JP2007269184A - エアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグ - Google Patents
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Abstract
【課題】
軽量でありながら、気密性、難燃性が高く、生産性にも優れたエアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグを提供する。
【解決手段】
合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、合成繊維布帛のもう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆されてなるエアバッグ用基布であって、シリコーン化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であり、リン含有化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であることを特徴とするエアバッグ用基布。
【選択図】 図1
軽量でありながら、気密性、難燃性が高く、生産性にも優れたエアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグを提供する。
【解決手段】
合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、合成繊維布帛のもう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆されてなるエアバッグ用基布であって、シリコーン化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であり、リン含有化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であることを特徴とするエアバッグ用基布。
【選択図】 図1
Description
本発明は、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するためのエアバッグを構成するエアバッグ用基布に関する。詳しくは、軽量でありながら、気密性、難燃性が高く、生産性にも優れたエアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグに関するものである。
エアバッグ装置は、車両の衝突などの急激な減速を検知するセンサー、該センサーからの信号を受けて高圧ガスを発生するインフレータ、該インフレータからの高圧ガスにより展開して乗員の衝撃を緩和するエアバッグ、およびエアバッグシステムが正常に機能しているか否かを判断する診断回路より構成される。
こうしたエアバッグを構成するエアバッグ用基布には、従来、ナイロン66などの合成繊維からなる布帛に、気密性、耐熱性、難燃性などの向上のため、クロロプレン、クロルスルホン化オレフィン、シリコーンなどの合成ゴムを塗布したものが用いられてきた。なかでも、シリコーンゴムは、クロロプレンゴムやクロルスルホン化オレフィンゴムに比べ塗布量を少なくできる上(通常、布帛表面に40〜60g/m2塗布される)、耐熱性、耐環境性にも優れ、エアバッグに非常に適した材料とされている。しかしながら、近年、エアバッグのさらなる軽量化、コンパクト化のために、エアバッグ用基布のさらなる軽量化、風合いのソフト化が求められるようになり、塗布量の低減が進められている。ところが、シリコーンゴムの塗布量が少なくなると、FMVSS302で規定される難燃性を満足できなくなるという問題が発生した。
軽量性と難燃性を兼ね備えたエアバッグ用基布として、例えば特許文献1には、合成繊維製の織布にシリコーンゴムのコーティング剤を固形分換算で10g/m2以下塗布してなるコート布であって、シリコーンゴムが織布の経糸と緯糸との交絡部分に点在するようにコーティング剤が塗布されているエアバッグ用基布が開示されている。かかるエアバッグ用基布は、シリコーンゴムが織布表面に不連続に付着しているため、コート布でありながら、燃焼時に合成繊維が溶融落下し、自消性もしくは遅燃性を発揮する。もって、難燃性基準をクリアしようとするものである。しかしながら、特許文献1に例示の実施例1のエアバッグ用基布は、ノンコート布と比較し通気性が0.2cm3/cm2/秒まで低減されてはいるものの、低通気性が求められるエアバッグ用基布として十分なものではなかった。
また、特許文献2には、シリコーン水性エマルジョンに、あらかじめ界面活性剤の存在下で水分散したカーボンブラック、NiO2、FeO、FeO2、Fe2O3、Fe3O4、CoO2、CeO2およびTiO2から選ばれる粉末の1種または2種以上を加えたコーティング組成物を、織物に、固形分で20g/m2以下塗布してなるエアバッグ用基布が開示されている。かかるエアバッグ用基布は難燃性を満足するものの、コーティング組成物の調製に高度な技術が必要となる。
このような問題に対し、本発明者は、シリコーン系樹脂を20g/m2以下付与した布帛の樹脂付与面に、樹脂が付与されていない布帛を積層したものが、低通気性、軽量性、折り畳み性、難燃性に優れ、エアバッグ用基布として有用であることを見出し、特許出願している(特許文献3)。しかしながら、かかるエアバッグ用基布を製造するには、2枚の布帛を積層させる工程が必要で、生産性が劣るという問題があった。
