったり、あるいは凹穴の分布割合が上記の範囲未満であったりした場合には、当該凹穴を設けたことによる、樹脂層3の摺動抵抗を低減する効果が十分に得られないおそれがある。
また逆に、凹穴の開口径や深さが前記の範囲を超えたり、あるいは凹穴の分布割合が上記の範囲を超えたりした場合には、樹脂層3の表面平滑性が低下するため、却って樹脂層3の摺動抵抗を低減する効果が不十分になるおそれがある。
【0031】
また凹穴は、これも前記のように摺動抵抗をより一層、低減するために、サイズ(開口径、深さ)や形状、分布などがランダムであるのが好ましい。
かかるランダムな凹穴は、前述したように粉体塗装法において、焼き付け前の粉体塗料層の表面に熱分解性粉体を付着させておき、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成した際に、熱分解性粉体を熱分解させて除去することによって、その痕跡として、樹脂層の表面に形成することができる。
【0032】
あるいは粉体塗料層の表面に水溶性粉体を付着させておき、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成した後、水溶性粉体を水によって溶出させて除去することによって、その痕跡として、樹脂層の表面に形成することもできる。
これらの方法に使用する熱分解性粉体は、例えばナイロン11、12などのポリアミド樹脂や、あるいはポリエチレン樹脂等の、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料の焼き付け温度(300〜350℃程度)で熱分解する種々の樹脂によって形成することができる。
【0033】
また熱分解性粉体は、凹穴の形状をランダムにするために、例えば上記樹脂を溶融混練したのち粉砕する粉砕法によって製造するのが好ましい。
一方、水溶性粉体は、例えばポリビニルアルコール等の水溶性樹脂によって形成することができる。
また水溶性粉体には、例えば炭酸カルシウムなどの無機の粉体を配合して、粉体中での水溶性樹脂の占める割合を小さくすることで、水による溶出性を向上してもよい。
【0034】
凹穴のサイズは、熱分解性粉体、水溶性粉体のサイズとほぼ一致するため、形成する凹穴のサイズに合わせて、使用する熱分解性粉体、水溶性粉体のサイズを設定すればよい。
熱分解性粉体、または水溶性粉体を、焼き付け前の粉体塗料層の表面にランダムに付着させるには、静電粉体塗着法などを採用すればよい。
【0035】
【実施例】
以下にこの発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
実施例1
〈素地金属の前処理〉
結合部材の嵌合部を形成する素地金属のモデルとして冷間圧延鋼板を用意し、その表面をブラスト処理したのち脱脂した。処理後の表面粗さは、中心線平均粗さRa=5μmとした。
【0036】
〈リン酸塩処理〉
上記冷間圧延鋼板を、リン酸亜鉛系のリン酸塩処理剤〔日本パーカライジング(株)製のパルボンドL3020〕に浸漬してリン酸塩処理を行った。液の温度は50℃、浸漬時間は3分間とした。
そして、上記浸漬時間が経過した冷間圧延鋼板を液中から引き上げ、十分に水洗したのち、乾燥させた。処理によって形成されたリン酸塩皮膜の厚みは3μmであった。
【0037】
〈樹脂層の形成〉
ポリフェニレンサルファイド樹脂を粉末化し、分級して、粒径が200メッシュ通過の粉体塗料を調製した。
次にこの粉体塗料を、先の冷間圧延鋼板の、リン酸塩皮膜の上に静電粉体塗着法によって塗布し、350℃で3分間、高周波誘導加熱して溶融流展させた後、自然放冷して樹脂層を形成したものを実施例1のサンプルとした。樹脂層の厚みは200μmであった。
【0038】
比較例1
前処理後の冷間圧延鋼板の表面に、リン酸塩処理をせずに直接に、樹脂層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のサンプルを作製した。
樹脂層の密着力評価
上記実施例1、比較例1で作製したサンプルの、樹脂層の下にのみ状の刃(刃幅2mm)を入れ、当該刃を、冷間圧延鋼板の表面に沿って、樹脂層をはく離する方向に移動させた際に要した応力(kN/m)でもって、樹脂層の密着力を評価した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 2004035963
【0040】
表より、素地金属の表面にリン酸塩処理を施してリン酸塩皮膜を形成したのち、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層を被覆すると、その密着力を飛躍的に向上できることが確認された。
摩擦係数測定および摺動温度測定
上記実施例1、比較例1で作製したサンプルを、鈴木式回転摩擦摩耗試験機にセットして、グリース潤滑下、面圧:50MPa、周速:0.3m/secの条件で連続摩擦させた際の、摩擦係数の変化、およびサンプルの温度変化を連続的に測定した。結果を図2に示す。
【0041】
図に見るように実施例1、比較例1のサンプルはともに、試験開始から120〜140分かけて温度が140℃付近まで上昇した。
