JP3905730B2 - 複合樹脂皮膜および複合樹脂皮膜の形成方法 - Google Patents

複合樹脂皮膜および複合樹脂皮膜の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属またはセラミックの基材表面に一体に密着させてスベリ性を高めた複合樹脂皮膜およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属やセラミック等の基材表面のスベリ構造として、その表面にフッ素樹脂や、二硫化モリブデンをコーティングする方法、油を使用する方法、ベアリングを使用する方法などが知られている。
しかし、フッ素樹脂をコーティングする従来技術では、フッ素樹脂自体の摩耗という問題がある。
また、フッ素樹脂のスベリ性では対応しきれないものがある。
次に、二硫化モリブデンをコーティングする従来技術では、二硫化モリブデンが相手材に転移することによってその性能をあらわす為に、衛生面で問題がある。
また、油を使用する従来技術では、二硫化モリブデンによるスベリ性付加と同じく、相手材に転移するという点で衛生面に問題がある。更に、油自体の劣化という問題がある。
次に、ローラやボールを軸受して使用する従来技術では、構造が機械的なものである為に故障するという問題が起こる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、フッ素樹脂の塗装および、成型による表面以上のスベリ性と耐磨耗性を有した複合樹脂皮膜およびその形成方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題を解決するために、請求項1の複合樹脂皮膜の発明では、金属およびセラミックのいずれかの基材表面に、前処理により粗面化した後にプライマーを塗布し、該塗布したプライマーを焼成する下地処理をしてなり、該下地処理した基材表面に、PEEK樹脂とPEKK樹脂のいずれか一方または双方とフッ素樹脂とを前者が約80、後者が約20の配合比として混合し、厚みを10μmから100μmの範囲で静電粉体塗装、流動浸漬、またはスプレー塗装などの塗装方法により塗布し、焼成により溶融して前記基材に一体に密着形成させ、徐々に冷却して複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで15μm〜40μmの範囲内に設定してなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項2の発明では、
前記基材が、鉄鋼、アルミニウム、これらの合金などの金属およびセラミックのいずれかであって、該基材の表面に対する洗浄、粗面化、鍍金または化成処理などの前処理が施されてなる、という技術的手段を講じている。
更に、請求項3の発明では、
前記複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで20μm±5μmの範囲内に設定してなることを特徴とする。
【0005】
請求項4の複合皮膜の形成方法の発明では、
金属およびセラミックのいずれかの基材表面を前処理により粗面化し、次いでプライマーを塗布し、該塗布したプライマーを焼成する下地処理を行い、
PEEK樹脂とPEKK樹脂のいずれか一方または双方とフッ素樹脂とを前者が約80、後者が約20の配合比として混合し、前記下地処理をした金属およびセラミックのいずれかの基材表面に厚みを10μm〜100μmの範囲で静電粉体塗装、流動浸漬、またはスプレー塗装などの塗装方法により塗布し、焼成により溶融した後に徐々に冷却して前記基材に一体に密着形成した複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで15μm〜40μmの範囲内に設定してなる、という技術的手段を講じている。
更に、請求項5の発明では、
前記基材が、鉄鋼、アルミニウム、これらの合金などの金属およびセラミックのいずれかであって、該基材の表面に対する洗浄、粗面化、鍍金または化成処理などの前処理が施されてなる、という技術的手段を講じている。
また、請求項6の発明では、
前記複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで20μm±5μmの範囲内に設定してなる、という技術的手段を講じている。
【0006】
【作用】
基材表面に塗布された複合樹脂は、溶融し冷却されて、凹凸面が形成されると共にフッ素樹脂によるスベリ性が付与され複合樹脂皮膜となって基材表面に形成される。
これにより、基材表面の複合樹脂皮膜は、表面のスベリ性と、凹凸面による相手材との接触面積の減少とが相俟って高いスベリ性を有することができる。