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽量でありながら、気密性、難燃性が高く、生産性にも優れたエアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグを提供することである。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シリコーン化合物を含む組成物とリン含有化合物を含む組成物の所定量を、合成繊維布帛のそれぞれ別の面に付与することにより、軽量性、気密性、難燃性を兼ね備え、しかも生産性に優れたエアバッグ用基布を提供できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は第1に、合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、合成繊維布帛のもう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆されてなるエアバッグ用基布であって、シリコーン化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であり、リン含有化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であることを特徴とするエアバッグ用基布である。
第2に、合成繊維布帛の一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法である。
第3に、合成繊維布帛の一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法である。
第4に、上記エアバッグ用基布を用いてなるエアバッグである。
第2に、合成繊維布帛の一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法である。
第3に、合成繊維布帛の一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法である。
第4に、上記エアバッグ用基布を用いてなるエアバッグである。
本発明によれば、軽量でありながら、気密性、難燃性が高く、生産性にも優れたエアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグを提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の形態を詳細に説明する。
図1〜3は本発明のエアバッグ用基布を製造する加工装置の概略図である。
図1〜3は本発明のエアバッグ用基布を製造する加工装置の概略図である。
本発明において合成繊維布帛とは、合成繊維糸条を用いて製織される織物、または合成繊維糸条を用いて製編される編物を意味する。なかでも、機械的強度に優れ、厚さを薄くできるという点で、織物が好ましい。織物の組織は特に限定されるものでなく、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などを挙げることができる。なかでも、機械的強度により優れた平織物が特に好ましい。
合成繊維の種類は特に限定されるものでなく、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン46などのポリアミド繊維;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維;ポリビニルアルコール繊維;ポリ塩化ビニリデン繊維;ポリ塩化ビニル繊維;アクリルなどのポリアクリロニトリル系繊維;ポリウレタン繊維;芳香族ポリアミド繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などを挙げることができる。なかでも、製造が容易で、かつ耐熱性に優れるという理由により、ポリアミド繊維およびポリエステル繊維が好ましく、耐衝撃性に優れ、熱容量が大きいという理由によりポリアミド繊維がより好ましい。これらの合成繊維には、耐熱向上剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤などを含有させてもよい。
糸条の形態は特に限定されるものでなく、例えば、フィラメント糸、紡績糸、混紡糸、混繊糸、交撚糸、捲回糸などを挙げることができる。なかでも、生産性、コスト面、機械的強力に優れ、また、単糸の広がりにより低通気性が得られやすいという理由により無撚あるいは甘撚のフィラメント糸が好ましい。単糸(単繊維ともいう)の断面形状は特に限定されるものでなく、例えば、丸、扁平、三角、長方形、平行四辺形、中空、星型などを挙げることができる。生産性やコストの点では丸断面が好ましく、布帛の厚さを薄くでき、エアバッグの収納性が良くなるという点では、扁平断面が好ましい。
単糸強度は5.4g/デシテックス以上であることが好ましく、より好ましくは7g/デシテックス以上である。単糸強度が5.4g/デシテックス未満であると、エアバッグとしての物理的特性を満足することが困難となる傾向にある。
糸条の総繊度は155〜470デシテックスであることが好ましく、より好ましくは235〜470デシテックスである。総繊度が155デシテックス未満であると、布帛の強度を維持することが困難となる傾向にある。総繊度が470デシテックスを越えると、布帛の厚さが増大し、バッグの収納性が悪くなる傾向にある。
布帛が織物であるとき、カバーファクターは1500〜2500であることが好ましく、より好ましくは1500〜2100である。カバーファクターが1500未満であると、織物の開口部が大きくなってしまい、エアバッグの気密性を得ることが困難となる傾向にある。カバーファクターが2500を越えると、織物の厚さが増大し、エアバッグの収納性が悪くなる傾向にある。ここで、カバーファクターとは、基布の経糸総繊度をD1(デシテックス)、経糸密度をN1(本/2.54cm)とし、緯糸総繊度をD2(デシテックス)、緯糸密度をN2(本/2.54cm)としたとき、(D1×0.9)1/2×N1+(D2×0.9)1/2×N2で表される。
かかる合成繊維布帛は、精練および熱処理を施されたものであってもよい。
本発明のエアバッグ用基布は、上記合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、もう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆された構成のものである。