そして比較例1のサンプルは、試験開始120分後あたりから摩擦係数と温度が大きな上下動を開始して、260分後に樹脂層がはく離してしまった。
これに対し実施例1のサンプルは、上記のように試験開始140分後に温度が140℃まで上昇するとともに、摩擦係数が僅かに低下した後は、試験終了の480分後まで一定の摩擦係数と温度とを維持することができた。
【0042】
このことから実施例1の樹脂層は、とくに高温での用途において、摺動抵抗の低減に効果を発揮し得ることが確認された。
実施例2
前記実施例1と同様にして、リン酸塩皮膜の上に、実施例1で使用したのと同じポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を、静電粉体塗着法によって塗布して粉体塗料層を形成した。
【0043】
つぎにこの粉体塗料層の表面に、ポリエチレン樹脂を粉末化し、分級した、粒径が200メッシュ通過の粉体塗料を少量、熱分解性粉体として付着させた。
そして350℃で3分間、高周波誘導加熱して溶融流展させた後、自然放冷して樹脂層を形成するとともに、熱分解性粉体を熱分解させて除去することによって実施例2のサンプルを作製した。樹脂層の厚みは200μmであった。
上記樹脂層の表面を、実体顕微鏡写真を撮影して観察したところ、図3に示すように、熱分解性粉体を熱分解させて除去した痕跡として、微細な凹穴が多数、形成されているのが確認された。
【0044】
また、上記実体顕微鏡写真に写された、実際の寸法が5×5mmの矩形状の領域に入るすべての凹穴の開口径を実測して、その平均値を求めたところ30μmであった。
また上記各凹穴の深さを、実体顕微鏡によって凹穴の縁と底にそれぞれピントを合わせた時の、鏡筒の移動量から求めて、その平均値を計算したところ25μmであった。
【0045】
さらに、上記領域中に含まれる、凹穴の開口面積の総量の、上記領域の面積に対する割合で表される凹穴の分布割合を求めたところ20%であった。
摩擦係数測定および摺動温度測定
上記実施例2で作製したサンプルを、鈴木式回転摩擦摩耗試験機にセットして、前記と同条件で連続摩擦させた際の、摩擦係数の変化、およびサンプルの温度変化を連続的に測定した。結果を、前記実施例1の結果と合わせて図4に示す。
【0046】
図に見るように実施例2のサンプルは、実施例1に比べて、摩擦係数および温度上昇をより低いレベルに維持することができた。
このことから実施例2の樹脂層は、実施例1に比べてさらに摺動抵抗の低減に効果を発揮することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】同図(a)は、この発明の結合部材の、実施の形態の一例としての、リダクションギヤの一部を示す拡大断面図、同図(b)は、上記リダクションギヤの要部である歯部(嵌合部)の表面付近をさらに拡大した拡大断面図である。
【図2】実施例1、比較例1で作製したサンプルについて連続摩擦試験を行った際の、摩擦係数と摺動温度の推移を示すグラフである。
【図3】実施例2で作製したサンプルの樹脂層の表面を拡大した実体顕微鏡写真である。
【図4】実施例1、2で作製したサンプルについて連続摩擦試験を行った際の、摩擦係数と摺動温度の推移を示すグラフである。
【符号の説明】
1 リダクションギヤ(結合部材)
11 歯(嵌合部)
2 リン酸塩皮膜
3 樹脂層

Claims (6)

  1. 他部材への嵌合部を備えた金属製の、動力伝達用の結合部材であって、上記嵌合部の表面をリン酸塩処理してリン酸塩皮膜を形成した後、ポリフェニレンサルファイド樹脂の樹脂層で被覆したことを特徴とする結合部材。
  2. リン酸塩皮膜の膜厚が1〜8μmであることを特徴とする請求項1記載の結合部材。
  3. 樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成したことを特徴とする請求項1記載の結合部材。
  4. 樹脂層の表面に、微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項1記載の結合部材。
  5. 樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成するにあたり、嵌合部の表面に形成した焼き付け前の粉体塗料層の表面に、粉体塗料の焼き付け温度で熱分解する熱分解性粉体を付着させた状態で、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成するとともに、熱分解性粉体を熱分解させて除去することによって、樹脂層の表面に微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項4記載の結合部材。
  6. 樹脂層を、ポリフェニレンサルファイド樹脂の粉体塗料を用いた粉体塗装法によって形成するにあたり、嵌合部の表面に形成した焼き付け前の粉体塗料層の表面に水溶性粉体を付着させた状態で、粉体塗料層を焼き付けて樹脂層を形成した後、水溶性粉体を水によって溶出させて除去することによって、樹脂層の表面に微細な凹穴を多数、形成したことを特徴とする請求項4記載の結合部材。
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