また、複合樹脂の素材の組合せにより複合樹脂皮膜に耐磨耗性を付加することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の複合樹脂皮膜およびその形成方法の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
本実施例では、基材1として、板状の鉄材を用いるが、本発明ではアルミニウムやこれらの合金、その他の金属、あるいはセラミックを用いてもよい。
【0008】
この基材1の表面は粗面化又は表面改質を行うことによって、基材表面と樹脂とが物理的方法で強力に結合しやすくなる。
そこで、本実施例では、前処理第1工程として、上記基材1を400℃で空焼きする。
これにより、基材表面に付着していた油分などの汚れを除去する。
次に、前処理第2工程として、アルミナによるサンドブラストを行い、基材表面に残っているその他の不純物を除去し、また、基材と樹脂との密着力を高めるために基材表面を粗面化する。
図中、1aは粗面化された基材表面である。
【0009】
更に、下地処理第1工程として、基材表面に複合樹脂を密着させるためのプライマーを基材表面に塗布する。
そして、下地処理第2工程として、前記下地材を400℃で60分間焼成し、基材とプライマー層とを一体に密着させる。
【0010】
次に、基材表面に複合樹脂を塗布する。
複合樹脂としては、PEEK樹脂、PEKK樹脂、PPS樹脂およびPES樹脂の群から選ばれた1または複数の樹脂と、フッ素樹脂とを混合したものである。
本実施例では、PEEK樹脂と、フッ素樹脂としてのPFA樹脂とを複合樹脂として用い、その配合比としてPEEK:PFA=約80:約20の割合とした。
【0011】
この複合樹脂を基材表面のプライマー層の上に塗布する。
塗布は、静電粉体塗装、流動浸漬、またはスプレー塗装などの公知の塗装方法により行われる。
ここで、加工者技術により、ほぼ均一の粗さとなるように被膜の厚みを調節する必要性がある。
この厚みは、例えば50μm(10μm〜100μm)であるが、基材や複合樹脂の素材に応じて適宜、実験的に定めることができる。
塗布する厚みが適切でないと、粗さにばらつきが出てしまい、充分な機能を果たし難くなる。
そこで、本実施例では、形成後の複合樹脂皮膜の表面粗さが、Raで20μm±5μmの範囲となるように、複合樹脂の配合比や皮膜の厚みが決定される。
【0012】
次に、前記塗布した複合樹脂を焼成炉で焼成する。
複合樹脂の焼成は、420℃(溶融温度)で60分間行い、これによって、前記プライマー層と複合樹脂皮膜とを一体に密着させる。
そして、徐々に冷却し、プライマー層と一体に密着した複合樹脂皮膜2を冷却することによって、樹脂を硬化させ、基材の表面構造が完成する。
この複合樹脂皮膜2は、凹凸面に形成されると共にフッ素樹脂によるスベリ性が付与されて、基材上の表面に一体に密着形成される。
ここで、この複合樹脂皮膜2の表面粗さはRaで20μm±5μmに形成される。
このようにして得られた複合樹脂皮膜2は、従来に比べて高いスベリ性と耐摩耗性を有している。
【0013】
前記実施例の複合樹脂皮膜の効果を確認するために、比較例として板状の鉄材の表面にフッ素樹脂としてのPTFE樹脂を皮膜として形成した場合について説明する。
この比較例では、前記実施例と同様に、鉄板からなる基材に前処理第1および第2工程と、下地処理第1および第2工程を行い、前記フッ素樹脂を基材表面のプライマー層の上に塗布する。
そして、フッ素樹脂を焼成(380℃で60分間)して、プライマー層とフッ素樹脂皮膜とを密着させ、次いで冷却することによって、フッ素樹脂皮膜を硬化させて比較例のテストピースを得る。
【0014】
本実施例と比較例とで得られた板状のテストピースについて、下記の要領で滑り性試験を行った。
a)試験方法
テストピースを傾け、その上に置かれている重りが、傾き何度になった時点で滑り出すかを調べた。
重りの形状は図2に示すように突起のある部分を下にして行った。
b)テストピースの材質およびサイズ
材 質:鉄
サイズ:長さ5200mm、幅500mm、厚み5mm
c)重り
質 量:2kg
形 状:突起のある面を下にして測定(図2参照)
d)テストピースの種類
A:複合樹脂皮膜(本実施例品)
B:フッ素樹脂(PTFE)皮膜
C:フッ素樹脂(PTFE)皮膜
※ BとCは使用樹脂は同じであるが、塗料としては違うものである。
e)試験結果
【表1】
Figure 0003905730
【0015】
次に、基材としてアルミニウムを用い、前記と同様の方法で形成された本実施例および比較例のテストピースについて耐摩耗試験を下記の要領で行った。
a)試験方法
テーバー摩耗試験機を用い、塗膜の摩耗量を測定した。また、試験条件としては荷重1kg、回転数500回転において、それぞれのテストピースの質量の減量を測定し、これを摩耗量とした。