本発明においてシリコーン化合物は、耐熱性、耐寒性などに優れる皮膜を布帛表面に形成し、布帛にこれらの機能を付与するとともに、布帛の気密性を向上させるために使用する。
本発明において用いられるシリコーン化合物は特に限定されるものでなく、例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、トリメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン、メチルビニルシリコーンレジン、アルキッド変性シリコーンレジン、エポキシ変性シリコーンレジン、アクリル変性シリコーンレジン、ポリエステル変性シリコーンレジンなどを挙げることができる。なかでも、硬化後にゴム弾性を有し、強度、伸び等に優れ、コスト面でも有利という理由によりメチルビニルシリコーンゴム等が好ましく用いられる。
シリコーン化合物は通常市販されているものを用いることができ、そのタイプは、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型など特に限定されない。
シリコーン化合物は通常市販されているものを用いることができ、そのタイプは、無溶剤型、溶剤希釈型、水分散型など特に限定されない。
本発明においてシリコーン化合物を含む組成物とは、少なくとも上記シリコーン化合物を含んでいればよいが、シリコーン皮膜硬化後の粘着性低減、シリコーン皮膜の補強などの目的で、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物など、他の高分子材料を含んでいてもよい。さらに、硬化剤、接着向上剤、充填剤、補強剤、顔料、難燃助剤などの添加剤を含んでいてもよい。
組成物中、シリコーン化合物の配合比は30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上である。シリコーン化合物の配合比が30重量%未満であると、シリコーン化合物による耐熱性が低くなる。
シリコーン化合物を含む組成物の付与量は、固形分で0.1〜20g/m2であることが求められ、より好ましくは1〜10g/m2である。付与量が0.1g/m2未満であると、エアバッグ用基布の通気性が高くなり、エアバッグの気密性に問題が発生する傾向にある。付与量が20g/m2を越えると、エアバッグ用基布の重量が増大し、エアバッグ用基布の厚さが増大して、エアバッグの収納性に問題が発生する傾向にある。
本発明においてリン含有化合物は、難燃性を向上させるために使用する。
本発明において用いられるリン含有化合物は特に限定されるものでなく、例えば、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、ポリリン酸メラミンなどを挙げることができる。
リン含有化合物は通常市販されているものを用いることができ、水溶液、あるいは界面活性剤などにより乳化した水分散液、粘稠なアクリルバインダーなどに配合した高粘度液体などの形態で使用してもよい。
リン含有化合物は通常市販されているものを用いることができ、水溶液、あるいは界面活性剤などにより乳化した水分散液、粘稠なアクリルバインダーなどに配合した高粘度液体などの形態で使用してもよい。
本発明においてリン含有化合物を含む組成物とは、少なくとも上記リン含有化合物を含んでいればよいが、布帛表面への強固な固着、皮膜の硬さの調整などの目的で、ポリウレタン化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物など、他の高分子材料を含んでいてもよい。さらには、ポリウレタン化合物やポリエステル化合物などの主鎖や側鎖に、リン含有官能基を導入した化合物であってもよい。そしてさらに、硬化剤、接着向上剤、充填剤、補強剤、顔料、難燃助剤などの添加剤を含んでいてもよい。とくに、難燃性のさらなる向上を目的に難燃助剤を併用することは好ましい。
本発明において用いることのできる難燃助剤は特に限定されるものでなく、例えば、水酸化アルミニウムなどの金属水和物;二酸化チタン、二酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;白金化合物;カーボンブラック;膨張黒鉛、アゾジカルボンアミドなど燃焼時に断熱層を形成する発泡剤などを挙げることができる。
組成物中、リン含有化合物の配合比は5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上である。リン含有化合物の配合比が5重量%未満であると、リンに起因する難燃効果が弱くなり、エアバッグ用基布の難燃性が劣る傾向にある。
リン含有化合物を含む組成物の付与量は、固形分で0.1〜20g/m2であることが求められ、より好ましくは1〜10g/m2である。付与量が0.1g/m2未満であると、エアバッグ用基布の通気性が高くなり、エアバッグの気密性に問題が発生する傾向にある。付与量が20g/m2を越えると、エアバッグ用基布の重量が増大し、エアバッグ用基布の厚さが増大して、エアバッグの収納性に問題が発生する傾向にある。
本発明のエアバッグ用基布は、合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、合成繊維布帛のもう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆されてなるものであり、リン含有化合物がシリコーン化合物と反対面に付与されていることにより、燃焼時、リン含有化合物の脱水効果や炭化層形成効果がより有効に引き出され、高度な難燃性を発揮するものと推測される。
本発明のエアバッグ用基布は、以上に説明したシリコーン化合物を含む組成物、およびリン含有化合物を含む組成物を、合成繊維布帛のそれぞれ別の面に付与し、布帛表面を被覆することにより製造することができる。
付与方法は特に限定されるものでなく、例えば、図1〜3のようなナイフコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ダイコーティング、ラミネートなどの方式を挙げることができる。シリコーン化合物を含む組成物の付与方法は、均一な皮膜形成により通気性を低くすることができるという点で、ナイフコーティングが好ましい。一方、リン含有化合物を含む組成物の付与方法は、不連続付与により柔軟性を確保できるという点でグラビアコーティングが好ましい。コーティング剤には、布帛への浸透を高めるため、イソプロピルアルコールなどのアルコール類や界面活性剤など、界面張力を低下させる薬剤を添加してもよい。
本発明のエアバッグ用基布は、典型的には、合成繊維布帛の一方の面に第1のコーティング剤(シリコーン化合物を含む組成物またはリン含有化合物を含む組成物のコーティン剤)を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面に第2のコーティング剤(リン含有化合物を含む組成物またはシリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤)を塗布し、次いで熱処理することにより製造することができる。第1のコーティング剤を塗布した後、熱処理してから、第2のコーティング剤を塗布してもよい。
熱処理温度は、溶媒の揮発性や、シリコーン化合物の皮膜形成に適した温度が好ましく、80〜220℃の範囲が適している。シリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後に行う熱処理の初期段階、いわゆる乾燥段階では、皮膜の発泡やコーティング剤の急激なマイグレーションを抑えるために、80〜120℃で熱処理することが好ましい。また、付加反応型シリコーン化合物において、架橋反応が高温で開始されるものを使用する場合には、150〜220℃の熱処理が必須である。この高温熱処理は、シリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後であればどの段階で行ってもよい。また乾燥のみで強固な皮膜を形成するシリコーン化合物を使用する場合には、特に高温の熱処理を行わなくてもよい。
本発明のエアバッグ用基布を製造する加工装置の一例として、図1には、布帛1の一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤2をナイフ3で塗布した後、布帛のもう一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤5をグラビアロール6で塗布し、次いで加熱装置7a、7bの間を通過させて熱処理することにより、エアバッグ用基布8を製造するコーティング装置が示されている。図1にはナイフやグラビアロールが示されているが、これに限定されるものではなく、ナイフがグラビアロールやスプレーであっても、グラビアロールがナイフやスプレーであってもよい。また、塗布順序に制限はなく、リン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を先に塗布してもよい。
N、P、Sなどを含む有機化合物;Sn、Pb、Hg、Bi、Asなどの重金属のイオン性化合物;アセチレン基などの多重結合を含む有機化合物などは、付加型シリコーン化合物や脱水素型縮合型シリコーン化合物の硬化触媒として用いられる白金化合物と比較的強い相互作用をもち、硬化不良を起こす場合がある。使用するシリコーン化合物とリン含有化合物の組み合わせにおいて前記硬化不良の恐れがある場合には、シリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤を先に塗布し、熱処理後に、リン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布することが好ましい。具体的には、例えば図2に示すように、布帛1の一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティング剤2をナイフ3で塗布した後、加熱装置7a、7bの間を通過させて熱処理し、次いで布帛のもう一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤5をナイフ3で塗布し、さらに別の加熱装置7a、7bの間を通過させて熱処理することにより、エアバッグ用基布8を製造する。この場合、熱処理は2回行われるが、上記のとおり、少なくとも1回は高温で熱処理する必要がある。なお、化学反応を伴わないシリコーン化合物、硬化不良を起こさない多くの縮合型シリコーン化合物などの場合には、塗布順序や熱処理に関する制限がない。また、図2にはナイフが示されているが、これに限定されるものではない。
図3に示すように縦型の構造を有し、布帛の両面に塗布可能なコーティング装置を用いてもよい。図3にはナイフが示されているが、これに限定されるものではない。
本発明のエアバッグ用基布の製造方法は、布帛の一方の面への塗布、熱処理と、布帛のもう一方の面への塗布、熱処理を別個の装置で製造してもよいが、図1〜3に示されるコーティング装置のように、1台の製造装置で布帛の両面にコーティング剤を塗布可能であれば、連続的に生産可能であり、生産効率の点でより好ましい。また、図1〜3に示されるコーティング装置のナイフ部の設定を適宜変更することにより、塗布量を制御することが可能であり、従来使用されている塗布量が40〜60g/m2のコーティング基布も製造可能となる。
本発明のエアバッグ用基布を、所定の形状に裁断し、ナイロン66縫糸で縫製することにより、エアバッグが得られる。使用するインフレータが高温ガスや残渣の飛散が多いタイプであれば、インフレータ取り付け口近傍に、シリコーンゴムが40〜60g/m2塗布された従来のエアバッグ用基布を補強布として使用すればよい。またより気密性が求められるカーテンエアバッグなどの場合には、本発明のエアバッグ用基布の所定の位置に接着シール剤を塗布し、次いでその部分を縫製する方法などにより、気密性の高いエアバッグを得ることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における通気性および難燃性の評価は以下の方法に従って行った。