b)試験条件(テーバー摩擦試験)
摩耗輪:駆動輪CS−17
荷重:1kg
回転速度:500回転/7min ≒ 71.1回/min
c)テストピースの基材の材質およびサイズ
材質:アルミニウム
サイズ:長さ100mm、幅100mm、厚み5mm
d)テストピースの種類
A:複合樹脂皮膜
B:フッ素樹脂(PTFE)皮膜
e)試験結果
【表2】
Figure 0003905730
【0016】
上記のように、本実施例の粗さを有した複合樹脂皮膜は滑り性に優れ、また耐摩耗性に優れていることが確認された。
上記実施例は、この発明の一例を示すものであり技術的範囲を限定するものではない。
表面粗さは、実施例ではRaで20μm±5μmとしたが、15μmから40μmの範囲内であればよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【0017】
【発明の効果】
この発明の基材のすべり構造によれば、フッ素樹脂より高い滑り性を有すると共に、耐摩耗性の向上を図ることができる。
また、この発明は基材表面に塗装により複合樹脂皮膜を形成するものであるため、屈曲に対する強度が基材の強度に依存し、複合樹脂の成形品では得られなかった優れた屈曲強度を得ることができる。
そして、複合樹脂皮膜は基材と一体になっているため、基材と共に機械加工を行うことができ、寸法精度を必要とする精密部品に使用することができる。また基材が金属の場合には曲げ加工をすることができる。
また、この複合樹脂皮膜のスベリ性を利用して部材を滑動させる場合には、潤滑油の必要が無い。
更に、板状にして斜めに配置することにより、載置物品を衛生的に自重でスライド降下させることができる耐久性のある棚板として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材の複合樹脂皮膜の拡大断面図である。
【図2】(a)は重りの側面図、(b)は底面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 複合樹脂皮膜

Claims (6)

  1. 金属およびセラミックのいずれかの基材表面を前処理により粗面化し、プライマーを塗布し、焼成する下地処理をした基材表面に、PEEK樹脂とPEKK樹脂のいずれか一方または双方とフッ素樹脂とを前者が約80、後者が約20の配合比として混合し、厚みを10μmから100μmの範囲で静電粉体塗装、流動浸漬、またはスプレー塗装などの塗装方法により塗布し、焼成により溶融して前記基材に一体に密着形成させ、徐々に冷却して複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで15μm〜40μmの範囲内に設定してなることを特徴とした複合樹脂皮膜。
  2. 基材が、鉄鋼、アルミニウム、これらの合金などの金属およびセラミックのいずれかであって、該基材の表面に対する洗浄、粗面化、鍍金または化成処理などの前処理が施されてなることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂皮膜。
  3. 複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで20μm±5μmの範囲内に設定してなることを特徴とする請求項1に記載の複合樹脂皮膜。
  4. 金属およびセラミックのいずれかの基材表面を前処理により粗面化し、次いでプライマーを塗布し、該塗布したプライマーを焼成する下地処理を行い、
    PEEK樹脂とPEKK樹脂のいずれか一方または双方とフッ素樹脂とを前者が約80、後者が約20の配合比として混合し、前記下地処理をした金属およびセラミックのいずれかの基材表面に厚みを10μm〜100μmの範囲で静電粉体塗装、流動浸漬、またはスプレー塗装などの塗装方法により塗布し、焼成により溶融した後に徐々に冷却して前記基材に一体に密着形成した複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで15μm〜40μmの範囲内に設定してなることを特徴とする複合樹脂皮膜の形成方法。
  5. 基材が、鉄鋼、アルミニウム、これらの合金などの金属およびセラミックのいずれかであって、該基材の表面に対する洗浄、粗面化、鍍金または化成処理などの前処理が施されてなることを特徴とする請求項4に記載の複合樹脂皮膜の形成方法。
  6. 複合樹脂皮膜の表面粗さを、Raで20μm±5μmの範囲内に設定してなることを特徴とする請求項4または5に記載の複合樹脂皮膜の形成方法。
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