(1)通気性
JIS L 1096 A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
(2)燃焼性
FMVSS302に準拠して測定した。100mm/min以下を合格とする。
(1)通気性
JIS L 1096 A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
(2)燃焼性
FMVSS302に準拠して測定した。100mm/min以下を合格とする。
[実施例1]
総繊度470デシテックス、72フィラメントのナイロン66糸条を用いて、ウォータージェットルーム織機にて経糸密度、緯糸密度がともに46本/2.54cmになるように平織に製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この布帛の一方の面に、溶剤希釈型付加反応型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、リン含有化合物(丸菱油化工業株式会社製、ノンネンR9812−1)100重量部、アクリル樹脂(丸菱油化工業株式会社製、マルサーブ1024)30重量部、増粘剤(第一工業製薬株式会社製、M−2005A)5重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、190℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
総繊度470デシテックス、72フィラメントのナイロン66糸条を用いて、ウォータージェットルーム織機にて経糸密度、緯糸密度がともに46本/2.54cmになるように平織に製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この布帛の一方の面に、溶剤希釈型付加反応型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、リン含有化合物(丸菱油化工業株式会社製、ノンネンR9812−1)100重量部、アクリル樹脂(丸菱油化工業株式会社製、マルサーブ1024)30重量部、増粘剤(第一工業製薬株式会社製、M−2005A)5重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、190℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
[実施例2]
総繊度350デシテックス、72フィラメントのナイロン66糸条を用いて、ウォータージェットルーム織機にて経糸密度、緯糸密度がともに58本/2.54cmになるように平織に製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この布帛の一方の面に、溶剤希釈型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、リン含有ポリエステル樹脂(互応化学工業株式会社製、プラスコートZ−900)100重量部、増粘剤(第一工業製薬株式会社製、M−2005A)1.5重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにグラビアロールを用いて塗布し、190℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
総繊度350デシテックス、72フィラメントのナイロン66糸条を用いて、ウォータージェットルーム織機にて経糸密度、緯糸密度がともに58本/2.54cmになるように平織に製織後、アルカリ性浴中で精練し、次いで熱処理した。この布帛の一方の面に、溶剤希釈型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、リン含有ポリエステル樹脂(互応化学工業株式会社製、プラスコートZ−900)100重量部、増粘剤(第一工業製薬株式会社製、M−2005A)1.5重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにグラビアロールを用いて塗布し、190℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
[実施例3]
実施例1と同様の布帛の一方の面に、リン含有化合物(大和化学工業株式会社製、フランコートSE−100)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、熱処理することなく、布帛のもう一方の面に、シリコーン化合物(共栄社化学株式会社製、ライトエポックS−60NFE)100重量部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、セロゲン7A)10重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、150℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
実施例1と同様の布帛の一方の面に、リン含有化合物(大和化学工業株式会社製、フランコートSE−100)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、熱処理することなく、布帛のもう一方の面に、シリコーン化合物(共栄社化学株式会社製、ライトエポックS−60NFE)100重量部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、セロゲン7A)10重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、150℃で熱処理して、本発明のエアバッグ用基布を得た。
[比較例1]
実施例1と同様の布帛の一方の面に、シリコーンエマルジョン(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY22−826EX)100重量部、ポリリン酸メラミン(平均粒径20μm)5重量部からなるコーティング剤を、固形分で10g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理し、さらに190℃で熱処理して、エアバッグ用基布を得た。
実施例1と同様の布帛の一方の面に、シリコーンエマルジョン(東レ・ダウコーニング株式会社製、BY22−826EX)100重量部、ポリリン酸メラミン(平均粒径20μm)5重量部からなるコーティング剤を、固形分で10g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理し、さらに190℃で熱処理して、エアバッグ用基布を得た。
[比較例2]
実施例1と同様の布帛の一方の面に、溶剤希釈型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、硫黄窒素系難燃剤(丸菱油化工業株式会社製、ノンネン416)100重量部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、セロゲン7A)10重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、190℃で熱処理して、エアバッグ用基布を得た。
実施例1と同様の布帛の一方の面に、溶剤希釈型シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、主成分メチルビニルシリコーンゴム)のコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、120℃で熱処理後、布帛のもう一方の面に、硫黄窒素系難燃剤(丸菱油化工業株式会社製、ノンネン416)100重量部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製、セロゲン7A)10重量部からなるコーティング剤を、固形分で5g/m2になるようにナイフを用いて塗布し、190℃で熱処理して、エアバッグ用基布を得た。
上記実施例および比較例について、性能を評価した結果を表1に示す。実施例1〜3のエアバッグ用基布は、塗布量が少なく軽量な基布でありながら気密性に優れ、FMVSS302で規定される難燃性を満足していた。特に、実施例1および2のエアバッグ用基布は、難燃性に優れていた。比較例1のエアバッグ用基布は、軽量な基布であるものの、通気性が0.23cc/cm2/secと気密性が低く、難燃性も劣っていた。比較例2のエアバッグ用基布は、軽量性、気密性は優れているが、難燃性が劣っていた。
1 被覆前布帛
2 シリコーン化合物を含む組成物
3 コーティングナイフ
4 かきとりドクター
5 リン含有化合物を含む組成物
6 グラビアロール
7a、7b 加熱装置
8 被覆後布帛
2 シリコーン化合物を含む組成物
3 コーティングナイフ
4 かきとりドクター
5 リン含有化合物を含む組成物
6 グラビアロール
7a、7b 加熱装置
8 被覆後布帛
Claims (4)
- 合成繊維布帛の一方の面がシリコーン化合物を含む組成物により被覆され、合成繊維布帛のもう一方の面がリン含有化合物を含む組成物により被覆されてなるエアバッグ用基布であって、シリコーン化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であり、リン含有化合物を含む組成物の付与量が固形分で0.1〜20g/m2であることを特徴とするエアバッグ用基布。
- 合成繊維布帛の一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法。
- 合成繊維布帛の一方の面にリン含有化合物を含む組成物のコーティング剤を塗布した後、合成繊維布帛のもう一方の面にシリコーン化合物を含む組成物のコーティン剤を塗布し、次いで熱処理することを特徴とする、エアバッグ用基布の製造方法。
- 請求項1に記載のエアバッグ用基布を用いてなるエアバッグ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006097558A JP2007269184A (ja) | 2006-03-31 | 2006-03-31 | エアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグ |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2006097558A JP2007269184A (ja) | 2006-03-31 | 2006-03-31 | エアバッグ用基布およびその製造方法ならびに該基布を用いてなるエアバッグ |
Publications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010089608A (ja) * | 2008-10-07 | 2010-04-22 | Sumitomo Corp | エアバッグ用ガスガイドおよびエアバッグシステム |
WO2011105142A1 (ja) * | 2010-02-24 | 2011-09-01 | 住商エアバッグ・システムズ株式会社 | エアバッグ装置 |
-
2006
- 2006-03-31 JP JP2006097558A patent/JP2007269184A/ja active Pending
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CN102781734A (zh) * | 2010-02-24 | 2012-11-14 | 住商安全气囊系统株式会社 | 气囊装置 |
JPWO2011105142A1 (ja) * | 2010-02-24 | 2013-06-20 | 住商エアバッグ・システムズ株式会社 | エアバッグ装置 |
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